説明

固定子巻線のろう付方法及び固定子巻線のろう付補修方法並びに回転電機の固定子巻線

【課題】全てのろう付面間に容易に置きろうができ、素線間のろう付間隔を容易に一定に保つことができるろう付方法を得る。
【解決手段】中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線相互の間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着させる第1の工程と、蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程とを含む固定子巻線のろう付方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接冷却方式の回転電機固定子巻線の端部と、該巻線を構成する中空素線内に冷却媒体の給排及び電気的通電を同時に行うための冷媒給排箱のろう付方法及び固定子巻線並びに固定子巻線の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型タービン発電機の固定子の1例として図15に示すように、固定子鉄心21のスロットに挿入される固定子巻線22を構成する導体素線自体を中空線からなる中空素線で構成し、中空素線内に冷媒例えば水を通して巻線導体内部から直接冷却するように構成したものがある。
【0003】
これは、中空素線からなるコイル素線23に直接冷媒を給排するために、図16に示すように巻線導体の電気的通電と冷媒の流通とを同時に行うための冷媒給排箱(クリップ)6が設けられている。冷媒給排箱6とコイル素線23の接合は、有底角筒状の一方の面に開口部6aを有した冷媒給排箱6にコイル素線23を挿入後、開口部6aに蓋7を嵌めた状態で冷媒給排箱6と蓋(カバー)7とコイル素線23を同時にろう付けによって接合している。
【0004】
特許文献1においては、水冷却大型発電機固定子巻線(ステータコイル)の端部と冷媒給排箱6のろう付において、ろう付品質を一定に管理するために、冷媒給排箱6内に温度センサとファイバースコープを挿入し、温度とろう材の溶融・流出状況を監視し、ろう付温度とろう付部の加圧を制御している。また、冷媒給排箱6内の酸素濃度を測定・管理している。
【特許文献1】特開平9−28062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、この冷媒給排箱6とのろう付は、図17、図18に示すように、多数の中実線素線1及び中空線素線2からなる素線束EBと冷媒給排箱6と蓋7を同時にろう付するという構造上の問題があるとともに、素線束EBの構成上ろう材の挿入位置が限られる場合が多く、全てのろう付面間に置きろうできない場合が多い。このため、ろう材を設置しにくい素線間にろう材の浸入しにくい部分が発生しやすい。
【0006】
このような欠陥は、特許文献1のように、ろう付状態を監視し、その状態によりろう付条件を制御しても、ろう付欠陥の発生を防止できない場合が多い。
【0007】
本発明の目的は、素線束にした際、素線間の密着を防止でき、ろう材が侵入しない欠陥部の発生を防止できる固定子巻線のろう付方法及び固定子巻線のろう付補修方法並びに回転電機の固定子巻線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線相互の間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着させる第1の工程と、蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法である。
【0009】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を交互に並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線の前記中実素線と対向する外周面又は前記中実素線の前記中空素線と対向する外周面に、前記中空素線、又は、前記中実素線の外周面との間隔を保つための金属コーティングを付着させる第1の工程と、蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法である。
【0010】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を任意に並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線、前記中実素線のうち隣接する前記中空素線、前記中実素線との間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着させる第1の工程と、蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層収納し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法である。
【0011】
前記目的を達成するため、請求項10に対応する発明は、少なくとも冷媒を供給可能な中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を、複数個それぞれの一端を冷媒給排箱内に、積層挿入し、前記素線束間及び前記冷媒給排箱と前記素線束の間をろう付けした固定子巻線端部を備えた回転電機の固定子巻線において、前記冷媒給排箱は前記素線束間のろう付け不良を補修する際に、主要部と従要部に分離可能に構成したことを特徴とする回転電機の固定子巻線である。
【0012】
前記目的を達成するため、請求項11に対応する発明は、蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束又は前記中空線からなる中空素線及び前記中実線からなる中実素線を交互又は任意に並べて所定寸法の素線束を、順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けした固定子巻線端部を有する固定子巻線において、前記蓋と前記冷媒給排箱の開口部との接合部に生じたろう付欠陥部にコールドスプレ−でコーティングを付着させるようにした固定子巻線のろう付補修方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、素線束にした際、素線間の密着を防止でき、ろう材が侵入しない欠陥部の発生を防止できる固定子巻線のろう付方法及び固定子巻線のろう付補修方法並びに回転電機の固定子巻線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0015】
(ろう付方法の実施形態)
図1〜4、図8及び図9を用いて第1の実施形態を説明するが、これは以下に述べる第1の工程と、第2の工程からなる固定子巻線のろう付方法である。第1の工程は、図1及び図3に示すように中空線からなる中空素線2と、図3及び図4に示すように中実線からなる中実素線1を交互に並べて所定寸法の素線束EBを得るための準備であって、中空素線2の中実素線1と対向する外周面又は中実素線1の中空素線2と対向する外周面に、中空素線2、又は、中実素線1の外周面との間隔を保つための金属コーティング3を付着し、中実素線1の中空素線2又は中空素線2の中実素線1と対向する外周面であって中空素線2又は中実素線1の外周面に付着されている金属コーティング3とは重ならない位置にろう材コーティング4を付着させることである。
【0016】
第2の工程は、図1の蓋7を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱(クリップ)6内に、第1の工程で得た複数の素線束EBを順次積層挿入し、図1に示すように各素線束EB間、素線束EBと冷媒給排箱6間、蓋7と冷媒給排箱6間にろう材例えば板ろう材5を挟み、冷媒給排箱6の開口部に蓋7を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温してろう材を各素線間にろう付けして図2に示すようにろう付部8を有する固定子巻線端部を得ることである。
【0017】
第1の実施形態の固定子巻線のろう付方法によれば、第1の工程で、図3に示すように中空素線2の中実素線1と対向する外周面又は中実素線1の中空素線2と対向する外周面に、中空素線2、又は、中実素線1の外周面との間隔を保つための金属コーティング3を付着させたことで、従来の問題点を改善できる。ここで、従来の問題点は、多数の素線束EBと冷媒給排箱6を同時にろう付するという構造上の問題、および素線束EBの構成上ろう材の挿入位置が限られる場合が多く全てのろう付面間に置きろうできない場合が多いという問題である。これに対して本実施形態では、素線を素線束EBにした際、素線間の密着を防止でき、ろう材が侵入しない欠陥部の発生を防止できる。
【0018】
金属コーティング3は、図9の側面図の(1)、(2)、(3)に示すように点状のもの、(4)に示す線状のもの、あるいはこれらを混合したものでもよい。中実素線1と中空素線2は、電気伝導度の良好な純銅を用いているので、この金属コーティング3も純銅としたが、りん銅ろう材、あるいは、純銅やりん銅ろう材と、硬くもろい化合物などを生成しない他の材質をコーティングしてもよい。
【0019】
金属コーティング3の厚さは、りん銅ろうのろう付に適した0.05〜0.25mmとした。線状にコーティングする場合は、ろう付時のろう材の流れを妨げないようにすることが望ましい。また、金属コーティング3の厚さを中空線2の長手方向に対して一定方向に漸次厚くなるようにすることも可能である。また、中空線2の高さ方向に対して漸次厚くなるようにすることも可能である。
【0020】
このように素線間のすき間が一定方向に規則的に変化するようにしておけば、そのすき間の狭い方から広いほうに、ろうの流れをそろえることができる。
【0021】
そして、図1及び図3並びに図4に示すように、中実素線1の外周面にろう材コーティング4を付着させる。ろう材コーティング4と、金属コーティング3とは、中実素線1と中空素線2を束にした場合に、重ならないように付着させるようにする。また、ろう材コーティング4は金属コーティング3の厚さを超えないようにする。金属コーティング3と、ろう材コーティング4は、後述するコールドスプレーや溶射で付着する。
【0022】
図1に示すように、コーティングした素線1、2を列状にし、板ろう材5と交互に重ね合わせて、冷媒給排箱(クリップ)6に挿入し、蓋(カバー)7で押さえる。板ろう材5には、りん銅ろう材を用いた。これを大気中でりん銅ろうのろう付温度まで昇温しろう付すると、図2のように素線間にろう材が回り、ろう付部8で囲まれてろう付が完了する。
【0023】
以上述べた第1の実施形態は、中空素線2と、中実素線1を交互に並べて所定寸法の素線束を得るためのろう付方法であるが、これを次のように変形して実施できる。すなわち、中空素線2と中実素線1を交互ではなく任意に配置したり、中実素線1を設けず中空素線2のみの配置であっても同様に実施でき、中空素線2のみの場合には金属コーティング3と、ろう材コーティング4はいずれも中空素線2の外周面に形成する。この場合も前述した実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0024】
また、前述の実施形態で素線1、2の外周面に付着させたろう材コーティング4を、図8及び図9に示すように付着させず素線1、2の外周面に金属コーティング3のみを付着させてもよい。
【0025】
次に、図5及び図6に示すように、ろう付部の表面にろう付後コーティング9を付着させる。コーティング材質は純銅、あるいはりん銅ろう材が適しているが、水中環境で、純銅やりん銅ろう材と電気化学的に、腐食しにくい材料であればよい。コーティング方法としては、コールドスプレー、溶射が適している。ろう付後コーティング9で、ろう付部8の全面を覆ってもよいし、あるいはろう付欠陥が発生している部分、あるいはろう付欠陥が発生しやすい部分に限定してもよい。また、ろう付後コーティング9を付着させた後、高周波誘導加熱などで加熱し、付着させたコーティングを拡散させて、付着力をより増加させてもよい。
【0026】
本実施形態によれば、中実素線1に金属コーティング3を付着させたので、素線束EBにした際、素線間の密着を防止でき、ろう材が侵入しない欠陥部の発生を防止できる。また、素線間の間隔を金属コーティング3の厚さで制御できるので、ろう付に適した厚さにでき、素線間へのろう材の流入を良好にできる。さらに、金属コーティング3の厚さを変化させ、素線間のすき間を漸次変化できるので、溶融ろう材の流れをすき間の狭い方から広い方に制御でき、ろう付時に発生しやすい気泡の巻き込みによるボイド欠陥の発生を防止できる。素線間にろう材コーティング4を付着させているので、素線間への溶融ろう材の呼び水となり、素線間でのろう付欠陥が発生しにくくなる。これらのコーティング3、4をコールドスプレーで行っているので、コーティングが容易である。また、ろう付後ろう付部の表面に、コーティングを行っているので、ろう付部8に微小なボイド欠陥などが残存していても、これを覆うことができ、ろう付部からの冷却水のリーク、およびこの微小ボイド内に水が浸入することで発生する腐食によるリークを防止できる。さらに、コーティングをコールドスプレーで行うので、コーティングが容易で、かつ付着力が強固である。
【0027】
(固定子巻線の実施形態)
次に、図10、図11、図12を参照して、本ろう付における問題点について説明する。本ろう付において、素線間だけでなく、冷媒給排箱6と蓋7のろう付部にもろう付欠陥部10が発生しやすく、発電機を使用している間に、微細なボイド欠陥に冷却水が浸入し、腐食が進行し、蓋7のろう付部から水がリークする場合がある。
【0028】
このため、冷媒給排箱6は素線束EB間のろう付け不良を補修する際に、主要部と従要部に分離可能に構成した回転電機の固定子巻線である。具体的には、図11及び図12に示すように、冷媒給排箱6に分割冷媒給排箱(分割クリップ)14を分離可能にろう付けしたものであり、図11は冷媒給排箱6と分割冷媒給排箱14のクリップ間ろう付面がろう付されていない状態又は両者が分離された状態を示している。図12は冷媒給排箱6と分割冷媒給排箱14がろう付けされた状態を示し、図12中15はクリップ間ろう付部を示している。
【0029】
(ろう付補修方法の実施形態)
一方、図10のような場合は、従来TIG溶接補修したり、高周波誘導加熱やバーナ加熱でろう付補修しているが、材質が銅で熱伝導がよいため、熱が逃げやすく補修しにくかった。そこで、本実施形態では、図7(a)におけるろう付欠陥部10に、コールドガススプレイシステムを用いて図7(b)における純銅の補修コーティング11を付着させている。図7(b)におけるろう付欠陥部10のみでもよいし、図7(c)におけるろう付部全体にコーティングしてもよい。また、コーティング後、高周波誘導加熱などにより、コーティング部を拡散処理して、付着力をより強固にしてもよい。ろう材を付着させて、加熱ろう付補修してもよい。
【0030】
ここで、本発明に使用するコールドガススプレイシステムについて、図13及び図14を参照して説明する。これはスプレイ装置本体30を有し、キャリーアガス粉末供給系及びヘリウムガス、窒素ガスを供給するプロセスガス供給系を備え、さらにノズル31を備え、このノズル31から高速ガス流が照射されるようになっている。スプレイ装置本体30は、コントロール盤32と、ヒータ33と、粉末供給系35、36と、アクティブジェットヒータ34等を備えている。金属粉末を高温(350〜800℃)、高圧(3〜4MPa)で噴射させるものである。
【0031】
本実施形態では、補修コーティング11をコールドガススプレイシステムで行っているので、補修が容易であるとともに、コーティングの付着力に優れている。また、発電機の設置場所にコールドガススプレイシステムを搬入して補修することも可能である。
【0032】
前述の実施形態では、固定子巻線として、中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を交互に並べて所定寸法の素線束を得るようにしたものを例に挙げたが、これに限らず、中空線からなる中空素線のみだけのもの、或いは、中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を任意に並べて所定寸法の素線束を得るようにしたもののいずれであってもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における固定子巻線のろう付方法の第1の実施形態を説明するためのろう付前の状態を示す正面図。
【図2】本発明における固定子巻線のろう付方法の第2の実施形態を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図3】図1の一部を示す正面図。
【図4】図1の一部を示す側面図。
【図5】本発明における固定子巻線のろう付方法の第2の実施形態を説明するためのろう付前の状態を示す正面図。
【図6】本発明における固定子巻線のろう付方法の第2の実施形態を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図7】本発明における固定子巻線のろう付補修方法を説明するための工程図。
【図8】本発明における固定子巻線のろう付方法の第3の実施形態を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図9】図8の側面図。
【図10】本発明における固定子巻線のろう付方法の変形例を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図11】本発明における固定子巻線のろう付方法の変形例を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図12】本発明における固定子巻線のろう付方法の変形例を説明するためのろう付後の状態を示す正面図。
【図13】本発明方法を実施するために使用するコールドガススプレイシステムを説明するための概略構成図。
【図14】本発明方法を実施するために使用するコールドガススプレイシステムを説明するためのブロック図。
【図15】本発明の対象である固定子巻線の上半部のみを示す概略構成図。
【図16】従来の固定子巻線のろう付方法を説明するための斜視図。
【図17】従来の固定子巻線のろう付方法を説明するためのものであって、ろう付前の状態を示す正面図。
【図18】従来の固定子巻線のろう付方法を説明するためのものであって、ろう付後の状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
1…中実線素線、 2…中空線素線、 3…金属コーティング、 4…ろう材コーティング、 5…板ろう材、 6…冷媒給排箱(クリップ)、 6a…開口部、 7…蓋(カバー)、 8…ろう付部、 9…ろう付後コーティング、 10…ろう付欠陥部、 11…補修コーティング、 14…分割冷媒給排箱、 21…固定子鉄心、 22…固定子巻線、 23…コイル素線、 30…スプレイ装置本体、 31…ノズル、 32…コントロール盤、 33…ヒータ、 34…アクティブジェットヒータ、 35、36…粉末供給系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線相互の間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項2】
中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線相互の間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着し、前記中空素線のうち外周面に付着されている金属コーティングとは重ならない前記中空素線の外周面の位置にろう材コーティングを付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項3】
中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を交互に並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線の前記中実素線と対向する外周面又は前記中実素線の前記中空素線と対向する外周面に、前記中空素線、又は、前記中実素線の外周面との間隔を保つための金属コーティングを付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項4】
中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を交互に並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線の前記中実素線と対向する外周面又は前記中実素線の前記中空素線と対向する外周面に、前記中空素線、又は、前記中実素線の外周面との間隔を保つための金属コーティングを付着し、前記中実素線の前記中空素線又は前記中空素線の前記中実素線と対向する外周面であって前記中空素線又は前記中実素線の外周面に付着されている金属コーティングとは重ならない位置にろう材コーティングを付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項5】
中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を任意に並べて所定寸法の素線束を得るための準備であって、前記中空素線、前記中実素線のうち隣接する前記中空素線、前記中実素線との間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層収納し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項6】
中空線からなる中空素線と、中実線からなる中実素線を任意に並べて所定長さの素線束を得るための準備であって、前記中空素線、前記中実素線のうち隣接する前記中空素線、前記中実素線との間隔を保つための金属コーティングを前記中空素線の外周面に付着し、前記中実素線の前記中空素線又は前記中空素線の前記中実素線と対向する外周面であって前記中空素線又は前記中実素線の外周面に付着されている金属コーティングとは重ならない位置にろう材コーティングを付着させる第1の工程と、
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、前記第1の工程で得た複数の素線束を順次積層収納し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けして固定子巻線端部を得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする固定子巻線のろう付方法。
【請求項7】
前記第2の工程で得られた固定子巻線端部であって前記冷媒給排箱と前記蓋との前記ろう付け部の表面に耐腐食性のコーティングを付着させる第3の工程と、を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定子巻線のろう付方法。
【請求項8】
前記金属コーティング及び又は前記ろう材コーティングの付着は、粉末を噴射させる手段で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定子巻線のろう付方法。
【請求項9】
前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で、前記蓋と前記冷媒給排箱の開口部との接合部又は前記蓋と前記冷媒給排箱のろう付欠陥部にコールドスプレ−でコーティングを付着させる工程を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定子巻線のろう付方法。
【請求項10】
少なくとも冷媒を供給可能な中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束を、複数個それぞれの一端を冷媒給排箱内に、積層挿入し、前記素線束間及び前記冷媒給排箱と前記素線束の間をろう付けした固定子巻線端部を備えた回転電機の固定子巻線において、
前記冷媒給排箱は前記素線束間のろう付け不良を補修する際に、主要部と従要部に分離可能に構成したことを特徴とする回転電機の固定子巻線。
【請求項11】
蓋を外した状態の開口部を有する冷媒給排箱内に、中空線からなる中空素線を複数本並べて所定寸法の素線束又は前記中空線からなる中空素線及び前記中実線からなる中実素線を交互又は任意に並べて所定寸法の素線束を、順次積層挿入し、前記各素線束間、前記素線束と前記冷媒給排箱間、前記蓋と前記冷媒給排箱間にろう材を挟み、前記冷媒給排箱の開口部に前記蓋を設けた状態で大気中でろう付温度まで昇温して前記ろう材を前記各素線間にろう付けした固定子巻線端部を有する固定子巻線において、
前記蓋と前記冷媒給排箱の開口部との接合部に生じたろう付欠陥部にコールドスプレ−でコーティングを付着させるようにした固定子巻線のろう付補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−254027(P2009−254027A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95372(P2008−95372)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】