説明

回転機械

【課題】運転範囲内における動翼の振動応答を低減できる回転機械を提供すること。
【解決手段】この回転機械1は、ロータ5を回転させて動力を発生する回転機械である。この回転機械1では、ロータ5の回転数に応じて共振が発生する領域を共振回転数領域と呼ぶときに、この共振回転数領域にてロータ5の回転数を増減させる回転数増減手段7が設けられている。例えば、この回転数増減手段7が空気量制御あるいは燃料量制御によりロータ5の回転数を制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転機械に関し、さらに詳しくは、運転範囲内における動翼の振動応答を低減できる回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に可変速の回転機械の動翼では、運転範囲内にてノズルウェークなどの励振力により共振が発生する。かかる共振を回避するために、例えば、動翼の形状を変更する等のチューニングが行われている。
【0003】
しかしながら、広い運転範囲(使用回転数範囲)を有する回転機械では、すべての共振モードに対するチューニングが困難であるため、運転範囲内における共振の回避が困難な場合がある。このため、共振応答が大きい場合には、共振回転数付近にてロータの回転数の保持を禁止するなどの運転制限(保持禁止領域)が設けられている。
【0004】
なお、回転数を制御できる従来の回転機械として、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3191601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、運転範囲内における動翼の振動応答を低減できる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかる回転機械は、ロータを回転させて動力を発生する回転機械であって、前記ロータの回転数に応じて共振が発生する領域を共振回転数領域と呼ぶときに、前記共振回転数領域にて前記ロータの回転数を増減させる回転数増減手段を備えることを特徴とする。
【0008】
この回転機械では、共振回転数領域にて回転数増減手段がロータの回転数を増減させることにより、励振周波数が変動して共振回転数での保持が回避される。これにより、振動応答が低減される利点がある。
【0009】
また、この発明にかかる回転機械は、前記ロータの回転数を一定の目標値に保持する保持指令があり且つ前記目標値が前記共振回転数領域にあるときに、前記回転数増減手段が前記ロータの回転数を増減させる。
【0010】
保持運転の目標値が共振回転数領域にあるときには、共振が発生し易い。したがって、このときに回転数増減手段がロータの回転数を増減させることにより、動翼の振動応答が効果的に低減される利点がある。
【0011】
また、この発明にかかる回転機械は、前記増減の増減幅が前記ロータの回転数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnにおいて0.95≦ω/ωn≦1.05の関係を有する。
【0012】
この回転機械では、増減の増減幅と振動数比ω/ωnとの関係が適正化されるので、動翼の振動応答が効果的に低減される利点がある。
【0013】
また、この発明にかかる回転機械は、前記回転数増減手段が空気量制御あるいは燃料量制御により前記ロータの回転数を制御する。
【0014】
この回転機械では、既存の構成(例えば、回転数センサ、空気量調整バルブ、燃料量調整バルブなど)を用いて回転数増減手段を構成できる利点がある。
【0015】
また、この発明にかかる回転機械は、前記回転数増減手段が前記ロータに連結されたねじり加振器により構成される。
【0016】
この回転機械では、ねじり加振器による機械的構成により、確実にロータの回転数を制御できる利点がある。
【0017】
また、この発明にかかる回転機械は、前記ロータの出力側に前記増減による前記ロータのねじり振動を減衰させる振動減衰手段が設けられる。
【0018】
この回転機械では、回転数増減手段がロータの回転数を増減させたときに、この増減による前記ロータのねじり振動が振動減衰手段にて減衰されて出力される。これにより、ロータの回転数の増減による出力側への影響が低減される利点がある。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかる回転機械では、共振回転数領域にて回転数増減手段がロータの回転数を増減させることにより、励振周波数が変動して共振回転数での保持が回避される。これにより、振動応答が低減される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、この発明の実施の形態にかかる回転機械を示す構成図である。
【図2】図2は、図1に記載した回転機械の作用を示す説明図である。
【図3】図3は、図1に記載した回転機械の作用を示す説明図である。
【図4】図4は、図1に記載した回転機械の作用を示す説明図である。
【図5】図5は、図1に記載した回転機械の変形例1を示す構成図である。
【図6】図6は、図1に記載した回転機械の変形例2を示す構成図である。
【図7】図7は、図1に記載した回転機械の変形例2を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0022】
[回転機械]
この回転機械1は、ロータを回転させて動力を発生する回転機械に適用され、特に、運転時にてロータの回転数を変速させて使用される回転機械(可変速の回転機械)に適用される。かかる可変速の回転機械には、例えば、航空機用エンジン、ヘリコプター用エンジン、機械駆動用タービンなどがある。
【0023】
例えば、この実施の形態にかかる回転機械1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4と、ロータ5とを有する(図1参照)。圧縮機2は、空気取込口から取り込まれた空気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器3は、この圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。タービン4は、この燃焼ガスの熱エネルギーをロータ5の回転エネルギーに変換して駆動力を発生させる。そして、この駆動力がロータ5に連結された負荷(例えば、発電機や推進装置など)に伝達される。
【0024】
[回転数増減手段]
一般に、回転機械では、ロータの回転数に応じて動翼の共振が発生する。この共振が発生する運転領域(共振点を含む運転領域)を共振回転数領域と呼ぶ。ただし、共振が発生する回転数は、回転機械の運転条件や経年劣化などにより変化する。そこで、この実施の形態では、共振が発生すると推定される運転領域を共振回転数領域(推定共振回転数領域)として用いる。なお、共振点は、ロータの回転数と振動数との関係図(キャンベル線図)にて、動翼の固有振動数と励振ハーモニックとの交点として取得される(図4参照)。したがって、この共振点を含む回転数領域が共振回転数領域(推定共振回転数領域)となる。
【0025】
ここで、可変速の回転機械では、運転時にて変速制御が行われてロータの回転数が変化する。このため、回転機械の運転範囲内に共振回転数領域(共振点)が存在し得る。この共振回転数領域にてロータの回転数を保持する運転(保持運転)が行われると、共振が発生し、過大な振動応答が発生するおそれがある。
【0026】
そこで、この回転機械1では、かかる動翼の振動応答を低減するために、回転数増減手段7が設けられる(図1参照)。この回転数増減手段7は、共振回転数領域(推定共振回転数領域)にてロータ5の回転数を増減(変動)させる手段である。
【0027】
例えば、この実施の形態では、回転数増減手段7が、制御部71と、回転数センサ72と、空気量調整バルブ73と、燃料量調整バルブ74とにより構成されている(図1参照)。制御部71は、例えば、ECU(electronic control unit)により構成される。回転数センサ72は、ロータ5の回転数を検出するセンサであり、例えば、エンコーダにより構成される。空気量調整バルブ73は、圧縮機2への空気の供給量を調整するバルブである。燃料量調整バルブ74は、燃焼器3への燃料の供給量を調整するバルブである。この回転数増減手段7では、制御部71が回転数センサ72の出力値に基づいて空気量調整バルブ73あるいは燃料量調整バルブ74の開度を制御する。これにより、ロータ5の回転数が制御されて、後述する保持運転および準保持運転が行われる。
【0028】
この回転機械1では、例えば、定速運転時にて、ロータ5の回転数を一定の目標値に保持する保持指令が行われると、この回転数の目標値が共振回転数領域内にあるか否かの判断が行われる。そして、回転数の目標値が共振回転数領域内にない場合には、ロータ5の回転数を一定の目標値に保持する運転(保持運転)が行われる(図2参照)。
【0029】
一方、ロータ5の回転数の目標値が共振回転数領域内にある場合には、ロータ5の回転数を一定の目標値を基準として所定の増減幅にて増減させる運転(準保持運転)が行われる。すると、回転数の増減により励振周波数が変動するので、共振回転数での保持が回避される。これにより、振動応答が低減される。
【0030】
なお、上記の準保持運転は、ロータ5の回転数が共振回転数領域をゆっくり通過するとき(ロータ5の回転数の変化率が所定値よりも小さいとき)に行われても良い(図示省略)。例えば、ロータ5の回転数をゆっくりと上昇あるいは下降させる運転時にて、ロータ5の回転数が共振回転数領域を通過するときに、回転数増減手段7がロータ5の回転数を所定の増減幅にて増減させる。これにより、過大な振動応答が効果的に低減される。
【0031】
また、ロータ5の回転数の増減とは、ロータ5の回転数の時間変化における増減をいうものとする(図2参照)。例えば、この実施の形態では、共振回転数領域内にて保持運転が行われるときに、ロータ5の回転数が時間変化に伴ってジグザグ状あるいは波状に増減(変動)する。また、このとき、回転数の増減幅および周期が一定に設定されている。
【0032】
また、ロータ5の回転数の増減の増減幅は、ロータ5の回転数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnにおいて0.95≦ω/ωn≦1.05の関係を有することが好ましく、0.985≦ω/ωn≦1.015の関係を有することがより好ましい(図3参照)。
【0033】
また、ロータ5の回転数の増減の周波数は、一般に高いほど共振成長率が小さくなるため好ましい。ただし、増減の周波数を高くするには、大きなエネルギーが必要となるため、これらを考慮しつつ増減の周波数が適宜設定されることが好ましい。
【0034】
また、共振回転数領域内にて保持運転が行われない場合、例えば、共振回転数領域外にて保持運転が行われる場合、変速運転時にて単に共振回転数領域を通過する場合などには、ロータ5の回転数の増減が禁止されて、通常運転が行われる(図2参照)。ただし、保持運転が行われない場合であっても、ロータ5の回転数が共振回転数領域内に所定時間以上滞在する場合には、共振が発生するおそれが強い。したがって、かかる場合には、保持運転が行われる場合と同様に、ロータ5の回転数を増減させる制御が行われることが好ましい。これにより、共振回転数領域内における過大な振動応答が効果的に低減される。
【0035】
[効果]
以上説明したように、この回転機械1では、共振回転数領域にてロータ5の回転数を増減させる回転数増減手段7を備える(図1および図2参照)。かかる構成では、共振回転数領域にて回転数増減手段7がロータ5の回転数を増減させることにより、励振周波数が変動して共振回転数での保持が回避される。これにより、振動応答が低減される利点がある。特に、共振回転数領域にて保持運転(準保持運転)を行い得るので、製品の信頼性が向上する利点があり、また、製品の設計裕度が拡大される利点がある。
【0036】
また、この回転機械1では、ロータ5の回転数を所定の目標値に保持する保持運転が行われると共に目標値が共振回転数領域にあるときに、回転数増減手段7がロータ5の回転数を増減させる。保持運転の目標値が共振回転数領域にあるときには、共振が発生し易い。したがって、このときに回転数増減手段7がロータ5の回転数を増減させることにより、過大な振動応答が効果的に低減される利点がある。
【0037】
また、この回転機械1では、増減の増減幅がロータ5の回転数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnにおいて0.95≦ω/ωn≦1.05の関係に設定される。かかる構成では、増減の増減幅と振動数比ω/ωnとの関係が適正化されるので、振動応答が十分に低減される。これにより、共振の発生が効果的に抑制される利点がある。
【0038】
[変形例1]
なお、この回転機械1では、回転数増減手段7が空気量制御あるいは燃料量制御によりロータ5の回転数を制御する(図1参照)。例えば、この実施の形態にかかる回転機械1では、回転数増減手段7の制御部71が回転数センサ72の出力値に基づき空気量調整バルブ73および燃料量調整バルブ74の開度を制御することにより、ロータ5の回転数が制御される。かかる構成では、既存の構成(回転数センサ72、空気量調整バルブ73および燃料量調整バルブ74)を用いて回転数増減手段7を構成できる利点がある。
【0039】
しかし、これに限らず、回転数増減手段7がロータ5に連結されたねじり加振器75により構成されても良い(図5参照)。かかる構成では、ねじり加振器75による機械的構成により、確実にロータ5の回転数を制御できる利点がある。特に、かかる構成は、燃料制御によりロータ5の回転数を制御する構成(図1参照)と比較して、ロータ5の慣性が大きいときにもロータ5の回転数を確実に制御できる点で好ましい。
【0040】
例えば、この実施の形態の変形例1では、油圧制御式あるいは電磁制御式のねじり加振器75がロータ5に連結される(図5参照)。そして、共振回転数領域内にて保持運転が行われるときに、制御部71が回転数センサ72の出力値に基づいてねじり加振器75を駆動制御する。これにより、ロータ5の回転数が制御されて、回転数の増減が形成される(図2参照)。
【0041】
[変形例2]
また、この回転機械1では、ロータ5の出力側にロータ5の回転数の増減によるロータ5のねじり振動を減衰させる振動減衰手段8が設けられることが好ましい(図6参照)。かかる構成では、回転数増減手段7がロータ5の回転数を増減させたときに、この増減によるロータ5のねじり振動が振動減衰手段8にて減衰されて出力される。これにより、ロータ5の回転数の増減による出力側への影響が低減される利点がある。なお、振動減衰手段8は、例えば、ダンパ継手、流体継手などにより構成され得る。
【0042】
例えば、この変形例2の回転機械1では、タービン4のロータ5と負荷6の入力軸との連結部に振動減衰手段8が設置される(図6参照)。この振動減衰手段8は、ダンパ継手から成り、ロータ5の回転数の増減を減衰して負荷6の入力軸61に伝達する。これにより、ロータ5の回転数の増減による出力側への影響が低減される。
【0043】
また、上記の構成では、さらに、振動減衰手段8を補助する手段として、ロータ5の出力側にフライホイール9が設置されても良い(図7参照)。例えば、図7に示す構成では、負荷6の入力軸61にフライホイールが取り付けられる。これにより、入力軸61の慣性が増加して、ロータ5の回転数の増減が効果的に減衰される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、この発明にかかる回転機械は、運転範囲内における動翼の振動応答を低減できる点で有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 回転機械
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 ロータ
6 負荷
61 入力軸
7 回転数増減手段
71 制御部
72 回転数センサ
73 空気量調整バルブ
74 燃料量調整バルブ
75 ねじり加振器
8 振動減衰手段
9 フライホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを回転させて動力を発生する回転機械であって、
前記ロータの回転数に応じて共振が発生する領域を共振回転数領域と呼ぶときに、
前記共振回転数領域にて前記ロータの回転数を増減させる回転数増減手段を備えることを特徴とする回転機械。
【請求項2】
前記ロータの回転数を一定の目標値に保持する保持指令があり且つ前記目標値が前記共振回転数領域にあるときに、前記回転数増減手段が前記ロータの回転数を増減させる請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記増減の増減幅が前記ロータの回転数ωと固有増減数ωnとの比ω/ωnにおいて0.95≦ω/ωn≦1.05の関係を有する請求項1または2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記回転数増減手段が空気量制御あるいは燃料量制御により前記ロータの回転数を制御する請求項1〜3のいずれか一つに記載の回転機械。
【請求項5】
前記回転数増減手段が前記ロータに連結されたねじり加振器により構成される請求項1〜3のいずれか一つに記載の回転機械。
【請求項6】
前記ロータの出力側に前記増減による前記ロータのねじり振動を減衰させる振動減衰手段が設けられる請求項1〜5のいずれか一つに記載の回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275973(P2010−275973A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131300(P2009−131300)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】