説明

回転角検出機構とそれを適用したパワーステアリング装置

【課題】コストアップすることなくパワーステアリング装置におけるピニオンシャフトの回転角の検出精度を向上させる。
【解決手段】第1ウォームシャフト40に、この第1ウォームシャフト40の回転角を検出する第1回転角センサ28を設け、該第1ウォームシャフト40と噛合する第1ウォームホイール25に、この第1ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサ29を設ける。そして、前記第1ウォームシャフト40はn条歯に設定すると共に、前記第1ウォームホイール25はnの倍数でない歯数に設定し、前記第1ウォームホイール25と噛合する第1ウォームシャフト40の回転角が前記第1ウォームホイール25の1回転毎に変わるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に設けられたウォームシャフトに噛合するウォームホイールの回転角を正確に検出できるようにした回転角検出機構とそれを適用したパワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転角検出機構を適用したパワーステアリング装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが提案されている。
【0003】
この装置は、電動機のウォームシャフトと該ウォームシャフトと噛合するウォームホイールに、回転角を検出するレゾルバセンサに加え、回転数を検出できる多回転アブソ機能を有する回転角検出機構をそれぞれ設けている。これによって、前記ウォームホイールの回転角が精度よく検出できるようになっている。
【特許文献1】特開2001−194251号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の装置は、多回転アブソ機能を有する高価な回転角検出機構を使用しているため、コストアップを招くという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、コストアップすることなく前記ウォームホイールの回転角を精度よく検出できるようにした回転検出機構とそれを適用したパワーステアリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電動機と、該電動機に設けられ、n条歯を有するウォームシャフトと、該ウォームシャフトと噛合し、nの倍数でない歯数を有するウォームホイールと、該ウォームホイールに設けられた回転軸と、前記ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、前記ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記回転軸の回転角を演算する演算手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、n条歯を有するウォームシャフトがnの倍数ではない歯数を有するウォームホイールに噛合することによって、例えばウォームホイールが1回転(360°回転)した際に、このウォームホイールと噛合しているウォームシャフトは1回転前のウォームホイールとは異なる歯にて噛合していることになる。
【0008】
つまり、例えばウォームホイールおよびウォームシャフトに1回転分(絶対角で180°)までしか回転角が検出できないレゾルバセンサなどの回転角センサが設けられていても、ウォームシャフトと噛合しているウォームシャフトの回転角が異なるため、ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサとウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサを組み合わせることによってウォームホイールの回転数を判別することが可能になる。これにより、より広い範囲のウォームホイールの回転角を検出することができる。この結果、高価な回転角センサを設ける必要がなく、コストアップを抑止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転角度検出装置をパワーステアリング装置に適用したものであり、ピニオンシャフトと、該ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する電動機と、該電動機に設けられ、n条歯を有するウォームシャフトと、該ウォームシャフトと噛合し、nの倍数でない歯数を有し、前記ピニオンシャフトに設けられたウォームホイールと、前記ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、前記ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記ピニオンシャフトの回転角を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算されたピニオンシャフトの回転角に基づき、前記電動機を駆動制御する電動機制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、車両のパワーステアリング装置において、高価な回転角センサを用いることなく、より広い範囲の回転角を検出できるため、パワーステアリング装置のコストアップを抑止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、第1ピニオンシャフトと、該第1ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する第1電動機と、該第1電動機に設けられ、n条歯を有する第1ウォームシャフトと、該第1ウォームシャフトと噛合すると共にnの倍数ではない歯数を有し、前記第1ピニオンシャフトに設けられた第1ウォームホイールと、前記第1ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、前記第1ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記第1ピニオンシャフトの回転角を演算する第1演算手段と、第2ピニオンシャフトと、該第2ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する第2電動機と、該第2電動機に設けられ、n条歯を有する第2ウォームシャフトと、前記第2ウォームシャフトと噛合すると共にnの倍数ではなく、かつ前記第1ウォームホイールの歯数とは異なる歯数を有し、前記第2ピニオンシャフトに設けられた第2ウォームホイールと、前記第2ウォームシャフトの回転角を検出する第3回転角センサと、前記第2ウォームホイールの回転角を検出する第4回転角センサと、前記第3回転角センサと第4回転角センサの出力信号に基づき、前記第2ピニオンシャフトの回転角を演算する第2演算手段と、前記第1ピニオンシャフトと第2ピニオンシャフトと噛合するラックバーと、前記第1演算手段の出力信号と第2演算手段の出力信号とに基づき、前記第1電動機および第2電動機を駆動制御することを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、第1ウォームホイールと第2ウォームホイールが異なる歯数を有するため、前記第1演算手段と第2演算手段はそれぞれ異なる周期の信号を出力する。したがって、第1演算手段と第2演算手段を組み合わせることにより、コストアップすることなく、より一層広い範囲の第1,2ピニオンシャフトの回転角を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図8は本発明に係る回転角検出機構をパワーステアリング装置に適用した実施の形態を示している。
【0014】
パワーステアリング装置は、図1に示すように、操舵入力手段であるステアリングホイール1と、主にステアリングホイール1の操舵角度などを検出するバックアップ手段2と、前記ステアリングホイール1の操舵角度に応じて操舵方向が変更される左右前輪FL,FRと、前記左右前輪FL,FRに両端部が連係されたラックバー3と、前記ステアリングホイール1の操舵量に基づき、前記ラックバー3に転舵力を付与する第1操舵機構5および第2操舵機構6と、前記ステアリングホイール1の操舵角度に応じて主として前記第1,2操舵機構5,6を制御する電動機制御手段であるメインコントロールユニット8とを備えている。なお、図中の矢印は電気信号の経路をそれぞれ示している。
【0015】
前記バックアップ手段2は、前記ステアリングホイール1の回転トルクを検出する操舵トルク検出部12と、前記ステアリングホイール1の操舵角度を検出する操舵角度検出部13と、左右前輪FL,FRからの反力をステアリングホイール1にフィードバックする操舵反力アクチュエータ14と、該操舵反力アクチュエータ14に設けられた反力モータ15とを備えている。
【0016】
前記第1,2操舵機構5,6は、前記メインコントロールユニット8と電子信号を送受信する第1,2コントロールユニット17,18と、該第1,第2コントロールユニット17,18からの電気信号により駆動する電動機である第1,2電動モータ19,20と、該第1,2電動モータ19,20から動力が伝えられることによって正逆回転する第1,2ピニオン機構21,22を備えており、該第1,2ピニオン機構21,22では、回転軸である第1,2ピニオンシャフト25,26が、前記ラックバー3にそれぞれ噛合している。
【0017】
そして、第1操舵機構5には、第1操舵センサ23が設けられ、第2操舵機構6には、第2操舵センサ24がそれぞれ設けられている。
【0018】
前記第1操舵センサ23は、前記第1電動モータ19の回転角を検出する第1回転角センサ28および第1ピニオンシャフト25の回転角を検出する第2回転角センサ29から構成されている。一方、前記第2操舵センサ24は、前記第2電動モータ20の回転角を検出する第3回転角センサ30および第2ピニオンシャフト26の回転角を検出する第4回転角センサ31から構成されている。
【0019】
前記ラックバー3は、図2に示すように、円筒状のラックハウジング35に収容されていると共に、前記ラックハウジング35の軸方向に沿って移動するようになっている。
【0020】
以下、前記第1,2操舵機構5,6の構造について説明する。
【0021】
まず、前記第1操舵機構5は、図3,4に示すように、前記第1電動モータ19、第1コントロールユニット17、および第1ピニオン機構21とを備えており、それぞれがハウジング34に収容されている。
【0022】
前記ハウジング34は、主に前記第1電動モータ19を内部に備えるモータハウジング32と、主に前記第1ピニオン機構21を内部に備えるピニオンハウジング33とに分割形成されており、前記モータハウジング32とピニオンハウジング33の端面同士が固着されている。
【0023】
前記第1電動モータ19は、図4に示すように、円環状の第1,2軸受38,39によって両端部を回転自在に軸支されている第1ウォームシャフト40と、該第1ウォームシャフト40の第1軸受38側の外周部に固定された円筒状のロータ42と、巻線状のコイル部43を有し前記ロータ42と非接触で外周側となる位置に配置された円筒状のステータ44とを備えており、モータ駆動回路16から出力された制御電流によって駆動される。
【0024】
このモータ駆動回路16は、前記ハウジング34の外壁部に設けられた制御信号ハーネス用コネクタ46、前記モータハウジング32に収容されたパワーMOSFET47と、リレー48と、コンデンサ49とを備えている。
【0025】
前記第1ウォームシャフト40は、前記第1軸受38に端部を軸支されている軸部40aと前記第2軸受39に端部を軸支されている歯車部40bが一体に形成されているものである。前記ロータ42は外周側がマグネットロータ50になっており、ステータ44から励磁されることによって回転するようになっている。
【0026】
また、前記軸部40aの外周部には第1ウォームシャフト40の回転角を検出するレゾルバセンサの第1回転角センサ28が設けられている。前記第1回転角センサ28は、第1ウォームシャフト40の軸部40aの外周に固定され、該軸部40aと共に回転する円環状で、かつ金属の積層状となる被検出部53と、該被検出部53を包囲するようにして前記ステータ44側に固定され、前記被検出部53の回転角を検出する円環状のセンサコイル部54から構成されている。
【0027】
なお、前記被検出部53は、例えば外周部が凹凸状に形成された磁性部材や巻線状のコイルであってもよい。
【0028】
前記第1ウォームシャフト40の歯車部40bは2条歯となっている一方、この歯車部40bと噛合する第1ウォームホイール51は、2の倍数ではない35の歯数を有しており、前記第1ウォームホイール51に対する第1ウォームシャフト40の減速比は17.5となっている。
【0029】
前記第1コントロールユニット17は、図4に示すように、前記第2回転角センサ29の外周部となる位置に配置され、前記第1回転角センサ28および第2回転角センサ29から受信した電気信号を演算し、前記コイル部43の通電を制御する制御回路を有するドーナツ状の制御基板56と、前記モータ駆動回路16とを備えている。
【0030】
前記第2回転角センサ29は、前記第1ピニオンシャフト25の外周部に固定され、第1ピニオンシャフト25と共に回転する円環状で、かつ金属の積層状となる被検出部67と、該被検出部67を包囲するようにして設けられ、前記被検出部67の回転角を検出する円環状のセンサコイル部68から構成されている。
【0031】
なお、前記被検出部67は、前記第1回転角センサ28の被検出部53と同様に、例えば外周部が凹凸状に形成された磁性部材や巻線状のコイルであってもよい。
【0032】
前記制御基板56の制御回路は、前記第1回転角センサ28および第2回転角センサ29から送信された電気信号を演算し、前記コイル部43への通電量すなわち第1ウォームシャフト40の回転角を連続的に制御している。
【0033】
なお、第2操舵機構6も前記第1操舵機構5とほぼ同様な構造であり、ラックバー3が回転しつつ軸方向に移動することにより、左右前輪FL,FRの操舵方向が決定するようになっている。
【0034】
以下、第2操舵機構6において、前記第1操舵機構5と異なる部位の構造について説明する。なお、図5では、図3と共通する部位には同一符号を付している。
【0035】
前記第2操舵機構6の第2電動モータ20が備える第2ウォームシャフト41の歯車部41bは3条歯になっている一方、第2ウォームホイール52は、3の倍数ではなく、かつ前記第1ウォームホイール51とは異なる31の歯数を有しており、第2ウォームホイール52に対する第2ウォームシャフト52の減速比は約10.33となっている。
【0036】
以下に1,2操舵機構5,6の作用について図6を用いて説明する。
【0037】
なお、図6(a)では、横軸は第1ウォームホイール51の絶対角を示し、縦軸は第1ウォームシャフト40および第1ウォームホイール51の回転角をぞれぞれ示している。また、図6(b)では、横軸は第2ウォームホイール52の絶対角を示し、縦軸は第2ウォームシャフト41および第1ウォームホイール52の回転角をぞれぞれ示している。
【0038】
前記第1ウォームシャフト40が回転した際には減速比が17.5であるので、図6の(a)に示すように、前記第1ウォームホイール51が1回転するにつき前記第1ウォームシャフト40は17回転と180°回転し、前記第1ウォームホイール51が2回転すると35回転することになる。
【0039】
前述したように、レゾルバセンサの回転角センサは絶対角で180°までしか回転角が検出できないが、前記第1ウォームホイール51の1回転目と2回転目では前記第1ウォームシャフト40の回転角が180°ずつずれているため、前記第1ウォームホイール51と第1ウォームシャフト40との組み合わせにより、回転目と2回転目の前記第1ウォームホイール51が1回転目であるか、2回転目であるかを判別することができる。
【0040】
したがって、前記第1,2回転角センサ28,29によれば、回転数を検出できる高価な回転角センサを用いずに前記第1ウォームホイール51が1回転以上した場合における回転角を判別することができるため、コストアップを抑止することができる。
【0041】
一方、前記第2ウォームホイール52が回転した際には、図6の(b)に示すように、減速比が10.33であるので、前記第2ウォームホイール52が1回転するにつき前記第2ウォームシャフト41は10回転と1/3回転することになる。
【0042】
そして、前記第2ウォームホイール52が2回転した際には、前記第2ウォームシャフト52が20回転と2/3回転し、前記第2ウォームホイール52が3回転した際には、前記第2ウォームシャフト41が31回転することになる。
【0043】
つまり、前記第2ウォームシャフト41と第2ウォームホイール52によれば、第2ウォームホイール52が1回転する毎に第2ウォームシャフト41の回転角が120°ずつずれているため、それぞれの第3,4回転角センサ30,31が検出した回転角を比較することによって前記第2ウォームホイール52が3回転する(絶対角では540°)までの回転角を判別することができる。
【0044】
すなわち、第1ウォームシャフト40と第1ピニオンシャフト25、および第2ウォームシャフト41と第2ピニオンシャフト26のそれぞれの減速比が整数以外であれば、前記第1,2ウォームホイール25,26と第1,2ウォームシャフト40,41との関係から第1,2ウォームホイール25,26の回転角を広い範囲で正確に検出することができようになっているため、高価の回転角センサを設ける必要がなく、コストアップを抑止することができる。
【0045】
そしてさらに、前記第1回転角センサ28と第2回転角センサ29の比較結果と、前記第3回転角センサ30と第4回転角センサ31の比較結果をそれぞれ組み合わせることによって、第1操舵センサ23が、第1ウォームホイール51が2回転するまで回転角を判別できる一方、第1操舵センサ24が、第2ウォームホイール52が3回転するまで回転角を判別できるため、第1,2ウォームホイール25,26がそれぞれ6回転するまでの回転角が判別可能となる。
【0046】
以下に第1,2操舵機構5,6の制御ブロック図を示す。
【0047】
前記メインコントロールユニット8は、図7に示すように、第1,2回転角センサ28,29の回転角を演算する第1演算手段である第1演算回路59と、第3,4回転角センサ30,31の回転角を演算する第2演算手段である第2演算回路60と、前記第1,2演算回路59,60の電気信号を比較する回転信号比較演算回路58とを備えており、第1,2回転角センサ28,29および第1演算回路59と、第3,4回転角センサ30,31および第2演算回路60がそれぞれ回転角検出機構となっている。
【0048】
前記第1回転角センサ28と第2回転角センサ29から送信される電気信号は、第1演算回路59に送信されると共に、第1ピニオンシャフト25の回転角が演算され、該第1演算回路59を介して回転信号比較演算回路58に送信される。
【0049】
一方、前記第3回転角センサ30と第4回転角センサ31から送信される電気信号は、第2演算回路60に送信されると共に、第2ピニオンシャフト26の回転角が演算され、前記回転信号比較演算回路58に送信される。
【0050】
そして、前記回転信号比較演算回路58に送信された第1ピニオンシャフト25の回転角と第2ピニオンシャフト26の回転角は、前記回転角信号比較演算回路58が比較演算し、この結果、第1,2ピニオンシャフト25,26の回転角が同じである場合には実転操舵角61を出力し前記電動モータ19,20に駆動させ、両ピニオンシャフト25,26の回転角が異なる場合にはセンサ異常信号62を出力する。
【0051】
なお、前記回転信号比較演算回路58には、第1,2回転角センサ28,29および第3,4回転角センサ30,31からの電気信号が直接送信され、第1,2演算回路59,60を介して前記回転信号比較演算回路58に送信された電気信号との比較演算も行われている。
【0052】
このように、前記第1演算回路59と第2演算回路60の電気信号を比較演算することによってパワーステアリング装置の異常を簡単に検出することができる。
【0053】
さらに、異常信号を出力するだけではなく異常を検出し、電気信号の多数決によって第1,2ピニオンシャフト25,26の回転角を制御する方法がある。
【0054】
以下、多数決による制御ブロック図を示す。
【0055】
前記メインコントロールユニット8は、図7に示した前記第1,2演算回路59,60に加えて、図8に示すように、前記第1,3回転角センサ28,30の回転角を演算する第3演算手段である第3演算回路73と、前記第2,4回転角センサ29,31の回転角を演算する第4演算手段である第4演算回路74と、前記第1〜4演算回路59,60,73,74の電気信号を比較する多数決手段である異常検出用比較演算回路70とを備えている。
【0056】
ここで、前記第1演算回路59、第2演算回路60および第3演算回路73から異常検出用比較演算回路70に電気信号が送信され、その際に、前記第1演算回路59、第2演算回路60および第3演算回路73の演算結果が比較され、三つの演算結果が一致しない場合には、異常時制御切換手段71に電気信号が送信される。そして、前記異常時制御切換手段71にて、三つの演算結果のうち二つの演算結果が一致していれば、一つの回路の演算結果が異なっていても一致する二つの演算結果を正しい演算結果として判断することになる。
【0057】
また、前記第1演算回路59、第2演算回路60および第4演算回路74の演算結果のうち、少なくとも二つの演算結果が一致していれば、第1〜3演算回路の演算結果と同様に、一つの演算結果が異なっていても一致する二つの演算結果を正しい結果として判断することができる。
【0058】
したがって、第1演算回路59、第2演算回路60および第3演算回路73、または第1演算回路59、第2演算回路60および第4演算回路74の多数決の結果により第1,2ピニオンシャフト25,26の回転角を検出することによって、より一層パワーステアリング装置の信頼性を向上させることができる。
【0059】
請求項(1) 前記第1演算手段の出力信号と第2演算手段の出力信号とを比較し、この比較結果が異なる場合には、装置の異常を検出することを特徴とする請求項3に記載のパワーステアリング装置。
【0060】
この発明によれば、二つの出力信号を比較することによって、パワーステアリング装置の異常が検出することができる。
【0061】
請求項(2) 前記第1回転角センサと第3回転角センサの出力信号に基づき、前記第1ピニオンシャフトまたは第2ピニオンシャフトの回転角を演算する第3演算手段と、前記第1演算手段と第2演算手段と第3演算手段の出力結果を多数決によって決定する手段と、を備えるとを特徴とする請求項3または(1)に記載のパワーステアリング装置。
【0062】
この発明によれば、それぞれの演算結果の多数決を取ることにより、パワーステアリング装置の信頼性を一層向上させることができる。また、異常を検出するだけではなく、一致する二つの演算結果に基づいてパワーステアリング装置を制御することができる。
【0063】
請求項(3) 前記第2回転角センサと第4回転角センサの出力信号に基づき、前記第1ピニオンシャフトまたは第2ピニオンシャフトの回転角を演算する第4演算手段と、前記第1演算手段と第2演算手段と第4演算手段の主力結果を多数決によって決定する多数決手段と、を備えることを特徴とする請求項3〜(2)のいずれかに記載のパワーステアリング装置。
【0064】
この発明によれば、請求項(2)と同様に、パワーステアリング装置の信頼性を一層向上させることができる。また、異常を検出するだけでなく、一致する二つの演算結果に基づいてパワーステアリング装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】パワーステアリング装置の全体的なシステムを簡略化した図である。
【図2】図1の第1,2操舵機構の拡大平面図である。
【図3】図2の第1操舵機構の縦断面図である
【図4】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図2の第2操舵機構の縦断面図である。
【図6】(a)は第1操舵機構における第1,2回転角センサの関係図、(b)は第2操舵機構における第3,4回転角センサの関係図である。
【図7】第1,2操舵機構のセンサ異常の検出手段を示したブロック図である。
【図8】第1,2操舵機構のセンサ異常時における多数決による検出手段を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
3…ラックバー
19…第1電動モータ(第1電動機)
20…第2電動モータ(第2電動機)
25…第1ピニオンシャフト(回転軸)
26…第2ピニオンシャフト(回転軸)
28…第1回転角センサ
29…第2回転角センサ
30…第3回転角センサ
31…第4回転角センサ
40…第1ウォームシャフト
41…第2ウォームシャフト
51…第1ウォームホイール
52…第2ウォームホイール
59…第1演算回路(第1演算手段)
60…第2演算回路(第2演算手段)
70…異常検出用比較演算回路(多数決手段)
73…第3演算回路(第3演算手段)
74…第4演算回路(第4演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
該電動機に設けられ、n条歯を有するウォームシャフトと、
該ウォームシャフトと噛合し、nの倍数でない歯数を有するウォームホイールと、
該ウォームホイールに設けられた回転軸と、
前記ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、
前記ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、
前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記回転軸の回転角を演算する演算手段と、を備えることを特徴とする回転角検出機構。
【請求項2】
ピニオンシャフトと、
該ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する電動機と、
該電動機に設けられ、n条歯を有するウォームシャフトと、
該ウォームシャフトと噛合し、nの倍数でない歯数を有し、前記ピニオンシャフトに設けられたウォームホイールと、
前記ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、
前記ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、
前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記ピニオンシャフトの回転角を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算されたピニオンシャフトの回転角に基づき、前記電動機を駆動制御する電動機制御手段と、を備えることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項3】
第1ピニオンシャフトと、
該第1ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する第1電動機と、
該第1電動機に設けられ、n条歯を有する第1ウォームシャフトと、
該第1ウォームシャフトと噛合すると共にnの倍数ではない歯数を有し、前記第1ピニオンシャフトに設けられた第1ウォームホイールと、
前記第1ウォームシャフトの回転角を検出する第1回転角センサと、
前記第1ウォームホイールの回転角を検出する第2回転角センサと、
前記第1回転角センサと第2回転角センサの出力信号に基づき、前記第1ピニオンシャフトの回転角を演算する第1演算手段と、
第2ピニオンシャフトと、
該第2ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与する第2電動機と、
該第2電動機に設けられ、n条歯を有する第2ウォームシャフトと、
前記第2ウォームシャフトと噛合すると共にnの倍数ではなく、かつ前記第1ウォームホイールの歯数とは異なる歯数を有し、前記第2ピニオンシャフトに設けられた第2ウォームホイールと、
前記第2ウォームシャフトの回転角を検出する第3回転角センサと、
前記第2ウォームホイールの回転角を検出する第4回転角センサと、
前記第3回転角センサと第4回転角センサの出力信号に基づき、前記第2ピニオンシャフトの回転角を演算する第2演算手段と、
前記第1ピニオンシャフトと第2ピニオンシャフトと噛合するラックバーと、
前記第1演算手段の出力信号と第2演算手段の出力信号とに基づき、前記第1電動機および第2電動機を駆動制御することを特徴とする請求項2に記載のパワーステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−151182(P2006−151182A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344412(P2004−344412)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】