説明

回転角およびトルクのセンサ

【解決手段】 回転角およびトルクのセンサは、シャフト部分(1、2)と共に回転しないように接続されている2つの歯車(4、5)を備え、これら2つの歯車は、歯車(6、7)と噛合する。一方の歯車(7)には、単極磁石または多極磁石(12、13)が取着されている。他方の歯車(6)には、極の数に合った複数の磁束誘導部(17、18)が取着されており、L字形状を持つ。磁束誘導部(17、18)の一方の足部は、多極磁石(12、13)の方向を向き、他方の足部は、歯車(6)に平行に延伸し、一方の足部は歯車(6)の一方の側にあり、他方の足部は歯車(6)の他方の側にあり、これらの足部の間には、歯車(6)内に配されている第2のセンサ(16)が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のように回転角およびトルクのセンサに関する。当該センサは、独国特許文献DE198 34 322A1から公知である。
【0002】
本発明は、自動車のステアリングに適用するのが好ましい。自動車のステアリングでは、ステアリング歯車軸の回転角を測定するのみではなく、トルクとして作用してステアリング歯車軸に加えられる力も測定する。このトルクは、ステアリング歯車軸の2つの部分の間に配置されているトーションバー(ねじれ棒)のトルク角として測定され得る。これによって、トーションバーの他のパラメータが求められる。
【背景技術】
【0003】
上述した独国特許文献DE198 34 322A1では、回転可能なシャフトのトルクおよび回転角を同時に測定する回転角およびトルクのセンサが開示されている。2つのシャフト部分には、第1および第2の歯車が設けられており、対応するシャフト部分と共に回転する。第1の歯車は、磁石を担持する第3の歯車と噛合する。この磁石には第1の磁気センサが対応付けられている。他方のシャフト部分の第2の歯車は、第4および第5の歯車と噛合する。第4および第5の歯車についても、磁石および磁気センサが対応付けられている。第4および第5の歯車の歯の数には、少なくとも1の差があるので、回転角が360度より大きい場合でも、シャフト部分の絶対回転角を公知の方法で決定することが可能である。第3および第4の歯車の歯の数は、第1および第2の歯車と同様に、同じであるので、ねじれがかからない回転の場合、第3および第4の歯車は同期して回転する。しかし、ねじれが発生すれば、第1および第2のシャフト部分の間で、ねじれ角またはトルク角が発生し、第3および第4の歯車に対応付けられている磁気センサを評価することによって決まる第3および第4の歯車の回転状態が異なってしまい、これら2つの磁気センサの出力信号から差分信号が形成される。要約すると、公知の回転角およびトーションのセンサは、5個の歯車、3個の磁石、および3個の磁気センサを備える。
【0004】
回転角および/またはトルクを測定する同様のセンサは、欧州特許文献EP1 426 750 A1および米国特許第7,258,027 B2からも公知である。両特許文献でも、歯車、磁石および磁気センサが用いられるとしてよい。
【0005】
上述したセンサでは、磁石の相互スクリーニングが問題となる。これらの磁石の磁界は、対応付けられている磁気センサへのみ影響を与え、当該磁気センサに隣接する磁石には影響を与えないようになっている。このため、このようなセンサを小型化する際に問題が発生し得る。また、磁石の材料コストも重要な役割を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明は、構成が簡略化され、干渉が抑制された回転角およびトルクのセンサであって、より高いコスト効率で製造可能な回転角およびトルクのセンサを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。本発明の有益な実施形態およびその他の形態は、従属項から理解されたい。
【0008】
先行技術と同様、本発明に係る回転角およびトルクのセンサは、5個の歯車および3個のセンサを利用するが、磁石については利用するのは2個のみである。2個の磁気センサは、磁石のうち1つに対応付けられている。第1の磁気センサは、対応する磁石に直接割り当てられており、角度状態を検出する。本発明では、少なくとも2つの扇形磁気誘導部を提供する。これらは互いに間隔を空けて配されており、第1の磁石に割り当てられている。これらの扇形磁気誘導部の磁界は、対応する数の磁束誘導部によって第2の磁気センサに誘導される。第2の磁気センサは、磁界強度を測定し、ホールセンサであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下では、図面を参照しつつ実施形態例に基づき本発明をより詳細に説明する。図面は以下の通りである。
【図1】本発明に係る回転角およびトルクのセンサを、上方から斜視した場合の概略斜視図である。
【図2】図1の回転角およびトルクのセンサを、下方から斜視した場合の概略斜視図である。
【図3】図1および図2に示す回転角およびトルクのセンサを示す断面図である。
【図4】図3のラインA−Aに沿って切断した場合の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態例を示す図4と同様の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態例を示す図1と同様の図である。
【図7】図6と同様の図であるが、磁束誘導部の配置を分かりやすく示すべく、歯車を抜いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図3に示すセンサは、例えば、自動車のステアリング機構のステアリング歯車軸である第1のシャフト部分1、および、例えば、自動車ステアリングのいわゆるピニオンシャフトである第2のシャフト部分2を備えるシャフトに取着されている。これら2つのシャフト部分1および2は、ねじれロッド3によって互いに接続されている。
【0011】
歯の数がN1である第1の歯車4は、第1のシャフト部分1と共に回転しないように取着されている。歯の数が同じくN1である第2の歯車5は、第2のシャフト部分2に接続されている。第1の歯車4は、第3の歯車6と噛合する。第3の歯車6の歯の数N2は、歯車比率を考慮して、歯の数N1よりも大幅に少ない。第2の歯車5は、第4の歯車7と噛合する。第4の歯車7は、第3の歯車6と同じ歯車モジュールを持つ。また、第2の歯車5は、第5の歯車8と噛合する。第5の歯車8の歯の数N3は同様に、第2の歯車5の歯の数N1よりもかなり少ないが、歯の数N2とは異なる数であり、その差分は少なくとも1であることが好ましい。
【0012】
第4の歯車7には、第1の磁石9が割り当てられている。第1の磁石9は、歯車7と共に回転し、直径方向に磁気を帯びる。
【0013】
第5の歯車8には、第2の磁石10が割り当てられている。第2の磁石10は、第5の歯車8と共に回転し、同様に直径方向に磁気を帯びる。
【0014】
第1の磁石9には、第1のセンサ11が割り当てられている。第1のセンサ11は、長尺状導体プレート24上に固定され、第1の磁石9の回転状態を検出する。第1のセンサ11は、例えば、AMRセンサとしてよい。
【0015】
第1のセンサ11は、第4の歯車7のうち第2のシャフト部分2の側に配置されている。第4の歯車7のうち第1のシャフト部分1の側には、少なくとも2つの扇形磁気誘導部12および13が配設されており、第1の磁石9と磁気結合される。扇形磁気誘導部同士の間には、空隙を形成する間隔14が設けられている。2つの磁気誘導部12および13は、強磁性材料で形成され、第4の歯車7と共に回転しないように接続され、平坦なディスク形状を持つ。磁気誘導部12は、第1の磁石9によって第1の磁気方向(例えば、南向き)に磁気を帯び、磁気誘導部13は、反対方向(例えば、北向き)に磁気を帯びる。このため、2つの磁気誘導部12および13の間の間隔14は、空隙を形成している。
【0016】
第4の歯車7が非磁性材料で形成されることは理解できるであろう。
【0017】
第3の歯車6および第4の歯車7は、シャフトの回転軸に平行な共通回転軸15を中心に回転する。
【0018】
第2の磁気センサ16は、第3の歯車6の中央の開口20の内部に配設されている。また、複数の磁束誘導部17および18が、扇形磁気誘導部12および13と同数設けられ、第3の歯車6に取着されている。図3の断面図において、磁束誘導部17および18は、実質的にL字形状を持ち、各磁束誘導部の一方の足部が扇形磁気誘導部12および13の方向に突出しており、わずかに間隔19を空けて終端している。この間隔19は空隙を形成している。磁束誘導部17および18の他方の足部は、第3の歯車6の平面に平行に延伸し、これらの水平足部のうち一方は、第3の歯車6の一方の側で延伸し、これらの水平足部のうち他方は、第3の歯車6の他方の側で延伸する。このように、第2のセンサ16は、磁束誘導部17および18の2つの水平足部の間に配置されており、第3の歯車6には第2のセンサ16のために凹部20が形成されている。第2の磁気センサ16は、固定長尺状導体プレート22に取着されているピン21によって保持されている。ピン21は、磁束誘導部17の水平足部内の開口23を貫通して突出しており、当該ピンを介して第2の磁気センサ16には導体が誘導される。
【0019】
ピン21に代えて、十分な機械的強度があれば、導体のみを用いて第2の磁気センサ16を支持することもできる。
【0020】
一方に扇形磁気誘導部12および13、そして、他方に磁束誘導部17および18が配置されているので、磁気誘導部12および13に向いている磁束誘導部17および18の足部は、ねじれ角「0」と定義される中立状態であり、2つの扇形磁気誘導部12および13の間の間隔14の真上に位置している。このため、扇形磁気誘導部12および13の両極の間の磁気回路は、上記の磁束誘導部17および18の足部および第2のセンサ16が設けられている間隙を通るので、磁束誘導部17および18の水平足部の間には磁界が発生せず、第2のセンサ16は出力信号を生成しない。2つのシャフト部分1および2の間にねじれ角が発生すれば、第3および第4の歯車6および7が互いに異なる量にねじれ、扇形磁気誘導部12および13に向けて突出している磁束誘導部17および18の足部は、間隔14が形成している空隙からはずれ、磁束誘導部17および18を介して、磁界が第2のセンサ16へと向けられ、第2のセンサ16は磁界の強度に比例した出力信号を出力する。これが、測定対象のねじれ角の測定値となる。
【0021】
第2の磁石10に割り当てられている第3のセンサ25は、第1のセンサ11と同様の構成を持ち、固定長尺状導体プレート24上に取着され、第1のセンサ11および第3のセンサ25は、共通長尺状導体プレート24に取着可能である。第4および第5の歯車7および8は歯の数が異なる(N2およびN3)ので、公知の方法で、第2のシャフト部分2の回転角の検出可能な角度範囲は360度を超える。尚、第4および第5の歯車7および8の歯の数の差は、少なくとも1であることが好ましい。
【0022】
ねじれ角に関する第2のセンサ16の感度は、歯車のN1:N2の比率に応じて略決まる。歯車比率が大きくなるほど、ねじれ角が発生している場合には2つの歯車6および7の相対的なねじれが大きくなる。
【0023】
しかし、歯車比率が高くなると、直径が非常に小さくなってしまうので、第3および第4の歯車6および7の歯の数が少なくなってしまう。第3および第4の歯車6および7は実際にはプラスチック製であるので、歯の数は所望通りに少なくすることができない。これは、シャフト部分1および2が高速回転する場合、摩擦によって高温が発生するので、歯車の摩耗が大きくなるためである。
【0024】
しかし、ねじれ角の測定感度および分解能を高めるべく、図5から図7に示す本発明の別の実施形態は、軸方向に磁化された多極磁石およびより多数の磁束誘導部を利用する準備を整えておく。
【0025】
図5に示す実施形態例によると、第4の歯車7上には、6個の扇形磁気部分26、27、28、29、30、31を持つ多極磁石が配されている。これらの扇形磁気部分は、交互に北向きおよび南向きに磁化されている。扇形磁気部分の数に対応して、同数の磁束誘導部32、33、34、35、36、37を設ける。磁束誘導部32、34、36は、互いに接続され、水平足部は第3の歯車6の一方の側で延伸している。一方で、残りの磁束誘導部33、35、37は、互いに接続されており、水平足部は第3の歯車6の他方の側で延伸している。このような構成によって、第3および第4の歯車6および7の間の相対的な回転角が小さくなると、第2のセンサ16上の磁界の変化が大きくなるので、ねじれ角を測定する際の分解能が改善される。
【0026】
この実施形態例では、変形すると、第1の磁石9には、図1および図3に示した実施形態例と同様に、直径方向に磁化されている双極磁石を利用することができる。第4の歯車7の一方の側に第1の磁石9、他方の側に多極磁石が設けられており、磁気スクリーニングプレート39によって互いに分離しているので、第1の磁石9は、第1の実施形態例と同一の機能を持つ。一の代替例によると、第1の磁石9に代えて、多極磁石のN極とS極を通り抜け、第4の歯車7を通り抜け、磁気スクリーニングプレート39内の開口を通り抜ける磁気ケーブルを用いることができる。こうして、双極磁石の磁界効果を第1の磁気センサ11に伝達する。
【0027】
また、多極磁石の利用は、トルクが発生すると、その結果発生して第2のセンサ16に作用する磁界の強度が、図1から図3の実施形態例に係る双極磁石9を利用する場合に比べて、高くなるという点で有利である。
【0028】
完全を期すべく、歯車4から8は全て、プラスチック等の非磁性材料で形成されることに再度言及しておく。歯車6、7および8は、独国特許文献DE199 62 241 A1に記載されているような公知の構成を持つ張力フレームに保持されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転角およびトルクのセンサであって、2つのシャフト部分を備え、前記2つのシャフト部分の間にねじれロッドが配置されており、
トルク耐性を持つように第1の前記シャフト部分に接続されている第1の歯車と、
トルク耐性を持つように第2の前記シャフト部分と接続されている第2の歯車と、
前記第1の歯車と噛合している第3の歯車と、
前記第2の歯車と噛合している第4の歯車および第5の歯車と、
前記第4の歯車および前記第5の歯車に対応付けられている2つの磁石と、
前記第3の歯車に対応付けられている第1の磁気センサと、
前記第4の歯車に対応付けられている第2の磁気センサと、
前記第5の歯車に対応付けられている第3の磁気センサと
を備え、
前記第1の歯車および前記第2の歯車は歯の数が同数(N1)であり、
前記第3の歯車および前記第4の歯車は、歯の数が同数(N2)であり、前記第3の歯車および前記第4の歯車の歯の数(N2)は、前記第1の歯車および前記第2の歯車の歯の数(N1)よりも少なく、
前記第5の歯車の歯の数(N3)は、前記第4の歯車の歯の数(N2)との差分が少なくとも1であり、
前記第4の歯車には、扇形磁気誘導部が取着されており、
前記第3の歯車には、磁束誘導部が取着されており、前記磁束誘導部の端部は、前記扇形磁気誘導部から間隔を空けて配されており、
前記磁気誘導部の足部は、前記第3の歯車に対応付けられている前記第3の磁気センサの両側に配置されている回転角およびトルクのセンサ。
【請求項2】
前記扇形磁気誘導部は、空隙を形成している間隔が両者間に設けられている請求項1に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項3】
前記磁束誘導部は、前記第4の歯車のうち前記第3の歯車に対向する側に配置されており、前記第1の磁気センサは、前記第4の歯車のうち前記磁束誘導部とは反対側に配置されている請求項1または請求項2に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項4】
前記磁束誘導部は、断面がL字形状であり、前記第3の歯車に平行に延伸する足部、および、前記第3の歯車に垂直に延伸する足部を有し、平行に延伸する複数の前記足部のうち1つは、前記第3の歯車の一方の側で延伸しており、他方の磁束誘導部の平行に延伸する一の足部が前記第3の歯車の他方の側で延伸しており、前記第2の磁気センサが、前記平行に延伸する複数の足部の間に配置されている請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項5】
前記第2の磁気センサは、前記第3の歯車の開口内に配置されており、前記第3の歯車に平行に延伸する足部のうち1つに形成されている開口を貫通して突出する導電体を介して、固定長尺状導体プレートに接続されている請求項4に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項6】
前記第2の磁気センサは、前記第3の歯車の開口内に配置されており、前記第3の歯車に平行に延伸する足部のうち1つに形成されている開口を貫通して突出するピンおよび導電体の少なくとも1方を介して、固定長尺状導体プレートに接続されている請求項4に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項7】
前記第1の磁気センサは、AMRセンサであり、前記第2の磁気センサは、ホールセンサである請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項8】
前記扇形磁気誘導部は、交互に北向きおよび南向きに磁化されている複数の磁気部分を含む多極磁石によって形成されており、
2つの群の磁束誘導部が設けられ、第1の群は、前記第3の歯車の一方の側に水平足部を持ち、第2の群は、前記第3の歯車の他方の側に配される水平足部を持つ請求項1に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項9】
前記多極磁石は、前記第1の磁気センサに対向する磁気スクリーニングプレートによって磁気的にスクリーニングされる請求項8に記載の回転角およびトルクのセンサ。
【請求項10】
前記多極磁石のN極およびS極は、磁気導体によって接続され、前記第4の歯車および前記磁気スクリーニングプレートを貫通して前記第1の磁気センサの方向に延伸する請求項9に記載の回転角およびトルクのセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24866(P2013−24866A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153551(P2012−153551)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(505441524)ボーンズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】