説明

固体撮像素子および撮像システム

【課題】高感度かつ高い波長分解能を有する可視・近赤外線用の分光・撮像デバイスを実現することが可能で、空間解像度の高い2次元分光マッピングを可能にする固体撮像素子および撮像システムを提供する。
【解決手段】2次元画素アレイと、2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、各フィルタは、2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置されたて一つのユニットを形成し、複数種類のフィルタは、隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、フィルタバンクが2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、検出すべき波長より短い周期的な微細パターンを有する金属薄膜フィルタを有する固体撮像素子および撮像システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療や美容、健康など様々な分野での非侵襲での検査用途に分光センサが用いられる。
一般的な分光センサは、可視光光源や赤外線光源などの電磁波光や狭帯域波長で発光するレーザー、LEDなどを被写体に照射し、その反射光やラマン散乱によりシフトした光成分をスリットを通してから回折格子に透過・反射させる。これにより、分光センサは、波長方向の信号強度分布を空間的な信号強度分布に変換する。
そして、空間的に分離された各波長成分の電磁波強度を1次元のリニアセンサ、もしくは2次元センサで検出することで入射スペクトルの復元が可能になる。
【0003】
ここで検出器として用いられる固体撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像素子があげられる。
これら撮像素子は一般的なデジタルスチルカメラやカムコーダー、スマートフォンなどの携帯情報端末用にも用いられている撮像素子と基本的には同等のものであり、一般的な撮像用途の固体撮像素子では、その画素数は1000万を超えるほどに多画素化している。
分光センサに用いられる固体撮像素子でも、通常の撮像用途に用いられる固体撮像素子でも、撮像素子の各々の画素は被写体からの光強度に応じた信号電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に応じた電気信号をアナログもしくはデジタルデータとして標本化し画像化する。
【0004】
さて分光センサ・撮像センサの如何によらず、固体撮像素子は特定の電磁波波長帯に感度を有する。
たとえば、可視光線・近赤外線帯域で用いられるCCDやCMOS型固体撮像素子の多くはシリコンをベースに製造される。シリコンはそのバンドギャップより近赤外線(〜1.1μm)よりも短い波長に対してのみ感度を有する。
しかしながら、1.1μmよりも短波長の電磁波に対しては、エネルギー分解能(波長分解能)がなく、蓄積された電荷からは、どの波長の光を検出したかを特定することはできない。それゆえに分光センサでは色・波長ごとの光強度の情報を検出可能にするために回折格子を用いる場合が一般的である。
【0005】
回折格子によって分光をする場合に不回避な問題として、光のエネルギーを波長方向に空間的に分離してしまう問題がある。
つまりは被写体のトータルの光を波長方向に希釈して検出するために高い波長分解能(高分散)を有する分光器を実現するには、それだけ固体撮像素子の感度を高める、もしくは積分時間を長くしてやる必要がある。
さらに、入射光は細いスリットを通してやる必要があるため、センサに入射する光の量がそもそも少ないという課題がある。
【0006】
他方、一般的なカラー撮像デバイスでは、カラー画像を取得するために次のような手法がとられることが多い。
すなわち、2次元画素配列の各画素に特定の波長成分を選択的に透過する数種類のオンチップカラーフィルタを備え、隣接する少数の画素群で複数波長の光強度情報を取得して、デモザイクによる補間処理によってカラー画像を復元する手法を取ることが多い。
これら2次元画素平面に複数種類のフィルタを配置する手法の場合、前述の回折格子およびスリット構造とは異なり、スリットで光を捨てる必要はないが、逆に高い波長分解能で分光したい場合には大きな課題がある。
つまり、フィルタを構成する染料や顔料などの有機素材は塗布により形成されるため、複数種類のフィルタを一度の実装することは事実上不可能である。
つまりRGB3色からカラー画像を合成する通常のイメージング装置と比較して、10色や20色といった極端に多色のフィルタが必要となる分光デバイスではコストが跳ね上がり、実現は容易ではない。
【0007】
しかしながら近年、導体薄膜に検出波長と同程度もしくはそれよりも微細な開口を周期的に配置したホールアレイ構造、または同構造とネガポジ関係にあるアイランドアレイ構造は、プラズモン共鳴体構造として知られている。
そして、このプラズモン共鳴体構造は、周期や開口・ドット形状を最適化することで、透過波長を物理構造で調整可能なフィルタとして機能することが報告されている(非特許文献1,2参照)。
【0008】
さらに、このプラズモン共鳴体を色フィルタとして用いる技術も開示されている(特許文献1、2、3参照)。
【0009】
これらの技術は金属薄膜への周期パターンのパターニングでそれぞれのフィルタが実現できるため、多種類のフィルタを1度に実装できる強みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-177191号公報
【特許文献2】WO2008/082569 A1
【特許文献3】特開2010-165718号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ebbesen, T.W. et al., Nature, Volume 391, Issue 6668, pp. 667-669, 1998
【非特許文献2】P.B.Catrysse & B.A.Wandell, J.Opt.Soc.Am.A, Vol.20, No.12, p.2293-2306, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、先行特許が開示する色フィルタ技術を備えた固体撮像素子にも課題が残る。
【0013】
プラズモン共鳴体構造は、電磁波波長のλ/2,λ/4などの特定間隔の周期構造を繰り返し備えた構造体により分光機能を発生する構造である。このため、波長と同程度の微細化画素に適用するには不適であり、画素サイズが電磁波波長に比べて数倍程度大きい固体撮像素子にのみ適用されるのが現状である。
さらに、高い波長分解能の光信号の強度プロファイルを得るには相当種類のフィルタが必要になるため、空間解像度が更に大きく低下する課題が残る。また、上記各文献には、固体撮像素子の画素出力値から入力スペクトルを復元する具体的手段に関する記述がない。
【0014】
また、出願人は、金属薄膜フィルタを固体撮像素子の画素領域の一部に実装することにより、安価に分光機能を実現する手法を提案している。しかしこの手法では、フィルタを実装できる画素領域が制限されることから、配置できるフィルタの数が少なくなってしまう課題がある。
それにより、波長分解能や検出する信号のSNの観点でフィルタを固体撮像素子全域に実装する場合に比べて劣ってしまう。
さらには、微細加工の精度には制限があり、より高い波長分解能、具体的にはΔλ=1nm程度の超高分散分光をこのフィルタ構造のみで実現するには、微細加工の精度に課題があり、現時点での実現性は低い。
【0015】
また、1種類のプラズモン共鳴フィルタは狭帯域フィルタではなく波長ごとに複雑な透過特性を示す。そのため、それらのフィルタの透過光強度から入力スペクトルを推定するには何らかの信号復元処理が必要になる。
しかしながら、上記の各特許文献にはそれらの波形信号処理に関する手法は開示されていない。
【0016】
本技術は、高感度かつ高い波長分解能を有する可視・近赤外線用の分光・撮像デバイスを実現することが可能で、空間解像度の高い2次元分光マッピングを可能にする固体撮像素子および撮像システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点の固体撮像素子は、光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、上記各フィルタは、上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、上記複数種類のフィルタは、隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている。
【0018】
本発明の第2の観点の撮像システムは、固体撮像素子と、上記固体撮像素子の2次元画素アレイ部に被写体象を結像する光学系と、を有し、上記固体撮像素子は、光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、上記各フィルタは、上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、上記複数種類のフィルタは、隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高感度かつ高い波長分解能を有する可視・近赤外線用の分光・撮像デバイスを実現することが可能で、空間解像度の高い2次元分光マッピングを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るCMOS型固体撮像素子の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る固体撮像素子と本金属薄膜フィルタとの位置関係を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る金属薄膜フィルタの構造例を示す図である。
【図4】ホールアレイ構造とネガポジ反転したアイランド構造のプラズモン共鳴体構造体を示す図である。
【図5】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第1の構造例を示す図である。
【図6】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第2の構造例を示す図である。
【図7】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第3の構造例を示す図である。
【図8】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第4の構造例を示す図である。
【図9】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第5の構造例を示す図である。
【図10】裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第6の構造例を示す図である。
【図11】本実施形態の分光固体撮像素子を含む分光撮像システムで被写体の電磁波スペクトル波形を類推する手法を概説するための図である。
【図12】縦4ユニット、横5ユニットの合計20ユニットのフィルタバンクで構成される分光デバイスで得られる2次元分光マップの概略図である。
【図13】本実施形態に係る固体撮像素子をフィルタバンクの1ユニットの半分の間隔でシフトさせながら各々の場所で色スペクトルを撮影することで空間解像度を上げる手法について概説するための図である。
【図14】本実施形態の分光撮像システムが保持するフィルタ透過率のデータベースの校正方法について示すフローチャートである。
【図15】本実施形態の分光撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【図16】金属薄膜フィルタの製造装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.CMOS型固体撮像素子の全体の概略構成例
2.固体撮像素子と金属薄膜フィルタとの位置関係
3.金属膜フィルタの構成例
4.金属薄膜フィルタを配置した固体撮像素子の構造例
5.被写体の電磁波スペクトル波形を類推する手法
6.分光撮像システムの構成例
7.金属薄膜フィルタの製造方法
【0022】
<1.CMOS型固体撮像素子の全体の概略構成例>
図1は、本実施形態に係るCMOS型固体撮像素子の構成例を示すブロック図である。
【0023】
以下、本技術の金属フィルタを裏面照射型CMOS型固体撮像素子に実装した例を示す。ただし、当然ながら既存の表面照射型CMOS型固体撮像素子でも、CCD型固体撮像素子でも、Si以外の例えばCdSeなどの量子ドット構造を光検出部に用いた撮像素子や有機光電素材を用いたフォトコンダクター型の撮像素子にでも適応が可能である。
【0024】
この固体撮像素子100は、図1に示すように、2次元画画素アレイとしての画素アレイ部110、垂直走査回路120、水平転送走査回路130、およびADC(アナログ−デジタルコンバータ)群であるカラムADC回路140を有する。
固体撮像素子100は、PLL回路150、参照信号RAMPを生成するDAC(デジタル−アナログコンバータ)160、およびセンスアンプ回路(S/A)170を有する。
【0025】
画素アレイ部110は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含む複数の画素110Aがm行n列の2次元状(マトリクス状)に配列されている。
各画素110Aは光電変換の機能を担うフォトダイオードと蓄積された信号を読み出すための数個のトランジスタで構成される画素読出し回路からなる。
図1には、本実施形態に係る4つのトランジスタで構成されるCMOSイメージセンサの画素の一例が示されている。
【0026】
画素110Aにおいて、フォトダイオード111に蓄積された電荷は転送トランジスタ112を介してFD(Floating Diffusion)113に転送される。FD113は増幅トランジスタ114のゲートに接続されている。
信号を読み出したい画素は、選択トランジスタ115をオンすることで選択することができる。選択された画素の信号は、増幅トランジスタ114をソースフォロワ−(Source Follower)駆動することで蓄積電荷量に対応する信号として信号線117に読み出される。また画素信号はリセットトランジスタ116をオンすることでリセットできる。
【0027】
各々の画素から読み出された信号はCDS動作により信号レベルが抽出され、カラムADC回路140、センスアンプ回路170を経てデバイス外部に出力される。
【0028】
カラムADC回路140は、ADCブロックであるカラム処理部(ADC)141が複数列配列されている。
すなわち、カラムADC回路140は、kビットデジタル信号変換機能を有し、カラム処理部141ごとに各垂直信号線(列線)117毎に配置され、列並列ADCブロックが構成される。
各カラム処理部141は、DAC160により生成される参照信号を階段状に変化させたランプ波形である参照信号RAMPと、行線毎に画素から垂直信号線を経由し得られるアナログ信号VSLとを比較する比較器(コンパレータ)141−1を有する。
さらに、各カラム処理部141は、比較時間をカウントし、カウント結果を保持するカウンタラッチ(カウンタ)141−2を有する。
各カウンタ141−2の出力は、たとえばkビット幅の水平転送線LTRFに接続されている。
そして、水平転送線LTRFに対応したセンスアンプ回路170が配置される。
【0029】
カラムADC回路140においては、垂直信号線117に読み出されたアナログ信号電位VSLは列毎(カラム毎)に配置された比較器141−1で参照信号RAMPと比較される。
このとき、比較器141−1と同様に列毎に配置されたカウンタ141−2が動作している。
各カラム処理部141は、ランプ波形のある参照信号RAMPとカウンタ値が一対一の対応を取りながら変化することで垂直信号線117の電位(アナログ信号)VSLをデジタル信号に変換する。
カラム処理部(ADC)141は、参照信号RAMP(電位Vslop)の電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で数えることでデジタル値に変換する。
アナログ信号VSLと参照信号RAMP(Vslop)が交わったとき、比較器141−1の出力が反転し、カウンタ141−2の入力クロックを停止し、または、入力を停止していたクロックをカウンタ141−2に入力し、AD変換を完了させる。
【0030】
以上のAD変換期間終了後、水平転送走査回路130により、カウンタ141−2に保持されたデータが、水平転送線LTRFに転送され、センスアンプ回路170を経て外部の信号処理回路に出力され、所定の信号処理により2次元画像が生成される。
【0031】
外部に出力された画素値データは各々の画素位置では単独のフィルタに対応する強度情報しか持たないため、隣接する異色画素の強度情報から、各々の画素位置での各々の色成分の強度情報をデモザイク処理やコンボリューション処理などの補間により復元される。
その他、ホワイトバランスやガンマ補正、輪郭強調、画像圧縮などの処理が行われ、観測者にとって好ましい、もしくは被写体に忠実な画像が復元される。
【0032】
なお、チップに画像処理プロセッサが実装されたシステムオンチップ型のイメージセンサの場合は、これらの信号処理も同一チップ上で行うことができ、生画像データの他にjpegやmpeg方式などの圧縮画像を出力する場合もある。
【0033】
<2.固体撮像素子と金属薄膜フィルタとの位置関係>
図2は、本実施形態に係る固体撮像素子と本金属薄膜フィルタとの位置関係を説明するための図である。
【0034】
図2において、図1の画素アレイ部110が2次元画素群201として示されている。
2次元画素群201は、たとえば縦・横それぞれ数1000個の画素PXLにより形成され、少ないデバイスでも100万画素程度、多いものでは数1000万画素にも及ぶ巨大な2次元画素群を構成する。
【0035】
本実施形態の金属薄膜フィルタ群(フィルタバンク)202は、2次元画素群(画素アレイ部)201の光入射面に対向するように配置される。
ここで、各フィルタMFLはフィルタバンク202の1つの四角形に対応する。各フィルタ202FLのサイズは光検出画素PXLに対して横(X軸)方向にU画素、縦(Y軸)方向にV画素の画素領域に対して1種類が実装される。
つまり隣接するU*V画素に対して1種類のフィルタMFLが実装される。
【0036】
さにに、フィルタMFLは、横(X軸)方向にK種類、縦(Y軸)方向にL種類で1つのユニット(フィルタバンク)202を構成する。
図2の例では、K=5,L=4の20種類で1つのフィルタバンクを構成する例となっている。
【0037】
さらに、フィルタバンク202は2次元撮像素子全面に横(X軸)方向にNユニット、縦(Y軸)方向にMユニット配置され、N*M種類のフィルタバンクアレイ203によって構成される。
つまり、図2の例のフィルタバンク202は、K=5,L=4の20種類のフィルタを有し、それが、N=4,M=4、計16ユニットあることになる。
【0038】
また、フィルタバンク202、もしくはフィルタバンク群の分光機能ブロックである金属薄膜フィルタは層間絶縁膜にはさまれており、その絶縁膜は複数種類の屈折率であっても構わない。
たとえば、フィルタバンクアレイ203のうち、図2のAラインは屈折率=1.42であり、Bラインは屈折率=1.40、Cラインでは屈折率=1.38、Dラインでは屈折率=1.36などのように設定可能である。
すなわち、2次元撮像素子領域の画素領域ごとに異なる屈折率を持つようにすることができる。
【0039】
ここで、SiOの屈折率のコントロールは、たとえばプラズマCVD法によってSiO膜を成膜する際、CFガスの流量をコントロールすることで屈折率の調整ができる。
【0040】
<3.金属膜フィルタの構成例>
図3(A)〜(D)は、本実施形態に係る金属薄膜フィルタの構造例を示す図である。
図3においては、金属膜フィルタを符号300で示している。
図3(A)はハニカム配列301を、図3(B)は直交行列配列302を、図3(C)は貫通開口と非貫通開口が混在した配列303を、図3(D)は図3(A)のA−A‘線の断面であって凹構造を有する非貫通穴を含む配列304をそれぞれ示している。
【0041】
金属薄膜フィルタ300は、その微細構造パターンにより特定の電磁波波長で自由電子と光とがカップリングした表面プラズモンポラリトンを生ずる。
この金属薄膜フィルタ300は、紫外線波長帯にプラズマ周波数を有する導体素材(具体的には銀やアルミニウム、金などが好適である)からなる薄膜に微細加工を施したサブ波長構造体である。
そして、金属薄膜フィルタ300は、導体の物性とパターン周期・開口径・ドットサイズ・膜厚・構造体の周囲の媒質の物性によって決まる共鳴波長を有する。
基本構造はホールアレイ構造で、検出波長よりも小さい径を有する開口(ホール)Hlを2次元配列状に配置する。
【0042】
ホール配置は図3(A)に示すようなハニカム配列301、あるいは図3(B)に示すような直交行列配列302に配置するのが好適であるが、その他の配列でも周期性がある構造であれば構わない。
ここで、ホール間隔やホールサイズ・膜厚が透過特性のキーパラメーターになる。図3では、ホール開口部は305、導体部分は306で示している。
ホール開口305の開口径は透過させたい波長よりも小さく、直径100[nm]程度が好適である。設計自由度があるため、大凡50[nm]‐200[nm]の範囲であれば構わない。
また、導体薄膜306の厚みは100[nm]程度が好適であるが、10[nm]‐200[nm]程度の範囲であれば構わない。
また、隣接ホール間との間隔307,308を調整することで、透過波長を変化させることができるが、媒質中での実効的な電磁波波長の半波長〜1波長程度の範囲が好適であり、具体的には150[nm]‐1000[nm]程度のホール間隔が好ましい。
【0043】
また、ホールアレイ構造の全ての開口が導体薄膜を貫通している必要はなく、図3(C)および(B)の配列303,304に示すように、一部、もしくは全ての開口は導体上に凹構造を有する非貫通穴でも構わない。
図3(C)および(D)は、貫通開口305と非貫通開口309が周期的に配置した場合の実施例である。
また、ホール開口の形状は加工上、円形が好ましいが楕円形状や多角形形状、星型、十字型、リング型、卍形などであっても構わない。
【0044】
図4(A)および(B)は、ホールアレイ構造とネガポジ反転したアイランド構造のプラズモン共鳴体構造体を示す図である。
アイランド配置400は、図4(A)に示すようなハニカム配列401、図4(B)に示すような直交行列配列402が好適である。
各アイランド403は20‐200[nm]のサイズを有し、アイランド間部404はシリコン酸化膜などの誘電体素材で充填される。
隣接アイランド間の基本間隔405,406は、媒質中での実行的な電磁波波長の半波長が好適であり、設計自由度を加味すると1/4波長〜1波長の範囲が好適である。またアイランド構造の形状は、加工上は円形が好ましいが楕円形状や多角形形状、星型、十字型、リング型、卍形などであっても構わない。
【0045】
<4.金属薄膜フィルタを配置した固体撮像素子の構造例>
図5は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第1の構造例を示す図である。
図5は、2次元固体撮像素子アレイを構成する画素群のうち、隣接する6画素分を抜き出して断面模式図として記載している。当然ながら実際にはこれらの画素が2次元平面に画素数分だけ展開される。
【0046】
図5の固体撮像素子500において、501はオンチップマイクロレンズを、502A,502Bは金属薄膜フィルタを、503は平滑化層を、504はフォトダイオードを、505は信号配線層を、506A,506Bは隣接画素を、それぞれ示している。
【0047】
オンチップマイクロレンズ501は、フォトダイオード504に効率よく光を導くための光学素子である。
フォトダイオード504は、P型領域に囲まれたN型領域、もしくはN型領域に囲まれたP型領域であり、周囲よりも電位の深い領域に光電変換により生じた電子・ホールを信号電荷として蓄積する機能を有する。
【0048】
金属薄膜フィルタ502A,502Bは、たとえばAlやAgにより形成される金属薄膜フィルタにサブ波長間隔で周期的な構造をパターニングした構造体である(図3、図4)。
金属薄膜フィルタ502A,502Bは、フォトダイオード504上方にシリコン酸化膜・窒化膜などからなる平滑化層503を形成し、その上に実装されるのが好ましい。
また、金属薄膜フィルタ502A,502Bを保護する層間絶縁膜・保護膜(平滑化層)507はシリコン酸化膜(SiO)およびSiOを主成分とする複合素材が好適である。そのほかにフッ化マグネシウム(MgF)や中空構造(Air Gap)などを低屈折率の媒質として用いることもできる。
【0049】
ここで導体薄膜フィルタ502A,502Bは、隣接する画素間で共通のパターン構造であることが好ましい。たとえば、図5では隣接3画素506Aが金属薄膜フィルタ502Aを実装し、他の3画素506Bが金属薄膜フィルタ502Bを実装している。
当然ながら、フィルタの種類は2種類に限定されず、かつ同一フィルタを共有する画素数も3画素には限定されず、任意の整数(たとえば隣接8画素共有、64画素共有、128画素共有など)で共有することができる。
【0050】
信号配線層505は、光電変換によってフォトダイオード504に蓄積された信号電荷を外部に読みだすための信号配線層として形成されている。
フォトダイオード504は、隣接するフォトダイオードと電気的に分離するために、STIなどの酸化膜分離により素子分離される他、不純物のインプランテイションによるEDI構造やCION構造などによって電気的に分離されている。
【0051】
図6は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第2の構造例を示す図である。
図6において、図5と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
【0052】
図6のCMOS型固体撮像素子500Aが図5のCMOS型固体撮像素子500と異なる点は、以下の通りである。
このCMOS型固体撮像素子500Aは、オンチップマイクロレンズ501の上層にはSiOやフッ化マグネシウム(MgF)などから形成される低屈折率素材からなる低屈折率平滑化層507Aを有する。ここでオンチップマイクロレンズ501の屈折率は平滑化層507Aの屈折率より高い必要がある。
上述したように、金属薄膜フィルタ502A,502Bは、フォトダイオード504上方にシリコン酸化膜・窒化膜などからなる平滑化層503を形成し、その上に実装されるのが好ましい。
図6の例では、低屈折率平滑化層507Aの上層に平滑化層503が形成され、平滑化層503上に金属薄膜フィルタ502A,502Bが形成されている。
上述したように、フィルタ502A,502Bは、導体薄膜フィルタ(プラズモン共鳴体)502により形成され、たとえばAlやAgにより形成される金属薄膜フィルタ(図3、図4)にサブ波長間隔で周期的な構造をパターニングした構造体である。
【0053】
なお一般的な固体撮像素子では、オンチップマイクロレンズ501の下流(下層)にRGBなどのカラーフィルタが実装されている場合が多く、図6の例においても、有機顔料・染料からなる一般的なカラーフィルタ508を配置することもできる。
それにより、既存のフィルタ508と金属薄膜フィルタ602A,602Bとの組み合わせの自由度が高まり、より高い波長分解能で波長スペクトルを得ることが可能になる。
【0054】
図7は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第3の構造例を示す図である。
図7において、図5および図6と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
【0055】
図7のCMOS型固体撮像素子500Bが図6のCMOS型固体撮像素子500Aと異なる点は、以下の通りである。
このCMOS型固体撮像素子500Bでは、2画素506Aが金属薄膜フィルタ502Aを実装し、別の2画素506Cが金属薄膜フィルタ502Cを実装した例になっている。
2画素506Aと2画素506Cの間の画素506Bには画素全面を遮光する金属薄膜フィルタ502Bが実装されている。
本構成により金属薄膜フィルタ502Aを透過した光が別の金属薄膜フィルタ502Cを備えた画素506Cに混入する混色成分は大幅に低減が可能であり、混色による画質劣化や波長スペクトルの劣化の問題を軽減することができる。
【0056】
上述したように、フィルタ502A,502B、502Cは、導体薄膜フィルタ(プラズモン共鳴体)502により形成され、たとえばAlやAgにより形成される金属薄膜フィルタ(図3、図4)にサブ波長間隔で周期的な構造をパターニングした構造体である。
なお、図7の例においても、有機顔料・染料からなる一般的なカラーフィルタ508を配置することもできる。
【0057】
図8は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第4の構造例を示す図である。
図8において、図5〜図7と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
【0058】
図8のCMOS型固体撮像素子500Cが図6のCMOS型固体撮像素子500Aと異なる点は、以下の通りである。
このCMOS型固体撮像素子500Cでは、金属薄膜フィルタ502A,502BはSiO,SiNなどの誘電体により形成される保護膜としての平滑化層503よって周囲を充填された構造になっている。
図8の固体撮像素子500Cは、3画素506Aが金属薄膜フィルタ502Aを実装し、別の3画素506Bが金属薄膜フィルタ502Bを実装した例である。
当然ながら、金属薄膜フィルタの種類は2種類に限定されず、かつ同一フィルタを共有する画素数も任意の整数で共有することができる。
【0059】
上述したように、フィルタ502A,502Bは、導体薄膜フィルタ(プラズモン共鳴体)502により形成され、たとえばAlやAgにより形成される金属薄膜フィルタ(図3、図4)にサブ波長間隔で周期的な構造をパターニングした構造体である。
なお、図8の例においても、有機顔料・染料からなる一般的なカラーフィルタ508を配置することもできる。
【0060】
図9は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第5の構造例を示す図である。
図9において、図5〜図8と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
【0061】
図9のCMOS型固体撮像素子500Dが図8のCMOS型固体撮像素子500Cと異なる点は、以下の通りである。
導体薄膜フィルタは隣接画素間で共通の構造であることが好ましく、このCMOS型固体撮像素子500Dでは、2画素506A,506B,506Cの6画素ともに同じ金属薄膜フィルタを実装している。
ただし、充填される誘電体により形成される平滑化層503A,503B,503Cは画素グループごとに異なっており、図9の例では、隣接2画素506A,606B,506Cで異なる屈折率を有する。
本金属薄膜フィルタを保護する層間絶縁膜(保護膜)は、たとえばシリコン酸化膜からなり、シリコン酸化膜はプラズマCVD法などにより成膜されるが、その屈折率は成膜条件(たとえばCFの流量)によりコントロールすることが可能である。
当然ながら屈折率は1画素ごと調整する必要はなく、たとえばフィルタバンクごとや領域ごとに異なる屈折率を実現すること構わない。たとえば図2で、I列では屈折率=1.44、II列では1.42,III列では1.40、IV列では1.38などに設定される。
【0062】
上述したように、フィルタ502A,502B、502Cは、導体薄膜フィルタ(プラズモン共鳴体)502により形成され、たとえばAlやAgにより形成される金属薄膜フィルタ(図3、図4)にサブ波長間隔で周期的な構造をパターニングした構造体である。
なお、図9の例においても、有機顔料・染料からなる一般的なカラーフィルタ508を配置することもできる。
【0063】
図10は、裏面照射型(BSI)CMOS型固体撮像素子について本金属薄膜フィルタを配置した第6の構造例を示す図である。
図10において、図5〜図9と同一構成部分は、理解を容易にするために同一符号をもって表している。
【0064】
図10のCMOS型固体撮像素子500Eは、金属薄膜フィルタを配置した図5〜図9のCMOS型固体撮像素子500〜500Dと異なり、フォトニックフィルタを配置した構成を有する。
フォトニックフィルタ512A,512Bは、透過させたい電磁波波長の1/4波長間隔で、高屈折率の媒質と低屈折率の媒質を積層した光学フィルタである。
フォトニックフィルタ512A,512Bは、フィルタ中間の低屈折率層の膜厚を調整することで特定の電磁波波長のみを透過させる狭帯域フィルタの実現が可能である。
図10はそのフォトニックフィルタ512を金属薄膜フィルタのかわりに実装した構造例を示している。
【0065】
フォトニックフィルタ512は、低屈折率層としては、シリコン酸化膜(SIO)やフッ化マグネシウム(MgF)を用いることができる。
他方、高屈折率の媒質としては、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)などの酸化物、窒化物が好ましい。
【0066】
ここで隣接3画素506Aに対してフォトニックフィルタ512Aが実装され、他3画素506Bに対してフォトニックフィルタ512Bが実装されるが、当然ながらフィルタは3画素のみならず、任意の数の隣接画素に対して共有が可能である。
なお、図10の例においても、有機顔料・染料からなる一般的なカラーフィルタ508を配置することもできる。
【0067】
<5.被写体の電磁波スペクトル波形を類推する手法>
次に、本実施形態の分光固体撮像素子を含む分光撮像システムで被写体の電磁波スペクトル波形を類推する手法について概説する。
図11は、本実施形態の分光固体撮像素子を含む分光撮像システムで被写体の電磁波スペクトル波形を類推する手法を概説するための図である。
【0068】
被写体のスペクトル(I_λ0,I_λ1,,,,I_λN)は未知である。
ここでは簡単のため2次元画像ではなく、空間解像度がない波長方向の強度分布のみで考える。被写体の分光プロファイルをN点の波長における強度情報プロファイルとして習得したい場合を考える。知りたい波長スペクトルを次のようにN点の波長で記述する。
【0069】
[数1]
λ_0,λ_1,,,,,λ_N (1)
【0070】
それぞれの波長はλ_0、λ_1,,,,,λ_Nとする。
ここで、本実施形態の固体撮像素子はN種類のフィルタをフィルタバンクとして保持しており、各々のフィルタの透過率は次のような透過特性を持つ。
【0071】
[数2]
F_0_λ0,F_0_λ1,,,,F_0_λN (2−1)
F_1_λ0,F_1_λ1,,,,F_1_λN (2−2)


F_N_λ0,F_N_λ1,,,,F_N_λN (2−3)
【0072】
透過特性は金属薄膜フィルタの構造とその周囲を充填する媒質の屈折率とで決まるため、予め設計・測定しておきデータベースとして撮像デバイス内のメモリに格納しておくことが可能である。
すると固体撮像素子の各々の画素が検出する信号量を、式(3)とすると、推定される被写体の電磁波スペクトルは(2)と(3)から図11に示すように逆行列の計算から直接求めることができる。
【0073】
[数3]
S_0,S_1,,,,,S_N (3)
【0074】
そしてこのことから、信号のSN比(Signal to Noise Ratio)が十分に高く、フィルタの透過率が正確に測定できていれば、N種類のフィルタから、N種類の電磁波波長での電磁波強度が得られ、それから波長スペクトルを計算により算出することが可能になる。
【0075】
さらに本実施形態では、これらのフィルタバンクの透過特性データを書換え可能なデータベースとしてシステム中の記録部分に保持することができる。
ここで、入力スペクトルの波長分解能はΔλ/λ=Nと書くことができる。Δλは波長分解能、λは撮像素子で取りたい帯域幅を示している。フィルタの種類がN種類あるとする。
【0076】
本撮像システムでは、フィルタ特性の行列因子もしくは逆行列因子をデータベースとして保持している。本撮像システムは、各フィルタに対応する画素値との積和演算により入力スペクトルの各波長での強度情報を算出することができ、それらを波長方向に並べることで、入力スペクトルを再現することができる。
【0077】
図12は、縦4ユニット、横5ユニットの合計20ユニットのフィルタバンクで構成される分光デバイスで得られる2次元分光マップの概略図である。
図12において、601がユニットを、602がフィルタバンクアレイを、603は撮像イメージを、それぞれ示している。
【0078】
各ユニット601は、K*L種類(ここでK,Lは1以上の整数)のフィルタからなるフィルタバンクで構成されており、図11で示したように、それぞれは空間解像度を持たない分光スペクトルの再現機能を有する。
さらに、そのフィルタバンクがアレイ状に配置されてフィルタバンクアレイが形成されている。つまり、図12では、4x5=20画素相当の2次元分光撮像イメージ603ができることになる。
【0079】
次に、固体撮像素子をフィルタバンクの1ユニットの半分の間隔でシフトさせながら各々の場所で色スペクトルを撮影することで空間解像度を上げる手法について概説する。
図13は、本実施形態に係る固体撮像素子をフィルタバンクの1ユニットの半分の間隔でシフトさせながら各々の場所で色スペクトルを撮影することで空間解像度を上げる手法について概説するための図である。
【0080】
まず、最初のステップST1では、センサは位置Aにある(1.A)。位置Aでの撮影を終えると次のステップでは位置Bにシフトする(2.B)。
その次のステップST2では、位置Cにシフト(3.C)する。
その次のステップST3では、位置Dにシフトする(4.D)。
そして、ステップST4で位置Dから位置Aにシフトすることで、最初の位置に戻ってくる(5.A)。これらそれぞれの位置(A,B,C,D)で撮影を行い、それぞれの波長データを合成することで、より解像度の高い2次元分光イメージングが可能になる。
【0081】
このように、本実施形態の固体撮像素子は、撮像素子を2次元画素が展開される平面と水平な面内に微小距離だけシフトする機能を有する。その撮像素子をシフトさせるタイミングは画素出力の読出しフレーム時間などのセンサの読出しタイミングに同期する基準時間に対応する。
【0082】
また、上述にように、固体撮像素子は、撮像素子を2次元画素平面に水平な面内に微小距離だけシフトする機能を有し、そのシフト量はフィルタバンク1ユニットのX軸Y軸方向のサイズの半分、もしくはその整数分の1に相当するシフト量である。
2次元撮像素子は微小距離だけセンサをシフトさせる都度、各画素からの分光データを取得することができる。さらに、シフト量の組合せパターンの種類分だけ取得した荒い空間分解能での分光データセットを合成することで、より細かい空間分解能を有する2次元マップを合成することができる。
【0083】
次に、本実施形態の分光撮像システムが保持するフィルタ透過率のデータベースの構成方法について説明する。
図14は、本実施形態の分光撮像システムが保持するフィルタ透過率のデータベースの校正方法について示すフローチャートである。
【0084】
この方法では、校正モードになると(ST11)、データベースの校正を行うか否かの判別を行う(ST12)。
校正を行う場合には、データベースは標準光源を撮影することで(ST13)、新たに上書き更新することができる(ST14)。これにより、フィルタ特性やセンサ特性、システムの長年の経時劣化があった場合でも、高い再現性を維持することができる。
なお、データベースの校正を行わない場合には、データベースの更新は行われない(ST15)。
【0085】
<6.分光撮像システムの構成例>
図15は、本実施形態の分光撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【0086】
図15の分光撮像システム700は、センサモジュール701、光学系702、モジュール制御部703、光学系制御部704、光源制御部705、DSP(信号処理部)706、および撮像素子制御部707を有する。
さらに分光撮像システム700は、画像・スペクトル信号処理部708、データベース709、記録部710、マイクロプロセッサ711、およびユーザーインターフェース712を有する。
分光撮像システム700において、モジュール制御部703、光学系制御部704、光源制御部705、撮像素子制御部707、画像・スペクトル信号処理部708、データベース709、記録部710、マイクロプロセッサ711はバスBSにより接続されている。
【0087】
ユーザーインターフェース712を介して入力されるユーザーによる撮像処理等を受けて、マイクロプロセッサ711が全体的な制御を行う。
センサモジュール701は、上述した本実施形態に係る固体撮像素子7011(図1の固体撮像素子100等)、およびアクチュエータ7012が実装されている。
固体撮像素子7011をシフトさせる機構であるアクチュエータ7012は、静電アクチュエータ、ポリマーアクチュエーター、形状記憶合金などに形成される。
モジュール制御部703は、センサモジュール701のモジュール光学系を制御する制御部7031、アクチュエータ7012を制御する制御部7032を含み、センサモジュール701の駆動系の制御を行う。
光学系702は、対物レンズ7021や固体撮像素子7011の受光面の被写体象を結像する結像レンズ7022等を含んで構成され、光学系制御部704により制御される。
【0088】
光源制御部705は、LED光源7051やレーザー光源7052の制御を行う。
このように、本システムはレーザーやLED光源など可視波長および近赤外線の特定波長で高輝度の光源出力を備えている。
センサモジュール701で得られる撮像データは、DSP706、撮像素子制御部707を通して所定の処理を受けた後、画像・スペクトル信号処理部708等に転送される。
画像・スペクトル信号処理部708において、上述したようなスペクトル波の類推等の信号処理が行われる。このとき、データベース709が上述したように適宜アクセスされ、必要に応じて更新処理等が行われる。
画像・スペクトル信号処理部708は、たとえば記憶部が保持するデータベース709の各フィルタの透過率情報と各画素出力との積和演算により入力スペクトルを推定する信号復元機能を有する。
【0089】
<7.金属薄膜フィルタの製造方法>
以下では、本分光撮像デバイスにおける金属薄膜フィルタの製造方法について概略を述べる。
ただし、本金属薄膜フィルタの構造を高精度で実現できるのであれば、下記に記述の製造方法に限定しない。また、ここでは一般的なCMOS型固体撮像素子の製造プロセスで広く用いられているアルミニウムを用いて、本構造体を実装する手法について説明しているが、当然、それ以外の導体、たとえばAg,Auなどでも構わない。
【0090】
本構造は固体撮像素子の光検出素子上面にシリコン酸化膜などの平滑化層を形成し、その上層に導体薄膜を配置する構造を基本とする。
当然ながら、本構造以下の光検出部は一般的なCMOS型固体撮像素子で良く、更にはCMOS型固体撮像素子に限らずCCD型固体撮像素子でも構わない。したがって、光電変換素子の構造および製造方法については周知の方法を適用可能であり、ここではその説明は省略する。
【0091】
まず、金属薄膜フィルタを実装するベースとなる平滑化層をプラズマCVD法などによりシリコン酸化膜を積層させることにより実現する。
その上に、金属薄膜フィルタのベースとなる金属薄膜をスパッタリングなどで積層する。金属薄膜にフィルタ機能を作り込む微細構造は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、干渉露光法、エッチングなどの技術により作製する。
エッチングは異方性ドライエッチングが好ましく、エッチングに用いるガスは四フッ化メタン(CF)系のエッチングガスが好適である。
その他、六フッ化硫黄、トリフルオロメタン、二フッ化キセノンなども好適である。その他、電子ビームリソグラフィにより基本構造のナノスタンパを作製し、ナノインプリント技術により構造を転写しても構わない。
【0092】
次に、金属薄膜フィルタの空隙部を充填する層間絶縁膜をプラズマCVD法などにより積層する。ここでプラズマCVD法を用いるのは、減圧CVD法に比べて相対的に低い温度(250℃〜400℃)での成膜が可能であるため、Alなどの金属でできた金属薄膜フィルタを実装した後に保護膜を形成するのに有利であるためである。
当然ながら、その他の手法によっても金属薄膜成膜後に用いることが可能な手法であれば、上記手法には限定されない。
なお、可視波長帯域で用いる絶縁層の媒質としては、酸化シリコン(SiO)およびSiOを主成分とする複合素材が好適である。その他にフッ化マグネシウム(MgF)などを用いることができる。
その他、屈折率が大きくなるが、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)などの酸化物、窒化物を用いることもできる。
【0093】
図16は、金属薄膜フィルタの製造装置の概略構成を示す図である。
図16の製造装置800は、高周波電源801,803、インピーダンス整合器802,804、基板805、ターゲット806、真空デュワー807等を含んで構成されている。
【0094】
基板805は、インピーダンス整合器802を介して高周波電源801に接続される。
また、ターゲット806も同様にインピーダンス整合器804を介して高周波電源803に接続される。
ここで高周波電源は、一般に周波数が13.56MHzであることが多い。
真空デュワー807中には、不活性ガス(たとえばArガス)を主成分とする混合ガスを充填し、典型的には0.1〜10mTorr程度のガス圧力が好適である。
【0095】
ターゲット806および基板805に高周波電源803,801による電力を供給することでプラズマを生成させる。ターゲット806に交流電圧を印加することで、探針特性の非線形性による直流バイアス(自己バイアス効果)がかかりターゲット806は時間平均で負電位になる。
したがって、正電荷を持つ気体イオンは電位差による運動エネルギーを獲得してターゲット806に衝突する。この反応によりターゲット物質の表面の原子・分子が飛散し、その物質粒子が基板805に付着して基板805上に薄膜が積層される。
一方で、基板805にも高周波電源801とインピーダンス整合器802が接続されている。そのため、基板805に供給する電力、ガスの種類、圧力を調整することで、衝突するイオンの種類、運動エネルギーの大小、スパッタリングの効果を制御することができる。
スパッタリングによる成膜効果を伴わない、単独のスパッタエッチングを行う場合には、基板805のみに高周波電源を供給すれば良い。
【0096】
また成膜する際に、CFなどのガス流量を調整しながら成膜を行うことで、SiOの屈折率は狭い範囲でコントロールすることができる。
そのため、画素領域を複数に分割して、領域ごとに異なる屈折率を有する誘電体膜を実装することが可能になる。それにより、金属薄膜フィルタの加工パターンが共通であっても、プラズモン共鳴波長が微妙に変化し、その結果、より多数種類のフィルタの実装が可能になり、より高い波長分解能(高分散)での分光データの取得が可能になる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
単一のチップで高感度な分光スペクトルが可能になる。金属薄膜フィルタの単独フィルタサイズと固体撮像素子の単画素のサイズが異なっていても、撮像画素の隣接画素間でフィルタを共有することで次の利点を供する。
すなわち、専用の固体撮像素子ではなくても、フィルタを実装するだけで分光・撮像機能が実現でき、より安価で高性能な分光・撮像デバイスが実現できる。
【0098】
同一パターンの金属薄膜フィルタでも屈折率をX種類に増やすことで、実効的にフィルタの種類をX倍することが可能になり、その結果、より高い波長分解能で分光・撮像することが可能になる。
【0099】
空間解像度の高い2次元分光マッピングが可能になる。8x8画素や16x16画素といった比較的規模の大きい範囲での隣接画素間で金属薄膜フィルタを共有するため、既存の手法では2次元分光マッピングを行う際に、空間解像度が大きく低下する問題があった。本技術による画素シフト法を組み合わせることで、より高い2次元分光撮像の安価な実現が可能になる。
【0100】
N種類のフィルタの透過特性データベースを保持、更にその更新が可能な機能を有することで、そのデータと出力画素値との積和演算により入力スペクトルを高精度で復元することが可能になる。
回折格子などの狭帯域フィルタと違って、各々のフィルタは狭帯域ではないため、光を効率よく使用し、計算により入力スペクトルを推定する手法であるため、高波長分解能と高感度の両立が可能になる。
【0101】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、
上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、
上記各フィルタは、
上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、
上記複数種類のフィルタは、
隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、
上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている
固体撮像素子。
(2)上記フィルタは、
検出すべき波長よりも短い周期的な微細加工パターンを有する金属薄膜フィルタを含み、
上記金属薄膜フィルタは、
プラズマ周波数が紫外線域・可視波長域にある金属により形成され、
サブミクロンスケールの間隔で凹凸部、または孔構造が周期的に配置された1次元格子または2次元格子である
上記(1)記載の固体撮像素子。
(3)上記金属薄膜フィルタは、
検出すべき所望の電磁波波長帯域内の特定の電磁波を選択的に吸収・透過させるフィルタリング機能を有し、当該フィルタが有する凹凸部または孔構造の周期パターンの間の空隙は、中空構造または誘電体で充填されている
上記(2)記載の固体撮像素子。
(4)上記金属薄膜フィルタは、
検出すべき所望の電磁波波長帯域内の特定の電磁波を選択的に吸収・透過させるフィルタリング機能を有し、当該フィルタが有する凹凸部または孔構造の周期パターンの間の空隙は誘電体で充填されており、かつ複数あるフィルタバンクのうち少なくとも1つのフィルタバンクは他のフィルタバンクとは異なる屈折率を有する誘電体でその空隙部が充填されている
上記(2)記載の固体撮像素子
(5)上記金属薄膜フィルタは、
誘電体からなる平滑化層の上層に配置されている
上記(2)から(4)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(6)上記金属薄膜フィルタは、
誘電体により形成される平滑化層の上層に配置され、当該誘電体の平滑化層の屈折率は上記画素領域の複数領域でそれぞれが異なる屈折率を有する
上記(2)から(4)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(7)上記画素領域に対向して配置される上記金属薄膜フィルタの各フィルタは、
2次元画素アレイを形成する各画素と同等もしくはそれよりも広い面積を有し、隣接する横(X軸方向)U画素、縦(Y軸方向)V画素で形成される画素群に対して1種類のフィルタが配置される
上記(2)から(6)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
ここで、U,Vは1以上の整数である。
(8)上記フィルタは、
X軸方向にK種類、Y軸方向にL種類あり、
それぞれのフィルタ群はK*L種類のフィルタで1つのフィルタバンクユニットを形成し、当該フィルタバンクを1ユニット以上有する
上記(1)から(7)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
ここで、K,Lはそれぞれ1以上の整数である。
(9)配置される上記フィルタバンクは、
X軸方向にN種類、Y軸方向にM種類ある
上記(8)記載の固体撮像素子。
ここで、N,Mはそれぞれ1以上の整数である。
(10)上記フィルタバンクの各フィルタの電磁波波長ごとの透過率情報をデータベースとして保持する記憶部を有する
上記(1)から(9)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(11)上記フィルタバンクの各フィルタの波長ごとの透過率情報をデータベースとして保持する記憶部を有し、
上記データベースは、
基準光源を撮影することで再校正および更新が可能である
上記(1)から(9)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(12)上記記憶部が保持するデータベースの各フィルタの透過率情報と各画素出力との積和演算により入力スペクトルを推定する信号処理部を有する
上記(10)または(11)記載の固体撮像素子。
(13)上記2次元画素アレイにより形成される撮像素子は、画素が2次元に展開される平面と水平な面内に微小距離だけシフトする機構を有し、
上記撮像素子をシフトさせるタイミングは画素出力の読出しフレーム時間などのセンサの読出しタイミングに同期する基準時間に対応する
上記(1)から(12)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(14)上記2次元画素アレイにより形成される撮像素子は、画素が2次元に展開される平面と水平な面内に微小距離だけシフトする機構を有し、
そのシフト量はフィルタバンク1ユニットのX軸Y軸方向のサイズの半分、もしくはその整数分の1に相当するシフト量であり、
上記撮像素子を微小距離だけセンサをシフトさせる都度、各画素からの分光データを取得し、更にシフト量の組合せパターンの種類分だけ取得した荒い空間分解能での分光データセットを合成することで、より細かい空間分解能を有する2次元マップを合成する処理部を有する
上記(1)から(13)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(15)CMOS型固体撮像素子であり、
上記各画素は画素ごとにオンチップ集光素子を備え、上記集光素子よりも屈折率が小さい素材をオンチップ集光素子の上層に積層することで、集光機能を維持したまま平滑化層が配置され、当該平滑化層上に上記フィルタが配置されている
上記(1)から(14)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(16)
上記フィルタは、
高屈折率の媒質と低屈折率の媒質を積層した電磁波波長を透過させる光学フィルタを含む
上記(1)、(8)から(15)のいずれか一に記載の固体撮像素子。
(17)固体撮像素子と、
上記固体撮像素子の2次元画素アレイ部に被写体象を結像する光学系と、を有し、
上記固体撮像素子は、
光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、
上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、
上記各フィルタは、
上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、
上記複数種類のフィルタは、
隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、
上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている
撮像システム。
【符号の説明】
【0102】
100・・・固体撮像素子、110・・・画素アレイ部、110A・・・画素、111・・・フォトダイオード(光電変換素子)、112・・・転送トランジスタ、113・・・FD、114・・・増幅トランジスタ、115・・・選択トランジスタ、116・・・リセットトランジスタ、120・・・垂直走査回路、130・・・水平転送走査回路、140・・・カラムADC回路、150・・・PLL回路、150・・・DAC(デジタル−アナログコンバータ)、170・・・センスアンプ回路(S/A)、201・・・2次元画素群(画素アレイ部)、202・・・金属薄膜フィルタ群(フィルタバンク、ユニット)、203・・・フィルタバンクアレイ、300・・・金属薄膜フィルタ、500,500A〜500E・・・固体撮像素子、501・・・オンチップマイクロレンズ、、502A,502B,502C・・・金属薄膜フィルタ、503・・・平滑化層、504・・・フォトダイオード、505・・・信号配線層、506A,506B,506C・・・隣接画素、507,507A・・・平滑化層,512A,512B・・・フォトニックフィルタ、700・・・分光撮像システム、701・・・センサモジュール、702・・・光学系、703・・・モジュール制御部、704・・・光学系制御部、705・・・光源制御部、706・・・DSP(信号処理部)、707・・・撮像素子制御部、708・・・画像・スペクトル信号処理部、709・・・データベース、710・・・記録部、711・・・マイクロプロセッサ、712・・・ユーザーインターフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、
上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、
上記各フィルタは、
上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、
上記複数種類のフィルタは、
隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、
上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている
固体撮像素子。
【請求項2】
上記フィルタは、
検出すべき波長よりも短い周期的な微細加工パターンを有する金属薄膜フィルタを含み、
上記金属薄膜フィルタは、
プラズマ周波数が紫外線域・可視波長域にある金属により形成され、
サブミクロンスケールの間隔で凹凸部、または孔構造が周期的に配置された1次元格子または2次元格子である
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
上記金属薄膜フィルタは、
検出すべき所望の電磁波波長帯域内の特定の電磁波を選択的に吸収・透過させるフィルタリング機能を有し、当該フィルタが有する凹凸部または孔構造の周期パターンの間の空隙は、中空構造または誘電体で充填されている
請求項2記載の固体撮像素子。
【請求項4】
上記金属薄膜フィルタは、
検出すべき所望の電磁波波長帯域内の特定の電磁波を選択的に吸収・透過させるフィルタリング機能を有し、当該フィルタが有する凹凸部または孔構造の周期パターンの間の空隙は誘電体で充填されており、かつ複数あるフィルタバンクのうち少なくとも1つのフィルタバンクは他のフィルタバンクとは異なる屈折率を有する誘電体でその空隙部が充填されている
請求項2記載の固体撮像素子
【請求項5】
上記金属薄膜フィルタは、
誘電体からなる平滑化層の上層に配置されている
請求項2記載の固体撮像素子。
【請求項6】
上記金属薄膜フィルタは、
誘電体により形成される平滑化層の上層に配置され、当該誘電体の平滑化層の屈折率は上記画素領域の複数領域でそれぞれが異なる屈折率を有する
請求項2記載の固体撮像素子。
【請求項7】
上記画素領域に対向して配置される上記金属薄膜フィルタの各フィルタは、
2次元画素アレイを形成する各画素と同等もしくはそれよりも広い面積を有し、隣接する横(X軸方向)U画素、縦(Y軸方向)V画素で形成される画素群に対して1種類のフィルタが配置される
請求項2記載の固体撮像素子。
ここで、U,Vは1以上の整数である。
【請求項8】
上記フィルタは、
X軸方向にK種類、Y軸方向にL種類あり、
それぞれのフィルタ群はK*L種類のフィルタで1つのフィルタバンクユニットを形成し、当該フィルタバンクを1ユニット以上有する
請求項1記載の固体撮像素子。
ここで、K,Lはそれぞれ1以上の整数である。
【請求項9】
配置される上記フィルタバンクは、
X軸方向にN種類、Y軸方向にM種類ある
請求項8記載の固体撮像素子。
ここで、N,Mはそれぞれ1以上の整数である。
【請求項10】
上記フィルタバンクの各フィルタの電磁波波長ごとの透過率情報をデータベースとして保持する記憶部を有する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項11】
上記フィルタバンクの各フィルタの波長ごとの透過率情報をデータベースとして保持する記憶部を有し、
上記データベースは、
基準光源を撮影することで再校正および更新が可能である
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項12】
上記記憶部が保持するデータベースの各フィルタの透過率情報と各画素出力との積和演算により入力スペクトルを推定する信号処理部を有する
請求項10記載の固体撮像素子。
【請求項13】
上記2次元画素アレイにより形成される撮像素子は、画素が2次元に展開される平面と水平な面内に微小距離だけシフトする機構を有し、
上記撮像素子をシフトさせるタイミングは画素出力の読出しフレーム時間などのセンサの読出しタイミングに同期する基準時間に対応する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項14】
上記2次元画素アレイにより形成される撮像素子は、画素が2次元に展開される平面と水平な面内に微小距離だけシフトする機構を有し、
そのシフト量はフィルタバンク1ユニットのX軸Y軸方向のサイズの半分、もしくはその整数分の1に相当するシフト量であり、
上記撮像素子を微小距離だけセンサをシフトさせる都度、各画素からの分光データを取得し、更にシフト量の組合せパターンの種類分だけ取得した荒い空間分解能での分光データセットを合成することで、より細かい空間分解能を有する2次元マップを合成する処理部を有する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項15】
CMOS型固体撮像素子であり、
上記各画素は画素ごとにオンチップ集光素子を備え、上記集光素子よりも屈折率が小さい素材をオンチップ集光素子の上層に積層することで、集光機能を維持したまま平滑化層が配置され、当該平滑化層上に上記フィルタが配置されている
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項16】
上記フィルタは、
高屈折率の媒質と低屈折率の媒質を積層した電磁波波長を透過させる光学フィルタを含む
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項17】
固体撮像素子と、
上記固体撮像素子の2次元画素アレイ部に被写体象を結像する光学系と、を有し、
上記固体撮像素子は、
光電変換素子を含む画素がアレイ状に配列された2次元画素アレイと、
上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように配置され、検出すべき波長よりも短い周期的な微細パターンを有する分光機能を備えた複数種類のフィルタと、を有し、
上記各フィルタは、
上記2次元画素アレイの各画素の光電変換素子よりも大きく、隣接する複数の光電変換素子群に対して1種類のフィルタが配置された一つのユニットを形成し、
上記複数種類のフィルタは、
隣接するユニット群に対して配置されてフィルタバンクを形成し、
上記フィルタバンクが上記2次元画素アレイの画素領域に対向するように、NxMユニット(但し、N,Mは1以上の整数)配置されている
撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−30626(P2013−30626A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165786(P2011−165786)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】