説明

噴霧器、この噴霧器を用いた噴霧装置、および、この噴霧器を用いた内視鏡装置

【課題】 噴霧器を傾けたとしても、その傾き角にかかわらず、液体を安定して霧化させて噴霧させることが可能な噴霧器を提供する。
【解決手段】 噴霧器16は、薬液Mを入れるための開口部46と、薬液Mを溜めるための底部42とを有する薬液ボトル22と、薬液ボトル22の底部42に固定され、薬液ボトル22に入れられた薬液Mを薬液ボトル22の底部42に近接した位置に有する薬液孔24bから入れて気体とともに通す送達管24と、薬液ボトル22の開口部46に蓋をするキャップ26とを備えている。そして、薬液ボトル22を何れの向きに傾けた状態においても、気体取込口24aは薬液ボトル22内に溜められた薬液Mの液面よりも上側の空間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力源とともに使用される噴霧器、この噴霧器を用いた噴霧装置、および、噴霧器と内視鏡とを一緒に使用する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、小型の噴霧器が知られている。この噴霧器は、ボトルの上側の空間に気体を送り込むと、送達管の上端から気体が入れられるとともに、ボトル内の液体が圧力により送達管の液体取込孔から入り込んで、すなわち、送達管の上側から入れられた気体と送達管の液体取込孔から入り込んだ液体とが混合されて、霧状となって送達管の下端から噴霧される。
【特許文献1】特開2002−159890号公報
【特許文献2】特開2002−346440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された噴霧器は、それ自体を傾けたときに、送達管の上端の気体取込口から液体が浸入するおそれがある。このため、その液体が気体と混合されず、液体が霧化せずに送達管の下端から液体が流れ出してしまう可能性がある。このため、液体を安定して霧化させて噴霧させることができないおそれがある。
【0004】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、噴霧器を傾けたとしても、その傾き角にかかわらず、液体を安定して霧化させて噴霧させることが可能な噴霧器、この噴霧器を用いた噴霧装置、および、この噴霧器を用いた内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明に係る噴霧器は、液体を入れるための開口部と、前記液体を溜めるための底部とを有するボトルと、前記ボトルの底部に接続され、前記ボトルに溜められた液体を前記ボトルの底部に近接して位置する液体取込孔から取り込むとともに、気体取込口から取り込んだ気体と合わせて流通させる送達管と、前記ボトルの開口部に蓋をするキャップとを備えている。そして、前記ボトルおよびキャップは、前記ボトルを何れの向きに傾けた状態においても、前記液体の液面の上側に前記送達管の気体取込口を配置する空間を協働して備えていることを特徴とする。
噴霧器を傾けても送達管の気体取込口に液体が触れることが防止され、すなわち、その送達管の気体取込口から液体が入ることが防止される。このため、液体を安定して霧化させて噴霧させることができる。
【0006】
また、前記キャップは、前記ボトルの開口部に蓋をした状態において前記ボトルと連通する内空を有し、前記キャップの内空の容積は、前記ボトルの最大液体収容容積よりも大きいことが好適である。
このため、噴霧器を傾けた場合であっても、キャップの内空に液体が流れ込むので、気体取込口に液体が触れることが防止される。
【0007】
また、前記送達管は、前記ボトルの底部から前記ボトルの内部に向けて延出された状態で配置されていることが好適である。
このため、ボトルに対して送達管を立てた状態で配置することができる。そうすると、気体取込口に液体が触れることが極力防止される。
【0008】
また、前記気体取込口は、前記送達管の延出された端部に配置され、前記ボトルの開口部に対して突出する位置に設けられていることが好適である。
このため、液体がボトルの開口部からキャップ側に流れる際に、送達管の気体取込口に液体が触れることが防止される。
【0009】
また、前記ボトルは、所定量以上の液体が入れられた場合に液体を排出するための液体収容量調整用開口を有し、前記気体取込口は、前記液体収容量調整用開口よりも上側に設けられていることが好適である。
このため、液体は液体収容量調整用開口までしか溜めることができず、液体がボトルの開口部からキャップ側に流れる際に、送達管の気体取込口に液体が触れることが防止される。
【0010】
また、前記送達管は、硬質材で真っ直ぐに形成され、前記ボトルは、前記送達管を中心軸上に配置し、前記中心軸に対して略回転対称形状に形成された貯留槽を備えていることが好適である。
ボトルとキャップとが例えば螺合などにより係合する場合、係合状態によってはボトルに対するキャップの係合位置にズレが生じることがあるが、このような形状にすることによって、ボトルとキャップとがいずれの係合位置であっても、ボトルの貯留槽と、キャップすなわち噴霧器の内部空間との位置関係を常に一定の状態に保つことができる。
【0011】
また、前記ボトルの底部は、液体を集めるようにその縦断面がテーパ状に形成され、前記液体取込孔は、前記ボトルの底部のテーパ収束部分に配設されていることが好適である。
送達管の液体取込孔の周囲に液体を溜め易くすることによって、所定量の液体を残さずに噴霧し易くなる。このため、液体の無駄を削減することができる。
【0012】
また、前記ボトルは、内視鏡に対して着脱可能に接続する接続部を備えていることが好適である。
このため、噴霧器を傾けた場合であっても、内視鏡に直接接続することによって、または、例えばボトルに接続部で接続され送達管に接続されたチューブを内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通させることによって、経内視鏡的に、体腔内に所望の液体を噴霧することが可能である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る噴霧装置は、前記ボトルの底部に接続され、前記ボトルに溜められた液体を前記ボトルの底部に近接して位置する液体取込孔から取り込むとともに、気体取込口から取り込んだ気体と合わせて流通させる送達管と、前記ボトルの開口部に蓋をするキャップとを有する噴霧器と、前記キャップに接続され、前記キャップ内に圧力を加える圧力源とを備えている。そして、前記ボトルおよびキャップは、前記ボトルを何れの向きに傾けた状態においても、前記液体の液面の上側に前記送達管の気体取込口を配置する空間を協働して備えていることを特徴とする。
噴霧器を傾けても送達管の気体取込口に液体が触れることが防止され、すなわち、その送達管の気体取込口から液体が入ることが防止される。このため、液体を安定して霧化させて噴霧させることができる。
【0014】
また、前記キャップには、前記圧力源からの気体を前記噴霧器の外側に逃がす状態と、前記圧力源からの気体を前記噴霧器の内側に導入する状態とに切換可能なスイッチが配設されていることが好適である。
噴霧器で液体を噴霧させたい場合は圧力源からの気体を噴霧器の内側に導入し、液体の噴霧を停止させたい場合は圧力源からの気体を噴霧器の外側に逃がすことができる。
【0015】
また、前記キャップには、前記圧力源に接続された気体挿通管路と、前記気体挿通管路と、前記キャップの外部と、前記噴霧器の内側とに連通したスイッチ配設孔と、前記スイッチ配設孔内を移動して、前記気体挿通管路と前記キャップの外部との間の連通を閉塞する第1の位置と、前記スイッチ配設孔と前記噴霧器の内側との間の連通を閉塞する第2の位置との間を移動可能なスイッチとが配設されていることが好適である。
噴霧器で液体を噴霧させたい場合は圧力源からの気体を噴霧器の内側に導入し、液体の噴霧を停止させたい場合は圧力源からの気体を噴霧器の外側に逃がす。
【0016】
また、前記キャップは、前記スイッチ配設孔の側部に空間が形成されていることが好適である。
キャップ自体の高さを抑えて噴霧器の空間が大きく取れる。このため、噴霧器の重心を低く抑えてバランスを取るのが容易であるとともに、操作時の取り回し性を向上させることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る内視鏡装置は、上述した噴霧器と、前記ボトルの底部に設けられた接続部と、細長い挿入部を有する内視鏡と、前記内視鏡に設けられ、前記接続部が着脱可能に接続されるコネクタと、前記内視鏡に設けられ、前記コネクタと前記内視鏡の挿入部の先端部とを接続し、液体と気体とを混合させたものを通す管路とを具備することを特徴とする。
噴霧器を傾けても送達管の気体取込口に液体が触れることが防止され、すなわち、その送達管の気体取込口から液体が入ることが防止される。このため、液体を安定して霧化させて噴霧させることができる。また、液体を霧状にして噴霧するので、所望の部分に少ない液体で広範囲に液体(薬液)の効力を及ぼすことができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る内視鏡装置は、上述した噴霧装置と、前記ボトルの底部に設けられた接続部と、細長い挿入部を有する内視鏡と、前記内視鏡に設けられ、前記接続部が着脱可能に接続されるコネクタと、前記内視鏡に設けられ、前記コネクタと前記内視鏡の挿入部の先端部とを接続し、液体と気体とを混合させたものを通す管路とを具備することを特徴とする。
噴霧器を傾けても送達管の気体取込口に液体が触れることが防止され、すなわち、その送達管の気体取込口から液体が入ることが防止される。このため、液体を安定して霧化させて噴霧させることができる。また、液体を霧状にして噴霧するので、所望の部分に少ない液体で広範囲に液体(薬液)の効力を及ぼすことができる。
【0019】
また、前記内視鏡は、前記挿入部の基端部に、湾曲操作部を有する操作部と、前記操作部から延出されたユニバーサルコードとを有し、前記ボトルのキャップには、圧力源と接続するためのエアチューブの端部が接続されているとともに、前記圧力源から前記エアチューブを通した気体により前記噴霧器内に圧力を加えて液体を噴霧させる状態と、前記エアチューブを通した気体を前記キャップの外側に逃がす状態とに切換可能なスイッチが設けられ、前記内視鏡の湾曲操作部と、前記スイッチとは、ユーザが内視鏡を保持したときに、略同一の方向に向けられ、前記内視鏡のユニバーサルコードと、前記エアチューブとは、略同一の方向に延出されていることが好適である。
このため、内視鏡を片手で把持したときに、内視鏡の湾曲操作部とスイッチとが略同一の方向に向けられているのでこれらを適宜に操作し易く、また、ユニバーサルコードやエアチューブも操作の邪魔になり難い。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、噴霧器を傾けたとしても、その傾き角にかかわらず、液体を安定して霧化させて噴霧させることが可能な噴霧器、この噴霧器を用いた噴霧装置、および、この噴霧器を用いた内視鏡装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明する。
【0022】
第1の実施の形態について図1ないし図5を用いて説明する。
図1に示すように、噴霧装置10は、小型コンプレッサなどの圧力源12と、この圧力源12がエアチューブ14を通して接続された噴霧器16とを備えている。圧力源12が動作している状態では、例えば2気圧程度の空気がエアチューブ14内に常時送り込まれる。このエアチューブ14は、例えばシリコーン材料やPTFEなどにより形成されている。
【0023】
図1および図2(A)に示すように、噴霧装置10の噴霧器16は、薬液等の液体(以下、薬液Mとする)を収容する薬液ボトル22と、送達管(細管)24と、キャップ26と、気体供給切換部28とを備えている。なお、薬液ボトル22の下端には、例えばシリコーン材料やPTFEなどの耐薬品性を有する軟性のチューブ30を着脱可能である。
【0024】
薬液ボトル22やキャップ26は、例えばポリサルフォンなどの耐薬品性や生体適合性を有する高分子樹脂材により透明に形成されている。さらに、この薬液ボトル22が透明であることから、図示しないが、薬液ボトル22には、薬液Mの残量目盛りが入れられていることが好適である。または、薬液ボトル22自体は不透明に形成されていても良いが、その場合、薬液Mの残量を外部から確認可能な窓(図示せず)などの透明部が設けられていることが好適である。また、送達管24は、例えばステンレス鋼材やPTFEなどの樹脂材等により形成されている。
【0025】
薬液ボトル22は、薬液Mを溜めるため、好ましくは中心軸に対して回転対称的に形成された、有底筒状の貯留槽32と、送達管24の固定部34とを一体的に備えている。貯留槽32は、縦断面が略Y字状などの例えば円錐形の漏斗状に形成された底部42と、この底部42の上側に一体的に形成された略円筒状の壁部44と、この壁部44の上端部に一体的に形成された開口部46とを備えている。すなわち、薬液ボトル22の貯留槽32は、下端側の底部42がテーパ状などの先細に絞られ、上端側の開口部46が開放されている。そして、この薬液ボトル22の貯留槽32の上端(開口部46)の外周面には、キャップ26の後述する雌ネジ部26aと螺合する雄ネジ部22aが形成されている。
【0026】
この薬液ボトル22の貯留槽32の中心軸には、送達管24が配設されている。すなわち、送達管24は、薬液ボトル22の下端の固定部34で固定されている。言い換えると、送達管24は、薬液ボトル22の底部42から薬液ボトル22の内部に向かって延出されている。このとき、図2(B)に示すように、貯留槽32と送達管24との間から液体が滴下するのを防止するため、送達管24と固定部34との間は隙間無く密着されている。そして、図2(A)に示すように、特に、この送達管24は、その上端が薬液ボトル22の上端(開口部46)よりも上側に突出した状態で固定されている。この送達管24の上端は、空気(圧縮気体)を送達管24の内部に取り込むための気体取込口(開口)24aであるが、仮に、薬液ボトル22の貯留槽32に薬液Mを満杯に入れたとしても、送達管24の上端の気体取込口24aから薬液Mが入り込むことが防止されている(図5(A)ないし図5(C)参照)。さらに、送達管24には、ボトル22の貯留槽32の下端近傍(底部42の近傍)に、薬液ボトル22に溜められた薬液Mを送達管24の内部に浸入させるための小さな薬液孔(薬液Mの液体取込孔)24bが形成されている。このとき、上述した貯留槽32の下端側のテーパ角度を適宜に設定することによって、薬液残量が少なくなっても、薬液孔24bの周囲に安定して薬液Mを供給ことができる。したがって、薬液Mの無駄を防止し、所定の量の薬液Mを確実に噴霧することができる。
【0027】
図1および図2(A)に示すように、キャップ26は、貯留槽32に蓋をするものである。図2(A)に示すように、このキャップ26の下端の内周面には、雌ネジ部26aが形成されている。このため、キャップ26の下端の雌ネジ部26aと、薬液ボトル22の上端の雄ネジ部22aとが螺合することによって、薬液ボトル22に蓋がされる。
【0028】
なお、ここでは、薬液ボトル22とキャップ26とを着脱可能に螺合するものとして説明するが、クリック係合などの嵌合等、種々の態様を適用可能である。これらの場合、薬液ボトル22の開口部の外周面とキャップ26の内周面との間にOリングを配設して、噴霧器16を傾けたときの、薬液ボトル22とキャップ26との隙間からの液漏れを防止する。
【0029】
図3(A)ないし図4(D)に示すキャップ26は、薬液ボトル22に螺合された状態で、その薬液ボトル22の内部容積よりも大きな内部容積を有するように形成されている。特に、キャップ26は、図3(A)および図3(B)に示すように、例えばポリサルフォンで形成されたキャップ26に薬液ボトル22と協働して形成される空間(内空)50を備えている。さらに、このキャップ26は、後述するピストン配設孔54の側部に形成された空間(内空)50a,50bを備えている。このため、噴霧器16のキャップ26の内部容量をそれら空間50a,50bによって大きくすることができる。このとき、ピストン配設孔54をキャップ26に対して上側に突出した位置に形成するよりも、キャップ26の高さが高くなるのを抑えることができ、かつ、その内部容積を大きくすることができる。
【0030】
なお、薬液ボトル22とキャップ26との協働により形成される、薬液ボトル22内の薬液Mの上側に形成された空間50,50a,50b(キャップ26側の内部容積)の方が薬液ボトル22の貯留槽32の内部容積よりも大きく形成されている。
【0031】
図4(A)ないし図4(D)に示すように、キャップ26には、気体供給切換部28が配設されている。気体供給切換部28は、圧力源12からのエアチューブ14の端部に接続されている。この気体供給切換部28は、気体を通す気体挿通管路52と、この気体挿通管路52に対して略直交する方向に形成され、ピストン(噴霧切換スイッチ)58が配設されるピストン配設孔(スイッチ配設孔)54とをキャップ26に形成された状態に備えている。このピストン配設孔54は、第1の連通孔56aによって気体挿通管路52に連通するとともに、第2の連通孔56bによってボトル22の貯留槽32に連通する。気体供給切換部28は、さらに、ピストン配設孔54に配設され、圧力源12からの気体の流れを制御するピストン58を備えている。ここでは、ピストン58は、圧力源12からエアチューブ14、気体挿通管路52、第1の連通孔56aを通してピストン配設孔54に導入された気体を、ピストン配設孔54の入口(開口部)から逃がす状態と、第2の連通孔56bを通してボトル22側に流入させる状態とに、ピストン配設孔54内を移動可能である。
【0032】
ピストン58は、断面が略T字型に形成されている。すなわち、このピストン58は、ピストン配設孔54内に配設される軸部62と、キャップ26の外側に配設されるフランジ状の押圧部64とを備えている。軸部62の先端部と基端部との間には、気体を通す開口62aが形成されている。そして、このピストン58の軸部62のうち、押圧部64に対して離隔した先端部および押圧部64に近接した基端部のそれぞれの外周面には、Oリングに代表されるシール部材66,68が配設されている。そして、このピストン58は、その軸部62の外周に配設されたバネ70によって、ピストン配設孔54の外側に向かって付勢されている。すなわち、押圧部64がキャップ26に対して離隔した状態に付勢されている。
【0033】
次に、この実施の形態に係る噴霧装置10の作用について説明する。
図2(A)に示すように、薬液ボトル22の貯留槽32に薬液Mを例えば満杯に溜める。そして、薬液ボトル22にキャップ26で蓋をする。このとき、キャップ26に設けられた気体供給切換部28は、エアチューブ14を介して圧力源12に接続されている。
【0034】
この状態で、図5(A)ないし図5(C)に示すように、薬液ボトル22を徐々に傾ける。
【0035】
図5(A)は薬液ボトル22の中心軸を90度傾けた状態を示す。この場合、薬液Mは、薬液ボトル22の貯留槽32からキャップ26の空間内に移動する。このとき、薬液ボトル22とキャップ26との協働により形成される、薬液ボトル22内の薬液Mの上側に形成された空間50,50a,50b(キャップ26側の内部容積)の方が薬液ボトル22の貯留槽32の内部容積よりも大きい。このため、薬液Mの液面は、薬液ボトル22の中心軸上に固定された送達管24の下側にある。図5(B)は薬液ボトル22の中心軸を135度傾けた状態を示す。この場合、薬液Mの液面は、送達管24の気体取込口24aよりも下側にある。図5(C)は薬液ボトル22の中心軸を180度傾けた状態を示す。この場合、薬液Mの液面は、送達管24の気体取込口24aよりも下側にある。すなわち、薬液Mの液面は、気体取込口24aに接触することなく送達管24の気体取込口24aの周りを移動する。したがって、送達管24の気体取込口24aからその内部に薬液Mが浸入することが防止される。
【0036】
このとき、キャップ26には、気体挿通管路52や、この気体挿通管路52に直交するピストン配設孔54が配設されており、いずれの位置に傾けたとしても、送達管24の気体取込口24aには、液体が触れることが防止されている。
【0037】
次に、噴霧器16から薬液Mを噴霧させる場合について説明する。
上述したように、ピストン58の軸部62の先端部および基端部の間には、気体を通す開口62aが形成されている。このとき、ピストン58をキャップ26側に押圧しない状態では、気体は、気体挿通管路52から、第1の連通孔56a、ピストン配設孔54、ピストン58の軸部62の開口62a、ピストン58の軸部62の基端部側を通してピストン配設孔54の開口部から排出される。一方、第2の連通孔56bへの通路は、ピストン58の軸部62の先端部に配設されたシール部材(例えばOリング)66がピストン配設孔54に密着しているので不通である。このため、圧力源12からの気体が第2の連通孔56bを通して噴霧器16内に入ることが防止されている。したがって、圧力源12からの気体の供給によっては、噴霧器16内の圧力は、変化しない。そうすると、薬液Mが噴霧されることはない。
【0038】
この状態で、ピストン58の押圧部64をバネ70の付勢力に抗してピストン配設孔54に対して押し込む。すなわち、ピストン58の軸部62がピストン配設孔54の内部に入り込む。このとき、ピストン58の軸部62の基端部側のシール部材(例えばOリング)68がキャップ26の外周面に密着することによってピストン配設孔54内の気体の流れが止められる。さらに、ピストン58の移動によって、軸部62の先端部側のシール部材66が第2の連通孔56bをまたいでピストン配設孔54の奥側に移動する。このため、第2の連通孔56bが第1の連通孔56aと連通する。したがって、気体は、圧力源12から、エアチューブ14、気体挿通管路52、第1の連通孔56a、ピストン配設孔54、ピストン58の開口62a、ピストン配設孔54、および、第2の連通孔56bを通して噴霧器16内に流入して液面に圧力をかける。
【0039】
このため、送達管24の上端の気体取込口24aから下端に向かって気体が流入し、薬液Mが薬液孔24bから流入し、すなわち、気体と液体が混合されて送達管24の下端側に移動する。このため、送達管24の下端から薬液Mが噴霧される。
【0040】
そして、図2(B)に示すように、薬液Mを噴霧し続けると、次第に液面が下げられる。薬液ボトル22の貯留槽32の縦断面は略V字状や略Y字状に形成されているので、薬液Mは薬液孔24bの周りに集められる。このため、薬液Mが極力残らない状態で所定量の薬液Mが噴霧によって広範囲に噴霧される。
【0041】
なお、図1に示すように、薬液ボトル22の下端に、軟性のチューブ30を接続した場合、例えば内視鏡の処置具挿通チャンネル(図示せず)等を挿通させて、体内に適宜に所定量の薬液Mを噴霧することもできる。
【0042】
ピストン58の押圧部64の押圧を解除すると、バネ70の付勢力により、第2の連通孔56bが不通となる。このため、薬液Mの噴霧が止められる。
【0043】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
噴霧器16の薬液ボトル22を傾けたり、様々な方向に回転させたりした場合であっても、送達管24の気体取込口24aに薬液Mが触れることを防止する位置に配置した。すなわち、薬液ボトル22に対する送達管24の気体取込口24aの位置、薬液ボトル22の内部容量、キャップ26の内部容量等を適宜に規定した。このため、噴霧器16を傾けた状態であっても、薬液ボトル22内の薬液Mを送達管24の気体取込口24aに触れさせることを防止することができる。このため、薬液Mが送達管24を通して意図せず流出することを防止することができる。すなわち、液体を安定して霧化させて噴霧させることができる。
【0044】
また、噴霧器16を傾けた場合であっても、例えば薬液ボトル22に固定部34で接続され送達管24に接続されたチューブ30を内視鏡(図示せず)の処置具挿通チャンネルに挿通させることによって、経内視鏡的に、体腔内に所望の薬液Mを広範囲に噴霧することが可能である。
【0045】
また、薬液ボトル22の貯留槽32の底部42の縦断面を略テーパ状にしたので、送達管24の薬液孔24bの周囲に薬液Mを溜め易くすることができる。このため、所定量の薬液Mを残さずに噴霧し易くなり、薬液Mの無駄を削減することができる。
【0046】
薬液ボトル22は、送達管24を中心軸上に配置する略回転対称形に形成されている。そして、薬液ボトル22とキャップ26とが例えば螺合などにより係合する場合、螺合状態によっては薬液ボトル22に対するキャップ26の係合位置にズレが生じることがあるが、薬液ボトル22を略回転対称形に形成することによって、薬液ボトル22とキャップ26とがいずれの係合位置であっても、薬液ボトル22の貯留槽32と、キャップ26すなわち噴霧器16の内部空間との位置関係を常に一定の状態に保つことができる。このため、例えば螺合により薬液ボトル22にキャップ26を係合させる場合、薬液ボトル22の雄ネジ部22a、キャップ26の雌ネジ部26aにかけるコストを抑えて、薬液ボトル22やキャップ26を安価に形成することができる。
【0047】
また、ピストン配設孔54の側部に空間50a,50bを設けたので、キャップ26を薬液ボトル22に螺合させた状態で、キャップ26の高さを抑えることができる。したがって、噴霧器16の重心を低い位置に保つことができる。そうすると、噴霧器16を持って操作するときの取り回しを良くすることができる。
【0048】
キャップ26に気体供給切換部28を配設したので、噴霧器16から薬液Mを噴霧させたい場合はピストン58の押圧部64の押圧だけによって圧力源12からの気体を噴霧器16の内側に導入することができる。また、薬液Mの噴霧を停止させたい場合はピストン58の押圧部64の押圧を解除するだけで、圧力源12からの気体を噴霧器16の外側に逃がすことができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について図6を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、この実施の形態に係る噴霧器16の薬液ボトル22の貯留槽32の開口部46には、一部が外周面と内周面とを連通するように形成された貫通孔(液体収容量調整用開口)74が形成されている。このため、薬液Mは、この貫通孔74の下端までしか薬液Mが溜められない。そうすると、貫通孔74の下端の位置を調整することによって、薬液ボトル22の貯留槽32に溜めることが可能な液体収容量を調整することができる。
なお、図6中では、貫通孔74は、薬液ボトル22の開口部46の上端から下端に向かって切り欠き状に形成されているが、孔の形状が円形であることも好適であるなど、種々の形状が許容される。
【0051】
そして、送達管24の上端の気体取込口24aは、薬液ボトル22の貯留槽32の開口部46の貫通孔74の下端よりも上側に配置されている。すなわち、送達管24の上端の気体取込口24aは、薬液ボトル22の貯留槽32の開口部46の上端よりも下側に配置することができる。このとき、噴霧器16を図2に示す状態から図5(A)ないし図5(C)に示すように傾けても、薬液Mの液面は気体取込口24aの回りを移動する。このため、気体取込口24aから送達管24の内部に薬液Mが浸入することが防止される。
【0052】
このように、送達管24の気体取込口24aをボトル22の貯留槽32の開口部46の貫通孔74の下端よりも上側に配置可能であり、特に、薬液ボトル22の貯留槽32の開口部46の上端よりも下側に配置することによって、薬液ボトル22の高さを低く抑えることができるのはもちろん、キャップ26の高さも低く抑えることができる。このため、噴霧器16自体を小型化することができる。また、このような貫通孔74をボトル22の開口部46に設けることによって、送達管24の気体取込口24aをボトル22の貯留槽32の開口部46よりも底部42側に配置したとしても、第1の実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0053】
次に、第3の実施の形態について図7および図8を用いて説明する。この実施の形態は第1および第2の実施の形態の変形例であって、第1および第2の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0054】
図7および図8に示すように、この実施の形態では、送達管24は薬液ボトル22に固定されておらず、キャップ26に固定されている。このため、キャップ26には、第1の実施の形態で説明した位置とは別の位置に第2の連通孔56bが形成されている。したがって、第2の連通孔56bから薬液ボトル22の液面に向かって気体を導入して、薬液孔24bから薬液Mを送達管24内に導入することができる。
【0055】
また、送達管24には、第2の連通孔56bから噴霧器16内に導入された気体を送達管24内に取り入れる気体取込口24aが形成されている。この気体取込口24aは、噴霧器16を図8に示す状態から図5(A)ないし図5(C)に示す状態に傾けたときに、薬液Mの液面は気体取込口24aの回りを移動するような位置に形成されている。このため、第2の連通孔56bを通して気体が導入されると、送達管24の気体取込口24aを通して気体が導入されるとともに、薬液Mの液面が気体により押圧されることによって、薬液孔24bから薬液が導入される。このように、気体と液体とが混合されることによって薬液Mが霧化した状態で送達管24の下端から噴霧する。
【0056】
そして、薬液ボトル22の貯留槽32の底部42には、第1の実施の形態で説明した固定部34と略同一形状である、筒状のガイド部82が形成されている。このガイド部82は、送達管24の外径よりも僅かに大きな内径を有する。また、このガイド部82には、図1に示す軟性のチューブ30などが接続される。
【0057】
そして、このガイド部82の上端には、送達管24を水密的に着脱可能に固定可能な例えば逆止弁やOリングなどのシール部材84が配設されている。
【0058】
次に、このような構造を有する噴霧器16を作製する場合について説明する。
まず、キャップ26に送達管24の上端を例えば嵌合や接着などにより固定する。
そして、キャップ26に固定された送達管24の下端を薬液ボトル22のシール部材84を介してガイド部82に挿通させる。このとき、シール部材84がガイド部82の上端に例えば弾性変形しながら入り込んでいく。このため、薬液ボトル22とシール部材84との間、および、シール部材84と送達管24との間がそれぞれシールされる。このため、薬液Mが送達管24の外周面とガイド部82の内周面との間から漏れ出すことが防止される。
そして、薬液ボトル22とキャップ26とを螺合やクリック係合により一体化させる。
【0059】
したがって、噴霧器16を簡単に製作することができる。
【0060】
なお、この実施の形態では、送達管24の端部間に気体取込口24aを形成し、第2の連通孔56bの位置を第1の実施の形態で説明した位置とは異なる位置にあるとして説明した。その他、第2の連通孔56bの位置を第1の実施の形態で説明した位置と同一の位置に形成し、送達管24の上端に切欠きを形成することによって、気体の一部を送達管24内に導入し、残りを薬液Mの液面を押圧するために用いることができる。そうすると、第1の実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0061】
次に、第4の実施の形態について図9を用いて説明する。この実施の形態は第1ないし第3の実施の形態の変形例であって、第1ないし第3の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、送達管24には、薬液ボトル22の貯留槽32の内壁から中心軸方向(径方向内方)に延出された送達管取付部92が形成されている。この送達管取付部92の先端(延出端部)は、例えば二股に分かれている。そして、送達管24は、二股に分かれた送達管取付部92の先端に例えばクリック係合などにより着脱可能に狭持される。
【0063】
また、薬液ボトル22の底部42には、送達管24を水密的に着脱可能に固定可能な例えば逆止弁やOリングなどのシール部材84が配設されている。
【0064】
このように、送達管取付部92が薬液ボトル22の壁部44から中心軸方向に延出され、クリック係合などにより簡単に装着することができる。また、薬液ボトル22と送達管24との間は、薬液ボトル22の底部42に設けられたシール部材84およびガイド部82に送達管24の下端を挿入するだけで水密を図ることができる。
【0065】
したがって、薬液ボトル22と送達管24とを簡単に組み立てることができる。
【0066】
次に、第5の実施の形態について図10ないし図13を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0067】
図10に示すように、この実施の形態では、第1の実施の形態で説明した噴霧器16を内視鏡112に取り付けた内視鏡装置110について説明する。すなわち、内視鏡装置110は、内視鏡112と、噴霧装置10とを備えている。
【0068】
この実施の形態に係る内視鏡112は、例えば気管支用である。そして、噴霧装置10により、例えばキシロカイン(商標)などの麻酔薬を含む薬液Mを噴霧する場合、通常の気管支鏡検査で使用される4%キシロカイン液の使用量は約10ml程度であるので、薬液ボトル22の貯留槽32の容量は、その許容量よりも少ない例えば6mlから8ml程度に設定されている。そして、キャップ26は非対称形状であるが、薬液ボトル22にキャップ26をした状態でボトル22を様々な方向に傾けたときに、送達管24の気体取込口24aに薬液Mが触れることを防止する容量を備えている。
【0069】
さらに、図11に示すように、噴霧器16の薬液ボトル22の下端部の固定部34は、上側の第1の固定部34aと、その第1の固定部34aの下側の第2の固定部34bとを備えている。このうち、第1の固定部34aよりも第2の固定部34bが小径に形成されている。
【0070】
図10ないし図13に示すように、噴霧器16の薬液ボトル22の下端部の固定部34には、内視鏡112に接続するための雌コネクタ122が固定されている。この雌コネクタ122は、中心軸が貫通され、その上端側は薬液ボトル22の下端部の第1の固定部34aに着脱可能に嵌合されて固定されている。雌コネクタ122の中心軸の下端側には、リング状の係合部122aが固定されている。なお、この雌コネクタ122は、例えばPTFEにより形成されている。
【0071】
内視鏡112は、体腔内などに挿入される細長い挿入部132と、この挿入部132の基端部に設けられた操作部134と、この操作部134から延出されたユニバーサルコード136とを備えている。
【0072】
図10に示すように、挿入部132は、先端硬質部142と、湾曲部144と、軟性部146とを備えている。操作部134は、操作部本体152と、グリップ154とを備えている。操作部本体152は、回動操作可能な湾曲操作部156を備えている。この湾曲操作部156aは、略U字状に形成されている。
【0073】
挿入部132の湾曲部144と、操作部134の湾曲操作部156とは、操作ワイヤ(図示せず)により接続されている。このため、操作部134の湾曲操作部156を回動操作すると、挿入部132の湾曲部144が所望の方向に湾曲する。
【0074】
また、図12に示すように、操作部本体152の上端には、噴霧器16の薬液ボトル22の雌コネクタ122を接続する筒状の雄コネクタ(ルアーコネクタ)162がネジなどにより固定されている。このため、薬液ボトル22の固定部34は、雄コネクタ162内に入れられる。このとき、雄コネクタ162の内径は、固定部34が嵌合された状態で、圧縮空気の漏れが生じない程度である。
【0075】
この雄コネクタ162には、例えばステンレス鋼材製などにより形成された細径の硬性チューブ172が固定されている。図13に示すように、この硬性チューブ172は、内視鏡112の操作部本体152からグリップ154まで延出されている。この硬性チューブ172には、グリップ154から挿入部132の先端にかけて、細径の軟性チューブ174が固定されている。これら硬性チューブ172の下端および軟性チューブ174の上端には、互いに対して連通した状態で接続する接続部176が配設されている。これら硬性チューブ172および軟性チューブ174は一直線状になるように配設されている。そして、軟性チューブ174は、内視鏡112の挿入部132の動きに合わせて追従する。
【0076】
次に、この実施の形態に係る内視鏡装置110の作用について説明する。
図11に示すように、噴霧器16の薬液ボトル22の固定部34に雌コネクタ122を固定する。このように、雌コネクタ122を固定する際、第1の実施の形態で説明したように、噴霧器16を傾けても、薬液Mが送達管24内を通して流れ出すことが防止されている。
【0077】
そして、内視鏡112の操作部本体152の上端に固定された雄コネクタ162を、噴霧器16の薬液ボトル22に固定された雌コネクタ122に配設する。具体的には、操作部本体152の雄コネクタ162のフランジ部162a(図11参照)を、噴霧器16の雌コネクタ122の係合部122aに係合させる。このとき、固定部34は、筒状の雄コネクタ162の内部に配設される。このため、薬液ボトル22の送達管24と硬性チューブ172とは、連通した状態にある。このとき、雄コネクタ162と薬液ボトル22の固定部34との間の嵌合によって、圧縮空気の漏れは防止されている。したがって、薬液Mは、送達管24の下端から噴霧された後、硬性チューブ172、軟性チューブ174を通して内視鏡112の挿入部132の先端から噴霧される。
【0078】
そして、内視鏡112の操作部本体152の雄コネクタ162に対して、噴霧器16の雌コネクタ122は回動可能である。すなわち、内視鏡112の操作部本体152に対して噴霧器16を回動可能である。
【0079】
このため、図10に示すように、噴霧器16の薬液ボトル22の雌コネクタ122が内視鏡112の操作部本体152に設けられた雄コネクタ162に接続された状態では、エアチューブ14とユニバーサルコード136とを同一方向に延出させることができる。このとき、湾曲操作部156とピストン58の位置を同じ方向に向けることができる。したがって、内視鏡112の操作部134のグリップ154を片手で把持したときに、エアチューブ14やユニバーサルコード136が邪魔になることを防止することができる。また、湾曲操作部156とピストン58とが同じ方向を向くので、湾曲操作部156とピストン58の押圧部64とを1人のユーザが片手で簡単に操作することができる。
【0080】
そして、例えばキシロカイン(商標)などの薬液Mを噴霧する場合、図12および図13に示す状態から、ピストン58の押圧部64を押圧する(図4(C)および図4(D)参照)。すると、噴霧器16から硬性チューブ172、軟性チューブ174を介して内視鏡112の挿入部132の先端から薬液Mが噴霧される。
一方、ピストン58の押圧部64の押圧を解除すると、薬液Mの噴霧が停止される。
【0081】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
噴霧器16を傾けても、薬液Mが送達管24を通して流れ出すことが防止されているので、内視鏡112の挿入部132の先端から薬液Mが流れ出すことが防止されている。したがって、内視鏡112の操作部134を傾けることによって噴霧器16を傾けた場合であっても、噴霧器16から薬液Mが流れ出すことを防止することができるので、内視鏡112の挿入部132の先端から薬液Mが流れ出すことが防止することができる。さらに、薬液ボトル22の貯留槽32の底面は漏斗状に形成されているので残りの薬液Mを薬液孔24bの周辺に集めることができるので、経内視鏡的に、所定量の薬液Mを安定的に霧状投与することができる。
【0082】
また、硬性チューブ172および軟性チューブ174が接続部176を介して一直線状に形成されている。このため、例えば管路内に固着し易いキシロカインなどが固着した場合であっても、硬性チューブ172および軟性チューブ174は一直線状であるので、容易に洗浄することができる。
【0083】
また、噴霧器16のキャップ26の高さを高くすることが防止され、小型に形成されている。このため、内視鏡112に噴霧器16を接続した場合であっても、内視鏡112に与える慣性力を小さくすることができ、重量バランスを向上させることができる。このため、噴霧器16を内視鏡112に接続した場合であっても、操作部134の良好な操作性を極力維持することができる。
【0084】
噴霧装置10のエアチューブ14と内視鏡112のユニバーサルコード136とを同じ方向に延出させ、かつ、噴霧装置10のピストン58の押圧部64と内視鏡112の操作部134の湾曲操作部156とを同じ方向に向けることができる。このため、片手で内視鏡112の操作部134のグリップ154を把持した状態で、湾曲部144の湾曲操作と、噴霧器16の噴霧操作とを容易に行うことができる。
【0085】
なお、この実施の形態では、内視鏡112を気管支用として説明したが、例えば消化器用内視鏡など、種々の内視鏡と組み合わせることができる。
【0086】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1の実施の形態に係る噴霧装置を示す概略図。
【図2】(A)は第1の実施の形態に係る噴霧器の概略的な縦断面図、(B)は(A)に示す噴霧器の薬液ボトルの貯留槽に薬液を入れた状態で噴霧器を傾けた状態を示す概略的な縦断面図。
【図3】(A)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図3(B)中に示す3A−3A線に沿う概略的な断面図、(B)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図3(A)中に示す3B−3B線に沿う概略的な断面図。
【図4】(A)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図4(B)中に示す4A−4A線に沿う概略的な断面を示すとともに、圧力源からの気体の流れを示す概略図、(B)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図4(A)中に示す4B−4B線に沿う概略的な断面を示すとともに、圧力源からの気体の流れを示す概略図、(C)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図4(D)中に示す4C−4C線に沿う概略的な断面を示すとともに、圧力源からの気体の流れを示す概略図、(D)は第1の実施の形態に係る噴霧器の図4(C)中に示す4D−4D線に沿う概略的な断面を示すとともに、圧力源からの気体の流れを示す概略図。
【図5】(A)は第1の実施の形態に係る噴霧器を図2(A)に示す状態に対して90度傾けた状態を示す概略図、(B)は第1の実施の形態に係る噴霧器を図2(A)に示す状態に対して135度傾けた状態を示す概略図、(C)は第1の実施の形態に係る噴霧器を図2(A)に示す状態に対して180度傾けた(回動させた)状態を示す概略図。
【図6】第2の実施の形態に係る噴霧器の薬液ボトルおよび薬液ボトルに配設した送達管を示す概略的な透視図。
【図7】第3の実施の形態に係る噴霧器を示し、キャップに固定した送達管を薬液ボトルに配設しようとする状態を示す概略図。
【図8】第3の実施の形態に係る噴霧器の概略的な縦断面図。
【図9】第4の実施の形態に係る噴霧器の薬液ボトルおよび薬液ボトルに配設した送達管を示す概略的な透視図。
【図10】第5の実施の形態に係る内視鏡装置を示す概略図。
【図11】第5の実施の形態に係る内視鏡装置の内視鏡に接続するための噴霧器を示す概略的な縦断面図。
【図12】第5の実施の形態に係る内視鏡装置の内視鏡の操作部と噴霧器とを接続した状態を示す概略的な縦断面図。
【図13】第5の実施の形態に係る内視鏡装置の内視鏡の操作部と噴霧器とを接続した状態を示す概略的な縦断面図。
【符号の説明】
【0088】
M…薬液、16…噴霧器、22…薬液ボトル、22a…雄ネジ部、24…送達管、24b…薬液孔、26…キャップ、26a…雌ネジ部、28…気体供給切換部、32…貯留槽、34…固定部、42…底部、44…壁部、46…開口部、58…ピストン、62…軸部、62a…開口、64…押圧部、66,68…シール部材、70…バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れるための開口部と、前記液体を溜めるための底部とを有するボトルと、
前記ボトルの底部に接続され、前記ボトルに溜められた液体を前記ボトルの底部に近接して位置する液体取込孔から取り込むとともに、気体取込口から取り込んだ気体と合わせて流通させる送達管と、
前記ボトルの開口部に蓋をするキャップと
を有する噴霧器において、
前記ボトルおよびキャップは、前記ボトルを何れの向きに傾けた状態においても、前記液体の液面の上側に前記送達管の気体取込口を配置する空間を協働して備えていることを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
前記キャップは、前記ボトルの開口部に蓋をした状態において前記ボトルと連通する内空を有し、
前記キャップの内空の容積は、前記ボトルの最大液体収容容積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の噴霧器。
【請求項3】
前記送達管は、前記ボトルの底部から前記ボトルの内部に向けて延出された状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記気体取込口は、前記送達管の延出された端部に配置され、前記ボトルの開口部に対して突出する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記ボトルは、所定量以上の液体が入れられた場合に液体を排出するための液体収容量調整用開口を有し、
前記気体取込口は、前記液体収容量調整用開口よりも上側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の噴霧器。
【請求項6】
前記送達管は、硬質材で真っ直ぐに形成され、
前記ボトルは、前記送達管を中心軸上に配置し、前記中心軸に対して略回転対称形状に形成された貯留槽を備えていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器。
【請求項7】
前記ボトルの底部は、液体を集めるようにその縦断面がテーパ状に形成され、
前記液体取込孔は、前記ボトルの底部のテーパ収束部分に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の噴霧器。
【請求項8】
前記ボトルは、内視鏡に対して着脱可能に接続する接続部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の噴霧器。
【請求項9】
液体を入れるための開口部と、前記液体を溜めるための底部とを有するボトルと、
前記ボトルの底部に接続され、前記ボトルに溜められた液体を前記ボトルの底部に近接して位置する液体取込孔から取り込むとともに、気体取込口から取り込んだ気体と合わせて流通させる送達管と、
前記ボトルの開口部に蓋をするキャップと
を有する噴霧器と、
前記キャップに接続され、前記キャップ内に圧力を加える圧力源と
を具備する噴霧装置において、
前記ボトルおよびキャップは、前記ボトルを何れの向きに傾けた状態においても、前記液体の液面の上側に前記送達管の気体取込口を配置する空間を協働して備えていることを特徴とする噴霧装置。
【請求項10】
前記キャップには、前記圧力源からの気体を前記噴霧器の外側に逃がす状態と、前記圧力源からの気体を前記噴霧器の内側に導入する状態とに切換可能なスイッチが配設されていることを特徴とする請求項9に記載の噴霧装置。
【請求項11】
前記キャップには、
前記圧力源に接続された気体挿通管路と、
前記気体挿通管路と、前記キャップの外部と、前記噴霧器の内側とに連通したスイッチ配設孔と、
前記スイッチ配設孔内を移動して、前記気体挿通管路と前記キャップの外部との間の連通を閉塞する第1の位置と、前記スイッチ配設孔と前記噴霧器の内側との間の連通を閉塞する第2の位置との間を移動可能なスイッチと
が配設されていることを特徴とする請求項9に記載の噴霧装置。
【請求項12】
前記キャップは、前記スイッチ配設孔の側部に空間が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の噴霧装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項8のいずれか1に記載の噴霧器と、
前記ボトルの底部に設けられた接続部と、
細長い挿入部を有する内視鏡と、
前記内視鏡に設けられ、前記接続部が着脱可能に接続されるコネクタと、
前記内視鏡に設けられ、前記コネクタと前記内視鏡の挿入部の先端部とを接続し、液体と気体とを混合させたものを通す管路と
を具備することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項14】
請求項9ないし請求項12のいずれか1に記載の噴霧装置と、
前記ボトルの底部に設けられた接続部と、
細長い挿入部を有する内視鏡と、
前記内視鏡に設けられ、前記接続部が着脱可能に接続されるコネクタと、
前記内視鏡に設けられ、前記コネクタと前記内視鏡の挿入部の先端部とを接続し、液体と気体とを混合させたものを通す管路と
を具備することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項15】
前記内視鏡は、前記挿入部の基端部に、湾曲操作部を有する操作部と、前記操作部から延出されたユニバーサルコードとを有し、
前記ボトルのキャップには、圧力源と接続するためのエアチューブの端部が接続されているとともに、前記圧力源から前記エアチューブを通した気体により前記噴霧器内に圧力を加えて液体を噴霧させる状態と、前記エアチューブを通した気体を前記キャップの外側に逃がす状態とに切換可能なスイッチが設けられ、
前記内視鏡の湾曲操作部と、前記スイッチとは、ユーザが内視鏡を保持したときに、略同一の方向に向けられ、
前記内視鏡のユニバーサルコードと、前記エアチューブとは、略同一の方向に延出されていることを特徴とする請求項13もしくは請求項14に記載の内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−178536(P2008−178536A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14034(P2007−14034)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】