説明

周辺環境影響量を考慮した衝突識別機能を備えた安全装置

本発明は、車両の衝突を検出して第1のセンサ信号を送出するための第1のセンサ手段と、前記第1のセンサ信号に依存してトリガ信号を送出するための制御装置(と、前記第1のセンサ信号に依存してトリガされかつ車両衝突時に車両乗員を保護する乗員拘束システムを有している障害物への車両の衝突の際に活動化される車両用安全装置に関している。この場合車両近傍の障害物を検出し、第2のセンサ信号を送出するための第2のセンサ手段と、前記第2のセンサ手段に対する周辺環境影響量を検出し、周辺環境影響量に依存して第3のセンサ信号を送出するための第3のセンサ手段をさらに有し、前記第2のセンサ手段から送出される第2のセンサ信号が、制御装置において、第3のセンサ手段から送出された第3のセンサ信号の評価に従って、乗員拘束システムのトリガに関する決定のために用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための乗員拘束システムに関しており、特に障害物への車両の衝突前若しくは衝突中に活動化可能である車両用安全装置に関している。
【背景技術】
【0002】
今時の車両においては、多種多様なセンサ手段が用いられている。これらのセンサ手段は、一方では、例えば超音波センサなどを用いて実行されるような、周辺環境の対象の検出のために用いられており、また他方では、加速度センサを用いた比較的高い加速度値の検出による車両の衝突識別のために用いられている。
【0003】
さらにまた、車両におけるさらなるセンサ手段には、種々の環境パラメータを識別するためのセンサ系、例えば、降雨の識別、温度の測定、車両と走行路の間の静止摩擦の確定、固有速度の検出、周囲照度の測定などのためのセンサ系が含まれている。
【0004】
また今時の車両では超音波センサが専ら、例えば駐車支援の提供を始めとする快適性機能のためにだけ用いられているケースもある。このようなケースでは、超音波センサは、車両の直ぐ近くに存在している対象までの間隔距離とその距離変化を識別するために用いられている。
【0005】
そしてこの超音波信号を評価すれば、周辺対象までの距離感覚をドライバに容易に把握させることができ、それによって衝突、特に緩慢な速度での衝突が回避できるようになる。
【0006】
しかしながら将来的にはこれらの超音波センサをさらに多岐に亘って使用することが期待されている。なぜならそれらのコストが安いからである。そのため多くの車両において、これらの超音波センサは大量生産に向いている。これらの超音波センサは基本的には衝突の識別のために用いられているので、この種の超音波センサを目前に差し迫る衝突の識別に対しても用いることがより望ましい。パーセント的にみて事故の大半は、多くの超音波センサの測定範囲内に存する周囲対象物と車両との間の相対速度のもとで発生する。そのためこれらの超音波センサは、衝突識別のために用いることが可能である。
【0007】
しかしながら障害物への車両の衝突を識別することは、安全性に係わる極端な過程ともいえるものなので、それらの超音波センサから供給されるセンサ信号には非常に高い信頼性が求められる。
【0008】
しかしながら欠点として、超音波センサに何らかの作用を及ぼす周辺環境の影響が大きい場合には、今時の超音波センサシステムでは、誤った信号が供給されてしまうか、信号そのものが全く供給されない状態に陥ってしまう。例えば走行路に近い個所で使用されるセンサが雨や跳ね上げられた泥水によって汚れた場合には、誤った距離値が供給されたりあるいは距離値自体が全く供給されなくなる危険性が生じ得る。また温度が低い時には、このような雨や雪がこの種の超音波センサを頻繁に凍結させ、そのことがそれらのセンサから供給されるセンサ信号の信頼性に大きな制約を加えることになる。
【0009】
さらにこれらの超音波センサシステムのさらなる欠点として、超音波がその物理的な理由から伝播媒体を必要とすること、すなわち、車両の周辺に存在する空気を媒体として必要とすることが挙げられる。車両と障害物の間の相対速度識別のために用いられる超音波センサを用いた空気媒体の時間測定では、空気の動き、例えば、固有速度が高い場合でのセンサに対する風の影響量が重要な役割を担う。そのような理由からこれまでは、車両内に設けられた超音波センサを障害物に対する車両の衝突識別のために効率良く用いることが不可能であった。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許出願 DE 37 16 146 A1 明細書には、特に車両の低温にさらされる場所に取付けるための超音波センサが記載されている。
【0011】
前述したような不都合な凍結の欠点を解消するために、この明細書の超音波センサでは、例えば取付け場所の温度に合わせて制御することの可能なヒーター装置が設けられており、このヒーター装置によって、センサの凍結や雪の付着が避けられ、感度ないしは機能性に係わる悪い影響が回避されている。これによりこの公知の超音波センサは、凍結の危険にさらされる個所への取付けを可能にしている。
【0012】
しかしながら前述の公知文献に開示されている装置は、そのセンサシステムが、制御可能な付加的ヒーター装置によって極端に複雑な構成となり、コストも非常に高くなる欠点を有している。さらに前述した装置では、凍結に起因するセンサ信号の改竄だけにしか対応できない。つまり前述してきたその他の周辺環境影響量、例えば雨や泥によるセンサの汚れ、センサを取巻く媒体の固有速度の変動などに対しては切り換えができず、従って満足に対応することができない。
【0013】
その一方で例えばドイツ連邦共和国特許出願 DE 101 21 519 A1 明細書には、超音波センサに付着する可能性のある外的物質、例えば雪や泥などを検出することのできる超音波式障害物検知器が提案されている。
【0014】
この公知文献に記載された超音波式障害物検知器の場合には、雪や泥などの外的物質が、超音波センサに付着しているかどうかが、超音波センサからの電波の直接の監視に基づいて行われている。しかしながらこの文献に記載されている装置では、距離測定に対して直接電波を用いている超音波送信器の近傍にさらに付加的な超音波受信器を設けなければならない。
【0015】
それにより、この超音波センサ装置の構造は、不利な形態で複雑化し高価になる。その上さらに不都合なことに、ここで測定に用いられている超音波センサの他にもさらに別の受信器を設ける必要があるため、取付けサイズ自体も増大してしまう。
【0016】
特にこれらの公知文献に記載されている超音波式障害物検出器では、伝播媒体に関するセンサシステムの固有速度を把握することが不可能である。
【0017】
発明の利点
それ故に本発明の課題は、超音波センサ手段に基づいて、不都合な周辺環境の影響下であっても乗員拘束システムを高い信頼性のもとでトリガすることのできる車両用安全装置を提供することである。この場合は特に低速での衝突事故が確実に検出されることが望ましい。
【0018】
前記課題は請求項1の特徴部分に記載されている本発明による装置によって解決される。さらに前記課題は、請求項8の特徴部分に記載された本発明による方法によって解決される。
【0019】
本発明の別の有利な実施例は従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明の核心となる考察は、超音波センサが周辺環境の影響下でその機能性を損なっていないことが確実である場合にしか、超音波センサ手段から供給されるセンサ信号を先見的衝突識別に用いないことである。有利には制御装置において、第3のセンサ手段から提供される第3のセンサ信号に基づいて、超音波センサ手段から提供されたセンサ信号が適正であるかどうかが求められる。
【0021】
本発明の大きな利点は、前記第3のセンサ手段が、付加的に車両に設けられたものではなく、既に車両に設けられている既存のセンサ、例えば雨滴センサ、温度センサ、スリップセンサ、ビデオないし照度センサ、固有の速度ないし静止摩擦確定のためのシステムなどが第3のセンサ手段として用いられることである。
【0022】
それにより著しい経済的効果が得られる。なぜなら加速度センサ系によって検出可能な加速度の他に、さらなるセンサ系や超音波センサシステムの監視ユニットなどを設ける必要なしで、超音波信号が衝突識別に用いられるからである。
【0023】
従来の第1のセンサ手段(これは加速度センサとして強い制動や車両の衝突を識別するのに用いられる)との組み合わせによって、低い速度の場合の間隔距離を測定するのに適した超音波センサシステムを、衝突識別能力の向上、ないしはプリクラッシュセンサ系の支援のために用いることができる。本発明による方法のさらなる利点は、第3のセンサ手段から送出された第3のセンサ信号の評価によって制御装置が、超音波センサ手段から送出された超音波信号の周辺環境の影響による改竄を突き止めた場合に、障害物への車両衝突時の車両乗員を保護する乗員拘束システムを逆行レベルに切換え可能なことである。この逆行レベルないしは逆行ポジションにおいては、制御装置が、第1のセンサ手段、すなわち加速度センサとして構成されたセンサ手段のみに基づいて、そこから供給された第1のセンサ信号に基づきトリガの決定を実施する。
【0024】
特に有利には、車両用安全装置が、車両の衝突を検出するための第1のセンサ手段若しくは第1のセンサ信号送出のための第1のセンサ手段の他に、第1のセンサ手段に依存してトリガ信号を送出するための制御装置を有しており、さらに車両衝突の際に車両乗員を保護するための、第1のセンサ信号に依存してトリガされる乗員拘束システムを有している。
【0025】
車両近傍の障害物を検出するために及び第2のセンサ信号を送出するために設けられている第2のセンサ手段は、超音波センサとして有利な形態で構成されている。この超音波センサから送出される第2のセンサ信号は、次のような場合にしかトリガ決定には使用されない。すなわち第3のセンサ手段から供給された第3のセンサ信号によって、第2のセンサ手段ないし超音波センサに対する周辺環境の影響量が、確実なトリガ決定にはほとんど影響を及ぼしていないことが明らかな場合にしか用いられない。これにより超音波センサから送出される第2のセンサ信号が、有利な形式で第3のセンサ手段から送出された第3のセンサ信号の評価に従って制御装置において、乗員拘束システムの乗員拘束手段のトリガに関する決定のために用いられる。
【0026】
第1のセンサ手段によって検出された検出特性量が、一般的な加速度値に該当するのに対して、第2のセンサ手段ないしは超音波センサによって検出された第2の検出特性量は、実質的に車両を取り囲む対象に対する相対速度と距離に該当する。これらのデータの支援によって、衝突時点、衝突角度、対象の形態などを求めることが可能となる。
【0027】
第3のセンサ手段によって検出される第3の検出特性量は、実質的に環境の影響、例えば雨、気温、車両と道路の間の静止摩擦、周辺照度、車両の固有速度などである。
【0028】
有利には乗員拘束システムは、複数の乗員拘束手段、例えばドライバ側エアバック、助手席側エアバック、膝用エアバック、ウインドウエアバック、ベルトプリテンショナー、シートアクチュエータ、ロールオーバーバーなどを有し得る。
【0029】
前記第1及び第2及び第3のセンサ手段(これらは例えば加速度センサ、超音波センサ、環境センサとして構成されている)は、従来方式で車両内に含まれているセンサシステムを提供する。
【0030】
環境の影響を検出するのに提供される第3のセンサ手段は、少なくとも1つの雨滴センサ、温度センサ、静止摩擦検出センサ、ビデオセンサ、照度センサ、固有速度検出センサなどを含み得る。
【0031】
有利な形式で、第3のセンサ手段から送出された第3のセンサ信号の評価が制御装置においてプロセッサユニットを用いて実施される。この場合プロセッサユニット内では有利には、ハードウエア若しくはソフトウエアの形式で提供される評価アルゴリズムが実行される。
【0032】
特に有利には、この評価アルゴリズムが、第3のセンサ手段から送出された第3のセンサ信号の評価のために埋め込まれて提供される。
【0033】
プロセッサユニットでは、有利には、静止摩擦検出センサ若しくはその他の摩擦抵抗を確定するためのシステムから供給される信号を用いて、第2のセンサ手段ないしは超音波センサ手段の汚れ及び/又は凍結の懸念の有無が確定され得る。
【0034】
図面
図面には本発明の実施例が示されており、これらの実施例は以下の明細書で詳細に説明する。この場合、
図1は、車両内の乗員拘束システムを、センサシステムから供給される複数のセンサ信号に依存して制御している制御装置を備えた車両用安全装置のブロック回路図である。なお、図面中同じ構成要素ないしは機能の同じ構成要素もしくは方法ステップには、同じ参照符号が付されている。
【0035】
実施例の説明
図1には、本発明の有利な実施例による概略的なブロック回路図が示されている。この図1中に示されている車両用安全装置は実質的に、センサシステム100と、制御装置501と、乗員拘束システム700からなっている。センサシステム100は、第1のセンサ手段101と、第2のセンサ手段201と、第3のセンサ手段301〜305によって形成されている。車両内に通常のように存在しているこれらの第1、第2、第3のセンサ手段は、ここにおいて、それらの周辺環境から種々異なる検出特性量、すなわち第1の検出両801と、第2の検出特性量802と、第3の検出特性量803〜807をピックアップしている。第1のセンサ手段、第2のセンサ手段及び第3のセンサ手段から送出されたセンサ信号は、制御装置501に供給される。この制御装置501は、乗員拘束システム700に接続されている。この乗員拘束システム700は、車両内に存在する車両乗員を車両の障害物への衝突の際に、負傷から未然に守るために、様々な乗員拘束手段701〜707を有している。
【0036】
例えばこの乗員拘束システムは、次のような構成であり得る。但しこれはあくまでも一例であって排他的にという意味ではないことを先に述べておく。すなわちこの乗員拘束システム700は、例えば運転席側エアバッグとして構成されている乗員拘束手段701と、助手席側エアバックとして構成されている乗員拘束手段702と、膝用エアバックとして構成されている乗員拘束手段703と、ウインドウエアバックとして構成されている乗員拘束手段704と、1つ若しくはそれ以上のベルトプリテンショナーとして構成されている乗員拘束手段705と、座席用アクチュエータの形態で提供されている乗員拘束手段706と、ロールオーバーバーとして構成されている乗員拘束手段707とを有している。これらの乗員拘束手段は、制御装置501から供給される相応のトリガ信号601,602,603,604,605,606,607によって、識別された障害物への車両衝突強度に応じてトリガされる。
【0037】
従来の車両用安全装置の場合には、第1のセンサ手段101から供給される第1のセンサ信号102だけが制御装置501におけるトリガ決定のために用いられていたのに対して、本発明の有利な実施形態では、さらなる複数のセンサ信号、詳細には第2のセンサ信号202と、第3のセンサ信号401,402,403,404,405が提供される。それらのセンサ信号はそれぞれ第2のセンサ手段201と第3のセンサ手段301,302,303,304,305から供給されるものである。
【0038】
ここでは第1のセンサ手段101から提供される第1のセンサ信号102が、実質的に乗員拘束システムのトリガのために必要な信号であることを述べておく。なぜなら第1のセンサ手段101は、従来のクラッシュセンサ系、例えば加速度センサ系であるからである。
【0039】
それにより、第1のセンサ手段101から送出される第1のセンサ信号102は、車両の加速度値を供給する。図1中に示されている車両用安全装置においては、制御装置501がプロセッサユニット502を有している。このプロセッサユニット502内では、評価アルゴリズム503が実行される。この評価アルゴリズム503は次のように構成されている。すなわち信頼性の高いトリガ決定がなされるように、種々異なる第1、第2及び第3のセンサ信号102,202及び401〜405が処理されるように構成されている。そしてこのトリガ決定は、トリガ信号601,602,603,604,605,606,607の形態で乗員拘束システム700に転送される。それに対して乗員拘束手段701,702,703,704,705,706,707が相応にトリガされる。この評価アルゴリズム503は、有利にはプロセッサユニット502内に埋め込まれて提供されてもよい。
【0040】
以下ではセンサシステム100と、このセンサシステム100から供給される第1のセンサ信号102と第2のセンサ信号202及び第3のセンサ信号401,402,403,404,405を詳細に説明する。第1のセンサ手段101は、第1の検出特性量801を検出する。これは通常は加速度値である。それにより、第1のセンサ手段101は、加速度センサとして提供される。それに対して第1のセンサ信号102が制御装置501に転送される。第2の検出特性量802としては、車両と車両の周辺環境ないしは障害物に関する間隔距離ないし相対速度の値が提供される。
【0041】
第2のセンサ手段201は、本発明の有利な実施例によれば、超音波センサシステムの超音波センサ手段として構成される。この第2のセンサ手段201から送出された第2のセンサ信号202も同様にさらなる処理のために制御装置501に供給される。第3のセンサ手段301,302,303,304,305は、環境特性量を検出するためのセンサ手段である。それにより、これらの第3のセンサ手段301〜305から送出された第3のセンサ信号401,402,403,404,405は、車両の周辺環境の影響量に関する情報を提供する(特に第1及び第2のセンサ手段に対しても)。第2のセンサ手段201は、前述したように周辺環境の影響量に対して感応する超音波センサ手段であるので、第3のセンサ信号401〜405は特に次のことに用いられる。すなわち第2のセンサ手段201の機能性を監視するのに用いられる。第3のセンサ手段から送出される第3のセンサ信号401〜405も同様に制御装置501に供給され、そこで後続処理される。
【0042】
以下では第3のセンサ手段301〜305を詳細に説明する。ここではこれらの第3のセンサ手段301〜305が通常の車両内に設けられているセンサ手段であることを述べておく。本発明の実施例によれば、この第3のセンサ手段は、周辺環境の影響に関する情報、例えば雨、温度、静止摩擦、周辺環境照度、車両固有速度などを提供している。しかしながら本発明はこの種の周辺環境特性量ないしパラメータに限定されるものではなく、本願の従属請求項にも記載されているようにその他の多岐のパラメータに亘って拡張が可能である。
【0043】
図1に概略的に示されている第3のセンサ手段301は、例えば雨滴センサとして構成されている。このセンサは周辺環境の湿度や湿り具合を検出する。この第3のセンサ手段301から送出される第3のセンサ信号401を用いることによって、制御装置501は、第2のセンサ手段、すなわち超音波センサの汚れや濡れが生じ得る危険性を表示する。この場合評価アルゴリズム503は、第2のセンサ手段201が例えば湿度及び/又は汚れに基づいてその機能性に支障が生じているかどうかを決定する。同じような形式で、第3のセンサ手段302によって把握された検出特性量804が次のことにも用いられる。すなわち制御装置501のための温度情報を提供することである。
【0044】
第3のセンサ手段303は、例えば静止摩擦センサとして構成されている。ここでは別々のセンサの代わりに、従来のESP及び/又はABS及び/又はASRシステムなどにおいて得られるような評価も用いることが可能である。以下では、この“静止摩擦センサ”の概念として、別個のセンサ系のみならず静止摩擦を確定するためのシステムの場合も含んでいるものとする。従って第3のセンサ手段303を用いて検出可能な検出特性量805は、車両と走行路の間の静止摩擦に該当するものである。この静止摩擦データからは、可能性として生じ得る凍結した走行路面、雪で覆われた若しくは水で濡れた走行路面が推定でき、さらにそれによって生じ得るセンサの汚れや凍結が評価される。このことは第2のセンサ手段201が例えば雪によって覆われている状態に結び付けることができる。
【0045】
第3のセンサ手段304によって提供される第3のセンサ信号404との組み合わせにおいて、検出特性量806を周辺環境照度の形態で、及び/又はビデオ信号の形態で提供することが可能である。その場合には、特に走行路が雪の層で覆われていることが照度センサ若しくはビデオセンサ304を介して有利な形式で把握される。
【0046】
この第3のセンサ手段304によって把握された走行路上の雪の層は、第2のセンサ手段201への雪の付着及び/又は凍結が推定でき、さらに可能性として生じ得る第2のセンサ手段201の機能に係わる何らかの支障を推定することもできる。本発明による例示的なブロック図においては、第3のセンサ手段305が固有速度センサとして構成されている。このセンサは、走行路に関する車両の固有速度に係わる相応の第3のセンサ信号405を制御装置501に供給している。
【0047】
第3のセンサ手段305によって検出された検出特性量807は、車両の固有速度に該当しており、さらに超音波センサとして構成されたセンサ手段201の超音波伝播媒体、すなわち周辺の空気に関する流れないし動きの静止ポイントを提供する。この場合車両と超音波伝播媒体の間の相対速度が超音波センサないしは第2のセンサ手段201の機能性に対する大きな影響力を有している。第3のセンサ手段301〜305から供給される第3のセンサ信号401〜405の評価によって、制御装置501内においては次のことが可能となる。すなわち、第2のセンサ手段201から供給される第2のセンサ信号202に基づいても、信頼性の高いトリガ決定が実現可能なことである。それにより特に超音波センサ手段を予見的な安全性重視の適用範囲に、例えば乗員拘束システムに含まれているエアバック、発火装置付きベルトプリテンショナー、可逆的ベルトプリテンショナー、車両衝突時に座席位置を改善するシート調整機構などに対しても用いることが可能となる。
【0048】
第2のセンサ手段201の機能性を損なわせるおそれのある、例えば雪、氷、雨、強風などの周辺環境の影響は、第3のセンサ手段301〜305によって確実に識別される。制御装置501は、全ての乗員拘束システム700の乗員拘束手段701〜707のトリガ決定の中に許容できないパラメータが関与することを避けるために、これらの周辺環境の影響を通知する。第2のセンサ手段201が、周辺環境条件に基づいて不十分な情報しか供給できない第2のセンサ信号202、若しくは全く情報を供給できない第2のセンサ信号202を供給している場合には、制御装置501が逆行レベルへ切り替えられる。
【0049】
この逆行レベルでは、第3のセンサ手段301〜305から送出される第3のセンサ信号401〜405の制御装置501内での評価によって、第2のセンサ手段201から送出された第2のセンサ信号202が周辺環境の影響によって改竄されていることが判明すると、制御システムが抑制される。第2のセンサ信号202が、車両衝突に関する情報を何も含まないか若しくは誤った情報しか含んでいない時には(この場合このことは第3のセンサ信号401〜405によって識別される)、トリガ決定が、第2のセンサ手段201から供給される第2のセンサ信号202の参照なしで、加速度センサとして構成されている第1のセンサ手段101に基づいてなされるか、若しくは第1のセンサ手段101から供給される第1のセンサ信号102に基づいてなされる。それにより乗員拘束システム700の乗員拘束手段701〜707は、乗員拘束システムが逆行レベルへ切り替えられている場合には、第1のセンサ手段101を用いて検出された車両衝突識別のための第1の検出特性量801だけに基づいてトリガされる。
【0050】
それにより、本発明による車両用安全装置と、障害物への車両衝突時の車両用安全装置の活動化方法の大きな利点は、例えば、氷、雪、雨、逆風などの周辺環境の影響量が、第2のセンサ手段201として構成された超音波センサの信号の評価(重み付け)のために検出可能なことであり、さらに制御装置501には、誤ったセンサ情報か若しくはセンサ情報が皆無の状態によってトリガ決定が改竄されてしまうことを防ぐようにすることが伝達されることである。
【0051】
特に有利には、周辺環境影響量が、様々な第3のセンサ手段301〜305の組み合わせと、これらの相応の第3のセンサ信号401〜405によって検出可能である。有利には、センサシステム100は、少なくとも1つの加速度センサ、すなわち、クラッシュセンサ101,例えば乗員拘束手段の制御装置内に存在する加速度センサなどを有している。
【0052】
さらにセンサシステム100は、先見的なクラッシュセンシングのための少なくとも1つの若しくはそれ以上の超音波センサ手段201と、周辺環境影響量を検出するための少なくとも1つのさらなる第3のセンサ手段301〜305を有している。これらの第3のセンサ手段は、少なくとも1つのレインセンサ301と、温度センサ302と、静止摩擦検出センサ303と、ビデオセンサないし照度センサ304と、固有速度検出センサ305を含んでいる。別個の静止摩擦検出センサ303が提供されない場合には、静止摩擦に関する情報は、例えば車両内に存在する既存のABSシステムやASRシステムないしESPシステムからも得ることが可能である。
【0053】
第3のセンサ手段301〜305から供給された情報の全体は、別個の制御装置501又は乗員拘束システム700の制御機器(図示せず)において、超音波センサ手段、すなわち第2のセンサ手段201から提供される第2のセンサ信号の適正評価ができるように関連付けられる。
【0054】
車両用安全装置内に設けられている制御装置501は、少なくとも1つのプロセッサユニット502を有しており、このプロセッサユニット502上では評価アルゴリズム503が実行される。この評価アルゴリズム503は、専ら乗員拘束システム700内に設けられている種々異なる乗員拘束手段701〜707のトリガ実行ないしはトリガ非実行に関する決定を下す。
【0055】
有利には、第3のセンサ手段301〜305から供給される第3のセンサ信号401〜405の評価によって、超音波センサ手段ないし第2のセンサ手段201が、先見的車両衝突に関する情報を何も供給しないか又は誤った情報を供給することがわかった場合には、乗員拘束手段701〜707に関するトリガ決定を実施するための評価アルゴリズム501が逆行レベルに切換え可能である。
【0056】
この逆行レベルにおいては、乗員拘束手段701〜707に関するトリガ決定が、第2のセンサ手段201から供給された第2のセンサ信号202の付加なしで行われる。
【0057】
乗員拘束システム700内に配設されている乗員拘束手段701〜707は、1人または複数の車両乗員を衝突の前若しくは衝突の間に最適なシートポジションにもたらすことのできる、ないしは車両乗員を最適な着座位置へ保持することのできる、車両内のそれぞれのシステムに該当している。この種の乗員拘束手段は、例えば発火装置若しくは電気的に駆動可能なベルトプリテンショナーやエアバック、ロールオーバーバー、シートアクチュエータなどであり得る。
【0058】
本発明は、これまでにいくつかの有利な実施例に基づいて説明してきたが、しかしながらこのことはそれらの実施形態への限定を意味するものではない。それどころか本発明は多種多様な形式での変更が可能である。
【0059】
また本発明は前述してきた適用例に限定されるものでもないことを述べておく。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】車両内の乗員拘束システムを、センサシステムから供給される複数のセンサ信号に依存して制御している制御装置を備えた車両用安全装置のブロック回路図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物への車両の衝突の際に活動化される車両用安全装置であって、
a)車両の衝突を検出して第1のセンサ信号(102)を送出するための第1のセンサ手段(101)と、
b)前記第1のセンサ信号(102)に依存してトリガ信号(601,602,603,604,605,606,607)を送出するための制御装置(501)と、
c)前記第1のセンサ信号(102)に依存してトリガされかつ車両衝突時に車両の乗員を保護するための乗員拘束システム(700)を有している形式の装置において、
d)車両近傍の障害物を検出し、第2のセンサ信号(202)を送出するための第2のセンサ手段(201)と、
e)前記第2のセンサ手段(201)に対する周辺環境影響量を検出し、周辺環境影響量に依存して第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)を送出するための第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)をさらに有しており、
前記第2のセンサ手段(201)から送出される第2のセンサ信号(202)が、制御装置(501)において、第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出された第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)の評価の後で、乗員拘束システム(700)のトリガに関する決定のために用いられるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1のセンサ普段(101)は、加速度センサとして構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第2のセンサ手段(201)は、超音波センサとして構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記乗員拘束システム(700)は、複数の乗員拘束手段(701,702,703,704,705,706,707)を有している、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記乗員拘束手段(701,702,703,704,705,706,707)は、運転席側エアバック(701)と、助手席側エアバック(702)と、膝用エアバック(703)と、ウインドウエアバック(704)と、ベルトプリテンショナー(705)と、シート用アクチュエータ(706)と、ロールオーバーバー(707)のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記第1のセンサ手段(101)と、第2のセンサ手段(201)と、第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)は、1つのセンサシステム(100)を構成している、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)は、少なくとも1つのレインセンサ(301)と、温度センサ(302)と、静止摩擦検出センサ又は静止摩擦確定のためのさらなるシステム(303)と、ビデオセンサ(304)と、固有速度検出センサ(305)のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1または6記載の装置。
【請求項8】
障害物への車両の衝突の際に車両用安全装置を活動化させるための方法であって、
a)障害物への車両の衝突を識別するために第1のセンサ手段(101)を用いて第1の検出特性量(801)を検出し、当該第1のセンサ手段(101)から第1のセンサ信号(102)を送出するするステップと
b)制御装置(501)を用いて前記第1のセンサ信号(102)に依存してトリガ信号(601,602,603,604,605,606,607)を確定するステップと、
c)障害物への車両衝突時に車両の乗員を保護するために前記第1のセンサ信号(102)に依存して乗員拘束システム(700)をトリガするステップを有している形式の方法において、
d)障害物への車両衝突を識別するために第2のセンサ手段(201)を用いて第2の検出特性量(802)を検出し、第2のセンサ手段(201)から第2のセンサ信号(202)を送出するステップと、
e)前記第2のセンサ手段(201)に対する周辺環境影響量を識別するために第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)を用いて第3の検出特性量(803,804,805,806,807)を検出し、周辺環境影響量に依存して前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)を送出するステップをさらに有し、
前記第2のセンサ手段(201)から送出される第2のセンサ信号(202)が、制御装置(501)において、第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出された第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)の評価の後で、乗員拘束システム(700)のトリガに関する決定のために用いるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記制御装置(501)において、プロセッサユニット(502)を用いることにより、第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出された第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)の評価が実施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記プロセッサユニット(502)において、評価アルゴリズム(503)を用いることにより、第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出された第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)の評価が実施される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出された第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)を評価するための評価アルゴリズム(503)は、プロセッサユニット(502)内に埋込まれて提供される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)は、少なくとも1つのビデオセンサないし照度センサを有しており、該センサを用いて周辺照度が検出される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)は、少なくとも1つの温度センサ(302)と少なくとも1つのレインセンサ(301)を有しており、該センサを用いて周辺環境影響量が検出される、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)は、少なくとも1つの別個の静止摩擦検出センサか又は、車両内の既存の他の信号から静止摩擦を求めるための少なくとも1つのさらなるシステム(303)を有しており、該センサ若しくはシステムを用いて車両と走行路の間の静止摩擦が確定される、請求項8記載の方法。
【請求項15】
静止摩擦を求めるための少なくとも1つのさらなるシステム(303)かまたは少なくとも1つの静止摩擦センサ(303)を用いて確定される、車両と走行路の間の静止摩擦が、第2のセンサ手段(201)の汚れ及び/又は凍結の確定のために用いられる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
制御装置(501)において、前記第3のセンサ手段(301,302,303,304,305)から送出される第3のセンサ信号(401,402,403,404,405)の評価によって、第2のセンサ手段(201)から送出された第2のセンサ信号(202)が周辺環境影響量によって改竄されていることが識別された場合に、乗員拘束システム(700)が逆行レベルに切り替えられる、請求項8記載の方法。
【請求項17】
前記乗員拘束システム(700)の乗員拘束手段(701,702,703,704,705,706,707)は、乗員拘束システム制御装置(501)が逆行レベルに切り替えられている場合に、第2のセンサ手段(201)から供給されるセンサ信号(202)の参照なしで、第1のセンサ手段(101)を用いて検出された第1の検出特性量(801)に基づいて、障害物への車両の衝突を識別するためにトリガされる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第2のセンサ手段(201)から送出される第2のセンサ信号(202)を用いて車両と障害物の間の相対速度、間隔距離、衝突角度、衝突時点、対象の形態が求められる、請求項8記載の方法。
【請求項19】
乗員拘束システム(700)のトリガに関する決定が、プロセッサユニット(502)内で実行される評価アルゴリズム(503)を用いて実施される、請求項10記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506603(P2007−506603A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517957(P2006−517957)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001475
【国際公開番号】WO2005/007459
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】