説明

回折格子シートの製造方法、回折格子シートおよび窓ガラス

【課題】回折格子を有する窓ガラスの製造時間の短縮および該窓ガラスの大面積化を可能にする、回折格子シートおよびその製造方法、ならびに太陽光の入射角によって赤外線の透過量をコントロールできる窓ガラスを提供する。
【解決手段】互いに平行な第1の主表面18および第2の主表面19を有する透明樹脂層10と、互いに平行にかつ所定のピッチPpで配置された複数の格子線22からなる回折格子20とを有し、格子線22が透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、格子線22が透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して長さ方向が平行に延びるよう、透明樹脂層10内に埋設されてなる、回折格子シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子シートの製造方法、回折格子シートおよび窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の窓ガラスとして、ガラス板の内部に回折格子が形成されたものが提案されている(特許文献1)。該窓ガラスによれば、季節(太陽の高度、すなわち太陽光の入射角)によって赤外線の透過量をコントロールできるため、夏季においては室内に侵入する太陽光の赤外線を効率よく遮断して室内の温度上昇を抑え、冬季においては太陽光の赤外線を室内に効率よく取り込んで室内の温度を上昇させることができる。
【0003】
しかし、該窓ガラスは、ガラス板にレーザ光の干渉光を照射して照射部分の屈折率を変化させることによって格子線を形成し、製造されている。そのため、量産には時間がかかりすぎ、また大面積化が難しいという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/134983号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、回折格子を有する窓ガラスの製造時間の短縮および該窓ガラスの大面積化を可能にする、回折格子シートおよびその製造方法、ならびに太陽光の入射角によって赤外線の透過量をコントロールできる窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回折格子シートの製造方法は、互いに平行な第1の主表面および第2の主表面を有する透明樹脂層と、互いに平行にかつ所定のピッチで配置された複数の格子線からなる回折格子とを有し、前記格子線が、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、前記格子線が、前記透明樹脂層の第1の主表面および第2の主表面に対して長さ方向が平行に延びるように、前記透明樹脂層内に埋設されてなる、回折格子シートを製造する方法であって、下記の工程(a)〜(c)を有することを特徴とする。
(a)一方の表面が、前記第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
(b)前記凸条の表面の少なくとも一部に、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体をドライコートして前記薄膜を形成することによって、前記複数の格子線からなる回折格子を形成する工程。
(c)前記第1の層の凹凸面および前記回折格子の表面に、透明樹脂からなる第2の層を形成することによって、前記第1の層および前記第2の層からなる前記透明樹脂層を形成する工程。
【0007】
本発明の回折格子シートの製造方法は、前記第1の主表面に接する第1の透明基板をさらに有する回折格子シートを製造する方法であって、前記工程(a)が、下記の工程(a’)であることが好ましい。
(a’)第1の透明基板の表面に、一方の表面が、前記第1の透明基板との界面、すなわち前記第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
【0008】
本発明の回折格子シートの製造方法は、前記第2の主表面に接する第2の透明基板をさらに有する回折格子シートを製造する方法であって、前記工程(c)が、下記の工程(c’)であることが好ましい。
(c’)前記第1の層および前記回折格子が表面に形成された第1の透明基板と、光硬化性組成物からなる塗膜が表面に形成された第2の透明基板とを、前記第1の層および前記回折格子に前記塗膜が接するように貼り合わせ、ついで前記塗膜を光硬化させて第2の層を形成することによって、前記第1の層および前記第2の層からなる前記透明樹脂層を形成する工程。
【0009】
本発明の回折格子シートは、互いに平行な第1の主表面および第2の主表面を有する透明樹脂層と、互いに平行にかつ所定のピッチで配置された複数の格子線からなる回折格子とを有する回折格子シートであって、前記格子線が、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、前記格子線が、前記透明樹脂層の第1の主表面および第2の主表面に対して長さ方向が平行に延びるように、前記透明樹脂層内に埋設されたものであることを特徴とする。
本発明の回折格子シートは、前記第1の主表面に接する第1の透明基板およびまたは前記第2の主表面に接する第2の透明基板を有することが好ましい。
【0010】
本発明の窓ガラスは、本発明の回折格子シートと、ガラス板とを有することを特徴とする。
本発明の窓ガラスは、2枚のガラス板と、その間に挟まれた前記回折格子シートとが、中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスであってもよい。
本発明の窓ガラスは、2枚のガラス板が所定の間隔をあけて配置された複層ガラスであって、少なくとも一方のガラス板の内面に前記回折格子シートが貼着されたものであってもよい。
本発明の窓ガラスは、ガラス板の表面に前記回折格子シートが貼着されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回折格子シートは、回折格子を有する窓ガラスの製造時間の短縮および該窓ガラスの大面積化を可能にする。
本発明の回折格子シートの製造方法によれば、前記回折格子シートを、比較的短時間で簡便に製造でき、かつ大面積化が容易である。
本発明の窓ガラスは、太陽光の入射角によって赤外線の透過量をコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の回折格子シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の回折格子シートにおける透明樹脂層を示す斜視図である。
【図3】本発明の回折格子シートの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の回折格子シートの製造方法における工程(a)を説明する断面図である。
【図5】本発明の回折格子シートの製造方法における工程(b)を説明する斜視図である。
【図6】本発明の回折格子シートの製造方法における工程(c)を説明する断面図である。
【図7】本発明の窓ガラスの第1の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の窓ガラスの第2の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の窓ガラスの第3の実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明の窓ガラスにおける夏季の太陽光の透過の様子を示す図である。
【図11】本発明の窓ガラスにおける冬季の太陽光の透過の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における各寸法は、回折格子シートの断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像または原子間力顕微鏡(AFM)像において、3箇所の各寸法を測定し、平均した値とする。
また、屈折率は、波長589nmにおける屈折率である。
また、本発明における透明とは、可視光線および赤外線を透過することを意味する。
【0014】
<回折格子シート>
以下、本発明の回折格子シートの実施形態を、図を用いて説明する。以下の図は模式図であり、実際の回折格子シートは、図示したような理論的かつ理想的形状を有するものではない。たとえば、実際の回折格子シートにおいては、格子線等の形状に多少の崩れがある。
【0015】
図1は、本発明の回折格子シートの一実施形態を示す断面図であり、図2は、該回折格子シートにおける透明樹脂層を示す斜視図である。回折格子シート1は、互いに平行な第1の主表面18および第2の主表面19を有する平坦な透明樹脂層10と;透明樹脂層10内に、互いに平行に、所定のピッチPpで埋設された複数の格子線22からなる回折格子20と;透明樹脂層10の第1の主表面18に接する第1の透明基板32と;透明樹脂層10の第2の主表面19に接する第2の透明基板34とを有する。
なお、格子線22の長さ方向の端面は、透明樹脂層10の側面から露出していても構わない。
【0016】
(透明樹脂層)
透明樹脂層10は、互いに平行な第1の主表面18および第2の主表面19を有する。第1の主表面18および第2の主表面19は、互いに実質的に平行に形成されていればよく、完全に平行に形成されてなくてもよい。
【0017】
透明樹脂層10は、具体的には、図1に示すような、断面形状が直角三角形である複数の凸条12が、互いに平行にかつ所定のピッチPpで表面に形成された凹凸面を有する第1の層14と;凸条12の第1の側面を被覆する格子線22と凸条12との間の溝に充填され、かつ凸条12の頂部および格子線22を完全に被覆する第2の層16とを有する積層体である。第1の層14と第1の透明基板32との界面が、透明樹脂層10の第1の主表面18であり、第2の層16と第2の透明基板34との界面が、透明樹脂層10の第2の主表面19である。
【0018】
本発明において凸条12とは、第1の層14の平坦部から立ち上がり、かつその立ち上がりが一方向に伸びている部分をいう。凸条12は第1の層14の平坦部と一体で第1の層14の平坦部と同じ材料からなっていてもよく、第1の層14の平坦部と異なる透明樹脂からなっていてもよい。凸条12は第1の層14の平坦部と一体で、かつ第1の層14の平坦部と同じ材料からなっていることが好ましい。
【0019】
複数の凸条12は、互いに実質的に平行に形成されていればよく、完全に平行に形成されてなくてもよい。また、凸条12は、直線が好ましいが、隣接する凸条12が接触しない範囲で曲線または折れ線であってもよい。
【0020】
凸条12は、その長さ方向に直交する断面の形状が長さ方向にわたってほぼ一定であり、複数の凸条12においてもそれらの断面形状はすべてほぼ一定であることが好ましい。凸条12の断面形状は、底部(第1の層14の平坦部)から頂部に向かうにしたがって幅がしだいに狭くなる形状である。具体的な断面形状としては、たとえば、三角形、台形等が挙げられる。断面形状における角は曲線状であってもよい。また、断面形状における辺(側面)は曲線状であってもよく、階段状であってもよい。
【0021】
本発明において凸条12の頂部とは、前記断面形状の最も高い部分が長さ方向に連なった部分をいう。凸条12の頂部は面であってもよく、線であってもよい。たとえば、断面形状が台形の場合には頂部は面をなし、断面形状が三角形の場合には頂部は線をなす。本発明において凸条12の頂部以外の表面を凸条12の側面という。
【0022】
凸条12は、第1の側面および第2の側面を有する。第1の側面および第2の側面のうち、少なくとも第1の側面が第1の主表面18に対して勾配を有することが好ましい。第1の側面は、勾配を有する限りは、平面であってもよく、曲面であってもよく、階段状であってもよい。第2の側面は、第1の主表面18に対して垂直であってもよく、勾配を有していてもよい。
【0023】
透明樹脂層10(第1の層14および第2の層16)は、透明樹脂からなる層である。
透明樹脂としては、後述するインプリント法にて凸条12を形成できる点および格子線22を透明樹脂層10内に埋設しやすい点から、光硬化樹脂または熱可塑性樹脂が好ましく、光インプリント法にて凸条12を形成できる点および耐熱性および耐久性に優れる点から、光硬化樹脂が特に好ましい。光硬化樹脂としては、生産性の点から、光ラジカル重合により光硬化し得る光硬化性組成物を光硬化して得られる光硬化樹脂が好ましい。
【0024】
透明樹脂層10(第1の層14および第2の層16)の屈折率は、1.25〜1.8が好ましく、1.3〜1.7がより好ましい。透明樹脂層10の屈折率が前記範囲の間にあれば、第1の透明基板32、第2の透明基板34の材料を適宜選択することにより、透明樹脂層10と第1の透明基板32、もしくは透明樹脂層10と第2の透明基板34の間の屈折率の差を小さくしやすい。
【0025】
第1の層14と第2の層16との屈折率の差(絶対値)は、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。屈折率の差が0.05以下であれば、第1の層14と第2の層16の界面における反射、回折等による迷光やロスが抑制できる。また第1の層14と第2の層16の屈折率が同一であれば、光学設計が容易になる。
第1の層14と第2の層16との屈折率の差を小さくする点から、第1の層14の材料と第2の層16の材料は、実質的に同じ材料が好ましく、完全に同じ材料であることがより好ましい。
【0026】
(格子線)
回折格子20は、互いに平行に、所定のピッチPpで埋設された複数の格子線22からなる。複数の格子線22は、互いに実質的に平行に形成されていればよく、完全に平行に形成されてなくてもよい。また、格子線22は、直線が好ましいが、隣接する格子線22が接触しない範囲で曲線または折れ線であってもよい。
【0027】
格子線22は、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して、その長さ方向が平行に延びるように形成される。格子線22は、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して、その長さ方向が実質的に平行に形成されていればよく、完全に平行に形成されてなくてもよい。
【0028】
格子線22は、その長さ方向に直交する方向の断面の形状が長さ方向にわたってほぼ一定であり、複数の格子線22においてもそれらの断面形状はすべてほぼ一定であることが好ましい。
【0029】
凸条12の表面の少なくとも一部に格子線22を形成した場合、格子線22は凸条12の長さ方向に延びる薄膜から構成される。格子線22は、凸条12の第1の側面の少なくとも一部を被覆することが好ましく、第1の側面を完全に被覆することがより好ましい。この際、格子線22は、凸条12の頂部の一部もしくは全部を被覆してもよく、または、凸条12の頂部の全部および凸条12の第2の側面の一部を被覆してもよい。また、格子線22は、隣接する2つの凸条12間の平坦部の一部を被覆していてもよい。
【0030】
格子線22は、格子線22を構成する薄膜の表面が、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して勾配を有するように形成されることが好ましい。薄膜の表面が第1の主表面18および第2の主表面19に対して勾配を有していれば、格子面において回折した光を、屋外の方向あるいは透明樹脂層10の端部の方向へ出射するなどといった出射方向の制御が容易になる。薄膜の表面(格子面)の勾配の角度θは、凸条12の第1の側面の勾配の角度θ1と同じになる。薄膜の表面は、勾配を有する限りは、平面であってもよく、曲面であってもよく、階段状であってもよい。
【0031】
格子線22のピッチPp、格子線22の高さHg、格子線22の厚さDg、格子線22を構成する薄膜の表面の勾配の角度θは、透過量を抑えたい赤外線の波長の範囲、赤外線の透過量を抑えたい太陽光の入射角の範囲、回折格子シートを構成する各材料(透明樹脂層10、格子線22の薄膜、透明基板等)の屈折率、後述する窓ガラスを構成する各材料(ガラス板、中間膜、粘着剤層、ハードコート層等)の屈折率、窓ガラスの設置角度等に応じ、公知の光学的な知見(特許文献1等)に基づいて適宜設定すればよい。
【0032】
なお、格子線22のピッチPpは、格子線22の断面の左端(または右端)から、これに隣接する格子線22の断面の左端(または右端)までの距離であり、格子線22の厚さDgは、格子線22の長さ方向に直交する断面における、凸条12の幅方向と同じ方向の厚さの最大値であり、格子線22の高さHgは、格子線22の長さ方向に直交する断面における、凸条12の高さ方向と同じ方向の高さである。
【0033】
格子線22は、透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなる。格子線22(誘電体)の屈折率を、透明樹脂層10の屈折率よりも大きくすることによって、格子線22(誘電体)の屈折率を、透明樹脂層10の屈折率よりも小さくする場合に比べて、屈折率差をより大きくし、回折効率を上げることが容易になる。また誘電体の選択肢が増える。
格子線22(誘電体)と透明樹脂層10との屈折率の差は、0.01〜1.5が好ましく、0.05〜1.0がより好ましい。屈折率の差が0.01以上であれば、回折効率が高くなる。屈折率の差が1.0以下であれば、透過率の波長分散が生じにくい。
【0034】
誘電体としては、無機酸化物、樹脂等が挙げられる。無機酸化物としては、二酸化ジルコニウム(以下、ジルコニア)、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。樹脂としては、光硬化樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
誘電体としては、樹脂との屈折率差を大きくし、回折効率を大きくできる点から、ジルコニアが特に好ましい。
【0035】
(透明基板)
回折格子シート1は、透明樹脂層10の表面に、熱可塑性樹脂等からなる透明基板(第1の透明基板32および第2の透明基板34)を有する。
【0036】
透明基板と透明樹脂層10との屈折率の差(絶対値)は、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。屈折率の差が0.1以下であれば、透明樹脂層10と透明基板の界面でおこる反射による光のロスを抑えることができる。
【0037】
(作用効果)
以上説明した回折格子シート1にあっては、互いに平行な第1の主表面18および第2の主表面19を有する透明樹脂層20と、互いに平行にかつ所定のピッチPpで配置された複数の格子線22からなる回折格子20とを有し、格子線22が、透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、かつ格子線22が、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して長さ方向が平行に延びるように、透明樹脂層10内に埋設されたものであるため、回折格子シート1に入射する光の入射角によって赤外線の透過量をコントロールできる。
【0038】
また、以上説明した回折格子シート1にあっては、従来のようにガラス板にレーザ光の干渉光を照射して形成するよりも短時間で形成できる格子線22を有する。このような回折格子シート1は、比較的簡便に量産でき、かつ大面積化が容易である。そのため、回折格子シート1を用いることによって、回折格子を有する窓ガラスの製造時間を短縮でき、また、回折格子を有する窓ガラスを大面積化できる。
【0039】
(他の形態)
本発明の回折格子シートは、互いに平行な第1の主表面18および第2の主表面19を有する透明樹脂層10と、互いに平行にかつ所定のピッチPpで配置された複数の格子線22からなる回折格子20とを有する回折格子シートであって、格子線22が、透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、かつ格子線22が、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して長さ方向が平行に延びるように、透明樹脂層10内に埋設されたものであればよく、図示例のものに限定はされない。
【0040】
たとえば、格子線22を構成する誘電体の薄膜の表面は、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して勾配を有していなくてもよい、すなわち、第1の主表面18および第2の主表面19に対して平行であってもよく、垂直であってもよい。
また、透明基板(第1の透明基板32および第2の透明基板34)を有さず、透明樹脂層10のみからなる回折格子シートであってもよい。
また、透明樹脂層10の表面に第1の透明基板32および第2の透明基板34のうち、いずれか一方を有する回折格子シートであってもよい。
【0041】
また、図3に示すように、第2の透明基板34(または第1の透明基板32)の表面にハードコート層36を有する回折格子シート2であってもよい。
ハードコート層36の材料としては、樹脂(光硬化樹脂等)、無機酸化物(二酸化ケイ素等)等が挙げられる。
【0042】
<回折格子シートの製造方法>
本発明の回折格子シートの製造方法としては、たとえば、下記の工程(a)〜(c)を有する方法が挙げられる。
【0043】
(a)一方の表面が第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチPpで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
(b)凸条の表面の少なくとも一部に、透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体をドライコートして薄膜を形成することによって、複数の格子線からなる回折格子を形成する工程。
(c)第1の層の凹凸面および回折格子の表面に、透明樹脂からなる第2の層を形成することによって、第1の層および第2の層からなる前記透明樹脂層を形成する工程。
【0044】
また、透明基材を有する回折格子シート1の製造方法としては、たとえば、下記の工程(a’)、工程(b)、工程(c’)を有する方法が挙げられる。
(a’)第1の透明基板の表面に、一方の表面が、第1の透明基板との界面、すなわち第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチPpで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
(b)凸条の表面の少なくとも一部に、透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体をドライコートして薄膜を形成することによって、複数の格子線からなる回折格子を形成する工程。
(c’)第1の層および回折格子が表面に形成された第1の透明基板と、光硬化性組成物からなる塗膜が表面に形成された第2の透明基板とを、第1の層および回折格子に塗膜が接するように貼り合わせ、ついで塗膜を光硬化させて第2の層を形成することによって、第1の層および第2の層からなる透明樹脂層を形成する工程。
【0045】
具体的には、図1の回折格子シート1の製造方法としては、たとえば、下記の工程(a”)、工程(b”)、工程(c”)を有する方法が挙げられる。
(a”)第1の透明基板32の表面に、一方の表面が第1の透明基板32との界面(すなわち第1の主表面18)であり、他方の表面が、第1の主表面18に対して勾配した第1の側面を有する複数の凸条12が互いに平行にかつ所定のピッチPpで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層14を形成する工程。
(b”)凸条12の第1の側面に、透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体をドライコートして薄膜(格子線22)を形成することによって、複数の格子線22からなる回折格子20を形成する工程。
(c”)第1の層14および回折格子20が表面に形成された第1の透明基板32と、光硬化性組成物からなる塗膜が表面に形成された第2の透明基板34とを、第1の層14および回折格子20に塗膜が接するように貼り合わせ、ついで塗膜を光硬化させて第2の層16を形成することによって、第1の層14および第2の層16からなる透明樹脂層10を形成する工程。
【0046】
(工程(a)、工程(a’)、工程(a”))
第1の層14の作製方法としては、インプリント法(光インプリント法、熱インプリント法)、リソグラフィ法等が挙げられ、凸条12を生産性よく形成できる点および第1の層14を大面積化できる点から、インプリント法が好ましく、凸条12をより生産性よく形成できる点およびモールドの溝を精度よく転写できる点から、光インプリント法が特に好ましい。
【0047】
光インプリント法は、たとえば、電子線描画とエッチングとの組み合わせ等により、複数の溝が互いに平行にかつ所定のピッチPpで形成されたモールドを作製し、該モールドの溝を、第1の透明基板32の表面に塗布された光硬化性組成物に転写し、同時に該光硬化性組成物を光硬化させる方法である。
【0048】
光インプリント法による第1の層14の作製は、具体的には下記の工程(i)〜(iv)を経て行われることが好ましい。
(i)光硬化性組成物を第1の透明基板32の表面に塗布する工程。
(ii)図4に示すように、複数の溝42が互いに平行にかつ所定のピッチPpで形成されたモールド40を、溝42が光硬化性組成物24に接するように、光硬化性組成物24に押しつける工程。
(iii)モールド40を光硬化性組成物24に押しつけた状態で放射線(紫外線、電子線等)を照射して光硬化性組成物24を硬化させて、モールド40の溝42に対応する複数の凸条12を有する第1の層14を作製する工程。
(iv)第1の層14からモールド40を分離する工程。
【0049】
熱インプリント法による第1の層14の作製は、具体的には下記の工程(i)〜(iii)を経て行われることが好ましい。
(i)第1の透明基板32の表面に熱可塑性樹脂の被転写膜を形成する工程、または熱可塑性樹脂の被転写フィルムを作製する工程。
(ii)複数の溝42が互いに平行にかつ一定のピッチPpで形成されたモールド40を、溝42が被転写膜または被転写フィルムに接するように、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)以上に加熱した被転写膜または被転写フィルムに押しつけ、モールド40の溝42に対応する複数の凸条12を有する第1の層14を作製する工程。
(iii)第1の層14をTgまたはTmより低い温度に冷却して第1の層14からモールド40を分離する工程。
【0050】
インプリント法に用いられるモールド40の材料としては、シリコン、ニッケル、石英ガラス、樹脂等が挙げられる。
樹脂フィルムを第1の透明基板32に用いた場合は、インプリント法は、ロールツウロール方式で行うことができる。
【0051】
(工程(b)、工程(b”))
格子線22は、第1の層14の凸条12の表面に選択的に、透明樹脂層10より屈折率の大きい誘電体をドライコートして形成される。
【0052】
ドライコート法としては、PVD法またはCVD法が挙げられ、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法が好ましく、真空蒸着法が特に好ましい。真空蒸着法としては、蒸発粒子の第1の層14に対する入射方向を制御でき、凸条12の表面に選択的に誘電体を蒸着できる点から、斜方蒸着法が好ましい。
【0053】
斜方蒸着法による格子線22の形成は、たとえば、下記のように行う。
まず、図5に示すように、凸条12の長さ方向Lに対して略直交し、かつ凸条12の高さ方向Hに対して第1の側面の側に下式(1)を満たす角度θ(°)をなす方向V1から誘電体を蒸着する工程を実施することによって、凸条12の第1の側面の一部または全体を被覆する薄膜を形成する。
tan(θ±10)=(Pp−Hp/tanθ)/Hp ・・・(1)。
【0054】
式(1)の角度θ(°)は、隣の凸条12に遮られることなく、凸条12の第1の側面に誘電体を蒸着するための角度を表わし、凸条12の第1の側面の底部と隣の凸条12の頂部との間隔(すなわち凸条12のピッチPpからHp/tanθを引いた距離(Pp−Hp/tanθ))と、隣の凸条12の高さHpとから決まる。「±10」は振れ幅である。
角度θ(°)は、tan(θ±7)=(Pp−Hp/tanθ)/Hpを満たすことが好ましく、tan(θ±5)=(Pp−Hp/tanθ)/Hpを満たすことがより好ましい。
【0055】
(工程(c)、工程(c’)、工程(c”))
図6に示すように、第1の層14および回折格子20が表面に形成された第1の透明基板32と、光硬化性組成物からなる塗膜26が表面に形成された第2の透明基板34とを、第1の層14および回折格子20に塗膜26が接するように貼り合わせる。
ついで、塗膜26を光硬化させて第2の層16を形成することによって、第1の層14および第2の層16からなる透明樹脂層10を形成する。
【0056】
(作用効果)
以上説明した本発明の回折格子シートの製造方法にあっては、第1の層の凹凸面における凸条の表面の少なくとも一部に、格子線をドライコートによって形成しているため、複数の格子線を同時に、かつ短時間で形成できる。そのため、回折格子シート1は、比較的短時間で簡便に製造でき、かつ大面積化が容易である。
【0057】
(他の形態)
本発明の回折格子シートの製造方法は、上述の工程(a)〜(c)を有する方法であればよく、上述の工程(a”)〜(c”)を有する図示例の回折格子シートの製造方法に限定はされない。
【0058】
たとえば、凸条12の第1の側面は、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して勾配を有していなくてもよい、すなわち、第1の主表面18および第2の主表面19に対して垂直であってもよい。また、凸条12の第2の側面は、透明樹脂層10の第1の主表面18および第2の主表面19に対して勾配を有していてもよい。また、凸条12の頂部は、平面であってもよい。
また、格子線22を構成する誘電体の薄膜の表面は、凸条12の第2の側面に形成されてもよく、凸条12の頂部の平面に形成されてもよい。
【0059】
<窓ガラス>
本発明の窓ガラスは、本発明の回折格子シートと、ガラス板とを有するものである。本発明の窓ガラスとしては、具体的には後述する第1〜3の実施形態の窓ガラスが挙げられる。
【0060】
(第1の実施形態)
図7は、本発明の窓ガラスの第1の実施形態を示す断面図である。窓ガラス3は、2枚のガラス板50と、その間に挟まれた回折格子シート1とが、中間膜52を介して貼り合わされた合わせガラスである。
【0061】
ガラス板50としては、窓ガラス用の公知のガラス板を用いればよい。ガラス板としては、フロート法またはダウンドロー法で得られたものであってもよく、型板ガラスであってもよい。ガラス板の材料としては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
中間膜52としては、公知の合わせガラスに用いられる中間膜(ポリビニルブチラールフィルム等)を用いればよい。
【0062】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の窓ガラスの第2の実施形態を示す断面図である。窓ガラス4は、2枚のガラス板50と、ガラス板50間に空隙54が形成されるようにガラス板50の周縁部に介在配置される枠状のスペーサ56と、スペーサ56とガラス板50との間に設けられた1次シール材58と、スペーサ56の周縁に設けられた2次シール材59と、一方のガラス板50の内面に粘着剤層60を介して貼着された回折格子シート1とを有する複層ガラスである。
【0063】
ガラス板50としては、第1の実施形態と同様のものを用いればよい。
スペーサ56、1次シール材58、2次シール材59としては、たとえば、特許第4479690号公報に記載のスペーサ、1次シール材、2次シール材を用いればよい。
粘着剤層60としては、ガラス板に各種フィルムを貼着する際に用いられる公知の粘着シート等を用いればよい。
【0064】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の窓ガラスの第3の実施形態を示す断面図である。窓ガラス5は、ガラス板50と、ガラス板50の表面に粘着剤層60を介して貼着された回折格子シート2とを有するものである。回折格子シート2は、ハードコート層36が最外層となるようにガラス板50の表面に貼着される。
【0065】
ガラス板50としては、第1の実施形態と同様のものを用いればよい。
粘着剤層60としては、第2の実施形態と同様のものを用いればよい。
【0066】
(作用効果)
以上説明した本発明の窓ガラスにあっては、本発明の回折格子シートを有するため、太陽光の入射角によって赤外線の透過量をコントロールできる。
すなわち、図10に示すように、太陽の高度が高い(太陽光の入射角θsが大きい)夏季においては、窓ガラス3に入射した太陽光のうち、波長の長い赤外線の一部が回折格子20によって回折され、室内に取り込まれることはない。一方、図11に示すように、太陽の高度が低い(太陽光の入射角θsが小さい)冬季においては、窓ガラス3に入射した太陽光(可視光線〜赤外線)は、回折格子20によって回折されることなく、室内に効率よく取り込まれる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
例1〜5は実施例であり、例6は比較例である。
【0068】
(日射透過率)
透過率は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV3600)を用いて入射角0°から80°にて測定した。入射角は、図10および図11におけるθsに相当する。日射透過率は、得られた分光スペクトルから日射透過率測定ソフトウエアを用いシミュレーションにより求めた。
【0069】
(光硬化性組成物1)
撹拌機および冷却管を装着した1000mLの4つ口フラスコに、
単量体1(新中村化学工業社製、NK エステル A−DPH、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)の60g、
単量体2(新中村化学工業社製、NK エステル A−NPG、ネオペンチルグリコールジアクリレート)の40g、
光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、IRGACURE907)の4.0g、
含フッ素界面活性剤(旭硝子社製、フルオロアクリレート(CH=CHCOO(CH(CFF)とブチルアクリレートとのコオリゴマー、フッ素含有量:約30質量%、質量平均分子量:約3000)の0.1g、
重合禁止剤(和光純薬社製、Q1301)の1.0g、および
シクロヘキサノンの65.0gを入れた。
フラスコ内を常温および遮光にした状態で、1時間撹拌して均一化した。ついで、フラスコ内を撹拌しながら、コロイド状シリカの100g(固形分:30g)をゆっくりと加え、さらにフラスコ内を常温および遮光にした状態で1時間撹拌して均一化した。ついで、シクロヘキサノンの340gを加え、フラスコ内を常温および遮光にした状態で1時間撹拌して光硬化性組成物1の溶液を得た。光硬化性組成物1の硬化後の屈折率は1.45であった。
【0070】
〔例1〕
(工程(a’))
厚さ50μmの高透過ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、A4300、100mm×100mm、屈折率(589nm):1.65)の表面に、光硬化性組成物1をスピンコート法により塗布し、厚さ5μmの光硬化性組成物1の塗膜を形成した。
複数の溝が互いに平行にかつ所定のピッチで形成されたニッケル製モールド(面積:150mm×150mm、パターン面積:100mm×100mm、溝のピッチPp:0.75μm、溝の深さHp:3.1μm、溝の長さ:100mm、溝の断面形状:略直角三角形)を、溝が光硬化性組成物1の塗膜に接するように、25℃にて0.5MPa(ゲージ圧)で光硬化性組成物1の塗膜に押しつけた。
該状態を保持したまま、PETフィルム側から高圧水銀灯(周波数:1.5kHz〜2.0kHz、主波長光:255nm、315nmおよび365nm、365nmにおける照射エネルギー:1000mJ)の光を15秒間照射し、光硬化性組成物1を硬化させて、モールドの溝に対応する複数の凸条を有する第1の層(凸条のピッチPp:0.75μm、凸条の高さHp:3.1μm、凸条の第1の側面の勾配の角度θ1:77°)を形成した。第1の層からモールドをゆっくり分離した。
【0071】
(工程(b))
蒸着源に対向する第1の層付きPETフィルムの傾きを変更可能な真空蒸着装置(昭和真空社製、SEC−16CM)を用い、第1の層の凸条の第1の側面に斜方蒸着法にてジルコニアを蒸着させ、ジルコニア(屈折率(589nm):2.1)の薄膜からなる格子線(格子線のピッチPp:0.75μm、格子線の高さHg:3.1μm、格子線の厚さDg:70nm、格子線を構成する薄膜の表面の勾配の角度θ:77°)を形成した。
この際、凸条の長さ方向Lに対して略直交し、かつ凸条の高さ方向Hに対して第1の側面の側に角度θをなす方向V1(すなわち第1の側面の側)からの蒸着を1回行い、かつ該蒸着における角度θおよび該蒸着で凸条が形成されていない平坦な領域に形成される薄膜の厚さ(すなわち蒸着量)Dg’を表1に示す角度および厚さとした。なお、格子線の厚さDgは、シミュレーションで設計した目的とする厚さであり、該厚さになるように、蒸着量Dg’を調整した。Dg’は水晶振動子を膜厚センサーとする膜厚モニターにより測定した。
【0072】
(工程(c’))
厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡社製、A4300、100mm×100mm)の表面に、光硬化性組成物1をスピンコート法により塗布し、厚さ10μmの光硬化性組成物1の塗膜を形成した。
第1の層および回折格子が表面に形成されたPETフィルムに、光硬化性組成物1からなる塗膜が表面に形成されたPETフィルムを、第1の層および回折格子に塗膜が接するように25℃にて0.5MPa(ゲージ圧)で押しつけ、該状態を保持したまま、高圧水銀灯(周波数:1.5kHz〜2.0kHz、主波長光:255nm、315nmおよび365nm、365nmにおける照射エネルギー:1000mJ)の光を15秒間照射した。光硬化性組成物1を硬化させて第2の層を形成することによって、第1の層および第2の層からなる透明樹脂層を形成し、図1に示す回折格子シート1を得た。
【0073】
〔例2〕
厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡社製、A4300、100mm×100mm)の片面に、光硬化性ハードコート材料(モメンティブ社製、UVHC8558)をスピンコート法により塗布し、厚さ5μmの塗膜を形成した。該塗膜に、窒素気流下、高圧水銀灯(周波数:1.5kHz〜2.0kHz、主波長光:255nm、315nmおよび365nm、365nmにおける照射エネルギー:1000mJ)の光を30秒間照射し、硬化させてPETフィルムの片側にハードコート層(屈折率(589nm):1.497)を形成した。
工程(c’)において、ハードコート層付きPETフィルムを用いた以外は、例1と同様にして図3に示す回折格子シート2を得た。
【0074】
〔例3〕
フロートガラス板(100mm×100mm×厚さ2mm)の2枚およびその内側に配設された自動車窓ガラス用中間膜(積水化学社製、厚さ0.78mm、ポリビニルブチラールフィルム、屈折率(589nm):1.48)の2枚により、例1で得られた回折格子シート1を挟持し、720mmHgの減圧下で4分間脱気し、脱気状態のままで、120℃のオーブン内に30分間入れた。ガラス板と中間膜とが予備圧着されたサンドイッチ体をオートクレーブ内に入れ、圧力:1.3MPa、温度:135℃で熱圧着処理することにより、図7に示す窓ガラス3(合わせガラス)を得た。入射角0°から80°における日射透過率を表1に示す。
【0075】
〔例4〕
フロートガラス板(105mm×105mm×厚さ2mm)の片面に、例1で得られた回折格子シート1を、ノンキャリア粘着フィルム パナピールTP04(パナック社製、粘着層の屈折率(589nm):1.49)を用いて貼合した。片面に回折格子フィルムが貼合されたガラス板と、別のフロートガラス板(105mm×105mm×厚さ2mm)を用い、特許第4479690号公報の実施例に記載の方法と同様の方法にて、図8に示す窓ガラス4(複層ガラス)を得た。入射角0°から80°における日射透過率を表1に示す。
【0076】
〔例5〕
回折格子シート2のハードコート層とは反対側の表面に、ノンキャリア粘着フィルム パナピールTP04(パナック社製)の一方の面のセパレートフィルムを剥離してラミネートした。その後、さらにパナピールTP04の他方の面のセパレートフィルムを剥離しながらフロートガラス板(100mm×100mm×厚さ2mm)に回折格子シート2を貼合し、図9に示す窓ガラス5を得た。入射角0°から80°における日射透過率を表1に示す。
【0077】
〔例6〕
フロートガラス板(旭硝子社製、FL3、厚さ2mm)について、入射角0°から80°における日射透過率を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
例3〜5の窓ガラスは、入射角度が小さいときはフロートガラス板と同様の日射透過率を示し、入射角度が大きいときはフロートガラスに比べ日射透過率が低くなる。これは、夏季は太陽光(赤外線)の透過率が低く、冬季は太陽光(赤外線)の透過率が高いということを示している。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の回折格子シート付きの窓ガラスは、夏季においては室内に侵入する太陽光の赤外線を効率よく遮断して室内の温度上昇を抑え、冬季においては太陽光の赤外線を室内に効率よく取り込んで室内の温度を上昇させる窓ガラスとして有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 回折格子シート
2 回折格子シート
3 窓ガラス
4 窓ガラス
5 窓ガラス
10 透明樹脂層
12 凸条
14 第1の層
16 第2の層
18 第1の主表面
19 第2の主表面
20 回折格子
22 格子線
26 塗膜
32 第1の透明基板
34 第2の透明基板
50 ガラス板
52 中間膜
56 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1の主表面および第2の主表面を有する透明樹脂層と、
互いに平行にかつ所定のピッチで配置された複数の格子線からなる回折格子とを有し、
前記格子線が、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、
前記格子線が、前記透明樹脂層の第1の主表面および第2の主表面に対して長さ方向が平行に延びるように、前記透明樹脂層内に埋設されてなる、回折格子シートを製造する方法であって、
下記の工程(a)〜(c)を有する、回折格子シートの製造方法。
(a)一方の表面が、前記第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
(b)前記凸条の表面の少なくとも一部に、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体をドライコートして前記薄膜を形成することによって、前記複数の格子線からなる回折格子を形成する工程。
(c)前記第1の層の凹凸面および前記回折格子の表面に、透明樹脂からなる第2の層を形成することによって、前記第1の層および前記第2の層からなる前記透明樹脂層を形成する工程。
【請求項2】
前記第1の主表面に接する第1の透明基板をさらに有する回折格子シートを製造する方法であって、
前記工程(a)が、下記の工程(a’)である、請求項1に記載の回折格子シートの製造方法。
(a’)第1の透明基板の表面に、一方の表面が、前記第1の透明基板との界面、すなわち前記第1の主表面であり、他方の表面が、複数の凸条が互いに平行にかつ所定のピッチで形成された凹凸面である、透明樹脂からなる第1の層を形成する工程。
【請求項3】
前記第2の主表面に接する第2の透明基板をさらに有する回折格子シートを製造する方法であって、
前記工程(c)が、下記の工程(c’)である、請求項2に記載の回折格子シートの製造方法。
(c’)前記第1の層および前記回折格子が表面に形成された第1の透明基板と、光硬化性組成物からなる塗膜が表面に形成された第2の透明基板とを、前記第1の層および前記回折格子に前記塗膜が接するように貼り合わせ、ついで前記塗膜を光硬化させて第2の層を形成することによって、前記第1の層および前記第2の層からなる前記透明樹脂層を形成する工程。
【請求項4】
互いに平行な第1の主表面および第2の主表面を有する透明樹脂層と、
互いに平行にかつ所定のピッチで配置された複数の格子線からなる回折格子とを有する回折格子シートであって、
前記格子線が、前記透明樹脂層より屈折率の大きい誘電体の薄膜からなり、
前記格子線が、前記透明樹脂層の第1の主表面および第2の主表面に対して長さ方向が平行に延びるように、前記透明樹脂層内に埋設された、回折格子シート。
【請求項5】
前記第1の主表面に接する第1の透明基板およびまたは前記第2の主表面に接する第2の透明基板をさらに有する、請求項4に記載の回折格子シート。
【請求項6】
請求項4または5に記載の回折格子シートと、ガラス板とを有する、窓ガラス。
【請求項7】
2枚のガラス板と、その間に挟まれた前記回折格子シートとが、中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスである、請求項6に記載の窓ガラス。
【請求項8】
2枚のガラス板が所定の間隔をあけて配置された複層ガラスであって、少なくとも一方のガラス板の内面に前記回折格子シートが貼着された、請求項6に記載の窓ガラス。
【請求項9】
ガラス板の表面に前記回折格子シートが貼着された、請求項6に記載の窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−194442(P2012−194442A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59305(P2011−59305)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】