説明

回路接続用接着シート及びこれを用いた回路接続材料の基板への固定方法

【課題】支持基材と支持基材上に設けられた接着剤組成物からなる接着層とを備える接着シートにおいて、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に十分仮固定することが可能となる接着シートを提供すること。
【解決手段】支持基材と、当該支持基材上に設けられた接着剤組成物を含む接着層と、を備える回路接続用接着シートであって、前記接着剤組成物が、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤、又は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含有し、前記支持基材の厚みTsと前記接着層の厚みTaとが下記式(1)で表される条件を満たしており、かつ、前記厚みTsが42μm以下である接着シート。0.40≦Ta/Ts≦0.65(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、これを用いた回路部材の接続構造及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する回路を加熱、加圧し加圧方向の電極を電気的に接続する接続材料として、異方導電性フィルム(以下、ACFという)や、絶縁性接着フィルム(以下、NCFという)などの回路接続材料が使用されている。ACFは、プリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板や、IC、LSI等の半導体素子やパッケージなどを接続する際、相対向する電極間に配置され、加熱加圧によって、電極同士を接続する。すなわち、ACF及びNCFは、相対向する電極同士の導電性と、隣接する電極同士の絶縁性とを両立して発現させ、かつ両基板間の電気的接続と機械的接続を行うことができる。
【0003】
代表的なACF及びNCFには、エポキシ樹脂系接着剤又はアクリル系接着剤等の接着剤成分が好適に使用されている。例えばACFは、上記接着剤成分中に必要により配合される導電性粒子を分散させてなる。これらの回路接続材料は、一般にフィルム状であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持基材に積層した状態で製品化されている。上記回路接続材料は、基板上に固定後、支持基材を除去して熱圧着し、接着剤成分を硬化させて部材間の機械的接続を行うとともに、対向する電極間を直接又は導電性粒子を介して接触させて電気的接続を行う。なお、上記固定は、支持基材除去後の熱圧着と区別するために、仮固定、仮圧着又は仮接続とも呼ばれている。
【0004】
ACFを基板上に固定する温度は室温〜80℃程度と広範囲である。しかしながら、室温付近の温度でACFを基板上に固定すると、支持基材を除去する際にACFごと基板から剥がれてしまう場合がある。一方、高温でACFを基板上に固定すると、接着剤成分が滲み出して支持基材のACFが積層されている側とは逆側の表面に回りこみ、支持基材を除去する際に接着剤の縁部分の密着不良が発生する場合がある。さらに接着剤成分が滲み出すと、圧着ヘッドが汚染されるという問題もある。また、ACFが支持基材と保護フィルムに挟まれた状態にある場合、まず、保護フィルムを剥離してACFの接着面を露出させてからACFを基板上に固定する。ところが、保護フィルムをACFから剥離しようとすると、先に支持基材がACFから剥離してしまい、ACFの基板上への固定が困難になる場合がある。そこで、このような問題点を解決する手段として、例えば特許文献1には、支持基材付き接着剤を貼り付ける装置を改良する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−171897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ACFを始めとする支持基材上に設けられた接着層を広範囲な温度条件で基板上に固定するためには、支持基材付き接着剤を貼り付ける装置の改良のみでは不十分であり、更なる改善が望まれている。そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、支持基材と支持基材上に設けられた接着剤組成物からなる接着層とを備える接着シートにおいて、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に十分仮固定することが可能となる接着シート、これを用いた回路部材の接続構造及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持基材と、当該支持基材上に設けられた接着剤組成物からなる接着層とを備える接着シートであって、支持基材の厚みTs(以下、単に「Ts」という。)と接着層の厚みTa(以下、単に「Ta」という。)とが下記式(1)で表される条件を満たしており、かつ、上記Tsが42μm以下である接着シートを提供する。
0.40≦Ta/Ts≦0.65 (1)
【0008】
この接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定することが十分に可能となる。このような効果が奏される要因は現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者らは以下のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。
【0009】
一般に、接着剤組成物は液状の状態で支持基材上に塗布後、フィルム状の接着層を形成する。この際、支持基材と接着層とでは機械的又は熱的特性が異なるため、支持基材と接着層との間に応力が生じる。つまり、Ta/Tsが0.40未満では、接着層の厚みTaが相対的に薄くなり、接着層を形成する際に支持基材の物性が支配的となり、支持基材の種類により接着層に伸び又は縮み応力が大きく働く傾向がある。一方、Ta/Tsが0.65を超えると、接着層形成時に接着層の物性が支配的となり、接着剤の種類により接着層に伸び又は縮み応力が大きく働く傾向がある。そのため、このような状態では、接着シートを基板上へ十分に仮固定することが難しくなり、たとえ仮固定できても、支持基材を剥離する際に、接着層までも基材から剥離しやすくなる。そこで、TsとTaとが上記式(1)で表される条件を満たすことで、接着層を支持基材上に形成するときに支持基材と接着層との間に生じる応力を緩和することができ、接着シートを基板上に十分に仮固定することができる。
【0010】
さらに、Tsが42μm以下であると、接着シートを基板に固定後、支持基材を接着層から剥がす際に支持基材と接着層の剥離点の角度を大きくでき、支持基材の除去を容易に行うことができる。そのため、接着層の縁部等の一部又は全部が基板から剥離することを防ぐことができる。したがって、本発明の接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定することが十分に可能となる。
【0011】
また、Ta/Tsが0.65を超えると、接着層の厚みTaが相対的に厚くなるため、接着シートを仮固定する際に接着剤組成物が染み出して支持基材の側面部分や接着層が設けられている側とは逆側の表面に回りこみ易くなる。そのため、支持基材を除去する際に接着層の縁部で密着不良となる傾向や、圧着ヘッドが汚染される傾向がある。
【0012】
本発明の接着シートは、接着層上に、更に保護フィルムが設けられ、かつ、この保護フィルムの厚みTp(以下、単に「Tp」という。)がTs以下であることが好ましい。これにより、保護フィルムを接着層から除去する際に、接着層が支持基材から剥がれてしまうことをより有効に防止できる。
【0013】
本発明の接着シートにおいて、支持基材及び接着層間の剥離強度が、保護フィルム及び接着層間の剥離強度以上であることが好ましい。この場合、接着シートから保護フィルムを剥離する際に、接着層が支持基材から剥離してしまうことを防止できるため、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に、一層有効に仮固定することが可能となる。
【0014】
本発明の接着シートは、接着剤組成物が、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。このような接着剤組成物からなる接着層は各種基板との接着性に優れるため、本発明の接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に、より一層有効かつ確実に仮固定することができる。
【0015】
また、本発明の接着シートは、接着剤組成物が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含有することが好ましい。このような接着剤組成物からなる接着層は各種基板との接着性に優れるため、本発明の接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に、より一層有効かつ確実に仮固定することが可能となる。
【0016】
本発明の接着シートは、接着剤組成物が導電性粒子を更に含有することが好ましい。これにより、接着剤組成物はそれ自体導電性を容易に有することができる。そのため、上記接着剤組成物からなる接着層を備える接着シートは、電気的な接続の異方性を一層良好に示すことが可能となる。
【0017】
本発明の接着シートにおいて、支持基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルム、配向ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム及びポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備えることが好ましい。これにより、本発明の接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定するという本発明の効果を一層有効に発揮することができる。
【0018】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、第1の回路基板の主面と第2の回路基板の主面との間に設けられ、第1の回路電極と第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材とを備え、回路接続部材は、上述の接着シートにおける接着層の硬化物である回路部材の接続構造を提供する。このような回路部材の接続構造は、回路接続部材が本発明の接着シートにおける接着層の硬化物からなるため、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を回路基板上に仮固定することが可能となる。また、この接続構造は、対向する電極同士の導電性と、隣接する電極同士の絶縁性とを十分に確保できる。
【0019】
さらに、本発明は、半導体素子と、半導体素子を搭載する基板と、半導体素子及び基板間に設けられ、半導体素子及び基板を電気的に接続する半導体素子接続部材とを備え、半導体素子接続部材は、上述の接着シートにおける接着層の硬化物である半導体装置を提供する。このような半導体装置は、半導体接続部材が本発明の接着シートにおける接着層の硬化物からなるため、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定することが可能となる。また、この半導体装置は、半導体素子及び基板間で導電性を十分に確保できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、支持基材と支持基材上に設けられた接着剤組成物を含む接着層とを備える接着シートにおいて、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定することが可能となる接着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す部分断面図である。
【図3】回路部材を接続する一連の工程図である。
【図4】本発明の半導体装置の一実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0023】
(接着シート)
本発明の好適な実施形態に係る接着シートは、支持基材と支持基材上に設けられた接着剤組成物からなる接着層とを備えるものである。
【0024】
本発明の接着シートおいて、支持基材上に設けられる接着層が、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含む接着剤組成物からなることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。更に、これらの樹脂は分子内にシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは混合する樹脂同士が完全に相溶するか、若しくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂は、接着剤組成物のフィルム形成性を良好にすることができる。フィルム形成性とは、液状の接着剤組成物を固形化し、フィルム状とした場合に、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性を示すものである。通常の状態(例えば、常温)でフィルムとしての取扱いが容易であると、フィルム形成性が良好であるといえる。これら熱可塑性樹脂の中でも、接着性、相溶性、耐熱性及び機械強度に優れることからフェノキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0027】
フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させることにより、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得ることができる。また、フェノキシ樹脂はラジカル重合性の官能基や、その他の反応性化合物により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、上述した熱可塑性樹脂の分子量は特に制限はないが、熱可塑性樹脂の分子量が大きいほど後述するフィルムを容易に形成することができ、接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定することも可能となる。溶融粘度を広範囲に設定することができれば、半導体素子や液晶素子等の接続に用いた場合、素子間及び配線間ピッチが狭小化したとしても、周辺部材に接着剤が付着することを一層防止することができ、スループットを向上させることが可能となる。一般的な重量平均分子量としては5000〜150000が好ましく、10000〜80000が特に好ましい。重量平均分子量が5000未満では、後述するフィルムとして使用する場合にフィルム形成性が不十分となる傾向があり、重量平均分子量が150000を超えると、他の成分との相溶性が劣る傾向がある。
【0029】
なお、本明細書における重量平均分子量は、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)分析により下記条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。
(GPC条件)
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)
検出器:L−3300RI((株)日立製作所製、商品名)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
【0030】
本発明に係るラジカル重合性化合物としては、ラジカルにより重合する官能基を有するものであり、例えば、(メタ)アクリル酸化合物、マレイミド化合物、スチレン誘導体が好適に用いられる。このラジカル重合性化合物は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーのいずれであってもよく、重合性モノマーと重合性オリゴマーとを併用することも可能である。重合性オリゴマーは一般に高粘度であるため、重合性オリゴマーを用いる場合、低粘度の重合性多官能(メタ)アクリレート等の重合性モノマーを併用して粘度調整することが好ましい。
【0031】
ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル又はアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を使用することもできる。グリシジルエーテル基を含有するグリシジル(メタ)アクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを併用した場合、応力緩和に優れるので好ましい。上記アクリルゴムの重量平均分子量は、接着剤組成物の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0032】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
ラジカル重合性化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、60〜150質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物の配合割合が50質量部未満であると、接着剤組成物の硬化物の耐熱性が低下する傾向にあり、250質量部を超えると、接着剤組成物のフィルム形成性が不十分となる傾向にある。
【0034】
本発明に係るラジカル重合開始剤としては、従来知られている過酸化化合物(有機過酸化物)、アゾ化合物又は光開始剤のような、加熱及び光照射のうち少なくともいずれか一方の処理により分解して遊離ラジカルを発生する化合物が用いられる。有機過酸化物及びアゾ化合物は、主として加熱により遊離ラジカルを発生する。これらの化合物をラジカル重合開始剤として用いる場合、有機過酸化物及び/又はアゾ化合物から1種又は2種以上を、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選択する。
【0035】
有機過酸化物としては、高い反応性と長いポットライフを両立する観点から、10時間半減期温度が40℃以上、かつ、1分間半減期温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、10時間半減期温度が60℃以上、かつ、1分間半減期温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。また、有機過酸化物は、回路部材の回路電極(接続端子)の腐食を防止するために、塩素イオンや有機酸の含有量が5000ppm以下であることが好ましい。
【0036】
有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上が好適に用いられる。これらの中では、保存時の高い保存安定性と使用時の高い反応性を両立する観点から、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上の有機過酸化物がより好ましい。さらには、より高い反応性が得られる点で、有機過酸化物が、パーオキシエステル及び/又はパーオキシケタールであることが更に好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びビス(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート及びビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサヒドロテレフタレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド及びトリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜設定できる。例えば、接続時間を10秒以下とした場合、十分な反応率を得るために、ラジカル重合開始剤の配合割合は、ラジカル重合性化合物及び熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の配合割合が0.1質量部未満であると、反応率が低下するため、接着剤組成物の硬化物が硬化し難くなる傾向にある。ラジカル重合開始剤の配合割合が30質量部を超えると、接着剤組成物の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤組成物のポットライフが短くなったりする傾向にある。
【0045】
本発明の接着シートにおいて、支持基材上に設けられる接着層が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含む接着剤組成物からなることも好ましい。
【0046】
この場合、熱可塑性樹脂は上述した熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。
【0047】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独に、あるいは、その2種以上を混合して用いられる。具体的には、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。エポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)及び加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0048】
上記熱硬化性樹脂の硬化剤は、より長いポットライフを得る観点から、潜在性硬化剤が好ましい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、潜在性硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。また、可使時間を延長する観点から、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものを用いると好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を併用して用いてもよい。
【0049】
潜在性硬化剤の配合割合は、十分な反応率を得るために熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、0.1〜60質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合割合が0.1質量部未満では、反応率が低下して接着強度が低下したり、接続抵抗が大きくなったりする傾向がある。潜在性硬化剤の配合割合が60質量部を超えると、接着剤組成物の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤組成物のポットライフが短くなったりする傾向にある。
【0050】
これら硬化剤は、単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、上記硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0051】
本発明に係る接着剤組成物は、導電性粒子を含有しなくとも、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られる。一方、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られるので好ましい。
【0052】
本発明において必要に応じて含まれる導電性粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有するものであれば特に制限されない。導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu及びはんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、導電性粒子は、核となる粒子を1層又は2層以上の層で被覆し、その最外層が導電性を有するものであってもよい。この場合、より優れたポットライフを得る観点から、最外層が、Ni、Cuなどの遷移金属よりも、Au、Ag及び/又は白金族金属などの貴金属を主成分とすることが好ましく、これらの貴金属の少なくとも1種以上からなることがより好ましい。これらの貴金属の中では、Auが最も好ましい。
【0053】
導電性粒子は、核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものであってもよい。また、導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を主成分とする絶縁性粒子を核とし、この核の表面に上記金属又はカーボンを主成分とする層で被覆したものであってもよい。
【0054】
導電性粒子が、絶縁性粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、絶縁性粒子がプラスチックを主成分とするものであり、最外層が貴金属を主成分とするものであると好ましい。これにより、接着剤組成物を回路接続材料等の電気的接続材料として用いた場合、導電性粒子が加熱及び加圧に対して良好に変形することができる。しかも、回路等の接続時に、導電性粒子の電極や接続端子との接触面積が増加する。そのため、電気的接続材料の接続信頼性を更に向上させることができる。同様の観点から、導電性粒子が、上記加熱により溶融する金属を主成分として含む粒子であると好ましい。
【0055】
導電性粒子が、絶縁性粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、一層良好な導電性を得るために、導電層の厚みは100Å(10nm)以上であると好ましい。また、導電性粒子が、核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものである場合、最外層となる上記貴金属を主成分とする層の厚みは300Å(30nm)以上であると好ましい。この厚みが300Åを下回ると、最外層が破断しやすくなる。その結果、露出した遷移金属が接着剤成分と接触し、遷移金属による酸化還元作用により遊離ラジカルが発生しやすくなるため、ポットライフが容易に低下する傾向にある。一方、上記導電層の厚みが厚くなるとそれらの効果が飽和してくるので、その厚みを1μm以下にするのが好ましい。
【0056】
導電性粒子を用いる場合の配合割合は、特に制限を受けないが、接着剤組成物100体積部に対して0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜10体積部であることがより好ましい。この値が、0.1体積部未満であると良好な導電性が得られ難くなる傾向にあり、30体積部を超えると回路等の短絡が起こりやすくなる傾向がある。なお、導電性粒子の配合割合(体積部)は、23℃における接着剤組成物を硬化させる前の各成分の体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算する方法や、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。
【0057】
接着剤組成物は、上述のもの以外に、使用目的に応じて別の材料を添加することができる。例えば、この接着剤組成物に、カップリング剤及び密着性向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。これにより、更に良好な密着性や取扱い性を付与することができるようになる。また、本発明に係る接着剤組成物は、ゴムを含有してもよい。これにより、応力の緩和及び接着性の向上が可能となる。さらには、この接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。更に接着剤組成物には、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を配合してもよい。
【0058】
接着剤組成物は、充填材(フィラー)を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材としては、絶縁性を有するものであって、その最大径が導電性粒子の平均粒径未満であれば使用できる。充填材の配合割合は、接着剤組成物100体積部に対して、5〜60体積部であることが好ましい。充填材の配合割合が60体積部を超えると、信頼性向上の効果が飽和する傾向にあり、5体積部未満では充填材の添加効果が小さくなる傾向にある。
【0059】
カップリング剤としては、接着性の向上の点からケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が好ましく使用できる。具体的には、アクリル基を有するシランカップリング剤として、(3−メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ケチミンを有するシランカップリング剤として、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。また、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
カップリング剤の配合割合は、接着剤組成物中のその他の配合物の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。カップリング剤の配合割合が0.1質量部未満の場合、実質的な添加効果が得られない傾向がある。またカップリング剤の配合割合が20質量部を超える場合、支持基材上へ接着剤組成物からなる接着層を形成した際の接着層のフィルム形成性が低下し、膜厚強度が低下する傾向がある。
【0061】
本発明の接着シートにおいて、用いられる支持基材としては、シート状又はフィルム状のものが好ましい。また、支持基材は2層以上を積層した形状のものでもよい。支持基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、配向ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及びポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備えることが好ましい。それらの中でも、寸法精度の向上とコスト低減の点からPETフィルムが好ましい。また、支持基材は、支持基材を接着層から一層容易に剥離するために、接着層が設けられる側の表面を必要に応じて離型処理剤で処理したものでもよい。離型処理剤としては、例えば、シリコーン、シリコーンアルキッド、アミノアルキッド、アルキルアルキッド及びメラミンが挙げられる。また、支持基材は、その表面をポリマー等でコーティングしたものでもよい。さらに支持基材には帯電防止層が設けられていてもよい。これらの処理は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。ここで、表面処理を施した場合の支持基材の厚みTsは、上記表面処理を施した後の値を示す。
【0062】
本発明に用いられる支持基材の厚みTsは、42μm以下である。Tsが42μmを超えると、接着層の縁部等の一部又は全部が基板から剥離する傾向にある。これは、接着シートを基板に仮固定後、支持基材を接着層から剥がす際に支持基材と接着層の剥離点の角度が小さくなり、剥離に要する負荷が大きくなることに起因する。また、支持基材は厚くなるほど使用する原料が増加し、得られる接着シートのコストが上昇する傾向がある。一方、Tsの下限値は、支持基材上に接着層を設ける際の熱履歴や機械的ストレス等により切れたり厚みが容易に変化したりなければ特に制約はないが、18μm以上が好ましい。Tsが18μm未満であると、熱履歴や機械的ストレス等により、切れたり厚みが容易に変化したりする傾向がある。上述の支持基材は市販のものを入手してもよく、常法により作製してもよい。
【0063】
さらに、本発明の接着シートは、支持基材の厚みTsと接着層の厚みTaとが、下記式(1)で表される条件を満たしている。
0.40≦Ta/Ts≦0.65 (1)
Ta/Tsがこの範囲にあることにより、本発明の接着シートは、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に十分に仮固定することが可能となる。Ta/Tsは、好ましくは0.42以上0.63以下であり、より好ましくは0.45以上0.60以下であり、特に好ましくは0.47以上0.58以下である。
【0064】
Ta/Tsが0.40未満では、接着層の厚みTaが相対的に薄くなり、接着層を形成する際に支持基材の物性が支配的となり、支持基材の種類により接着層に伸び又は縮み応力が大きく働く傾向がある。一方、Ta/Tsが0.65を超えると、接着層形成時に接着層の物性が支配的となり、接着剤の種類により接着層に伸び又は縮み応力が大きく働く傾向がある。そのため、このような状態では、接着シートを基板上へ十分に仮固定することが難しくなり、たとえ仮固定できても、支持基材を剥がす際に接着層が支持基材ごと剥がれる傾向や、接着剤の縁部分の密着不良が発生する傾向がある。そこで、TsとTaとが上記式(1)で表される条件を満たすことで、接着層を支持基材上に形成するときに支持基材と接着層との間に生じる応力を緩和することができ、接着シートを基板上に十分に仮固定することができる。また、Ta/Tsが0.65を超えると、接着層の厚みTaが相対的に厚くなるため、接着シートを仮固定する際に接着剤組成物が染み出して支持基材の側面部分や接着層が設けられている側とは逆側の表面に回りこみ易くなる。そのため、支持基材を除去する際に接着層の縁部が密着不良となる傾向や、圧着ヘッドが汚染される傾向がある。
【0065】
本発明の接着シートにおいて、支持基材上に接着層を設ける方法としては、接着剤組成物を溶媒に溶解させ支持基材上に塗布してから溶剤を除去する方法、接着剤組成物を加温して流動性を確保しそのまま支持基材上に塗布して冷却する方法、予め形成されている接着層に支持基材を貼り合わせる方法等が挙げられる。本発明の接着シートは、上記いずれの方法を用いて作製してもよい。本発明による上述の効果をより有効かつ確実に奏するためには、支持基材上に接着層を設ける方法として、接着剤組成物を溶媒に溶解させ支持基材上に塗布してから溶剤を除去する方法、あるいは、接着剤組成物を加温して流動性を確保しそのまま支持基材上に塗布して冷却する方法が好ましい。また、支持基材上に設けられる接着層は単層でもよく、組成の異なる2層以上を重ねて構成してもよい。
【0066】
上記接着シートには、接着層上にさらに保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムとしては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、配向ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及ぶポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備えることが好ましい。これらの中では、コストを低減する観点からPE又はPETフィルムが望ましい。
【0067】
保護フィルムを配置する方法としては、接着シートの接着層表面にさらに保護フィルムをラミネーター等で積層する方法や、接着シートと、別の接着層を配置した保護フィルムとを接着層同士で貼り合わせる方法等があり、特に制限なく行うことができる。
【0068】
保護フィルムは、必要に応じて離型処理剤で表面処理してもよい。離型処理剤としてはシリコーン、シリコーンアルキッド、アミノアルキッド、アルキルアルキッド、メラミン等があげられる。また、保護フィルムの表面をポリマー等でコーティングしてもよい。さらに保護フィルムには帯電防止層を設けてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて行うことができる。表面処理を施した場合の保護フィルムの厚みTpは、通常、表面処理を施した後の厚みである。
【0069】
上記保護フィルムの厚みTpは、保護フィルムを除去する際に、接着層が支持基材から剥離してしまうことを防ぐため、支持基材の厚みTs以下であることが好ましい。
【0070】
本発明の接着シートにおいて、支持基材及び接着層間の剥離強度が、保護フィルム及び接着層間の剥離強度以上であることが好ましい。支持基材及び接着層間の剥離強度が、保護フィルム及び接着層間の剥離強度未満であると、接着層から保護フィルムを剥離しようとする際に、支持基材及び接着層間で先に剥離する傾向がある。なお上記剥離強度の関係は、例えば、支持基材と接着層とを積層してなる積層体、及び接着層と保護フィルムとを積層してなる積層体のそれぞれについて、市販のレオメータを用いて、引張り速度50mm/分で剥離した際の引張り強度値から比較することができる。
【0071】
本実施形態の接着シートは、30〜80℃の広い温度範囲で被着体に固定することができる。この際の加熱時間には特に制限はないが、0.1〜10秒間が好ましく、0.3〜8秒間がより好ましく、0.5〜5秒間がさらに好ましい。0.1秒間未満では実質的にほとんど圧力がかからない状態となり、密着不良となる傾向がある。一方、10秒間を超える場合、生産性が低下する傾向がある。また、接着シートを固定する際の加圧圧力には特に制限はない。ただし、接着層の被着体の面積当たり0.1〜10MPaが好ましい。その後、支持基材を除去し、加熱及び加圧を併用して被着体を接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜250℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。例えば、温度140〜200℃、圧力3MPaの条件下で、10秒間加熱及び加圧を行うことで接着層と被着体を接着させることが可能である。
【0072】
本実施形態の接着シートは、互いに異なる種類の被着体、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品や、プリント基板等のような回路部材同士を接続する回路接続材料として使用することができる。具体的には、異方導電性フィルムに代表される上述及び後に詳述するような回路接続材料の他、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィルム材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0073】
(回路部材の接続構造)
次に、本発明の回路部材の接続構造の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造1は、相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを電気的に接続する回路接続部材10が設けられている。第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、回路基板21の主面21a上に形成される第1の回路電極22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0074】
一方、第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成される第2の回路電極32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0075】
第1の回路部材20及び第2の回路部材30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限されない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて用いることができる。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0076】
回路接続部材10は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21aと31aとの間にも配置されている。本実施形態の回路部材の接続構造1においては、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0077】
次に、回路接続部材が導電性粒子を含有しない場合の本発明に係る回路部材の接続構造の好適な実施形態について説明する。図2は、本発明に係る回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造2は、相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材15が設けられている。第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、回路基板21の主面21a上に形成される第1の回路電極22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0078】
一方、第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成される第2の回路電極32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0079】
回路接続部材15は、絶縁性物質11を含有しているが導電性粒子7を含有していない。そのため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間に所望の量の電流が流れるように、それらを直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。この際、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の位置を調節することで、電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0080】
回路接続部材10及び15は本発明の接着シートにおける接着層の硬化物を備えている。そのため、回路接続部材10及び15の一部が剥離除去されていたり、支持基材45の一部が残存していたりすることが十分に防止されている。これにより、第1の回路部材20又は第2の回路部材30に対する回路接続部材10及び15の接着強度を十分に高くできる。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の電気的接続が可能となる。
【0081】
(回路部材の接続構造の製造方法)
次に、上述した回路部材の接続構造の製造方法について、その工程図である図3を参照にしつつ、説明する。なお、ここでは接着剤組成物が熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する場合について説明する。
【0082】
先ず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状回路接続材料40を支持基材45上に設けた接着シートを用意する(図3(a)参照)。フィルム状回路接続材料40は、回路接続材料をフィルム状に成形してなるものである。回路接続材料は、接着剤組成物5と、必要に応じて導電性粒子7とを含有する。ここで、接着剤組成物5には上述した本発明に係る接着剤組成物が用いられる。
【0083】
フィルム状回路接続材料40の厚さは、7〜28μmであることが好ましい。フィルム状回路接続材料40の厚さが7μm未満では、回路電極22、32間に回路接続材料が充填不足となる傾向がある。他方、28μmを超えると、回路電極22、32間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路電極22、32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0084】
次に、上記接着シートをフィルム状回路接続材料40側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。このとき、フィルム状回路接続材料40はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状回路接続材料40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0085】
そして、接着シートを、図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20に仮固定する。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状回路接続材料40中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。次に、支持基材45をフィルム状回路接続材料40から剥離する(図3(b)参照)。支持基材45を剥がす際に、フィルム状回路接続材料40の一部又は全部が基板から剥離したり、支持基材45の一部が残存したりすることなく、支持基材45を剥離することができる。
【0086】
続いて、図3(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料40上に載せる。
【0087】
そして、フィルム状回路接続材料40を加熱しながら、図3(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20、30を介して加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。こうして、フィルム状回路接続材料40が硬化処理され、本接続が行われ、図1に示すような回路部材の接続構造が得られる。
【0088】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0089】
上記のようにして、回路部材の接続構造を製造すると、得られる回路部材の接続構造において、導電性粒子7を対向する回路電極22、32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0090】
また、フィルム状回路接続材料40の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続される。即ち、得られる回路部材の接続構造においては、回路接続部材10は、上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されている。したがって、回路接続部材10の一部が剥離除去されていたり、支持基材45の一部が残存していたりすることが十分に防止されている。これにより、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、かつ、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0091】
なお、接着剤組成物5は、少なくとも加熱によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むものでもよく、このラジカル重合開始剤に代えて、光照射のみでラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。この場合、フィルム状回路接続材料40の硬化処理に際して、加熱に代えて光照射を行えばよい。この他にも、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。また、接着剤組成物5における硬化性成分としてエポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0092】
また、導電性粒子7の代わりに、他の導電材料を用いてもよい。他の導電材料としては、粒子状、又は短繊維状のカーボン、AuめっきNi線などの金属線条等が挙げられる。
【0093】
フィルム状回路接続材料40は、本発明の接着シートにおける接着層からなることから、従来よりも広範囲な温度条件でフィルム状回路接続材料40を基板上に仮固定することが可能となる。したがって、仮固定後、支持基材45を剥離する際に、支持基材45と共にフィルム状回路接続材料40が基板から剥離したり、フィルム状回路接続材料40の一部が剥離除去されていたり、支持基材45の一部が残存していたりすることが十分に防止されている。これにより、フィルム状回路接続材料40を用いて回路接続部材の接続構造を製造する際のプロセスマージンが広くなり、生産歩留まりを向上することが可能となる。また、回路接続材料が導電性粒子7を含有しない場合、この製造方法により得られる接続構造は図2に示すようなものとなる。
【0094】
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置の実施形態について説明する。図4は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図4に示すように、本実施形態の半導体装置3は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60とを備えており、半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
【0095】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置3が形成される。
【0096】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの14族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsPなどの13−15族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTeなどの12−16族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)などの種々のものを用いることができる。
【0097】
半導体素子接続部材80は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置3においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電性粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0098】
なお、半導体素子接続部材80が導電性粒子7を含有していない場合(図示せず)には、半導体素子50と回路パターン61とを所望の量の電流が流れるように直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0099】
半導体素子接続部材80は本発明の接着シートにおける接着層の硬化物により構成されている。そのため、半導体素子接続部材80の一部が剥離除去されていたり、支持基材45の一部が残存していたりすることが十分に防止されている。これにより、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材80の接着強度が十分に高くなる。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電気的接続が可能となる。
【0100】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0101】
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0102】
<接着剤組成物の調製>
(導電性粒子の作製)
ポリスチレン粒子の表面上に、厚み0.2μmのニッケルからなる層を設け、更にこのニッケルからなる層の表面上に、厚み0.02μmの金からなる層を設けた。こうして平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を得た。
【0103】
(接着剤組成物(I)の調製)
フェノキシ樹脂(重量平均分子量45000、ユニオンカーバイト社製、商品名「PKHC」)30質量部に、2官能エポキシ樹脂(大日本インキ社製、商品名「HP−4043D」)20質量部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名「SH6040」)1質量部、シリカフィラー(アドマティックス社製、商品名「SE2050、平均粒径0.4〜0.6μm)5質量部及びイミダゾールエポキシアダクト体マイクロカプセル(旭化成社製、商品名「ノバキュア3941HP」)35質量部、さらにトルエン25質量部及び酢酸エチル25質量部を加え、攪拌混合して、接着剤組成物(I)を得た。
【0104】
(接着剤組成物(II)の調製)
接着剤組成物(I)100体積部に上記導電性粒子10体積部を加え、攪拌混合して、接着剤組成物(II)を得た。
【0105】
(接着剤組成物(III)の調製)
フェノキシ樹脂(重量平均分子量45000、ユニオンカーバイト社製、商品名「PKHC」)65質量部に、2官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、商品名「EP828」)35質量部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名「SH6040」)4質量部、充填材として水酸化アルミニウム5質量部、ベンジルスルホニウム塩(三新化学工業社製、商品名「SI−60L」)5質量部、さらにトルエン25質量部及び酢酸エチル25質量部を加え、攪拌混合して、接着剤組成物(III)を得た。
【0106】
(接着剤組成物(IV)の調製)
接着剤組成物(III)100体積部に上記導電性粒子10体積部を加え、攪拌混合して、接着剤組成物(IV)を得た。
【0107】
(接着剤組成物(V)の調製)
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「ZX1356−2」)50質量部に、多官能アクリルレート(東亞合成化学社製、商品名「アロニックスM315」)15質量部、ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名「AT−600」)35質量部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名「SZ6030」)5質量部、ラジカル重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製)3質量部、さらにトルエン25質量部及び酢酸エチル25質量部を加え、撹拌混合して、接着剤組成物(V)を得た。
【0108】
(接着剤組成物(VI)の調製)
接着剤組成物(V)100体積部に上記導電性粒子10体積部を加え、攪拌混合して、接着剤組成物(VI)を得た。
【0109】
(実施例1)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックスA70」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚10μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚19μm、シリコーンで表面処理、帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックスA31」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0110】
(実施例2)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックスA70」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚12μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、ポリエチレン(PE)フィルム(膜厚20μm、タマポリ社製、商品名「NF−13」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0111】
(実施例3)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚38μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナCTR−4」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚20μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0112】
(実施例4)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚38μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナCTR−4」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚23μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0113】
(実施例5)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚40μm、アルキルアルキッドで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナNSC」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚20μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0114】
(実施例6)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材である配向ポリプロピレン(OPP)フィルム(膜厚40μm、東洋紡績社製、商品名「パイレンフィルムP2002」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚23μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0115】
(実施例7)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるポリエチレン(PE)フィルム(膜厚40μm、タマポリ社製、商品名「NF−13」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚23μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0116】
(比較例1)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックスA70」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚17μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚19μm、シリコーンで表面処理、帝人デュポンフィルム社製、商品名「ピューレックスA31」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0117】
(比較例2)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚40μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナCTR−2」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚40μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0118】
(比較例3)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚100μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナCTR−2」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚45μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0119】
(比較例4)
接着剤組成物(I)〜(VI)をそれぞれ、支持基材であるPETフィルム(膜厚100μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナCTR−2」)上に塗布し、70℃で10分間加熱し溶媒等を揮発除去して、膜厚65μmの接着層をPETフィルム上に形成した。さらに、接着層上に保護フィルムとして、PETフィルム(膜厚25μm、シリコーンで表面処理、藤森工業社製、商品名「フィルムバイナBD」)を配置し、ロール温度40℃、線圧1×10N/m、速度1m/分でラミネートし、接着シートをそれぞれ作製した。
【0120】
上記実施例及び比較例で作製した接着シートにおける支持基材の厚みTs、接着層の厚みTa及び保護フィルムの厚みTp、支持基材及び保護フィルムの材質、並びに表面処理の種類を表1に示す。
【0121】
<接着シートの仮圧着>
まず、ITO(酸化インジウム錫)配線パターンを有するガラス基板(コーニング♯7059、外形38mm×28mmの矩形、厚さ0.7mm)を準備した。また、実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した接着シートから予め保護フィルムを剥離除去した。次いで、接着シートを幅2.5mm、長さ20mmに切り出し、接着層がITO配線面と当接するようにして、接着シートをガラス基板上に配置して積層体を得た。次に、金属からなるステージとヒーターを内蔵した金属圧着ヘッド(5mm×30mm)を用いて、上記積層体をその積層方向に加熱及び加圧して仮固定を行った。この際の加熱温度は接着層における温度として80℃又は30℃、加圧時間は2秒間、加圧圧力は1MPaとした。
【0122】
<仮固定後接着シートの評価>
仮固定した接着シートから、支持基材を剥離して接着層の仮固定の状態を以下の基準で評価した。なお、支持基材の剥離は剥離角度90°、剥離速度100mm/分の条件で行った。仮固定の際の加熱温度が80℃である場合の結果を表2に、30℃である場合の結果を表3に示す。
【0123】
[評価1]
A:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれを用いた場合も、支持基材のみを剥離除去できた。
B:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれかを用いた場合で、支持基材を剥離除去する際に接着層も基板から剥離除去された。
【0124】
[評価2]
A:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれを用いた場合も、支持基材のみを除去でき、接着層は、その縁部もガラス基板に密着していた。
B:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれかを用いた場合で、支持基材を剥離した後に接着層の縁部に密着不良が認められた。
なお、評価1において接着層が基板から剥離除去されたため、評価2において接着層縁部の密着不良が確認できなかった場合は「−」で示した。
【0125】
[評価3]
A:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれを用いた場合も、仮固定後の圧着ヘッドに接着剤組成物の付着が認められなかった。
B:接着剤組成物(I)〜(VI)のいずれかを用いた場合で、仮固定後の圧着ヘッドに接着剤組成物の付着が認められた。
【0126】
[総合評価]
評価1及び2の両方がAの場合:合格(A)
評価1及び2の少なくとも一方がBの場合:不合格(B)
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
仮固定の際の加熱温度が80℃である場合、Ta/Tsが0.40以上0.65以下で、かつ、支持基材の厚みが42μm以下である実施例1〜6は、6種類の接着シート全てで、支持基材の剥離除去に伴う接着層の剥離除去は十分抑制されていた。また、接着層縁部の剥がれも認められなかった。さらに、これらの実施例では、圧着ヘッドの汚染もない良好な状態で仮固定できることがわかった。実施例1〜6は、加熱温度を80℃から30℃に変更しても、良好な状態で仮固定できることがわかった。これに対して、Ta/Tsが0.40以上0.65以下の範囲外となる比較例1、2や、支持基材の厚みが42μmよりも厚い比較例3、4では、支持基材の剥離除去に伴う接着層の剥離除去、あるいは、接着層の縁部の剥がれが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、支持基材と支持基材上に設けられた接着剤組成物を含む接着層とを備える接着シートにおいて、従来よりも広範囲な温度条件で接着層を基板上に仮固定することが可能となる接着シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0132】
1…回路部材の接続構造、2…回路部材の接続構造、3…半導体装置、5…接着剤組成物、7…導電性粒子、10…回路接続部材、11…絶縁性物質、15…回路接続部材、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、32…第2の回路電極、40…フィルム状回路接続部材、45…支持基材、50…半導体素子、60…基板、61…回路パターン、70…封止材、80…半導体素子接続部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と、当該支持基材上に設けられた接着剤組成物を含む接着層と、を備える回路接続用接着シートであって、
前記接着剤組成物が、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有し、
前記支持基材の厚みTsと前記接着層の厚みTaとが下記式(1)で表される条件を満たしており、かつ、前記厚みTsが42μm以下である回路接続用接着シート。
0.40≦Ta/Ts≦0.65 (1)
【請求項2】
支持基材と、当該支持基材上に設けられた接着剤組成物を含む接着層と、を備える回路接続用接着シートであって、
前記接着剤組成物が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含有し、
前記支持基材の厚みTsと前記接着層の厚みTaとが下記式(1)で表される条件を満たしており、かつ、前記厚みTsが42μm以下である回路接続用接着シート。
0.40≦Ta/Ts≦0.65 (1)
【請求項3】
前記接着層上に、更に保護フィルムが設けられ、かつ、前記保護フィルムの厚みTpが前記厚みTs以下である、請求項1又は2に記載の回路接続用接着シート。
【請求項4】
前記支持基材及び前記接着層間の剥離強度が、前記保護フィルム及び前記接着層間の剥離強度以上である、請求項3に記載の回路接続用接着シート。
【請求項5】
前記接着剤組成物が、導電性粒子を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続用接着シート。
【請求項6】
前記支持基材が、ポリエチレンテレフタレートフィルム、配向ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム及びポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続用接着シート。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の回路接続用接着シートにおける前記接着層を、回路基板の主面上に回路電極が形成された回路部材に仮固定する工程と、
前記仮固定後、前記支持基材を前記接着層から剥離して前記接着層を前記基板の主面に転写する工程と、
を備える、回路接続材料の基板への固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256391(P2011−256391A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148570(P2011−148570)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2007−533800(P2007−533800)の分割
【原出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】