説明

回転支持装置の状態量測定装置

【課題】検出信号取り出しの為の溝部22aを必要個所のみに形成した軸部材3aを使用しても、この軸部材3aをハブ4の内径側に容易に組み込める構造を実現する。
【解決手段】この軸部材3aを、アウタチューブ30とインナシャフト31とから構成する。このうちのアウタチューブ30は、円管状で、外周面の軸方向一部に、各センサ19B1 、19B2 の出力信号を取り出すケーブル32を配設する為の溝部22aを形成している。又、上記インナシャフト31は、上記アウタチューブ30に内嵌している。回転支持装置及び状態量測定装置は、このうちのアウタチューブ30の外周面と上記ハブ4の内周面との間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る回転支持装置の状態量測定装置は、例えば、自動二輪車(オートバイ、スクータ等)の車輪を車体に対して回転自在に支持する為の回転支持装置を構成する軸部材と回転部材との間の状態量である、これら両部材同士の間の相対変位や、これら両部材同士の間に作用する外力(荷重、モーメント)を測定する為に利用する。
【背景技術】
【0002】
[従来技術に就いて]
例えば四輪自動車の車輪は懸架装置に対し、複列アンギュラ型等の転がり軸受ユニットにより、回転自在に支持する。又、自動車の走行安定性を確保する為に、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には、電子制御式ビークルスタビリティコントロールシステム(ESC)等の車両用走行安定化装置が使用されている。又、自動二輪車の分野でも従来から、車両の走行安定性を確保する為に、ABS等の車両走行安定化装置が使用されている。この様な各種車両用走行安定化装置を制御する為には、車輪の回転速度、車体に加わる各方向の加速度等を表す信号が必要になる。そして、より高度の制御を行う為には、車輪を介して上記転がり軸受ユニット等の回転支持装置に加わる外力(ラジアル荷重とアキシアル荷重とモーメントとのうちの少なくとも1つ)の大きさを知る事が好ましい場合がある。
【0003】
この様な事情に鑑みて、例えば特許文献1〜2には、車輪用の回転支持装置を構成する静止部材と回転部材との間に作用する外力を、特殊なエンコーダを使用して測定可能とする発明が記載されている。これら特許文献1〜2に記載された各従来構造は、上記回転部材に支持固定された1個の特殊なエンコーダと、このエンコーダの被検出面にそれぞれの検出部を対向させた状態で、上記静止部材等の使用時にも回転しない部分に支持固定された、複数個のセンサとを備える。そして、上記外力の変化(上記静止部材に対する上記エンコーダの変位)に伴って変化する、上記各センサの出力信号同士の間の位相差に基づいて、上記外力を算出可能としている。
【0004】
ところが、上記特許文献1〜2に記載された各従来構造は、四輪自動車の車輪用の回転支持装置の様に、複列の転がり軸受部に予圧が付与されている回転支持装置に適用する場合には、上記外力を精度良く測定できるが、一部の自動二輪車の車輪用の回転支持装置の様に、複列の転がり軸受部に予圧が付与されていない回転支持装置に適用する場合には、上記外力を精度良く測定するのが難しくなる可能性がある。この理由は、例えば、上記エンコーダのアキシアル変位に伴って変化する、上記各センサの出力信号同士の間の位相差に基づいて、上記静止部材と上記回転部材との間に作用するアキシアル荷重を算出する場合に、上記複列の転がり軸受部に予圧が付与されていないと、上記アキシアル変位と上記アキシアル荷重との間に安定した相関関係が成立しなくなって、上記アキシアル荷重を精度良く測定できなくなる可能性が高くなる為である。
【0005】
又、特許文献3には、やはり1個の特殊なエンコーダと複数個のセンサとを備えた回転支持装置が記載されている。この特許文献3に記載された従来構造の場合には、上記エンコーダの傾きに伴って変化する、上記各センサの出力信号同士の間の位相差に基づいて、上記回転支持装置を構成する静止部材と回転部材との間に作用する、この静止部材の中心軸に対し径方向にオフセットした位置から入力されたアキシアル荷重(若しくはこのアキシアル荷重に基づいて発生したモーメント)を算出可能としている。但し、この特許文献3に記載された従来構造の場合も、上述した特許文献1〜2に記載された発明と同様に、予圧を付与されていない場合には、アキシアル荷重を精度良く測定できない。更に、上記特許文献3に記載された従来構造の場合には、上記エンコーダの被検出面の直径が小さくなる程、上記位相差の検出誤差に対する、上記アキシアル荷重(若しくはモーメント)の測定精度の悪化率が大きくなる。この為、上記特許文献3に記載された従来構造は、四輪自動車の車輪用の回転支持装置の様に、外径寸法が比較的大きく、組み付けるエンコーダの被検出面の直径も比較的大きい回転支持装置に適用する場合には、上記アキシアル荷重(若しくはモーメント)を精度良く測定できるが、自動二輪車の車輪用の回転支持装置の様に、外径寸法が比較的小さく、組み付けられるエンコーダの被検出面の直径も小さくならざるを得ない回転支持装置に適用する場合には、上記外力を精度良く測定するのが難しくなる可能性がある。
【0006】
[先発明構造に就いて]
上述の様な事情に鑑みて特願2007−116743には、図7〜9に示す様な回転支持装置の状態量測定装置(先発明装置)が開示されている。この図7〜9に示した装置は、自動二輪車の車輪(従動輪である前輪)1をフロントフォーク2、2に対し回転自在に支持する為の回転支持装置に先発明を適用している。これら両フロントフォーク2、2の下端部にその両端部を結合固定した、使用時にも回転しない軸部材3の中間部周囲に、その外周面に上記車輪1を支持固定した状態で、使用時にこの車輪1と共に回転する回転部材であるハブ4を、1対の転がり軸受5、5を介して回転自在に支持している。これら両転がり軸受5、5は、上記軸部材3の外周面と上記ハブ4の内周面との間に存在する円筒状空間の両端寄り部分に設けられており、上記軸部材3に外嵌固定した内輪6、6と、上記ハブ4に内嵌固定した外輪7、7とを、それぞれ複数個の転動体(玉)8、8を介して、互いに同心に且つ相対回転自在に組み合わせて成る。
【0007】
又、上記両内輪6、6の軸方向の位置決めを図る為に、上記軸部材3の中間部に外嵌固定した円管状の間座9と、この軸部材3の両端寄り部分に外嵌固定した1対の抑え環10、10とにより、それぞれ上記両内輪6、6を軸方向両側から挟持している。又、上記両外輪7、7の軸方向の位置決めを図る為に、上記ハブ4の内周面の両端寄り部分に形成した段差面11、11に、上記両外輪7、7の互いに対向する側面を、それぞれ次述するエンコーダ13、13を構成する芯金14、14を介して突き当てている。尚、先発明装置の場合、上記両転がり軸受5、5を構成する各転動体(玉)8、8の予圧に関しては、付与しても、或いは付与しなくても良いとされている。又、上記両抑え環10、10の外周面と上記ハブ4の両端部内周面との間に、それぞれシールリング12、12を設けて、上記円筒状空間の両端開口部を密閉している。
【0008】
又、上記各外輪7、7の中間部乃至一端部(互いに対向する側の端部)に形成した小径段部16、16に、それぞれ上記各エンコーダ13、13を構成する芯金14、14を、上記各外輪7、7と同心に外嵌固定している。又、上記間座9の両端寄り部分に、それぞれ2個ずつのセンサ19A1 、19A2 (19B1 、19B2 )を、断面L字形で全体を円環状に構成した支持部材20、20を介して支持固定している。そして、この状態で、上記両エンコーダ13、13の被検出面に、それぞれ上記2個ずつのセンサ19A1 、19A2 (19B1 、19B2 )の検出部を対向させている。
【0009】
このうちの両エンコーダ13、13はそれぞれ、上記芯金14と、エンコーダ本体15とを備える。このうちの芯金14は、磁性金属板により断面L字形で全体を円環状に構成しており、円筒部17と、この円筒部17の端部から径方向内方に直角に折れ曲がった円輪部18とを備える。又、上記エンコーダ本体15は、永久磁石製で全体を円輪状に構成しており、上記円輪部18の側面(軸方向に関して上記円筒部17と反対側の側面)の径方向内半部に、全周に亙り添着固定している。被検出面である、上記エンコーダ本体15の側面(上記円輪部18と反対側の側面)には、S極とN極とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置している。これらS極とN極との境界は、上記被検出面の幅方向(径方向)に対して平行にしている。即ち、上記S極とN極との境界の位相は、上記被検出面の幅方向に関して変化させていない。又、上記両エンコーダ13、13同士で、上記被検出面に設けるS極とN極との円周方向の配置のピッチを、互いに等しくしている。
【0010】
上述の様に構成する両エンコーダ13、13は、それぞれの芯金14、14の円筒部17、17を、上記各外輪7、7の小径段部16、16に外嵌固定(上記ハブ4の両端寄り部分に内嵌)する事により、上記各外輪7、7に対し支持固定している。これと共に、それぞれの芯金14、14の円輪部18、18の径方向外半部を、上記各外輪7、7の端面と上記ハブ4の内周面の両端寄り部分に形成した段差面11、11との間で挟持する事により、軸方向の位置決めを図っている。尚、図9の(A)は、軸受A(図8の左側の転がり軸受5)側のエンコーダ13の被検出面と、この被検出面にそれぞれの検出部を対向させた2個のセンサ19A1 、19A2 とを、同じく(B)は、軸受B(図8の右側の転がり軸受5)側のエンコーダ13の被検出面と、この被検出面にそれぞれの検出部を対向させた2個のセンサ19B1 、19B2 とを、それぞれ図8の軸方向右側(+y側)から見た投影図である。この図9に示す様に、本例の場合には、上述の様にして両エンコーダ13、13を回転支持装置に組み付けた状態で、これら両エンコーダ13、13の被検出面に存在するS極とN極との円周方向の配置の位相を、これら両エンコーダ13、13同士で互いに一致させている。
【0011】
又、上記各センサ19A1 、19A2 、19B1 、19B2 の検出部にはそれぞれ、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子を組み込んでいる。そして、互いに直交するx軸、y軸、z軸から成る三次元直交座標系のうち、y軸を上記軸部材3の中心軸とし、z軸を上下方向軸とし、x軸を前後方向軸とした場合に、上記軸部材3と上記ハブ4との間に外力が作用していない中立状態で、上記図9に示す様に、上記両エンコーダ13、13の被検出面のうち、x軸上で径方向反対側となる2個所位置(θ=90度、270度の位置)にそれぞれ1個ずつ、上記各センサ19A1 、19A2 、19B1 、19B2 の検出部を対向させている。尚、上記図9のうち、上記被検出面の手前側に各センサ19A1 、19A2 が位置する(A)では、これら各センサ19A1 、19A2 を黒丸で、上記被検出面の奥側に各センサ19B1 、19B2 が位置する(B)では、これら各センサ19B1 、19B2 を白丸で、それぞれ表している。
【0012】
又、前記間座9の軸方向中央部の上面には、演算器21を支持固定している。又、上記軸部材3の上面の軸方向中間部乃至一端部(図8の右端部)には、キー溝状の溝部22を設けている。これと共に、上記間座9の上端部で、上記溝部22の他端部(図8の左端部)と整合する部分に、当該部分を径方向に貫通する通孔23を設けている。そして、上記演算器21に接続した図示しない各種ケーブル{例えば、上記演算器21による、後述する変位、傾き、荷重、モーメント等の演算結果を表す信号や、上記各センサ19A1 、19A2 、19B1 、19B2 のうちの少なくとも1個のセンサのパルス波形信号(スリップ率制御用の信号)を、ABSコントローラに送信する信号ケーブル、並びに、上記演算器21に電力を供給する電源ケーブル等}を、上記通孔23及び上記溝部22を通じて外部に引き出し、車体側の各種装置(例えば、ABSコントローラ、並びに、電源装置等)に接続できる様にしている。
【0013】
上述の様に構成する先発明の回転支持装置の状態量測定装置の場合、軸受A側のエンコーダ13にz軸方向の変位zA が生じる事に伴って、2個のセンサ19A1 、19A2 の出力信号の位相差が変化し、軸受B側のエンコーダ13に同方向の変位zB が生じる事に伴って、2個のセンサ19B1 、19B2 の出力信号の位相差が変化する。これに対し、それぞれのエンコーダ13、13にy軸方向の変位yが生じても、各被検出面と各検出部との間隔が変化するだけで、上記各位相差は変化しない。更に、それぞれのエンコーダ13、13にx軸方向の変位xが生じても、やはり上記各位相差は変化しない。従って、上記先発明の回転支持装置の状態量測定装置の場合には、これら各位相差に基づいて、それぞれのエンコーダ13、13のz軸方向の変位zA 、zB を検出できる為、上記ハブ4の中心(上記両エンコーダ13、13間の幾何中心)Oの変位zと、このハブ4のx軸回りの傾きφx を求める事ができる。
【0014】
具体的には、上記各エンコーダ13、13の被検出面のピッチ円直径(PCD)をdとし、これら各被検出面の全周に配置するS極とN極との対の数(1回転当たりの上記各センサの出力信号のパルス数)をnとし、上記各被検出面同士の間隔(スパン)をLとし(これらd、n、Lの意味に就いては、以降の各例に於いても同様)、上記2個のセンサ19A1 、19A2 の出力信号のパルスエッジ時間差Δt(位相差)をパルス周期Tで除した値Δt/T(位相差比)をεA1-A2 とし、上記2個のセンサ19B1 、19B2 の出力信号の位相差比をεB1-B2 と定義すると、上記ハブ4の中心Oの変位zと、このハブ4の傾きφx とは、それぞれ次の(1)〜(2)式で表される。
【数1】

【数2】

従って、これら(1)〜(2)式に上記両位相差比εA1-A2 、εB1-B2 を代入し、これら(1)〜(2)式を演算器21に計算させる事により、上記ハブ4の中心Oの変位zと、このハブ4の傾きφx とを求める事ができる。
【0015】
又、自動二輪車用の回転支持装置の場合、上記ハブ4の中心Oの変位zと、このハブ4と前記軸部材3との間に作用するz軸方向のラジアル荷重Fzとの間、並びに、このハブ4の傾きφx と、このハブ4と上記軸部材3との間に作用する、車輪を構成するタイヤの接地面から入力されるy軸方向のアキシアル荷重Fy(若しくはこのアキシアル荷重Fyに基づいて発生するx軸回りのモーメントMx)との間には相関関係が成立する。従って、上記演算器21により、上記ハブ4の中心Oの変位zに基づいて、上記ラジアル荷重Fzを算出できる。これと共に、上記ハブ4の傾きφx に基づいて、上記アキシアル荷重Fy(モーメントMx)を算出できる。尚、上記各相関関係は、転がり軸受ユニットの分野で広く知られている弾性接触理論等に基づいて計算により求められる他、実験(出荷時試験)によっても求められる。
【0016】
又、上述の図7〜9に示した例では、1対のエンコーダの被検出面がそれぞれ円輪状であり、各センサの検出部がこれら両被検出面に対し軸方向に対向している構造を採用したが、先発明は、1対のエンコーダの被検出面がそれぞれ円筒状であり、各センサの検出部がこれら両被検出面に対し径方向に対向している構造を採用する事もできる。例えば、何れか一方のエンコーダとセンサとの組み合わせとして、図10に示す様な、エンコーダ13aと6個のセンサ19A1 〜19A6 との組み合わせを採用する事もできる。このうちのエンコーダ13aは、全体を円筒状に構成している。そして、被検出面である外周面にS極とN極とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置すると共に、この被検出面の軸方向両半部を、それぞれ上記S極とN極との境界の位相が軸方向に対して互いに逆方向に互いに同じ角度で漸次変化する、第一、第二特性変化部24、25としている。
【0017】
又、上記各センサ19A1 〜19A6 のうちの1個のセンサ19A1 の検出部を上記第一特性変化部24に、別の1個のセンサ19A2 の検出部を上記第二特性変化部25で円周方向に関する位相が上記センサ19A1 と一致する部分に、残りの各センサ19A3 〜19A6 の検出部を、それぞれ上記第一特性変化部24又は上記第二特性変化部25のうち他のセンサの検出部を対向させる部分に対して円周方向に離隔した部分に、それぞれ対向させている。この様な構造を採用すれば、それぞれが上記6個のセンサ19A1 〜19A6 のうちから選択された2個のセンサの出力信号同士の間に存在する位相差であって、且つ、互いに異なる2個ずつのセンサの組み合わせに関する5つの位相差に基づいて、上記エンコーダ13aの、x軸方向の変位xと、y軸方向の変位yと、z軸方向の変位zと、x軸回りの傾きφx と、z軸回りの傾きφz とを、それぞれ算出できる。
【0018】
又、上述した例では、エンコーダを永久磁石製とすると共に、このエンコーダの被検出面に設ける第一特性部をS極に着磁した部分とし、第二特性部をN極に着磁した部分とする構成を採用している。但し、先発明を実施する場合には、エンコーダを単なる磁性金属板製とすると共に、このエンコーダの被検出面に設ける第一特性部を透孔(又は凹部)とし、第二特性部を柱部(又は凸部)とする構成を採用する事もできる。この様な構成を採用する場合には、各センサ側に永久磁石を組み込む。
【0019】
更に、上述した先発明の構造によれば、各センサ間の位相差に基づいてハブ4の変位や傾きを算出した後、この変位や傾きに基づいて、軸部材3とハブ4との間に作用する外力を算出できる。但し、この外力の測定のみが目的であれば、上記変位や傾きを算出せずに、上記各センサ間の位相差に基づいて直接、上記外力を求める事もできる。この場合には、実際に外力を負荷して行う出荷時試験によって、この外力と上記各センサ間の位相差との関係を調べておき、この関係を利用する。
尚、前記特願2007−116743には、図7〜9に示す様な回転支持装置の他、センサの数、或いはセンサ及びエンコーダの配置を異ならせた構造が記載されている。この点に関しては、上記特願2007−116743の明細書及び図面中に詳しく開示されており、本発明の要旨とも関係しないので、図示並びに説明は省略する。
【0020】
[先発明構造で改良が望まれる点]
上述した先発明の回転支持装置の状態量測定装置では、前記演算器21に接続した各種ケーブルを、前記通孔23及び前記溝部22を通じて外部に引き出し、車体側の各種装置に接続する様にしている。この構成により、上記各ケーブルと、上記軸部材3及び前記転がり軸受5の内輪6とが干渉しない様にしている。この様な先発明に係る構造を組み立てる場合には、前記各センサ19A1 、19B1 及び前記演算器21を外周面に支持固定した間座9を上記ハブ4の内径側に挿入した後、前記両転がり軸受5、5をこのハブ4の軸方向両端部内径側に組み付ける。具体的には、これら両転がり軸受5、5を構成する外輪7、7を、上記ハブ4の軸方向両端部に締り嵌めで内嵌する。そして、最後に、上記間座9及び上記両転がり軸受5、5を構成する内輪6、6の内径側に上記軸部材3を押し込む(締り嵌めで圧入する)。
【0021】
上記先発明に係る回転支持装置の状態量測定装置を上述の様にして組み立てる場合、上記各センサ19A1 、19B1 の出力信号(を演算器21が処理した処理信号)を取り出す為のケーブルを前記溝部22内に配設する作業を行いにくい。実際には、この溝部22を、上記軸部材3の全長に亙り形成して、この軸部材3を上記間座9及び上記両内輪6、6の内径側に押し込む際に、この軸部材3と上記ケーブルとの干渉防止を図る必要がある。この様に、上記溝部22を、本来上記ケーブルの取り出しの為に必要ではない(図8の左半部にまで)形成すれば、上記先発明に係る回転支持装置の状態量測定装置の組立作業を行なえる。又、何らかの理由で上記軸部材3を上記間座9及び上記両内輪6、6の内径側から抜き取る必要を生じた場合にも、上記ケーブルを切らずに抜き取れる。この為、このケーブルや上記各センサ19A1 、19B1 及び上記演算器21を再利用する事が可能になる。但し、上記溝部22を上記軸部材3の全長に亙り形成する事は、この軸部材3の強度を低下させるだけでなく、この溝部22を通じて上記各センサ19A1 、19B1 及び上記演算器21を設置した空間29内への異物進入防止を図る為のシールを施す作業が面倒になる(上記溝部22の両端部をシールする必要がある)。
【0022】
【特許文献1】特開2006−133045号公報
【特許文献2】特開2006−322928号公報
【特許文献3】特開2007−93580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、検出信号取り出しの為の溝部を必要個所のみに形成した軸部材を使用しても、この軸部材を回転部材の内径側に容易に組み込める構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の回転支持装置の状態量測定装置は、回転支持装置と、状態量測定装置とを備える。
このうちの回転支持装置は、外周面に1対の内輪軌道を設け、使用時にも回転しない軸部材と、内周面に1対の外輪軌道を設け、使用時にこの軸部材の周囲で回転する回転部材と、これら両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備える。
又、上記状態量測定装置は、上記回転部材のうち軸方向に離隔した2個所位置に支持されてこの回転部材と共に回転する1対のエンコーダと、使用時にも回転しない部分に支持固定されたセンサ装置と、演算器とを備える。
このうちの1対のエンコーダはそれぞれ、上記回転部材と同心の被検出面を有し、これら両被検出面の特性を円周方向に関して交互に且つ互いに同じピッチで変化させたものである。
又、上記センサ装置は、上記両エンコーダのうちの一方のエンコーダの被検出面に検出部を対向させた1乃至複数個のセンサと、他方のエンコーダの被検出面に検出部を対向させた1乃至複数個のセンサとを備えたもので、これら各センサはそれぞれ、上記両エンコーダの被検出面のうち自身の検出部を対向させた部分の特性変化に対応して出力信号を変化させるものである。
更に、上記演算器は、上記各センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、上記軸部材と上記回転部材との相対変位を求める機能を有するものである。
以上の構成は、前述した先発明に係る回転支持装置の状態量測定装置と同様である。
【0025】
特に、本発明の回転支持装置の状態量測定装置の場合には、上記軸部材は、外周面の軸方向一部に、上記各センサの出力信号を取り出すケーブルを配設する為の溝部を形成した円管状のアウタチューブと、このアウタチューブに内嵌したインナシャフトとから成る。そして、上記回転支持装置、及び、上記状態量測定装置のうちの少なくとも上記両エンコーダ及び上記各センサは、このうちのアウタチューブの外周面と上記回転部材の内周面との間に設けられている。更に、上記インナシャフトの軸方向両端部は上記アウタチューブの軸方向両端部から軸方向外方に突出している。
【0026】
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、互いに直交するx軸、y軸、z軸から成る三次元直交座標系のうちのy軸を軸部材の中心軸に一致させた場合に、前記演算器に、各センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、上記軸部材に対する回転部材の、x軸方向の変位xと、y軸方向の変位yと、z軸方向の変位zと、x軸回りの傾きφx と、z軸回りの傾きφz とのうちの、少なくとも1つの変位若しくは傾きを算出する機能を持たせる。
【0027】
又、上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記1対のエンコーダの被検出面をそれぞれ、次の(1)(2)のうちの何れか一方とする。
(1) 当該被検出面の特性変化の位相が当該被検出面の幅方向に対して変化していない被検出面(前述の図9に記載した構造)。
(2) 当該被検出面の幅方向両半部に、使用状態でセンサの検出部が少なくとも1個ずつ対向する第一、第二両特性変化部を有し、これら両特性変化部のうちの少なくとも一方の特性変化部の特性変化の位相が当該被検出面の幅方向に関し、他方の特性変化部と異なる状態で漸次変化している被検出面(前述の図10に記載した構造)。
【0028】
又、上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した発明の様に、上記1対のエンコーダの被検出面をそれぞれ円輪状とし、上記各センサの検出部をこれら両被検出面に対し軸方向に対向させる。
或いは、請求項5に記載した発明の様に、上記1対のエンコーダの被検出面をそれぞれ円筒状とし、上記各センサの検出部をこれら両被検出面に対し径方向に対向させる。
【0029】
又、上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項6に記載した発明の様に、前記演算器に、自身が算出した、前記軸部材に対する前記回転部材の変位若しくは傾きに基づき、これら軸部材と回転部材との間に作用する外力を算出する機能を持たせる。
更に、上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項7に記載した発明の様に、前記回転支持装置を、自動二輪車の車輪支持用の回転支持装置とする。そして、上記軸部材を、軸部材等、使用状態でこの自動二輪車の車体に支持固定される部材とし、上記回転部材を、ホイールのハブ等、上記車輪を支持固定する部材又はこの車輪の一部を構成する部材とする。
【発明の効果】
【0030】
上述の様に構成する本発明の回転支持装置の状態量測定装置によれば、検出信号取り出しの為の溝部を必要個所のみに形成した軸部材を使用しても、この軸部材を回転部材の内径側に容易に組み込める構造を実現できる。
即ち、軸部材の周囲に回転部材を回転自在に支持する為の構造、及び、これら軸部材と回転部材との間に作用する外力等(状態量)を測定する為の構造を、この軸部材のうちのアウタチューブの外周面と上記回転部材の内周面との間に組み込める。この際、各センサの出力信号を取り出す為等のケーブルを、上記アウタチューブの一部外周面に形成した溝部を通じて容易に取り出せる。この溝部は、このアウタチューブの外周面の軸方向一部にのみ形成すれば済む為、この溝部を設ける事に伴う、このアウタチューブを含む上記軸部材の強度低下は限られたもので済む。又、上記溝部を通じての異物侵入防止の為のシール材塗布等の手間も少なくて済む。
【0031】
又、請求項2に記載した発明の如き構成を採用すれば、自動二輪車の車輪用の回転支持装置の様に、組み付けられるエンコーダの被検出面の直径が小さくならざるを得ない、小径の回転支持装置に適用した場合でも、この回転支持装置を構成する軸部材と回転部材との間に作用する外力を精度良く測定できる。
即ち、本発明の場合には、前述した先発明の場合と同様に、上記軸部材に対し上記回転部材が変位する(1対のエンコーダが互いに異なる状態で変位する)と、これに伴って、これら両エンコーダの被検出面にそれぞれの検出部を対向させた複数個のセンサの出力信号同士の間の位相差が変化する。この為、この位相差に基づいて、上記軸部材に対する上記回転部材の変位や傾きを算出できる。しかも、この軸部材に対するこの回転部材の変位や傾きが、互いに間隔をあけて配置された1対のエンコーダの変位に反映される。この為、これら両エンコーダの被検出面の直径が小さくなる事に伴って生じる、上記各位相差の検出誤差に対する、上記変位や傾きの算出精度の悪化率の増加を十分に抑えられる。従って、自動二輪車の車輪用の回転支持装置の様に、外径寸法が比較的小さく、組み付けられるエンコーダの被検出面の直径も比較的小さくならざるを得ない回転支持装置に適用する場合でも、上記各位相差に基づいて、上記軸部材に対する上記回転部材の変位や傾きを精度良く算出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜6は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、軸部材3aをアウタチューブ30とインナシャフト31とで構成する事により、各センサ19A1 、19B1 の出力信号を取り出す為のケーブル32を配設する作業を容易に行なえる様にする構造にある。上記各センサ19A1 、19B1 の出力信号に基づいて上記軸部材3aとハブ4との間に作用する外力等を求める為の構造及び作用に就いては、前述した先発明に係る構造の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0033】
上記軸部材3aは、それぞれが鉄系合金製であるインナシャフト31とアウタチューブ30とを嵌め合わせ固定して成る。本例の場合、このインナシャフト31に就いても、軽量化の為に円管状としている。上記ハブ4は上記アウタチューブ30の周囲に、1対の転がり軸受5、5により、回転自在に支持している。これら両転がり軸受5、5を構成する内輪6、6は、上記アウタチューブ30の外周面の軸方向両端寄り部分に、締り嵌めで、それぞれ上記軸部材3aに対する軸方向の変位を阻止した状態で外嵌固定している。
【0034】
この為に、上記両内輪6、6の軸方向内端面(軸方向中央寄りの端面)を上記アウタチューブ30の外周面の軸方向両端寄り部分に形成した外向の段差面33、33に突き当てると共に、上記両内輪6、6の軸方向外端面(軸方向両端寄りの端面)を、それぞれ抑え環10a、10bの軸方向内端面により抑え付けている。尚、これら両抑え環10a、10bのうち、一方(図1の左方)の抑え環10aの軸方向外端面は、自動二輪車への組み付け状態で、フロントフォーク2(図7参照)の下端部内側面に突き当てる。更に、上記インナシャフト31の軸方向一端部(図1の左端部)に螺着したボルトの頭部(図示省略)により、上記フロントフォーク2の下端部外側面を抑え付ける。本例の構造を組み立てる際に、上記一方の抑え環10aは、上記アウタチューブ30に対し、軸方向に変位しても、回転する事はない。これに対して、他方(図1の右方)の抑え環10bの軸方向外端面は、上記インナシャフト31の一部で上記アウタチューブ30よりも突出した部分に形成した、別の段差面34に突き当てている。この構成により、上記両内輪6、6を上記軸部材3aの外周面の軸方向に離隔した2個所位置に、それぞれこの軸部材3aに対し軸方向への変位を阻止した状態で固定している。
【0035】
又、前記ハブ4はアルミニウム系合金製で、軸方向両端寄り部分に、それぞれ段差面36、36を形成している。そして、前記両転がり軸受5、5を構成する外輪7、7の軸方向内端面を、上記両段差面36、36に突き当てている。従って、これら両外輪7、7同士の間隔は、これら両段差面36、36同士の間隔により規制される。
上述の様に、前記両内輪6、6を上記軸部材3aの外周面2個所位置に固定すると共に、上記両外輪7、7を上記ハブ4の内周面2個所位置に支持した状態で、前記各玉8、8に、背面組み合わせ型の接触角と共に、必要に応じて予圧を付与している。この様に接触角及び予圧を付与する場合の、基本的な設計手法に就いては、一般的な背面組み合わせ型の複列玉軸受の場合と同様であるから、詳しい説明は省略する。尚、予圧に関しては、付与しなくても良い。
【0036】
更に、前記状態量測定用のセンサ19A1 、19B1 は上記アウタチューブ30の軸方向中間部両端寄り部分の周囲に、センサホルダ35、35を介して設置している。そして、これら各センサ19A1 、19B1 の出力信号を取り出す為のケーブル(ハーネス)32を、上記アウタチューブ30の外周面の軸方向一端寄り部分に形成した、図2〜3に詳示する様な溝部22aと、上記一方の抑え環10aに設けた取り出し孔37とを通じて、外部に取り出している。本例の場合には、上記各センサ19A1 、19B1 の出力信号に基づいて、上記軸部材3aと上記ハブ4との相対変位の方向及び大きさを求め、これら両部材3a、4同士の間に作用する力(外力)の方向及び大きさを求める為の演算器を、フロントフォーク2部分等の車体側に設けている。即ち、上記各センサ19A1 、19B1 を設置した空間29内には、上記演算器は設けていない。
【0037】
上述の様な本例の構造は、次の様にして組み立てる。先ず、図4に示す様に、上記ハブ4の内径側の軸方向中間部に、上記アウタチューブ30を挿入する。このアウタチューブ30の外周面には、予め上記各センサ19A1 、19B1 を、前記センサホルダ35、35を介して装着しておく。又、上記ケーブル32は、上記アウタチューブ30の溝部22a内に配設しておく。
次いで、図4→図5に示す様に、前記両転がり軸受5、5を、上記ハブ4の両端部内周面と上記アウタチューブ30の外周面両端寄り部分との間に組み付ける。この為に、上記両転がり軸受5、5を構成する内輪6、6を上記アウタチューブ30に、それぞれの軸方向内端面が前記両段差面33、33に突き当たるまで締り嵌めで外嵌すると共に、同じく外輪7、7を上記ハブ4に、それぞれの軸方向内端面が前記両段差面36、36に突き当たるまで、締り嵌めで内嵌する。
【0038】
次いで、図5→図6に示す様に、上記ハブ4の両端部内周面と上記アウタチューブ30の両端部外周面との間に、前記両抑え環10a、10bを、シールリング12、12と共に組み付ける。この際、上記ケーブル32を、一方の抑え環10aに形成した上記取り出し孔37に挿通しておく。そして、この取り出し孔37と上記溝部22aとの円周方向に関する位相を合わせた状態で、上記抑え環10aを上記アウタチューブ30に外嵌する。同時に、上記両シールリング12、12を構成する芯金を、上記ハブ4の両端部内周面に、締り嵌めで内嵌固定する。
そして最後に、図6→図1に示す様に、上記アウタチューブ30内に前記インナシャフト31を、軽い締り嵌め等により、がたつきなく挿通して、本例の回転支持装置の状態量測定装置とする。この状態で、上記インナシャフト31の軸方向両端部は、上記アウタチューブ30の軸方向両端部から軸方向外方に突出した状態となる。
【0039】
自動二輪車への組み付け状態では、上記インナシャフト31の軸方向両端部を、1対のフロントフォーク2、2(図7参照)の下端部に設けた取付孔に内嵌する。又、このインナシャフト31の軸方向一端部に形成したねじ孔部38に螺着したボルトの頭部と上記一方の抑え環10aの外端面との間で、一方のフロントフォーク2の下端部を両側から挟持して、上記インナシャフト31を含む、前記軸部材3aを、上記両フロントフォーク2、2の下端部同士の間に掛け渡した状態で支持固定する。分解作業は、上述した組立作業とは逆の手順で行なう。
前述の様に構成し、上述の様に組み立てる本例の回転支持装置の状態量測定装置は、前述した先発明に係る回転支持装置の状態量測定装置と同様にして、上記軸部材3aと上記ハブ4との相対変位の方向及び大きさを求め、これら両部材3a、4同士の間に作用する力(外力)の方向及び大きさを求める事ができる。
【0040】
特に、本例の回転支持装置の状態量測定装置の場合には、上記軸部材3aの周囲に上記ハブ4を回転自在に支持する為の構造、及び、これら軸部材3aとハブ4との間に作用する外力等(状態量)を測定する為の構造を、上記アウタチューブ30の外周面と上記ハブ4の内周面との間に組み込んでいる。そして、前記各センサ19A1 、19B1 の出力信号を取り出す為等のケーブル32を、上記アウタチューブ30の一部外周面に形成した溝部22aを通じて取り出している。図4〜6を使用した組立手順の説明から明らかな通り、組立作業(及び分解作業)時に、上記ケーブル32を損傷する事はない。又、上記溝部22aは、上記アウタチューブ30の外周面の軸方向一部にのみ形成すれば済む為、この溝部22aを設ける事に伴う、このアウタチューブ30を含む上記軸部材3aの強度低下は限られたもので済む。又、上記溝部22aを通じての異物侵入防止の為のシール材塗布も1個所行うのみで良く、この塗布の為等の手間も少なくて済む。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、自動二輪車の車輪用の回転支持装置に限らず、2列の転がり軸受部を有する各種の回転支持装置に適用可能である。例えば、工作機械用のスピンドル軸をハウジングの内側に回転自在に支持する回転支持装置にも適用可能である。工作機械では、熱膨張による各構成部材の寸法変化が加工精度に影響し、又、被加工物への押し当て力も加工精度に影響する。この為、スピンドル軸の変位及び傾きや、スピンドル軸に作用する外力を測定し、これらの測定値を工作機械の制御器にフィードバックする事で、高精度加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、組立完了後の状態で示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】アウタチューブの斜視図。
【図4】ハブの内径側に軸部材を組み付ける為の工程の初期段階を示す断面図。
【図5】同じく中盤の段階を示す断面図。
【図6】同じく後段階を示す断面図。
【図7】先発明の実施の形態の1例を、自動二輪車に組み付けた状態で示す略断面図。
【図8】同じく断面図。
【図9】1対のエンコーダ本体と各センサとを、軸方向に関して同じ側から見た投影図。
【図10】先発明を実施する場合に使用できる、エンコーダとセンサとの組み合わせの他の1例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0043】
1 車輪
2 フロントフォーク
3、3a 軸部材
4 ハブ
5 転がり軸受
6 内輪
7 外輪
8 玉
9 間座
10、10a、10b 抑え環
11 段差面
12 シールリング
13、13a エンコーダ
14 芯金
15 エンコーダ本体
16 小径段部
17 円筒部
18 円輪部
19A1 〜19A6 、19B1 〜19B3 センサ
20 支持部材
21 演算器
22、22a 溝部
23 通孔
24 第一特性変化部
25 第二特性変化部
29 空間
30 アウタチューブ
31 インナシャフト
32 ケーブル
33 段差面
34 段差面
35 センサホルダ
36 段差面
37 取り出し孔
38 ねじ孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支持装置と状態量測定装置とを備え、
このうちの回転支持装置は、外周面に1対の内輪軌道を設け、使用時にも回転しない軸部材と、内周面に1対の外輪軌道を設け、使用時にこの軸部材の周囲で回転する回転部材と、これら両外輪軌道と上記両内輪軌道との間に、両列毎にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備えたものであり、
上記状態量測定装置は、それぞれが上記回転部材のうちの上記両列の転動体の間部分で軸方向に離隔した2個所位置に支持されて、この回転部材と共に回転する1対のエンコーダと、上記軸部材のうちで上記両列の転動体の間部分に支持されたセンサ装置と、演算器とを備え、
このうちの1対のエンコーダはそれぞれ、上記回転部材と同心の被検出面を有し、これら両被検出面の特性を円周方向に関して交互に且つ互いに同じピッチで変化させたものであり、
上記センサ装置は、上記両エンコーダのうちの一方のエンコーダの被検出面に検出部を対向させた1乃至複数個のセンサと、他方のエンコーダの被検出面に検出部を対向させた1乃至複数個のセンサとを備えたもので、これら各センサはそれぞれ、上記両エンコーダの被検出面のうち自身の検出部を対向させた部分の特性変化に対応して出力信号を変化させるものであり、
上記演算器は、上記各センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、上記軸部材と上記回転部材との相対変位を求める機能を有するものである回転支持装置の状態量測定装置であって、
上記軸部材は、外周面の軸方向一部に、上記各センサの出力信号を取り出すケーブルを配設する為の溝部を形成した円管状のアウタチューブと、このアウタチューブに内嵌したインナシャフトとから成り、上記回転支持装置、及び、上記状態量測定装置のうちの少なくとも上記両エンコーダ及び上記各センサは、このうちのアウタチューブの外周面と上記回転部材の内周面との間に設けられており、上記インナシャフトの軸方向両端部は上記アウタチューブの軸方向両端部から軸方向外方に突出している 回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項2】
互いに直交するx軸、y軸、z軸から成る三次元直交座標系のうちのy軸を軸部材の中心軸に一致させた場合に、演算器は、各センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、上記軸部材に対する回転部材の、x軸方向の変位xと、y軸方向の変位yと、z軸方向の変位zと、x軸回りの傾きφx と、z軸回りの傾きφz とのうちの、少なくとも1つの変位若しくは傾きを算出する機能を有するものである、
請求項1に記載した回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項3】
1対のエンコーダの被検出面がそれぞれ、当該被検出面の特性変化の位相が当該被検出面の幅方向に対して変化していない被検出面と、当該被検出面の幅方向両半部に、使用状態でセンサの検出部が少なくとも1個ずつ対向する第一、第二両特性変化部を有し、これら両特性変化部のうちの少なくとも一方の特性変化部の特性変化の位相が当該被検出面の幅方向に関し、他方の特性変化部と異なる状態で漸次変化している被検出面とのうちの、何れか一方である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項4】
1対のエンコーダの被検出面がそれぞれ円輪状であり、各センサの検出部がこれら両被検出面に対し軸方向に対向している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項5】
1対のエンコーダの被検出面がそれぞれ円筒状であり、各センサの検出部がこれら両被検出面に対し径方向に対向している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項6】
演算器が、自身が算出した軸部材に対する回転部材の変位若しくは傾きに基づき、これら軸部材と回転部材との間に作用する外力を算出する機能を有する、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した回転支持装置の状態量測定装置。
【請求項7】
回転支持装置が、自動二輪車の車輪用の回転支持装置であり、使用状態で、軸部材が自動二輪車の車体に支持固定される部材となり、回転部材が車輪を支持固定する部材又はこの車輪の一部を構成する部材となる、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した回転支持装置の状態量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−103628(P2009−103628A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277148(P2007−277148)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】