説明

固定装置

【課題】簡易な作業で対象を固定することを課題とする。
【解決手段】対象80を構造物90に固定するための固定装置1に、構造物90に設けられた縁部32を挟んで互いに反対側に配置される第一固定部11および第二固定部12と、固定の対象80に接触する第一接触部15と、を有する第一部材10と、第二固定部12と構造物90との間に配置されるカム部21であって、長径部分29で第二固定部12と構造物90とを離間させることにより第一固定部11を縁部32に対して付勢し、第一部材10を構造物90に対して固定状態とするカム部21と、固定状態において、第一接触部15と協働して固定の対象80を挟持するように固定の対象80に接触する第二接触部23と、を有する第二部材20と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象を構造物に固定するための固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、つば部材に回動可能に軸支されたカムを回動させてカムと挟片との間にパネルを挟むことで、パネルを挟持する技術がある(特許文献1を参照)。また、固定したい部材を、カムを用いて挟む技術がいくつか提案されている(特許文献2から6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47−014556号公報
【特許文献2】特許第4378228号公報
【特許文献3】特開2007−319975号公報
【特許文献4】特許第2989517号公報
【特許文献5】特許第3108065号公報
【特許文献6】実公平08−003685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、対象を構造物に固定する方法として、ボルト等の固定装置が用いられている。しかし、このような固定装置を用いた作業は、煩雑で時間がかかるものであった。例えば、机等の天板を固定する場合には、天板の下側からボルト等の固定装置を用いて天板を固定するため、作業の際に天板の下に潜り込むなどする必要があり、作業性が悪い。また、その他の固定対象を固定する場合にも、ボルト等の固定装置は、天井近くの梁(ビーム)や柱の高い位置である等、作業性の悪い位置に設けられることが多い。このため、作業者は、構造物の対象への固定に際して、作業性の悪い状況で煩雑且つ時間のかかる作業をする必要があった。
【0005】
本発明は、上記した問題に鑑み、簡易な作業で対象を固定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を備えることで、上記した課題を解決することとした。即ち、本発明は、対象を構造物に固定するための固定装置であって、前記構造物に設けられた縁部を挟んで互いに反対側に配置される第一固定部および第二固定部と、前記固定の対象に接触する第一接触部と、を有する第一の部材と、前記第二固定部と前記構造物との間に配置されるカム部であって、長径部分で該第二固定部と該構造物とを離間させることにより前記第一固定部を前記縁部に対して付勢し、前記第一の部材を前記構造物に対して固定状態とするカム部と、前記固定状態において、前記第一接触部と協働して前記固定の対象を挟持するように該固定の対象に接触する第二接触部と、を有する第二の部材と、を備える固定装置である。
【0007】
ここで、固定装置による固定の対象は、第一接触部および第二接触部によって挟持可能なものであればよい。また、第一接触部および第二接触部の形状も、固定の対象の形状に合わせた形状とすることが出来る。また、固定装置を用いて対象が固定される構造物は、固定に用いる縁部を有するものであればよく、また、縁部を有さない構造物についても、第三の部材を用いて縁部を設けることで、固定装置を用いて対象を固定可能な構造物とすることが出来る。
【0008】
本発明に係る固定装置は、構造物の縁部を挟んで互いに反対側に位置するように第一固定部および第二固定部を設け、第二固定部と構造物との間をカム部によって離間させることで、第一固定部を縁部に対して付勢して固定装置の構造物への固定を行う。また、固定装置が構造物に対して固定された状態となると同時に、第一接触部および第二接触部によって固定対象が挟持される。
【0009】
本発明に係る固定装置によれば、カムの操作による構造物への固定装置の固定と、第一接触部および第二接触部による固定対象の挟持とが並行して行われるため、カム部を第二固定部と構造物との間に配置して回動させるだけの簡易な作業で、対象を構造物に固定することが可能となる。また、カムを軸支する必要もないため、構造が複雑でない固定装置を提供することが出来る。
【0010】
また、本発明において、前記カム部は、前記長径部分に略等しい径の長さを有することで、該カム部が前記固定状態に向けて回動される途中で所定以上の力を要求する乗り越え部を、該カム部の短径部分と前記長径部分との間に有してもよい。
【0011】
長径部分に略等しい径の長さを有する乗り越え部を有することで、カム部の回動の途中において作業者に抵抗感およびクリック感を与え、感覚的に操作の経過および終了を作業者に伝えることが出来る。乗り越え部の径を長くするほど、作業者に大きな抵抗感を与えることが出来る。なお、乗り越え部の径は、第二固定部と構造物とを離間させることが可能な長さであれば、作業者に抵抗感およびクリック感を与えることが出来るため、カム部の長径部分よりも短い径であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る固定装置は、前記第二固定部と前記構造物との間に前記カム部が配置された状態でユーザによって操作されることで、前記カム部を回動させるための操作部を更に備えてもよい。
【0013】
このような操作部を備えることで、作業者に簡便な操作を提供することが出来る。また、操作部は、第二の部材と一体に設けられてもよい。この場合、第二接触部は、カム部と操作部との間に設けられてよい。
【0014】
また、本発明において、前記第二の部材は、前記操作部が着脱可能に接続される接続部を更に有してもよい。
【0015】
操作部を着脱可能とすることで、固定装置による対象の構造物への固定後に、操作部を外しておき、意図しない固定装置の除去が行われてしまうことを防止することが出来る。
【0016】
また、本発明において、前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方は、前記固定状態における前記第一固定部の前記縁部に対する付勢の強さを調整可能な位置に設けられた弾性部材を有してもよい。
【0017】
また、本発明に係る固定装置は、前記構造物に固定されることで該構造物に前記縁部を設ける第三の部材を更に備え、前記第三の部材は、前記第一の部材または前記第二の部材に接触する位置に設けられた弾性部材を有してもよい。
【0018】
例えば、固定装置を製造した場合、精度公差内の寸法差が発生することが一般である。このため、固定状態における付勢の強さを調整可能な位置に弾性部材を設けることで、前記第一固定部の前記縁部に対する付勢の強さを調整することが出来る。
【0019】
また、本発明において、前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部と、前記対象が前記カム受け部と前記第一接触部との間に入り込むことを規制する規制部と、を更に有してもよい。
【0020】
このような規制部を設けることで、固定対象を設置しようとした場合に、カム受け部が邪魔になることを防止することが出来る。例えば、固定の対象が板状部材であり、第一接触部に載置されるような場合に、カム受け部が板状部材を載置する際の邪魔にならないようにすることが出来る。
【0021】
また、本発明において、前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部と、前記対象が前記カム受け部と前記第一接触部との間に入り込むことを許容する空間と、を更に有してもよい。
【0022】
このような空間に固定の対象が入り込むことで、固定対象が一旦固定された後には、カム受け部によって固定対象の移動が制限されることとなり、意図しない固定対象の除去を制限することが出来る。例えば、固定の対象が板状部材であり、第一接触部に載置されるような場合に、カム受け部が板状部材を上に持ち上げる際に邪魔となり、板状部材の除去が制限される。
【0023】
また、本発明において、前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部であって、前記対象が前記第一接触部と前記第二接触部とによって挟持された状態で、前記カム部を前記第一接触部と前記第二接触部との間に保持するカム受け部を更に有してもよい。カム部が第一接触部と第二接触部との間に保持されることで、固定対象が構造物に固定された状態において、カム受け部やカム部が外側に突出することなく、外観をシンプルに保つことが出来る。
【0024】
また、本発明において、前記カム部は、該カム部の前記長径部分の長さに融通性を持たせるための空隙部を更に有してもよい。このような空隙部を有することで、カム部の長径方向における弾性が高まり、十分な強度で固定対象を構造物に固定することが出来る。
【0025】
更に、本発明は、固定装置を用いて対象を構造物に固定する方法の発明としても把握することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡易な作業で対象を固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る固定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る固定装置の構成を示す側面図である。
【図3】実施形態に係る第三部材を示す側面図である。
【図4】実施形態に係る第一部材を示す側面図である。
【図5】実施形態に係る第二部材を示す側面図である。
【図6】実施形態において、第一部材がパネルに仮設置される様子を示す側面図である。
【図7】実施形態において、第二部材と第一部材とを用いてパネルに天板が固定される様子を示す側面図である。
【図8】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図9】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図10】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図11】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図12】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図13】実施形態に係る固定装置において用いられる、着脱可能な操作部の構成を示す図である。
【図14】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【図15】実施形態に係る、バリエーションの固定装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る固定装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態では、本発明に係る固定装置を用いて、机の天板等の板状部材が固定の対象として、構造物であるパネルに固定される例について説明しているが、固定装置による固定の対象、および固定先の構造物は、本実施形態において例示したものに限定されない。固定先の構造物は、例えば、梁(ビーム)、柱、壁、天井等であってもよい。また、固定対象は、例えば、間仕切り、カーテン、ブラインド等であってもよいし、電子機器であってもよい。例えば、梁や柱に設けられた縁部(リムやレール)にプロジェクタやディスプレイ等の電子機器を設置する場合に、本発明に係る固定装置を用いることも可能である。
【0029】
<固定装置の構成>
図1は、本実施形態に係る固定装置1の構成を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る固定装置1の構成を示す側面図である。本実施形態に係る固定装置1は、第一部材10および第二部材20を備える。また、第三部材30はパネル90に設けられた溝91に固定されることで、パネル90に縁部32を設ける。但し、本実施形態に係る固定装置1を用いた天板80の固定に際しては、予め縁部32が設けられたパネル90が用いられてもよい。この場合、第三部材30は用いられない。第一部材10は、パネル90に設けられた縁部32に係止されて、天板80を載置するための部材である。第二部材20は、カム部21によって第一部材10を縁部32(パネル90)に固定し、第一部材10と協働して天板80を挟持する。
【0030】
次に、図3から図5を用いて、固定装置1の第三部材30、第一部材10および第二部材20の詳細な構造を説明する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る第三部材30を示す側面図である。第三部材30は、挿入部31と、縁部32と、被付勢面33と、を有する。挿入部31は、パネル90の溝91に挿入されて第三部材30をパネル90に対して固定する部分であり、溝91からの脱落を防止するための手段を有している。本実施形態に係る挿入部31は、図3に示されている通り、脱落防止手段として、その側部(溝91の内側面に接する部分)に、挿入部31の先端側から基端側に向かって幅が広がるテーパー状となった複数の断面三角形状の歯状部34を有する。このような歯状部34が設けられていることで、溝91へ挿入部31を挿入する際には少ない抵抗で挿入可能であり、溝91から挿入部31を抜こうとした際には抵抗が大きく抜出を許可しない挿入部31を提供することが出来る。但し、溝91からの脱落を防止するための手段は、本実施形態に示された歯状部34に限定されるものではない。脱落の防止は、挿入部31の側部に設けられた形状によって提供されてもよいし、接着剤や螺子、釘等のその他の構成によって提供されてもよい。また、挿入部31の基端側には、挿入の深さを位置決めすることが出来る鍔部36が設けられている。
【0032】
本実施形態において、縁部32は、向かい合った一組のリムまたはレール状の形状を有するが、縁部32は、パネル90の表面側からと縁部32内側の空間35側とから挟むことが可能な形状を有していればよい。本実施形態に係る固定装置1は、この縁部32を第一部材10と第二部材20とで挟むことで、固定を行う。また、縁部32の内側には、第一部材10の第一固定部11が挿入されるための空間35が設けられている。被付勢面3
3は、縁部32の外側に設けられた面であり、固定の際に第二部材20のカム部21によって付勢される。即ち、第三部材30は、溝91に挿入されることで固定対象(本実施形態では、天板80)が固定される構造物の一部となり、第一部材10および第二部材20を用いて固定対象を固定するための縁部32を提供する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る第一部材10を示す側面図である。第一部材10は、第一固定部11と、第二固定部12と、カム受け部13と、係止部14と、第一接触部15と、を有する。本実施形態では、第一固定部11、第二固定部12、カム受け部13、係止部14および第一接触部15等の、第一部材10の各構成は、何れも第一部材10の幅方向に沿って設けられているが、これらの構成は、断続的に設けられる態様や、一部にのみ設けられる態様で設けられてもよい。
【0034】
第一固定部11は、リムまたはレール状の形状を有し、縁部32の内側の空間35に挿入され、上側の縁部32の内側面に係止する(図2を参照)。ここで、係止部14は、第一固定部11が縁部32の内側の空間35に挿入された状態で、下側の縁部32の上面に係止する位置に設けられている。
【0035】
カム受け部13は、カム部21を受ける部分であり、カムの外周面部24に対応する形状を有している。そして、第二固定部12は、第一固定部11が縁部32の内側の空間35に挿入された状態で、縁部32を挟んで第一固定部11の反対側に位置し、カム受け部13に挿入されたカム部21によって付勢される。また、第一接触部15は、固定対象に接触する部分である。本実施形態では、固定対象が天板80であるため、第一部材10は全体として側面L型の形状を有しており、L型の水平部分に相当する第一接触部15は、載置された天板80の裏面に接触する。
【0036】
図5は、本実施形態に係る第二部材20を示す側面図である。第二部材20は、カム部21と、ブリッジ部22と、第二接触部23と、操作部40と、を有する。本実施形態では、カム部21、操作部40および第二接触部23等の、第二部材20の各構成は、何れも第二部材20の幅方向に沿って設けられているが、これらの構成は、断続的に設けられる態様や、一部にのみ設けられる態様で設けられてもよい。
【0037】
カム部21は、短径部分28と長径部分29とを有する。ここで、短径部分28は、カム受け部13にカム部21を挿入する際にカム受け部13の入り口を通過可能な径の長さを有しており、長径部分29は、第二固定部12と被付勢面33とを離間させることが可能な径の長さを有している。
【0038】
また、本実施形態に係るカム部21は、カムが回動される際に作業者に抵抗感およびクリック感を与えるための乗り越え部26を有する。乗り越え部26は、長径部分29と略同じ長さの径を有している。このような乗り越え部26が設けられていることで、カム部21が回動する間に、作業者は、乗り越え部26を乗り越える際の抵抗感およびクリック感を得ることが出来る。本実施形態では、カム部21の短径部分28は、カム部21の中心からの距離が長径部分29を構成する外周面部24よりも短い平面部25を用いて構成されており、短径部分28と長径部分29との境界は、平面部25と外周面部24との交線(稜線)である。このため、本実施形態では、この稜線部分である乗り越え部26の曲率を大きくする(曲率半径を小さくする)ことで、作業者に対して、より明確なクリック感を提供することが出来る。但し、カム部の形状は、例えば楕円形状等、その他の形状であってもよい。なお、抵抗の大きさは、乗り越え部26の径の長さによって調整できる。
【0039】
本実施形態では、第一部材10のカム受け部13は、固定対象の天板80よりも上に位置している。このため、本実施形態に係るカム部21と第二接触部23とを繋ぐブリッジ
部22は、カム受け部13および第二固定部12の形状に沿って、第二固定部12を乗り越えて天板80上面に到達するように湾曲している。
【0040】
第二接触部23は、固定対象に接触する部分であり、本実施形態では、固定対象が天板80であるため、第一接触部15に載置された天板80の上面に接触する。また、操作部40は、固定装置1の設置および除去の際にカム部21を回動させるために作業者によって操作される部分である。
【0041】
<固定装置を用いた固定作業の流れ>
次に、本実施形態に係る固定装置1を用いた天板80の固定の手順を説明する。初めに、作業者は、パネル90に予め設けられた溝91に第三部材30を挿入することで、パネル90に縁部32を設ける。このような方法によれば、縁部32が設けられていない所望のパネルに、対象を固定するための縁部32を設け、本発明に係る構造物とすることが出来る。但し、先述の通り、本実施形態に係る固定装置1を用いた天板80の固定に際しては、予め縁部32が設けられたパネルが用いられてもよい。この場合、第三部材30は用いられない。次に、作業者は、第一部材10の第一固定部11を、上側の縁部32の内側の空間35に挿入する。
【0042】
図6は、本実施形態において、第一部材10が縁部32を用いてパネル90に仮設置される様子を示す側面図である。第一固定部11が縁部32の内側の空間35に位置することで、第一固定部11および第二固定部12は、縁部32を挟んで互いに反対側に配置される。第一固定部11が縁部32の内側の空間35に挿入されると、第一部材10の係止部14が、下側の縁部32の上面に係止し、第一固定部11が、上側の縁部32の内側に係止し、突き当て部16が、下側の被付勢面33に突き当たる。本実施形態では、この状態を仮設置状態と称する。第一部材10が仮設置された状態では、上方向への力によって係止部14および第一固定部11による係止を解く事が出来るが、下方向への力によっては第一部材10は脱落しない。このため、作業者は、仮設置状態において、第一接触部15に固定対象である天板80を載置することが出来る。第一接触部15に天板80が載置されると、次に、作業者は、第二部材20を用いて第一部材10をパネル90に固定する。
【0043】
図7は、本実施形態において、第二部材20と第一部材10とを用いてパネル90に天板80が固定される様子を示す側面図である。作業者は、第二固定部12と構造物(本実施形態では、第三部材30の被付勢面33)との間に設けられたカム受け部13に、第二部材20のカム部21を挿入する。本実施形態において、カム受け部13の入口の縁と構造物との間は、カム部21の長径部分29より短く、カム部21の短径部分28より長い距離となるように設計されている。このため、カム部21は、カム受け部13と構造物との間の隙間から挿入可能なように、短径部分28がカム受け部13の入口を通過するような姿勢で挿入される。本実施形態において、カム部21がカム受け部13に対して着脱(挿抜)される際の第二部材20の姿勢を、着脱姿勢と称する。
【0044】
作業者は、カム受け部13にカム部21を挿入すると、操作部40をもってカム部21を回動させ、第二部材20を着脱姿勢から固定姿勢に移行させる。この際、着脱姿勢から固定姿勢への移行途中で、乗り越え部26が被付勢面33に接触し、作業者は、乗り越え部26を乗り越える際の抵抗感およびクリック感を得ることが出来る。本実施形態において、固定姿勢とは、カム部21の長径部分29が第二固定部12と被付勢面33との間を離間させるような、第二部材20の姿勢である。ここで、第一部材10および第三部材30(または構造物)は、第二固定部12と被付勢面33との間が、カム部21の長径部分29以下の距離となるように設計されている。このため、第二部材20が固定姿勢となると、カム部21の長径部分29によって第二固定部12と被付勢面33との間が離間され
、第二固定部12はパネル90および縁部32から遠ざかる方向へ付勢される。
【0045】
このとき、第一固定部11は、縁部32を挟んで第二固定部12と反対側に位置しているため、結果として第一固定部11は、縁部32の内側から縁部32を付勢する。この付勢によって、第一部材10は、パネル90に固定される。本実施形態において、第一部材10がパネル90に固定された状態を、固定状態と称する。
【0046】
また、作業者による操作によってカム部21が回動され、固定姿勢、固定状態となると、第二接触部23は、天板80の上面に接触する。これによって、第一接触部15と第二接触部23とで天板80が挟持され、天板80は構造物(パネル90および第三部材30)に固定される。
【0047】
本実施形態では、固定の対象が天板80であるため、第二接触部23は、固定姿勢において略水平となる。これに対して、着脱姿勢における第二接触部23は、固定姿勢における第二接触部23に対して、所定の角度を有する。この角度は、作業者が操作部40を把持してカム部21をカム受け部13に対して着脱し易い角度とすることが好ましい。例えば、着脱姿勢における第二接触部23が、固定姿勢における第二接触部23に対して20度以上(例えば、略30度)の角度を有することで、作業者は、操作部40を把持する手を天板80の上面に邪魔されずに第二部材20の着脱を行うことが出来るだろう。本実施形態では、カム部21の短径部分28および長径部分29は外周面部24と平面部25との組み合わせによって実現されているため、着脱姿勢においては平面部25が鉛直になるような姿勢とすることで短径部分28をカム受け部13の入口に対応させることとなる。このため、本実施形態では、着脱姿勢における第二接触部23の、固定姿勢における第二接触部23に対する角度は、カム部21に対する平面部25の角度によって決定することが出来る。
【0048】
なお、先述の通り、固定装置1による固定対象は、天板80に限定されない。このため、第一接触部15および第二接触部23の形状は、固定対象に応じて、適宜最適な形状とすることが好ましい。
【0049】
<固定装置のバリエーション>
以下に、図8から図13を用いて、本発明に係る固定装置のバリエーションを説明する。なお、図7までを用いて説明した固定装置1と同様の構成については、図中に同一の符号を用いて示し、説明を省略する。
【0050】
図8は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1bの構成を示す側面図である。図8に示す第一部材10bは、カム受け部13bの一部に、第一部材10bの幅方向に伸びる切り欠き(溝)17を有し、第二部材20bは、カム部21bの外周面部24bの一部に、第二部材20bの幅方向に伸びる切り欠き(溝)41を有する。
【0051】
これらの切り欠き17、41は、固定装置1bを用いて固定対象が固定され、第二部材20bが固定姿勢となっている状態で合わさって円柱状の空間を現出させるような位置および形状に設けられている。このため、固定装置1bによれば、固定対象を固定した状態で現出した円柱状の空間に、対応する形状の円柱部材(ピン)50を挿入することで、意図しない第二部材20bの取り外しを防止することが出来る。
【0052】
図9は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1cの構成を示す側面図である。図9に示す固定装置1cは、固定状態における第一固定部11cの縁部32に対する付勢の強さを調整可能な位置に、樹脂フィルム60が設けられている。例えば、固定装置をアルミニウムの押出成型によって製造した場合、断面形状の精度公差は一般的にプラスマ
イナス0.2mmとなる。このため、固定装置1cでは、固定状態における付勢の強さを調整可能な位置に樹脂フィルム60を設け、カム部21cによる離間距離、付勢の強さを調整することとしている。なお、本実施形態では、付勢の強さを調整するための構成として、樹脂フィルム60が採用されているが、付勢の強さを調整するための構成としては、紙やゴム等の、その他の弾性を有する部材が用いられてもよいし、その形状も、フィルム状以外の形状、例えば、糸状、粒子状等の形状が採用されてよい。
【0053】
また、樹脂フィルム60等が設けられる位置は、固定状態における付勢の強さを調整可能な位置であればよいが、例えば、第三部材30においては、第一部材10cまたは第二部材20cに接触する位置、即ち、被付勢面33や縁部32に設けられてよい。また、第一部材10cにおいては、カム部21cの外周面部24cに設けられてよいし、第二部材20cにおいては、第二固定部12cの背面側に設けられてよい。
【0054】
また、固定装置1cは、固定対象の位置合わせのための位置合わせ手段を有する。本実施形態では、位置合わせ手段として、第一部材10cの第一接触部15cに設けられた凸部18と、天板80の裏面の対応する位置に設けられた凹部81と、が用いられる。但し、第一接触部15cに凹部が設けられ、天板80の裏面の対応する位置に凸部が設けられてもよい。また、位置合わせのための凹部および凸部は、第二接触部23cと天板80の上面とに設けられてもよい。このような位置合わせ手段が採用されることで、作業者による位置あわせの手間を軽減し、正確な位置に容易に固定対象を固定することが可能となる。また、このような位置合わせ手段が採用されることで、設置後に固定対象の位置がズレることを防止出来る。
【0055】
図10は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1dの構成を示す側面図である。図9までに示された固定装置では、カム受け部が第二接触部よりも外側(即ち、本実施形態では、カム受け部が天板80よりも上)に位置しており、固定装置は、カム受け部の下に固定対象が入り込むことが可能な空間を有している。このため、天板80と構造物(パネル90)との間の隙間を小さくすることが出来る。また、天板80等の固定対象が一旦設置された後には、カム受け部によって固定対象の移動が制限されることとなり、意図しない固定対象の除去等の制限に有利であるが、設置時には、天板80等の固定対象を上から設置しようとした場合に、カム受け部が邪魔になる可能性がある。
【0056】
そこで、図10に示す固定装置1dでは、第一部材10dが、固定対象がカム受け部13dの下に入り込むことを規制する規制部19を更に備えることで、天板80等の固定対象を上から設置しようとした場合に、カム受け部13dが邪魔になることを防止することとしている。また、このような構成によれば、天板80と構造物(パネル90)との間に規制部19が存在するため、隙間を小さくすることが出来る。なお、当然であるが、図8および図9を用いて説明した、カム部固定用のピン、樹脂フィルム等の弾性部材、および固定対象の位置合わせ手段は、図10を用いて説明した固定装置1dにおいても、適宜採用されてよい(図示は省略する)。
【0057】
図11は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1eの構成を示す側面図である。図11に示された固定装置1eでは、第一部材10eのカム受け部13eが第二接触部23eと第一接触部15eとの間(即ち、本実施形態では、カム受け部13eが天板80よりも下)に位置している。このため、天板80等の固定対象は、カム受け部13eまたは第二固定部12eによって位置決めされる。
【0058】
また、固定装置1eでは、第一部材10eのカム受け部13eは、固定対象の天板80よりも下に位置しているため、第二部材20eにおけるブリッジ部22eは、図10までに示した固定装置のブリッジ部22と異なり、カム部21eと第二接触部23eとを真っ
直ぐに繋ぐ形状を有している。このような形状のブリッジ部22eによれば、固定対象が構造物に固定された状態において、カム受け部13eおよびカム部21eが固定対象の上に突出することなく、外観をシンプルにすることが出来る。なお、当然であるが、図8および図9を用いて説明した、カム部固定用のピン、樹脂フィルム等の弾性部材、および固定対象の位置合わせ手段は、図11を用いて説明した固定装置1eにおいても、適宜採用されてよい(図示は省略する)。
【0059】
図12は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1fの構成を示す側面図である。また、図13は、本実施形態に係る固定装置1fにおいて用いられる、着脱可能な操作部(治具)40の構成を示す図である。図12および図13に示された固定装置1fでは、操作部40は、第二部材20fのカム部21fを回動させるための治具として着脱可能であり、このため、第二部材20fには、治具が挿入される孔状または溝状の接続部27が設けられている。なお、治具としては、接続部27が孔状である場合には止めネジ等が用いられてもよいし、接続部27が溝状である場合にはブックエンド等が用いられてもよい。接続部27を、止めネジやブックエンド等の容易に入手可能なものを操作部40として接続可能な形状とすることで、設置や除去の際の利便性を低下させずに、意図しない除去を防止することが出来る。
【0060】
作業者は、接続部27に操作部40としての治具を挿入し、第二部材20fの着脱および回動を行う。但し、第二部材20fの設置に限っては、治具を用いずに行うことも可能である。作業者は、溝部に対する第一部材10fの仮設置、および第一接触部15fへの天板80の載置を行った後、第二部材20fの両端を持つ等してカム受け部13fにカム部21fを挿入し、第二接触部23fの背面部分やブリッジ部22fを押すことで、天板80を構造物へ固定することが出来る。
【0061】
但し、治具側に孔状または溝状の接続部27が設けられ、第二部材20fに、凸状の接続部27が設けられることとしてもよい。また、当然であるが、図8および図9を用いて説明した、カム部固定用のピン、樹脂フィルム等の弾性部材、および固定対象の位置合わせ手段は、図12および図13を用いて説明した固定装置1fにおいても、適宜採用されてよい(図示は省略する)。
【0062】
図14は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1gの構成を示す側面図である。図14に示す第二部材20gは、カム部21gの一部に、カム部21gの長径部分29の長さに融通性を持たせるための空隙部42を有する。空隙部42は、図14に示されているような、カム部21gの幅方向に沿って設けられた溝状の空隙であってもよいし、カム部21gの中心部をくりぬいて中空とするような形状の空隙であってもよい。
【0063】
このような空隙部42を有することで、カム部21gの長径方向における弾性が高まるため、空隙部42を備えない場合に比べて長径部分29の長さを長くすることが出来る。即ち、固定装置1gでは、カム部21gに空隙部42を備えることによって、カム部21gによる離間距離、固定状態における付勢の強さを調整し、補助的な材料(例えば、図9を用いて説明した樹脂フィルム60等)を用いない場合であっても、十分な強度で固定対象を構造物に固定することを可能としている。なお、当然であるが、図8および図9を用いて説明した、カム部固定用のピン、樹脂フィルム等の弾性部材、および固定対象の位置合わせ手段は、図14を用いて説明した固定装置1gにおいても、適宜採用されてよい。
【0064】
図15は、本実施形態に係る、バリエーションの固定装置1hの構成を示す側面図である。図15に示された固定装置1hでは、第二部材20hにおける操作部40hは、図14までに示した固定装置の操作部40と異なり、固定状態において第一接触部15方向に延びる形状を有している。このような操作部40hを有することで、固定装置1hは、構
造物に、天板80以外の固定対象(図示は省略する)を固定するために用いることが出来る。固定装置1hを用いて固定される固定対象の例としては、プロジェクタやディスプレイ等の電子機器を挙げることが出来る。なお、当然であるが、図8および図9を用いて説明した、カム部固定用のピン、樹脂フィルム等の弾性部材、および固定対象の位置合わせ手段は、図15を用いて説明した固定装置1hにおいても、適宜採用されてよい。
【0065】
なお、上記説明した固定装置1、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1hは、例えばアルミニウムやスチール等の金属を用いて成型することが出来るが、金属に代えて、樹脂等その他の材料を用いて成型することとしてもよい。材料を樹脂等の金属に比べて弾性の高い材料とすることで、長径部分29の長さを長くし、十分な強度で固定対象を構造物に固定することが出来る。また、固定装置1、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1hは、金属パーツと樹脂パーツ等、複数種類の材料によって成型されたパーツの組み合わせによって製造されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h 固定装置
10 第一部材
11 第一固定部
12 第二固定部
13 カム受け部
20 第二部材
21 カム部
23 第二接触部
26 乗り越え部
27 接続部
30 第三部材
32 縁部
33 被付勢面
40 操作部
60 樹脂フィルム
80 天板
90 パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を構造物に固定するための固定装置であって、
前記構造物に設けられた縁部を挟んで互いに反対側に配置される第一固定部および第二固定部と、前記固定の対象に接触する第一接触部と、を有する第一の部材と、
前記第二固定部と前記構造物との間に配置されるカム部であって、長径部分で該第二固定部と該構造物とを離間させることにより前記第一固定部を前記縁部に対して付勢し、前記第一の部材を前記構造物に対して固定状態とするカム部と、前記固定状態において、前記第一接触部と協働して前記固定の対象を挟持するように該固定の対象に接触する第二接触部と、を有する第二の部材と、
を備える固定装置。
【請求項2】
前記カム部は、前記長径部分に略等しい径の長さを有することで、該カム部が前記固定状態に向けて回動される途中で所定以上の力を要求する乗り越え部を、該カム部の短径部分と前記長径部分との間に有する、
請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記第二固定部と前記構造物との間に前記カム部が配置された状態でユーザによって操作されることで、前記カム部を回動させるための操作部を更に備える、
請求項1または2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記第二の部材は、前記操作部が着脱可能に接続される接続部を更に有する、
請求項3に記載の固定装置。
【請求項5】
前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方は、前記固定状態における前記第一固定部の前記縁部に対する付勢の強さを調整可能な位置に設けられた弾性部材を有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の固定装置。
【請求項6】
前記構造物に固定されることで該構造物に前記縁部を設ける第三の部材を更に備え、
前記第三の部材は、前記第一の部材または前記第二の部材に接触する位置に設けられた弾性部材を有する、
請求項1から5の何れか一項に記載の固定装置。
【請求項7】
前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部と、前記対象が前記カム受け部と前記第一接触部との間に入り込むことを規制する規制部と、を更に有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の固定装置。
【請求項8】
前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部と、前記対象が前記カム受け部と前記第一接触部との間に入り込むことを許容する空間と、を更に有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の固定装置。
【請求項9】
前記第一の部材は、前記カム部を前記構造物と前記第二固定部との間に保持するカム受け部であって、前記対象が前記第一接触部と前記第二接触部とによって挟持された状態で、前記カム部を前記第一接触部と前記第二接触部との間に保持するカム受け部を更に有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の固定装置。
【請求項10】
前記カム部は、該カム部の前記長径部分の長さに融通性を持たせるための空隙部を更に有する、
請求項1から9の何れか一項に記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−19508(P2013−19508A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154785(P2011−154785)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000152228)株式会社内田洋行 (105)
【Fターム(参考)】