説明

回路モジュールとその製造方法

【課題】従来の放熱基板では、異形部品等の固定力が低く、絶縁基板に固定している厚肉回路導体が剥がれる可能性があった。
【解決手段】異形部品15の一部以上を、樹脂構造体11に固定し、この樹脂構造体11を直接、金属板21は、金属板21を固定する機器の筐体やシャーシ(共に図示せず)に固定することで、異形部品15の耐振性を高めると共に、樹脂構造体11の一部を用いて、リードフレーム19と伝熱層20との密着強度を局所的に高め、回路モジュールの自体の機械的強度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイルドハイブリッドカーを始めとするハイブリッドカーや産業用の機器に使われる回路モジュールとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキ時の回生電力等を電気二重層キャパシタ等に蓄積することで、低消費電力化を実現するハイブリッドカーや各種産業用の機器が注目されている。
【0003】
こうした機器においては、100Aを超える大電流を高精度に制御するDCDCコンバータ(ここでDCDCとは、DC入力をDC出力にするコンバータの意味である)等の大電流を取り扱う回路モジュールが必要であり、これらに使われるパワー半導体等は、放熱や大電流に対応する放熱基板に実装され、回路モジュールを構成する。ここで回路モジュールとは、電源モジュールやDCDCコンバータ等を含む、50A以上の大電流の電圧変換装置である。
【0004】
そしてこうした、大電流を取り扱う回路モジュールには、パワー半導体以外に、各種異形部品も搭載する必要がある。ここで異形部品とは、コイル、トランス、キャパシタ、リード付き部品のいずれか一つ以上であり、表面実装(いわゆるSMD実装)が難しい部品、あるいは円柱状、コイン状、立方体、重量部品等となる。
【0005】
図11は、異なる高さを有する異形部品を実装した従来の回路モジュールの一例を説明する断面図である。図11において、絶縁基板1の表面には、平坦な厚肉回路導体2や段差付き厚肉回路導体3が形成されている。異形部品4a、4bは、それぞれ表面実装が難しく、互いの高さが異なる部品である。異形部品4bは平坦な厚肉回路導体2へ、高さの低い異形部品4aは、孔5を介して段差付き厚肉回路導体3に、それぞれネジ7を用いて実装している。また異形部品4a、4bに発生した熱は、これらを固定するヒートシンク6へ、矢印8に示すように拡散している。
【特許文献1】特許第2786343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし図11で示した従来の回路モジュールでは、少なくとも異形部品4a、4bの一面をヒートシンク6等に固定する必要がある。また異形部品4a、4bの数や形状によって、ヒートシンク6への固定方法が難しくなる。
【0007】
その結果、図11で示した従来の異形部品の実装構造では、外部から絶縁基板1等に引っ張り力が伝わった場合、ネジ7が壊れたり、異形部品4a、4bが変形したり、異形部品4a、4b自体がヒートシンク6から剥がれてしまうという課題が有った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、金属板と、この上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、異形部品と、から構成され、前記異形部品の一部以上は、前記樹脂構造体を用いて固定し、前記接続配線の根元部の一部以上は、前記樹脂構造体によって前記伝熱層に押付けられている回路モジュールとするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、コイル、トランス(チョークトランスを含む)、キャパシタ(電解コンデンサ、電気二重層キャパシタを含む)、リード付き部品等の異形部品の一部以上を、樹脂構造体を用いて固定することで、様々な形状、重さ、数量の異形部品であっても強固に固定できる。
【0010】
また異形部品の一部以上を固定した樹脂構造体を用いて、放熱基板を構成するリードフレームの一部からなる接続配線部を固定することで、接続配線部やリードフレーム自体の伝熱層からの剥離強度を高めると共に放熱基板自体を高強度化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
なお本発明の実施の形態に示された一部の製造工程は、成型金型等を用いて行われる。但し説明するために必要な場合以外は、成形金型は図示していない。また図面は模式図であり、各位置関係を寸法的に正しく示したものではない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1の回路モジュールの構造について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、回路モジュールの構成を説明する斜視図である。図1において、11は樹脂構造体、12は取付け孔、13は配線孔、14は点線、15は異形部品、16は取付け治具、17は矢印、18は放熱基板、19はリードフレーム、20は伝熱層、21は金属板、22は接続配線、23はネジである。
【0014】
図1において、11は樹脂構造体であり、その外周部等には、樹脂構造体11を放熱基板18に固定するための取付け孔12や、放熱基板18のリードフレーム19の一部である接続配線22を保護するための配線孔13を形成する。
【0015】
なお図1において、リードフレーム19からなる配線や、その上に実装したパワー半導体等、ソルダーレジスト等は図示していない。
【0016】
樹脂構造体11の所定部分に、異形部品15や、異形部品15を取り付けるための取付け治具16を固定する。こうして異形部品15の一部以上を樹脂構造体11で保持する。なお図1において、異形部品15や取付け治具16は、点線14で記載しているが、これは樹脂構造体11の裏面側(放熱基板18側)に固定するためである。裏面側に固定することで、異形部品15を樹脂構造体11と、放熱基板18の両方で押さえるようにして固定できる(詳細は、後述する図7(A)(B)、図9(B)等で説明する)。
【0017】
なお異形部品15の樹脂構造体11への固定は、樹脂構造体11自体の形状を工夫しても良いし、取付け治具16を用いても良い。
【0018】
図1において、18は放熱基板であり、金属板21と、この上に形成したシート状の伝熱層20と、この伝熱層20に固定したリードフレーム19と、このリードフレーム19の一部を前記伝熱層20から突き出してなる接続配線22と、から構成している。
【0019】
なお接続配線は、伝熱層20から略垂直に折り曲げ、突き出しても良いし、後述する図5(B)、図6(A)(B)、図7(A)(B)で示すように、伝熱層20の側面側へそのまま突き出したものでも良い。
【0020】
図1において、矢印17は、放熱基板18の上に、異形部品15の一部以上を固定した樹脂構造体11が、ネジ23によって固定する様子を示す。
【0021】
またこのネジ23によって固定した樹脂構造体11の一部は、リードフレーム19や、接続配線22の一部(あるいは略垂直に折り曲げた接続配線22の根元や根元付近)を固定する。
【0022】
こうして、金属板21と、この上に形成したシート状の伝熱層20と、この伝熱層20に固定したリードフレーム19と、このリードフレーム19の一部を前記伝熱層20から突き出してなる接続配線22と、この接続配線22の一部以上を固定する樹脂構造体11と、異形部品15と、から構成され、前記異形部品15の一部以上は、前記樹脂構造体11を用いて固定し、前記接続配線22の根元部の一部以上は、前記樹脂構造体11によって前記伝熱層20に押付けられている回路モジュールとする。
【0023】
接続配線22の根元部とは、接続配線22の中央部から下の部分と、略垂直に折った折り目、及び折り目から10mmまでのリードフレーム19部分である。特にこの部分を、樹脂構造体11によって補強することで、放熱基板18の高強度化を実現する。
【0024】
接続配線22の上半分(根元部でない部分であり、接続配線22の中央部から上の部分)を、尖らせることで、樹脂構造体11等への挿入性を高める。
【0025】
次に図2を用いて、樹脂構造体11への異形部品15の固定方法の一例について説明する。図2(A)(B)は、共に樹脂構造体11を用いて、異形部品15の一部以上を固定する様子を説明する斜視図である。
【0026】
図2(A)は、樹脂構造体11の裏面側(放熱基板18側)に、異形部品15を固定する様子を示す。図2(A)の点線14は、異形部品15の固定部を示す。樹脂構造体11の成形性の良さを利用して、この固定部に異形部品15の固定用に窪みや枠、取付け用、固定用の孔等を事前に形成できる。そして取付け治具16を併用することで、異形部品15の固定を強固にする。
【0027】
図2(B)は、異形部品15を取り付けた樹脂構造体11の斜視図である。図2(B)の矢印17に示すようにして、ネジ23等を用いて放熱基板18(図示していない)に固定する。
【0028】
図3は、異形部品15を取り付けた樹脂構造体11を、ネジ23を用いて放熱基板18に固定する様子を説明する斜視図である。
【0029】
図3において、異形部品15の固定に樹脂構造体11を用いるため、複数個の異形部品15であっても、様々異なる外形の異形部品15であっても、樹脂構造体11に固定できる。
【0030】
また図3において、樹脂構造体11に形成した配線孔13は、放熱基板18の接続配線22を保護する。また樹脂構造体11の一部は、接続配線22の根元を、放熱基板側に押付けることで、その密着強度を高める。
【0031】
樹脂構造体11への異形部品15の取付け方法は、取付け治具16以外に、樹脂構造体11自体を加工したもの(取付孔、取付け溝、はめ込み構造等)あっても良い。そして樹脂構造体11における異形部品15を固定する構造部とは、樹脂構造体11における異形部品15の一部以上が接する部分である。そしてこの異形部品15を固定する構造部は、異形部品15用の取付け治具16の取付け部分(例えば図1(A)の点線14部分)、更には取付け治具16を固定するための構造部(孔や突起等を用いて取付け治具16を固定した場合、こうした孔や、突起部、更にはこの近辺部分も構造部に含む。なおこれら部分は図示していない)も含む。これは、取付け治具16の固定部分(取付け部分、更にはこの近辺部分も含む)は、異形部品15を固定する構造部の一部だからである。
【0032】
このように樹脂構造体11側に、異形部品15の形状に応じた取付け構造部(あるいは取付け治具16等の固定構造部)を形成することで、様々な異形部品15の形状に対応できる。なお射出成形可能な市販の熱可塑性樹脂(望ましくは、エンジニアリングプラスチックや液晶ポリマー等の高強度樹脂材料)を用いることで、樹脂構造体11を作成できる。
【0033】
樹脂構造体11に固定する異形部品15について説明する。異形部品15としては、質量の大きなもの(例えば5g以上。なお5g未満の軽い異形部品15の場合、放熱基板18の上に直接、固定できる場合がある)であっても対応する。複数個の異形部品15や重量の大きな異形部品15を固定する場合、回路モジュールの中央部付近等の最適位置に、あるいはバランスの最適位置に固定する。
【0034】
こうして樹脂構造体11の形状(樹脂構造体11の肉厚も含む)は、搭載する異形部品15の大きさや形状、個数や、重さ等を考慮して設計する。
【0035】
(実施の形態2)
次に、図4から図7を用いて、実施の形態1で説明した電源モジュールに用いる放熱基板の製造方法の一例について説明する。
【0036】
図4(A)(B)は、共に放熱基板18の製造方法の一例を説明する断面図である。図4(A)(B)において、24は伝熱樹脂である。
【0037】
まず図4(A)に示すように、金属板21の上に、伝熱樹脂24をセットし、更にその上に所定パターン形状に加工したリードフレーム19をセットする。そして矢印17に示すように、これらを金型やプレス(共に図示していない)を用いて、加熱加圧することで一体化する。そして伝熱樹脂24を硬化し、伝熱層20とする。
【0038】
図4(B)は、伝熱樹脂24を硬化し、伝熱層20とした後の状態を示す断面図である。図4(B)に示すように、放熱基板18を構成するリードフレーム19は、その一部以上を伝熱層20に埋め込む。こうすることで、リードフレーム19と伝熱層20との接触面積を増加させ、リードフレーム19の表面に実装したパワー半導体(図示していない)の熱を、リードフレーム19から伝熱層20を介して金属板21へ放熱しやすくできる。またリードフレーム19と伝熱層20との接合強度(あるいは剥離強度)を高める効果を得る。
【0039】
図5(A)(B)は、共に放熱基板18と樹脂構造体11を示す断面図である。図5(A)に示すように、リードフレーム19の一部を、伝熱樹脂20と略平行に突き出し、また略垂直に折曲げて突き出す。
【0040】
リードフレーム19の一部以上を、伝熱層20に埋め込むことで、肉厚の(例えば、0.2mm以上、望ましくは0.3mm以上)リードフレーム19を用いた場合でも、その厚みが放熱基板18の表面に段差として表れないため、リードフレーム19の上へのソルダーレジスト(図示していない)の印刷性を高める効果を得る。
【0041】
なお図4(B)に示す矢印17は、リードフレーム19の一部を、金属板21から略垂直になるように、折り曲げる様子を示す。この時、後述する図5(A)で示すようにリードフレーム19の一部を、伝熱層20から引き剥がす。こうすることで、リードフレーム19(あるいはリードフレーム19で構成した接続配線22)と、金属板21(あるいは金属板21を固定する筐体やシャーシ)との間の沿面距離(一種の絶縁距離)を確保する。
【0042】
図5(B)は、樹脂構造体11に異形部品15の一部以上を取付け治具16等を用いて固定する様子を示す。
【0043】
図6(A)(B)は、共に異形部品15の一部以上を固定した樹脂構造体11を、放熱基板18に、ネジ23を用いて固定する様子を説明する断面図である。
【0044】
図6(A)に示すように、放熱基板18の上に、樹脂構造体11をセットし、図6(B)に示すようにネジ23を用いて、矢印17で示すようにして、これらを組み立てる。
【0045】
こうして、異形部品15を放熱基板18に固定することで、異形部品15の形状に関係なく、放熱基板18への取付けを容易とする。また樹脂構造体11を用いて、リードフレーム19(あるいは接続配線22やその根元付近)を、伝熱層20側に物理的に押付けることで、これら部分の剥離強度を高める。
【0046】
図7(A)(B)を用いて、リードフレーム19(あるいは接続配線22やその根元付近)の剥離強度の向上メカニズムを説明する。
【0047】
図7(A)(B)は、共に回路モジュールが高強度化のメカニズムを説明する断面図である。図7(A)において、異形部品15は、樹脂構造体11に固定している。そして樹脂構造体11は、ネジ23等を用いて、放熱基板18(あるいは金属板21、あるいは放熱基板18を固定する機器の筐体やシャーシ。共に図示していない)に強固に固定している。その結果、異形部品15に外部から振動を与えても、この振動は金属板21や筐体やシャーシに伝わるため、放熱基板18(更にはリードフレーム19や、その上に実装したパワー半導体等)に影響を与えない。
【0048】
また異形部品15に外部から振動を与えると、樹脂構造体11を、放熱基板18から引き剥がそうとする「引張り力」が発生する。しかしこの「引張り力」は、樹脂構造体11を固定するネジ23を介して、金属板21や筐体やシャーシに伝わるため、放熱基板18(更にはリードフレーム19や、その上に実装したパワー半導体等)に影響を与えない。
【0049】
また伝熱層20から突き出した接続配線22に外部から力が加わった場合、接続配線22を伝熱層20から引き剥がそうとする「引張り力」が発生する。しかしこの「引張り力」は、樹脂構造体11を固定するネジ23の「押付け力」によって打ち消す。そのため、リードフレーム19や接続配線22と、伝熱層20の界面は剥がれない。
【0050】
なお樹脂構造体11を、絶縁体とする(少なくともその必要部分を絶縁体とする)ことで、異形部品15等の絶縁を確保する。
【0051】
また樹脂構造体11の形状を工夫する(異形部品15の位置決め用の突起や凹部、異形部品15をはめ込むあるいは埋め込む凹部等の形成)ことによって、固定性を高める。また取付治具16の省略や簡便化が可能となる。
【0052】
特に樹脂構造体11を用いることで、異形部品15の接触部分の断面形状を工夫する(例えば、円柱形の異形部品15を固定するために樹脂構造体11側に半円柱状の凹部を形成する。長方形状の異形部品15を固定するために樹脂構造体11側に直方形の凹部を形成する等)。これによって、位置決め精度、装着性等を高める。
【0053】
図8(A)(B)は、共に樹脂構造体11を用いない場合について説明する断面図である。図8(A)において、異形部品15は、取付け治具16を用いて、放熱基板18に直接取り付けている。この状態で矢印17に示すような振動(あるいは外力)を加えると、図8(B)に示すように、異形部品15や取付け治具16が放熱基板18から脱離する。
【0054】
特に、異形部品15の質量が増加すると(特に5g以上)、取付け治具16を工夫しても脱離しやすい。これは取付け治具16自体の質量も増加するためである。また取付け治具16と共に、リードフレーム19の一部も脱離した場合、回路動作自体に影響を与える。
【0055】
図9(A)(B)は、共にネジ23によって、樹脂構造体11を固定する効果について説明する断面図である。図9(A)(B)に示すように、異形部品15を樹脂構造体11に固定することで、異形部品15に矢印17に示すような振動を加えた場合でも、リードフレーム19(更にはリードフレーム19と伝熱層20との界面部分)に、影響を与えない。
【0056】
図9(B)に示すように、異形部品15(あるいは取付け治具16)と、その下の放熱基板18の間に隙間を形成する(あるいは絶縁部材等を挿入し積極的に絶縁する、あるいは絶縁距離や絶縁空間を設ける)ことで、リードフレーム19の配線の自由度を高める。なお絶縁距離を設ける場合は、0.1mm以上(望ましくは0.5mm以上)とする。0.1mm未満の場合、組立誤差等によって、リードフレーム19と異形部品15(あるいは取付け治具16)とが接触する可能性がある。
【0057】
(実施の形態3)
実施の形態3では、樹脂構造体11と放熱基板18との間に、異形部品15を挟む場合について説明する。異形部品15を、樹脂構造体11と放熱基板18の間に挟むことで、異形部品15に振動等による力が発生しても、リードフレーム19や、リードフレーム19に実装したパワー半導体等に影響を与えない。
【0058】
次に図10を用いて異形部品15の取付け例について、チョークコイル等のコイルを例に説明する。図10(A)(B)は、それぞれコイル部品の断面図と、コイル部品を回路モジュールに実装した場合の拡大断面図である。図10(A)(B)において、26は半田、27はコイル部品、28はコア部、30はコイル部であり、コイル部品27は、コア部28とコイル部30から構成されている。そしてコイル部品27は半田26を用いて、リードフレーム19に固定する。
【0059】
チョークコイルに発生した熱は、矢印17に示すように、伝熱樹脂20やリードフレーム19を介して放熱する。
【0060】
図10(A)(B)に示すように、コア部28とコイル部30を別構造とすることで、コイル部品27の全体質量を複数に分割でき、振動時の固有振動を抑えられ、耐震性を高められる。またコイル部品27に発生した熱は、矢印17のように、樹脂構造体11やリードフレーム19を介して別々に拡散できる。
【0061】
なお樹脂構造体11の固定方法は、ネジ23に限定するものではなく、樹脂構造体11の一部等に形成した構造体(例えば、爪構造やひっかけ構造、楔構造等)としても良いことは言うまでもない。
【0062】
(実施の形態4)
実施の形態4では、回路モジュールに使用する放熱基板18や樹脂構造体11に用いる部材について説明する。
【0063】
リードフレーム19としては、銅やアルミニウムのような熱伝導性の高い部材を用いる。またリードフレーム19の厚みは0.2mm以上(望ましくは0.3mm以上)を用いる。リードフレーム19の厚みが0.2mm未満の場合、接続配線22の強度が低下し、作業中に曲がる。
【0064】
またリードフレーム19の厚みは、10.0mm以下(望ましくは5.0mm以下)が望ましい。リードフレーム19の厚みが10.0mmを超えた場合、接続配線22のファインパターン化に影響を与える。
【0065】
次に伝熱樹脂24について説明する。伝熱樹脂24は、例えば、樹脂とフィラーとからなるものとすることで、その熱伝導性を高めることができる。そして樹脂として熱硬化性の樹脂を用いることで、その信頼性を高められる。
【0066】
ここで無機フィラーとしては、例えば略球形状で、その直径は0.1μm以上100μm以下が適当である(0.1μm未満の場合、樹脂への分散が難しくなる。また100μmを超えると伝熱層20の厚みが厚くなり熱拡散性に影響を与える)。そのためこれら伝熱層20における無機フィラーの充填量は、熱伝導率を上げるために70から95重量%と高濃度に充填している。特に、本実施の形態では、無機フィラーは、平均粒径3μmと平均粒径12μmの2種類のアルミナを混合したものを用いている。この大小2種類の粒径のアルミナを用いることによって、大きな粒径のアルミナの隙間に小さな粒径のアルミナを充填できるので、アルミナを90重量%近くまで高濃度に充填できるものである。この結果、これら伝熱層20の熱伝導率は5W/(m・K)程度となる。
【0067】
なお無機フィラーとしてはアルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化錫、ジルコン珪酸塩からなる群から選択される少なくとも一種以上を含んでいるものとすることが、熱伝導性やコスト面から望ましい。
【0068】
なお熱硬化性樹脂を使う場合は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、PEEK樹脂の群から選ばれた少なくとも1種類の熱硬化性樹脂を含んでいるものが望ましい。これはこれらの樹脂が耐熱性や電気絶縁性に優れているからである。
【0069】
特に、伝熱層20の放熱性を高めようとすると、無機フィラーの含有率を増加させることが必要となるが、この結果、伝熱層20における熱硬化性樹脂の含有率を減らす可能性がある。そして伝熱層20における熱硬化性樹脂の含有率を減らした場合、伝熱層20と、リードフレーム19との間の接着力が低下する可能性がある。そしてリードフレーム19の一部である接続配線22や、リードフレーム19を、非常に強い力で繰り返し何度も引き剥がそうとした場合、放熱基板18における伝熱層20とリードフレーム19の界面が剥離してしまう可能性も考えられる。
【0070】
こうした場合は、前述した図10(A)(B)に示すように、リードフレーム19(特に、接続配線22の根本付近のリードフレーム19)を、樹脂構造体11によって伝熱層20側に物理的に押し付けるような構造とすることが望ましい。こうした樹脂構造体11の構造によって、放熱基板18における伝熱層20とリードフレーム19との界面での剥離を防止できる。
【0071】
以上のようにして、金属板21と、この上に形成したシート状の伝熱層20と、この伝熱層20に固定したリードフレーム19と、このリードフレーム19の一部を前記伝熱層20から突き出してなる接続配線22と、この接続配線22の一部以上を固定する樹脂構造体11と、異形部品15と、から構成され、前記異形部品15の一部以上は、前記樹脂構造体11を用いて固定し、前記接続配線22の根元部分の一部以上は、前記樹脂構造体11によって前記伝熱層20に押付けられている回路モジュールとすることで、異形部品15の取付けが容易で、耐振動性に優れ、高強度の回路モジュールを実現する。
【0072】
また金属板21と、この上に形成したシート状の伝熱層20と、この伝熱層20に固定したリードフレーム19と、このリードフレーム19の一部を前記伝熱層20から略垂直に折り曲げてなる接続配線22と、この接続配線22の根元部分の一部以上を固定する樹脂構造体11と、異形部品15と、から構成され、前記異形部品15の一部以上は、前記樹脂構造体11を用いて固定し、前記接続配線22の根元部分の一部以上は、前記樹脂構造体11によって前記伝熱層20に押付けられている回路モジュールとすることで、異形部品15の取付けが容易で、耐振動性に優れ、高強度の回路モジュールを実現する。
【0073】
金属板21と、この上にシート状の伝熱層20を用いて固定したリードフレーム19と、このリードフレーム19の一部以上を固定する樹脂構造体11と、異形部品15と、からなる放熱基板18であって、前記異形部品15の一部以上を、前記樹脂構造体11と前記伝熱層20との間に固定し、前記接続配線22の根元部分の一部以上が、前記樹脂構造体11によって前記伝熱層20に押付けられている回路モジュールとすることで、異形部品15の取付けが容易で、耐振動性に優れ、高強度の回路モジュールを実現する。
【0074】
なお異形部品15は、コイル、トランス、キャパシタ、リード付き部品のいずれか一つ以上であっても、本発明の樹脂構造体11を用いることで、その実装性を損ねない。
【0075】
金属板21上に、シート状の伝熱層20を用いてリードフレーム19を固定する工程と、前記リードフレーム19の一部を、伝熱層20から略垂直に折曲げ接続配線22とする工程と、異形部品15の一部以上を、樹脂構造体11に固定する工程と、前記樹脂構造体11を用いて、前記リードフレーム19の一部以上を前記伝熱層20側に押付ける工程と、前記樹脂構造体11を、前記金属板21に固定する工程と、を有する回路モジュールの製造方法によって、異形部品15の取付けが容易で、耐振動性に優れ、高強度の回路モジュールを実現する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる回路モジュールとその製造方法を用いることで、実装性の低い、あるいは重量の大きい部品であって、樹脂モジュールの中にしっかり固定できるため、耐振性にすぐれ、かつ部分的に高強度なため、高性能な各種機器の小型化と高強度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】回路モジュールの構成を説明する斜視図
【図2】(A)(B)は、共に樹脂構造体を用いて、異形部品の一部以上を固定する様子を説明する斜視図
【図3】異形部品を取り付けた樹脂構造体をネジを用いて放熱基板に固定する様子を説明する斜視図
【図4】(A)(B)は、共に放熱基板の製造方法の一例を説明する断面図
【図5】(A)(B)は、共に放熱基板と樹脂構造体を示す断面図
【図6】(A)(B)は、共に異形部品の一部以上を固定した樹脂構造体を、放熱基板に、ネジを用いて固定する様子を説明する断面図
【図7】(A)(B)は、共に回路モジュールが高強度化のメカニズムを説明する断面図
【図8】(A)(B)は、共に樹脂構造体を用いない場合について説明する断面図
【図9】(A)(B)は、共にネジによって、樹脂構造体を固定する効果について説明する断面図
【図10】(A)(B)は、それぞれコイル部品の断面図と、コイル部品を回路モジュールに実装した場合の拡大断面図
【図11】異なる高さを有する異形部品を実装した従来の回路モジュールの一例を説明する断面図
【符号の説明】
【0078】
11 樹脂構造体
12 取付け孔
13 配線孔
14 点線
15 異形部品
16 取付け治具
17 矢印
18 放熱基板
19 リードフレーム
20 伝熱層
21 金属板
22 接続配線
23 ネジ
24 伝熱樹脂
25 開口部
26 半田
27 コイル部品
28 コア部
29 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、この上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から突き出してなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、異形部品と、から構成され、
前記異形部品の一部以上は、前記樹脂構造体を用いて固定し、
前記接続配線の根元部の一部以上は、前記樹脂構造体によって前記伝熱層に押付けられている回路モジュール。
【請求項2】
金属板と、この上に形成したシート状の伝熱層と、この伝熱層に固定したリードフレームと、このリードフレームの一部を前記伝熱層から略垂直に折り曲げてなる接続配線と、この接続配線の一部以上を固定する樹脂構造体と、異形部品と、から構成され、
前記異形部品の一部以上は、前記樹脂構造体を用いて固定し、
前記接続配線の根元部の一部以上は、前記樹脂構造体によって前記伝熱層に押付けられている回路モジュール。
【請求項3】
金属板と、この上にシート状の伝熱層を用いて固定したリードフレームと、このリードフレームの一部以上を固定する樹脂構造体と、異形部品と、からなる放熱基板であって、
前記異形部品の一部以上を、前記樹脂構造体と前記伝熱層との間に固定し、
前記接続配線の根元部の一部以上が、前記樹脂構造体によって前記伝熱層に押付けられている回路モジュール。
【請求項4】
異形部品は、コイル、トランス、キャパシタ、リード付き部品のいずれか一つ以上である請求項1から3のいずれか一つに記載の回路モジュール。
【請求項5】
金属板上に、シート状の伝熱層を用いてリードフレームを固定する工程と、
前記リードフレームの一部を、伝熱層から略垂直に折曲げ接続配線とする工程と、
異形部品の一部以上を、樹脂構造体に固定する工程と、
前記樹脂構造体を用いて、前記リードフレームの一部以上を前記伝熱層側に押付ける工程と、
前記樹脂構造体を、前記金属板に固定する工程と、
を有する回路モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−142063(P2009−142063A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315612(P2007−315612)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】