回転式研磨ロールの製造方法
【課題】 内芯管と外管とからなり、外管にブラシあるいはバフが装着された回転式研磨ロールにおいて、長尺化・重量化に対応でき、内芯管と外管との強固な固定を図りうる固定方法を提供すること。
【解決手段】 内芯管はフェノール樹脂製よりなり、外管は他の合成樹脂製よりなり、内芯管の外径と外管の内径とは嵌合い公差をもって押込み嵌合され、内芯管の外表面に溝が均等に形成され、内芯管と外管との間に接着剤が充填されてなる。
【解決手段】 内芯管はフェノール樹脂製よりなり、外管は他の合成樹脂製よりなり、内芯管の外径と外管の内径とは嵌合い公差をもって押込み嵌合され、内芯管の外表面に溝が均等に形成され、内芯管と外管との間に接着剤が充填されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒体部の外周にブラシもしくは不織布製研磨材(バフ)が装着され、回転軸に連動して回転動され、該回転動をもってプリント基板等のワークに対する研磨等の作業をなす回転式研磨ロールの製造方法に関し、特には、回転軸への取付け体となる内芯(ナイシン)管とブラシ・バフの取付け体となる外管との取付け方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転式研磨ロールにおいては一般的に、図13に示すように、回転軸への取付け体となる内芯管aとブラシ・バフの取付け体となる外管bとから円筒体部が構成され、同図に示すように端部ホイールフランジc及び中間ホイールフランジdを介して回転軸eに連動して回転駆動される。
しかして、現在普及している二つ割形式にあっては、内芯管と外管とを接着剤をもって固着されれば充分である。一方、円筒体部が一体形式であるときには、内芯管と外管との強嵌合方式が採られるものである(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、内芯管と外管とが緩嵌挿状態にあるとき、接着剤が使用されるが、内芯管と外管との間隙に充填される接着剤が均一に充填され難く、固着力に対する信頼性が低い。
なお、文献1、2においては、それらの材料の特性上、外管の収縮ばめ、あるいは内芯管の変形による嵌合となる。
更に近年、この種の回転式研磨ロールにおいて、長尺化、重量化が図られつつあるが、接着剤のみによる固着、あるいは強嵌合方式による固着によっては長尺化・重量化に対応するのに必ずしも十全であるとは言えない。すなわち、長尺化・重量化に対して、接着剤による固着では固着力が不足し、また、強嵌合方式を採る場合にはその嵌挿作業に困難を来すものである。
更にまた、本回転式研磨ロールを取扱い(交換、搬送)中、床面への衝突などの原因で、内芯管に衝撃が加わった際、外管と内芯管とが離脱するとの報告もなされている。
一方、ブラシ束を外管に穿孔したブラシ植設孔に打ち込んでなすいわゆる植込み式研磨ブラシにあっては、従来より密実(密集)形式が一般的であり、その研磨性能に付いても満足のいくものではなく、更なる研磨性能の向上が望まれている。
【特許文献1】実公平8−5017号公報
【特許文献2】特開平10−138153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、この種の回転式研磨ロールにおいて、内芯管と外管との一層強固な固定を図り、その長尺化・重量化に対応できる固定方法を提供することを目的とする。
本発明はこのため、内芯管と外管との硬度差に着目し、ひいては内芯管と外管との変形特性、外管の弾性に基づく外径方向への変形を利用し、両管を所定のはめあい精度に保持し、外管への内芯管の押込み嵌合をなすことによりその目的が達成されるとの知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の回転式研磨ロールの製造方法は具体的には以下の技術的手段を採る。
本発明の回転式研磨ロールの製造方法は、請求項1に記載のとおり、直接もしくはホイールフランジを介して回転軸に取り付けられる硬質円筒体をなす内芯管と、該内芯管に外嵌固定される合成樹脂製の円筒体をなす外管とからなり、前記外管に所定間隔を保ってブラシ植設孔が穿設されるとともに該ブラシ植設孔にブラシ束が打込みをもって列状に植設された研磨部が配され、前記回転軸からの周回転駆動を受けて研磨対象を研磨する研磨ロールの製造方法であって、
前記外管に形成される研磨部のブラシ列を互いに所定間隔を保って配設し、
前記内芯管の外表面には一定幅を保持する凹溝を実質的に均等に形成し、
前記内芯管の外径と前記外管の内径とは締りばめによる緩いはめあい公差を保持し、
前記内芯管と前記外管との間に接着剤を充填するとともに、該内芯管と該外管とを押込み嵌合してなる、
ことを特徴とする。
上記構成において、「緩いはめあい公差」とは、外管の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得るに足る寸法関係をいう。換言すれば、ブラシ植設孔の深さの決定要因を与える公差をいう。
更に、該「緩いはめあい公差」は、以下の実施形態で更に詳しく示される。
また、内芯管の外表面の凹溝の比率に付いては、以下の実施形態で具体的に示される。
上記構成において、
1)ブラシ列は直線状又は螺旋状に配されてなること、
2)内芯管はフェノール樹脂よりなり、外管はポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂のいずれかの一つより選ばれること、
は適宜採択される選択的事項である。
【0005】
(作用)
外管の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得、かつ、接着剤により内芯管と外管とは所期の固定力を得る。ブラシ植設孔は外管の内径部付近まで穿孔しても内部応力に撹乱を与えない。
このようにして、本研磨ロールにおいて、内芯管と外管とは所定のはめあい精度による押込みを受け、内芯管と外管との硬度差及び両管の変形特性、すなわち外管が内芯管に比べて変形され易い特性により、外管の弾性に基づく外径方向への変形を受けて剛性を保持する内芯管への締付けにより強固な固定を得る。また、接着剤は内芯管の外表面の凹溝に有効に保持され、所定の面積比を保ち、その接着作用により一層の固着力が得られる。
また、はめあい径が等長であるとき、内芯管と外管との嵌合力は弱くなるが、接着作用があるので、十分な固着力が得られる。
本研磨ロールの周面回転により、外管に植設されたブラシ列は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。
【発明の効果】
【0006】
本研磨ロールの製造方法によれば、ブラシ植設孔は可及的に深く穿孔でき、外管の薄肉化、あるいはブラシ束の毛長の長大化に寄与する。
更に、本製造方法によれば、内芯管と外管とは所定の硬度を採り、かつ内芯管と外管とは所定のはめあい精度を保つので、押込み力が明確化され(過大な力が不要)、機械力の導入が容易となり、迅速かつ確実に生産が行われる。
また、内芯管の凹部に充填された接着剤は内芯管と外管との押込み操作によっても影響を受けず、固着作用が同時的に行われ、生産効率の向上が図られる。
また、本研磨ロールによれば、前記したとおり内芯管と外管とは強固な固定(一体性)が得られるので、取扱い中、搬送中における両管の剥離が飛躍的に低減される。更に、内芯管と外管とのがたつきがなく、本研磨ロールの耐久性が向上し、製品自体の寿命が長期化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の回転式研磨ロールの製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図12は本発明の回転式研磨ロール(以下単に「研磨ロール」という)の製造方法の一実施形態を示し、ブラシ態様への適用例(円筒研磨ブラシ)を示す。すなわち、図1はその研磨ロールRの全体の縦断面構成を示し、図2〜図12は各部の構成を示す。
【0008】
図1・図2に示されるように、この研磨ロールRは、薄肉硬質の円筒体をなす内芯管1と、該内芯管1に外嵌され、かつ接着固定される厚肉合成樹脂製の円筒体をなす外管2と、該外管2に植設された複数のブラシ列3よりなる研磨部4と、を含み、更には、内芯管1と外管2との固定を補助する補助固定部5を含む。
【0009】
以下、各部の細部の構成に付いて説明する。
内芯管1(図1〜図6参照)
内芯管1は、薄肉硬質の円筒体をなす。
その素材として、フェノール樹脂管が好適である。該フェノール樹脂管はフェノール樹脂に硬化剤・充填剤が混入されて管状に成形されたもので、強靭・硬質であり、内外径の公差が極めて小さく、内外周面は滑らかである。このものは、所定精度の一定内径を保持し、剛性とともにわずかな弾性を有し、後述するように回転駆動のフランジホイールとの取付けに際し、馴染みがよい。因みに、フェノール樹脂(充填材入り)は、比重が1.30〜1.40、圧縮強度が200〜400kg/平方cmの値を採る硬質素材である。
本実施形態では、該内芯管3は熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂を使用したが、他の熱硬化性合成樹脂材、更には場合によっては熱可塑性合成樹脂材の使用を妨げるものではなく、同等の機能(所定精度の一定内外径の保持、所定の剛性)を満たすものであれば、金属等の他の適宜の素材が適用される。
【0010】
(凹溝10)
内芯管1の表面には一定深さ及び一定幅を持つ凹溝10が所定の態様(割合)で刻設される。本実施形態では、網目形態を示す。すなわち、図4はその展開図であって、軸方向凹溝10a、円周方向凹溝10bとが碁盤目(方形)に刻設される。
詳述すれば(図5参照)、凹溝10は深さa(例えば1.0mm)、幅b(例えば2.0mm)を採る。凹溝10は連続するものであるが、他の条件(面積比、均等)を満たせば非連続であってもよい。
凹溝10の表面積に占める割合は、5〜50%とされ、本実施形態では30〜40%、あるいは30%前後が試験的には良好な値を示す。なお、これらの値(a、b、及び面積割合)は目安であって、本発明を限定するものではない。
【0011】
凹溝は螺旋状等の他の適宜の態様を採りうる。
図6は図4と同様の展開図であり、12は螺旋状の凹溝を示す(一重螺旋態様)。13は螺旋状凹溝12に交差する別の螺旋状凹溝である(二重螺旋態様)。
【0012】
外管2(図1〜図3、図8〜図10参照)
外管2は、所定厚さの合成樹脂製の円筒体をなし、内芯管1に押込みをもって外嵌固定され、ブラシの埋め込み用基台を提供する。
その素材として、本実施形態ではポリプロピレン(PP)が好適なものとして採用される。該PPは熱可塑性樹脂であって、成形性(真円度)が良好であり、所要の強度を発現する。その他の素材として、同じく熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂が適用される。
これらのPP、PE、ABSは、成形性がよく、円筒体として真円度が高く、内芯管1とのはめあい精度を所要の精度に確保することができ、また、後記するブラシ植設孔の穿孔作業性が良好である。
なお、上記の外管2の要請(強度、成形性など)が満たされるものであれば、その他の合成樹脂材を除外するものではない。
【0013】
嵌合い固定並びに接着固定
内芯管1と外管2とは、次の要領で固定される。
すなわち、内芯管1と外管2とは、所定の真円度で成形されるものであり、かつ内芯管1と外管2とは嵌合い(ハメアイ)となるため、内芯管1の外径と外管2の内径は所定の「はめあい」の寸法公差を保持する。詳しくは、本実施形態においては締りばめ態様を採る。すなわち、内芯管1の外径の最小許容寸法が外管2の内径の最大許容寸法より大きい場合(両者が等しい場合も含む)のはめあいとなる。また、中間ばめ(穴の最小許容寸法より軸の最大許容寸法が大きく(両者が等しいばあいも含む)、しかも穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が小さいばあいのはめあい)を除外するものではない。従って、内芯管1に外管2を所定の力で押し込まれることになるが、外管2は若干の外径方向への膨らみを許容し、この押込みを許容する。嵌挿後において、外管2は内芯管1を締め込むことになり、両者は強固に固着されるものである。
具体的には、内芯管1と外管2との嵌合いは、軸基準(常用はめあいを使用)としてh6に対しJs6〜P7が対応する。
更に、内芯管1と外管2とは、内芯管1の表面の凹溝10に充填された所定の接着剤、すなわちプラスチック用接着剤を介して固着される。凹溝10は、内芯管1の表面の所定の割合を占め、大きな接着力を発揮する。
【0014】
研磨部4(図1〜図3、図7〜図10参照)
研磨部4は、外管2に植設された複数のブラシ列3よりなる、換言すればブラシ列3の集合よりなる。
もっと詳しくは、ブラシ列3はブラシ植設孔15に植設されたブラシ束16の連なりにより構成される。各ブラシ列3は所定間隔を保って外管2の表面を軸方向に並ぶ。
【0015】
(ブラシ植設孔15)(図3参照)
ブラシ植設孔15は、横断形状が円形をなし、外管2に一定深さにわたって穿設されるとともに、各ブラシ植設孔15相互は一定の間隔を保って多数穿設される。
更に、本実施形態では、各ブラシ列3においてブラシ植設孔15は千鳥に配される。
図3はブラシ植設孔15の断面構成を示し、15aはその孔壁、15bは逆円錐形をなす孔底である。孔底15bはその下層の内芯管1とは一定間隔を保っている。このブラシ植設孔15は、先端の刃先が円錐形をなすドリルをもって穿孔されるものであり、従ってその先端の形状に対応して孔底15bは円錐形をなす。このブラシ植設孔15は例えば、径が5mm、深さが10mm、孔底15bの角度が90°の諸元を採る。
【0016】
(ブラシ束16)(図7参照)
ブラシ束16は、各ブラシ植設孔15に植え込まれる。ブラシ束16は、図7に示されるように、所定長のブラシ繊維18が6〜10本を一束として、中央より折り曲げられ、かつ、その折曲げ部に線材よりなる止め金具19が巻き懸けられる。
もっと詳しくは、ブラシ繊維18は所定の径を有する繊維体をなし、それ自体で研磨性を有する。また、該ブラシ繊維18は反発性をもって自然状態で直線状を保持し、中央で拘束力を受けて同一方向に向くが、この拘束力が解除されると直線状に復帰する。その構成の一例として、合成樹脂製線材の表面に砥粒が接着剤を介して付着されてなる。止め金具19は金属線材、通常には鋼線よりなり、所定長さのものを、束ねられたブラシ繊維18の中央すなわち基部に巻き懸け、その両端を下方へ延設させる。ブラシ繊維18は例えば、長さが100mm、径が1.0mm、止め金具19は長さが22mm、径が0.5mmの諸元を採る。個々のブラシ束16は、図3に示されるように、基部において止め金具19が外管2内に食い込むことをもって定着され、その上部は弾力をもって外管2の表面より立ち上がる。
【0017】
(ブラシ列3)(図8〜図10参照)
本実施形態では、ブラシ列3は図8に示すように、軸方向に沿って直線状をなす。しかして、そのブラシ植設孔15の配列は千鳥状ではあるが、図8・図9(a) 図に示されるように、中心線Cを対称軸として互いに被さって接近して配される。また、図9(b) 図に示されるように、中心線Cに接して又は可及的接近して配される態様も採られる。
留意すべきは、ブラシ植設孔15相互の最小間隔(目安として2mm)は確保されるべきである。
また、図10は、ブラシ列3を螺旋状に配した態様を示す。本態様において、軸方向線Zに対して角度αを採る。
【0018】
補助固定部5(図11・図12参照)
補助固定部5は、図11に示すように、小ねじ20を主体とし、内芯管1と外管2との端部の境目に跨って開設されたねじ孔21に螺合されてなる。該補助固定部5は本実施形態では、各両端において2か所に配されるが、その個数に限定されない。
図12は補助固定部5の別の態様を示す。
この態様においては、外管2と内芯管1との端部において、両管1,2を径方向に貫通するねじ孔22が開設され、該ねじ孔22に縦長ボルト23が螺合されるものである。その個数に限定されない。
該補助固定部5により、内芯管1と外管2との固定は一層確実になる。
【0019】
研磨ロールRの製造
叙上の研磨ロールRに付き、本実施形態の製造方法は次の要領でなされる。
(1) 内芯管1と外管2との成形加工
内芯管1及び外管2は合成樹脂材の射出成形あるいは押出し成形をもって円筒状に成形される。内芯管1はベークライト管が好ましい。外管2はその素材をポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ABS樹脂とするので、その成形性が良好で成形精度が高く、内芯管1との所定のはめあい精度を保持する。内芯管1はまた、その表面に凹溝10が凹設加工される。すなわち、螺旋状凹溝に付いては旋盤加工、碁盤目状凹溝に付いてはフライス加工がなされる。
【0020】
(2) 内芯管1の凹溝10への接着剤の塗布
内芯管1の凹溝10に上記した接着剤、すなわちプラスチック用接着剤が充填される。この場合、接着剤は凹溝10より盛り上がり状に充填される。
【0021】
(3) 内心管1の外管2への圧入
内芯管1に外管2を外装し、押し込んで外嵌する。すなわち、内芯管1を固定し、これに外管2を外装し、油圧シリンダなどの機械力をもって押し込んでゆく。このとき、外管2は若干の弾性があるので、弾性変形をもって内芯管1に食込み状に外嵌される。内芯管1と外管2とは所定のはめあい公差に保持されており、押し込み力が明確化され、可及的一定の押込み力が維持される。また、外管2の変形域は外管2の内径側の浅い部分にとどまり、有害な応力を与えない。
同時に、上記(2) での接着剤は凹溝10以外、すなわち内芯管1の表面から排除され、凹溝10内の接着剤は加圧状態となる。
【0022】
(4) ねじ孔の加工、ねじの螺入
接着剤の固結を待ち、しかる後、内芯管1と外管2との端面より両管1,2に跨ってねじ孔21を螺設し、そのねじ孔21に小ねじ20をねじ込む。なお、該工程(4) は省略されうる。
【0023】
(5) 孔開け加工
上記の半製品に付き、該外管2に対しブラシ植設孔15を所定の精度、すなわち鉛直度及び間隔を保って直線状もしくは螺旋状の列状に穿設する。本実施形態において、上記したとおり、各列に付き千鳥状に穿孔されるものであり、各孔15は互いに可及的接近される。この穿設作業にプログラム作動される数値制御(NC)穿孔機が使用され、迅速になされる。
【0024】
(6) 植毛加工
ブラシ植設孔15が穿設された外管2に対し、ブラシ束16の植設がなされる。すなわち、既述のとおり、ブラシ束16は所定長のブラシ繊維18が6〜10本を一束として、中央より折り曲げられ、かつ、その折曲げ部に線材よりなる止め金具19が巻き懸けられる。個々のブラシ束16は、基部において止め金具19が外管2内に食い込むことをもって定着され、その上部は弾力をもって外管2の表面より立ち上がる。この植設作業にプログラム作動されるNC植毛機が使用され、迅速になされる。
【0025】
研磨操作及び設備
叙上の研磨ロールRは、次のように取扱い操作を受け、ワーク(作業対象)に対し研磨作用をなす。
本研磨ロールRは既製の回転駆動装置の回転軸eに装着されて使用される。すなわち、図13に示すように、両端にホイールフランジcが装着され、また中間にもホイールフランジdが装着され、ホイールフランジcに連動する回転駆動装置の駆動によりホイールフランジcを介して本研磨ロールRを回転駆動するものである。
本研磨ロールRの周面回転により、研磨部4のブラシ列3は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。研磨屑、洗浄水の使用がなされるときの水は、ブラシ内に滞留することなく円滑に排出される。
【0026】
(本実施形態の作用)
外管2の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得、かつ、接着剤により内芯管1と外管2とは所期の固定力を得る。ブラシ植設孔15は外管2の内径部付近まで穿孔しても内部応力に撹乱を与えない。
このようにして、本研磨ロールRにおいて、内芯管1と外管2とは所定のはめあい精度による押込みはめあいとされ、内芯管1と外管2との硬度差により、更には内芯管1と外管2との変形特性、すなわち外管2が内芯管1に比べて変形され易い特性により、外管2の弾性に基づく外径方向への変形を受けて内芯管1への締付けにより強固な固定を得る。また接着剤は内芯管1の外表面の凹溝10に有効に保持され、所定の面積比を保ち、その接着作用により一層の固着力が得られる。
また、はめあい径が等長であるとき、内芯管1と外管2との嵌合力は弱くなるが、接着作用があるので、十分な固着力が得られる。
更に、補助固定部5は強嵌合固定された両管に跨ってねじ孔が螺設され、かつねじが螺合されるので、ねじ孔のずれがなく、かつねじの固定作用が有効に加わる。
研磨作用において、本研磨ロールRの周面回転により、研磨部4のブラシ列3は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。研磨屑、洗浄水の使用がなされるときの水は、ブラシ内に滞留することなく円滑に排出される。
【0027】
(本実施形態の効果)
本実施形態の研磨ロールの製造方法によれば、ブラシ植設孔15は可及的に深く穿孔でき、外管2の薄肉化、あるいはブラシ束16の毛長の長大化に寄与する。
このようにして、本実施形態の製造方法によれば、内芯管1と外管2とは所定の硬度を採り、かつ内芯管1と外管2とは所定のはめあい精度を保つので、押込み力が明確化され、所定の力をもって押し込まれ(過大な力が不要)、機械力の導入が容易となり、迅速かつ確実に生産が行われる。
また、内芯管1の凹溝10に充填された接着剤は内芯管1と外管2との押込み操作によっても影響を受けず、固着作用が同時的に行われ、生産効率の向上が図られる。
また、本研磨ロールRによれば、前記したとおり内芯管1と外管2とは強固な固定(一体性)が得られるので、取扱い中、搬送中における両管の剥離が飛躍的に低減される。更に、内芯管1と外管2とのがたつきがなく、本研磨ロールRの耐久性が向上し、製品自体の寿命が長期化する。
更に、補助固定部5により固着力の一層の増大が図られる。
また、本研磨ロールRの研磨部4はブラシ列3よりなり、ブラシ列3の各別はワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。螺旋状配列によれば、直線状配列に比べエッジ作用が緩和される。
【0028】
(別態様1)
叙上の実施形態(図1〜図13に相当)ではブラシ態様を述べたが、外管2の外周面に研磨性の不織布いわゆるバフを固着してなる回転式バフへの適用をなし得る。
この態様において、内芯管1と外管2との固着作用に付いては何ら変るところはない。この態様において、外管2の厚さを薄くすることは設計的事項である。
【0029】
(別態様2)
更に、先の実施形態では内芯管1をベークライト管としたが、アルミ製管に替えてもよい。
本態様のブラシはアルミ管(台)を介してシャフトに装着される。アルミ台はダイカスト成形され、成形精度もよく、アルミ台の表面の凹溝も同時に成形されるか、あるいは後で切削加工される。
ブラシによる研磨部は先のものと変りはない。
アルミに替え、普通鋼、ステンレス鋼を採用することを妨げるものではない。
【0030】
本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の回転式研磨ロールの一実施形態(円筒研磨ブラシ)の全体構成を示す縦断面図(図2の1−1縦断面図)。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】図1の部分詳細断面図(図1の3部分拡大図)。
【図4】内芯管の表面展開図。
【図5】図4の5−5線拡大断面図。
【図6】内芯管の別な表面展開図。
【図7】ブラシ束の構成を示す図。
【図8】外管の表面のブラシ列の展開図。
【図9】図(a) はブラシ植設孔の配列図。図(b) は別なブラシ植設孔の配列図。
【図10】ブラシ列の他の態様を示す展開図。
【図11】補助固定部の詳細断面図(図1の11部分拡大図)。
【図12】補助固定部の他の態様の構成を示す図。
【図13】本発明の回転式研磨ロールの操作を示す構成図。
【符号の説明】
【0032】
R…回転式研磨ロール、1…内芯管、2…外管、3…ブラシ列、4…研磨部、5…補助固定部、10…溝、15…ブラシ植設孔、16…ブラシ束、20…小ねじ
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒体部の外周にブラシもしくは不織布製研磨材(バフ)が装着され、回転軸に連動して回転動され、該回転動をもってプリント基板等のワークに対する研磨等の作業をなす回転式研磨ロールの製造方法に関し、特には、回転軸への取付け体となる内芯(ナイシン)管とブラシ・バフの取付け体となる外管との取付け方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転式研磨ロールにおいては一般的に、図13に示すように、回転軸への取付け体となる内芯管aとブラシ・バフの取付け体となる外管bとから円筒体部が構成され、同図に示すように端部ホイールフランジc及び中間ホイールフランジdを介して回転軸eに連動して回転駆動される。
しかして、現在普及している二つ割形式にあっては、内芯管と外管とを接着剤をもって固着されれば充分である。一方、円筒体部が一体形式であるときには、内芯管と外管との強嵌合方式が採られるものである(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、内芯管と外管とが緩嵌挿状態にあるとき、接着剤が使用されるが、内芯管と外管との間隙に充填される接着剤が均一に充填され難く、固着力に対する信頼性が低い。
なお、文献1、2においては、それらの材料の特性上、外管の収縮ばめ、あるいは内芯管の変形による嵌合となる。
更に近年、この種の回転式研磨ロールにおいて、長尺化、重量化が図られつつあるが、接着剤のみによる固着、あるいは強嵌合方式による固着によっては長尺化・重量化に対応するのに必ずしも十全であるとは言えない。すなわち、長尺化・重量化に対して、接着剤による固着では固着力が不足し、また、強嵌合方式を採る場合にはその嵌挿作業に困難を来すものである。
更にまた、本回転式研磨ロールを取扱い(交換、搬送)中、床面への衝突などの原因で、内芯管に衝撃が加わった際、外管と内芯管とが離脱するとの報告もなされている。
一方、ブラシ束を外管に穿孔したブラシ植設孔に打ち込んでなすいわゆる植込み式研磨ブラシにあっては、従来より密実(密集)形式が一般的であり、その研磨性能に付いても満足のいくものではなく、更なる研磨性能の向上が望まれている。
【特許文献1】実公平8−5017号公報
【特許文献2】特開平10−138153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、この種の回転式研磨ロールにおいて、内芯管と外管との一層強固な固定を図り、その長尺化・重量化に対応できる固定方法を提供することを目的とする。
本発明はこのため、内芯管と外管との硬度差に着目し、ひいては内芯管と外管との変形特性、外管の弾性に基づく外径方向への変形を利用し、両管を所定のはめあい精度に保持し、外管への内芯管の押込み嵌合をなすことによりその目的が達成されるとの知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の回転式研磨ロールの製造方法は具体的には以下の技術的手段を採る。
本発明の回転式研磨ロールの製造方法は、請求項1に記載のとおり、直接もしくはホイールフランジを介して回転軸に取り付けられる硬質円筒体をなす内芯管と、該内芯管に外嵌固定される合成樹脂製の円筒体をなす外管とからなり、前記外管に所定間隔を保ってブラシ植設孔が穿設されるとともに該ブラシ植設孔にブラシ束が打込みをもって列状に植設された研磨部が配され、前記回転軸からの周回転駆動を受けて研磨対象を研磨する研磨ロールの製造方法であって、
前記外管に形成される研磨部のブラシ列を互いに所定間隔を保って配設し、
前記内芯管の外表面には一定幅を保持する凹溝を実質的に均等に形成し、
前記内芯管の外径と前記外管の内径とは締りばめによる緩いはめあい公差を保持し、
前記内芯管と前記外管との間に接着剤を充填するとともに、該内芯管と該外管とを押込み嵌合してなる、
ことを特徴とする。
上記構成において、「緩いはめあい公差」とは、外管の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得るに足る寸法関係をいう。換言すれば、ブラシ植設孔の深さの決定要因を与える公差をいう。
更に、該「緩いはめあい公差」は、以下の実施形態で更に詳しく示される。
また、内芯管の外表面の凹溝の比率に付いては、以下の実施形態で具体的に示される。
上記構成において、
1)ブラシ列は直線状又は螺旋状に配されてなること、
2)内芯管はフェノール樹脂よりなり、外管はポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂のいずれかの一つより選ばれること、
は適宜採択される選択的事項である。
【0005】
(作用)
外管の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得、かつ、接着剤により内芯管と外管とは所期の固定力を得る。ブラシ植設孔は外管の内径部付近まで穿孔しても内部応力に撹乱を与えない。
このようにして、本研磨ロールにおいて、内芯管と外管とは所定のはめあい精度による押込みを受け、内芯管と外管との硬度差及び両管の変形特性、すなわち外管が内芯管に比べて変形され易い特性により、外管の弾性に基づく外径方向への変形を受けて剛性を保持する内芯管への締付けにより強固な固定を得る。また、接着剤は内芯管の外表面の凹溝に有効に保持され、所定の面積比を保ち、その接着作用により一層の固着力が得られる。
また、はめあい径が等長であるとき、内芯管と外管との嵌合力は弱くなるが、接着作用があるので、十分な固着力が得られる。
本研磨ロールの周面回転により、外管に植設されたブラシ列は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。
【発明の効果】
【0006】
本研磨ロールの製造方法によれば、ブラシ植設孔は可及的に深く穿孔でき、外管の薄肉化、あるいはブラシ束の毛長の長大化に寄与する。
更に、本製造方法によれば、内芯管と外管とは所定の硬度を採り、かつ内芯管と外管とは所定のはめあい精度を保つので、押込み力が明確化され(過大な力が不要)、機械力の導入が容易となり、迅速かつ確実に生産が行われる。
また、内芯管の凹部に充填された接着剤は内芯管と外管との押込み操作によっても影響を受けず、固着作用が同時的に行われ、生産効率の向上が図られる。
また、本研磨ロールによれば、前記したとおり内芯管と外管とは強固な固定(一体性)が得られるので、取扱い中、搬送中における両管の剥離が飛躍的に低減される。更に、内芯管と外管とのがたつきがなく、本研磨ロールの耐久性が向上し、製品自体の寿命が長期化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の回転式研磨ロールの製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図12は本発明の回転式研磨ロール(以下単に「研磨ロール」という)の製造方法の一実施形態を示し、ブラシ態様への適用例(円筒研磨ブラシ)を示す。すなわち、図1はその研磨ロールRの全体の縦断面構成を示し、図2〜図12は各部の構成を示す。
【0008】
図1・図2に示されるように、この研磨ロールRは、薄肉硬質の円筒体をなす内芯管1と、該内芯管1に外嵌され、かつ接着固定される厚肉合成樹脂製の円筒体をなす外管2と、該外管2に植設された複数のブラシ列3よりなる研磨部4と、を含み、更には、内芯管1と外管2との固定を補助する補助固定部5を含む。
【0009】
以下、各部の細部の構成に付いて説明する。
内芯管1(図1〜図6参照)
内芯管1は、薄肉硬質の円筒体をなす。
その素材として、フェノール樹脂管が好適である。該フェノール樹脂管はフェノール樹脂に硬化剤・充填剤が混入されて管状に成形されたもので、強靭・硬質であり、内外径の公差が極めて小さく、内外周面は滑らかである。このものは、所定精度の一定内径を保持し、剛性とともにわずかな弾性を有し、後述するように回転駆動のフランジホイールとの取付けに際し、馴染みがよい。因みに、フェノール樹脂(充填材入り)は、比重が1.30〜1.40、圧縮強度が200〜400kg/平方cmの値を採る硬質素材である。
本実施形態では、該内芯管3は熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂を使用したが、他の熱硬化性合成樹脂材、更には場合によっては熱可塑性合成樹脂材の使用を妨げるものではなく、同等の機能(所定精度の一定内外径の保持、所定の剛性)を満たすものであれば、金属等の他の適宜の素材が適用される。
【0010】
(凹溝10)
内芯管1の表面には一定深さ及び一定幅を持つ凹溝10が所定の態様(割合)で刻設される。本実施形態では、網目形態を示す。すなわち、図4はその展開図であって、軸方向凹溝10a、円周方向凹溝10bとが碁盤目(方形)に刻設される。
詳述すれば(図5参照)、凹溝10は深さa(例えば1.0mm)、幅b(例えば2.0mm)を採る。凹溝10は連続するものであるが、他の条件(面積比、均等)を満たせば非連続であってもよい。
凹溝10の表面積に占める割合は、5〜50%とされ、本実施形態では30〜40%、あるいは30%前後が試験的には良好な値を示す。なお、これらの値(a、b、及び面積割合)は目安であって、本発明を限定するものではない。
【0011】
凹溝は螺旋状等の他の適宜の態様を採りうる。
図6は図4と同様の展開図であり、12は螺旋状の凹溝を示す(一重螺旋態様)。13は螺旋状凹溝12に交差する別の螺旋状凹溝である(二重螺旋態様)。
【0012】
外管2(図1〜図3、図8〜図10参照)
外管2は、所定厚さの合成樹脂製の円筒体をなし、内芯管1に押込みをもって外嵌固定され、ブラシの埋め込み用基台を提供する。
その素材として、本実施形態ではポリプロピレン(PP)が好適なものとして採用される。該PPは熱可塑性樹脂であって、成形性(真円度)が良好であり、所要の強度を発現する。その他の素材として、同じく熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂が適用される。
これらのPP、PE、ABSは、成形性がよく、円筒体として真円度が高く、内芯管1とのはめあい精度を所要の精度に確保することができ、また、後記するブラシ植設孔の穿孔作業性が良好である。
なお、上記の外管2の要請(強度、成形性など)が満たされるものであれば、その他の合成樹脂材を除外するものではない。
【0013】
嵌合い固定並びに接着固定
内芯管1と外管2とは、次の要領で固定される。
すなわち、内芯管1と外管2とは、所定の真円度で成形されるものであり、かつ内芯管1と外管2とは嵌合い(ハメアイ)となるため、内芯管1の外径と外管2の内径は所定の「はめあい」の寸法公差を保持する。詳しくは、本実施形態においては締りばめ態様を採る。すなわち、内芯管1の外径の最小許容寸法が外管2の内径の最大許容寸法より大きい場合(両者が等しい場合も含む)のはめあいとなる。また、中間ばめ(穴の最小許容寸法より軸の最大許容寸法が大きく(両者が等しいばあいも含む)、しかも穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が小さいばあいのはめあい)を除外するものではない。従って、内芯管1に外管2を所定の力で押し込まれることになるが、外管2は若干の外径方向への膨らみを許容し、この押込みを許容する。嵌挿後において、外管2は内芯管1を締め込むことになり、両者は強固に固着されるものである。
具体的には、内芯管1と外管2との嵌合いは、軸基準(常用はめあいを使用)としてh6に対しJs6〜P7が対応する。
更に、内芯管1と外管2とは、内芯管1の表面の凹溝10に充填された所定の接着剤、すなわちプラスチック用接着剤を介して固着される。凹溝10は、内芯管1の表面の所定の割合を占め、大きな接着力を発揮する。
【0014】
研磨部4(図1〜図3、図7〜図10参照)
研磨部4は、外管2に植設された複数のブラシ列3よりなる、換言すればブラシ列3の集合よりなる。
もっと詳しくは、ブラシ列3はブラシ植設孔15に植設されたブラシ束16の連なりにより構成される。各ブラシ列3は所定間隔を保って外管2の表面を軸方向に並ぶ。
【0015】
(ブラシ植設孔15)(図3参照)
ブラシ植設孔15は、横断形状が円形をなし、外管2に一定深さにわたって穿設されるとともに、各ブラシ植設孔15相互は一定の間隔を保って多数穿設される。
更に、本実施形態では、各ブラシ列3においてブラシ植設孔15は千鳥に配される。
図3はブラシ植設孔15の断面構成を示し、15aはその孔壁、15bは逆円錐形をなす孔底である。孔底15bはその下層の内芯管1とは一定間隔を保っている。このブラシ植設孔15は、先端の刃先が円錐形をなすドリルをもって穿孔されるものであり、従ってその先端の形状に対応して孔底15bは円錐形をなす。このブラシ植設孔15は例えば、径が5mm、深さが10mm、孔底15bの角度が90°の諸元を採る。
【0016】
(ブラシ束16)(図7参照)
ブラシ束16は、各ブラシ植設孔15に植え込まれる。ブラシ束16は、図7に示されるように、所定長のブラシ繊維18が6〜10本を一束として、中央より折り曲げられ、かつ、その折曲げ部に線材よりなる止め金具19が巻き懸けられる。
もっと詳しくは、ブラシ繊維18は所定の径を有する繊維体をなし、それ自体で研磨性を有する。また、該ブラシ繊維18は反発性をもって自然状態で直線状を保持し、中央で拘束力を受けて同一方向に向くが、この拘束力が解除されると直線状に復帰する。その構成の一例として、合成樹脂製線材の表面に砥粒が接着剤を介して付着されてなる。止め金具19は金属線材、通常には鋼線よりなり、所定長さのものを、束ねられたブラシ繊維18の中央すなわち基部に巻き懸け、その両端を下方へ延設させる。ブラシ繊維18は例えば、長さが100mm、径が1.0mm、止め金具19は長さが22mm、径が0.5mmの諸元を採る。個々のブラシ束16は、図3に示されるように、基部において止め金具19が外管2内に食い込むことをもって定着され、その上部は弾力をもって外管2の表面より立ち上がる。
【0017】
(ブラシ列3)(図8〜図10参照)
本実施形態では、ブラシ列3は図8に示すように、軸方向に沿って直線状をなす。しかして、そのブラシ植設孔15の配列は千鳥状ではあるが、図8・図9(a) 図に示されるように、中心線Cを対称軸として互いに被さって接近して配される。また、図9(b) 図に示されるように、中心線Cに接して又は可及的接近して配される態様も採られる。
留意すべきは、ブラシ植設孔15相互の最小間隔(目安として2mm)は確保されるべきである。
また、図10は、ブラシ列3を螺旋状に配した態様を示す。本態様において、軸方向線Zに対して角度αを採る。
【0018】
補助固定部5(図11・図12参照)
補助固定部5は、図11に示すように、小ねじ20を主体とし、内芯管1と外管2との端部の境目に跨って開設されたねじ孔21に螺合されてなる。該補助固定部5は本実施形態では、各両端において2か所に配されるが、その個数に限定されない。
図12は補助固定部5の別の態様を示す。
この態様においては、外管2と内芯管1との端部において、両管1,2を径方向に貫通するねじ孔22が開設され、該ねじ孔22に縦長ボルト23が螺合されるものである。その個数に限定されない。
該補助固定部5により、内芯管1と外管2との固定は一層確実になる。
【0019】
研磨ロールRの製造
叙上の研磨ロールRに付き、本実施形態の製造方法は次の要領でなされる。
(1) 内芯管1と外管2との成形加工
内芯管1及び外管2は合成樹脂材の射出成形あるいは押出し成形をもって円筒状に成形される。内芯管1はベークライト管が好ましい。外管2はその素材をポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ABS樹脂とするので、その成形性が良好で成形精度が高く、内芯管1との所定のはめあい精度を保持する。内芯管1はまた、その表面に凹溝10が凹設加工される。すなわち、螺旋状凹溝に付いては旋盤加工、碁盤目状凹溝に付いてはフライス加工がなされる。
【0020】
(2) 内芯管1の凹溝10への接着剤の塗布
内芯管1の凹溝10に上記した接着剤、すなわちプラスチック用接着剤が充填される。この場合、接着剤は凹溝10より盛り上がり状に充填される。
【0021】
(3) 内心管1の外管2への圧入
内芯管1に外管2を外装し、押し込んで外嵌する。すなわち、内芯管1を固定し、これに外管2を外装し、油圧シリンダなどの機械力をもって押し込んでゆく。このとき、外管2は若干の弾性があるので、弾性変形をもって内芯管1に食込み状に外嵌される。内芯管1と外管2とは所定のはめあい公差に保持されており、押し込み力が明確化され、可及的一定の押込み力が維持される。また、外管2の変形域は外管2の内径側の浅い部分にとどまり、有害な応力を与えない。
同時に、上記(2) での接着剤は凹溝10以外、すなわち内芯管1の表面から排除され、凹溝10内の接着剤は加圧状態となる。
【0022】
(4) ねじ孔の加工、ねじの螺入
接着剤の固結を待ち、しかる後、内芯管1と外管2との端面より両管1,2に跨ってねじ孔21を螺設し、そのねじ孔21に小ねじ20をねじ込む。なお、該工程(4) は省略されうる。
【0023】
(5) 孔開け加工
上記の半製品に付き、該外管2に対しブラシ植設孔15を所定の精度、すなわち鉛直度及び間隔を保って直線状もしくは螺旋状の列状に穿設する。本実施形態において、上記したとおり、各列に付き千鳥状に穿孔されるものであり、各孔15は互いに可及的接近される。この穿設作業にプログラム作動される数値制御(NC)穿孔機が使用され、迅速になされる。
【0024】
(6) 植毛加工
ブラシ植設孔15が穿設された外管2に対し、ブラシ束16の植設がなされる。すなわち、既述のとおり、ブラシ束16は所定長のブラシ繊維18が6〜10本を一束として、中央より折り曲げられ、かつ、その折曲げ部に線材よりなる止め金具19が巻き懸けられる。個々のブラシ束16は、基部において止め金具19が外管2内に食い込むことをもって定着され、その上部は弾力をもって外管2の表面より立ち上がる。この植設作業にプログラム作動されるNC植毛機が使用され、迅速になされる。
【0025】
研磨操作及び設備
叙上の研磨ロールRは、次のように取扱い操作を受け、ワーク(作業対象)に対し研磨作用をなす。
本研磨ロールRは既製の回転駆動装置の回転軸eに装着されて使用される。すなわち、図13に示すように、両端にホイールフランジcが装着され、また中間にもホイールフランジdが装着され、ホイールフランジcに連動する回転駆動装置の駆動によりホイールフランジcを介して本研磨ロールRを回転駆動するものである。
本研磨ロールRの周面回転により、研磨部4のブラシ列3は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。研磨屑、洗浄水の使用がなされるときの水は、ブラシ内に滞留することなく円滑に排出される。
【0026】
(本実施形態の作用)
外管2の内径部に大きな変形力を与えることなく内芯管に対する拘束力を得、かつ、接着剤により内芯管1と外管2とは所期の固定力を得る。ブラシ植設孔15は外管2の内径部付近まで穿孔しても内部応力に撹乱を与えない。
このようにして、本研磨ロールRにおいて、内芯管1と外管2とは所定のはめあい精度による押込みはめあいとされ、内芯管1と外管2との硬度差により、更には内芯管1と外管2との変形特性、すなわち外管2が内芯管1に比べて変形され易い特性により、外管2の弾性に基づく外径方向への変形を受けて内芯管1への締付けにより強固な固定を得る。また接着剤は内芯管1の外表面の凹溝10に有効に保持され、所定の面積比を保ち、その接着作用により一層の固着力が得られる。
また、はめあい径が等長であるとき、内芯管1と外管2との嵌合力は弱くなるが、接着作用があるので、十分な固着力が得られる。
更に、補助固定部5は強嵌合固定された両管に跨ってねじ孔が螺設され、かつねじが螺合されるので、ねじ孔のずれがなく、かつねじの固定作用が有効に加わる。
研磨作用において、本研磨ロールRの周面回転により、研磨部4のブラシ列3は各別にワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。研磨屑、洗浄水の使用がなされるときの水は、ブラシ内に滞留することなく円滑に排出される。
【0027】
(本実施形態の効果)
本実施形態の研磨ロールの製造方法によれば、ブラシ植設孔15は可及的に深く穿孔でき、外管2の薄肉化、あるいはブラシ束16の毛長の長大化に寄与する。
このようにして、本実施形態の製造方法によれば、内芯管1と外管2とは所定の硬度を採り、かつ内芯管1と外管2とは所定のはめあい精度を保つので、押込み力が明確化され、所定の力をもって押し込まれ(過大な力が不要)、機械力の導入が容易となり、迅速かつ確実に生産が行われる。
また、内芯管1の凹溝10に充填された接着剤は内芯管1と外管2との押込み操作によっても影響を受けず、固着作用が同時的に行われ、生産効率の向上が図られる。
また、本研磨ロールRによれば、前記したとおり内芯管1と外管2とは強固な固定(一体性)が得られるので、取扱い中、搬送中における両管の剥離が飛躍的に低減される。更に、内芯管1と外管2とのがたつきがなく、本研磨ロールRの耐久性が向上し、製品自体の寿命が長期化する。
更に、補助固定部5により固着力の一層の増大が図られる。
また、本研磨ロールRの研磨部4はブラシ列3よりなり、ブラシ列3の各別はワークの表面を研磨し、その当接端部のエッジ作用により効果的な研磨作用を発揮する。螺旋状配列によれば、直線状配列に比べエッジ作用が緩和される。
【0028】
(別態様1)
叙上の実施形態(図1〜図13に相当)ではブラシ態様を述べたが、外管2の外周面に研磨性の不織布いわゆるバフを固着してなる回転式バフへの適用をなし得る。
この態様において、内芯管1と外管2との固着作用に付いては何ら変るところはない。この態様において、外管2の厚さを薄くすることは設計的事項である。
【0029】
(別態様2)
更に、先の実施形態では内芯管1をベークライト管としたが、アルミ製管に替えてもよい。
本態様のブラシはアルミ管(台)を介してシャフトに装着される。アルミ台はダイカスト成形され、成形精度もよく、アルミ台の表面の凹溝も同時に成形されるか、あるいは後で切削加工される。
ブラシによる研磨部は先のものと変りはない。
アルミに替え、普通鋼、ステンレス鋼を採用することを妨げるものではない。
【0030】
本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の回転式研磨ロールの一実施形態(円筒研磨ブラシ)の全体構成を示す縦断面図(図2の1−1縦断面図)。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】図1の部分詳細断面図(図1の3部分拡大図)。
【図4】内芯管の表面展開図。
【図5】図4の5−5線拡大断面図。
【図6】内芯管の別な表面展開図。
【図7】ブラシ束の構成を示す図。
【図8】外管の表面のブラシ列の展開図。
【図9】図(a) はブラシ植設孔の配列図。図(b) は別なブラシ植設孔の配列図。
【図10】ブラシ列の他の態様を示す展開図。
【図11】補助固定部の詳細断面図(図1の11部分拡大図)。
【図12】補助固定部の他の態様の構成を示す図。
【図13】本発明の回転式研磨ロールの操作を示す構成図。
【符号の説明】
【0032】
R…回転式研磨ロール、1…内芯管、2…外管、3…ブラシ列、4…研磨部、5…補助固定部、10…溝、15…ブラシ植設孔、16…ブラシ束、20…小ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接もしくはホイールフランジを介して回転軸に取り付けられる硬質円筒体をなす内芯管と、該内芯管に外嵌固定される合成樹脂製の円筒体をなす外管とからなり、前記外管に所定間隔を保ってブラシ植設孔が穿設されるとともに該ブラシ植設孔にブラシ束が打込みをもって列状に植設された研磨部が配され、前記回転軸からの周回転駆動を受けて研磨対象を研磨する研磨ロールの製造方法であって、
前記外管に形成される研磨部のブラシ列を互いに所定間隔を保って配設し、
前記内芯管の外表面には一定幅を保持する凹溝を実質的に均等に形成し、
前記内芯管の外径と前記外管の内径とは締りばめによる緩いはめあい公差を保持し、
前記内芯管と前記外管との間に接着剤を充填するとともに、該内芯管と該外管とを押込み嵌合してなる、
ことを特徴とする回転式研磨ロールの製造方法。
【請求項2】
ブラシ列は直線状又は螺旋状に配されてなる請求項1に記載の回転式研磨ロールの製造方法。
【請求項3】
内芯管はフェノール樹脂よりなり、外管はポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂のいずれかの一つより選ばれる請求項1又は2のいずれかに記載の回転式研磨ロール。
【請求項1】
直接もしくはホイールフランジを介して回転軸に取り付けられる硬質円筒体をなす内芯管と、該内芯管に外嵌固定される合成樹脂製の円筒体をなす外管とからなり、前記外管に所定間隔を保ってブラシ植設孔が穿設されるとともに該ブラシ植設孔にブラシ束が打込みをもって列状に植設された研磨部が配され、前記回転軸からの周回転駆動を受けて研磨対象を研磨する研磨ロールの製造方法であって、
前記外管に形成される研磨部のブラシ列を互いに所定間隔を保って配設し、
前記内芯管の外表面には一定幅を保持する凹溝を実質的に均等に形成し、
前記内芯管の外径と前記外管の内径とは締りばめによる緩いはめあい公差を保持し、
前記内芯管と前記外管との間に接着剤を充填するとともに、該内芯管と該外管とを押込み嵌合してなる、
ことを特徴とする回転式研磨ロールの製造方法。
【請求項2】
ブラシ列は直線状又は螺旋状に配されてなる請求項1に記載の回転式研磨ロールの製造方法。
【請求項3】
内芯管はフェノール樹脂よりなり、外管はポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂のいずれかの一つより選ばれる請求項1又は2のいずれかに記載の回転式研磨ロール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−950(P2006−950A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177943(P2004−177943)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(392023212)株式会社角田ブラシ製作所 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(392023212)株式会社角田ブラシ製作所 (5)
【Fターム(参考)】
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