説明

回転電機

【課題】スラスト軸受を冷却可能とした回転電機を提供する。
【解決手段】主軸と、主軸のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、主軸のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受と、主軸をジャーナル軸受およびスラスト軸受を介して支持するフレームと、を備え、スラスト軸受は、スラスト軸受を冷却するための冷却液を流す冷却液路が形成されている。また、主軸は、スラストフランジ部に対する負荷側を縮径させた縮径部が形成されており、縮径部側に配置された第2のスラスト軸受部に、主軸の縮径分に相当する拡幅部分を形成し、拡幅部分に冷却液路を形成するための冷却液路形成領域を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の一例として、主軸と、主軸のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、主軸のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受と、主軸をジャーナル軸受およびスラスト軸受を介して支持するフレームとを備えたモータがある。
【0003】
さらに、かかるモータの一例として、軸受隙間に対し圧縮空気を供給することにより、主軸をラジアル方向及びスラスト方向に対し、非接触で支持する静圧空気軸受を有するスピンドルモータが知られている(例えば、特許文献1を参照)。かかる構成のスピンドルモータは、例えば、工作機械のスピンドルを高速で回転させるモータとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したスピンドルモータは、かなりの高速で回転するにも拘わらず、軸受の冷却については改善の余地が残されていた。例えば、スラスト軸受の発熱量は、大きくなりがちであるが、そうなると、スラスト軸受の摩擦力が大きくなるなどの熱による弊害が生じ、要求される寿命を満足できないことも考えられる。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、スラスト軸受を冷却可能とした回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る回転電機は、主軸と、前記主軸のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、前記主軸のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受と、前記主軸を前記ジャーナル軸受およびスラスト軸受を介して支持するフレームとを備えている。そして、前記スラスト軸受に、当該スラスト軸受を冷却するための冷却液を流す冷却液路を形成している。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、スラスト軸受を効果的に冷却することができ、発熱による弊害を未然に防止して、熱による低寿命化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係る回転電機の縦断面視による説明図である。
【図2】図2は、同回転電機の要部を拡大した縦断面視による説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する回転電機の実施形態を詳細に説明する。以下では、回転電機をスピンドルモータとして説明する。ただし、以下の実施形態における例示で本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る回転電機としてのスピンドルモータの縦断面視による説明図、図2は、同スピンドルモータの要部を拡大した縦断面視による説明図である。なお、本実施形態に係るスピンドルモータは、図には表さないが、スピンドル軸と軸受との間に微少な軸受隙間を設けている。すなわち、かかる軸受隙間に圧縮空気を供給することにより、スピンドル軸を非接触支持する構成とした静圧空気軸受構造を有する高速スピンドルモータとしている。
【0012】
図1および図2に示すように、スピンドルモータ10は、主軸1と、主軸1のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、主軸1のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受とを備えている。
【0013】
さらに、スピンドルモータ10は、主軸1をジャーナル軸受およびスラスト軸受を介して支持する筒状のフレーム2を備えている。
【0014】
そして、図1に示すように、フレーム2の先端側にはキャップ21を設けるとともに、フレーム2の基端側にはブラケット22を設けている。
【0015】
キャップ21は、図2に示すように、主軸1を挿通する挿通孔27を形成するキャップ中央部分の壁厚を薄くし、主軸1の先端の縦断面形状に合わせて、断面視で端壁に段差を設けている。
【0016】
また、フレーム2内において、図1に示すように、主軸1の基端側には、固定子31と回転子32とを具備する回転駆動部3が設けられている。
【0017】
固定子31は、積層コアからなる固定子本体31aと、この固定子本体31aに巻回されるとともに、樹脂材料によりコイルがモールドされたモールドコイル部31bとを備えている。なお、図1において、符号33は回転駆動部3の固定子31を冷却するための冷却ジャケットを示し、水冷用、あるいは空冷用の図示しない冷却媒体通路が形成されている。
【0018】
一方、回転子32は、円筒形に形成された回転子本体の外周面にマグネットを設けて構成されており、固定子31との間に僅かな間隙を設けて対向するように主軸1に同心的に取付けられている。なお、回転子本体は、積層コア、あるいは鉄などの削り出し部品によって形成される。
【0019】
かかる構成により、モールドコイル部31bへ通電すると、磁極変位によって回転子32に回転力が生じ、それに伴って主軸1が回転する。
【0020】
本実施形態に係るスピンドルモータ10の軸受は、その配設位置から区分すれば、主軸1を回転させる回転駆動部3が設けられた基端側を支持する基端側軸受と、工具などが取付けられて主軸1の負荷側となる先端側を支持する先端側軸受とから構成されている。
【0021】
そして、基端側軸受としては、図1に示すように、主軸1の基端側を支持する基端側ジャーナル軸受4がその機能を果たしている。一方、先端側軸受としては、図1に示すように、負荷側ジャーナル軸受41と、第1のスラスト軸受5と、第2のスラスト軸受6とがその機能を果たしている。
【0022】
また、本実施形態に係るスピンドルモータ10の軸受は、その機能から区分すれば、主軸1のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、主軸1のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受とから構成されている。
【0023】
そして、ジャーナル軸受は、図1に示すように、基端側ジャーナル軸受4と負荷側ジャーナル軸受41とから構成される。一方、スラスト軸受は、図1および図2に示すように、主軸1の径方向に設けられたスラストフランジ部11を挟持する第1のスラスト軸受5および第2のスラスト軸受6から構成される。
【0024】
ところで、第1のスラスト軸受5と負荷側ジャーナル軸受41とは、共用軸受7として一体的に形成されている。すなわち、共用軸受7は、第1のスラスト軸受5がスラストフランジ部11に当接するフランジ部を有するように形成され、この第1のスラスト軸受5から主軸1の基端側に向けて延在するように、負荷側ジャーナル軸受41が所定長さの筒状に形成されて構成されている。
【0025】
このように、本実施形態に係る主軸1の軸受の具体的な構成としては、基端側ジャーナル軸受4と、第2のスラスト軸受6と、負荷側ジャーナル軸受41と第1のスラスト軸受5とが一体形成された共用軸受7との3つのパーツから構成される。
【0026】
第1のスラスト軸受5の端面には、第1のスラストメタル51が設けられており、主軸1のスラストフランジ部11の回転駆動部3側を向く面に当接している。
【0027】
一方、第2のスラスト軸受6の端面には、第2のスラストメタル61が設けられており、主軸1のスラストフランジ部11の負荷側を向く面に当接している。なお、図中、符号12は、スラストフランジ部11の厚みに相当するスペーサを示しており、第1のスラスト軸受5と第2のスラスト軸受6との間に介設されている。
【0028】
上述してきた構成において、本実施形態におけるスラスト軸受には、当該スラスト軸受を冷却するための冷却液を流すスラスト軸受用冷却液路81が形成されている。
【0029】
すなわち、図1に示すように、フレーム2には、主軸1の大半の部分を囲繞するように冷却液路8が形成されている。しかし、この冷却液路8をスラスト軸受まで延長することは難しいと考えられていた。なお、図1中、符号81aは、冷却液路8に連続するとともに、基端側ジャーナル軸受4と共用軸受7とに形成された環状冷却液路を示す。
【0030】
他方、スラスト軸受は、主軸1を高速回転させた場合、発熱量が多いことが分かっており、その冷却を図ることがスピンドルモータ10の高速化には重要である。
【0031】
そこで、本実施形態に係るスピンドルモータ10では、主軸1に、スラストフランジ部11に対する負荷側を縮径させた縮径部13を形成し、この縮径部13側に配置された第2のスラスト軸受6に、主軸1の縮径分に相当する拡幅部分を形成している。そして、図2に示すように、当該拡幅部分に、スラスト軸受用冷却液路81を形成するための冷却液路形成領域62を形成している。
【0032】
すなわち、第2のスラスト軸受6は、これまでのスラスト軸受よりも主軸1の縮径分(拡幅部分である冷却液路形成領域62の面積に相当)だけ拡張されることになり、当該第2のスラスト軸受6まで冷却液路8を容易に延長することが可能となった。
【0033】
すなわち、図2に示すように、フレーム2に形成された冷却液路8と連通するように、第1のスラスト軸受5、スペーサ12、第2のスラスト軸受6を貫通する延長冷却液路80を形成している。
【0034】
そして、延長冷却液路80の終端を、主軸1の方向に所定長さだけ垂直に延長し、主軸1の周りを囲繞する環状のスラスト軸受用冷却液路81を形成している。
【0035】
このように、冷却液路8から連続するスラスト軸受用冷却液路81を冷却液路形成領域62に形成することによって第2のスラスト軸受6を所望する程度まで冷却することができる。こうして、第1のスラスト軸受5を含むスラスト軸受の冷却が可能となり、スピンドルモータ10のさらなる高速化が可能となった。
【0036】
また、冷却液路形成領域62におけるスラスト軸受用冷却液路81を挟むように、スラスト軸受の径方向にシール材を設けている。ここでは、キャップ21における、第2のスラスト軸受6の冷却液路形成領域62に当接する面に、スラスト軸受用冷却液路81を挟むようにしてシール装着溝25,25を形成し、このシール装着溝25にOリング26を装着している。
【0037】
すなわち、Oリング26を用いた低コストの構成でありながら、形成したスラスト軸受用冷却液路81に冷却液を流しても、第2のスラスト軸受6とキャップ21との間から漏れ出る虞がなく、スピンドルモータ10を安心して使用することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るスピンドルモータ10は、低コストであっても十分なシール状態を実現しつつ、発熱しがちなスラスト軸受の冷却を可能としている。
【0039】
また、本実施形態における第2のスラストメタル61では、主軸1の縮径分に相当する拡幅部分からなる冷却液路形成領域62の先端部を、主軸1の縮径部13に可及的に近接させている。
【0040】
かかる構成としたことにより、外部からスピンドルモータ10の内部への異物の進入などが防止できる。
【0041】
例えば、スピンドルモータ10が切削工具などの適用されている場合、負荷側には切削刃物などが装着されていることが考えられる。その場合、切削作業中に飛び跳ねた切削切粉や切削油などがキャップ21の挿通孔27の内周縁と主軸1の先端部との間隙から進入することも考えられる。しかし、第2のスラストメタル61の先端が主軸1に可及的に近接しているため、これらの進入を防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態における第2のスラストメタル61は、軸受面を第1のスラストメタル51の軸受面と同幅に形成している。
【0043】
これは、第1のスラストメタル51と第2のスラストメタル61とで、スラストフランジ部11を挟持する際の押圧力を等しくするためであり、主軸1をバランスよく軸支可能としている。
【0044】
また、第2のスラストメタル61は、スラストフランジ部11側とは反対側の面を、主軸1の縮径分に相当する分だけ拡幅し、主軸1の方向に対して漸次薄肉状に形成されている。
【0045】
かかる構成としたことにより、図2に示すように、スラストフランジ部11と当接する面積を所定広さに維持しつつ、縮径して生じた主軸1の段差部に必要以上の空間を生じさせることもない。つまり、無用な空気溜りを形成することがない。
【0046】
また、第2のスラストメタル61の先端部についても、当該第2のスラストメタル61以外の第2のスラストメタル61と合わせて、主軸1の縮径部13の周面に可及的に近接した状態となっている。
【0047】
したがって、主軸1との間の極めて狭い間隙部分の長さを長くすることができ、外部からスピンドルモータ10の内部への異物の進入を、より効果的に防止することができる。
【0048】
上述した実施形態のさらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 主軸
2 フレーム
4 基端側ジャーナル軸受
5 第1のスラスト軸受
6 第2のスラスト軸受
8 冷却液路
10 スピンドルモータ
11 スラストフランジ部
51 第1のスラストメタル
61 第2のスラストメタル
62 冷却液路形成領域
81 スラスト軸受用冷却液路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、
前記主軸のラジアル方向を軸支持するジャーナル軸受と、
前記主軸のスラスト方向を軸支持するスラスト軸受と、
前記主軸を前記ジャーナル軸受およびスラスト軸受を介して支持するフレームと、
を備え、
前記スラスト軸受は、
当該スラスト軸受を冷却するための冷却液を流す冷却液路が形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記スラスト軸受は、
前記主軸の径方向に設けられたスラストフランジ部を挟持する第1のスラスト軸受および第2のスラスト軸受を備え、
前記主軸は、
前記スラストフランジ部に対する負荷側を縮径させた縮径部が形成されており、
前記縮径部側に配置された前記第2のスラスト軸受に、前記主軸の縮径分に相当する拡幅部分を形成し、当該拡幅部分に、前記冷却液路を形成するための冷却液路形成領域を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記冷却液路形成領域における前記冷却液路を挟むように、前記スラスト軸受の径方向にシール材を設けた
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1のスラスト軸受および前記第2のスラスト軸受は、前記スラストフランジ部に対向する面をそれぞれ軸受面とした第1のスラストメタルおよび第2のスラストメタルを備えており、
前記第2のスラストメタルは、
前記軸受面を前記第1のスラストメタルの軸受面と同幅に形成する一方、スラストフランジ部側とは反対側の面を、前記主軸の縮径分に相当する分だけ拡幅し、主軸方向に対して漸次薄肉状に形成されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99112(P2013−99112A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239601(P2011−239601)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】