説明

周長測定装置及び周長測定方法

【課題】 ローラ等に撓みが生じてもその撓みに影響されずに良好な測定精度を得られるようにした周長測定装置及び周長測定方法を提供する。
【解決手段】 周長測定装置(10)は、一方が駆動側となり他方が従動側となる一対のローラ(14、15)、前記駆動側ローラと従動側ローラとにリング状ワークを掛け渡した状態で前記駆動側ローラと従動側ローラとの間の対向距離を拡大して前記リング状ワークに所定の張力を付与する張力付与手段(27)、前記張力の付与方向への前記駆動側ローラの変位を検出する第1検出手段(18)、前記張力の付与方向への前記従動側ローラの変位を検出する第2検出手段(19)、前記第1及び第2検出手段の検出結果に基づいて前記リング状ワークの周長を演算する演算手段(22)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、無段変速機(CVT)のベルト(以下、CVTベルト)に組み込まれている薄板状の金属リングの如きリング状ワークの周長を測定する周長測定装置及び周長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CVTベルトは、厚さ0.2mm程度の薄い金属リングを多数枚重ねたものに、スチール製のエレメントを連続して嵌め込んで一体化したものである(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
図4は、CVTベルトの外観図である。この図において、CVTベルト1は、多数枚(たとえば、12枚程度)の金属リング2aを積み重ねた二連のベルト積層体2に、多数個(たとえば、400個程度)のスチール製のエレメント3aからなるエレメント積層体3を担持させて組み立てられ、アセンブリ化されている。
【0004】
各々の金属リング2aの周長(リング一周の長さ)は、積層内周側から外周側(またはその逆)にかけて所定の周長差が付くように高精度に設定されていなければならない。これは、隣接する金属リング2aの接触面間に均一な微小間隙(オイル潤滑用の隙間)を確保する必要があることに加え、特定の金属ベルト2aに応力が集中しないようにするため、つまり、二連のベルト積層体2の全体で大きな張力を引き受けるようにするための要求である。
【0005】
このような金属リングの周長を測定する従来技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術は、モータによって駆動される駆動側ローラと、回転フリーで且つ前記駆動側ローラとの相対的な離隔距離が自在に変化する従動側ローラと、前記従動側ローラに荷重をかけて前記駆動側ローラと従動側ローラとの対向距離を拡大方向に変化させることにより、それらの両ローラに掛け渡されたリング状ワーク(上記の金属リング2aに相当)に張力を与える張力付与手段と、前記従動側ローラの変位を検出する測定手段とを備える。
【0006】
【非特許文献1】宮地知巳著“理想の変速機CVTの性能を最大限に引き出す”、[online]、[平成14年8月25日検索]、インターネット<URL:http://www.idemitsu.co.jp/lube/cvt/cvtbody2.html>
【特許文献1】特開平11−281342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術にあっては、以下に説明するように、周長測定の精度が不十分であり、改善すべき余地がある。
【0008】
図5(a)は、従来技術の概念図である。この図に示すように、従来技術では、駆動側ローラ4と従動側ローラ5とにリング状ワーク6を掛け渡し、従動側ローラ5に荷重7をかけてリング状ワーク6に張力を与えた状態で、駆動側ローラ4を動かしてリング状ワーク6を周回移動させながら、従動側ローラ5の変位を測定手段8で検出し、その変位量からリング状ワーク6の周長を測定する。
【0009】
ここで、荷重7の大きさ(質量W)は、リング状ワーク6の厚みや幅及び素材等によって一概には言えないが、リング状ワーク6を便宜的に前記のCVTベルト1の金属ベルト2aとすれば、例えば、30Kgf程度といったかなりの重さになる。荷重7の役割は、従動側ローラ5を、その質量Wで重力方向(下方)に引っ張って位置を変えることにより、リング状ワーク6にあらかじめ定められた適切な張力を付与することにある。
【0010】
図5(b)は、張力付与時の概念図である。この図に示すように、質量Wを従動側ローラ5のシャフト5aに加えると、リング状ワーク6が掛け渡された駆動側ローラ4と従動側ローラ5の双方に矢印A、Bで示す方向の力Pa、Pbが作用する。さて、駆動側ローラ4とそのシャフト4a及び従動側ローラ5とそのシャフト5aは、金属等によって成形された剛体部材である。このため、かかる力Pa、Pbが加えられてたとしても大きな変形は生じないと考えられていたが、本件発明者等の検証によれば、実際には、上記の力Pa、Pbによって駆動側ローラ4と従動側ローラ5の双方に矢印A、B方向の微小な撓み(図中の破線参照)が生じ、その撓みに伴い、周長測定に誤差を生じていることが判明した。しかも、その撓みの大きさは常に一定ではなく、例えば、熱の影響や周長測定の時間の経過に伴って微妙に変動することも判明した。
【0011】
そこで、本発明は、ローラやシャフトなどに撓みが生じてもその撓みに影響されずに良好な測定精度を得られるようにした周長測定装置及び周長測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、一方が駆動側となり他方が従動側となる一対のローラ(駆動側ローラ及び従動側ローラ)と、前記駆動側ローラと従動側ローラとにリング状ワークを掛け渡した状態で前記駆動側ローラと従動側ローラとの間の対向距離を拡大して前記リング状ワークに所定の張力を付与する張力付与手段と、前記張力の付与方向への前記駆動側ローラの変位を検出する第1検出手段と、前記張力の付与方向への前記従動側ローラの変位を検出する第2検出手段と、前記第1及び第2検出手段の検出結果に基づいて前記リング状ワークの周長を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする周長測定装置である。
請求項2記載の発明は、前記周長演算手段は、前記駆動側ローラの半外周長をA、前記従動側ローラの半外周長をB、前記駆動側ローラと従動側ローラの軸芯間距離をCとしたとき、前記第1及び第2検出手段の検出結果からCを求め、且つ、前記リング状ワークの周長Lを、式「L=A+B+2C」に従って求めることを特徴とする請求項1記載の周長測定装置である。
請求項3記載の発明は、一方が駆動側となり他方が従動側となる一対のローラ(駆動側ローラ及び従動側ローラ)にリング状ワークを掛け渡した状態で前記駆動側ローラと従動側ローラとの間の対向距離を拡大して前記リング状ワークに所定の張力を付与する張力付与工程と、前記張力の付与方向への前記駆動側ローラの変位を検出する第1検出工程と、前記張力の付与方向への前記従動側ローラの変位を検出する第2検出工程と、前記第1及び第2検出工程の検出結果に基づいて前記リング状ワークの周長を演算する演算工程とを含むことを特徴とする周長測定方法である。
請求項4記載の発明は、前記周長演算工程は、前記駆動側ローラの半外周長をA、前記従動側ローラの半外周長をB、前記駆動側ローラと従動側ローラの軸芯間距離をCとしたとき、前記第1及び第2検出手段の検出結果からCを求め、且つ、前記リング状ワークの周長Lを、式「L=A+B+2C」に従って求めることを特徴とする請求項3記載の周長測定方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、2つの検出手段、すなわち、リング状ワークの張力の付与方向への駆動側ローラの変位を検出する第1検出手段と、同張力の付与方向への従動側ローラの変位を検出する第2検出手段の各々の検出結果に基づいてリング状ワークの周長が測定される。
ここで、前記の張力付与に伴う撓みが駆動側プーリや従動側プーリに生じていた場合、その撓みは、駆動側プーリや従動側プーリの変位の一部として前記2つの検出手段で検出される。
したがって、本発明によれば、駆動側プーリや従動側プーリの撓みを包含する、2つの検出手段の検出結果に基づいてリング状ワークの周長を測定するので、撓みの大小にかかわらず、正確な周長測定を行うことができ、測定精度の向上を図ることができる。
また、リング状ワークの周長Lを、式「L=A+B+2C」に従って求めるようにすれば、仮に駆動側ローラと従動側ローラのいずれか一方または双方に撓みが生じていたとしても、その撓みは駆動側ローラと従動側ローラの軸芯間距離Cに含まれるから、撓みの大小にかかわらず、正確な周長測定を行うことができ、測定精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における様々な細部の特定ないし実例および数値や文字列その他の記号の例示は、本発明の思想を明瞭にするための、あくまでも参考であって、それらのすべてまたは一部によって本発明の思想が限定されないことは明らかである。また、周知の手法、周知の手順、周知のアーキテクチャおよび周知の回路構成等(以下「周知事項」)についてはその細部にわたる説明を避けるが、これも説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0015】
図1は、実施形態における周長測定装置の外観図である。この図において、周長測定装置10は、床面等に載置されるベース11の上に固定された立方体状の筐体12の一側面(図では裏面)に動力源としてのモータ13を取り付けるとともに、筐体12の一側面の対向面に、そのモータ13によって回転駆動される駆動側ローラ14と、その駆動側ローラ14に対して昇降自在な従動側ローラ15とが取り付けられている。
【0016】
駆動側ローラ14のシャフト14aと従動側ローラ15のシャフト15aは、それぞれ円筒状のハウジング16、17を介して回転自在に筐体12に支持されている。ただし、駆動側ローラ14のシャフト14aを支持する図中上方のハウジング16(以下、駆動側ハウジング16という)が筐体12に堅固に取り付けられており、その位置が変化しないのに対して、従動側ローラ15のシャフト15aを支持する図中下方のハウジング17(以下、従動側ハウジング17という)は、駆動側ハウジング16に対する離隔距離が自在に変化するように筐体12に取り付けられている点で相違し、これによって、上記のとおり、駆動側ローラ14に対する従動側ローラ15の昇降自在性を確保している。
【0017】
駆動側ハウジング16の外周面上の所定位置には、第一のリニアゲージ18の測定子18aが当接しており、さらに、従動側ハウジング17の外周面上の所定位置にも、第二のリニアゲージ19の測定子19aが当接している。
【0018】
ここで、第一のリニアゲージ18及び第二のリニアゲージ19のそれぞれの測定子18a、19aの当接位置は、次のとおりである。
【0019】
今、図示のように、駆動側ローラ14と従動側ローラ15にリング状ワーク20(例えば、冒頭で説明した金属リング2a)を掛け渡し、従動側ローラ15に荷重27(図2参照)をかけてリング状ワーク20に所要の張力を付与した場合、その張力の方向は、駆動側ローラ14と従動側ローラ15の各々の回転中心を通る直線21に沿った方向となる。
【0020】
第一のリニアゲージ18の測定子18aの当接位置は、駆動側ハウジング16の外周面上の直線21と交差する上下二つの位置のうち従動側ハウジング17から遠い方の位置、つまり、駆動側ハウジング16の外周面上の上部位置16aである。また、第二のリニアゲージ19の測定子19aの当接位置は、従動側ハウジング17の外周面上の直線21と交差する上下二つの位置のうち駆動側ハウジング16から遠い方の位置、つまり、従動側ハウジング17の外周面上の下部位置17aである。
【0021】
第一のリニアゲージ18は、駆動側ハウジング16の変位、詳細には、駆動側ハウジング16の直線21方向の変位を検出し、第二のリニアゲージ19は、従動側ハウジング17の変位、詳細には、従動側ハウジング17の直線21方向の変位を検出し、いずれも、その検出結果を周長測定部22に出力する。周長測定部22は、第一のリニアゲージ18及び第二のリニアゲージ19の検出結果に基づいて、リング状ワーク20の周長を測定し、その測定結果を、例えば、数値やグラフまたはその他の態様で表示するために不図示の表示部に出力する。
【0022】
なお、第一のリニアゲージ18及び第二のリニアゲージ19は、筐体12から延びるアーム23の先端に取り付けられている。
【0023】
図2は、周長測定装置の要部断面図である。この図において、モータ13によって回転駆動される駆動側ローラ14のシャフト14aは、ベアリング24等を介して駆動側ハウジング16に回転自在に支持されており、この駆動側ハウジング16は、筐体12に堅固に取り付けられている。一方、従動側ローラ15のシャフト15aも、ベアリング25等を介して従動側ハウジング17に回転自在に支持されているが、この従動側ハウジング17は、筐体12に形成された上下方向のガイド溝12a、12bに沿って上下に移動可能なように取り付けられている。このため、従動側ハウジング17に支持されたシャフト15aの先端の従動側ローラ15が、その位置を上下に変更できるようになっており、したがって、位置固定の駆動側ローラ14に対して従動側ローラ15の位置が自在に上下するので、駆動側ローラ14と従動側ローラ15との間の離隔距離が自由に変更されるようになっている。
【0024】
従動側ハウジング17には、模式的に示す接続部材26を介して質量Wの荷重27がつり下げられており、従動側ハウジング17は、この質量Wを受けて、ガイド溝12a、12bに沿って重力方向に垂下するようになっている。このため、駆動側ローラ14と従動側ローラ15に掛け渡されたリング状ワーク20に対して、質量Wに対応した大きさの張力が付与されるようになっている。
【0025】
さて、このような構造を有する本実施形態の周長測定装置10においても、冒頭で説明した従来技術と同様に、リング状ワーク20に張力を付与した際に、駆動側ローラ14と従動側ローラ14に微小ではあるが撓みが生じる。
【0026】
図3は、撓みの概念図である。この図に示すように、駆動側ローラ14と従動側ローラ15にリング状ワーク20を掛け渡した状態で、従動側ローラ15の側に質量Wを加えると、図中の矢印28、29に示すような力Pa、Pbが駆動側ローラ14と従動側ローラ15に作用する。これにより、駆動側ローラ14と従動側ローラ15は、互いに接近する方向に首を振りながら撓む(破線参照;ただし、図では誇張して描いている)。
【0027】
こうした撓みは、例えば、駆動側ローラ14と従動側ローラ15、それらのシャフト14a、15a、及び、それらのハウジング(駆動側ハウジング16、従動側ハウジング17)の強度を高め、且つ、それらのサイズを大きくし、しかも、各々の部材間の遊びを少なくするなどの対策を講じることによって、ある程度減少させることは可能であるが、完全に撓みをなくすことは、コスト面等から現実的に不可能である。
【0028】
なお、図3では、第一のリニアセンサ18の接触子18aを駆動側ローラ14に掛け渡されたリング状ワーク20の表面に当接させており、同様に、第二のリニアセンサ19の接触子19aを従動側ローラ15に掛け渡されたリング状ワーク20の表面に当接させているが、これは、図示の都合である。実際には、前記の説明のとおり、第一のリニアセンサ18の接触子18aは、駆動側ハウジング16の外周面上の上部位置16aに当接し、第二のリニアセンサ19の接触子19aは、従動側ハウジング17の外周面上の下部位置17aに当接している。
【0029】
以下、第一のリニアセンサ18及び第二のリニアセンサ19の各々の接触子18a、19aは、図示のとおり、駆動側ローラ14と従動側ローラ15に掛け渡されたリング状ワーク20の表面に当接しているものとして説明を進める。
【0030】
本実施形態のポイントは、従来1個しか備えられていなかったリニアセンサ(図5の測定手段8参照)を2個(第一のリニアセンサ18と第二のリニアセンサ19)備えるようにし、且つ、それらの2個のリニアセンサからの検出信号に基づいて、上記の撓みに影響されることなく、リング状ワーク20の周長測定の精度向上を図ることにある。
【0031】
このことについて詳しく説明する。第一のリニアセンサ18の検出結果Δaは、駆動側ローラ14の現在位置を示し、第二のリニアセンサ19の検出結果Δbは、従動側ローラ15の現在位置を示すが、駆動側ローラ14と従動側ローラ15に掛け渡されたリング状ワーク20に張力を付与すると、従動側ローラ15が下方に移動し、その移動量が第二のリニアセンサ19の検出結果Δbで示される。リング状ワーク20の周長Lは、温度補償等の補正値を無視すれば、次式(1)で与えられる。
【0032】
L=A+B+2C ・・・・(1)
【0033】
ここで、Aは駆動側ローラ14の半外周長、Bは従動側ローラ15の半外周長、Cは駆動側ローラ14と従動側ローラ15の軸芯間距離である。
【0034】
第一のリニアセンサ18の接触子18aの当接位置から駆動側ローラ14の軸芯までの距離は駆動側ローラ14の半径Daで与えられ、第二のリニアセンサ19の接触子19aの当接位置から従動側ローラ15の軸芯までの距離は従動側ローラ15の半径Dbで与えられる。
【0035】
周長測定部22は、駆動側ローラ14の半外周長Aと従動側ローラ15の半外周長B及び駆動側ローラ14の半径Daと従動側ローラ15の半径Dbをそれぞれ定数として保持する。そして、第一のリニアセンサ18の検出結果ΔaにDaを加えて駆動側ローラ14の軸芯位置を計算すると共に、第二のリニアセンサ19の検出結果ΔbにDbを加えて従動側ローラ15の軸芯位置を計算し、それらの計算結果から駆動側ローラ14と従動側ローラ15の軸芯間の距離Cを割り出し、前式(1)に基づいて、リング状ワーク20の周長Lを求める。
【0036】
さて、撓みが生じている場合、その撓み量は、第一のリニアセンサ18の検出結果Δaと第二のリニアセンサ19の検出結果Δbに含まれる。すなわち、駆動側ローラ14の側の撓み量をXa、従動側ローラ15の側の撓み量をXbとするならば、ΔaはXaを含み、ΔbはXbを含むことになる。
【0037】
しかしながら、本実施形態の構成によれば、かかる撓み量Xa、Xbが含まれていても、リング状ワーク20の周長Lの測定結果に何らの影響を与えない。撓み量Xa、Xbも、実質的には、駆動側ローラ14と従動側ローラ15の各々の変位分であるからである。
【0038】
すなわち、上記のように、第一のリニアセンサ18の検出結果ΔaにDaを加えて駆動側ローラ14の軸芯位置を計算すると共に、第二のリニアセンサ19の検出結果ΔbにDbを加えて従動側ローラ15の軸芯位置を計算し、それらの計算結果から駆動側ローラ14と従動側ローラ15の軸芯間の距離Cを割り出し、前式(1)に基づいて、リング状ワーク20の周長Lを求めるようにすれば、仮にそれらの検出結果Δa、Δbに撓み量Xa、Xbが含まれていたとしても、その撓み量Xa、Xbを考慮して周長Lが求められるため、撓みの発生に伴う周長測定の精度悪化を招くことがない。
【0039】
これに対して、冒頭の従来技術(図5参照)では、従動側ローラ5の変位を検出する単一の測定手段8しか備えないため、仮に、駆動側ローラ4と従動側ローラ5の各々に撓み量Xa、Xbが発生したとすると、測定手段8は、従動側ローラ5の変位(撓み量Xbを含む)しか検出しないので、従動側ローラ5の撓み量Xbを考慮した周長が求められるものの、駆動側ローラ4の撓み量Xaが計算外となってしまうため、結局、撓み量Xaに相当する周長測定精度の悪化を免れない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態における周長測定装置の外観図である。
【図2】周長測定装置の要部断面図である。
【図3】撓みの概念図である。
【図4】CVTベルトの外観図である。
【図5】従来技術の概念図及び張力付与時の概念図である。
【符号の説明】
【0041】
10 周長測定装置
14 駆動側ローラ
15 従動側ローラ
18 第一のリニアゲージ(第1検出手段)
19 第二のリニアゲージ(第2検出手段)
20 リング状ワーク
27 荷重(張力付与手段)
22 周長測定部(演算手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が駆動側となり他方が従動側となる一対のローラ(駆動側ローラ及び従動側ローラ)と、
前記駆動側ローラと従動側ローラとにリング状ワークを掛け渡した状態で前記駆動側ローラと従動側ローラとの間の対向距離を拡大して前記リング状ワークに所定の張力を付与する張力付与手段と、
前記張力の付与方向への前記駆動側ローラの変位を検出する第1検出手段と、
前記張力の付与方向への前記従動側ローラの変位を検出する第2検出手段と、
前記第1及び第2検出手段の検出結果に基づいて前記リング状ワークの周長を演算する演算手段と
を備えたことを特徴とする周長測定装置。
【請求項2】
前記周長演算手段は、
前記駆動側ローラの半外周長をA、前記従動側ローラの半外周長をB、前記駆動側ローラと従動側ローラの軸芯間距離をCとしたとき、
前記第1及び第2検出手段の検出結果からCを求め、且つ、
前記リング状ワークの周長Lを、式「L=A+B+2C」に従って求めることを特徴とする請求項1記載の周長測定装置。
【請求項3】
一方が駆動側となり他方が従動側となる一対のローラ(駆動側ローラ及び従動側ローラ)にリング状ワークを掛け渡した状態で前記駆動側ローラと従動側ローラとの間の対向距離を拡大して前記リング状ワークに所定の張力を付与する張力付与工程と、
前記張力の付与方向への前記駆動側ローラの変位を検出する第1検出工程と、
前記張力の付与方向への前記従動側ローラの変位を検出する第2検出工程と、
前記第1及び第2検出工程の検出結果に基づいて前記リング状ワークの周長を演算する演算工程と
を含むことを特徴とする周長測定方法。
【請求項4】
前記周長演算工程は、
前記駆動側ローラの半外周長をA、前記従動側ローラの半外周長をB、前記駆動側ローラと従動側ローラの軸芯間距離をCとしたとき、
前記第1及び第2検出手段の検出結果からCを求め、且つ、
前記リング状ワークの周長Lを、式「L=A+B+2C」に従って求めることを特徴とする請求項3記載の周長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108114(P2007−108114A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301562(P2005−301562)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】