説明

固体振動子発振回路およびこれを用いた物理量センサ

【課題】振動子を定常励振させるまでに要する時間、すなわち、起動時間を短縮するとともに、増幅器の出力電圧波形の飽和や、ノイズの増幅、増幅度変化後の振動子の発振状態の安定性といった問題を解決した固体振動子発振回路を提供する。
【解決手段】振動子12と、振動子からの出力電流を電圧に変換する電流電圧変換回路14と、該電流電圧変換回路14からの出力電圧を増幅するための増幅器16,18を備えた固体振動子発振回路10であって、増幅器16,18は、その増幅器の増幅度を変化させる可変電流スイッチ20,22を備え、可変電流スイッチ20,22は、電流電圧変換回路14からの出力電圧に基づいて、流れる電流の大きさが連続的に変化し、増幅器16,18の増幅度を連続的に変化させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水晶振動子やセラミック発振子などの振動子を発振させるための固体振動子発振回路に関し、より具体的には、振動子の定常励振を早めることが可能な固体振動子発振回路およびこれを用いた物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動子を用いて物理量としての角速度を検出する振動ジャイロセンサは、非常に小型で安価なジャイロセンサとして、カーナビゲーション・システムやロボットの姿勢制御、カメラの手振れ補正等に用いられており、近年これらの製品の需要が拡大するに従って、振動ジャイロセンサの需要も急激に増加している。
【0003】
このような振動ジャイロセンサは、振動子に電圧を印加し振動子を振動させる発振回路と、振動子に加わるコリオリ力を検出する検出回路から構成されている。特に発振回路の構成は、振動子が定常励振するまでにかかる時間に影響するため、物理量センサの起動に要する時間を短縮するために重要な回路である。
【0004】
一般的に、発振回路は、振動子からの出力電流を、電流電圧変換回路によって電圧に変換し、この電圧を増幅器を介して振動子に帰還させることによって、振動子を振動させている。このため、振動子を定常励振させるまでの時間を短くするためには、増幅器の増幅度を大きくすればよい。
【0005】
しかしながら、増幅器の増幅度を大きくした場合には、増幅器の出力電圧波形の飽和や、ノイズの増幅、振動子の発振状態の安定性などに問題が生じていた。
このため、図11に示すように、振動子101と、振動子101からの出力電流を電圧に変換する電流電圧変換回路(第1の増幅器)102と、電流電圧変換回路102の出力信号を整流し直流電圧を得る整流回路103と、電流電圧変換回路102の出力信号を入力し整流回路の出力電圧の値に応じて増幅度が変化する可変利得増幅器105を備え、可変利得増幅器105の出力電圧を入力とするレベル判定回路126と、可変利得増幅器105もしくは可変利得増幅器105の後段に設けられた電圧増幅器106の増幅度を切替えるスイッチ手段121を有し、レベル判定回路126の出力によってスイッチ手段121を制御し振動子101の振幅を制御する発振回路100が開示されている(特許文献1)。
【0006】
この発振回路100では、電源投入時には、スイッチ手段121はオン状態となっており、電圧増幅器106の増幅度を大きくすることで、振動子101が定常励振となるまでに要する時間を短縮している。そして、振動子101が定常励振となった場合には、レベル判定回路126によってスイッチ手段121がオフ状態とされ、電圧増幅器106の増幅度を小さくすることで、可変利得増幅器105の出力電圧波形の飽和や、ノイズの低減維持、振動子101の発振状態の安定化などの問題を解決していた。
【0007】
また、図12に示す発振回路では、振動子101と、振動子101からの出力電流を電圧に変換する電流電圧変換回路(第1の増幅器)102と、電流電圧変換回路102の出力信号を整流し直流電圧を得る整流回路103と、電流電圧変換回路102の出力信号を入力し整流回路103の出力電圧の値に応じて増幅度が変化する可変利得増幅器105と、可変利得増幅器105の出力信号を増幅する第2の増幅器106と、整流回路103の出力電圧と基準電圧発生部125の出力電圧が入力されるレベル判定回路126と、電流電圧変換回路102と第2の増幅器106との間に第3の増幅器120とスイッチ手段121とを有し、電流電圧変換回路102の出力信号が第3の増幅器120の正入力端子に入力され、第3の増幅器120の負入力端子に電源電圧の1/2近傍の大きさの電圧がコンデンサを介して印加され、第3の増幅器120の出力端子と第2の増幅器106の入力端子との間に第2の抵抗とスイッチ手段121が直列に接続され、レベル判定回路126の出力によってスイッチ手段121を制御し、第2の増幅器106の増幅度を変化させて、振動子101の振幅を制御する発振回路100が開示されている(特許文献2)。
【0008】
この発振回路100は、基本的には、図11に示す発振回路100と同様な構成であるが、さらに、第3の増幅器120を備えることによって、第2の増幅器106の増幅度を大きくし、振動子101が定常励振となるまでに要する時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3932661号公報
【特許文献2】特許第4075152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなスイッチ手段121を用いて電圧増幅器106の増幅度を変化させた場合には、スイッチ手段121がオン状態からオフ状態に変化する際に、電圧増幅器106の増幅度が図13に示すように、極端に変化することになる。
【0011】
このため、スイッチ手段121がオン状態からオフ状態に変化する際に、リンギングなどが発生し、振動子101の発振状態が不安定となってしまい、振動子101を定常励振させるまでの時間が長くなってしまう要因となっていた。
【0012】
また、このような発振回路100とした場合には、スイッチ手段121の入切のためにレベル判定回路126やこのレベル判定回路126がレベル判定を行うための基準電圧発生部125が必要となってしまうため、回路の小型化、省電力化の妨げとなってしまっていた。
【0013】
本発明は、このような現状に鑑み、振動子を定常励振させるまでに要する時間、すなわち、起動時間を短縮するとともに、増幅器の出力電圧波形の飽和や、ノイズの増幅、増幅度変化後の振動子の発振状態の安定性といった問題を解決した固体振動子発振回路を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、レベル判定回路や基準電圧発生部などを用いずに、発振回路の増幅度を変化させることで、発振回路の小型化や省電力化を図ることができる固体振動子発振回路を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、このような固体振動子発振回路を備えることで、起動時間が短縮され、また、小型化や省電力化が可能な物理量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の固体振動子発振回路は、
振動子と、
前記振動子からの出力電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、
該電流電圧変換回路からの出力電圧を増幅するための増幅器を備えた固体振動子発振回路であって、
前記増幅器は、その増幅器の増幅度を変化させる可変電流スイッチを備え、
前記可変電流スイッチは、前記電流電圧変換回路からの出力電圧に基づいて、流れる電流の大きさが連続的に変化し、前記増幅器の増幅度を連続的に変化させるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することによって、可変電流スイッチに流れる電流の大きさが、振動子の出力電流に応じた電流電圧変換回路からの出力電圧の大きさによって、連続的に制御されることになる。このため、増幅器の増幅度も連続的に変化することになるため、スイッチの入切の際に、増幅度が極端に変化することがなく、リンギングなども発生しないため、振動子を迅速に定常励振させることができる。
【0018】
また、増幅器の増幅度を変化させるために、レベル判定回路や基準電圧発生部などを備える必要がないため、固体振動子発振回路として小型化や省電力化を図ることが可能となる。従って、このような固体振動子発振回路を用いて、例えば、振動型ジャイロセンサなどの物理量センサを構成すれば、物理量センサ自体の小型化や、省電力化による使用時間の向上を図ることができる。
【0019】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記増幅器は、複数段の増幅器によって構成されており、該複数段の増幅器が、それぞれ可変電流スイッチを備えていてもよい。
【0020】
このように、増幅器を、複数段の増幅器によって構成することによって、固体振動子発振回路としての増幅度を大きくすることができ、振動子を定常励振させるまでに要する時間を短縮することができる。
【0021】
なお、増幅器の段数は、振動子を定常励振させるまでの時間に応じて適宜選択することができる。従って、固体振動子発振回路が用いられる物理量センサに求められる起動時間に応じて、増幅器の段数を適宜選択することによって、物理量センサの起動時間と、物理量センサの省電力化のバランスを図ることができる。
【0022】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記可変電流スイッチには、それぞれカットオフ電圧が設定されており、
可変電流スイッチへの入力電圧が、所定のカットオフ電圧以下となった場合に、流れる電流の大きさが0となり、増幅器の増幅度を最小値とするように構成されていてもよい。
【0023】
このように構成することによって、可変電流スイッチへの入力電圧を徐々に小さくすることによって、増幅器の増幅度を連続的に小さくすることができる。また、可変電流スイッチへの入力電圧がカットオフ電圧以下となった時点で、可変電流スイッチには電流が流れなくなるため、可変電流スイッチへの入力電圧がカットオフ電圧以下で変動したとしても、増幅器の増幅度は常時安定させることができる。
【0024】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記可変電流スイッチが、MOSFETによって構成されていてもよい。
このように、可変電流スイッチをMOSFETとすれば、通過電流制御用の入力電圧をMOSFETのゲート端子に印加すれば、ドレイン−ソース間に流れる電流量を制御することができるため、容易に可変電流スイッチを構成することができる。
【0025】
従って、固体振動子発振回路をIC化した場合などでも、容易に小型化、省電力化を図ることが可能となる。
【0026】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記可変電流スイッチは、電流通過経路に対して並列に抵抗素子が接続されて構成されていてもよい。
このように、可変電流スイッチの電流通過経路に対して並列に抵抗素子を接続することによって、可変電流スイッチがカットオフした状態でも並列に接続した抵抗素子によって増幅器の増幅度を1以上に固定することが可能となる。
【0027】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記振動子が振動を開始したあと、前記複数段の増幅器のうち、初段の増幅器に備わる可変電流スイッチより他の増幅器に備わる可変電流スイッチの方が先にカットオフするようにしてもよい。
【0028】
このように構成することによって、複数段の増幅器のうち、初段の増幅器以外の増幅器に備わる可変電流スイッチが先にカットオフ、すなわち、増幅器の増幅度が最小値となる。このため、初段の増幅器で増幅度が変化した場合であっても、後段の増幅器の増幅度が固定されているために、複数段の増幅器全体で構成する増幅度が安定し、最終段の増幅器の出力電圧安定することになる。
【0029】
従って、振動体に帰還する電圧は常時安定した電圧が入力されることになるため、振動子を定常励振させるまでに要する時間を短縮することができる。また、振動子の発振状態も常時安定させることができる。
【0030】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記複数段の増幅器のうち、初段の増幅器に備わる可変電流スイッチのカットオフ電圧が、他の増幅器に備わる可変電流スイッチのカットオフ電圧よりも小さいようにしてもよい。
【0031】
このように構成することによって、複数段の増幅器のうち、初段の増幅器以外の増幅器に備わる可変電流スイッチが先にカットオフ、すなわち、増幅器の増幅度が最小値となる。このため、初段の増幅器で増幅度が変化した場合であっても、後段の増幅器の増幅度が固定されているために、複数段の増幅器全体で構成する増幅度が安定し、最終段の増幅器の出力電圧も安定することになる。
【0032】
従って、振動体に帰還する電圧は常時安定した電圧が入力されることになるため、振動子を定常励振させるまでに要する時間を短縮することができる。また、振動子の発振状態も常時安定させることができる。
【0033】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記複数段の増幅器のうち、少なくともいずれか1つの増幅器の出力側にオフセット調整回路を設けるようにしてもよい。
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記オフセット調整回路が、ハイパスフィルタであるようにしてもよい。
【0034】
このように、複数段の増幅器のうち、少なくともいずれか1つの増幅器の出力側にハイパスフィルタなどのオフセット調整回路を設けることによって、増幅器の出力にオフセットが生じた場合であっても、このオフセットをキャンセルすることができる。
【0035】
従って、増幅器の出力電圧の振幅を大きく取ることができるので、固体振動子発振回路として増幅度を大きく維持することができ、振動子を定常励振させるまでに要する時間を短縮することができる。
【0036】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記複数段の増幅器のうち、最終段の増幅器の増幅度の最小値が1以上であるようにしてもよい。
このようにすることによって、振動子を定常励振させるまでに要する時間を短縮する為に振動子に電源電圧に飽和する電圧を印加する時に最終段の増幅器の入力信号を小さくすることができ、正常に増幅器を動作させることができる。
【0037】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記電流電圧変換回路と、増幅器の導線路上にローパスフィルタを設けるようにしてもよい。
【0038】
このように、電流電圧変換回路と、増幅器の導線路上に、ローパスフィルタを設けることによって、振動子からの出力電流とともに入力される雑音を除去することができ、振動子へ雑音の少ない出力電圧を印加することができる。このため、振動子が定常励振するまでに要する時間を短縮することができる。
【0039】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記電流電圧変換回路と、可変電流スイッチの導線路上に整流回路を設けるようにしてもよい。
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記整流回路の出力側に平滑回路を設けるようにしてもよい。
【0040】
振動子からの出力電流、及び、電流電圧変換回路からの出力電圧は交流であるため、このように、整流回路及び平滑回路を介することで、直流に変換することで、例えば、可変電流スイッチとしてMOSFETを用いた場合であっても、MOSFETのゲート電圧を直流電圧で制御することができる。
【0041】
また、本発明の固体振動子発振回路は、前記振動子は、水晶振動子またはセラミック発振子であるようにしてもよい。
このように、振動子として水晶振動子を用いれば、安定した発信周波数が得られるので、振動子の振動周波数も周囲の温度変化に対しても安定しており、より温度特性の良い振動型ジャイロセンサなどの物理量センサを実現することができる。
【0042】
また、振動子としてセラミック発振子を用いれば、小型で低コストの振動型ジャイロセンサなどの物理量センサを実現することができる。
【0043】
また、本発明の物理量センサは、上述するいずれかの固体振動子発振回路と、
前記振動子に印加される外力に応じて、該振動子から出力される検出電流を検出する検出回路とを有することを特徴とする。
【0044】
また、本発明の物理量センサは、前記振動子に生じるコリオリ力を検出する振動型ジャイロセンサであってもよい。
このように本発明の固体振動子発振回路を物理量センサに用いることによって、迅速に起動可能で、かつ、高精度なカメラの手振れ補正用のジャイロセンサや、カーナビゲーション・システムのジャイロセンサとすることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、増幅器に、その増幅度を変化させる可変電流スイッチを備え、この可変電流スイッチは、電流電圧変換回路からの出力電圧に基づいて、流れる電流の大きさが連続的に変化し、これに応じて増幅器の増幅度を連続的に変化させている。
【0046】
このため、増幅器の増幅度が極端に変化することがなく、連続的に変化しているため、増幅度の変化の際に、振動子の発振状態が不安定になることもなく、振動子を迅速に定常励振させることができる。
【0047】
また、従来のように、スイッチ手段の切替えのために、レベル判定回路や基準電圧発生部を必要とせず、可変電流スイッチのみで増幅度の変化を行っているため、発振回路の小型化や省電力化を図ることができる。
【0048】
従って、このような固体振動子発振回路を物理量センサに用いることによって、例えば、カメラの手振れ補正用のセンサとして用いる場合であっても、振動子を迅速に定常励振させることができるため、手振れ補整機能を迅速に起動させることができ、カメラ自体の起動時間も短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
【図2】図2は、図1の固体振動子発振回路の各位置P1〜P4における電圧値V1〜V4及び固体振動子発振回路の増幅度の変化を示すグラフである。
【図3】図3は、図1の固体振動子発振回路に用いられる整流回路の一例を示す回路図である。
【図4】図4は、第1の増幅器16の回路図である。
【図5】図5は、第2の増幅器18の回路図である。
【図6】図6は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
【図7】図7(A)は、第1の増幅器16の出力側にオフセット調整回路を設けた場合の地点P1〜P3における電圧V1〜V3を示すグラフ、図7(B)は、第1の増幅器16の出力側にオフセット調整回路を設けない場合の地点P1〜P3における電圧V1〜V3を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
【図9】図9は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
【図10】図10は、本発明の固体振動子発振回路を用いた物理量センサのブロック図である。
【図11】図11は、従来の固体振動子発振回路の一例を示すブロック図である。
【図12】図12は、従来の固体振動子発振回路の一例を示すブロック図である。
【図13】図13は、従来の固体振動子発振回路でスイッチ手段を切替えた際の、電圧増幅器の増幅度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1は、本発明の固体振動子発振回路の回路図、図2は、図1の固体振動子発振回路の各位置P1〜P4における電圧値V1〜V4及び固体振動子発振回路の増幅度の変化を示すグラフである。
【0052】
図1において、符号10は、全体で本発明の固体振動子発振回路を示している。
この固体振動子発振回路10は、振動子12,電流電圧変換回路14,第1の増幅器16,第2の増幅器18,第1の増幅器16用の第1の可変電流スイッチ20,第2の増幅器18用の第2の可変電流スイッチ22,整流回路24,平滑回路26によって構成されている。
【0053】
なお、符号50はオペアンプを、符号52は抵抗素子を、符号54はコンデンサを、符号56はグランド端子をそれぞれ示している。
また、本実施例において、振動子12としては、固有の周波数で発振する素子であれば特に限定されるものではないが、例えば、水晶振動子やセラミック発振子などを用いることができる。
【0054】
このように構成された固体振動子発振回路10では、図示しない駆動電源がオン状態となると、振動子12が発振を開始し電流Ixinが出力される。この電流Ixinが電流電圧変換回路14に入力されると、電流電圧変換回路14からは、電圧変換された信号である電圧V1が出力される(位置P1における電圧)。
【0055】
電圧V1は第1の増幅器16及び整流回路24に入力される。振動子12から出力される電流Ixin及び電圧V1は、交流であるため、整流回路24及び整流回路24の後段に設けられる平滑回路26によって直流に整流する。
【0056】
ここで、整流回路24としては、特に限定されるものではないが、ダイオードを用いてもよいし、より好ましくは、図3に示すような整流回路を用いることによって、駆動電源がオン状態となった時点における固体振動子発振回路10の増幅度を向上させることができる。
なお、図3において、符号58はMOSFETを対称形に接続して構成されるトランスミッションゲートを、符号60は、コンパレータをそれぞれ示している。
【0057】
そして、平滑回路26から出力される電圧V4(位置P4における電圧)が、第1の可変電流スイッチ20及び第2の可変電流スイッチ22の電流制御端子に入力されることになる。第1の可変電流スイッチ20及び第2の可変電流スイッチ22は、電流制御端子に入力される電圧の大きさに応じて、可変電流スイッチ20,22の電流通過経路を流れる電流量を連続的に制御可能に構成されている。
【0058】
可変電流スイッチ20,22としては、このように構成された素子であれば、特に限定されるものではないが、好ましくはMOSFETを用いることができる。MOSFETのゲート端子を電流制御端子として用い、ドレイン−ソース間の経路を電流通過経路とすることによって、容易に可変電流スイッチ20,22を構成することができる。
【0059】
一方、第1の増幅器16に入力された電圧V1は、第1の増幅器16によって増幅され電圧V2として出力される(位置P2における電圧)。
ここで、第1の増幅器16の増幅度は、図4に示すように、第1の増幅器16に備えられた抵抗素子52aと抵抗素子52bの抵抗値、及び、可変電流スイッチ20の抵抗成分RT1の大きさによって決定される。
【0060】
具体的には、抵抗素子52aの抵抗値をRa,抵抗素子52bの抵抗値をRb,抵抗素子52aに流れる電流をIRa,可変電流スイッチ20に流れる電流をIT1とすると、第1の増幅器16の増幅度A1=V2/V1は、以下の数1に示す式によって決定される。
【0061】
【数1】

【0062】
従って、例えば、Raが100kΩ,Rbが10kΩの場合、RT1≒0[Ω]の場合には最大値となり、第1の増幅器16の増幅度A1は11倍となる。また、RT1=∞の場合には最小値となり、第1の増幅器16の増幅度A1は1倍となる。従って、第1の増幅器16の増幅度A1は1〜11倍まで変化することができる。
【0063】
同様に、第2の増幅器18に入力された電圧V2は、第2の増幅器18によって増幅され電圧V3として出力される(位置P3における電圧)。
なお、第2の可変電流スイッチ22は、その電流通過経路に対して並列に抵抗素子52が接続されている。
【0064】
このように構成される第2の増幅器18の増幅度A2は、図5に示すように、第2の増幅器18に備えられた抵抗素子52c,抵抗素子52d,抵抗素子52eの抵抗値、及び、第2の可変電流スイッチ22の抵抗成分RT2の大きさによって決定される。
【0065】
具体的には、抵抗素子52cの抵抗値をRc,抵抗素子52dの抵抗値をRd,抵抗素子52eの抵抗値をReとすると、第2の増幅器18の増幅度A2=V3/V2は、以下の数2に示す式によって決定される。
【0066】
【数2】

【0067】
従って、例えば、Rcが150kΩ,Rdが10kΩ,Reが80kΩの場合、RT2≒0[Ω]の場合には、数3のようになるので、第2の増幅器18の増幅度A2は最大値となり、16倍となる。
【0068】
【数3】

【0069】
一方、RT2=∞の場合には、数4のようになるので、第2の増幅器18の増幅度A2は最小値となり、2.6倍となる。
【数4】

【0070】
図4に示す第1の増幅器16と違い、第2の可変電流スイッチ22がカットオフしても増幅度A2は1倍にはならないので、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮する為に振動子12に電源電圧に飽和する電圧V3を印加するときに、第2の増幅器18の入力信号を小さくすることができ、正常に第2の増幅器18を動作させることができる。
【0071】
なお、第1の増幅器16及び第2の増幅器18の増幅度は、例えば、固体振動子発振回路10を備えた物理量センサに求められる起動時間によって適宜変更することができ、各増幅器16,18の増幅度の最大値を大きくすれば、振動子12が定常励振するまでの時間を短くすることができる。
【0072】
また、第1の可変電流スイッチ20及び第2の可変電流スイッチ22には、それぞれカットオフ電圧が設定されており、可変電流スイッチ20,22の電流制御端子に入力される電圧が、このカットオフ電圧以下となった場合に、可変電流スイッチ20,22の電流通過経路に流れる電流の大きさが0となる。なお、「電流の大きさが0」というのは、流れる電流の大きさが完全に0とならずとも、ほぼ0の状態となっていればよい。
【0073】
これら第1の可変電流スイッチ20及び第2の可変電流スイッチ22を、上述するように、MOSFETによって構成した場合には、MOSFETのスレッシュホールド電圧(Vth)がカットオフ電圧としての役割を果たすことになる。
【0074】
なお、第1の可変電流スイッチ20のカットオフ電圧Voff1を第2の可変電流スイッチ22のカットオフ電圧Voff2よりも小さく設定することが好ましい。
【0075】
ところで、知られているように、MOSFETは、ゲート−ソース間電圧Vgsに応じてドレイン−ソース間電流Idを制御できる素子である。MOSFETのスレッシュホールド電圧は、所定のIdが流れるときのVgsの絶対値で表現することができる。MOSFETは、デプレッションモードとエンハンスメントモードとの動作モードがある。デプレッションモードは、Vgsの絶対値が大きくなるにつれてIdが減少し、エンハンスメントモードは、Vgsの絶対値が大きくなるにつれてIdが増加する。
【0076】
すでに説明したように、第1の可変電流スイッチ20及び第2の可変電流スイッチ22を、MOSFETによって構成した場合、そのスレッシュホールド電圧がカットオフ電圧としての役割を果たす。このとき、MOSFETがデプレッションモードで動作する素子なのか、エンハンスメントモードで動作する素子なのか、によって、カットオフ電圧の大小という表現は変化する。もちろん、固体振動子発振回路10を用いる装置やシステムによって、第1の可変電流スイッチ20や第2の可変電流スイッチ22を、どのモードで動作するMOSFETを用いるかは、適宜選択することができるため、上述の説明においては、カットオフ電圧の大小とは、絶対値としての大小という意味になる。
【0077】
このように、第1の可変電流スイッチ20のカットオフ電圧Voff1を第2の可変電流スイッチ22のカットオフ電圧Voff2よりも小さく設定することによって、第2の可変電流スイッチ22が先にカットオフ、すなわち、電流の大きさが0となる。
【0078】
このように構成することによって、第2の増幅器18の増幅度が、第1の増幅器16の増幅度よりも先に一定値に固定されるため、振動子12への帰還電圧が安定することになる。なお、第1の可変電流スイッチ20のカットオフ電圧Voff1と、第2の可変電流スイッチ22のカットオフ電圧Voff2は、振動子12を定常励振させるまでに望まれる時間に応じて適宜選択することができる。
【0079】
また、この実施例の第1の増幅器16はカットオフせずに、平滑回路26の出力電圧V4に応じて増幅度が変化するため、第1の増幅器16はAGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)増幅器として動作することになる。このため、温度変化などの外的要因によって振動子12からの出力電流が変化した場合であっても、第1の増幅器16によって補償することが可能となる。
【0080】
また、第2の増幅器18の増幅度の最小値が1以上となるように設定することが好ましい。このようにすることによって、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮する為に振動子12に電源電圧に飽和する電圧V3を印加するときに、第2の増幅器18の入力信号V2を小さくすることができ、正常に第2の増幅器18を動作させることができる。
【0081】
以下、図2に基づいて、固体振動子発振回路の各位置P1〜P4における電圧値V1〜V4及び固体振動子発振回路の増幅度の変化について説明する。
まず、電源をオン状態にした直後は、電流電圧変換回路14の出力電圧V1は0Vであり、振動子12の振動が大きくなるにつれて、徐々に電圧V1は大きくなっていく。
【0082】
ここで、平滑回路26への入力電流をI1,平滑回路26の参照電流をIrefとすると、電源をオン状態にした直後は、電圧V1が0Vの為、I1≪Irefとなる。V4は平滑回路26の参照電流Irefに応じた高い値、少なくとも、可変電流スイッチ20,22のカットオフ電圧よりは高い値となる。
【0083】
このため、第1の増幅器16,及び、第2の増幅器18の増幅度は大きくなり、図2に示すように、電源をオン状態にした直後から電圧V3として大きな電圧が得られ、この電圧V3を振動子12に帰還させることによって、振動子12に高い印加電圧を加えることができる。このため、振動子12は迅速に定常励振するようになる。
【0084】
一方、振動子12の振動が大きくなるにつれて、振動子12からの出力電流は大きくなり、これに伴って電圧V1も図2に示すように大きくなる。電圧V1が大きくなるにつれて、平滑回路26への入力電流I1は増加し、これに伴って電圧V4は図2に示すように小さくなる。
【0085】
電圧V4が小さくなるにつれて、上述するように、可変電流スイッチ20,22を通過する電流は小さくなるため、第1の増幅器16,第2の増幅器18の増幅度は徐々に小さくなる。
【0086】
このように、振動子12からの出力電流が大きくなるにつれて、可変電流スイッチ20,22を通過する電流が小さくなるため、電源をオン状態にした直後の固体振動子発振回路10の増幅度が最大となり、徐々に増幅度は小さくなる。
このため、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮できるとともに、振動子12からの出力電流が大きくなった場合にも、増幅器の出力電圧波形が飽和することもなく、また、ノイズを増幅することによって振動子12の発振状態が不安定になることもない。
【0087】
また、可変電流スイッチ20,22は、その電流制御端子に入力される電圧によって連続的に通過する電流値を制御しているため、第1の増幅器16,第2の増幅器18の増幅度が極端に変化することがなく、リンギングなどが発生することがないので、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮できる。
【実施例2】
【0088】
図6は、本発明の固体振動子発振回路の回路図、図7(A)は、第1の増幅器16の出力側にオフセット調整回路を設けた場合の地点P1〜P3における電圧V1〜V3を示すグラフ、図7(B)は、第1の増幅器16の出力側にオフセット調整回路を設けない場合の地点P1〜P3における電圧V1〜V3を示すグラフである。
【0089】
この実施例の固体振動子発振回路10は、図1に示した固体振動子発振回路10と基本的には同様な構成であり、相違点は、オフセット調整回路30を有している点である。なお、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0090】
一般的に、増幅器には素子のばらつきにより、オフセットという現象が生じる。オフセットは入力電圧に対して出力電圧がずれる直流電圧成分のことであり、オフセットが生じた場合には、図7(B)に示すように、増幅器の出力電圧の飽和が生じて、第2の増幅器18の出力電圧V3の振幅が小さくなってしまい、固体振動子発振回路10としての増幅度も小さくなってしまう。
【0091】
このため、この実施例の固体振動子発振回路10では、図6に示すように、第1の増幅器16の出力側に、オフセット調整回路30としてハイパスフィルタが設けられている。
このように、オフセット調整回路30を設けることによって、第1の増幅器16のオフセットがキャンセルされ、図7(A)に示すように、第2の増幅器18の出力電圧V3の振幅を大きく取ることができる。
【0092】
このため、固体振動子発振回路10としての増幅度を大きく維持することができるので、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮できる。特に、電源をオン状態にした直後の固体振動子発振回路10の増幅度を大きくした場合には、いずれかの増幅器の出力側、より好ましくは全ての増幅器の出力側にオフセット調整回路30を設けることによって、適切に増幅を行うことができ、より迅速に、振動子12を定常励振させることができる。
【実施例3】
【0093】
図8は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
この実施例の固体振動子発振回路10は、図1及び図6に示した固体振動子発振回路10と基本的には同様な構成であり、相違点は、ローパスフィルタ32を有している点である。なお、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0094】
振動子12からの出力電流Ixinとともに雑音が発振回路に入ると、雑音成分も一緒に増幅され、振動子12への入力電圧V3に雑音が入り、安定した電圧を振動子12に印加できなくなり、振動子12が定常励振するまでに要する時間が長くなってしまう。
【0095】
このため、この実施例の固体振動子発振回路10では、図8に示すように、電流電圧変換回路14と第1の増幅器16との導線路上にローパスフィルタ32が設けられている。
このように、ローパスフィルタ32を設けることによって、雑音の無い電圧V3を振動子12に印加することが可能になる。
【0096】
このため、安定した電圧V3を振動子12に印加できるので、振動子12を定常励振させるまでに要する時間を短縮できる。
なお、図8に示す構成は、オフセット調整回路30も設けている例であるが、もちろん、これを設けなくてもかまわない。
【実施例4】
【0097】
図9は、本発明の固体振動子発振回路の回路図である。
この実施例の固体振動子発振回路10は、図1,図6,図8に示した固体振動子発振回路10と基本的には同様な構成であり、相違点は、第3の増幅器34を有している点である。なお、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0098】
この実施例の固体振動子発振回路10では、第2の増幅器18の後段に、第3の増幅器34が備えられており、第3の増幅器34には、その増幅度を連続的に変化させるための第3の可変電流スイッチ36が接続されている。
【0099】
実施例1〜3では、固体振動子発振回路10は、2段の増幅器で構成されていたが、特に限定されるものではなく、この実施例のように3段の増幅器で構成してもよいし、実施例には示さないが、3段以上の増幅器で構成しても構わない。
【0100】
増幅器の段数は、固体振動子発振回路10に求められる増幅度の大きさによって適宜設定できるものであり、大きな増幅度が求められない場合には、実施例には示さないが、1段の増幅器で固体振動子発振回路10を構成しても構わない。
【実施例5】
【0101】
図10は、本発明の固体振動子発振回路を用いた物理量センサのブロック図である。
この実施例で用いられる固体振動子発振回路10は、図1,図6,図8,図9に示した固体振動子発振回路10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0102】
図10において、符号70は、全体で本発明の物理量センサを示している。
この物理量センサ70は、固体振動子発振回路10とは別に、振動子12に加わるコリオリ力に応じて、振動子12から出力される検出電流を検出する検出回路72を備えている。
【0103】
検出回路72は、振動子12からの検出電流を電圧に変換する電流電圧変換回路14a,14b,これら電流電圧変換回路14a,14bからの出力電圧を受ける差動増幅回路74,同期検波のための同期検波回路76,位相調整回路78,高調波成分を除去するためのローパスフィルタ80を備えている。
【0104】
振動子12から出力される検出電流は、電流電圧変換回路14a,14bによって電圧に変換され、これらの電圧が、差動増幅回路74に入力されることによって、同相ノイズが除去される。そして、差動増幅回路74の出力電圧は、固体振動子発振回路10の電流電圧変換回路14からの出力を同期検波の基準信号として、同期検波回路76において同期検波される。
【0105】
なお、同期検波の基準信号は、固体振動子発振回路10の電流電圧変換回路14から位相調整回路78を介して同期検波回路76に入力される。
同期検波回路76において同期検波された信号は、ローパスフィルタ80によって高調波成分が除去され、検出信号として出力される。
【0106】
このように、本発明の固体振動子発振回路10を用いて物理量センサ70を構成することによって、振動子12が定常励振するまでに要する時間、すなわち、物理量センサ70の電源投入から使用可能となるまでに要する時間を短くすることができる。
【0107】
また、固体振動子発振回路10として、レベル判定回路や基準電圧発生部などを備えていないため、回路の小型化・省電力化が出来るので、本発明の物理量センサは、例えば、コンパクトデジタルカメラの手振れ補正用のジャイロセンサや携帯電話などのナビゲーション・システムのためのジャイロセンサなどの振動型ジャイロセンサとして用いることができる。
【0108】
また、本発明の物理量センサ70を、このようなジャイロセンサとして用いることによって、コンパクトデジタルカメラや携帯電話などの装置全体として小型化を図ったり、使用時間の向上を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の固体振動子発振回路は、振動子を迅速に定常励振させることができ、かつ、振動子の発振状態を常時安定させることができる。このため、特にカメラの手振れ補整用のジャイロセンサや、カーナビゲーション・システムのジャイロセンサのための発振回路として好適である。
【符号の説明】
【0110】
10 固体振動子発振回路
12 振動子
14 電流電圧変換回路
16 第1の増幅器
18 第2の増幅器
20 第1の可変電流スイッチ
22 第2の可変電流スイッチ
24 整流回路
26 平滑回路
30 オフセット調整回路
32 ローパスフィルタ
34 第3の増幅器
36 第3の可変電流スイッチ
50 オペアンプ
52 抵抗素子
52a 抵抗素子
52b 抵抗素子
52c 抵抗素子
52d 抵抗素子
52e 抵抗素子
54 コンデンサ
56 グランド端子
58 トランスミッションゲート
60 コンパレータ
70 物理量センサ
72 検出回路
74 差動増幅回路
76 同期検波回路
78 位相調整回路
80 ローパスフィルタ
100 発振回路
101 振動子
102 電流電圧変換回路
103 整流回路
105 可変利得増幅器
106 電圧増幅器
120 増幅器
121 スイッチ手段
125 基準電圧発生部
126 レベル判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
前記振動子からの出力電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、
該電流電圧変換回路からの出力電圧を増幅するための増幅器を備えた固体振動子発振回路であって、
前記増幅器は、その増幅器の増幅度を変化させる可変電流スイッチを備え、
前記可変電流スイッチは、前記電流電圧変換回路からの出力電圧に基づいて、流れる電流の大きさが連続的に変化し、前記増幅器の増幅度を連続的に変化させるように構成されていることを特徴とする固体振動子発振回路。
【請求項2】
前記増幅器は、複数段の増幅器によって構成されており、該複数段の増幅器が、それぞれ可変電流スイッチを備えていることを特徴とする請求項1に記載の固体振動子発振回路。
【請求項3】
前記可変電流スイッチには、それぞれカットオフ電圧が設定されており、
可変電流スイッチへの入力電圧が、所定のカットオフ電圧以下となった場合に、流れる電流の大きさが0となり、増幅器の増幅度を最小値とするように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固体振動子発振回路。
【請求項4】
前記可変電流スイッチが、MOSFETによって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の固体振動子発振回路。
【請求項5】
前記可変電流スイッチは、電流通過経路に対して並列に抵抗素子が接続されて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の固体振動子発振回路。
【請求項6】
前記振動子が振動を開始したあと、前記複数段の増幅器のうち、初段の増幅器に備わる可変電流スイッチより他の増幅器に備わる可変電流スイッチの方が先にカットオフすることを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項7】
前記複数段の増幅器のうち、初段の増幅器に備わる可変電流スイッチのカットオフ電圧が、他の増幅器に備わる可変電流スイッチのカットオフ電圧よりも小さいことを特徴とする請求項2から6のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項8】
前記複数段の増幅器のうち、少なくともいずれか1つの増幅器の出力側にオフセット調整回路を設けることを特徴とする請求項2から7のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項9】
前記オフセット調整回路は、ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項8に記載の固体振動子発振回路。
【請求項10】
前記複数段の増幅器のうち、最終段の増幅器の増幅度の最小値が1以上であることを特徴とする請求項2から9のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項11】
前記電流電圧変換回路と、増幅器の導線路上にローパスフィルタを設けることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項12】
前記電流電圧変換回路と、可変電流スイッチの導線路上に整流回路を設けることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項13】
前記整流回路の出力側に平滑回路を設けることを特徴とする請求項12に記載の固体振動子発振回路。
【請求項14】
前記振動子は、水晶振動子またはセラミック発振子であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1つに記載の固体振動子発振回路と、
前記振動子に印加される外力に応じて、該振動子から出力される検出電流を検出する検出回路とを有することを特徴とする物理量センサ。
【請求項16】
前記振動子に生じるコリオリ力を検出する振動型ジャイロセンサであることを特徴とする請求項15に記載の物理量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−206288(P2010−206288A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46928(P2009−46928)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】