説明

回転角センサ

【課題】検出精度を向上することの可能な回転角センサを提供する。
【解決手段】第1、第2センシングIC20、30は、スロットル弁の回転により変化する磁界に応じた信号を出力する磁気検出素子21、31、この磁気検出素子21、31を覆うモールド体22、32、並びに、一端が磁気検出素子21、31に接続され他端がモールド体22、32から突出して回路基板12に電気的に接続される第1リード23、33及び第2リード24、34を有する。樹脂体60は、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置に対応する正面221、321及び背面222、322を除くモールド体22、32、第1リード23、33、第2リード24、34、及び回路基板12を封止する。これにより、第1、第2センシングIC20、30と回路基板12が設けられたハウジングカバー10とが樹脂体60により固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体の回転角を検出する回転角センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁界の変化に応じた信号を出力するセンシングICを用いて、被検出体の回転角を検出する回転角センサが知られている。センシングICは、磁気検出素子、リード、及びこれらを樹脂モールドするモールド体から構成される。
特許文献1の回転角センサは、ハウジングに回転可能に設けられた非検出体の軸方向の一方に磁石が取り付けられている。ハウジングの磁石側に樹脂からなるハウジングカバーが設けられている。被検出体の回転に応じて変化する磁界に応じた信号を出力するセンシングICは、ハウジングカバーによってモールド成形され、ハウジングカバーに固定されている。これにより、被検出体に対しセンシングICが正確に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−4114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、センシングICのモールド体の熱膨張係数と、ハウジングカバーの熱膨張係数とは異なっている。このため、特許文献1では、回転角センサの温度変化により、磁気検出素子が応力を受ける。したがって、磁気検出素子の出力の温度特性が悪化するおそれがある。
また、特許文献1では、ハウジングカバーとセンシングICとを樹脂によりモールド成形する際、磁気検出素子に成形ストレスが作用する。このため、モールド成形後、磁気検出素子の破壊の有無を検査するコストが高くなることが懸念される。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、検出精度を向上することの可能な回転角センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明によると、回転角センサは、ハウジング、被検出体、磁気発生手段、ハウジングカバー、回路基板、センシングIC及び樹脂体を備える。
ハウジングに回転可能に設けられる被検出体に磁気発生手段は設けられ、被検出体の回転軸に対し略垂直方向に磁束の流れる磁界を生じる。
ハウジングカバーは、ハウジングの磁気発生手段側に取り付けられる。ハウジングカバーに回路基板が設けられる。
センシングICは、被検出体の回転により変化する磁界に応じた信号を出力する磁気検出素子、この磁気検出素子を覆うモールド体、及び、一端が磁気検出素子に接続され他端がモールド体から突出して回路基板に電気的に接続される複数のリードを有する。
樹脂体は、磁気検出素子よりもハウジングカバー側のモールド体、リード及び回路基板を封止する。
これにより、センシングICと回路基板が設けられたハウジングカバーとが樹脂体により固定される。このため、被検出体に対しセンシングICが正確に位置決めされる。樹脂体は、磁気検出素子よりもハウジングカバー側のモールド体を封止するので、回転角センサが温度変化した場合、樹脂体から磁気検出素子に作用する応力が低減される。したがって、回転角センサの温度特性が安定し、検出精度を向上することができる。また、樹脂体の形成時に磁気検出素子に作用する成形ストレスが低減される。したがって、成形ストレスによる磁気検出素子の破壊の有無の検査行程を廃止し、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1実施形態による回転角センサの模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による回転角センサのハウジングカバーの平面図である。
【図3】図2のIII−III線の断面図である。
【図4】図2のIV−IV線の断面図である。
【図5】図2のV部分の拡大図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】図6のVII方向の矢視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線の断面図である。
【図9】図6のIX−IX線の断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による回転角センサの製造工程を示す摸式図である。
【図11】図10のXI−XI線の断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による回転角センサのハウジングカバーの要部拡大図である。
【図13】図12のXIII−XIII線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転角センサを図1〜図11に示す。本実施形態の回転角センサ1は、被検出体としてのスロットル弁2の回転角を検出する。回転角センサ1の出力は、図示しない車両の電子制御装置(ECU)に伝送される。ECUは、内燃機関の各部を制御する。
図1に示すように、ハウジング3には、内燃機関に空気を導入する吸気通路4が形成されている。
略円板状に形成されたスロットル弁2は、吸気通路4内に設けられる。スロットル弁2は、弁軸5を一体に有している。弁軸5の両端は、ハウジング3に回転可能に軸受けされている。これにより、スロットル弁2は、弁軸5の軸を回転軸として回転可能である。
弁軸5の一端にモータ6が取り付けられている。モータ6は、ECUからの指令により駆動制御される。モータ6の駆動によりスロットル弁2の開度が制御され、内燃機関に供給される吸気量が調節される。
【0008】
弁軸5の他端に有底筒状のホルダ7が設けられている。ホルダ7の径内方向の内壁には、磁気発生手段としての2個の磁石8及びこの2個の磁石8を周方向に接続する2個のヨークが設けられている。2個の磁石8は、スロットル弁2の回転軸に対し径方向に向き合うように設けられる。2個の磁石8は、一方のヨークにN極の磁束を与え、他方のヨークにS極の磁束を与える。これにより、スロットル弁2の回転軸に対し略垂直方向に磁束が流れる磁界が生じる。スロットル弁2が回転すると、ホルダ7の内側の磁界の向きが変化する。
【0009】
ハウジング3のホルダ7側にハウジングカバー10が取り付けられている。ハウジングカバー10は、図1〜図4に示すように、樹脂により皿状に形成され、ハウジング3に例えばねじ11等により固定されている。
ハウジングカバー10には、回路基板12が設けられている。回路基板12は、例えばフレキシブル基板であり、ハウジングカバー10の内壁に例えば接着材等によって取り付けられる。回路基板12には、コンデンサ13などの電子部品が実装されている。回路基板12の配線は、ハウジングカバー10に設けられたコネクタ14の端子に電気的に接続されている。
【0010】
図5〜図9に示すように、センシングICは、第1センシングIC20と第2センシングIC30とを有する。第1センシングIC20と第2センシングIC30とは、実質的に同一の構成である。
第1センシングIC20について説明する。第1センシングIC20は、磁気検出素子21、モールド体22及び複数のリード23、24、25を有する。磁気検出素子21は、例えばホール素子又はMR素子等と信号増幅回路とを一体化した磁気センサである。磁気検出素子21は、磁気検出素子21を通過する磁束に応じた電圧信号を出力する。スロットル弁2の回転により、磁気検出素子21を通過する磁束密度が変化すると、磁気検出素子21の出力する電圧信号が変化する。
【0011】
モールド体22は、樹脂からなり、磁気検出素子21を覆っている。モールド体22は、衝撃、熱又は湿気等から磁気検出素子21を保護する。
モールド体22は、略直方体状に形成され、正面221、背面222、2つの側面223、224、下面225及び上面226を有する。また、モールド体22は、背面222と2つの側面223、224との間に2つの面取り部227、228を有する。磁気検出素子21は、モールド体22の正面221及び背面222と平行に埋め込まれている。
【0012】
複数のリードは、金属からなり、中央の第1リード23と、その両側に2本の第2リード24、25とを有する。第1リード23は、ハウジングカバー10の内壁に対し垂直に設けられている。第1リード23は、一端が磁気検出素子21に電気的に接続され、他端がモールド体22から突出している。第1リード23の他端は、後述する第1支柱40と第2支柱50との間に設けられた回路基板12のスルーホール16を挿通し、ハウジングカバー10に設けられた穴15に挿し込まれる。第1リード23の他端は、図示しない半田等によりスルーホール16に電気的に接続されている。
【0013】
第2リード24、25も、一端が磁気検出素子21に電気的に接続され、他端がモールド体22から突出している。第2リード24、25は、後述する包囲壁18の上面よりもハウジングカバー10側で曲折し、第1支柱40及び第2支柱50の外側へ延びる。そして再び曲折し、ハウジングカバー10の内壁に対し垂直に延びる。第2リード24、25の他端は、第1支柱40と第2支柱50との間の外側に設けられた回路基板12のスルーホール16を挿通し、ハウジングカバー10に設けられた穴15に挿し込まれる。第2リード24、25の他端は、図示しない半田等によりスルーホール16に電気的に接続されている。
【0014】
第2センシングIC30も第1センシングIC20と同様に、磁気検出素子31、モールド体32及び複数のリード33、34、35を有する。略直方体状に形成されたモールド体32は、正面321、背面322、2つの側面323、324、下面325、上面326、及び2つの面取り部327、328を有する。
複数のリードは、中央の第1リード33と、その両側に2本の第2リード34、35とを有する。
【0015】
第1支柱40は、ハウジングカバー10からスロットル弁2側へハウジングカバー10の内壁に対し略垂直に延びている。第2支柱50も、ハウジングカバー10からスロットル弁2側へハウジングカバー10の内壁に対し略垂直に延びている。第1支柱40と第2支柱50とは、実質的に同一の構成である。第1支柱40と第2支柱50とハウジングカバー10とは、樹脂により一体成形される。第1支柱40及び第2支柱50は、磁石8及びヨークの径内側で、スロットル弁2の回転軸を挟んで径方向に向き合うように設けられる(図1参照)。
【0016】
第1支柱40について説明する。第1支柱40の径外方向の外壁41は、スロットル弁2の回転軸を中心とした円弧状に形成されている。第1支柱40の径内方向の内壁42は、径外方向の外壁41の円弧の弦に平行な平面状に形成されている。第1支柱40は、径外方向の外壁41と径内方向の内壁42との間に、第1支柱40の径外方向の外壁41よりも曲率半径の小さい2つの曲面部43を有している。
第1支柱40は、ハウジングカバー10の内壁から所定距離離れた位置で、スロットル弁2の回転軸の径外方向へ凹む第1凹部44を有している。第1凹部44のハウジングカバー10の底面と、ハウジングカバー10の内壁との距離は、モールド体22から突出するリード23、24、25の長さに対応している。第1凹部44の底面と第1支柱40のスロットル弁2側の上面との距離は、モールド体22よりも長い。第1支柱40のスロットル弁2側の上面とモールド体22との間には、後述する樹脂体60の抜け止め部65が形成される。
【0017】
第2支柱50も、第1支柱40と同様に、径外方向の外壁51が、スロットル弁2の回転軸を中心とした円弧状に形成されている。第2支柱50の径内方向の内壁52は、径外方向の外壁51の円弧の弦に平行な平面状に形成されている。第2支柱50は、径外方向の外壁51と径内方向の内壁52との間に、2つの曲面部53を有している。
第2支柱40は、スロットル弁2の回転軸の径外方向へ凹む第2凹部54を有している。
【0018】
第1センシングIC20と第2センシングIC30とは、モールド体22、32の背面222、322同士が向き合うように設けられる。
第1支柱40の第1凹部44は、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置の外側で第1センシングIC20のモールド体22の一方の側面223側、及び第2センシングIC30のモールド体22の一方の側面323側を係止する。
第2支柱50の第2凹部54は、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置の外側で第1センシングIC20のモールド体22の他方の側面224側、及び第2センシングIC30のモールド体32の他方の側面324側を係止する。
第1センシングIC20のモールド体22の下面225は、第1支柱40の第1凹部44の底部と第2支柱50の第2凹部54の底部とに係止される。第2センシングIC30のモールド体32の下面325も、第1支柱40の第1凹部44の底部と第2支柱50の第2凹部54の底部とに係止される。
これにより、第1センシングIC20のモールド体22及び第2センシングIC30のモールド体32は、第1支柱40の第1凹部44の内壁と第2支柱50の第2凹部54の内壁とに係止される。
なお、図7及び図8では、モールド体22、32に磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置を破線で示している。
【0019】
回路基板12の外側には、包囲壁18が設けられている。包囲壁18は、ハウジングカバー10の内壁からスロットル弁2側へ延びている。ハウジングカバー10と包囲壁18とは、一体で形成されている。包囲壁18は、その一部に開口部19が設けられている。回路基板12は、第1、第2センシングIC20、30側から包囲壁18の開口部19を通りコネクタ14側へ延びている。
【0020】
包囲壁18の内側に樹脂体60が設けられている。樹脂体60は、包囲壁18の内側に位置する回路基板12、第1リード23、33、第2リード24、25、34、35、並びに、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置に対応する正面221、321及び背面222、322を除くモールド体22、32を封止する。
磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置に対応するモールド体22、32の正面221、321及び背面222、322は、樹脂体60から露出している。
【0021】
樹脂体60は、第1支柱40の外壁41及び第2支柱50の外壁の円弧の延長線上に形成されるIC支持部61を有する。このため、磁気検出素子21が埋め込まれた位置よりもハウジングカバー10側は、第1支柱40、第2支柱50及び樹脂体60によって円柱状となる。
樹脂体60は、包囲壁18の内側で包囲壁18の上面と略同じ高さに設けられた回路支持部62を有する。また、樹脂体60は、回路支持部62とIC支持部61との接続箇所に、テーパ状に形成されたテーパ部63を有する。
また、樹脂体60は、第1支柱40の第1凹部44内及び第2支柱50の第2凹部54内でモールド体22、32の上面に封止される抜け止め部65を有する。
また、樹脂体60は、第1センシングIC20の面取り部227、228と第2センシングIC30の面取り部327、328との間に封止される接続部64を有する。接続部64は、IC支持部61と抜け止め部65とを接続している。
【0022】
回転角センサ1の製造方法を説明する。
まず、ハウジングカバー10、第1支柱40、第2支柱50及び包囲壁18が樹脂により一体成形される。次に、ハウジングカバー10の内壁に回路基板12が取り付けられる。続いて回路基板12に、図示しない半田ペーストが塗布される。
次に、第1センシングIC20及び第2センシングIC30のモールド体22、32を第1支柱40の第1凹部44と第2支柱50の第2凹部54に挿入する。このとき、第1センシングIC20及び第2センシングIC30の第1リード23、33及び第2リード24、25、34、35を回路基板12のスルーホール16を通し、ハウジングカバー10の穴15に挿入する。続いて、例えばレーザー照射などにより、第1リード23、333及び第2リード24、25、34、35と回路基板12とを電気的に接続する。
【0023】
次に、図10及び図11に示すように、ハウジングカバー10を例えばアルミから形成された金型70と基台80とで挟む。金型70のハウジングカバー10側の端面77は、包囲壁18の上面に当接する。金型70は包囲壁18の開口部19を塞ぐ。
金型70は、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置よりもハウジングカバー10側に円筒部71を有している。また、金型70は、磁気検出素子21が埋め込まれた位置でモールド体22の正面221に当接する平面部72を有している。平面部72は、円筒部71よりも径内方向に突出している。金型70には、複数の空気抜き孔73が設けられている。
【0024】
金型70の注入口74から溶融状態の樹脂が注入される。樹脂として、例えば熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂などが例示される。その樹脂は、包囲壁18の内側で回路基板12及び第2リード24、25、34、35を封止するように充填され、回路封止部62及びテーパ部63を形成する。次に溶融状態の樹脂は、金型70の円筒部71に沿って充填され、IC支持部61を形成する。続いて溶融状態の樹脂は、2つのモールド体22、23の面取り部227、327、228、328の間に充填され、接続部64を形成する。そしてモールド体22、32の上面と第1支柱40の上面との間で、第1凹部44内及び第2凹部54内に充填され、抜け止め部65を形成する。このようにして、回路封止部62、IC封止部61、接続部64及び抜け止め部65は、一体で形成される。溶融状態の樹脂が硬化した後、金型70と基台80とをハウジングカバー10から取り外す。これにより、樹脂体60が形成される。樹脂体60は、回路基板12、第1支柱40及び第2支柱50が設けられたハウジングカバー10と、第1センシングIC20と、第2センシングIC30とが樹脂体60を固定する。
続いて、ハウジングカバー10がハウジング3に取り付けられ、回転角センサ1が製造される。
【0025】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態では、樹脂体60は、磁気検出素子21、31よりもハウジングカバー10側のモールド体22、32、リード23、24、25、33、34、35及び回路基板12を封止する。これにより、磁気検出素子21、31が埋め込まれた位置に対応するモールド体22、32の正面221、321及び背面222、322は樹脂体60から露出している。このため、回転角センサ1が温度変化した場合、樹脂体60から磁気検出素子21、31に作用する応力が低減される。したがって、回転角センサ1の温度特性が安定し、検出精度を向上することができる。
(2)本実施形態では、回転角センサ1の製造時に磁気検出素子21、31に作用する成形ストレスが低減される。したがって、成形ストレスによる磁気検出素子21、31の破壊の有無の検査行程を廃止し、製造コストを低減することができる。
(3)本実施形態では、第1支柱40の第1凹部44は、磁気検出素子21が埋め込まれた位置の外側でモールド体22、32を係止する。第2支柱50の第2凹部54は、磁気検出素子21が埋め込まれた位置の外側でモールド体22、32を係止する。これにより、回転角センサ1が温度変化した場合、第1支柱40及び第2支柱50から磁気検出素子21に作用する応力が低減される。第1センシングIC20と第2センシングIC30とハウジングカバー10とが正確に位置決めされる。したがって、回転角センサ1の検出精度を向上することができる。
(4)本実施形態では、第1リード23、33は、モールド体22、32からハウジングカバー10へ垂直に延び、回路基板12のスルーホール16を挿通し、ハウジングカバー10に設けられた穴15に挿し込まれる。これにより、回路基板12の設けられたハウジングカバー10の内壁に対し、第1、第2センシングIC20、30を略垂直に設置することができる。
(5)本実施形態では、第2リード24、25、34、35は、第1支柱40と第2支柱50との間の外側に設けられた回路基板12のスルーホール16を挿通し、ハウジングカバー10の穴15に挿し込まれる。これにより、回路基板12と第2リード24、25、34、35とを接続する半田を塗布可能な面積を大きくすることが可能になる。したがって、第2リード24、25、34、35の導通を良好にすることができる。
(6)本実施形態では、ハウジングカバー10の回路基板12の外側に包囲壁18が設けられている。これにより、回転角センサ1の製造時、樹脂体60をつくる溶融状態の樹脂材料によって回路基板12を封止する際、その樹脂材料が回路基板12の外側へ漏れることを包囲壁18によって防ぐことができる。
(7)本実施形態では、樹脂体60は、第1支柱40の外壁41及び第2支柱50の外壁51の円弧の延長線上に形成されるIC支持部61を有する。これにより、第1、第2センシングIC20、30と、その径外側に設けられる磁石8及びヨークとの間の空間を有効に利用し、第1支柱40、第2支柱50及び樹脂体60の体積を大きく確保することができる。したがって、第1、第2センシングIC20、30をハウジングカバー10に確実に固定することができる。
(8)本実施形態では、樹脂体60は、第1支柱40の第1凹部44の内側及び第2支柱50の第2凹部54の内側でモールド体22、32の上面を封止する抜け止め部65を有する。これにより、第1支柱40及び第2支柱50からセンシングICがスロットル弁2側へ抜け出すことを防ぐことができる。
(9)本実施形態では、樹脂体60は、回路封止部62、テーパ部63、IC支持部61、接続部64及び抜け止め部65が一体で形成される。これにより、樹脂体60を一回の加工工程で形成することが可能になり、回転角センサ1の製造コストを低減することができる。
【0026】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による回転角センサを図12及び図13に示す。本実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、モールド体22、32から突出する第2リード24、25、34、35は、包囲壁18の上面よりもハウジングカバー10側で曲折し、第1支柱40及び第2支柱50の外側へ延びる。そして再び曲折し、ハウジングカバー10側へ垂直に延びる。そして再び曲折し、第1支柱40と第2支柱50の外側に設けられた回路基板12のランド17と平行に延びる。第2リード24、25、34、35の他端は、図示しない半田等により回路基板12のランド17に電気的に接続されている。
なお、第1リード23、33は、第1実施形態と同様、モールド体22、32からハウジングカバー10側へ垂直に延び、第1支柱40と第2支柱50との間に設けられた回路基板12のスルーホール16を挿通し、ハウジングカバー10に設けられた穴15に挿し込まれる。第1リード23、33の他端は、図示しない半田等によりスルーホール16に電気的に接続されている。
本実施形態では、第2リード24、25、34、35の曲げ加工による製造上の公差に関わらず、第2リード24、25、34、35とランド17とを確実に導通させることができる。
【0027】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、上述した第1、第2実施形態の変形例である。第3実施形態では、樹脂体は2液硬化性樹脂から形成される。2液硬化性樹脂として、例えばエポキシ樹脂が例示される。
第3実施形態では、溶融した2液硬化性樹脂を混合して金型70に注入する。2液硬化性樹脂が硬化した後、金型70からハウジングカバー10を取り外す。これにより、樹脂体を短時間で形成することができる。
【0028】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第1〜第3実施形態の変形例である。第4実施形態では、樹脂体は紫外線硬化樹脂から形成される。
第4実施形態では、溶融した紫外線硬化樹脂を金型70に注入する。金型70は、透明材料から形成されている。金型の外側から紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂が硬化した後、金型70からハウジングカバー10を取り外す。これにより、樹脂体を短時間で形成することができる。
【0029】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態は、第1〜第4実施形態の変形例である。第5実施形態では、樹脂体はホットメルトから形成される。
第5実施形態では、加熱溶融したホットメルトを金型70に注入する。ホットメルトが冷却、固化した後、金型70からハウジングカバー10を取り外す。これにより、樹脂体を短時間で形成することができる。これにより、2液混合または紫外線照射をすることなしに、樹脂体を簡易に形成することができる。
【0030】
(他の実施形態)
上述した複数の実施形態では、被検出体としてのスロットル弁2の回転角を検出する回転角センサについて説明した。これに対し、本発明による回転角センサは、例えばアクセルペダルやクランクシャフト等の回転軸の回転角を検出するものであってもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ・・・回転角センサ
2 ・・・スロットル弁(被検出体)
12 ・・・回路基板
20 ・・・第1センシングIC(センシングIC)
30 ・・・第2センシングIC(センシングIC)
21、31 ・・・磁気検出素子
22、32 ・・・モールド体
23、33 ・・・第1リード(リード)
24、25、34、35 ・・・第2リード(リード)
60 ・・・樹脂体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(3)と、
前記ハウジングに回転可能に設けられる被検出体(2,5)と、
前記被検出体に設けられ、前記被検出体の回転軸に対し略垂直方向に磁束の流れる磁界を生じる磁気発生手段(8)と、
前記ハウジングの前記磁気発生手段側に取り付けられるハウジングカバー(10)と、
前記ハウジングカバーに設けられる回路基板(12)と、
前記被検出体の回転により変化する磁界に応じた信号を出力する磁気検出素子(21,31)、この磁気検出素子を覆うモールド体(22,32)、及び、一端が前記磁気検出素子に接続され他端が前記モールド体から突出して前記回路基板に電気的に接続される複数のリード(23−25,33−35)を有するセンシングIC(20,30)と、
前記磁気検出素子よりも前記ハウジングカバー側のモールド体、前記リード及び前記回路基板を封止する樹脂体(60)と、を備えることを特徴とする回転角センサ(1)。
【請求項2】
前記樹脂体は、前記磁気検出素子よりも前記ハウジングカバー側のモールド体、前記リード及び前記回路基板を封止するように溶融した状態で充填され、硬化することで形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角センサ。
【請求項3】
前記樹脂体は、ホットメルトであることを特徴とする請求項1または2に記載の回転角センサ。
【請求項4】
前記樹脂体は、2液硬化性の樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転角センサ。
【請求項5】
前記樹脂体は、紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転角センサ。
【請求項6】
前記モールド体は、略直方体状に形成され、前記磁気検出素子に平行な正面(221,321)及び背面(222,322)、前記正面と前記背面との間の2つの側面(223,224,323,324)、リードが突出する下面、並びに前記下面と反対側の上面(226,326)を有するものであり、
前記ハウジングカバーから前記被検出体側へ延び、前記磁気検出素子が埋め込まれた位置の外側で前記モールド体の一方の前記側面を係止する第1支柱(40)と、
前記ハウジングカバーから前記被検出体側へ延び、前記磁気検出素子が埋め込まれた位置の外側で前記モールド体の他方の前記側面を係止する第2支柱(50)と、を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【請求項7】
前記第1支柱は、前記被検出体の前記回転軸の径外方向へ凹む第1凹部(44)を有し、
前記第2支柱は、前記被検出体の前記回転軸の径外方向へ凹む第2凹部(54)を有し、
前記モールド体は、前記第1凹部の内壁と前記第2凹部の内壁とに係止されることを特徴とする請求項6に記載の回転角センサ。
【請求項8】
複数の前記リードは、第1リード(23,33)と第2リード(24,25,34,35)とを有し、
前記第1リードは、一端が前記磁気検出素子に接続され、他端が前記第1支柱と前記第2支柱との間に設けられた前記回路基板のスルーホール(16)を挿通し、前記ハウジングカバーに設けられた穴(15)に挿し込まれることを特徴とする請求項6または7に記載の回転角センサ。
【請求項9】
前記第2リードは、一端が前記磁気検出素子に接続され、他端が前記第1支柱と前記第2支柱との間の外側に設けられた前記回路基板の前記スルーホール(16)を挿通し、前記ハウジングカバーに設けられた穴(15)に挿し込まれることを特徴とする請求項8に記載の回転角センサ。
【請求項10】
前記第2リードは、一端が前記磁気検出素子に接続され、他端が前記回路基板と平行に延び、前記第1支柱と前記第2支柱との外側に設けられた前記回路基板のランド(17)に電気的に接続されることを特徴とする請求項8に記載の回転角センサ。
【請求項11】
前記第1支柱の外壁及び前記第2支柱の外壁は、前記被検出体の前記回転軸を中心とした円弧状に形成され、
前記樹脂体は、前記第1支柱の外壁及び前記第2支柱の外壁の円弧の延長線上に形成されるIC支持部(61)を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【請求項12】
前記樹脂体は、前記第1支柱の前記第1凹部内及び前記第2支柱の前記第2凹部内で前記モールド体の上面を封止する抜け止め部(65)を有することを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の回転角センサ。
【請求項13】
前記センシングICは、第1センシングIC(20)と第2センシングIC(30)とを有し、
前記第1センシングICと前記第2センシングICとは、前記第1支柱と前記第2支柱との間で、前記第1センシングICの前記背面と前記第2センシングICの前記背面とが向き合うように設けられ、
前記第1センシングIC及び前記第2センシングICは、前記背面と前記側面との間に面取り部を有し、
前記樹脂体は、前記第1センシングICの前記面取り部と前記第2センシングICの前記面取り部との間に封止され、前記IC支持部と前記抜け止め部とを接続する接続部(64)を有することを特徴とする請求項12に記載の回転角センサ。
【請求項14】
前記ハウジングカバーから前記被検出体側へ延び、前記回路基板の外側に設けられる包囲壁(18)を備え、
前記樹脂体は、前記包囲壁の内側で前記回路基板を封止する回路封止部(62)を有し、
前記回路封止部、前記IC支持部、前記接続部及び前記抜け止め部は一体で形成されることを特徴とする請求項13に記載の回転角センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−233875(P2012−233875A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14915(P2012−14915)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】