説明

回収方法及び回収装置

【課題】 高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる回収方法及び回収装置を提供すること。
【解決手段】 製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのままTiOの融点よりも低い温度まで加熱し、融点がTiOの融点よりも低い物質を前記高炉スラグから分離して除去し、前記物質が除去された高炉スラグをTiOの融点以上で、高炉スラグに含まれるTiOの融点よりも融点の高い物質の当該融点(例えばAlの融点)未満の温度まで加熱し、TiOを前記高炉スラグから分離して酸化物のまま回収するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される残渣(高炉スラグ)から酸化チタン(TiO)を分離して回収する回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄用の溶鉱炉から高炉スラグが産業廃棄物として大量に排出される。高炉スラグは、鉄鉱石酸化物やこれとともに溶鉱炉に投入される脱酸剤、還元剤の酸化物、硫化物等が含まれる。産業廃棄物として捨てられる高炉スラグの中には、10%前後のTiOが含有される場合がある。
【0003】
本発明は、高炉スラグからTiOを分離して回収するものであるが、直接的に関連する技術を発見することはできなかった。本発明に関連する技術として、特許文献1〜特許文献5を挙げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−188833号公報
【特許文献2】特開平10−130041号公報
【特許文献3】特開平11−19625号公報
【特許文献4】特開2007−85561号公報
【特許文献5】特開2009−127094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高炉スラグよりTiOを効率よく回収できれば、産業廃棄物としての高炉スラグを資源として有効に活用することでき、また不足するレアメタルのTiを補い、しかも産業廃棄物の量を減らすこともできる。
従って、本発明の目的は、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる回収方法及び回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回収方法は、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのままTiOの融点よりも低い温度まで加熱し、融点がTiOの融点よりも低い物質を前記高炉スラグから分離して除去し、前記物質が除去された高炉スラグをTiOの融点以上で、高炉スラグに含まれるTiOの融点よりも融点の高い物質の当該融点(例えばAlの融点)未満の温度まで加熱し、TiOを前記高炉スラグから分離して酸化物のまま回収するものである。
【0007】
TiOが含まれる物質から例えば真空蒸発によりTiOを回収しようとした場合、物質をTiOの融点付近まで加熱する必要があるが、TiOの融点は非常に高温であることから、加熱に莫大なエネルギーを必要とし、TiOを効率よく回収することはできない。本発明者らは、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグには多量のTiOが含めれており、しかもこのような高炉スラグは溶鉱炉から排出された時点で非常に高温の状態にある、という高炉スラグ特有の事情に着目した。すなわち、本発明は、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのまま回収処理に用いることで、処理対象物である高炉スラグの加熱に要するエネルギーを極力小さくすることができる。従って、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる。
【0008】
また、高炉スラグよりTiとして回収しようとすると、Tiが酸化しないように回収のための処理領域をほとんど真空にする必要があるが、処理領域を真空にするためのエネルギーを莫大に要し、また処理領域を高度に気密にするための設備が大掛かりになる、などの問題がある。そこで、本発明は、TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収している。従って、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる。
【0009】
本発明に係る回収方法では、前記TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収する工程は、前記高炉スラグから分離されたTiOの微粉末を含む気体から、TiOの微粉末を液体に沈殿させ、沈殿物を回収してもよい。
これにより、TiOの微粉末が回収可能となる。
【0010】
本発明に係る回収方法では、前記TiOの微粉末を液体に沈殿させる工程は、TiOの微粉末を含む気体から、遠心力を使ってTiOの微粉末を集塵し、集塵したTiOの微粉末にシャワーを噴出して前記液体に沈殿させてもよい。
これにより、TiOの微粉末の回収を効率よく行うことができる。
【0011】
本発明に係る回収方法では、前記融点がTiOの融点よりも低い物質を高炉スラグから分離して除去する工程及び前記TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収する工程は、1Torr〜760Torrの範囲の減圧下又は常圧下において行ってもよい。
【0012】
これにより、ポンプの台数を少なくでき、設備費が安く、使用電力量が少なくすることができ、安価なエネルギー代となる。すなわち、本発明によれば、設備費が安くなりランニングコストが安くなる。そればかりか、メンテナンスも容易となる。
なお、前記融点がTiOの融点よりも低い物質を高炉スラグから分離して除去する工程は、前記物質を構成する各金属酸化物及び硫化物を、低減圧で、各金属酸化物及び硫化物ごとにそれぞれの融点で別々に分離して回収してもよい。
【0013】
本発明の別形態に係る回収装置は、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのままTiOの融点よりも低い温度まで加熱する第1の炉と、前記加熱により高炉スラグから蒸発した物質を前記第1の炉より除去する手段と、前記物質が除去された高炉スラグをTiOの融点以上で、高炉スラグに含まれるTiOの融点よりも融点の高い物質の当該融点(例えばAlの融点)未満の温度まで加熱する第2の炉と、前記加熱により高炉スラグから蒸発したTiOを酸化物のまま回収する手段とを具備する。
【0014】
本発明では、製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのまま回収処理に用いることで、処理対象物である高炉スラグの加熱に要するエネルギーを極力小さくすることができる。従って、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる。また、本発明では、TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収しているので、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる。
【0015】
本発明に係る回収装置は、前記回収手段は、前記高炉スラグから蒸発したTiOの微粉末を液体に沈殿させるための液体槽を有し、前記液体槽は、液面が外部に露出する沈殿物回収部を有してもよい。
これにより、TiOの微粉末が回収可能となる。
【0016】
本発明に係る回収装置は、前記液体槽の液体内に配置され、前記液体槽に沈殿した沈殿物を前記沈殿物回収部を介して外部に運ぶためのコンベアを有していてもよい。
これにより、TiOの微粉末を装置を連続運転しながら回収可能となる。
【0017】
本発明に係る回収装置は、前記液体槽の液面の上部に配置され、TiOの微粉末を含む気体から、遠心力を使ってTiOの微粉末を集塵する遠心分離手段と、前記集塵したTiOの微粉末にシャワーを噴出して前記液体に沈殿させるシャワー手段とを有していてもよい。
これにより、TiOの微粉末の回収を効率よく行うことができる。
本発明に係る回収装置は、前記第1及び第2の炉は、1Torr〜760Torrの範囲の減圧下又は常圧下としてもよい。
これにより、ポンプの台数を少なくでき、設備費が安く、使用電力量が少なくすることができ、安価なエネルギー代となる。すなわち、本発明によれば、設備費が安くなりランニングコストが安くなる。そればかりか、メンテナンスも容易となる。
【0018】
本発明に係る回収装置は、前記回収手段によりTiOが回収された後の高炉スラグを冷却する水槽冷却室と、前記水槽冷却室の沸騰水を利用して発電する発電装置とをさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高炉スラグよりTiOを効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る回収装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した第1及び第2の液体回収装置を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回収方法を示すフロー図である。
【図4】高炉スラグの成分表である。
【図5】高炉スラグを構成する成分の融点及び沸点を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る回収装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、回収装置10は、予熱炉11と、均熱炉12と、第1の減圧蒸発炉13と、第2の減圧蒸発炉14と、移動室15と、水槽冷却室16とを有する。予熱炉11、均熱炉12、第1の減圧蒸発炉13、第2の減圧蒸発炉14、移動室15及び水槽冷却室16は、この順番に接続された連続炉を構成している。これらの間は、それぞれ開閉扉により開閉可能に仕切られている。予熱炉11には、処理対象物である高炉スラグが搬入される搬入口が設けられている。水槽冷却室16には、処理後の高炉スラグが搬出される搬出口が設けられている。
【0023】
高炉スラグには、CaO、MgO、SiO、Al、TiO、TFe、Sなどが含めれており、各成分の実測結果を図4に示す。また、各成分の融点と沸点は図5に示すとおりである。
【0024】
高炉スラグは例えばトレーの上に搭載され、そのトレーは搬送手段により搬入口から搬入され、予熱炉11、均熱炉12、第1の減圧蒸発炉13、第2の減圧蒸発炉14、移動室15、水槽冷却室16の順番に運ばれ、搬出口から搬出される。つまり回収装置10は、処理対象物をバッチ式に処理する。
【0025】
第1の減圧蒸発炉13には第1の液体回収装置21が接続され、その第1の液体回収装置21には第2の液体回収装置22、フィルター23、真空ポンプ(油回転ポンプ)24がその順に接続されている。同様に、第2の減圧蒸発炉14には、第1の液体回収装置31が接続され、その第1の液体回収装置31には第2の液体回収装置32、フィルター33、真空ポンプ34がその順に接続されている。
【0026】
予熱炉11は、溶鉱炉から排出された高炉スラグが冷却処理されることなくそのまま直接搬入される炉であり、そのための開閉扉を有する搬入口と搬出口とが備えられている。ここで、予熱炉11、均熱炉12、移動室15及び水槽冷却室16では減圧下ではなく常圧で処理対象物を処理する。ここで、冷却処理とは、積極的に高炉スラグを冷却する場合ばかりでなく、高炉スラグをある程度大気中に放置して高炉スラグの温度低下を意図する場合なども含む。
【0027】
予熱炉11、均熱炉12、第1の減圧蒸発炉13、第2の減圧蒸発炉14は、超高温になるので、炉体は二重壁構造となっている。二重壁間の空間は減圧して対流、伝導などによる熱の伝達を抑えている。これにより、炉11〜14は、炉体外側表面温度を80℃以下にし、放熱を防ぎ、省エネルギーを実現し、更には安全性の向上を図っている。
予熱炉11は、高炉スラグを1000℃程度に加熱するための手段として例えばガス加熱や油加熱装置を有する。
【0028】
均熱炉12は、予熱炉11より搬入された高炉スラグを1700℃程度に加熱するための手段として電気抵抗ヒータ加熱、低周波加熱、プラズマ加熱装置などを有する。
【0029】
第1の減圧蒸発炉13は、均熱炉12で1700℃程度に加熱されたスラグを搬入されたスラグをTiOの融点よりも低い温度、例えば1850℃まで加熱する。加熱手段としては、電気抵抗ヒータ加熱、低周波加熱、プラズマ加熱装置などがある。これにより、TiOより融点の低いSiO、Fe酸化物、硫化物などの物質が蒸発し、高炉スラグから分離される。第1の減圧蒸発炉13内は、ある程度の減圧状態とすることが好ましいが、常圧であっても構わない。その範囲は1Torr〜760Torr(常圧、低減圧)程度が好ましい。
図2は図1に示した第1及び第2の液体回収装置21、22の構成を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、第1の液体回収装置21は、第1の減圧蒸発炉13と例えば配管25で繋がっている。第1の液体回収装置21内を真空ポンプ24で引くことで、配管25を介して、第1の減圧蒸発炉13で1850℃まで加熱されて高炉スラグから蒸発したSiO,Fe酸化物、硫化物などの物質(微粉末)を含む気体を第1の液体回収装置21内に引き込むことができる。
【0031】
ここで、回収物であるSiO,Fe酸化物などは超微細な金属酸化物(微粉末)である。従って、この回収には非常に困難が伴う。本実施形態に係る第1の液体回収装置21では、これらの微粉末を回収するために、以下の技術を採用した。
【0032】
第1の液体回収装置21は、真空オイルを主成分とする液体が貯められた液体槽211と、その液体槽211の一部を内部に減圧空間を形成するように覆う液体回収本体212と、液体槽内沈殿物を液体槽外へ搬送する自動コンベア213とを有する。液体槽211は、液体回収本体212により覆われた部分以外は外部に出ており、大気中に液面の一部がある。
【0033】
液体回収本体212は側壁214と天井215を有し、側壁214に第1の減圧蒸発炉13からの配管25が接続されており、天井215には液体回収本体212内に液体槽211に貯められた液体と同一の液体を天井付近からシャワー状に噴射させるシャワー部216を有する。また、そのシャワー部216より下側で液面及び第1の減圧蒸発炉13に接続された配管25の液体回収本体212側開口より高い位置には、遠心分離装置217が設けられており、一端が第2の液体回収装置22に接続され他端が当該天井215付近には、配管218が接続されている。
【0034】
したがって、液体回収本体212内部の減圧空間に吸い込まれたSiO,Fe酸化物、硫化物などの物質(微粉末)は、遠心分離装置217により当該体回収本体212内部の内壁に向かって集塵される。そしてその集塵された物質(微粉末)は、天井215付近からの液体シャワーにより真空オイルを主成分とする液体が貯められた液体槽211へ落下させられ、液体槽内沈殿物となる。
【0035】
また、自動コンベア213は、水平移動部分213aと、斜め上方移動部分213bとを有し、水平移動部分213aが液体回収本体212が覆う液体中を水平移動することで槽内沈殿物をコンベア上に回収し、斜め上方移動部分213bにより当該沈殿物を液体槽211の液面から外部へ運び出し、回収することができる。
【0036】
さらに、液体回収本体部212は、液体槽211の液体により外気とは隔離されており、液体槽211が液体回収本体212内の液面で当該液体回収本体212内を減圧度に保つ役割をしている。
【0037】
これにより、液体による真空シールであることで真空ポンプ24を停止することなく沈殿物を回収することができる。このことは、装置の稼働を停止させることなく沈殿物の回収ができ、効率的で、ランニングコストも安価になる。
【0038】
第2の液体回収装置22は、第1の液体回収装置21の液体回収本体212の天井215付近に配管218で接続されており、真空オイルを主成分とする液体が貯められた液体槽221と、その液体槽221の上部を内部に減圧空間を形成するように覆う液体回収本体222とを有する。なお、第2の液体回収装置22の液体は第1の液体回収装置21と同一の液体を用いることが好ましい。
【0039】
液体回収本体222は、側壁222aと天井222bを有し、側壁222aに第1の液体回収装置21からの配管218が接続されており、液体回収本体222内の液体槽221に貯められた液体と同一の液体を天井付近からシャワー状に噴射させるシャワー部223と、当該天井222b付近にその一端が接続されフィルター23に他端が接続された配管224とを有する。
液体回収本体222内はフィルター23を介して真空ポンプ24により1Torr〜760Torrに減圧されている。
【0040】
第1の液体回収装置21は液体槽211を有するので、真空引きするときにこの液体槽211から来る液と第1の液体回収装置21で取り切れない微粉末や分解ガスや有毒ガス、有害物など種々の物質が引き込まれる。このため、第1の液体回収装置21とは別に本回収装置の真空ポンプ24の前に粉末沈殿槽としての第2の液体回収装置22を備えることとしたものである。
【0041】
フィルター23は、第2の液体回収装置22で取り切れない微粉末や分解ガスや有毒ガス、有害物など種々の物質をろ過するものであり、第2の液体回収装置22と真空ポンプ24との間に配置されている。
【0042】
真空ポンプ24は、第1及び第2の液体回収装置21、22の液体回収本体212、222内を例えば4Torrの減圧空間とする場合に、沸点とならない真空オイルを主成分とする液体を使用するためのものである。勿論、1台の真空ポンプ24に限られるものではなく、例えばブースターポンプ等の油シール方法のポンプなどの複数の真空ポンプを直列に接続して使用できる。
【0043】
この回収装置10は、低減圧処理のため(1Torr〜760Torr)、真空ポンプ24のようなポンプの台数を少なくでき、設備費が安く、使用電力量が少なくすることができ、安価なエネルギー代となる。すなわち、本発明によれば、設備費が安くなりランニングコストが安くなる。そればかりか、メンテナンスも容易となる。なお、760Torr(常圧)に近い圧力で処理するときには、液体は水でも良いが、このときは真空ポンプ24に代えて水シールの水封ポンプを使用する。その場合には、上記付帯装置設備は変わらない。
【0044】
第2の減圧蒸発炉14は、第1の減圧蒸発炉13と移動室15との間に配置されており、第1の減圧蒸発炉13で1850℃に加熱された高炉スラグをTiOの融点である1870℃以上で、Alの融点未満の温度まで加熱する。第2の減圧蒸発炉14内は、第1減圧蒸発炉13と同様、1Torr〜760Torr(常圧)に減圧される。
【0045】
第2の減圧蒸発炉14は、第1の減圧蒸発炉13と同様、第1の液体回収装置31と配管35で繋がっている。これにより第2の減圧蒸発炉14で1870℃以上で、Alの融点未満の温度まで加熱された高炉スラグから蒸発したTiOの微粉末を含む気体を第1の液体回収装置31に引き込み、高炉スラグから分離されたTiOを酸化物のまま回収する。
【0046】
ここで、第2の減圧蒸発炉14に接続された第1の液体回収装置31、第2の液体回収装置32、フィルター33、真空ポンプ34は、構造的には第1の減圧蒸発炉13に接続された第1の液体回収装置21、第2の液体回収装置22、フィルター23、真空ポンプ24と同じである。
【0047】
ただし、第2の減圧蒸発炉14に接続された第1の液体回収装置31に配管35を介して吸い込まれるのはTiOの微粉末を含む気体である。回収される物質もTiOである。
【0048】
移動室15は、第2の減圧蒸発炉14と水槽冷却室16との間に配置されており、第2の減圧蒸発炉14から搬出される高炉スラグをある程度冷却して水槽冷却室16に渡す役割を有する。
【0049】
水槽冷却室16は、移動室15の後に配置されている。水槽冷却室16には例えばトレーに載せられて搬入された高炉スラグを自動的に反転させて高炉スラグのみを冷却用水槽に落下させる落下装置が備えられている。この落下装置は、超高温スラグが一度に大量の水を貯える冷却用水槽に投入されると水が大きく膨張を起こし、水蒸気爆発を起こすので、少量ずつ落下するように例えば反転速度等を制御する。
【0050】
次に、この回収装置10によるTiOの回収方法について説明する。
図3はTiOの回収方法を示すフローチャートである。
【0051】
製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出された高炉スラグを分離された状態から冷却することなくそのまま回収装置10の予熱炉11へ搬入し、空気中、常圧で1000℃に高炉スラグを予熱する(ステップ301)。
次に、当該予熱炉11で1000℃に予熱された高炉スラグを均熱炉12へ搬入し、空気中、常圧で1700℃に加熱する(ステップ302)。
【0052】
次に、均熱炉12で1700℃に加熱された高炉スラグを第1の減圧蒸発炉13へ搬入し、当該第1の減圧蒸発炉13内で1Torr〜760Torr(常圧)に減圧し、TiOの融点(1870℃)よりも低い温度に加熱する(ステップ303)。ここで、後述する物質のなかで一番高い融点はSiOの1650℃であるので例えば1680℃から1850℃までの温度に加熱する。これにより、TiOより融点の低いSiO、Fe酸化物、硫化物などの物質が蒸発し、高炉スラグから気体中に分離される(ステップ304)。
【0053】
なお、SiOのみを回収する場合は、SiOの融点より低い融点のFe酸化物、硫化物を上述と同じ様な方法で当該2成分を分離回収して、その後SiOのみを1650℃〜1850℃の温度と1Torr〜760Torrの圧力で単独で回収する。この様にすることにより高純度のSiOが得られる。
【0054】
高炉スラグから分離されたSiO、Fe酸化物、硫化物などの物質である気体中の微粉末は、配管25を通って真空ポンプ24により第1の液体回収装置21の液体回収本体212内に吸引される(ステップ305)。
【0055】
当該液体回収本体212内部の減圧空間に吸い込まれたSiO、Fe酸化物、硫化物などの物質(微粉末)は、遠心分離装置217により当該液体回収本体212内部の内壁に向かって集塵される。そしてその集塵された物質(微粉末)は、天井215付近からの液体シャワーにより真空オイルを主成分とする液体が貯められた液体槽211へ落下させられ、液体槽211内に沈殿する(ステップ306)。なお、液体シャワーは当該液体を循環させて使用することが好ましい。
【0056】
自動コンベア213の水平移動部分が液体中を水平移動することで液体槽211内に沈殿した物質をコンベア上に回収し、当該自動コンベア213の斜め上方移動部分により当該SiO,Fe酸化物、硫化物などの沈殿物を液体槽211の液面から外部へ運び出し、回収する(ステップ307)。
【0057】
第1の液体回収装置21の液体回収本体212内部の気体(第1の液体回収装置21で取り切れなかった微粉末や分解ガスなど種々の物質を含んだ気体)は、上述の真空ポンプ24により第2の液体回収装置22に吸引される(ステップ308)。これにより、当該第2の液体回収装置22の液体回収本体222内のシャワーにより種々の物質は液体槽221に落下させられ、液体槽221内に沈殿する。この沈殿物は清掃口225より回収される。
【0058】
上述の第2の液体回収装置22にも回収されなかった物質があるときは、真空ポンプ24の前に備えられたフィルター23によりろ過され、最終的に無害な気体となって排出される(ステップ309)。
【0059】
次に、第1の減圧蒸発炉13で1680℃から1850℃までの温度に加熱された高炉スラグを第2の減圧蒸発炉14へ搬入し、当該第2の減圧蒸発炉14内で1Torr〜760Torr(常圧)に減圧し、TiOの融点(1870℃) 以上で、Alの融点未満の温度まで加熱する(ステップ310)。例えばTiOの融点(1870℃)の直上からAlの融点2050℃直下の間の温度を使用することでTiOの酸化物単独で高純度に回収できる。
【0060】
これにより、TiOが蒸発し、高炉スラグから気体中に分離される(ステップ311)。以下は、SiO、Fe酸化物、硫化物などの回収と同様であり、その説明は省略する(ステップ312〜316)。
【0061】
次に、上述の第2の減圧蒸発炉14によりTiOの融点の1870℃以上で、Alの融点未満の温度に加熱された高炉スラグを移動室15へ搬入し(ステップ317)、空気などの気体によって冷却し、その後、水槽冷却室16へ搬入する(ステップ318)。
この水槽冷却室により冷却されたMgO、CaO、Al等は、残渣として回収する(ステップ319)。
【0062】
以上により、本発明では製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを分離された状態から冷却することなくそのまま、予熱炉11、均熱炉12、第1の減圧蒸発炉13に搬入することとしたので、予熱炉11などで加熱するためのエネルギーを小さく抑えることができる。
【0063】
また、第1の減圧蒸発炉13でTiOの融点よりも低い温度まで加熱し、融点がTiOより低い物質を当該高炉スラグから分離した後で第2の減圧蒸発炉14に搬入して、さらにTiOの融点まで加熱することとしたので、容易にTiOを分離、回収することができる。従って、貴重なTiOの酸化物のまま分離して回収し、産業廃棄物としての高炉スラグを資源として有効活用することにより、不足するレアーメタルを補い同時に産業廃棄物等の量を減らすことができる。
【0064】
さらに、予熱炉11、均熱炉12、移動室15、水槽冷却室16はすべて空気中での常圧酸化炉或いは常圧酸化室である。第1及び第2の減圧蒸発炉13、14及び第1及び第2液体回収装置(液体回収本体)関連設備のみが減圧室となる。従って、すべて真空室となっている(炉の装置全体が真空装置となっている)場合に比較して、酸化炉が多く設備が安価でランニングコストも安く済む。
【0065】
また、回収装置として第1の液体回収装置で有用物質等を回収するとともに、さらに第2の液体回収装置、フィルターを設けたが、このことは、公害防止装置となり、又真空ポンプの能力低下を防ぎ、さらに故障が少なく、ポンプの寿命を長くする。
さらに、低減圧処理のため(1Torr〜760Torr)の真空ポンプの台数が少ないため設備費が安く、使用電力量が少ない、安価なエネルギー代となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0066】
上述のスラグ冷却時のエネルギーは非常に大きく、当該冷却用水槽中の水はたえず沸騰する。したがって、この沸騰する水を利用して水蒸気発電をする水蒸気発電装置(図1の符号17)備えることが好ましい。これにより発電された電気は本設備の電気として利用したり、他にも転用したりすることにより、省エネルギー化を図ることができ、ランニングコストも安価にすることができる。
例えば、回収したTiOは回収高温温度を利用し別室で2000℃溶融液の電解方法などのKroll法又はHunter法などの方法で直接金属Tiを回収するように構成してもよい。
上記の実施形態に示した装置は基本的には連続炉であるが、低周波加熱、プラズマ加熱の場合単炉により構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 回収装置
11 予熱炉
12 均熱炉
13 第1の減圧蒸発炉
14 第2の減圧蒸発炉
15 移動室
16 水槽冷却室
21、31 第1の液体回収装置
22、32 第2の液体回収装置
23、33 フィルター
24、34 真空ポンプ
211 液体槽
213 自動コンベア
216 シャワー部
217 遠心分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのままTiOの融点よりも低い温度まで加熱し、融点がTiOの融点よりも低い物質を前記高炉スラグから分離して除去し、
前記物質が除去された高炉スラグをTiOの融点以上で、高炉スラグに含まれるTiOの融点よりも融点の高い物質の当該融点未満の温度まで加熱し、TiOを前記高炉スラグから分離して酸化物のまま回収する
回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回収方法であって、
前記TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収する工程は、前記高炉スラグから分離されたTiOの微粉末を含む気体から、TiOの微粉末を液体に沈殿させ、沈殿物を回収する
回収方法。
【請求項3】
請求項2に記載の回収方法であって、
前記TiOの微粉末を液体に沈殿させる工程は、TiOの微粉末を含む気体から、遠心力を使ってTiOの微粉末を集塵し、集塵したTiOの微粉末にシャワーを噴出して前記液体に沈殿させる
回収方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の回収方法であって、
前記融点がTiOの融点よりも低い物質を高炉スラグから分離して除去する工程及び前記TiOを高炉スラグから分離して酸化物のまま回収する工程は、1Torr〜760Torrの範囲の減圧下又は常圧下において行われる
回収方法。
【請求項5】
製鉄用の溶鉱炉の鉄鉱石から排出される高炉スラグを、排出された状態から冷却処理をすることなくそのままTiOの融点よりも低い温度まで加熱する第1の炉と、
前記加熱により高炉スラグから蒸発した物質を前記第1の炉より除去する手段と、
前記物質が除去された高炉スラグをTiOの融点以上で、高炉スラグに含まれるTiOの融点よりも融点の高い物質の当該融点未満の温度まで加熱する第2の炉と、
前記加熱により高炉スラグから蒸発したTiOを酸化物のまま回収する手段と
を具備する回収装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回収装置であって、
前記回収手段は、前記高炉スラグから蒸発したTiOの微粉末を液体に沈殿させるための液体槽を有し、
前記液体槽は、液面が外部に露出する沈殿物回収部を有する
回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回収装置であって、
前記液体槽の液体内に配置され、前記液体槽に沈殿した沈殿物を前記沈殿物回収部を介して外部に運ぶためのコンベア
をさらに具備する回収装置。
【請求項8】
請求項6に記載の回収装置であって、
前記液体槽の液面の上部に配置され、TiOの微粉末を含む気体から、遠心力を使ってTiOの微粉末を集塵する遠心分離手段と、
前記集塵したTiOの微粉末にシャワーを噴出して前記液体に沈殿させるシャワー手段と
をさらに具備する回収装置。
【請求項9】
請求項5〜8のうちいずれか1項に記載の回収装置であって、
前記第1及び第2の炉は、1Torr〜760Torrの範囲の減圧下又は常圧下とされる
回収装置。
【請求項10】
請求項5〜9のうちいずれか1項に記載の回収装置であって、
前記回収手段によりTiOが回収された後の高炉スラグを冷却する水槽冷却室と、
前記水槽冷却室の沸騰水を利用して発電する発電装置と
をさらに具備する回収装置。
【請求項11】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の回収方法であって、
前記融点がTiOの融点よりも低い物質を高炉スラグから分離して除去する工程は、前記物質を構成する各金属酸化物及び硫化物を、低減圧で、各金属酸化物及び硫化物ごとにそれぞれの融点で別々に分離して回収する
回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−112021(P2012−112021A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263992(P2010−263992)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(510313474)文華通商株式会社 (1)
【Fターム(参考)】