説明

固定シート

【課題】固定シートの片面に印刷を施して、屋外や直射日光の当る屋内でのウィンドディスプレイに使用する場合、再剥離時、糊残りが発生せず、僅かな剥離力で剥離可能な固定シートを提供するものである。
【解決手段】基材上の少なくとも片面に易接着層、シリコーン層を順次積層した固定シートにおいて、易接着層がオイル状物質を含有することを特徴とする固定シートである。さらにオイル状物質は分子中にN、P、S、Sn原子を少なくとも1種以上有することを特徴とする固定シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り直しが簡単にでき、再剥離時には僅かな剥離力で剥離でき、糊残りが発生しない固定シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上にシリコーン層を設け、他方の面に印刷適性処理を施した固定シートが提供されてきた(特許文献1)。このシートの片面に印刷を施し、シリコーン層面を窓ガラス等の表面がフラットな被着体に貼ることにより、ウィンドディスプレイや屋内表示を容易に行うものである。シートを剥がしても糊残りの問題もなく、何回貼っても剥がせるという特徴を有するものであった。(本明細書において、糊とはシリコーン層をさす。)
【0003】
しかし、被着体の表面がOH基を持つものであると、時間の経過と共にシリコーン層が被着体と密着し、固定シートを再剥離すると糊残りが発生する問題があった。特に被着体がガラスの場合、屋外で使用したり、直射日光が直接当る屋内で使用したりすると、数ヶ月経って再剥離すると糊残りが発生するといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004ー59800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外や直射日光の当る屋内でのウィンドディスプレイ等用の固定シートおよび機能を付与した固定シートにおいて、再剥離時、糊残りが発生せず、僅かな剥離力で剥離可能な固定シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、基材上の少なくとも片面に易接着層、シリコーン層を順次積層した固定シートにおいて、易接着層にオイル状物質を含有することを特徴とする固定シートである。
第2の発明は、前記オイル状物質は分子中にN、P、S、Sn原子を少なくとも1種以上有することを特徴とする第1発明記載の固定シートである。
【0007】
第3の発明は、前記易接着層のバインダーが、水酸基価10〜45がポリエステル系樹脂、水酸基価10〜45がアクリル系樹脂より選ばれる樹脂よりなることを特徴とする第1、2発明記載の固定シート。
第4の発明は、前記シリコーン層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものであることを特徴とする第1〜3発明記載の固定シートである。
第5の発明は、前記基材の他の面に1つ以上の機能層を設けること、および、または基材自身に1種以上の機能が付与されたことを特徴とする第1〜4発明記載の固定シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固定シートは、屋外や直射日光の当る屋内でのウィンドディスプレイにおいて、再剥離時、糊残りが発生せず、僅かな剥離力で剥離可能であり、何回でも繰り返し使用することができる。また、機能を施したものは、紫外線カットフィルム、熱線カットフィルム等の固定シートとして種々の用途で活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)基材
各種プラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル等からなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱い易さ、耐熱性、強度の面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常12〜200μmの範囲のものを用いる。
【0010】
(2)易接着層
シリコーン層の被着体への糊残りは、シリコーン層とガラス界面が長期間にわたり紫外線下にさらされた時に発生する。シリコーン層の形成において、シリコーンの硬化反応に寄与しなかったSiH基がある程度残存している。環境温度の上昇によって、残存しているSiH基が徐々に被着体との界面へブリードしてくる。ブリードしたSiH基に紫外線が照射されると、被着体側の表面のOH基と強固に結合する。このため、基材フィルムを剥がす際、シリコーン層は層間破壊し、糊残りを生ずる。特に、被着体がガラスの場合、他の被着体に比べ表面に多数のOH基を持つため、糊残りがし易くなる。
易接着層にオイル状物質を含有させると、糊残りを抑えることができる。易接着層中のオイル状物質は、時間が経過するにつれシリコーン層を通り、被着体との界面までブリードしていき、前記のシリコーン層中の残存SiH基とガラス表面のSiOH基との反応を阻害するものである。易接着層にオイル状物質を含有させる量は、3〜18重量%の範囲が好ましい。オイル状物質が前記範囲未満であるとブリード量が少なくなり糊残りに対して効果が弱くなる。前記範囲を超えると易接着層の表層におけるオイル状物質過多のためシリコーン層との密着力を低下させる。
さらに、オイル状物質の分子中に、付加型シリコーンの硬化反応で触媒毒となり得る原子N、P、S、Snを少なくとも1種以上有するものは、上記の反応に対して触媒毒として働き、糊残り防止に著しい効果が現れる。
易接着層のバインダーには、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらの1種以上を選択して用いる。
なかでも、水酸基価が10〜45のポリエステル系樹脂、水酸基価が10〜45アクリル系樹脂より選ばれる樹脂を使用するとよい。この2種の樹脂を併用してもよい。上記の樹脂を使用することによって、樹脂中の水酸基とシリコーン層中のSiH基とに親和性が付与され、易接着層とシリコーン層界面における接着強度が向上する。しかし、水酸基価が10未満であるとシリコーン層との接着力が弱く、シリコーン層の基材からの脱落が生じやすくなる。逆に45を超えるとシリコーン層の硬化反応に支障をきたす。さらに、特にアクリル系樹脂を用いると、その特性上、透明性、耐候性の優れたものとなる。
易接着層の厚みは0.05〜5.0μmの範囲が好ましい。0.05μm未満であると、易接着効果が十分に得られず、5.0μm超えると易接着層自身の基材密着性が低下する。
(3)オイル状物質
オイル状物質とは、常温で液体あるいはペースト状のオイルであり、植物油、油脂、鉱物油、合成潤滑油、界面活性剤、可塑剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。これらのものを1種以上選択して用いることができる。
植物油としてはアマニ油、カヤ油、サフラー油、大豆油、シナギリ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヌカ油、綿実油、オリーブ油、サザンカ油、つばき油、ヒマシ油、落花生油、バーム油、椰油等が挙げられる。油脂としては、牛脂、豚油、羊油、カカオ油等、鉱物油としてはマシン油、絶縁油、タービン油、モーター油、ギヤ油、切削油、流動パラフィン等を挙げることができる。合成潤滑油としては、化学大辞典(共立出版社)に記載の要件を満たすものを任意に使用することができ、例えばオレフィン重合油、ジエステル油、ポリアルキレングリコール油、ジエステル油、ポリアルキレングリコール油、シリコーン油等を挙げることができる。
【0011】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性等の性質に関らず、従来公知のいかなるものも用いることができる。
【0012】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン錯塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレンと無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが挙げられる。
【0013】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
【0014】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル化物類、ソルビタン脂肪酸部分エステル化物類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル化物類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル化物類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル化物類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル化物類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N、N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、トリアルキルアミンオキシド類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。その他シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤も使用することができる。
【0015】
シリコーン系界面活性剤としてはジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ヒドロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサン等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル燐酸エステル、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化合物等が挙げられる。
【0016】
両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸メチル、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0017】
さらに、界面活性剤の中でも、分子中にN、P、S、Sn原子を少なくとも1種以上有するものを使用するとその反応阻害の効果が高くなる。
【0018】
可塑剤としては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジオクチルフタレート(DnOP)、ジオクチルデシルフタレート(DODP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ジトリデシルフタレート(DTDP)、ジ2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ2-エチルヘキシルイソフタレート(DOIP)、ジ2-エチルヘキシルテレフタレート(DOTP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、トリス(β−クロロエチル)フタレート(TCEP)オクチルベンジルフタレート(OBP)などのフタル酸系可塑剤、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート(ODP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリ2-エチルヘキシルホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)などのリン酸系可塑剤、オレイン酸ブチルなどの脂肪族一塩基酸エステル、ジブチルアジペート(DBA)、ジn−ヘキシルアジペート(DHA)、ジ2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソ2-エチルヘキシルアジペート(DIOA)、ジn−オクチルアジペート(DnOA)、ジデシルアジペート(DDA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、n−オクチル・n−デシルアジペート(NODA)、n−ヘプチル・n−ノニルアジペート(NHNA)などのアジピン酸系可塑剤、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジイソオクチルセバケート(DIOS)、ブチルベンジルセバケート(BBS)などのセバシン酸系可塑剤、ジ2-エチルヘキシルアゼレート(DOZ)、ジヘキシルアゼレート(DHZ)、ジイソオクチルアゼレート(DIOZ)などのアゼライン酸系可塑剤、トリエチルシトレート(TEC)、アセチル・トリエチルシトレート(ATEC)、トリブチルシトレート(TBC)、アセチル・トリブチルシトレート(ATBC)、アセチル・トリオクチルシトレート(ATOC)などのクエン酸系可塑剤、メチルフタリル・エチルグリコレート(MPEG)、エチルフタリル・エチルグリコレート(EPEG)、ブチルフタリル・ブチルグリコレート(BPBG)などのグリコール酸系可塑剤、トリオクチル・トリメリテート(TOTM)、トリn−オクチル・n−デシルトリメリテート(NODTM)などのトリメリット酸系可塑剤、メチルアセチル・リシノレート(MAR)、ブチルアセチル・リシノレート(BAR)などのリシノール酸系可塑剤、ポリプロピレンアジペート(PPA)、ポリプロピレンセバケート(PPS)などのポリエステル系可塑剤、エポキシ化大豆油(ESBO)、エポキシ化アマニ油(EXLO)、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート(OEXT)などのエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィン、塩素化ビフェニル、塩素化脂肪酸ポリエステルなどの塩素化系可塑剤、2-ニトロビフェニルなどを挙げることができる。
【0019】
(4)シリコーン層
シリコーン層に用いるシリコーンとしては、たとえば、付加重合型のシリコーン重合体を使用することができる。付加重合型シリコーン樹脂は白金触媒により重合するものを挙げることができる。本発明の目的にかなうシリコーン層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面の凸凹に対してもシリコーン層の面が凸凹に沿うことがもとめられる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。
【0020】
このような性状のシリコーンとして、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものを用いると良い。
【0021】
これらのシリコーンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0022】
【化1】

【0023】

(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0024】
【化2】

【0025】
(式中Rは下記有機基、m、nは整数を表す)
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0026】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは上記一般式(化2)で表せられる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0027】
ここで架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0028】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0029】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。中でも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。又、シリコーン層の塗布厚みは、1.1μmを超えることが必要であり、場合によっては、数ミリの厚みに設けることから、溶剤型シリコーンや、エマルション型シリコーンでは、塗工時の溶媒の乾燥に多大なエネルギーがかかり、不経済となるので、本発明に使用するシリコーンは、無溶剤型のシリコーンを用いるのがよい。
【0030】
シリコーン層の表面の汚れや異物付着を防いだり、固定シートのハンドリングを向上させるために樹脂フィルム等のセパレータをシリコーン層面に貼り合わせることができる。
【0031】
一般にはシリコーン層の厚みは、1.1〜3000μmの範囲が好ましい。装飾用固定シートであれば好ましくは、10〜50μmであるとよい。シリコーン層の厚みが、1.1μm未満であると、被着体に密着しにくくなり、被着体に対する固定シートの密着面方向の剪断力が1.0N/cm未満となり、長期貼りつけ時には、固定シートの剥がれる可能性が出てくる。シリコーン層の厚みが、3000μmを超えると、シリコーンの使用量が多くなり、コスト上不経済となる。
【0032】
シール材、クッション材等の工業用に使用する場合のシリコーン層の厚みは、30〜500μmが好ましい。その他の機能を付与した固定シートは、その用途に応じてシリコーン層の厚みを適宜設定する。
【0033】
易接着層の塗工は、上記の各種のポリオールを最適な溶剤に溶解分散させたものを基材に塗工乾燥させる。易接着層塗工液、シリコーン層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等が適宜使用される。
【0034】
前記の塗工方法によらず基材と易接着層とシリコーン層以外の積層の複合手段は、他の方法によってもよい。すなわち、個別に成形して得られたシートを接着剤や粘着剤または熱接着で貼合わせてもよく、トッピング法、押出しラミネート法等で直接一体化する方法でもよい。
【0035】
シリコーン層の表面の汚れや異物付着を防いだり、固定シートのハンドリングを向上させるために樹脂フィルムやコート紙等のセパレータをシリコーン層面に貼り合わせるとよい。
【0036】
第5発明は、基材にシリコーン層を設けた面の他方の面に1つ以上の機能層を設けたり、基材自身に機能を1種以上付与した固定シートである。機能層の積層と基材自身への機能付与を併せて与えても良い。
【0037】
機能とは、紫外線遮断性、赤外線遮断性、電磁波遮断性、制電性、導電性、消臭性、脱臭性、抗菌性、印刷性、インク受容性、親水性、防曇性、撥水性、耐スクラッチ性、 熱伝導性等をいう。機能は、基材および積層のいずれか一層または複数層に機能化剤を含有させることにより与えることができる。
前記の諸機能中、紫外線遮断性は、基材および積層のいずれか、好ましくは透明な基材に無機または有機の紫外線吸収剤を配合することにより付与される。得られた固定シートは、例えば住居、ビル、車両の窓ガラスに貼着することにより、紫外線を吸収させ、日焼け等の紫外線障害を防ぐことができる。また、美術館や博物館の陳列ケースのガラス部に貼着して陳列物の劣化を押さえたり、ポスター、広告媒体、証明書等の表面に貼着して変色を防ぐこともできる。また、各種の写真やカラーコピーの表面に貼着して褪色を押さえたり、食品や衣裳の保存ケースの透明部分に貼着して劣化を防いだりすることもできる。
【0038】
赤外線遮断性は、透明な基材および積層のいずれかに無機または有機の赤外線吸収剤を配合することにより付与される。また、基材の表面に金属酸化物の薄膜を形成して赤外線反射性を与えてもよい。得られた固定シートは、住居、ビル、車両の窓ガラスに貼着すると、室内や車両内の温度上昇を押さえられ、冷房効率が向上し、また冷凍・冷蔵用ショーケースの窓ガラスに貼着すると、冷房効率が向上する。また、プラズマディスプレーの画面表面に貼着し、プラズマにより発生する赤外線を遮断してリモートコントロールの誤作動を防ぐことができる。また、ガラスや透明プラスチック板の表面に貼着して光学フィルターとして利用する。
【0039】
電磁波遮断性は、基材および積層のいずれかに無機もしくは有機の導電化剤、または磁性体を配合することにより、また基材に金属もしくは金属酸化物の薄膜を形成することにより、金属メッキをした布帛を積層することにより、またこれらの手段を複合することより付与することができる。得られた固定シートは、各種のOA機器、家庭電化製品、情報機器または医療用機器等の表示部、筐体部に貼着し、機器から発生する電磁波を遮蔽して人体を保護し、また妨害電磁波による機器の誤作動を防止する。また、病院の医療用機器、交通機関や向上の制御システム等が置かれている空間の壁その他の仕切り部に貼着して妨害電磁波から遮蔽し、上記機器の誤作動を防止する。
【0040】
制電性、導電性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に制電剤、導電剤を配合することにより、また基材に金属もしくは金属酸化物の薄膜を形成することにより付与される。得られた固定シートは、半導体工場の窓ガラスに貼着することにより、窓ガラスからのアルカリイオンの放出を防止し、埃の吸着を防止する。また、クリーンルームの窓ガラスや壁等の間仕切り部に貼着することにより、パーティクル汚染を押さえ、半導体のチップトレイ等に貼着することにより、半導体の静電気障害を防ぐことができる。
消臭性、脱臭性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に無機または有機の消臭剤、脱臭剤を配合することにより付与され、得られた固定シートを住居、ビル、車両等の窓ガラスや壁に貼着することにより、煙草や排泄物等の悪臭を消して快適空間をつくる。
【0041】
抗菌性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に無機または有機の抗菌剤を配合することにより、また基材に酸化チタン等の光触媒を含む活性層を積層することにより、与えられる。そして、得られた固定シートを家庭電化製品、OA機器、文具等の日常使用する機器や器具の手に触れる部分、住居、病院、食堂等の窓や壁その他の間仕切り部または調理器具、調理台、食品用の容器、保存庫等の表面に貼着して細菌類の繁殖を押さえる。
【0042】
印刷性は、基材の表面を改質して印刷インキやトナーの付着性を向上することによって与えられる。また、基材の表面に親水性ポリマー層または多孔質の微粒子を配合した親水性ポリマー層を形成することにより、インクジェット用インクの受容性が高められる。得られた固定シートは、印刷またはコピーの内容により、ポスターその他の広告媒体として建物の壁や掲示板に、また会議資料や連絡、通達の手段としてホワイトボードや壁、掲示板に貼着して利用することができる。
【0043】
親水性、防曇性は、基材に親水剤、防曇剤を配合または積層することにより与えられる。また、基材の表面に親水層、防曇層または光触媒活性層を積層することにより与えられる。得られた固定シートは、各種のミラーの表面に貼着して曇り防止に用いる。また、住居、ビル、車両等の窓や壁の表面に貼着し、セルフクリーニングや結露防止に利用する。また、看板等の広告媒体の表面に貼着してセルフクリーニング性を付与し、また、冷蔵ショーケースの窓に貼着して結露防止に利用する。
【0044】
撥水性は、基材の表面にフッ素化合物の単体またはフッ素化合物と光触媒との複合体からなる撥水層を形成することにより与えられ、上記の親水性、防曇性と同様な目的で利用される。
【0045】
耐スクラッチ性は、基材の表面に有機質もしくは無機質、またはその複合体からなるハードコート層を形成することにより与えられる。得られた固定シートは、家庭電化製品、OA機器、情報機器等の液晶表示部や入力部におけるメンブレンスイッチ、防眩フィルター、タッチパネル等の表面にその保護用として貼着される。また、銘板、表示板、壁材、化粧板等の表面保護用として貼着して使用される。
【0046】
熱伝導性は、熱伝導性充填剤を積層に含有させればよく、熱伝導性充填剤として例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、石英、水酸化アルミニウム等が挙げられる。得られた固定シートは、各種電子機器に使用されているパワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性電子部品、及びIC,LSI,CPU,MPU等の集積回路素子より発生する熱による特性が低下するのを防ぐための放熱固定シートとして使用される。
【実施例】
【0047】
本発明を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。
1.易接着層の形成
実施例1〜7、比較例1〜8
基材として片面に印刷適性処理を施した厚さ50μmのポリエステルフィルムの他の面に、下記の配合にて調合した塗液を、デスパーにて撹拌後、塗工、乾燥させ、厚み0.3μmの易接着層を形成した。
アクリルポリオール (水酸基価30) 12重量部
DIC社製 アクリディックAー817(S/C=50%)
界面活性剤(オイル状物質) 表1参照
トルエン 88重量部
【0048】
2.シリコーン層の形成
実施例1〜7、比較例1〜8の易接着層の上に、下記のシリコーン塗液を塗布し、150℃の乾燥炉にて100秒加熱して、厚み25μmのシリコーン層を形成、固定シートを得た。
両末端のみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシリコーン 100重量部
(無溶剤型)(商品名「X-62−1347」信越化学工業(株)製)
白金触媒 (商品名「CAT−PL−56」信越化学工業(株)製) 2重量部
【0049】
3.評価方法
(1)基材との密着性
シリコーン層を指の腹で強く擦り、シリコーン層の基材からの剥れ度合いを下記の基準にて評価した。
○:全く剥れない
△:少し剥れる
×:簡単に剥れる
判断基準:△以上で実用範囲以内。
(2)糊残り性
糊残り性の代替試験として、次の引張強さを測定した。
各サンプルをソーダ石灰ガラス板に貼り付け、80℃で72時間処理後、図1のように25mm幅の固定シートの端部に引張り用の台紙を添えて接着テープで接着する。ついで、棒テンションゲージで、台紙を引張速度2cm/秒でサンプル測定長6cmを引張り、引張強さの最大値を読む。
4.評価結果
表1に記載の通りである。
引張り強さ500g以上の場合は、直射日光が当たるガラス面に固定シートを貼り付けて3ヶ月経過してから、再剥離すると糊残りが発生する。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ガラスに対する剥離力の測定方法の模式図
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス板
2 固定シートのポリエステルフィルム
3 固定シートのシリコーン層
4 台紙
5 接着テープ
6 棒テンションゲージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも片面に易接着層、シリコーン層を順次積層した固定シートにおいて、易接着層にオイル状物質を含有することを特徴とする固定シート。
【請求項2】
前記オイル状物質が分子中にN、P、S、Sn原子を少なくとも1種以上有することを特徴とする請求項1記載の固定シート。
【請求項3】
前記易接着層のバインダーが、水酸基価10〜45がポリエステル系樹脂、水酸基価10〜45がアクリル系樹脂より選ばれる樹脂よりなることを特徴とする請求項1〜2記載の固定シート。
【請求項4】
前記シリコーン層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものであることを特徴とする請求項1〜3記載の固定シート。
【請求項5】
前記基材の他の面に機能層を1つ以上設けること、および、または基材自身に1種以上の機能が付与されたことを特徴とする請求項1〜4記載の固定シート。


【図1】
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【公開番号】特開2007−217577(P2007−217577A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40286(P2006−40286)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】