説明

回転電機

【課題】ロータ高回転時における誘起電圧の発生を抑制することにより、ロータ駆動領域を拡大することができる回転電機を提供する。
【解決手段】ステータと、ギャップaを有してステータに対向配置され、永久磁石を備えたロータを有する回転電機において、永久磁石15が発生させる磁束が通過する磁気回路上、或いは永久磁石15が発生させる磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束が通過する磁気回路上に配置されて、磁気抵抗を変化させる可変機構部13を有する。可変機構部13は、ロータ回転軸14上をロータ11と相対回転しながら、ロータ11に対し接近或いは離反する方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機に関し、特に、永久磁石を備えたロータを有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石を備えたロータを有する回転電機である回転磁石型発電機において、高速回転時の発電出力抑制のためにガバナ機構によりステータヨークの磁気抵抗を増大させる、「永久磁石式発電機」(特許文献1参照)が知られている。
この「永久磁石式発電機」は、永久磁石を有するロータからの鎖交磁束により起電力を生ずるステータの、外側のヨークの部分に切り欠きを設けて、可動鉄心を配置し、回転軸に取り付けた円盤にフライウェイトと駒とを備えた腕具を取り付け、回転軸に嵌合させた鍔金具と可動鉄心とをリンクにより結合し、鍔金具はスプリングにより外方にバイアスさせる。
【0003】
従って、ロータの高速回転時には、フライトウェイトに加わる遠心力により、鍔金具が内側に押圧されると、リンクにより可動鉄心がステータから抜け出るため、磁気抵抗が増大して発電出力が抑制される。
【特許文献1】特開平07−107718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータ回転時に発生する誘起電圧が電源電圧に達すると、それ以上ロータ回転数は上がらなくなりロータ駆動領域が狭くなってしまうことから、ロータ駆動領域を広げるためにはロータ高回転時の誘起電圧を抑制する必要がある。また、ロータの振動は、ロータ回転数における共振点で最大となり、共振点によってモータ性能が決定されてしまうことになるため、モータ性能を十分に発揮するためには共振点を回避して駆動することが望まれる。
この発明の目的は、ロータ高回転時における誘起電圧の発生を抑制することにより、ロータ駆動領域を拡大することができる回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明に係る回転電機は、ステータと、空隙を有して前記ステータに対向配置され、永久磁石を備えたロータを有する回転電機において、前記永久磁石が発生させる磁束が通過する磁気回路上、或いは前記永久磁石が発生させる磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束が通過する磁気回路上に配置されて、磁気抵抗を変化させる可変機構を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、ステータと、空隙を有してステータに対向配置され、永久磁石を備えたロータを有する回転電機は、永久磁石が発生させる磁束が通過する磁気回路上、或いは永久磁石が発生させる磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束が通過する磁気回路上に配置された可変機構が、磁気抵抗を変化させる。この結果、ロータ高回転時における誘起電圧の発生を抑制することにより、ロータ駆動領域を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1は、この発明の第1実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。
この第1実施の形態は、ロータ磁気回路可変(d軸方向のインダクタンスLd可変)の場合を示す。図1に示すように、回転電機10は、ロータ(回転子)11、ステータ(固定子)12、及び可変機構部(可変機構)13を有しており、ロータ11とステータ12がロータ回転軸14の中心軸方向に空隙(ギャップ)aを有して対向配置された、アキシャルギャップ型のモータである。
【0008】
ロータ11は、ロータ回転軸14と一体化した円盤状に形成されており、ステータ12に対向する対向面に、略等間隔離間して埋設状態にS極とN極が交互に配置された複数の永久磁石15を有すると共に、対向面の反対側面である背面に、複数の凹部(凹部空間)11aを有している。凹部11aは、永久磁石15と位置が重ならないように、隣接する永久磁石15の境界部分に配置されている。
ステータ12は、軸受け機構16を介しロータ回転軸14から独立して配置されており、ステータバックヨーク部12aに略等間隔離間して突設されたティース12bにコイル巻線を巻回してコイル13が装着されている。
【0009】
可変機構部13は、円盤状に形成された基部13aを有しており、ロータ11に対向する対向面には、ロータ11の凹部11aに対応した形状からなり、凹部11aに埋設状態に装着される突起部13bが複数形成されている。この可変機構部13は、ロータ回転軸14に、例えばボールスプライン機構17を介して、ロータ回転軸14に対し回動自在に、且つ、ロータ11に対し接近離反自在に装着されており、基部13aの外周縁部には、アクチュエータ18からの回動駆動力が伝達される。つまり、可変機構部13は、ロータ回転軸14を回動中心として回動し、回動に伴って、ロータ11と同一速度で同一方向に相対回転しながら、ロータ回転軸14に沿って移動し、ロータ11に対し接近離反する。
【0010】
従って、ロータ11の定常回転時、ロータ11に接近した可変機構部13がロータ11の背面に密着して凹部11aに突起部13bが入り込むことにより、ロータ11の空隙(凹部11a)を埋める装着状態となる。一方、定常回転時より回転数が高いロータ11の高回転時、ロータ11から離反した可変機構部13がロータ11の背面から離れて凹部11aから突起部13bが引き出されることにより、ロータ11に空隙(凹部11a)が形成される離脱状態となる。つまり、回転電機10は、ロータ11に対する可変機構部13の装着状態及び離脱状態を自在に形成することができ、ロータ11と一体化した装着状態により、ロータ11に形成された磁束が通過する凹部11aを閉塞状態にする。
【0011】
このように、回転電機10は、永久磁石15が作る磁束の方向をd軸とし、永久磁石15が作る磁束の方向に対して電気角で90度進んだ方向をq軸として、d軸磁束が主に通過するd軸磁気回路上に位置し磁気抵抗を変更することができる可変機構部13を有している。なお、凹部11aは、可変機構部13が凹部11aを閉塞状態にして形成された磁気回路を通過する磁束(d軸磁束)の方向と電気的に直交する方向の磁束(q軸磁束)の通過を妨げない形状を有している。
【0012】
図2は、図1の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。図2に示すように、ロータ11に対し可変機構部13を離脱状態にすることにより、磁束φaが低下して、ロータ11のd軸方向のインダクタンスLdをロータ11のq軸方向のインダクタンスLqに比べ非常に小さい(Ld≪Lq)状態にすることができる。
一方、ロータ11に対し可変機構部13を装着状態にすることにより、通常の埋め込み形永久磁石(Interior Permanent Magnet:IPM)化して、ロータ11のd軸方向のインダクタンスLdはロータ11のq軸方向のインダクタンスLqに比べ小さい(Ld<Lq)状態になる。
【0013】
このとき、発生するトルク(T)は、
T=P(φa・iq+(Ld−Lq)id・iq)
となる。ここで、P:極対数、id:d軸電流、iq:q軸電流である。
また、共振周波数(fo)は、
fo=(1/2π)・(k/m)1/2
となる。ここで、k:剛性、m:質量(ロータ11と可変機構部13の質量の和)
共振周波数(fo)の式により、質量(m)、剛性(k)が減少すると共振周波数(fo)は減少し、質量(m)、剛性(k)が増加すると共振周波数(fo)は増加することになる。
【0014】
つまり、可変機構部13は、ロータ11と一体化した装着状態或いはロータ11から分離した離脱状態に変化することにより、ロータ11の剛性及び質量を変化させて共振点の位置をずらすことができる。
図3は、ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。図3に示すように、先ず、ロータ11に可変機構部13を装着した状態、即ち、質量(m)、剛性(k)が増加し共振周波数(fo)が増加した状態(a)でロータ11を駆動する。ロータ11の回転数が上昇するに連れて振動数も増加するが、可変機構部13離脱状態での共振周波数(fo)を越えた後に、ロータ11から可変機構部13を離脱させる。
【0015】
これにより、可変機構部13離脱状態に切り替わり、質量(m)、剛性(k)が減少し振周波数(fo)が減少した状態(b)となって、ロータ11の回転数が上昇を続けても、振動数は減少する。図中、破線は、可変機構部13を離脱させた状態でのロータ回転数に対する振動数の変化を示し、実線は、可変機構部13を装着した状態でのロータ回転数に対する振動数の変化を示す。
このように、可変機構部13をロータ11から離脱させて、ロータ磁気回路内にギャップを作るので、磁気抵抗が増加し誘起電圧を低下させることができる。これにより、ロータ高回転領域が拡大する。また、共振点モードを複数持つので、各モードを切り替えて共振点を通過する。これにより、ロータ駆動領域が拡大する。
(第2実施の形態)
【0016】
図4は、この発明の第2実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。
この第2実施の形態は、ロータ磁気回路可変(q軸方向のインダクタンスLq可変)の場合を示す。図4に示すように、回転電機20は、ロータ21、ステータ12、及び可変機構部22を有している。
【0017】
ロータ21は、ステータ12に対向する対向面に、間隔を設けず埋設状態にS極とN極が交互に配置された複数の永久磁石15を有すると共に、対向面の反対側面である背面に、永久磁石15と重なる位置に永久磁石15から離間して複数の凹部21aを有している。可変機構部22は、円盤状に形成された基部22aを有しており、ロータ21に対向する対向面には、ロータ21の凹部21aに対応した形状からなり、凹部21aに埋設状態に装着される突起部22bが複数形成されている。
【0018】
従って、ロータ21の定常回転時、ロータ21に接近した可変機構部22がロータ21の背面に密着して凹部21aに突起部22bが入り込むことにより、ロータ21の空隙(凹部21a)を埋める装着状態となる。一方、定常回転時より回転数が高いロータ21の高回転時、ロータ21から離反した可変機構部22がロータ21の背面から離れて凹部21aから突起部22bが引き出されることにより、ロータ21に空隙(凹部21a)が形成される離脱状態となる。つまり、回転電機20は、ロータ21に対する可変機構部22の装着状態及び離脱状態を自在に形成することができる。
【0019】
このように、回転電機20は、q軸磁束が主に通過するq軸磁気回路上に位置し磁気抵抗を変更することができる可変機構部22を有している。なお、凹部21aは、可変機構部22が凹部21aを閉塞状態にして形成された磁気回路を通過する磁束(q軸磁束)の方向と電気的に直交する方向の磁束(p軸磁束)の通過を妨げない形状を有している。
その他の構成及び作用は、回転電機10と同様である。
図5は、図4の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。
ロータ磁気回路可変(q軸方向のインダクタンスLq可変)において、誘起電圧(Vo)は、
Vo∝(Ld・id+φa)+(Lq・iq)
となる。
【0020】
図5に示すように、ロータ21に対し可変機構部22を離脱状態にすることにより、強め界磁化して、ロータ21のd軸方向のインダクタンスLdをロータ21のq軸方向のインダクタンスLqに比べ大きい(Ld>Lq)状態にすることができる。一方、ロータ21に対し可変機構部22を装着状態にすることにより、通常の表面配置形永久磁石(Surface Permanent Magnet:SPM)化して、ロータ21のd軸方向のインダクタンスLdはロータ21のq軸方向のインダクタンスLqと同一(Ld=Lq)状態になる。
【0021】
このとき、発生するトルク(T)は、
T=P(φa・iq+(Ld−Lq)id・iq)
となる。
また、共振周波数(fo)は、
fo=(1/2π)・(k/m)1/2
となる。
共振周波数(fo)の式により、質量(m)、剛性(k)が減少すると共振周波数(fo)は減少し、質量(m)、剛性(k)が増加すると共振周波数(fo)は増加することになる。
【0022】
図6は、ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。図6に示すように、先ず、ロータ21に可変機構部22を装着した状態、即ち、質量(m)、剛性(k)が増加し共振周波数(fo)が増加した状態(a)でロータ21を駆動する。ロータ21の回転数が上昇するに連れて振動数も増加するが、可変機構部22離脱状態での共振周波数(fo)を越えた後に、ロータ21から可変機構部22を離脱させる。
【0023】
これにより、可変機構部22離脱状態に切り替わり、質量(m)、剛性(k)が減少し振周波数(fo)が減少した状態(b)となって、ロータ21の回転数が上昇を続けても、振動数は減少する。図中、破線は、可変機構部22を離脱させた状態でのロータ回転数に対する振動数の変化を示し、実線は、可変機構部22を装着した状態でのロータ回転数に対する振動数の変化を示す。
つまり、可変機構部22をロータ21から離脱させて、q軸磁気回路内にギャップを作るので、強め界磁型に変わるため、磁束の減少(減磁)を抑制することができる。これにより、減磁耐力が向上する。また、共振点モードを複数持つので、各モードを切り替えて共振点を通過する。これにより、駆動領域が拡大する。
(第3実施の形態)
【0024】
図7は、この発明の第3実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。図8は、図7の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。
この第3実施の形態は、ロータ磁気回路可変(d軸方向のインダクタンスLd可変−磁石による弱め界磁)の場合を示す。図7及び図8に示すように、回転電機30は、ロータ31、ステータ12、及び可変機構部32を有している。
【0025】
ロータ31は、ステータ12に対向する対向面に、間隔を設けず埋設状態に配置された複数の永久磁石33を有すると共に、対向面の反対側面である背面に、隣接する永久磁石33の境界位置に永久磁石33から離間して複数の凹部31aを有している。永久磁石33は、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸14の中心軸方向に沿って逆向きの極性を有している(図8中、矢印参照、矢印の先端側がS極、矢印の後端側がN極)。
可変機構部32は、円盤状に形成された基部32aを有しており、ロータ31に対向する対向面には、ロータ31の凹部31aに対応した形状からなり、凹部31aに埋設状態に装着される突起部32bが複数形成されている。突起部32bは、磁石からなり、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸14の中心軸に直交する方向に沿って逆向きの極性を有している(図8中、矢印参照、矢印の先端側がN極、矢印の後端側がS極)。
【0026】
従って、ロータ31の定常回転時、ロータ31に接近した可変機構部32がロータ31の背面に密着して凹部31aに突起部32bが入り込むことにより、ロータ31の空隙(凹部31a)を埋める装着状態となる。一方、定常回転時より回転数が高いロータ31の高回転時、ロータ31から離反した可変機構部32がロータ31の背面から離れて凹部31aから突起部32bが引き出されることにより、ロータ31に空隙(凹部31a)が形成される離脱状態となる。つまり、回転電機30は、ロータ31に対する可変機構部32の装着状態及び離脱状態を自在に形成することができる。
このように、回転電機30は、d軸磁束が主に通過するd軸磁気回路上に位置し磁気抵抗を変更することができる可変機構部32を有している。
その他の構成及び作用は、回転電機10と同様である。
【0027】
ロータ磁気回路可変(d軸方向のインダクタンスLd可変−磁石による弱め界磁)において、誘起電圧(Vo)は、
Vo∝(Ld・id+φa)+(Lq・iq)
となる。
図8に示すように、ロータ31に対し可変機構部32を離脱状態にすることにより、ロータ31のd軸方向のインダクタンスLdをロータ31のq軸方向のインダクタンスLqに比べ小さい(Ld<Lq)状態にすることができる。一方、ロータ31に対し可変機構部32を装着状態にすることにより、磁束φaが低下して、ロータ31のd軸方向のインダクタンスLdはロータ31のq軸方向のインダクタンスLqに比べ非常に小さい(Ld≪Lq)状態にすることができる。
【0028】
このとき、発生するトルク(T)は、
T=P(φa・iq+(Ld−Lq)id・iq)
となる。
また、共振周波数(fo)は、
fo=(1/2π)・(k/m)1/2
となる。
共振周波数(fo)の式により、質量(m)、剛性(k)が減少すると共振周波数(fo)は減少し、質量(m)、剛性(k)が増加すると共振周波数(fo)は増加することになる。
【0029】
図9は、ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。図9に示すように、先ず、ロータ31から可変機構部32を離脱させた状態、即ち、質量(m)、剛性(k)が減少し共振周波数(fo)が減少した状態(b)でロータ31を駆動する。ロータ回転数が上昇するに連れて振動数も増加するが、可変機構部32離脱状態での共振周波数(fo)を越える前に、ロータ31に可変機構部32を装着する。これにより、可変機構部32装着状態に切り替わり、質量(m)、剛性(k)が増加し共振周波数(fo)が増加した状態(a)となって、ロータ21の回転数が上昇を続けても、振動は減少する。
【0030】
その後、振動数が上昇し、一定値を越えたら、ロータ31から可変機構部32を離脱させる。これにより、可変機構部32離脱状態に切り替わり、質量(m)、剛性(k)が減少し共振周波数(fo)が減少した状態(b)となって、ロータ31の回転数が上昇を続けても、振動は減少する。その後、可変機構部32装着状態での共振周波数(fo)を越えた後に、ロータ31に可変機構部32を装着する。これにより、可変機構部32装着状態に切り替わり、質量(m)、剛性(k)が増加し共振周波数(fo)が増加した状態(a)となって、ロータ21の回転数が上昇を続けても、振動は減少する。
図中、破線は、可変機構部32を離脱させた状態でのロータ回転数に対する振動の変化を示し、実線は、可変機構部32を装着した状態でのロータ回転数に対する振動の変化を示す。
【0031】
つまり、可変機構部32をロータ31から離脱させて、ロータd軸磁気回路内に磁極が対向する磁石が配置されることになるので、磁石磁束を弱めることになり、誘起電圧を低下させることができる。これにより、ロータ高回転領域を拡大することができる。また、共振点モードを複数持つので、各モードを切り替えて共振点を通過する。これにより、駆動領域が拡大する。
(第4実施の形態)
図10は、この発明の第4実施の形態に係る回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の図2と同様の概念説明図である。図11は、図10のロータ磁気回路可変状態における可変機構部の離脱時から装着時への変化途中を説明する概念説明図である。
【0032】
この第4実施の形態は、ロータ磁気回路可変(d軸方向のインダクタンスLd可変)の場合を示し、図10に示すように、回転電機40は、ロータ41、ステータ12、及び可変機構部42を有している。ロータ41は、ステータ12対向面の反対側面である背面に有する複数の凹部41aが、溝状(図2参照)ではなく、可変機構部42に対向する開口部が広がった山形の球面形状に形成されており、可変機構部42は、基部42aのロータ41対向面に、ロータ41の凹部41aに対応した形状の、ロータ41に対向して突出する山形形状からなり、凹部41aに埋設状態に装着される突起部42bが複数形成されている。その他の構成及び作用は、回転電機10のロータ11と同様である。
【0033】
従って、ロータ41に接近した可変機構部42がロータ41の背面に密着して凹部41aに突起部42bが入り込むことにより、ロータ41の空隙(凹部41a)を埋める装着状態となる(図10参照)が、このとき、空隙の埋められる割合が、直線的に変化(溝状の場合)するのではなく、移動始めは少なく(少ない変化率)移動終わりに近くなって大きく(大きな変化率)なるように曲線状に連続して、即ち、変化率が連続して変化する(図11参照)。これにより、磁束の通り道が、徐々に得られるのではなく、凹部41aに突起部42bが完全に入り込む直前になって初めて得られるようになる。
【0034】
このように、回転電機は、ロータの背面に、磁気回路を妨げるように可変機構部を配置して、磁気抵抗(磁気インダクタンス)を変化させ、誘起電圧を低減させている。これにより、ロータ高回転時の誘起電圧を抑制することで駆動領域を高回転域まで拡大することができ、同時に、共振点位置を変更することができるので、共振点を回避したロータ駆動が可能になる。
上述したように、この発明に係る回転電機は、ステータと、空隙を有して前記ステータに対向配置され、永久磁石を備えたロータを有する回転電機において、前記永久磁石が発生させる磁束が通過する磁気回路上、或いは前記永久磁石が発生させる磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束が通過する磁気回路上に配置されて、磁気抵抗を変化させる可変機構を有することを特徴としている。
【0035】
また、この発明において、前記可変機構は、ロータ回転軸上を前記ロータと相対回転しながら、前記ロータに対し接近或いは離反する方向に移動することが好ましい。
また、この発明において、前記可変機構は、ロータ回転軸上の移動により、前記ロータの剛性を変化させて共振点の位置をずらすことが好ましい。
また、この発明において、前記可変機構は、前記ロータと一体化した装着状態により、前記ロータに形成された前記磁束が通過する凹部空間を閉塞状態にすることが好ましい。
また、この発明において、前記凹部空間は、前記可変機構が前記凹部空間を閉塞状態にして形成された磁気回路を通過する磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束の通過を妨げない形状を有することが好ましい。
【0036】
また、この発明において、前記永久磁石は、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸の中心軸方向に沿って逆向きの極性を有し、前記可変機構は、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸の中心軸に直交する方向に沿って逆向きの極性を有する磁石により形成した、前記凹部空間を閉塞状態にする突起部を有することが好ましい。
また、この発明において、前記凹部空間は、前記可変機構に対向する開口部が広がった山形の球面形状を有し、前記可変機構は、前記凹部空間に対応した、前記ロータに対向して突出する山形形状を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。
【図2】図1の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。
【図3】ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。
【図4】この発明の第2実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。
【図5】図4の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。
【図6】ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。
【図7】この発明の第3実施の形態に係る回転電機におけるロータ構造を示し、(a)は定常状態の説明図、(b)は高回転状態の説明図である。
【図8】図7の回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の概念説明図である。
【図9】ロータへの可変機構部装着の有無によるロータ回転数と振動の関係をグラフで示す説明図である。
【図10】この発明の第4実施の形態に係る回転電機におけるロータ磁気回路可変状態を模式的に示す、可変機構部離脱時及び可変機構部装着時の図2と同様の概念説明図である。
【図11】図10のロータ磁気回路可変状態における可変機構部の離脱時から装着時への変化途中を説明する概念説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10,20,30,40 回転電機
11,21,31,41 ロータ
11a,21a,31a,41a 凹部
12 ステータ
12a ステータバックヨーク部
12b ティース
13,22,32,42 可変機構部
13a,22a,32a,42a 基部
13b,22b,32b,42b 突起部
14 ロータ回転軸
15,33 永久磁石
16 軸受け機構
17 ボールスプライン機構
18 アクチュエータ
a ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、空隙を有して前記ステータに対向配置され、永久磁石を備えたロータを有する回転電機において、
前記永久磁石が発生させる磁束が通過する磁気回路上、或いは前記永久磁石が発生させる磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束が通過する磁気回路上に配置されて、磁気抵抗を変化させる可変機構を有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記可変機構は、ロータ回転軸上を前記ロータと相対回転しながら、前記ロータに対し接近或いは離反する方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記可変機構は、ロータ回転軸上の移動により、前記ロータの剛性を変化させて共振点の位置をずらすことを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記可変機構は、前記ロータと一体化した装着状態により、前記ロータに形成された前記磁束が通過する凹部空間を閉塞状態にすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記凹部空間は、前記可変機構が前記凹部空間を閉塞状態にして形成された磁気回路を通過する磁束の方向と電気的に直交する方向の磁束の通過を妨げない形状を有することを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記永久磁石は、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸の中心軸方向に沿って逆向きの極性を有し、
前記可変機構は、隣接する同士が交互に、ロータ回転軸の中心軸に直交する方向に沿って逆向きの極性を有する磁石により形成した、前記凹部空間を閉塞状態にする突起部を有することを特徴とする請求項4または5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記凹部空間は、前記可変機構に対向する開口部が広がった山形の球面形状を有し、
前記可変機構は、前記凹部空間に対応した、前記ロータに対向して突出する山形形状を有することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−171687(P2009−171687A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4912(P2008−4912)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】