説明

回転式蒸発装置

冷却器(6)を有する回転式蒸発装置(1)において、冷却器(6)内への、冷却媒体の入口(14)及び出口(16)に複数の温度センサ(15,17)が配置されていて、冷却器(6)を貫流する冷却媒体の流量が決定される。複数の温度センサ(15,17)における温度差(X)の増加及び減少から、冷却器(6)内における凝縮の開始若しくは終了が導き出される。前記温度(X)差から、凝縮された留出物(10)の量が決定され、留出量の調整が行われる。ヒータ(11)の加熱出力及び/又はシステム内の圧力を調整することによって、冷却器(6)の負荷が、前記温度差(X)に関連して調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式蒸発装置であって、軸を中心にして回転可能に支承された、蒸留物を収容する蒸留フラスコと、冷却器と、留出物を収容するための留出フラスコとを有しており、前記蒸留フラスコが、前記軸を包囲する蒸留管を有しており、前記冷却器が、流路を形成するために冷却循環路に接続され、かつ冷却媒体を収容する冷却コイルを有しており、前記蒸留管が、蒸留フラスコを冷却器及び留出フラスコに接続し、前記蒸留フラスコが、ヒータによって加熱可能であり、かつ加熱中に駆動装置によって軸を中心にして回転可能であり、前記蒸留管を通ってガイドされ、かつ冷却コイルにおいて凝縮された蒸気が、前記留出フラスコ内に収容され得るようになっている形式のものに関する。
【0002】
本発明はまた、少なくとも部分的に蒸発させようとする蒸留物を、軸を中心にして回転可能に支承され、かつ蒸留物を収容する蒸留フラスコ内にもたらし、蒸留物が収容された前記蒸留フラスコをヒータによって加熱し、前記蒸留フラスコを加熱中に軸を中心にして駆動装置によって回転させ、加熱によって得られた蒸気を、軸を包囲する蒸留管を介して冷却器内にガイドし、該冷却器が冷却コイルを有しており、該冷却コイルが、冷却媒体のための流路を形成するために冷却媒体循環路に接続されていて、冷却媒体によって貫流され、前記冷却コイルにおいて凝縮された蒸気が留出フラスコ内に収容されるようにする、蒸留物を蒸発させるための方法に関する。
【0003】
このような形式の回転式蒸発装置及び、蒸留物を蒸発させるための方法は、例えば専門誌の記事"M.T. Kramer: Ein Rotationsverdampfer-System und seine Moeglichkeiten, G-I-T-Fachz. Lab., 18. Jg., September 1974, S. 862ff"(M.T.クラマー著:回転式蒸発装置システム及びその可能性、G−I−T専門誌、Lab.第18巻、1974年9月、第862頁以降)により公知であり、実証されている。従来の方法と比較して、回転式蒸発装置の特に有利な特性は、蒸留物の加熱中に蒸留フラスコを回転させることによって、特に蒸留フラスコの内壁を蒸留物によって充分に濡らすことによって、蒸留物の均一な加熱が得られる、という点にある。これによって、このような形式の回転式蒸発装置を、実験室で使用すれば良い結果が得られる。
【0004】
国際公開第96/05901号公報によれば、留出装置又は凝縮装置を制御するための方法が公知である。留出装置又は凝縮装置は、沸騰容器、加熱源及び冷却器を有しており、冷却器を貫流する冷却水が循環路内でガイドされ、循環路内の冷却水の温度が検出され、この冷却水の温度が上限値に達すると、温度が下限値に達するまで冷却水が供給される。冷却水の供給にも拘わらず、冷却水温度が低下しないと、装置が遮断される。
【0005】
本発明の課題は、自動運転において使用するために適した、蒸留物を蒸発させるための方法及び回転式蒸発装置を提供することである。
【0006】
この課題を解決した本発明の回転式蒸発装置によれば、冷却媒体の流路内の第1の箇所に第1の温度センサが配置されていて、冷却媒体の流路内の第2の箇所に第2の温度センサが配置されており、前記第1の箇所が、前記第2の箇所に対して、冷却媒体の流路の区分によって間隔を保たれており、前記区分を通って流れる冷却媒体の流量を決定するための手段が設けられている。これによって、自動運転時に種々異なる方法段階のために用いることができる、冷却器の瞬間的な冷却出力に関する情報が得られる。
【0007】
前記区分は、冷却媒体が蒸気の凝縮時に放出される凝縮熱を吸収する、冷却媒体の流路の範囲の少なくとも一部を有している。従って、流路の一部は、冷却コイルの純粋な部分領域を形成する。この場合、温度センサは、冷却器の内側で冷却コイル内に配置されている。
【0008】
前記区分が、特に冷却コイルを有する程度の大きさに選定されていれば、特に有利である。これによって、温度測定時の測定精度の影響を、温度センサ間の測定された温度差と比較して、小さくすることができる。
【0009】
冷却器内に侵入する冷却媒体の温度をできるだけ正確に検出するために、第1の温度センサが、冷却器内への、冷却コイルの入口に配置されている。これによって、温度センサは、冷却器内に通じる流路を形成する冷却循環路の管路の入口の領域に配置されている。この場合、温度センサの位置は、周囲の影響(例えば冷却コイルと温度センサとの間の冷却媒体管路の一部が周囲の影響によって加熱又は冷却されることによる)に基づいて、誤った温度測定が行われることは避けられるように、選定されている。
【0010】
同様に、第2の温度センサは、冷却器からの冷却コイルの出口に配置されている。この場合も、流路内における温度センサの配置は、冷却コイルからの出口の後ろ、かつ温度センサに達する前において、冷却媒体の温度変化が事実上避けられるように、選定されている。これは、冷却循環路の管路を適当に熱絶縁することによっても得られる。
【0011】
冷却出力のデータを得るために、冷却器によって搬送される時間単位毎の冷却媒体量を知る必要がある。冷却媒体の流量は、例えば冷却循環路内の圧力をプリセット(予め設定)し、かつ流路内の圧力の影響を制限することによって、又はその時点における瞬間的な流量を測定することによって、決定することができる。瞬間的な流量を測定可能にするために、冷却媒体の流路の区分を通って流れる冷却媒体の流量を決定するための手段が流量計を有している。
【0012】
特に有利な実施態様によれば、流量計が、冷却媒体の流路内で、冷却媒体の流路の区分の外側に配置されている。これによって、冷却コイル内若しくは区分内における冷却によって実際に発生する温度変化に対する、測定された温度差が、流量計特にその熱放射及び熱伝導によって又は流量計内での冷却媒体の加熱によって、誤って測定されることは、避けられる。また、流量計が、冷却媒体の流路の区分の外側に配置されていれば、整備又は保守のために流量計に容易にアクセス(接近)することができる、という利点も得られる。
【0013】
蒸留しようとする製品を気化させる際の特に良好な状態は、冷却器が真空発生器に接続されていることによって、得られる。
【0014】
本発明の実施態様によれば、第1の温度センサと第2の温度センサとの間の温度差の経時変化、及び流量の経時変化を決定し、かつ/または検出するための手段が設けられている。このような手段を設けることによって、運転状態の変化及び蒸留物の特性に関する情報が得られ、自動化された運転のために利用できる、という利点が得られる。
【0015】
例えば所定の時間内で留出フラスコ内に収容された留出物を、検出された温度差の経時変化と、冷却媒体の流路の区分を通って流れる冷却媒体の流量の経時変化とから算出するための手段が設けられている。これによって、回転式蒸発装置は例えば、所定量の留出物が得られるまで、自動的に運転することができる。
【0016】
回転式蒸発装置で、種々異なる蒸留物を処理することできるようにするために、蒸留物及び/又は留出物及び/又は冷却媒体の材料固有のデータをインプット及び/又は記憶及び/又は選択するための手段が設けられている。このような材料固有のデータは、少なくとも冷却媒体及び/又は留出物の比熱、留出物の凝縮エンタルピー及び/又は、凝縮熱を冷却媒体の加熱熱に変換する変換効率によって得られる。これらのデータから、冷却コイル内で冷却媒体に時間単位毎に供給される熱量を決定することができる。この場合、熱量は、冷却媒体の量から得られ、冷却媒体の温度変化及び比熱は公知の法則に基づく。
【0017】
冷却媒体の熱容量は、冷却媒体の運転温度の範囲内で僅かに変化するだけであることが分かった。この場合、冷却媒体の温度は、計算に入れられるのではなく、一定であるとみなされる。従って、有利な実施態様によれば、第1の温度センサと第2の温度センサとの間の差だけが検出されるようになっている。
【0018】
回転式蒸発装置で自動化された方法を実施するために、第1の温度センサと第2の温度センサとの間の温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、回転式蒸発装置のための制御信号を導き出す制御ユニットが設けられている。これによって、回転式蒸発装置の運転時に得られた、運転状態若しくは方法の進捗に関するデータが、自動制御のために利用される。この場合、発生した制御信号が制御のために評価され、かつ利用される。
【0019】
本発明の実施態様によれば、時間的な変化に伴う、検出された温度差の経時変化を監視するための手段、特にコンピュータ技術的な手段が設けられており、該手段によって、検出された温度差の経時変化と決定された流量の経時変化とから、蒸留物の成分の蒸発の開始及び/又は終了に関する情報が得られ、前記制御信号によって、前記情報をアウトプットすることができ、かつ/又は、ヒータ及び/又はシステム圧力を変化させることができる。この場合、回転式蒸発装置の運転中の変化を確認することができるので、有利である。例えば、蒸留フラスコ内に存在する留出物の成分が完全に蒸発されるか、又は蒸留フラスコ内に残存する留出物が共沸物を形成し、この共沸物の気化温度が成分の気化温度に対して変化した時に、冷却コイル又は区分の終端点における温度差がゼロに低下する。ヒータ又は回転式蒸発装置のスイッチオフの決定、及び/又はシステム圧力の変化は、制御信号によって生ぜしめられる。
【0020】
前記課題を解決するための、冒頭に述べた本願の方法の手段によれば、冷却媒体の流路の区分によって互いに間隔を保って配置された、冷却媒体の流路内の2つの箇所の間の温度差を、連続的に又は、所定の時間間隔で繰り返し検出し、冷却媒体の流量を、前記区分によって連続的に、又は所定の時間間隔で繰り返し決定するようにした。所定の時間間隔で繰り返し行われる検出及び/又は決定の時間間隔は、例えば評価ユニットのクロック周波数によって設定される。
【0021】
本発明の実施態様によれば、検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、回転式蒸発装置のための制御信号を導き出すようにした。このような方法の利点は、蒸発方法の進捗状況及び/又は蒸発方法における変化に関する情報を検出及び利用することができる、という点にある。
【0022】
冷却器内への入口から、冷却器からの出口までの、冷却コイルの区分を、冷却媒体循環路の前記区分として選定すれば、冷却媒体によって吸収された熱量をできるだけ正確に検出することができる。
【0023】
蒸発を補助するために、加熱中に、冷却器を、負圧特に真空発生器によって負荷するようにする。真空発生器として例えば真空ポンプを使用することができる。
【0024】
本発明による方法を自動的に実施するために、制御信号によって、回転式蒸発装置の少なくとも1つの運転パラメータ、特にヒータのヒータ出力、回転式蒸発装置のシステム圧力及び/又は冷却媒体の流量を制御するようにした。このようにすれば、この方法を、良好な特に最適な運転パラメータにおいて自動的に実施することができ、この際に、法の実施中に運転パラメータを方自動的に補正することができる。
【0025】
本発明の実施態様によれば、検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、留出フラスコ内に収容された留出量を検出し、前記制御信号によって、留出量のための検出された値をアウトプットするようにした。
【0026】
本発明の有利な実施態様によれば、検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、蒸留物の成分の蒸発の開始及び/又は終了に関する情報を得て、この情報を前記制御信号によってアウトプットし、かつ/または前記制御信号によってヒータ及び/又はシステム圧力のヒータ出力の変化させるようにした。本発明は、蒸発の開始前及び終了後に、冷却器内において凝縮が行われず、従って冷却コイルの温度差がほぼゼロに等しいが又はゼロである、という認識に基づいている。この場合、蒸留物を加熱する際に、例えば蒸発のために提供される、蒸留物の成分を完全に使い果たすことによって、回転式蒸発装は運転中に、破壊又は損傷に対して保護され得る、という利点もある。これによって特に、未知の問題が生じた場合の初留点又は蒸発開始を検出することもできる。
【0027】
蒸留物として用いられる材料混合物の、留出中つまり蒸発中の変化を確認することもできる。何故ならば、このような変化は、沸騰温度及び/又は凝縮エネルギーの変化の原因となるからである。沸騰温度及び/又は凝縮エネルギーの変化によって、検出された温度差が変化する。このような変化は、評価され、留出フラスコの交換及び/又は留出の中断のための制御信号を発生させるために用いられる。
【0028】
短時間の稼働時間で所定量の留出物が得られるようにするために、検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、冷却器の負荷に関する情報を得て、この情報を前記制御信号によってアウトプットし、かつ/または、特に所定の値において冷却器の出力が最適化され、かつ/または蒸気が真空発生器内に達することがないように、前記制御信号によって、回転式蒸発装置の運転パラメータ、特にヒータのヒータ出力、回転式蒸発装置のシステム圧力及び/又は冷却媒体の流量を制御するようにした。冷却器内の圧力及び/又はヒータ内の温度によって、冷却媒体の流路内の第1の箇所と第2の箇所との間の温度差を調整することによって、留出物速度を、特に冷却媒体の装入量が予め与えられている場合に、冷却器の最大可能な冷却出力に適合させることができる。これによって、留出時間を、提供可能な冷却出力に応じて最適にすることができる。
【0029】
本発明の実施態様によれば、留出フラスコ内に収容された、留出された量を検出する際に、冷却媒体及び/又は留出物の比熱、留出物の凝縮エンタルピー、及び/又は凝縮熱が冷却媒体の加熱に変換される変換効率が考慮される。従って、この方法は、多くの種々異なる蒸留物及び/又は多くの種々異なる蒸留プロセスに合わせて用いることができる。またこれによって、留出量の調整を行うことできる。冷却器の作業領域内における冷却媒体の比熱は、温度依存性が低いので、一定に設定することができる。冷却器内への入口における冷却媒体の温度変化に対する影響は小さい。
【0030】
多くの使用例において満足な結果が得られている、特に簡単な方法によれば、前記制御信号を、検出された温度差と目標温度差との差によって決定するようにした。
【0031】
以下に1実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は、この実施例だけに限定されるものではない。当業者は、この実施例の複数の特徴を互いに組み合わせるか又は請求項の複数の特徴と組み合わせることによって、その他の多くの実施例を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による回転式蒸発装置の原理を示す概略図である。
【0033】
全体が符号1で示された回転式蒸発装置は、軸2を中心にして回転可能に支承された蒸留フラスコ4を有している。蒸留フラスコ4は蒸留物3を収容している。
【0034】
蒸留フラスコ4に蒸留管5が接続され、ひいては蒸留フラスコ4の内部に蒸留管5が接続されている。蒸留管5は、軸2を包囲しており、それによって蒸留管5の回転運動が妨げられないようになっている。
【0035】
回転式蒸発装置1はさらに、冷却器6を有している。蒸留管5は冷却器6の下端部において、冷却器6の内室内に開口している。この内室内に冷却コイル8が配置されている。冷却コイル8は、流路7を形成するために、詳しく図示していない冷却循環経路に接続されている。流路7は冷却媒体で満たされており、該冷却媒体は、運転中に冷却を行うために流路7に沿って流れる。
【0036】
留出物10を収容するために、回転式蒸発装置1は、留出フラスコ9を有している。蒸留管5は、T字状に、冷却器6の内室と留出フラスコ9の内室との間の接続管22内に開口しており、それによって蒸留管5は、蒸留フラスコ4を冷却器6及び留出フラスコ9に接続する。
【0037】
蒸留フラスコ4は、ヒータ11によって加熱可能である。ヒータ11は、公知の形式で構成されていて、浴槽を介して蒸留フラスコ4を加熱する。
【0038】
加熱中に、蒸留フラスコ4は、駆動装置12によって軸2を中心にして回転せしめられる。
【0039】
これによって、蒸留物3を加熱することによって生ぜしめられた蒸気13は、蒸留管5を通ってガイドされ、冷却コイル8において凝縮される。留出フラスコ9は、公知の形式で、この凝縮された蒸気13が留出フラスコ9内に収容され得るように、配置されている。
【0040】
冷却コイル内での冷却媒体の加熱を検出するために、冷却媒体の流路7の第1の箇所14に第1の温度センサ15が配置されていて、冷却媒体の流路7内の第2の箇所16に第2の温度センサ17が配置されている。第1の箇所14は、第2の箇所16に対して、冷却媒体の流路7の区分18によって間隔を保っている。
【0041】
区分18を貫流する冷却媒体の流量を決定するための手段19が設けられている。
【0042】
図示の実施例では、第1の温度センサ15は、冷却器6内への冷却コイル8の入口14に配置されている。第2の温度センサ17は、冷却器6からの冷却コイル8の出口16に配置されている。これらの温度センサの位置は、検出された温度が、周囲の影響によって冷却媒体の温度が誤って表示されることなしに、蒸気13の凝縮による冷却媒体の加熱をできるだけ正確に表すように、選定されている。
【0043】
冷却媒体の流路7の区分18を貫流する冷却媒体の流量を決定するために手段19として、流路7内に流量計19が配置されている。図示の実施例では、流量計19は羽根車を有しており、該羽根車は、貫流する冷却媒体によって駆動され、それによって流量を表示する。
【0044】
流量計19は、冷却媒体の流路7の区分18の外側で冷却媒体の流路7内に配置されている。
【0045】
冷却器6はそのヘッド端部23が、接続管21を介して真空発生器20に接続されている。真空発生器20は、冷却器6の内室を負圧で負荷する。
【0046】
回転式蒸発装置1には、第1の温度センサ15と第2の温度センサ17との間の温度差の経時変化並びに流量の経時変化を決定及び/又は検出するための、詳しく図示していない手段が設けられている。この手段は、記憶手段も有しており、該記憶手段に、検出され、かつ/または決定された経時変化を記憶させておくことができる。
【0047】
同様に、検出された温度差の経時変化、及び冷却媒体の流路7の区分18を貫流する冷却媒体の流量の経時変化から、所定の時間内で留出フラスコ9内に収容された留出物10を検出するための、詳しく図示していない手段が設けられている。
【0048】
このために、回転式蒸発装置1は、蒸留物3及び/又は留出物10及び/又は冷却媒体の材料データを選択かつ/または記憶かつ/またはインプットするための、詳しく図示していない手段を有している。特に、冷却媒体及び留出物の比熱、並びに留出物10の凝縮エンタルピーがインプットされ、凝縮熱から冷却媒体の加熱への変換効率が算入される。
【0049】
蒸留プロセスを自動的に制御するために、回転式蒸発装置1は制御ユニットを有しており、該制御ユニットによって、第1の温度センサ15と第2の温度センサ17との間の温度差の経時変化から、回転式蒸発装置1のための制御信号を導き出すことができる。このために、決定された流量の経時変化が考慮される。
【0050】
回転式蒸発装置1に、時間的な変化に伴う、検出された温度差の経時変化を監視するためのコンピュータ技術的な手段が設けられている。この手段によって、検出された温度差の経時変化と、場合によっては決定された流量の経時変化とから、蒸留物3の成分の蒸発開始及び/又は蒸発終了に関する情報を得ることができる。それによって、この情報をアウトプットし、システム圧力及び/又はヒータ11のヒート出力を変える制御信号が生ぜしめられる。
【0051】
回転式蒸発装置1によって、以下に詳しく説明されている、蒸留物を蒸発させるための方法が実施される。
【0052】
大抵の場合、部分的に蒸発される蒸留物3は、蒸留フラスコ4内にもたらされる。蒸留フラスコ4は、軸2を中心にして回転可能に支承されていて、蒸留物3を収容するように構成されている。次いで、蒸留物3を収容した蒸留フラスコ4がヒータ11によって加熱される。このために、蒸留フラスコ4は部分的にヒータ11の浴槽内に漬けられる。ヒータ11は、浴槽の水を加熱し、その温度を、所定の値(この所定の値において蒸留物3の成分が気化される)に制御する。
【0053】
均一に、かつ迅速に加熱するために、加熱中に、蒸留フラスコ4は、電気式の駆動装置12によって軸2を中心にして回転せしめられる。加熱によって形成された蒸気13は、軸2を包囲する蒸留管5を介して冷却器6内にガイドされる。蒸気13の代わりに、水蒸気と称してもよい。
【0054】
冷却器6は、その内部に冷却コイル8を有している。冷却コイル8は、冷却媒体循環路に接続されている。これによって、冷却媒体のための流路7が形成され、該流路7内で冷却媒体が冷却コイル8を通って流れる。
【0055】
冷却コイル8で凝縮された蒸気13は留出フラスコ9内に収容される。
【0056】
この方法が実施されている間、冷却媒体の流路7内の、冷却媒体の流路7の区分18によって互いに間隔を保たれている2つの箇所14と16との間の冷却媒体の温度の差が、連続的に、又は所定の時間間隔で繰り返し検出され、冷却媒体の流量がこの区分18を通って連続的に又は、所定の時間間隔で繰り返し決定される。冷却媒体循環路の区分18として、冷却コイル8の入口14から冷却器6を通って冷却器6の出口16までの区分が与えられている。
【0057】
加熱中に、冷却器6及び全蒸留システムが、真空発生器20によって負圧で負荷される。
【0058】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、回転式蒸発装置1のための制御信号が導き出される。この制御信号は、複数の情報ユニットより成っていて、多重信号として、直列式の少なくとも1つの通信チャンネル又は並列式の複数の通信チャンネルを介して伝達される。
【0059】
この制御信号は、回転式蒸発装置1の運転パラメータ、例えばヒータ11のヒータ出力、冷却器6内の圧力及び/又は冷却媒体を制御する。
【0060】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、留出フラスコ9内に収容された蒸留量が検出される。蒸留量のための検出された値は、前記制御信号によってアウトプットされる。
【0061】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、蒸留物3の成分の蒸発開始及び/又は蒸発終了に関する情報が得られる。これらの情報は、前記制御信号によってディスプレーに表示される。またこの制御信号によって、ヒータ11のヒータ出力を変化させることもできる。これによって、ヒータ出力特に水槽又はヒータ11の運転温度、及び/又はシステム圧力が、蒸発させようとする成分の気化温度に適合させられている。
【0062】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、冷却器6の負荷に関する情報が得られる。制御信号によって、回転式蒸発装置1の運転パラメータ、特にヒータ11のヒータ出力、回転式蒸発装置1のシステム圧力及び/又は冷却媒体の流量が、冷却器6の負荷が最適になるように制御される。この場合、冷却コイル8における温度差が監視され、運転パラメータは、(入口から冷却器6内までの冷却コイル8の長さで測定した)約80%の長さ、つまり70%〜90%又は75%〜85%又は正確に80%の長さだけに亘って蒸気13が凝縮するように、変えられる。このような冷却器6の負荷に応じて温度差が、回転式蒸発装置1の運転の前に実験によって検出され、制御に算入される。この実験は、冷却コイル8の凝縮プロセスを目視検査して、運転パラメータ、特に蒸気13が凝縮する冷却コイル8の領域の値の変化を確認することによって行われる。所定の値を調整することによって、蒸気13が真空発生器20内に達しないようにすることができる。回転式蒸発装置1特に冷却器6の運転パラメータに基づく、冷却コイル8における決定された温度差を超える温度差において、留出物10の定量的な凝縮はもはや不可能であることは、公知である。このような形式で冷却器6の過大な出力が要求されると、蒸気13が冷却器から流出して、プロセスのために失われてしまう。
【0063】
留出フラスコ9内に収容された蒸留量を検出する際に、冷却媒体及び留出物10の比熱、留出物10の凝縮エンタルピー、及び凝縮熱から冷却媒体の加熱への変換効率が考慮される。冷却コイル8において検出された温度差と、冷却コイル8を貫流する流量とから、時間単位当たりの、冷却媒体によって吸収された熱量が得られる。この熱量は、蒸気13の凝縮時に放出される熱量と同じである。これによって、留出物10の凝縮エンタルピー及び、算出された熱量から、凝縮された留出物1の量が算出される。多くの材料のために、正確な固有の標準値の代わりに、予め設定された標準値を使用してもよい。
【0064】
冷却器8の負荷を調整及び監視することによって、冷却コイル8において検出された温度差Xと目標温度差Yとの差Z=X―Yが算出される。このZは調整値として使用される。
【0065】
蒸発の開始時点において、冷却コイル8のおける温度差の実際値Xはほぼゼロである。何故ならば、まだ蒸気13が冷却コイル8において凝縮していないからである。温度差のための目標値(目標温度差Y)が選択される。ヒータ11のヒータ出力及び/又はシステム内の圧力は、所定の目標温度差Yが得られるように調整される。これによって、所望の量の留出物が得られる。
【0066】
冷却器6を備えた回転式蒸発装置1においては、冷却器6内への冷却媒体の入口14及び、冷却器6からの冷却媒体の出口16内に、温度センサ15,17が配置されていて、冷却器6を通る冷却媒体の流量が決定される。温度センサ15,17における温度差Xの増大若しくは減少から、冷却器6内での凝縮の開始若しくは終了が導き出される。温度差Xから、凝縮された留出物10の量が決定され、蒸留量調整が行われる。ヒータ11のヒータ出力及び/又はシステム内の圧力を制御することによって、冷却器6の負荷は、温度差Xの差に基づいて制御される。
【符号の説明】
【0067】
1 回転式蒸発装置、 2 軸、 3 蒸留物、 4 蒸留フラスコ、 5 蒸留管、 6 冷却器、 7 流路、 8 冷却コイル、 9 留出フラスコ、 10 留出物、 11 ヒータ、 12 駆動装置、 13 蒸気、 14 第1の箇所、 15 第1の温度センサ、 16 第2の箇所、 17 第2の温度センサ、 18 区分、 19 手段、流量計、 20 真空発生器、 22 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式蒸発装置であって、軸(2)を中心にして回転可能に支承された、蒸留物(3)を収容する蒸留フラスコ(4)と、冷却器(6)と、留出物(10)を収容するための留出フラスコ(9)とを有しており、前記蒸留フラスコ(4)が、前記軸(2)を包囲する蒸留管(5)を有しており、前記冷却器(6)が、流路(7)を形成するために冷却循環路に接続され、かつ冷却媒体を収容する冷却コイル(8)を有しており、前記蒸留管(5)が、蒸留フラスコ(4)を冷却器(6)及び留出フラスコ(9)に接続し、前記蒸留フラスコ(4)が、ヒータ(11)によって加熱可能であり、かつ加熱中に駆動装置(12)によって軸(2)を中心にして回転可能であり、前記蒸留管(5)を通ってガイドされ、かつ冷却コイル(8)において凝縮された蒸気(13)が、前記留出フラスコ(9)内に収容され得るようになっている形式のものにおいて、
冷却媒体の流路(7)内の第1の箇所(14)に第1の温度センサ(15)が配置されていて、冷却媒体の流路(7)内の第2の箇所(16)に第2の温度センサ(17)が配置されており、前記第1の箇所(14)が、前記第2の箇所(16)に対して、冷却媒体の流路(7)の区分(18)によって間隔を保たれており、前記区分(18)を通って流れる冷却媒体の流量を決定するための手段(19)が設けられていることを特徴とする、回転式蒸発装置。
【請求項2】
第1の温度センサ(15)が、冷却器(6)内への、冷却コイル(8)の入口(14)に配置されている、請求項1記載の回転式蒸発装置。
【請求項3】
第2の温度センサ(17)が、冷却器(6)からの、冷却コイル(8)の出口(16)に配置されている、請求項1又は2記載の回転式蒸発装置。
【請求項4】
冷却媒体の流路(7)の区分(18)を通って流れる冷却媒体の流量を決定するための手段が、流量計(19)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項5】
流量計(19)が、冷却媒体の流路(7)内で、冷却媒体の流路(7)の区分(18)の外側に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項6】
冷却器(6)が真空発生器(20)に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項7】
第1の温度センサ(15)と第2の温度センサ(17)との間の温度差の経時変化、及び流量の経時変化を決定し、かつ/または検出するための手段が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項8】
所定の時間内で留出フラスコ(9)内に収容された留出物(10)を、検出された温度差の経時変化と、冷却媒体の流路(7)の区分(18)を通って流れる冷却媒体の流量の経時変化とから算出するための手段が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項9】
蒸留物(3)及び/又は留出物(10)及び/又は冷却媒体の材料固有のデータ、特に冷却媒体及び/又は留出物(10)の比熱、留出物(10)の凝縮エンタルピー及び/又は、凝縮熱を冷却媒体の加熱に変換する変換効率をインプット及び/又は記憶及び/又は選択するための手段が設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項10】
第1の温度センサ(15)と第2の温度センサ(17)との間の温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、回転式蒸発装置(1)のための制御信号を導き出す制御ユニットが設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項11】
時間的な変動に基づく、検出された温度差の経時変化を監視するための手段、特にコンピュータ技術的な手段が設けられており、該手段によって、検出された温度差の経時変化と決定された流量の経時変化とから、蒸留物(3)の成分の蒸発の開始及び/又は終了に関する情報が得られ、前記制御信号によって、前記情報をアウトプットすることができ、かつ/又は、ヒータ(11)及び/又はシステム圧力を変化させることができる、請求項1から10までのいずれか1項記載の回転式蒸発装置。
【請求項12】
少なくとも部分的に蒸発させようとする蒸留物(3)を、軸(2)を中心にして回転可能に支承され、かつ蒸留物(3)を収容する蒸留フラスコ(4)内に収容し、蒸留物(3)が収容された前記蒸留フラスコ(4)をヒータ(11)によって加熱し、前記蒸留フラスコ(4)を加熱中に軸(2)を中心にして駆動装置(12)によって回転させ、加熱によって得られた蒸気(13)を、軸(2)を包囲する蒸留管(5)を介して冷却器(6)内にガイドし、該冷却器(6)が冷却コイル(8)を有しており、該冷却コイル(8)が、冷却媒体のための流路(7)を形成するために冷却媒体循環路に接続されていて、冷却媒体によって貫流され、前記冷却コイル(8)において凝縮された蒸気(13)が留出フラスコ(9)内に収容されるようにする、蒸留物(3)を蒸発させるための方法において、
冷却媒体の流路(7)の区分(18)によって互いに間隔を保って配置された、冷却媒体の流路(7)内の2つの箇所(14,16)の間の温度差を、連続的に又は、所定の時間間隔で繰り返し検出し、前記区分(18)を通過する冷却媒体の流量を、連続的に、又は所定の時間間隔で繰り返し決定することを特徴とする、蒸留物(3)を蒸発させるための方法。
【請求項13】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、回転式蒸発装置(1)のための制御信号を導き出す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
冷却媒体循環路の前記区分(18)として、冷却器(6)内への入口(14)から、冷却器(8)からの出口(16)までの前記冷却コイル(8)の区分を使用する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
加熱中に、冷却器(6)を、負圧特に真空発生器(20)によって負荷する、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記制御信号によって、回転式蒸発装置(1)の少なくとも1つの運転パラメータ、特にヒータ(11)のヒータ出力、回転式蒸発装置(1)のシステム圧力及び/又は冷却媒体の流量を制御する、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、留出フラスコ(9)内に収容された留出量を検出し、前記制御信号によって、留出量のための検出された値をアウトプットする、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、蒸留物(3)の成分の蒸発の開始及び/又は終了に関する情報を得て、この情報を前記制御信号によってアウトプットし、かつ/または前記制御信号によってヒータ(11)のヒータ出力及び/又はシステム圧力を変化させる、請求項13から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
検出された温度差の経時変化と、決定された流量の経時変化とから、冷却器(6)の負荷に関する情報を得て、この情報を前記制御信号によってアウトプットし、かつ/または、特に所定の値において冷却器(6)の出力が最適化され、かつ/または蒸気(13)が真空発生器(20)内に達することがないように、前記制御信号によって、回転式蒸発装置(1)の運転パラメータ、特にヒータ(11)のヒータ出力、回転式蒸発装置(1)のシステム圧力及び/又は冷却媒体の流量を制御する、請求項13から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
留出フラスコ(9)内に収容された、留出された量を検出する際に、冷却媒体及び/又は留出物(10)の比熱、留出物(10)の凝縮エンタルピー、及び/又は凝縮熱が冷却媒体の加熱に変換される変換効率を考慮する、請求項13から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記制御信号を、検出された温度差(X)と目標温度差(Y)との差(Z)によって決定する、請求項13から20までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505736(P2012−505736A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531370(P2011−531370)
【出願日】平成21年8月29日(2009.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006277
【国際公開番号】WO2010/043283
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(594184816)イカーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】IKA−Werke GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Janke und Kunkel Strasse 10,D−79219 Staufen,Germany
【Fターム(参考)】