説明

回路基板の接続構造

【課題】 着脱ないし接続・接続の開放が容易で、かつ高周波損失の低減を図ることのできる高速信号回路用の回路基板と配線板との接続構造の提供。
【解決手段】 少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子1a,1bが端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板1と、前記配線基板1の外部接続端子1a,1bに電気的に接続する配線パターン2a,2bを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板2との接続構造であって、前記フレキシブル配線板2は、先端側が前記配線基板1の外部接続端子1a,1b形成面を挟着・挟着開放が可能な断面略U字型2cに整形され、かつ前記断面略U字型2cは弾撥性付与手段を備え先端側の挟着により外部接続用端子1a,1bに電気的な接続を行うことを特徴とする回路基板の接続構造である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速信号回路を構成する配線基板に対するフレキシブルな入出力用配線板を接続する接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電子部品素子を搭載・実装した配線基板(電子回路装置)は、各種電子機器類で多く使用されている。そして、この種の配線基板に対する入出力信号用配線の接続は、一般的に、いわゆるコネクターを使用して行われている。すなわち、少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された配線基板に対し、前記外部接続端子にコネクターの一端子側を接続する一方、コネクターの他端子側をフレキシブルな配線板などの外部接続端子に接続する構成が採られている。
【0003】また、上記配線基板に対する接続用配線板の接続構造を簡略化する一方、高密度に配置された外部接続端子同士の接続を可能とする手段も開発されている。すなわち、断面略U字型に曲成した金属板片を基体とし、この金属板片の両主面に絶縁体層を介して配線パターンを設けて成る接触形接続器を配線基板(マザーボード)面に接続配置する一方、前記U字型の曲成対向面間で接続用配線板を挟着して電気的な接続を行う方式が知られている(特開平9-161909号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記構成の接続構造は、いずれの場合も接続構造が複雑で、その構成に煩雑な作業・操作を伴うだけでなく、実用上、次のような問題が懸念される。すなわち、上記接続構成の場合は、(a) 回路基板に対するコネクターもしくは接触形接続器の接続と、(b) 前記コネクターもしくは接触形接続器に対する配線板の接続との2箇所で、各配線パターンごとに半田付け接続などが行われる。したがって、半田付け接続などは接続作業の煩雑化となるだけでなく、各接続部の影響が加算されて、高速信号回路などで所要の特性・性能が得られない恐れがある。
【0005】さらに言及すると、前記コネクターなどを介した接続においては、配線パターンの幅や形(変形)などが高周波損失に大きく影響するため、電子回路のインピーダンスとのマッチングをとり難いという問題がある。
【0006】本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、着脱ないし接続・接続の開放が容易で、かつ高周波損失の低減を図ることのできる高速信号回路用の回路基板と配線板との接続構造の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板と、前記配線基板の外部接続端子に電気的に接続する配線パターンを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板との接続構造であって、前記フレキシブル配線板は、先端側が前記配線基板の外部接続端子形成面を挟着・挟着開放が可能な断面略U字型に整形され、かつ前記断面略U字型は弾撥性付与手段を備え先端側の挟着により外部接続用端子に電気的な接続を行うことを特徴とする回路基板の接続構造である。
【0008】請求項2の発明は、少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板と、前記配線基板の外部接続端子に電気的に接続する配線パターンを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板との接続構造であって、前記フレキシブル配線板は、先端側が前記配線基板の外部接続端子形成面を挟着・挟着開放が可能に弾撥性を付与した断面略U字型に整形され、かつ前記先端側の挟着により外部接続用端子に電気的な接続を行うことを特徴とする回路基板の接続構造である。
【0009】請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2記載の回路基板の接続構造において、フレキシブル配線板の断面略U字型は、内側に挿着配置した断面偏型の駆動棒の回動で変形して外部接続端子形成面の挟着・挟着開放が助長されることを特徴とする。
【0010】請求項1ないし3の発明において、高速信号回路用の配線基板は、たとえばガラス・エポキシ樹脂系を絶縁体層としたリジット型の配線基板である。ここで、配線基板は、片面配線パターン型、両面配線パターン型、多層配線パターン型のいずれでもよいが、少なくとも一端縁部面に外部接続端子を配置した構造を採っている必要がある。
【0011】請求項1ないし3の発明において、フレキシブル配線板は、たとえば液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニールサルファイド樹脂、もしくはポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいはポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド紙基材エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を絶縁体層とした片面配線パターン型や両面配線パターン型である。ここで、液晶ポリマーは、吸湿性がほとんどなく、誘電率が約 3.0(1MHz)程度であり、広い周波数領域で安定しているので、絶縁体の吸湿作用に起因する不都合を解消することがでるので好ましい。なお、液晶ポリマーは、たとえばキシダール(商品名.Dartco社製)、ベクトラ(商品名.Celanese社製)で代表される多軸配向の熱可塑性ポリマーである。
【0012】そして、前記フレキシブル配線板は、少なくとも一端側が断面略U字型に整形され、この略U字型部で、配線基板の端縁部面を挟着したり、その挟着を開放することができるように、押圧性ないし弾撥性が付与されている。ここで、押圧性ないし弾撥性の付与は、絶縁体層の変形・弾撥性の利用(フレキシブル配線板自体の弾撥)、押圧治具などの配置、変形・弾撥性を有する金属板の埋め込み(U字型に整形領域の絶縁体層中に)、もしくはこれらの併用などの手段が挙げられる。
【0013】請求項1ないし3の発明において、フレキシブル配線板の断面略U字型の内側に、断面偏型の駆動棒を挿着・配置し、この駆動棒を回動させ、前記U字型を変形(楕円形化)し、外部接続端子形成面の挟着(押圧)と挟着(押圧)の開放とを適宜行える構成とすることが望ましい。
【0014】請求項1ないし3の発明では、高速信号用の配線基板に対するフレキシブルな配線板の接続箇所が低減されるため、いわゆる高周波損失が低下される。すなわち、コネクターなどの中間接続部材を省略し、配線基板の外部接続端子にフレキシブルな配線板の接続パターンが直接、接続する構成を採って接続箇所が低減ないし省略されているため、前記接続および配線パターン幅や形に起因する影響がその分低減されて、配線基板側における高周波損失を低減できるので、インピーダンスとのマッチングなど採り易くなる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下図1,図2および図3を参照して実施例を説明する。
【0016】図1および図2は第1の実施例に係る接続構造の要部を示すもので、図1は断面図、図2は斜視図である。図1および図2において、1は少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板、2は前記配線基板1の外部接続端子1a,1bに電気的に接続する配線パターン2a,2bを主面に有するフレキシブル配線板である。そして、前記フレキシブル配線板2は、その先端側が断面略U字型2cに整形され、この断面略U字型2cで、前記配線基板1の外部接続端子1a,1b形成面を挟着・挟着開放することにより、電気的に接続されたり、前記電気的な接続を開放されたりする構造と成っている。
【0017】なお、3は前記フレキシブル配線板2の断面略U字型(ないし略δ字型)2c内に挿着された断面偏形で、回動できる駆動棒である。また、この構成において、断面略U字型(ないし略δ字型)2cの後述する挟着作用を補強するため、対向させて両面側に挟着体4a,4bを配置しておくことが好ましい。
【0018】ここで、高速信号回路用の配線基板1は、たとえばガラス・エポキシ樹脂系を絶縁体層とした両面配線パターン型であり、幅20mm程度,ピッチ 0.5mm程度の外部接続端子1a,1b群が一端縁部面に配置され、かつ一主面に高周波回路用素子が搭載・実装されたものである。また、フレキシブル配線板2は、厚さ 0.2mm程度の液晶ポリマーを絶縁体とした厚さ0.05mm程度の絶縁体層の両面に、信号用の配線パターン2a、グランド用の配線パターン2bがそれぞれ設けられている。
【0019】そして、このフレキシブル配線板2の一先端部側は、液晶ポリマーの熱変形性を利用して、断面略U字型(ないし略δ字型)2cに整形されて弾撥性を付与してあり、この曲成(整形)対向部2cで、前記配線基板1を両面側から弾撥性で挟着する。このフレキシブル配線板2の断面略U字型部2cによる挟着で、フレキシブル配線板2の配線パターン2aが配線基板1の外部接続端子1a面に、また、配線パターン2bが外部接続端子1b面に、それぞれ押圧的に対接して電気的な接合がなされる。このとき、フレキシブル配線板2の断面略U字型(ないし略δ字型)2c内に挿着された断面偏形の駆動棒3の回動で、断面略U字型2cの断面を変形すると、前記配線パターン2a,1a間、および2b,1b間の押圧的な対接を開閉(接触・離脱)がよりスムースに、また、より確実に行われる。つまり、フレキシブルな配線板2の曲成・整形された断面略U字型(ないし略δ字型)2cに、配線基板1端縁面部の挿入、あるいは引き抜きで、容易、かつ確実な電気的な接続、あるいは電気的な接続の遮断が行われる。
【0020】上記では、高速信号回路用の配線基板1およびフレキシブル配線板2とも、両面配線パターン型の場合を説明したが、いずれかの一方もしくは両方とも片面配線パターン型(信号用配線およびグランド用配線を同一面に形成)の場合であってもよし、また、両面配線パターン型の場合において、両配線パターンとも信号用であってもよい。
【0021】図3は第2の実施例に係る接続構造の概略構成を示す断面図である。この実施例の場合も、その基本的な構成は、第1の実施例の場合と同様である。すなわち、少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子1a,1bが端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板1と、前記配線基板1の外部接続端子1a,1bに電気的に接続する配線パターン2a,2bを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板2との接続構造である。
【0022】この実施例の特徴は、前記フレキシブル配線板2の接続部を形成する先端側、特に、断面略U字型2cに整形される領域において、絶縁体層を形成する液晶ポリマー層中に、薄い金属板2dを平面的に埋め込んだ構成とし、弾撥性を付与した断面略U字型2cの整形としたものである。この場合は、整形された断面略U字型2cの弾撥的な挟着作用が強化され、外部接続端子1a,1b形成面の挟着・挟着開放性が向上し、容易に、フレキシブル配線板2の配線パターン2aが配線基板1の外部接続端子1a面に、また、配線パターン2bが外部接続端子1b面に、それぞれ押圧的に対接して電気的な接合がなされる。
【0023】なお、本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、いろいろの変形をとることができる。たとえば高速信号回路用の配線基板、フレキシブル配線板は、それらの絶縁体の材質、配線パターンの幅やピッチ、外部接続用端子の幅やピッチなどは、用途や使用態様に応じて適宜選ぶことができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1ないし3に係る発明によれば、接続箇所が低減され、いわゆる高周波損失の低下が図られた高速信号回路装置の構成が可能となる。すなわち、中間接続部材(中間部品)を省略し、配線基板の外部接続端子にフレキシブルな配線板が直接、接続する構成を採ることにより、接続箇所が低減ないし省略されている。したがって、配線パターンの接続、配線パターン幅や形に起因する影響がその分低減され、高速信号用配線基板側における高周波損失が低減でき、インピーダンスとのマッチングなど採り易くなり、高性能化した高速信号回路装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例に係る接続構造の要部を示す斜視図。
【図2】第1の実施例に係る接続構造の要部を示す断面図。
【図3】第2の実施例に係る接続構造の要部を示す断面図。
【符号の説明】
1……高速信号用の配線基板
1a,1b……外部接続端子
2……フレキシブル配線板
2a,2b……配線パターン
2c……断面略U字型部(略δ字型)
2d……金属薄板
3……駆動棒
4a,4b……挟着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板と、前記配線基板の外部接続端子に電気的に接続する配線パターンを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板との接続構造であって、前記フレキシブル配線板は、先端側が前記配線基板の外部接続端子形成面を挟着・挟着開放が可能な断面略U字型に整形され、かつ前記断面略U字型は弾撥性付与手段を備え先端側の挟着により外部接続用端子に電気的な接続を行うことを特徴とする回路基板の接続構造。
【請求項2】 少なくとも一主面に配線パターンを有し、かつ対応する外部接続端子が端縁部面に列状に配置された高速信号回路用の配線基板と、前記配線基板の外部接続端子に電気的に接続する配線パターンを少なくとも一主面に有するフレキシブル配線板との接続構造であって、前記フレキシブル配線板は、先端側が前記配線基板の外部接続端子形成面を挟着・挟着開放が可能に弾撥性を付与した断面略U字型に整形され、かつ前記先端側の挟着により外部接続用端子に電気的な接続を行うことを特徴とする回路基板の接続構造。
【請求項3】 フレキシブル配線板の断面略U字型は、内側に挿着配置した断面偏型の駆動棒の回動で変形して外部接続端子形成面の挟着・挟着開放が助長されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載の回路基板の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−200952(P2000−200952A)
【公開日】平成12年7月18日(2000.7.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−520
【出願日】平成11年1月5日(1999.1.5)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】