説明

回路基板及びその設計方法

【課題】SMT部品の外部電極と、基板に形成された電極との接続に必要な領域を小さくでき、小型軽量化を向上させると共に、前記基板と外部電極とを接続するハンダの使用量を削減できる回路基板及びその設計方法を提供する。
【解決手段】貫通ヴィア4及び内部電極が形成された基板1上に形成され且つSMT部品2の外部電極2Aが接続されるSMTパッド3と、パッド形成領域内に形成された貫通ヴィア4と、SMTパッド3と外部電極2Aとの間に介在し、両者を接続するハンダ9と、ハンダ形成領域15A及び15Bを貫通ヴィア4を挟んだ両側に分離して画定すると共に、貫通ヴィア4の外周から所定の間隔をおいて配置されるマスキング層10を備え、ハンダ形成領域15A及び15Bは、マスキング層10によって貫通ヴィア4の外周部に画定された非マスキング領域16と所定の距離をおいて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板及びその製造方法に係り、特に、基板表面に表面実装型電子部品(以下、「SMT部品」とも記す)がハンダ付けされてなる回路基板及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電子機器の小型化及び低価格化を向上させる目的で、当該電子機器に搭載される回路基板には、リード端子を使用しない表面実装型電子部品が実装されている。このような回路基板では、例えば、図10(1)及び図10(2)に示すように、基板1とSMT部品2の外部電極2Aとをハンダ9を介して接続するため、基板1上の所定位置にSMTパッド3を配設しており、また、SMTパッド3の外部領域に形成されている貫通ヴィア4を介して、基板1に配設されている電極と外部電極2Aとを接続するため、このSMTパッド3から貫通ヴィア4まで信号引出し配線25を延出させた構造を有している。なお、符号10はマスキング層、符号5及び6はマスキング層10が形成されていない領域を画定する境界線、符号26は貫通ヴィア引出ランドである。
【0003】
また、DC−DCコンバータのような電流量の多い電源ピンでは、例えば、図11(1)及び図11(2)に示すように、基板1の内層に形成されている電源層に、多数の貫通ヴィア4を介して接続させる必要がある場合、これら複数の貫通ヴィア4と、SMTパッド3とを接続させるため、SMTパッド3から電源引出しベタ27を延出させている。
【0004】
そしてまた、SMT部品のランドの一部をインサーキットテスト用のテストピンランドとして用いる回路基板として、前記SMT部品のランドとテストピンランドをレジストにより分離することで、部品端子に未ハンダが発生することを防止した回路基板が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、基板上に形成されたランド部に貫通ヴィアを形成すると共に、当該貫通ヴィア内にハンダを充填し、当該ハンダを介して、前記基板に前記ランド部を接続させたプリント基板も紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−142571号公報
【特許文献2】特開2006−100460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10(1)及び図10(2)に示す従来の回路基板は、貫通ヴィアがSMTパッドの外部領域に形成されているため、当該貫通ヴィアとSMTパッドとの間に、両者を電気的に接続するための配線を形成する必要がある。したがって、基板上に前記配線を形成するための領域を確保する必要があり、高密度実装化を阻害する要因の一つとなっている。
【0008】
また、図11(1)及び図11(2)に示す従来の回路基板は、複数の貫通ヴィアがSMTパッドの外部領域に形成されているため、当該貫通ヴィアとSMTパッドとの間に、両者を電気的に接続するための電源引出しベタを広領域で形成する必要があり、高密度実装化を一層阻害している。そこで、高密度実装化を向上させるため、単にSMTパッド上に貫通ヴィアを配置すると、SMT部品を実装する際に用いるハンダが前記貫通ヴィア内に流れ込み、実装面でのハンダが不足してSMT部品を実装することができなくなる虞がある。
【0009】
また、高密度実装を実現する工法として、ビルドアップ工法、基板の表層とその直下の層とを接続するSVH工法、フラットプラグ工法(貫通ヴィアの穴埋め工法)等が提案されているが、いずれの工法も工程が複雑であると共に、高度な技術を要し、製造コストが増加してしまう。
【0010】
そしてまた、引用文献1に記載された回路基板は、インサーキットテスト用として、本来よりも広面積で形成した複数のランドをレジストにより、SMT部品ランドとテストピンランドに分離するものであり、高密度実装化については何ら考慮がなされていない。
【0011】
また、引用文献2に記載されたプリント基板は、貫通ヴィア内に充填したハンダを介して、基板とランド部とを接続させる構造を有しているため、リフロー方式でSMT部品を実装する(表面実装技術による実装)の場合、貫通ヴィアからハンダが実装面とは反対側の面に流出し、実装面でのハンダが不足する虞がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、SMT部品の外部電極と、基板に配設されている電極との接続に必要な領域を小さくでき、小型軽量化を向上させることができると共に、前記基板と外部電極とを接続するハンダの使用量を削減することが可能な回路基板及び回路基板の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため本発明は、貫通ヴィア及び内部電極が形成された基板と、当該基板上にハンダ付けされてなる表面実装型電子部品と、を備え、前記貫通ヴィアを介して、前記内部電極に前記表面実装型電子部品の外部電極を接続してなる回路基板であって、前記基板上に形成され且つ前記外部電極が接続されるパッドと、前記基板のパッド形成領域内に形成された貫通ヴィアと、前記パッドと外部電極との間に介在し、当該パッドと外部電極とを接続するハンダと、前記ハンダが形成されるハンダ形成領域を前記貫通ヴィアを挟んだ両側に分離して画定すると共に、前記貫通ヴィアの外周から所定の間隔をおいて配置されるマスキング層と、を備え、前記ハンダ形成領域は、前記マスキング層によって前記貫通ヴィアの外周部に画定された非マスキング領域と所定の距離をおいて形成されてなる回路基板を提供するものである。
【0014】
この構成を備えた回路基板は、パッド形成領域内に貫通ヴィアが形成されているため、貫通ヴィアとパッドとの間に、両者を電気的に接続するための電源引出しベタ等を形成する必要がない。したがって、電極同士の接続領域を小さくすることができ、小型化、軽量化、高密度実装化を達成することができる。また、前記ハンダ形成領域と非マスキング領域との間には、所定の間隔が形成されており、この両者間には前記マスキング層が形成されているため、表面実装型電子部品を実装する際に、この両者間に形成されたマスキング層によって、前記ハンダが前記貫通ヴィア内に流れ込むことを阻止することができる。したがって、前記外部電極とパッドとを接続するために必要なハンダ(クリームハンダ)量を削減することができる。そしてまた、前記貫通ヴィアの外周部には、前記非マスキング領域が形成されているため、前記マスキング層を形成するレジスト液が当該貫通ヴィアに流れ込むことも防止することができる。したがって、前記外部電極と内部電極との電気的な接続が阻害されることを防止することができ、両者の接続性を良好に維持することができる。
【0015】
また、本発明に係る回路基板は、前記非マスキング領域上に、前記貫通ヴィアの外周部から所定の距離をおいて配置されるサーマルランドをさらに備えることができる。このように構成することで、前記利点に加え、前記貫通ヴィア内に熱が逃げることを防止することができるため、前記パッドと外部電極とをハンダにより接続する際に必要な温度をさらに効率よく維持することができ、ハンダ上がりを向上することができる。
【0016】
そしてまた、本発明に係る回路基板は、前記貫通ヴィアを複数有することができる。このように構成することで、例えば、DC−DCコンバータ等のように電流量が多く、多数の貫通ヴィアを介して内部電極に接続させる必要がある表面実装型電子部品を配設する場合であっても、電極同士の接続領域を小さくすることができ、小型化、軽量化、高密度実装化を達成することができると共に、外部電極と内部電極との接続性を良好に維持することができる。
【0017】
また、本発明は、貫通ヴィア及び内部電極が形成された基板と、当該基板上にハンダ付けされてなる表面実装型電子部品と、を備え、前記貫通ヴィアを介して、前記内部電極に前記表面実装型電子部品の外部電極を接続してなる回路基板を、CAD設計する方法であって、前記基板上に、前記外部電極が接続されるパッドを配置する部品配置工程と、前記パッドの内部に前記貫通ヴィアを配置する貫通ヴィア配置工程と、前記外部電極が実装される方向を検出する電極実装方向検出工程と、前記貫通ヴィアの位置を測定する貫通ヴィア位置測定工程と、前記貫通ヴィア位置測定工程で測定された位置と、前記パッドの予め設定された基準位置との距離を算出し、当該距離が所定値以上であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程で、前記距離が所定値以上であると判定された際に、前記貫通ヴィアの外周部及び前記貫通ヴィアを挟んだ両側であり且つ前記パッドの外周から外側に延出するハンダ形成領域を残してマスク形成領域に変換するマスク形成領域変換工程と、を備え、前記貫通ヴィアの外周部とハンダ形成領域は、互いに所定の間隔をおいて配置される回路基板設計方法を提供するものである。
【0018】
これらの工程を備えた回路基板設計方法は、CAD設計により、パッドの内部の所定位置に貫通ヴィアを配置した後、外部電極が実装される方向を検出し、前記貫通ヴィアの位置が、前記パッドの予め設定された基準位置に対し所定値以上であると判定された際に、前記貫通ヴィアの外周部及び前記貫通ヴィアを挟んだ両側であり且つ前記パッドの外周から外側に延出するハンダ形成領域を残してマスク形成領域に変換することで、基板のパッド形成領域内に貫通ヴィアが形成されると共に、前記パッドと外部電極とを接続するハンダが形成されるハンダ形成領域を前記貫通ヴィアを挟んだ両側に分離して画定すると共に、前記貫通ヴィアの外周から所定の間隔をおいて配置されるマスキング層を備えた回路基板の設計を簡単に行うことができる。また、前記ハンダ形成領域は、前記マスキング層によって前記貫通ヴィアの外周部に画定された非マスキング領域と所定の距離をおいて形成されるため、前記マスキング層を形成するレジスト液が当該貫通ヴィアに流れ込むことも防止することができる。したがって、前記外部電極と内部電極との電気的な接続が阻害されることを防止することができ、両者の接続性を良好に維持することができる。
【0019】
また、本発明に係る回路基板設計方法では、前記マスク形成領域変換工程が、前記貫通ヴィアの外周部の外側の一部領域を残してマスク形成領域に変換する工程を含むことができる。この工程では、前記貫通ヴィアの外周部の外側の一部領域がマスク形成領域に変換されず、前記パッド(導体部分)が露出した状態となるため、この部分をサーマルランドとすることができ、サーマルランドの設計を簡単に行うことができる。
【0020】
そしてまた、本発明に係る回路基板設計方法は、前記マスク形成領域変換工程後、前記ハンダ形成領域を残してメタルマスク形成領域に変換するメタルマスク形成領域変換工程をさらに備えることができる。このようにすることで、ハンダを形成するためのメタルマスクの設計を簡単に行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る回路基板設計方法では、前記貫通ヴィア配置工程で、前記パッドの内部に複数の貫通ヴィアを配置することもできる。このようにすることで、例えば、DC−DCコンバータ等のように電流量が多く、多数の貫通ヴィアを介して内部電極に接続させる必要がある表面実装型電子部品を配設する場合であっても、電極同士の接続領域を小さくすることができ、小型化、軽量化、高密度実装化を達成することができると共に、外部電極と内部電極との接続性を良好に維持することができる回路基板の設計を前記設計方法に準じて簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、表面実装型電子部品(SMT部品)の外部電極と、基板に配設されている電極との接続に必要な領域を小さくでき、小型軽量化を向上させることができると共に、前記基板と外部電極とを接続するハンダの使用量を削減することが可能な回路基板及び回路基板を提供することができる。
【0023】
本発明によれば、SMT部品の外部電極と、基板に配設されている電極との接続に必要な領域を小さくでき、小型軽量化を向上させることができると共に、前記基板と外部電極とを接続するハンダの使用量を削減することが可能な回路基板をCADにより簡単に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(1)は、本発明の実施形態1に係る回路基板の一部を示す平面透視図、図1(2)は、図1(1)に示すI−I線に沿った断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態1に係る回路基板の設計に使用されるCADの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1に係る回路基板の設計方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態1に係る回路基板の設計方法の一部を具体的に示す概念図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態1に係る回路基板を製造する途中の状態を示す一部平面図である。
【図6】図6(1)は、本発明の実施形態1に係る回路基板を製造する途中の状態を示す一部平面図、図6(2)は、図6(1)に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図7(1)は、本発明の実施形態2に係る回路基板の一部を示す平面透視図、図7(2)は、図7(1)に示すVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態2に係る回路基板の設計方法の一部を具体的に示す概念図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態に係る回路基板の設計方法の一部を具体的に示す概念図である。
【図10】図10(1)は、従来の回路基板の一部を示す平面透視図、図10(2)は、図10(1)に示すX−X線に沿った断面図である。
【図11】図11(1)は、従来の回路基板の一部を示す平面透視図、図11(2)は、図11(1)に示すXI−XI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態に係る回路基板及びその設計方法について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0026】
(実施形態1)
図1(1)は、本発明の実施形態1に係る回路基板の一部を示す平面図、図1(2)は、図1(1)に示すI−I線に沿った断面図、図2は、本発明の実施形態1に係る回路基板の設計に使用されるCADの構成を示すブロック図、図3は、実施形態1に係る回路基板の設計方法を示すフローチャート、図4は、本発明の実施形態1に係る回路基板の設計方法の一部を具体的に示す概念図、図5は、本発明の実施形態1に係る回路基板を製造する途中の状態を示す一部平面図、図6(1)は、本発明の実施形態1に係る回路基板を製造する途中の状態を示す一部平面図、図6(2)は、図6(1)に示すVI−VI線に沿った断面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0027】
図1(1)及び図1(2)に示すように、実施形態1に係る回路基板は、内部電極が形成された基板1上の所定位置に、導電性材料(例えば、銅等)からなるSMTパッド3が形成されており、このSMTパッド3の内側(即ち、基板1のSMTパッド形成領域内)には、SMT部品2の外部電極2Aと前記内部電極とを電気的に接続するための貫通ヴィア4が形成されている。この貫通ヴィア4内には、導電性材料(例えば、銅等)のメッキ層13が形成されている。また、SMTパッド3上であって、貫通ヴィア4を挟んだ両側には、ハンダ9A及び9Bが互いに独立した状態で配設されており、SMTパッド3と外部電極2Aは、両者の間に介在しているハンダ9A及び9Bを介して固定され且つ電気的に接続されている。
【0028】
このように、SMTパッド3の領域内(内側)に貫通ヴィア4が配設されているため、貫通ヴィア4とSMTパッド3との間に、両者を電気的に接続するための電源引出しベタ等を形成する必要がない。したがって、電極同士の接続領域を小さくすることができ、小型化、軽量化、高密度実装化を達成することができる。
【0029】
また、基板1上には、ハンダ9が形成されるハンダ形成領域15A及び15Bを、貫通ヴィア4を挟んだ両側に分離して画定すると共に、貫通ヴィア4の外周から所定の間隔をおいて配置されるマスキング層10(図5でハッチングが施されている部分)が形成されている。ハンダ形成領域15A及び15Bは、SMTパッド3の外周よりも若干外側の領域まで延出した状態で形成されている。また、このマスキング層10によって、貫通ヴィア4の外周部には、マスキング層10が形成されない非マスキング領域16が画定されている。そしてまた、ハンダ形成領域15A及び15Bは、非マスキング領域16と所定の距離Lをおいて形成されており、このハンダ形成領域15A及び15Bと非マスキング領域16との間には、マスキング層10が形成されており、この部分に形成されているマスキング層10は、ソルダーレジストダムとしての役割を果たしている。
【0030】
このように、ハンダ形成領域15A及び15Bと非マスキング領域16は、所定の距離Lをおいて形成されており、これら両者間にはマスキング層10が形成されているため、SMT部品2を実装する際に、当該両者間に形成されたマスキング層10によって、ハンダ(クリームハンダ)9が貫通ヴィア4内に流れ込むことを阻止することができる。したがって、外部電極2AとSMTパッド3とを接続するために必要なハンダ(クリームハンダ)量を削減することができる。さらにまた、貫通ヴィア4の外周部には、非マスキング領域16が形成されているため、後に行われる外部電極2AとSMTパッド3とをハンダ9により接続する工程でかかる熱により、マスキング層10が溶解したとしても、マスキング層10を形成している非導電性のレジスト液が貫通ヴィア4に流れ込むことも防止することができる。したがって、外部電極2Aと基板1に形成されている内部電極(図示せず)との電気的な接続が阻害されることを防止することができ、両者の接続性を良好に維持することができる。
【0031】
また、非マスキング領域16の外周部には、非マスキング領域16の外周に沿って、4つの各々独立した外層サーマルランド11が形成されている。これらの外層サーマルランド11は、貫通ヴィア4内に熱が逃げることを防止することができるため、外部電極2AとSMTパッド3とをハンダ9により接続する際に必要な温度をさらに効率よく維持することができ、ハンダ上がりを向上することができる。
【0032】
次に、実施形態1に係る回路基板をCAD設計する方法について図面を参照して説明する。図2に示すように、実施形態1に係る回路基板を設計するCAD50は、基板1上の所定位置にSMTパッド3を配置する部品配置部51と、SMTパッド3の内側に貫通ヴィア4を配置する貫通ヴィア配置部52と、基板1に対しSMT部品2が実装される方向を検出する電極実装方向検出部53と、SMTパッド3に対し貫通ヴィア4がどの位置に配置されているかを測定する貫通ヴィア位置測定部54と、貫通ヴィア位置測定部54で測定された位置と、SMTパッド3の予め設定された基準位置との距離を算出し、当該距離が所定値以上であるか否かを判定する距離判定部55と、距離判定部55が前記距離が所定値以上であると判定した際に、外層サーマルランド11が形成される領域、貫通ヴィア4の外周部に形成されている非マスキング領域16、及び貫通ヴィア4を挟んだ両側であり且つSMTパッド3の外周から外側に延出するハンダ形成領域15A及び15Bを残してマスク形成領域に変換し、さらに、ハンダ9が形成される領域をメタルマスク開口部に変換する形状変換部56と、を備えている。
【0033】
このCAD50を使用した回路基板の設計では、図3に示すように、先ず、ステップS101において、基板1を示す領域上の所定位置に、SMT部品2の外部電極2Aを接続するためのSMTパッド3を、部品配置部51により設計者がマニュアル操作にて配置する。その後、ステップS102に進む。
【0034】
次に、ステップS102では、SMT部品2の外部電極2Aと基板1内に配置されている内部電極との電気的な接続を行う貫通ヴィア4を、貫通ヴィア配置部52により設計者がマニュアル操作にてSMTパッド3の内側(領域内)に配置する。その後、ステップS103に進む。
【0035】
次に、ステップS103では、電極実装方向検出部53により、基板1に対しSMT部品2が実装される方向を検出した後、ステップS104に進む。なお、実施形態1では、SMT部品2は、図1に示すように、図1でいう右側からSMTパッド3上に配置されている。この実装方向を、「−X方向」とする。その後、ステップS104に進む。
【0036】
ステップS104では、SMTパッド3の内側に配置された貫通ヴィア4の位置を、貫通ヴィア位置測定部54により測定する。具体的には、図4に示すように、SMTパッド3の図4でいう左側端から貫通ヴィア4までの最短距離X1と、SMTパッド3の図4でいう右側端から貫通ヴィア4までの最短距離X2と、SMTパッド3の図4でいう下側端から貫通ヴィア4までの最短距離Y1と、SMTパッド3の図4でいう上側端から貫通ヴィア4までの最短距離Y2と、を測定する。その後、ステップS105に進む。
【0037】
ステップS105では、ステップS103において検出されたSMT部品2が実装される方向が−X方向であることから、距離判定部55により、X1、X2、Y1、Y2のうち、X1及びX2を選択する。次に、X1と、予め設定されているSMTパッド3の図4でいう左側端から貫通ヴィア4までの必要寸法であるSMT部品遠端必要寸法X0aと、を比較する。また、X2と、予め設定されているSMTパッド3の図4でいう右側端から貫通ヴィア4までの必要寸法であるSMT部品近端必要寸法X0bと、を比較する。X1≧X0a且つX2≧X0bである(ステップS105:YES)場合は、ステップS106に進む。一方、X1≧X0a且つX2≧X0bでない(ステップS105:NO)場合は、ENDに進み、設計を終了させる。
【0038】
ステップS106では、形状変換部56により、貫通ヴィア4の外周部の外層サーマルランド11が配置される領域、貫通ヴィア4の外周部に形成される非マスキング領域16、及び貫通ヴィア4を挟んだ両側であり且つSMTパッド3の外周から外側に延出する(例えば、約100μm延出する)ハンダ形成領域15A及び15Bを残してマスク形成領域(非導体部分)に変換する。次に、ハンダ9が形成される領域をメタルマスク開口部に変換する。その後、ENDに進み、設計を終了させる。
【0039】
実施形態1に係るCAD設計により設計された回路基板を製造するには、先ず、基板1上のCAD設計により予め設定された位置(以下、単に「設定位置」ということがある)にSMTパッド3を選択的に形成する。次に、このSMTパッド3の内側の設定位置に貫通ヴィア4を開口し、貫通ヴィア4の内周面にメッキ層13を形成する。次いで、SMTパッド3及び貫通ヴィア4が形成された基板1上に、レジスト層を形成した後、このレジスト層のうち、貫通ヴィア4の外周部に形成される非マスキング領域16と、非マスキング領域16の外周部に形成される外層サーマルランド11の形成領域と、貫通ヴィア4を挟んだ両側であり且つSMTパッド3の外周から外側に延出するハンダ形成領域15A及び15Bと、に形成されているレジスト層を選択的に除去し、マスキング層10(図4にハッチングで示す部分)を形成する。
【0040】
この時、非マスキング領域16とハンダ形成領域15Aとの間、非マスキング領域16とハンダ形成領域15Bとの間には、マスキング層10(ソルダーレジストダム)が存在することになり、外層サーマルランド11の形成領域は、SMTパッド3が露出した状態となる。このため、SMTパッド3を熱伝導性が良好な導電性材料(例えば、銅等)で形成することにより、外層サーマルランド11を別途形成することなく、外層サーマルランド11の形成領域に形成されているレジスト層を選択的に除去すると同時に露出したSMTパッド3の部分を外層サーマルランド11とすることができる。
【0041】
また、貫通ヴィア4の外周部には、非マスキング領域16が形成されているため、後に行われる外部電極2AとSMTパッド3とをハンダ9により接続する工程でかかる熱により、マスキング層10が溶解したとしても、マスキング層10を形成するためのレジスト液が貫通ヴィア4に流れ込むことを防止することができる。したがって、外部電極2Aと基板1に形成されている内部電極(図示せず)との電気的な接続が阻害されることを防止することができ、両者の接続性を良好に維持することができる。
【0042】
次に、上記工程で得られた基板1上にメタルマスク材層を形成した後、ハンダ形成領域15A及び15Bに形成されているメタルマスク材層を選択的に除去し、メタルマスク開口18A及び18Bを形成する。基板1上に残されたメタルマスク材層が、メタルマスク20となる。
【0043】
次に、メタルマスク20が形成された基板1上にクリームハンダを塗布した後、メタルマスク20を除去し、ハンダ形成領域15A及び15B(メタルマスク開口18A及び18B部分)にハンダ9を形成する。その後、ハンダ9A及び9Bを介して、SMTパッド3と、SMT部品2の外部電極2Aとを電気的に接続し固定する。この時、前述したように、非マスキング領域16とハンダ形成領域15A及び15Bとの間には、マスキング層10(ソルダーレジストダム)が存在しているため、クリームハンダが貫通ヴィア4内に流れ込むことを阻止することができる。したがって、外部電極2AとSMTパッド3とを接続するために必要なクリームハンダの量を削減することができる。
【0044】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る回路基板及びその設計方法について図面を参照して説明する。図7は、(1)は、本発明の実施形態2に係る回路基板の一部を示す平面透視図、図7(2)は、図7(1)に示すVII−VII線に沿った断面図、図8は、本発明の実施形態2に係る回路基板の設計方法の一部を具体的に示す概念図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。また、実施形態2では、実施形態1と同様の部品には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略すると共に、実施形態1と同様の設計方法については、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図7及び図8に示すように、実施形態2に係る回路基板と、実施形態1に係る回路基板との異なる主な点は、貫通ヴィア4を複数形成した点である。即ち、実施形態2に係る回路基板は、内部電極が形成された基板1上の所定位置に形成されたSMTパッド3の内側に5つの貫通ヴィア4が形成されている。このように、多数の貫通ヴィア4を介して内部電極に接続させる必要があるSMT部品2を配設する場合であっても、これらの貫通ヴィア4をSMTパッド3の内側に配置することができるため、電極同士の接続領域を小さくすることができ、小型化、軽量化、高密度実装化を達成することができると共に、外部電極と内部電極との接続性を良好に維持することができる。
【0046】
なお、図7では、図面を判り易くするため、外層サーマルランド11の記載を省略したが、実施形態1と同様に、各々の非マスキング領域16の外周部には、外層サーマルランド11が形成されている。
【0047】
実施形態2に係る回路基板は、実施形態1と同様にCAD50を使用して設計することができる。このCAD50を使用した回路基板の設計では、図3に示すステップS101において、SMT部品2の外部電極2Aを接続するためのSMTパッド3を、部品配置部51により設計者がマニュアル操作にて配置した後、ステップS102において、貫通ヴィア配置部52により設計者がマニュアル操作にてSMTパッド3の内側(領域内)に複数の貫通ヴィア4を配置する。なお、実施形態2では、図7及び図8に示すように、5つの貫通ヴィア4を同一線上に互いに間隔をおいて配置した。
【0048】
次に、ステップS103に進み、実施形態1と同様に電極実装方向検出部53により、基板1に対しSMT部品2が実装される方向を検出した後、ステップS104に進む。なお、実施形態2も実施形態1と同様に、SMT部品2は、−X方向に実装されている。
【0049】
次に、ステップS104に進み、SMTパッド3の内側に配置された貫通ヴィア4の位置を、貫通ヴィア位置測定部54により測定する。具体的には、図8に示すように、SMTパッド3の図8でいう左側端から、この左側端に一番近い貫通ヴィア4までの最短距離X1と、SMTパッド3の図4でいう右側端から、この右側端に一番近い貫通ヴィア4までの最短距離X2と、SMTパッド3の図4でいう下側端から、この下側端に一番近い貫通ヴィア4までの最短距離Y1と、SMTパッド3の図4でいう上側端から、この上側端に一番近い貫通ヴィア4までの最短距離Y2と、を測定する。その後、ステップS105に進む。
【0050】
ステップS105では、実施形態1と同様に、X1とSMT部品遠端必要寸法X0aとを比較し、且つX2とSMT部品近端必要寸法X0bとを比較して、X1≧X0a且つX2≧X0bである(ステップS105:YES)場合は、ステップS106に進む。一方、X1≧X0a且つX2≧X0bでない(ステップS105:NO)場合は、ENDに進み、設計を終了させる。
【0051】
ステップS106では、形状変換部56により、貫通ヴィア4の外周部の外層サーマルランド11が配置される領域、貫通ヴィア4の外周部に形成される非マスキング領域16、及び貫通ヴィア4を挟んだ両側であり且つSMTパッド3の外周から外側に延出するハンダ形成領域15A及び15Bを残してマスク形成領域(非導体部分)に変換する。次に、ハンダ9が形成される領域をメタルマスク開口部に変換する。その後、ENDに進み、設計を終了させる。
【0052】
なお、実施形態2では、SMTパッド3の内側に、5つの貫通ヴィア4を同一線上に互いに間隔をおいて配置した場合について説明したが、これに限らず、貫通ヴィア4は、SMTパッド3の内側であれば、例えば、図9に示すように、任意の位置に、任意の数で配置することができる。この配置の場合も、SMT部品2が−X方向に実装されている場合は、X1≧X0a且つX2≧X0bである時に、ステップS106に進み、X1≧X0a且つX2≧X0bでない時に、ENDに進めばよい。
【0053】
また、SMT部品2が図1でいう左側からSMTパッド3上に配置されている場合は、予め設定されているSMTパッド3の図4及び図9でいう左側端から、この左側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品近端必要寸法X0cとなり、図4及び図9でいう右側端から、この右側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品遠端必要寸法X0dとなり、X1≧X0c且つX2≧X0dである場合は、ステップS106に進めばよい。
【0054】
そしてまた、SMT部品2が図1でいう下側からSMTパッド3上に配置されている場合は、予め設定されているSMTパッド3の図4及び図9でいう下側端から、この下側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品近端必要寸法X0eとなり、予め設定されているSMTパッド3の図4及び図9でいう上側端から、この上側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品遠端必要寸法X0fとなり、Y1≧X0e且つY2≧X0fである場合は、ステップS106に進めばよい。
【0055】
さらにまた、SMT部品2が図1でいう上側からSMTパッド3上に配置されている場合は、予め設定されているSMTパッド3の図4及び図9でいう下側端から、この下側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品遠端必要寸法X0gとなり、予め設定されているSMTパッド3の図4及び図9でいう上側端から、この上側端に一番近い貫通ヴィア4までの必要寸法が、SMT部品近端必要寸法X0hとなり、Y1≧X0g且つY2≧X0hである場合は、ステップS106に進めばよい。
【符号の説明】
【0056】
1…基板、 2…SMT部品、 2A…外部電極、 3…SMTパッド、 4…貫通ヴィア、 9A、9B…ハンダ、 10…マスキング層、 11…外層サーマルランド、 15A、15B…ハンダ形成領域、 16…非マスキング領域、 18A、18B…メタルマスク開口、 20…メタルマスク、 50…CAD、 51…部品配置部、 52…貫通ヴィア配置部、 53…電極実装方向検出部、 54…貫通ヴィア位置測定部、 55…距離判定部、 56…形状変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通ヴィア及び内部電極が形成された基板と、当該基板上にハンダ付けされてなる表面実装型電子部品と、を備え、前記貫通ヴィアを介して、前記内部電極に前記表面実装型電子部品の外部電極を接続してなる回路基板であって、
前記基板上に形成され且つ前記外部電極が接続されるパッドと、
前記基板のパッド形成領域内に形成された貫通ヴィアと、
前記パッドと外部電極との間に介在し、当該パッドと外部電極とを接続するハンダと、
前記ハンダが形成されるハンダ形成領域を前記貫通ヴィアを挟んだ両側に分離して画定すると共に、前記貫通ヴィアの外周から所定の間隔をおいて配置されるマスキング層と、
を備え、
前記ハンダ形成領域は、前記マスキング層によって前記貫通ヴィアの外周部に画定された非マスキング領域と所定の距離をおいて形成されてなる回路基板。
【請求項2】
前記非マスキング領域上に、前記貫通ヴィアの外周部から所定の距離をおいて配置されるサーマルランドをさらに備えてなる請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記貫通ヴィアを複数有してなる請求項1または請求項2記載の回路基板。
【請求項4】
貫通ヴィア及び内部電極が形成された基板と、当該基板上にハンダ付けされてなる表面実装型電子部品と、を備え、前記貫通ヴィアを介して、前記内部電極に前記表面実装型電子部品の外部電極を接続してなる回路基板を、CAD設計する方法であって、
前記基板上に、前記外部電極が接続されるパッドを配置する部品配置工程と、
前記パッドの内部に前記貫通ヴィアを配置する貫通ヴィア配置工程と、
前記外部電極が実装される方向を検出する電極実装方向検出工程と、
前記貫通ヴィアの位置を測定する貫通ヴィア位置測定工程と、
前記貫通ヴィア位置測定工程で測定された位置と、前記パッドの予め設定された基準位置との距離を算出し、当該距離が所定値以上であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で、前記距離が所定値以上であると判定された際に、前記貫通ヴィアの外周部及び前記貫通ヴィアを挟んだ両側であり且つ前記パッドの外周から外側に延出するハンダ形成領域を残してマスク形成領域に変換するマスク形成領域変換工程と、
を備え、
前記貫通ヴィアの外周部とハンダ形成領域は、互いに所定の間隔をおいて配置される回路基板設計方法。
【請求項5】
前記マスク形成領域変換工程は、前記貫通ヴィアの外周部の外側の一部領域を残してマスク形成領域に変換する工程を含む請求項4記載の回路基板設計方法。
【請求項6】
前記マスク形成領域変換工程後、前記ハンダ形成領域を残してメタルマスク形成領域に変換するメタルマスク形成領域変換工程をさらに備えてなる請求項4または請求項5記載の回路基板設計方法。
【請求項7】
前記貫通ヴィア配置工程は、前記パッドの内部に複数の貫通ヴィアを配置する請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の回路基板設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−119513(P2011−119513A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276490(P2009−276490)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】