説明

回転体復帰機構

【課題】回転体を備えた回転式電子部品の多機能化を図ることができる回転体復帰機構を提供する。
【解決手段】ケース(固定側部材)30に取り付けた第1,第2ねじりコイルバネ45,50と、ケース30に対して回転自在に設置された回転型物(回転体)60とを備え、回転型物60が中立位置から回転することで、回転型物60に設けた第1当接部64で第1ねじりコイルバネ45の引出部47が押圧されてコイル部46がねじられて、回転型物60に第1ねじりコイルバネによる中立位置への復帰力が生じると共に、その状態からさらに回転型物60が回転することで、回転型物60に設けた第2当接部67で第2ねじりコイルバネ50の引出部52が押圧されてコイル部51がねじられて、回転型物60に第1,第2ねじりコイルバネ45,50による中立位置への復帰力が合わせて生じるように構成した回転体復帰機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品などの回転体を備えた電子部品において回転体を中立位置へ復帰させるのに用いて好適な回転体復帰機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転体の回転に伴い電気的出力が変化するように構成した回転式電子部品などには、回転体に取り付けた回転つまみを回転させて手を離すと元の中立位置に自動的に復帰する回転体復帰機構を備えたものがある。この回転体復帰機構は、固定側部材に取り付けたねじりコイルバネと、固定側部材に対して回転自在に取り付けた回転体と、該回転体に取り付けた回転つまみを備えていると共に、回転体に、ねじりコイルバネのコイル部から引き出された引出部に当接する当接部を設けて構成されている。そしてこの回転体復帰機構では、回転つまみの回転によって回転体がその中立位置から回転する際に、回転体の当接部でねじりコイルバネの引出部が押圧されてコイル部がねじられることで、回転体にねじりコイルバネの弾発力による中立位置への復帰力(回転復帰力)が生じるようになっている。
【特許文献1】特開2003−197407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年の電子機器の機能の多様化・高度化に対応するために、上記のような回転体復帰機構においても、回転体の回転角度に応じて該回転体に生じる回転力を段階的に変化させるように構成することで、回転体を備えた電子部品の多機能化を図ることが求められている。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転体の回転角度に応じて該回転体に生じる回転力を段階的に変化させることができ、回転式電子部品などの回転体を備えた電子部品の多機能化を図ることができる回転体復帰機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本願の請求項1に記載の発明は、固定側部材と、前記固定側部材に取り付けられ、線材をコイル状に巻き回したコイル部と該コイル部の端部から引き出した引出部とを有してなる第1,第2ねじりコイルバネと、前記固定側部材に対して回転自在に設置されていると共に、中立位置にある状態で前記第1ねじりコイルバネの引出部に当接する第1当接部と、前記中立位置から所定角度回転した状態で前記第2ねじりコイルバネの引出部に当接する第2当接部とを具備してなる回転体と、を備え、前記回転体が前記中立位置から回転することで、前記第1当接部で第1ねじりコイルバネの引出部が押圧されてそのコイル部がねじられて、前記回転体に前記第1ねじりコイルバネの弾発力による中立位置への復帰力が生じると共に、その状態からさらに前記回転体が回転することで、前記第2当接部で第2ねじりコイルバネの引出部が押圧されてそのコイル部がねじられて、前記回転体に第1ねじりコイルバネと第2ねじりコイルバネの弾発力による中立位置への復帰力が合わせて生じるように構成したことを特徴とする回転体復帰機構にある。
【0006】
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転体復帰機構において、前記第1ねじりコイルバネは、そのコイル部が前記回転体の回転中心部に配置され、該コイル部から一対の引出部が前記コイル部の半径方向の外方に突出して配置されていると共に、前記第1当接部は一対であって、前記回転体が中立位置にある状態で前記第1ねじりコイルバネの一対の引出部にそれぞれ当接する位置に配置されており、前記第2ねじりコイルバネは、そのコイル部が前記回転体の外方に配置され、該コイル部から一対の引出部が前記回転体に向かって突出して配置されていると共に、前記第2当接部は、前記第2ねじりコイルバネの一対の引出部の間に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転体復帰機構において、前記第2ねじりコイルバネのコイル部は一対であって、該一対のコイル部の各々から前記各引出部が突出していることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転体復帰機構において、前記回転体に、回転つまみと、回路基板上に形成された摺接パターンに摺接する摺動子とが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の請求項1に記載の発明によれば、回転体が回転する際に生じる回転力を、回転体の回転角度に応じて段階的に変化させることができるので、回転式電子部品など回転体を備えた電子部品に設けることで、該電子部品に従来よりも多くの機能を持たせることが可能となり、電子部品の多機能化を図ることができる回転体復帰機構となる。
【0010】
本願の請求項2に記載の発明によれば、第2ねじりコイルバネのコイル部を回転型物の外方に設置したことで、第2ねじりコイルバネのコイル部を第1コイルバネのコイル部に重畳させて設置する場合と比較して、回転体復帰機構の厚みの薄型化を図ることができる。
【0011】
本願の請求項3に記載の発明によれば、第2ねじりコイルバネを一対のコイル部を備えた構成としたことで、第2ねじりコイルバネの一対の引出部を、中立位置にある第2当接部から所定距離離間する位置に容易に配置できるようになる。
【0012】
本願の請求項4に記載の発明によれば、回転つまみの回転操作によって回転体に取り付けた摺動子が摺接パターンを摺接する際に、回転体に生じる回転力を該回転体の回転角度に応じて段階的に変化させることが可能な回転式電子部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる回転体復帰機構を備えた押釦スイッチ付き回転式電子部品(以下、「回転式電子部品」という)1の分解斜視図である。同図に示すように、この回転式電子部品1は、回転つまみ10と、押釦つまみ20と、固定側部材(以下「ケース」という)30と、第1ねじりコイルバネ45と、第2ねじりコイルバネ50と、押え部材55と、回転体(以下、「回転型物」という)60と、摺動子70と、フレキシブル回路基板80と、取付部材90とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0014】
回転つまみ10は合成樹脂製の成型品であり、略円形のリング状に形成された本体部11を備え、該本体部11の中央が円形の開口部12になっている。開口部12は、その内部に下記する押釦つまみ20の操作部21を設置できるように、操作部21の外径寸法よりも若干大きな内径寸法であって、且つ、操作部21の外周側面に形成したつば部23が上方に抜け出ないように、つば部23の外径寸法よりも若干小さな内径寸法に形成されている。一方、本体部11の下面外周には、下方に突出する筒状の突出部13が形成され、該突出部13の外側面の一部には、指などで回転操作する突起状の操作部14が形成されている。また、本体部11の下面の突出部13と開口部12の間の複数個所(図では3箇所)の位置には、この回転つまみ10を回転型物60に連結固定する小突起状の連結部15が設けられている。
【0015】
押釦つまみ20は合成樹脂製の成型品であり、円形の操作部21と、該操作部21の下面中央から下方向に延伸する押圧部22とを具備し、操作部21の上面は指などで押圧操作する操作面21aになっていて、操作部21の外周側面には、外方に突出するつば部23が形成されている。押圧部22は、その断面形状が略T字形状に形成された軸状の部分からなる。
【0016】
図2は、ケース30をその下面側から見た斜視図であり、ケース30とその下面に取り付けた第1,第2ねじりコイルバネ45,50と押え部材55とを示す図である。同図及び図1に示すように、ケース30は、略長方形の平板状に形成された本体部31と該本体部31の一端に設けた略円形のつまみ設置部32とを一体に備えた形状の合成樹脂製の成型品である。なお、図1及び図2では、ケース30の本体部31はその一部のみを図示している。このケース30の下面外周には、下方に突出する縁部33が形成されており、該縁部33の下端部の複数個所(図では3箇所)には、下記する取付部材90を固定する小突起状の固定部34が設けられている。また、つまみ設置部32は、回転つまみ10や押釦つまみ20を設置する箇所で、図1に示すように、その上部が円形の突起状に形成されていると共に、図2に示すように、その下部に円形の凹部35が形成されている。そして、上面の中央には円柱状の軸部36が突設されており、この軸部36内には押釦つまみ20の押圧部22を挿通させる略T字型の貫通穴からなる押圧部挿通部37が設けられている。また、このつまみ設置部32における軸部36の外方の同一円周上には、複数個(図では3個)の貫通する連結部挿通部38が設けられている。
【0017】
一方、図2に示すように、つまみ設置部32の下面の凹部35内の中央にも軸部36が突出している。この軸部36は、第1ねじりコイルバネ45の下記するコイル部46を取り付ける部分で、コイル部46内に挿通可能な略円柱状の突起からなり、その内部には押圧部挿通部37が配置されている。また、軸部36における本体部31と反対側を向く側面のつまみ設置部32の下面から離間した位置には、外方に突出する小突起状のコイル部係止部40が設けられている。一方、つまみ設置部32の下面における軸部36と連結部挿通部38の間には、一対の突起状の引出部係止部41,41が形成されている。両引出部係止部41,41は、軸部36の中心に対するコイル部係止部40を設けた側と反対側(本体部31側)に配置されていると共に、その位置で、軸部36の中心を通りケース30の長手方向に向かう直線に対する両側に線対称に配置されていて、両者は、軸部36の側面から所定距離離間した位置に設置した押え部41a、41aと、該押え部41a,41aの端部から突出する当接部41b,41bとを一体に備えて構成されている。両押え部41aは、軸部36の側面に沿う略円弧形状の突起として形成されていて、その軸部36側を向く側面が軸部36に取り付けた第1ねじりコイルバネ45の下記するコイル部46に当接してこれを押えるようになっている。また、両当接部41bは、両押え部41aの対向する一対の端部(本体部31側の端部)から突出して軸部36から離れる方向に延在していると共に、両当接部41bの両内側の側面が、軸部36から離れるにつれて両者の間隔が広がるように略ハ字状に配置されており、これら両側面が第1ねじりコイルバネ45の下記する両引出部47に当接してこれを係止するようになっている。
【0018】
一方、ケース30の本体部31の下面には、第2ねじりコイルバネ50の下記する一対のコイル部51,51を取り付ける一対の取付部42,42が突設されている。両取付部42は同形状で、コイル部51内に挿入される円柱状の基部42aと、該基部42aの下端から突出する小突起状の固定部42bとを一体に備えている。さらに、本体部31の下面の取付部42,42のつまみ設置部32側の側部には、第2ねじりコイルバネ50の下記する一対の引出部52,52に当接してこれを係止する突起状の係止部43が形成されている。この係止部43は、取付部42,42の近傍からつまみ設置部32に向かうにつれて互いの面の間隔が次第に狭くなる略ハ字状に形成された一対の当接面43a,43aを備えている。
【0019】
第1ねじりコイルバネ45は、弾性を有する金属線材で構成された部材で、該線材をコイル状に2ターン弱巻き回してなるコイル部46と、該コイル部46の両端からその半径方向の外側に向けて略ハ字状に引き出された直線状の2本の引出部47,47とを備えて構成されている。
【0020】
第2ねじりコイルバネ50は、弾性を有する金属線材で構成された部材で、該線材をコイル状に2ターン弱巻き回してなる一対のコイル部51,51を所定間隔で配置し、コイル部51,51から引き出された一方の端部同士を直線状に連結していると共に、コイル部51,51から引き出された他方の端部が、各コイル部51の半径方向の外側であって互いに同一の側に向けて引き出された直線状の引出部52,52になっている。引出部52,52は、互いが所定距離離間した状態で、且つ、両コイル部51から離れるにつれて互いの間隔が次第に狭くなる略ハ字状に配置されている。また、押え部材55は、第2ねじりコイルバネ50のコイル部51,51を覆う形状に形成された平板状の部材であって、ケース30の取付部42,42の固定部42b,42bに対応する位置に、該固定部42b,42bを挿通させて取り付ける貫通穴からなる取付固定部56,56が形成されている。
【0021】
回転型物60は、略円形の平板状に形成された合成樹脂製の成型品で、中央にケース30の軸部36を挿通させる円形の開口部61を設けている。またこの開口部61の外周には、該外周の一部を略扇形に切り欠いてなる切欠部62が形成されている。さらにこの切欠部62の半径方向の外側の上面には、該上面を略扇形に窪ませた凹部63が形成されており、凹部63内の円周方向の両側には、一対の小突起状の第1当接部64,64が形成されている。この第1当接部64,64は、第1ねじりコイルバネ45の引出部47,47の両外側に当接してこれを押圧するものである。また、開口部61の外方の回転つまみ10の連結部15に対応する位置には、連結部15を挿通させて取り付ける貫通穴からなる取付固定部65が設けられている。一方、凹部63に対する半径方向の外側の外周側面には、外方に向かって突出する舌片状の突出部66が形成されている。この突出部66の上面には、突起状の第2当接部67が形成されており、下面には、摺動子70を固定する小突起状の固定部(図示せず)が形成されている。第2当接部67は、第2ねじりコイルバネ50の引出部52,52の両内側に当接してこれを押圧するものである。
【0022】
摺動子70は、導電性を有する弾性金属板によって構成され、平板状の基部71の一端から二本の摺動冊子72を突出し、これらを基部71の下面側に折り曲げて、その先端に下方に向かって凸となるように湾曲させた摺接接点73を形成している。また基部71には、貫通穴からなる取付固定部74が形成されている。
【0023】
フレキシブル回路基板80は、ケース30の縁部33の外形と略一致する外形を備えた可撓性を有する合成樹脂フイルム製の薄板部材で、ケース30の固定部34に対応する位置には、固定部34を挿通する貫通穴からなる取付固定部81が設けられている。また、このフレキシブル回路基板80の上面には、押釦つまみ20の押圧部22で押圧されるスイッチ82と、摺動子70が摺接する摺接パターン85とが形成されている。スイッチ82は、フレキシブル回路基板80上に導電ペーストを印刷形成してなるスイッチパターン(図示せず)と、該スイッチパターン上に取り付けられた弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板83とを備えて構成されており、摺接パターン85は、フレキシブル回路基板80上に導電ペーストを印刷形成してなる一本の円弧状のコモンパターン86と、該コモンパターン86の内側に同一円周上で複数に分割配置された接点パターン87a,87bとで構成されている。接点パターン87aは、円周上の内側位置に配置された一対の接点パターンからなり、接点パターン87bは、該一対の接点パターン87aの両外側位置に配置された一対の接点パターンからなる。
【0024】
取付部材90は、ケース30の縁部33の外形と略同一の外形を有する金属製あるいは合成樹脂製の硬質平板からなり、ケース30の固定部34に対応する位置には、固定部34を挿入して取り付ける貫通穴からなる取付固定部91を設けて構成されている。
【0025】
次に、この回転式電子部品1を組み立てる手順について説明する。まず、ケース30の下面に第1ねじりコイルバネ45と第2ねじりコイルバネ50を取り付ける。ここで、第1ねじりコイルバネ45を取り付けるには、ケース30の軸部36を第1ねじりコイルバネ45のコイル部46内に挿入して、コイル部46をつまみ設置部32の下面とコイル部係止部40の間に設置すると共に、引出部47,47の外側をそれぞれ引出部係止部41,41の当接部41b,41bの内側に当接させて係止する。また、第2ねじりコイルバネ50を取り付けるには、ケース30の取付部42,42を第2ねじりコイルバネ50のコイル部51,51内に挿入すると共に、引出部52,52の内側をそれぞれ係止部43の当接面43a,43aに当接させて係止する。また、この第2ねじりコイルバネ50の下面側に押え部材55を配置して、両コイル部51,51の下側に突出する固定部42b,42bを取付固定部56,56に挿入し、押え部材55の下面側に突出する固定部42b,42bの先端を熱カシメして固定することで、第2ねじりコイルバネ50をその下面側から押え部材55で押えて取り付ける。
【0026】
続いて、回転型物60に摺動子70を取り付ける。それには、回転型物60の突出部66の下面の固定部を摺動子70の取付固定部74に挿入して摺動子70の基部71の下面側に突出する固定部の先端を熱カシメする。そして、回転型物60をケース30のつまみ設置部32の凹部35内に配置する。その際、回転型物60の開口部61内にケース30の軸部36が配置され、切欠部62内に引出部係止部41,41が配置され、開口部61と切欠部62の内部に第1ねじりコイルバネ45が設置される。また、第1ねじりコイルバネ45の引出部47,47が回転型物60の第1当接部64,64の内側に配置されて、引出部47,47の両外側が第1当接部64,64の両内側に当接すると共に、凹部35の外方に配置される回転型物60の第2当接部67が、第2ねじりコイルバネ50の引出部52,52の間に配置される。
【0027】
一方で、回転つまみ10の開口部12内にその下側から押釦つまみ20の操作部21を挿入して配置し、これら回転つまみ10と押釦つまみ20をケース30のつまみ設置部32の上側に設置する。その際、押釦つまみ20の押圧部22をケース30の押圧部挿通部37に挿通させて該押圧部22の先端をつまみ設置部32の下側に突出させると共に、回転つまみ10の連結部15をケース30の連結部挿通部38に挿通して、連結部15の先端をつまみ設置部32の下側に突出させる。そしてこの突出した連結部15の先端を回転型物60の取付固定部65に挿入し、回転型物60の下面側に突出する連結部15の先端を熱カシメして固定すれば、回転つまみ10と回転型物60がケース30の上下で一体に回転自在な状態で固定される。
【0028】
続いて、取付部材90上にフレキシブル回路基板80を載置したものを、ケース30の下側に取り付ける。その際、フレキシブル回路基板80の取付固定部81と、取付部材90の取付固定部91とにケース30の固定部34を挿入し、取付部材90の下面側に突出する固定部34の先端を熱カシメして固定する。これにより、摺動子70の摺接接点73がフレキシブル回路基板80の摺接パターン85上に当接し、押釦つまみ20の押圧部22の先端がスイッチ82の反転板83上に当接する。以上により、回転式電子部品1の組み立てが完了する。
【0029】
図3は、組み立てた回転式電子部品1をその下面側から見た平面図である。なお同図では、フレキシブル回路基板80及び取付部材90と押え部材55の図示は省略している。また同図では、回転型物60がその中立位置にある状態を示している。ここでいう中立位置とは、回転つまみ10から手を離した状態で、回転つまみ10と回転型物60がいずれの方向にも回転せずに静止した状態を保つ位置をいう。同図に示すように、この回転式電子部品1は、ケース30と、該ケース30に取り付けられた第1,第2ねじりコイルバネ45,50と、ケース30に対して回転自在に設置された回転型物(回転体)60とで構成された回転体復帰機構を備えている。そして、第1ねじりコイルバネ45は、そのコイル部46が回転型物60の回転中心部に配置され、コイル部46の両端から一対の引出部47,47が該コイル部46の半径方向の外方に突出して配置されている。そして、回転型物60には、該回転型物60が中立位置にある状態で第1ねじりコイルバネ45の引出部47,47の外側に当接する一対の第1当接部64,64が設けられ、ケース30には、第1ねじりコイルバネ45の引出部47,47の外側に当接する一対の引出部係止部41,41が設けられている。また、第2ねじりコイルバネ50は、回転型物60の外方(半径方向の外方)に配置された一対のコイル部51,51と、該一対のコイル部51,51の各々から回転型物60に向かって突出して配置された一対の引出部52,52を備えている。そして、回転型物60には、該回転型物60が中立位置にある状態で、第2ねじりコイルバネ50の一対の引出部52,52の間であってこれら引出部52,52から所定距離離間する位置に配置された第2当接部67が設けられている。
【0030】
ここで、この回転式電子部品1における押釦スイッチとしての機能を説明すると、図1に示す押釦つまみ20の操作面21aを押圧操作することで、押圧部22でスイッチ82の反転板83が押圧されて反転し、その下のスイッチパターンが導通してスイッチ82がオンする。一方、操作面21aへの押圧を解除すれば、反転板83の復帰力により押釦つまみ20の押圧部22が持ち上げられて、スイッチ82がオフする。
【0031】
次に、この回転式電子部品1において、回転つまみ10を回転操作する際の回転型物60と第1,第2ねじりコイルバネ45,50の動作について説明する。図4は、この動作を説明するための図である。まず、同図(a)に示すように、回転つまみ10と回転型物60が中立位置にあるときは、ケース30の引出部係止部41,41と回転型物60の第1当接部64,64が、第1ねじりコイルバネ45の引出部47,47の両外側に当接していると共に、第2当接部67が第2ねじりコイルバネ50の引出部52,52から離間してそれらの中間位置に配置されている。その状態から回転つまみ10の操作部14を操作して回転つまみ10を一方に回転させると、一方の第1当接部64によって該第1当接部64に当接している第1ねじりコイルバネ45の一方の引出部47が押圧されて内側へ移動する。これにより、引出部47,47の間隔が狭められることでコイル部46がねじられ、回転型物60に第1ねじりコイルバネ45の弾発力による中立位置への復帰力が生じる。以下、この状態を第1段階という。この第1段階で回転つまみ10への回転力を解除すれば、回転つまみ10は元の中立位置に自動的に復帰する。
【0032】
一方、上記の第1段階で、第1ねじりコイルバネ45の弾発力に抗して回転つまみ10を同方向にさらに回転させると、同図(b)に示すように、回転型物60が中立位置から所定角度回転した位置で、第2当接部67が第2ねじりコイルバネ50の一方の引出部52の内側に当接する。そこからさらに回転つまみ10を同方向に回転させると、同図(c)に示すように、第2当接部67で引出部52が押圧されて外側へ移動することで、コイル部51がねじられて、回転型物60に第2ねじりコイルバネ50の弾発力による中立位置への復帰力が生じる。以下、この状態を第2段階という。この第2段階では、回転型物60に、第1ねじりコイルバネ45と第2ねじりコイルバネ50の弾発力による中立位置への復帰力が合わせて生じることになる。なおこの第2段階でも、回転つまみ10への回転力を解除すれば、回転つまみ10は元の中立位置に自動的に復帰する。また、第2当接部67が第2ねじりコイルバネ50の引出部52に当接する位置で、回転つまみ10を回転させるのに必要な回転力が急激に大きくなるので、第1段階の終点位置で回転つまみ10と回転型物60の回転が一度停止し、そこから回転つまみ10をさらに強い力で回転させることで第2段階に移行できるようになる。
【0033】
ここで、上記の回転つまみ10及び回転型物60の回転動作と摺動子70の摺接パターン85への摺接動作との関係を説明すると、回転型物60が中立位置にあるときは、図1に示す摺動子70の摺接接点73が、内側の接点パターン87a,87aの間にあり、摺接パターン85が導通していない。そして、回転型物60が第1段階にある位置では、摺接接点73が内側の接点パターン87aに当接して摺接パターン85が導通し、回転型物60が第2段階にある位置では、摺接接点73が外側の接点パターン87bに当接して摺接パターン85が導通する。したがって、回転型物60が中立位置から第1段階に移行するときと、第1段階から第2段階に移行するときに、摺動子70と摺接パターン85との当接の状態が変化するようになっている。
【0034】
上記のように、この回転式電子部品1では、回転つまみ10と回転型物60が回転する際に、その回転途中の所定位置で回転型物60にかかる中立位置への復帰力が増加し、回転つまみ10を回転させるのに必要な回転力が大きくなる。また、回転つまみ10の回転による回転力の変化に対応して、摺動子70と摺接パターン85との当接状態が変化する。したがって、摺接パターン85の電気的出力の変化に伴って回転つまみ10の操作感覚が変化するようになる。これにより、回転式電子部品1に、回転つまみ10の回転により段階的に操作感覚と電気的出力が切り換わる多段スイッチ(本実施形態では2段スイッチ)としての機能を持たせることができるので、回転式電子部品1の多機能化を図ることができる。
【0035】
また、この回転式電子部品1が備える回転体復帰機構によれば、第2ねじりコイルバネ50を、一対のコイル部51,51を備えた構成としたことで、第2ねじりコイルバネ50の小型化を図っても、一対の引出部52,52を、中立位置にある第2当接部67から所定距離離間する位置に容易に配置できるようになる。また、第2ねじりコイルバネ50の一対のコイル部51,51を回転型物60の外方に設置したことで、第2ねじりコイルバネ50に一個のコイル部のみを設けて該コイル部を第1ねじりコイルバネ45のコイル部46に重畳させて設置する場合と比較して、回転体復帰機構の厚みの薄型化を図ることができる。したがって、回転型物60に生じる中立位置への復帰力が回転型物60の回転角度に応じて段階的に変化する機構を、簡単な構成でコンパクトに実現することができる。
【0036】
また、本実施形態の回転式電子部品1では、回転型物60の中央に押釦つまみ20を設置し、該押釦つまみ20に対向する位置にスイッチ82を配置しているので、回転型物60の中央に対向する位置には、摺接パターン85を配置するスペースを確保できない。そのため、摺接パターン85を回転型物60の外側に対向する位置に配置している。その上で、回転型物60の外周側面から外側に突出する突出部66を設け、該突出部66の下面に摺動子70を取り付けている。この回転式電子部品1では、上記のような理由で回転型物60の外側に突出する突出部66を設けているが、この突出部66を利用して、その上面に第2当接部67を設けている。これにより、第2当接部67が回転型物60の外側位置に配置されるので、該第2当接部67が、回転型物60の外方から回転型物60に向かって突出して配置された第2ねじりコイルバネ50の一対の引出部52,52に容易に当接してこれを押圧できる構造になっている。
【0037】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、本発明の回転体復帰機構を回転式電子部品に適用した例を示したが、本発明の適用はこれに限られず、ねじりコイルバネを用いて回転体を中立位置に自動的に復帰させる回転体復帰機構を有する機器であれば、どのような機器にも適用することができる。また、回転体復帰機構を適用する回転式電子部品としては、上記実施形態のような押釦スイッチ付き回転式電子部品以外にも、押釦スイッチの機構を省略して回転式電子部品の機構のみを備えた回転式電子部品であってもよい。
【0038】
また上実施形態の回転体復帰機構が備える第1,第2ねじりコイルバネ45,50の構成は一例であり、本発明の回転体復帰機構が備える第1,第2ねじりコイルバネは、コイル部と該コイル部から引き出された引出部とを備えたものあれば、コイル部や引出部の具体的な個数や形状等は、上記実施形態に示すものには限定されない。特に、上記実施形態の回転体復帰機構が備える第2ねじりコイルバネ50は、一対のコイル部51,51を備えた構成であるが、本発明の回転体復帰機構が備える第2ねじりコイルバネとしては、これ以外にも、コイル部を一個だけ備えた構成であってもよい。また、第2ねじりコイルバネに一対のコイル部を設ける場合には、本実施形態のように各コイル部51の一方の端部同士を連結する以外にも、各コイル部から引き出される端部同士を連結せずに、各コイル部を別個に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回転体復帰機構を備えた押釦スイッチ付き回転式電子部品の分解斜視図である。
【図2】ケースをその下面側から見た斜視図であり、ケースとその下面に取り付けた第1,第2ねじりコイルバネと押え部材とを示す図である。
【図3】組み立てた押釦スイッチ付き回転式電子部品をその下面側から見た平面図である。
【図4】回転つまみを回転操作する際の回転型物と第1,第2ねじりコイルバネの動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 押釦スイッチ付き回転式電子部品
10 回転つまみ
20 押釦つまみ
30 ケース(固定側部材)
31 本体部
32 つまみ設置部
36 軸部
40 コイル部係止部
41 引出部係止部
42 取付部
43 係止部
45 第1ねじりコイルバネ
46 コイル部
47 引出部
50 第2ねじりコイルバネ
51 コイル部
52 引出部
55 押え部材
60 回転型物(回転体)
64 第1当接部
67 第2当接部
70 摺動子
80 フレキシブル回路基板(回路基板)
82 スイッチ
85 摺接パターン
90 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、
前記固定側部材に取り付けられ、線材をコイル状に巻き回したコイル部と該コイル部の端部から引き出した引出部とを有してなる第1,第2ねじりコイルバネと、
前記固定側部材に対して回転自在に設置されていると共に、中立位置にある状態で前記第1ねじりコイルバネの引出部に当接する第1当接部と、前記中立位置から所定角度回転した状態で前記第2ねじりコイルバネの引出部に当接する第2当接部とを具備してなる回転体と、を備え、
前記回転体が前記中立位置から回転することで、前記第1当接部で第1ねじりコイルバネの引出部が押圧されてそのコイル部がねじられて、前記回転体に前記第1ねじりコイルバネの弾発力による中立位置への復帰力が生じると共に、
その状態からさらに前記回転体が回転することで、前記第2当接部で第2ねじりコイルバネの引出部が押圧されてそのコイル部がねじられて、前記回転体に第1ねじりコイルバネと第2ねじりコイルバネの弾発力による中立位置への復帰力が合わせて生じるように構成したことを特徴とする回転体復帰機構。
【請求項2】
請求項1に記載の回転体復帰機構において、
前記第1ねじりコイルバネは、そのコイル部が前記回転体の回転中心部に配置され、該コイル部から一対の引出部が前記コイル部の半径方向の外方に突出して配置されていると共に、前記第1当接部は一対であって、前記回転体が中立位置にある状態で前記第1ねじりコイルバネの一対の引出部にそれぞれ当接する位置に配置されており、
前記第2ねじりコイルバネは、そのコイル部が前記回転体の外方に配置され、該コイル部から一対の引出部が前記回転体に向かって突出して配置されていると共に、前記第2当接部は、前記第2ねじりコイルバネの一対の引出部の間に配置されていることを特徴とする回転体復帰機構。
【請求項3】
請求項2に記載の回転体復帰機構において、
前記第2ねじりコイルバネのコイル部は一対であって、該一対のコイル部の各々から前記各引出部が突出していることを特徴とする回転体復帰機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転体復帰機構において、
前記回転体に、回転つまみと、回路基板上に形成された摺接パターンに摺接する摺動子とが取り付けられていることを特徴とする回転体復帰機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−152966(P2008−152966A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337238(P2006−337238)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】