説明

回転角度検出装置及びこれを用いた回転角度検出システム

【課題】主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムに関し、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転角度検出装置13と13Aの制御手段12と12Aが、算出した回転角度を各々異なる所定時間後に出力すると共に、これらを接続し、他からの回転角度を検知した場合には、回転角度を出力しないように形成することによって、複数の回転角度検出装置13や13Aを用いた場合でも、車両の電子回路11には一つの回転角度の信号しか入力されないため、電子回路11の負荷が少なくなると共に、万が一、一方に故障等が生じた場合でも、他方からは回転角度が出力されるため、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能なものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、これを用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムについて、図3及び図4を用いて説明する。
【0004】
図3は従来の回転角度検出システムのブロック回路図、図4は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、1は外周に平歯車が形成された回転体で、内周には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する一対の突起が設けられている。
【0005】
そして、2は外周に平歯車が形成された第一の検出体、3は外周に第一の検出体2とは歯数の異なる平歯車が形成された第二の検出体で、第一の検出体2と第二の検出体3の平歯車が、回転体1の平歯車に各々噛合している。
【0006】
また、4は第一の検出体2と第二の検出体3の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面には複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2の中央に装着された磁石5と、第二の検出体3の中央に装着された磁石6との対向面には、磁気検出素子7と8が各々装着されている。
【0007】
そして、このように対向した磁石5と磁気検出素子7によって第一の検出手段が、同じく磁石6と磁気検出素子8によって第二の検出手段が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、配線パターンを介して磁気検出素子7と8に接続された制御手段9が形成されている。
【0008】
さらに、これらの回転体1や第一の検出体2、第二の検出体3が絶縁樹脂製の下ケース(図示せず)底面に回転可能に保持されると共に、これらの上面を絶縁樹脂製の上ケース(図示せず)が覆って、回転角度検出装置10が構成されている。
【0009】
また、図3において、10Aは回転角度検出装置10と同様に形成された回転角度検出装置で、第一の検出体2Aと第二の検出体3Aの平歯車が、回転体1Aの平歯車に各々噛合すると共に、第一の検出体2Aと第二の検出体3A中央の磁石(図示せず)と対向した磁気検出素子7Aと8Aに、制御手段9Aが接続されている。
【0010】
そして、このように構成された回転角度検出装置10と10Aが上下に配置され、回転体1と1A内周にステアリング軸が挿通されて、自動車に装着されると共に、制御手段9と9Aがコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路11に接続されて、回転角度検出システムが構成される。
【0011】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2と第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5や6も回転して、この磁石5や6の変化する磁力を磁気検出素子7と8が検出し、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の検出信号が制御手段9へ入力される。
【0012】
なお、この時、第一の検出体2と第二の検出体3は平歯車の歯数が異なっているため、磁気検出素子7と8から出力されるデータ波形は、形状が異なり位相差のある検出信号となる。
【0013】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の平歯車の歯数から、制御手段9が所定の演算を行って回転体1、すなわちステアリングの回転角度を算出すると共に、この回転角度と回転角度検出装置10に固有の識別番号が、自動車本体の電子回路11へ出力される。
【0014】
また、この時、同時に回転体1Aも回転し、これに連動して第一の検出体2Aと第二の検出体3Aも各々回転するため、磁気検出素子7Aと8Aからも検出信号が制御手段9Aへ出力され、制御手段9Aが回転体1Aの回転角度を算出すると共に、この回転体1と同等の回転体1Aの回転角度と、回転角度検出装置10Aに固有の識別番号が、制御手段9Aから電子回路11へ出力される。
【0015】
つまり、電子回路11へは制御手段9と9Aから、回転体1と1Aの同等の回転角度と、回転角度検出装置10と10Aでは異なる識別番号の、複数の信号が入力されるが、この時、電子回路11が装置毎に異なる識別番号を判別し、通常は一方の、例えば制御手段9からの回転角度のみを用いて車両の、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の様々な制御を行う。
【0016】
ただし、万が一、回転角度検出装置10と10Aのいずれかに故障等が生じ、制御手段9または9Aの一方からのみ回転角度と識別番号が入力された場合には、例えば制御手段9からはこれらの信号が入力されず、制御手段9Aからのみ信号が入力された場合には、電子回路11がこの識別番号を判別すると共に、制御手段9Aからの回転角度を用いて、車両の様々な制御を行う。
【0017】
すなわち、複数の回転角度検出装置10と10Aを用い、これらの制御手段9と9Aから、回転角度と識別番号を電子回路11へ各々出力することで、万が一いずれかに故障等が生じた場合でも、車両の様々な制御に支障をきたさないように構成されているものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−38682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置及びこれを用いた回転角度検出システムにおいては、複数の制御手段9と9Aから回転角度と識別番号が、電子回路11へ各々出力され、これを電子回路11が判別して車両の各種制御を行っているため、実際には回転角度検出装置以外にも、他のブレーキやアクセル等の多くのセンサからも様々な信号が入力され、これらの演算や処理を行っている電子回路11の負荷が増え、煩雑なものになってしまうという課題があった。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、回転角度検出装置の制御手段が、検出手段からの検出信号により算出した回転角度を所定時間後に出力すると共に、回転角度を出力する時間の異なる複数の回転角度検出装置の制御手段を接続し、他の回転角度検出装置からの回転角度を検知した場合には、制御手段が回転角度を出力しないようにして回転角度検出システムを構成したものであり、複数の回転角度検出装置を用いた場合でも、車両の電子回路には一つの回転角度の信号しか入力されないため、電子回路の負荷が少なくなると共に、万が一、一方に故障等が生じた場合でも、他方からは回転角度が出力されるため、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムを実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出システムのブロック回路図
【図2】同回転角度検出装置の斜視図
【図3】従来の回転角度検出システムのブロック回路図
【図4】同回転角度検出装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0026】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出システムのブロック回路図、図2は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂または金属製の回転体で、外周には平歯車が形成されると共に、内周には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する一対の突起が設けられている。
【0028】
そして、2は絶縁樹脂または金属製の第一の検出体、3は同じく第二の検出体で、第一の検出体2外周の平歯車が回転体1外周の平歯車に噛合すると共に、第二の検出体3外周の第一の検出体2とは歯数の異なる平歯車が、第一の検出体2外周の平歯車に噛合している。
【0029】
なお、これらの歯車の直径及び歯数は、回転体1が最も大きく、第一の検出体2、第二の検出体3の順に小さくなっており、例えば、回転体1の歯数が48、第一の検出体2の歯数が32、第二の検出体3の歯数が28となっている。
【0030】
また、4は第一の検出体2と第二の検出体3の上方にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面には複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2の中央に装着された磁石5と、第二の検出体3の中央に装着された磁石6との対向面には、AMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子7と8が各々装着されている。
【0031】
そして、このように対向した磁石5と磁気検出素子7によって第一の検出手段が、同じく磁石6と磁気検出素子8によって第二の検出手段が各々形成されると共に、配線基板4にはマイコン等の電子部品によって、配線パターンを介して磁気検出素子7と8に接続された制御手段12が形成されている。
【0032】
さらに、これらの回転体1や第一の検出体2、第二の検出体3が絶縁樹脂製の下ケース(図示せず)底面に回転可能に保持されると共に、これらの上面を絶縁樹脂製の上ケース(図示せず)が覆って、回転角度検出装置13が構成されている。
【0033】
また、図1において、13Aは回転角度検出装置13と同様に形成された回転角度検出装置で、第一の検出体2Aの平歯車が回転体1Aの平歯車に、第二の検出体3Aの平歯車が第一の検出体2Aの平歯車に各々噛合すると共に、第一の検出体2Aと第二の検出体3A中央の磁石(図示せず)と対向した磁気検出素子7Aと8Aに、制御手段12Aが接続されている。
【0034】
さらに、回転角度検出装置13と13Aの制御手段12と12Aは、算出した回転角度を各々異なる所定時間後、例えば制御手段12は1m秒後に、制御手段12Aは3m秒後に出力するように形成されると共に、他の回転角度検出装置からの回転角度を検知した場合には、回転角度を出力しないように形成されている。
【0035】
そして、このように構成された回転角度検出装置13と13Aが上下に配置され、回転体1と1A内周にステアリング軸が挿通されて、自動車に装着されると共に、制御手段12と12Aがコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路11に接続され、さらに制御手段12と12Aが接続されて、回転角度検出システムが構成される。
【0036】
以上の構成において、ステアリングを回転すると、回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2が、第一の検出体2に連動して第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石5や6も回転して、この磁石5や6の変化する磁力を磁気検出素子7と8が検出し、増減を繰返す正弦波や余弦波、または略鋸歯状の検出信号が制御手段12へ入力される。
【0037】
なお、この時、第一の検出体2と第二の検出体3は平歯車の歯数が異なっているため、磁気検出素子7と8から出力されるデータ波形は、形状が異なり位相差のある検出信号となる。
【0038】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの二つの異なる検出信号と各々の平歯車の歯数から、制御手段12が所定の演算を行って回転体1、すなわちステアリングの回転角度を算出すると共に、この回転角度を所定時間後、例えば1m秒後に自動車本体の電子回路11と制御手段12Aへ出力する。
【0039】
また、この時、同時に回転体1Aも回転し、これに連動して第一の検出体2Aと第二の検出体3Aも各々回転するため、磁気検出素子7Aと8Aからも検出信号が制御手段12Aへ出力され、制御手段12Aが回転体1Aの回転角度を算出するが、制御手段12Aは算出した回転角度を例えば3m秒後に出力するように形成され、これを出力する前に制御手段12からの回転角度をすでに検知しているため、電子回路11へは回転角度を出力しない。
【0040】
したがって、電子回路11には制御手段12からの回転角度のみが入力され、この回転角度を用いて、例えばパワーステアリング装置やブレーキ装置等の、車両の様々な制御が行われる。
【0041】
つまり、制御手段12と12Aが、算出した回転角度を各々異なる所定時間後に出力すると共に、他からの回転角度を検知した場合には、回転角度を出力しないように形成することで、車両の電子回路11には制御手段12からの一つの回転角度の信号しか入力されないため、実際には回転角度検出装置以外にも、他のブレーキやアクセル等の多くのセンサからも様々な信号が入力され、これらの演算や処理を行っている電子回路11の負荷を低減できるようになっている。
【0042】
さらに、万が一、回転角度検出装置13と13Aのいずれかに故障等が生じた場合には、例えば回転角度検出装置13に故障等が生じた場合には、制御手段12から回転角度が出力されず、制御手段12Aがこれを検知しないため、この場合には制御手段12Aから回転体1と同等の回転体1Aの回転角度が電子回路11へ出力され、この制御手段12Aからの回転角度を用いて、電子回路11が車両の様々な制御を行う。
【0043】
すなわち、制御手段12と12Aが、他からの回転角度を検知した場合には回転角度を出力しないが、検知しない場合には回転角度を出力するように形成されているため、回転角度検出装置13と13Aの一方に、万が一故障等が生じた場合でも、故障していない他方からは回転角度が出力され、これによって電子回路11が車両の様々な制御を行うことが可能なようになっている。
【0044】
つまり、制御手段12と12Aが、算出した回転角度を各々異なる所定時間後に出力するようにして、回転角度検出装置13と13Aを形成すると共に、この制御手段12と12Aを接続し、他からの回転角度を検知した場合には、制御手段12や12Aが回転角度を出力しないようにして回転角度検出システムを構成することで、電子回路11の負荷を低減すると共に、万が一、一方に故障等が生じた場合でも、他方からは回転角度が出力されるため、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0045】
このように本実施の形態によれば、回転角度検出装置13と13Aの制御手段12と12Aが、算出した回転角度を各々異なる所定時間後に出力すると共に、これらを接続し、他からの回転角度を検知した場合には、回転角度を出力しないように形成することによって、複数の回転角度検出装置13や13Aを用いた場合でも、車両の電子回路11には一つの回転角度の信号しか入力されないため、電子回路11の負荷が少なくなると共に、万が一、一方に故障等が生じた場合でも、他方からは回転角度が出力されるため、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置、及びこれを用いた回転角度検出システムを得ることができるものである。
【0046】
なお、以上の説明では、回転体1の平歯車に第一の検出体2の平歯車が噛合し、この第一の検出体2に第二の検出体3の平歯車が噛合した構成について説明したが、背景技術の項で説明したような、回転体1の平歯車に第一の検出体2と第二の検出体3の平歯車の両方を噛合させた構成のものや、あるいは一つだけの検出体の平歯車を回転体1の平歯車に噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による回転角度検出装置及びこれを用いた回転角度検出システムは、簡易な構成で、確実な回転角度の検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1、1A 回転体
2、2A 第一の検出体
3、3A 第二の検出体
4 配線基板
5、6 磁石
7、7A、8、8A 磁気検出素子
11 電子回路
12、12A 制御手段
13、13A 回転角度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の回転を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号により上記回転体の回転角度を算出する制御手段からなり、上記制御手段が算出した回転角度を所定時間後に出力する回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の、回転角度を出力する時間の異なる複数の回転角度検出装置の制御手段を接続すると共に、他の回転角度検出装置からの回転角度を検知した場合には、上記制御手段が回転角度を出力しない回転角度検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88154(P2013−88154A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226441(P2011−226441)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】