説明

回転角度検出装置

【課題】 安価で耐久性のあるレゾルバを使用しながら、絶対的な回転角度位置を認識することが可能な回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】 回転角度検出装置は、レゾルバ14におけるロータ32の外周部に90度の角度毎に配設された4個のホールIC41、42、43、44と、ロータ32に付設された磁石37とを備える。磁石37は、ロータ32の外周部の約100度の角度範囲に至る領域に配設されている。この磁石37は、ロータ32と同期して回転し、その回転角度位置に対応して、4個のホールIC41、42、43、44のうちの1個のホールIC、または、隣接する2個のホールICが磁気を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような回転角度検出装置としては、ロータリエンコーダや、レゾルバが使用されている。ロータリエンコーダは、ロータに形成された周期構造を光学的あるいは磁気的に検出するものである。これに対して、レゾルバは、ステータにコイルを備え、ステータ側に交流を流したときに、ステータとロータの相対角度に応じて現れる交流電流の位相を検出することにより回転角度を検出するものである。
【0003】
一般に、ロータリエンコーダは、高精度に角度位置を検出でき、また、アブソリュート型のロータリエンコーダは絶対角度位置をも検出することができるが、装置が高価であり、また、耐久性に欠けるという問題がある。これに対して、レゾルバは、装置も安価であり、耐久性に優れることから、回転角度の検出に、広く使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−8536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなレゾルバとしては、一般的に、軸倍角タイプのものが使用される。このような軸倍角のレゾルバは、ロータが一回転する間に、複数回、同じ角度データを繰り返し出力する。例えば、軸倍角がnであるレゾルバの場合においては、ロータが一回転する間に、同じ角度データがn回繰り返し出力される。すなわち、ロータが1/n回転すると、信号の位相が360度変化する。従って、ロータが一回転する間の絶対位置を得ることはできない。
【0006】
このため、ロータが回転を始める初期位置が常に同じであれば、初期位置からの信号数を積算することにより絶対位置を認識することも不可能ではないが、一般的に、初期位置は一定ではない。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、安価で耐久性のあるレゾルバを使用しながら、絶対的な回転角度位置を認識することが可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、軸を中心に回転するロータと、前記ロータの外周部に配設された励磁コイルと、前記ロータの外周部に配設された検出コイルとを備えた軸倍角のレゾルバと、前記レゾルバにおけるロータの外周部に所定の角度毎に配設された複数の磁気センサと、前記レゾルバにおけるロータに付設されて当該ロータと同期して回転し、その回転角度位置に対応して、前記複数の磁気センサのうちの1個の磁気センサ、または、隣接する2個の磁気センサが磁気を検出するように構成された磁石とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁気センサは、ホール
素子を利用したIC素子であるホールICから構成される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記レゾルバは、nを3以上の整数としたときに、軸倍角がnであり、前記ホールICは、前記ロータの外周部にn個配設されている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、弁を開放位置と閉止位置の間で移動させるためのモータと、このモータの動作をバルブの移動動作に変換するための動作変換機構とを備えた電動バルブアクチュエータに対して、前記モータの回転角度を検出する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ロータの外周部に所定の角度毎に配設された複数の磁気センサの作用により、安価で耐久性のあるレゾルバを使用しながら、絶対的な回転角度位置を認識することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ホールICを使用してロータの回転に伴う磁力の変化をデジタル的に認識することができる。このため、絶対的な回転角度位置をより確実に認識することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、全ての角度位置において、その絶対的な角度位置を確実に認識することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、電動バルブアクチュエータにおける開度情報を、安価な装置を使用して認識することができ、また、その耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る回転角度検出装置を適用する電動バルブアクチュエータの概要図である。
【図2】電動バルブアクチュエータの操作部18の正面図である。
【図3】レゾルバ14の基本的構成を示す概要図である。
【図4】レゾルバ14における一対の検出コイル33、35の出力信号を示すグラフである。
【図5】レゾルバ14を変換器36とともに示す概要図である。
【図6】回転角度検出装置の基本的構成を示す概要図である。
【図7】レゾルバ14から変換器36を介して出力されるデジタル信号Sと、各ホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用する電動バルブアクチュエータの構成について説明する。図1は、この発明に係る回転角度検出装置を適用する電動バルブアクチュエータの概要図である。
【0018】
この電動バルブアクチュエータは、弁11を全開位置と閉止位置の間で移動させるためのものであり、モータ12と、このモータ12の動作を入力するための操作部18と、モータ12を駆動制御するドライバー24と、操作部18からの操作信号に基づいてドライバー24に制御信号を送信するコンピュータからなる制御部25とを備える。制御部25は、端子ブロック19を介して、遠隔操作を実行するための操作盤26と接続されている。また、ドライバー24は、端子ブロック19を介して、電源27と接続されている。
【0019】
モータ12により回転駆動される回転軸13の一端は、この発明に係る回転角度検出装置を構成するレゾルバ14を介して、ネジを利用した動作変換機構であるドライブスリーブ15と接続されている。このため、回転軸13の回転駆動力は、弁11を全開位置と閉止位置の間で往復移動させるための駆動力に変換される。また、そのときの回転軸13の回転角度位置は、レゾルバ14を含む回転角度検出装置により検出される。さらに、回転軸13の他端は、スプリングレスクラッチ17を介して、ハンドルホイール16に接続されている。このハンドルホイール16は、弁11をマニュアルで開閉する場合に使用される。
【0020】
図2は、上述した操作部18の正面図である。
【0021】
この操作部18は、第1操作切替スイッチ21と、第2操作切替スイッチ22と、表示部23とを備える。第1操作切替スイッチ21は、バルブをこの操作部18を利用して直接操作する直接操作モードと、バルブを操作盤26を利用して遠隔操作する遠隔操作モードとのモード選択動作を実行可能なものである。また、第2操作切替スイッチ22は、弁11を開く開動作モードと、弁11を閉じる閉止モードと、弁11の開閉動作を停止する停止モードとのモード選択動作を実行可能なものである。そして、表示部23は、弁11の開度、第1操作切替スイッチ21または第2操作切替スイッチ22によるモード選択状態、操作状態、設定値等を表示するためのものである。
【0022】
この電動バルブアクチュエータにおいて、バルブを遠隔操作する場合においては、第1操作切替スイッチ21を回転させて「REMOTE」側に切り換える。これにより、バルブは、図1に示す操作盤26を操作することにより、電動バルブアクチュエータを介して、その開閉動作が実行される。
【0023】
一方、この電動バルブアクチュエータにおいて、バルブを操作部18を利用して直接操作する場合には、第1操作切替スイッチ21を回転させて「LOCAL」側に切り換える。そして、第2操作切替スイッチ22を回転させて「開」側に切り換えれば、バルブにおける弁11が開放位置方向に移動し、「閉」側に切り換えればバルブにおける弁11が閉止位置方向に移動する。また、第2操作切替スイッチ22を回転させて「停止」側に切り換えれば、バルブにおける弁11がその位置で停止する。
【0024】
次に、この発明に使用するレゾルバ14の構成について説明する。図3は、レゾルバ14の基本的構成を示す概要図である。
【0025】
このレゾルバ14は、軸31を中心に回転するロータ32と、このロータ32の外周部に配設された励磁コイル34と、ロータ32の外周部における励磁コイル34とは異なる位置に配設された一対の検出コイル33、35とを備える。これらの励磁コイル34および一対の検出コイル33、35は、図示を省略したステータに巻回されている。
【0026】
ロータ32と、励磁コイル34および一対の検出コイル33、35を巻回したステータとのギャップは、ロータ32の角度位置に応じて変化しており、一対の検出コイル33、35は、このロータ32とステータのギャップの変化に基づいて、sinカーブおよびcosカーブをなす2相出力信号を出力する。
【0027】
このレゾルバ14は、軸倍角が4のタイプのものであり、ロータ32は、略十字形の形状を有する。このレゾルバ14においては、ロータ32が1回転する間に4回同じ出力信号が繰り返し出力される。すなわち、このレゾルバ14においては、ロータ32が1/4
回転すると、その出力信号の位相が360度変化する。なお、軸倍角が3のタイプのものは、そのロータが略三角形の形状を有し、ロータが1回転する間に3回同じ出力信号が繰り返し出力される。
【0028】
図4は、レゾルバ14における一対の検出コイル33、35の出力信号を示すグラフである。また、図5は、レゾルバ14を、その検出コイル33、35の出力信号をデジタル信号に変換する変換器36とともに示す概要図である。
【0029】
検出コイル33の端子S1、S3間には、図4に符号Aで示すその電圧の変化がcosカーブをなす出力信号が発生する。一方、検出コイル35の端子S2、S4間には、図4に符号Bで示すその電圧の変化がsinカーブをなす出力信号が発生する。これらの出力信号は、変換器36において、後述するデジタル信号Sに変換される。
【0030】
次に、この発明に係る回転角度検出装置の構成について説明する。図5はレゾルバ14を変換器36とともに示す概要図である。図6は、回転角度検出装置の基本的構成を示す概要図である。なお、図5における0、90、180、270の数字は、ロータ32における角度位置を表している。
【0031】
この回転角度検出装置は、上述したレゾルバ14におけるロータ32の外周部に90度の角度毎に配設された4個のホールIC41、42、43、44と、ロータ32に付設された磁石37とを備える。磁石37は、ロータ32の外側部分がN極、内側部分がS極を示すものであり、ロータ32の外周部の約100度の角度範囲に至る領域に配設されている。この磁石37は、ロータ32と同期して回転し、その回転角度位置に対応して、4個のホールIC41、42、43、44のうちの1個のホールIC、または、隣接する2個のホールICが磁気を検出するように構成されている。
【0032】
図7は、レゾルバ14から変換器36を介して出力されるデジタル信号Sと、各ホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号との関係を示す説明図である。なお、図6における0、90、180、270、360の数字は、ロータ32の角度位置を表している。
【0033】
上述したように、レゾルバ14からはロータ32が1回転する間に4回同じ出力信号が繰り返し出力され、その出力信号は、変換器36によりデジタル信号Sに変換される。このデジタル信号Sは、ロータ32の一回転に対して90度毎に出力される直線状の信号となる。一方、4個のホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号は、図7において下方に矩形状に示す信号となる。この図においては、4個のホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号の各々に、括弧を付けた同符号を付している。
【0034】
上述したように、磁石37は、ロータ32の外周部の約100度の角度範囲に至る領域に配設されており、ロータ32の回転角度位置に対応して、4個のホールIC41、42、43、44のうちの1個のホールIC、または、隣接する2個のホールICが磁気を検出するように構成されている。このため、4個のホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号は、互いにその一部が重なっている。
【0035】
この4個のホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号により、ロータ32の原点が、4個のホールIC41、42、43、44により形成される4個の象限のいずれの角度位置にあるかを認識することができる。すなわち、ロータ32の一回転中に4回出力されるデジタル信号Sを峻別することが可能となる。そして、ロータ32の絶対角度位置は、このデジタル信号Sに基づいて認識することが可能となる。このため、この回転角度検出装置によれば、レゾルバ14を使用しながら、絶対的な回転角度位置を認識することが可能となる。
【0036】
なお、上述したように、4個のホールIC41、42、43、44による磁石37の磁気の検出信号は、互いにその一部が重なっており、4個のホールIC41、42、43、44のうち、常に1個のホールIC、または、隣接する2個のホールICが磁気を検出するように構成されている。このため、4個のホールIC41、42、43、44のいずれが磁気を検出しているかを認識することにより、ロータ32の回転角度位置を常に認識することが可能となる。なお、2個のホールICが磁気を検出している状態においては、そのときのデジタル信号Sを参照してその位置を認識すればよい。
【0037】
上述した実施形態においては、レゾルバ14として、その軸倍角が4のタイプのものを使用しているが、3のタイプや5のタイプなど、nを3以上の整数としたときにnのタイプとなるものを使用することができる。なお、軸倍角が2のタイプのものを使用した場合には、2個のホールICが磁気を検出している状態において位置の認識が困難となることから、他の検出手段を併用しないと、絶対角度位置を好適に判断することが困難となる。
【0038】
また、上述した実施形態においては、磁気センサとして、ホール素子を利用したIC素子であるホールICを使用していることから、ロータ32の回転に伴う磁力の変化をデジタル的に認識することができるが、この発明はこれに限定されることなく、その他の磁気センサを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
14 レゾルバ
31 軸
32 ロータ
33 検出コイル
34 励磁コイル
35 検出コイル
36 変換器
37 磁石
41 ホールIC
42 ホールIC
43 ホールIC
44 ホールIC
S デジタル信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心に回転するロータと、前記ロータの外周部に配設された励磁コイルと、前記ロータの外周部に配設された検出コイルとを備えた軸倍角のレゾルバと、
前記レゾルバにおけるロータの外周部に所定の角度毎に配設された複数の磁気センサと、
前記レゾルバにおけるロータに付設されて当該ロータと同期して回転し、その回転角度位置に対応して、前記複数の磁気センサのうちの1個の磁気センサ、または、隣接する2個の磁気センサが磁気を検出するように構成された磁石と、
を備えたことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角度検出装置において、
前記磁気センサは、ホール素子を利用したIC素子であるホールICから構成される回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転角度検出装置において、
前記レゾルバは、nを3以上の整数としたときに、軸倍角がnであり、
前記ホールICは、前記ロータの外周部にn個配設されている回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回転角度検出装置において、
弁を開放位置と閉止位置の間で移動させるためのモータと、このモータの動作をバルブの移動動作に変換するための動作変換機構とを備えた電動バルブアクチュエータに対して、前記モータの回転角度を検出する回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247439(P2012−247439A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202503(P2012−202503)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3157484号
【原出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(501144999)島津エミット株式会社 (7)
【Fターム(参考)】