説明

固液混合物の分配供給装置

【課題】 固液混合物を均一に混合した状態で複数の配管に供給することを可能とする固液混合物の分配供給装置を提供する。
【解決手段】 供給タンク11からの固液混合物を複数の配管2に分配して供給するヘッダー12を、複数の配管に接続される分岐管18を備えた円筒状のマニホールド14と、そのマニホールド内に挿入、固定された攪拌部材15で構成し、その攪拌部材15に、マニホールド内を流れる固液混合物を円周方向で且つマニホールドの中心軸線に対して傾斜した方向に案内する羽根23と、中心軸線方向にバイパスさせるバイパス通路25を設け、マニホールド内を流れる固液混合物を攪拌する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口付パウチ等の容器に、つぶ入りジュース、おかゆ、レトルト食品等の、液体中に固形物を混入させた固液混合物を充填する技術に関し、特に、供給タンクに収容している固液混合物を複数の充填ノズルに分配して供給するために用いるのに好適な固液混合物の分配供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に固液混合物を充填するには、固液混合物を供給タンクの中で均一に混合しておき、その供給タンクから均一に混合した状態の固液混合物を充填ノズルに送り、その充填ノズルを介して容器内に充填する方法が取られている。ところが、この方法では、1個の充填ノズルを用いて容器への充填を行うため、生産性が悪く、特に、注出口付パウチに対して、開口面積の小さい注出口を通して固液混合物を充填する場合には、流量を大きくできず、一層生産性が悪いという問題があった。
【0003】
ところで、固液混合物の充填装置ではないが、液体を注出口付パウチ等に充填する装置において、生産性を上げるため、供給タンクからの液体をヘッダーで複数の配管に分配し、その複数の配管に接続している複数の充填ノズルから同時に充填を行う構成とした装置が提案されている(特許文献1、2参照)。この装置では、複数の充填ノズルで同時に複数の容器に充填するため、生産性が良いという利点を有している。そこで、この構成を固液混合物の充填に適用すれば、固液混合物の充填においても生産性を上げることができると考えられる。
【0004】
ところが、ヘッダーを用いて固液混合物を複数の配管に分配すると、供給タンク内を攪拌して固液混合物を均一に混合しておいても、その固液混合物がヘッダー内を通過する際に、固液混合物が不均一となり、各容器に充填した固液混合物の固形物含有率に大きいばらつきが生じてしまうことが判明した。これは次の理由による。すなわち、通常、ヘッダーは複数の配管(例えば、10個の配管)に液体を分配するため、円筒状のマニホールドの側面に複数の配管を接続する構造となっており、そのマニホールドの内径は、配管径に比べてはるかに大径となっている。このため、固液混合物のマニホールド内での滞留時間が長く、マニホールド内で滞留している間に、固形物が液体との比重差に応じて浮き上がったり、沈降したりし、また、固液混合物がマニホールド内を流れている時においても、その流速が遅く、特に、両端部では流速がきわめて小さいため、やはり固形物の浮き上がりや沈降が生じることがあり、供給タンク内で固液混合物を均一に混合しておいても、その固液混合物がマニホールドを通過する際に不均一となり、結局、複数の配管に供給された時点では固形物含有率にばらつきが生じていた。
【特許文献1】特開平10−305802号公報
【特許文献2】特開2000−109189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、固液混合物を均一に混合した状態で複数の配管に供給することを可能とする固液混合物の分配供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、固液混合物を収容した供給タンクと、該供給タンクからの固液混合物を複数の配管に分配して供給するヘッダーを設けて固液混合物を複数の配管に供給する構成とすると共に、ヘッダーから複数の配管に供給される固液混合物を均一に混合した状態とするため、そのヘッダーを、複数の配管に接続される分岐管を備えた円筒状のマニホールドと、該マニホールド内を流れる固液混合物の一部を円周方向で且つ前記マニホールドの中心軸線に対して傾斜した方向に案内するよう、前記マニホールド内に挿入された攪拌部材を有する構成としたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記した請求項1に係る発明において、前記攪拌部材を、前記マニホールド内に同心状に配置され、マニホールドの内周面との間に環状の通路を形成する円筒状部材と、その外周面に中心軸線に対して傾斜した方向に形成された羽根と、マニホールドの中心軸線方向の流れを許容するバイパス通路を備えた構成としたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記した請求項1又は2に係る発明において、前記マニホールドの中央領域に前記供給タンクを接続し、前記マニホールドの全域に前記複数の分岐管を設けるという構成とし、更に、そのマニホールド内に挿入された攪拌部材の羽根の傾斜方向をマニホールドの長手方向の中央を境にして反対方向となるように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分配供給装置では、供給タンクからの固液混合物がヘッダーによって複数の配管に分配、供給されるが、ヘッダーのマニホールド内を通過する際、攪拌部材によって一部が円周方向に流れるように案内され、これによってマニホールド内での流速を適度に高めることができると共に攪拌効果も得られることとなる。かくして、供給タンク内で均一に混合させている固液混合物がヘッダーを通過する際に、固形物が浮き上がったり、沈降したりして分散状態が変化するということがほとんどなく、固液混合物を、固形物含有率を均一とした状態で複数の配管に分配、供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の好適な実施の形態に係る固液混合物の分配供給装置を備えた充填装置の概略構成図であり、1は固液混合物の分配供給装置、2はこの分配供給装置1に接続された複数の充填用の配管、3は各充填用の配管2に接続された計量装置、4は計量装置3に接続された充填ノズル、5は容器である。分配装置1は、収容した固液混合物6を均一に混合した状態に保つための攪拌装置を備えた供給タンク11と、その供給タンク11からの固液混合物を複数の充填用の配管2に分配して供給するヘッダー12を備えている。複数の充填ノズル4は回転テーブル(図示せず)に保持されて間欠移動すると共に、その下方を間欠移動する容器5の口に先端を挿入して固液混合物を充填する構成となっている。
【0011】
ヘッダー12は、図2〜図4に示すように、円筒状のマニホールド14とその中に挿入、固定された攪拌部材15を備えている。マニホールド14は水平に配置されており、そのほぼ中央領域の上面側に供給タンク11に接続される接続管17が設けられ、全域の下面側に適当な間隔をあけて複数の分岐管18が設けられ、充填用の配管2に接続されるようになっている。マニホールド14内に設けられる攪拌部材15は、マニホールド14内を流れる固液混合物の一部を円周方向で且つマニホールド14の中心軸線に対して傾斜した方向に案内するためのものであり、この実施形態では、マニホールド14内に同心状に配置され、マニホールド14の内周面との間に環状の通路21を形成する円筒状部材22とその外周面に中心軸線に対して傾斜した方向に形成された羽根23を備えた構造としている。この羽根23は、円筒状部材22の円周方向に不連続な形態で形成され、その不連続な部分に、マニホールド14の中心軸線方向の流れを許容するバイパス通路25が形成されている。また、羽根23の傾斜方向は、マニホールド14の長手方向の中央を境にして反対方向となるようにしている。
【0012】
次に、上記構成の充填装置による充填動作及び分配供給装置1による分配、供給動作を説明する。図1において、供給タンク11内には固液混合物6が収容されており、攪拌装置により常時均一に攪拌、混合されている。また、その固液混合物6は自重によってヘッダー12内を満たしている。この状態で、所定のタイミングでヘッダー12に接続されている複数の計量装置3が同時に作動し、ヘッダー12から所定量の固液混合物を吸引し、計量する。これにより、ヘッダー12内の固液混合物が各計量装置3に供給されると共に新たな固液混合物が供給タンク1からヘッダー12内に送られる。次に、所定のタイミングで複数の計量装置3が作動して、先に計量した固液混合物を充填ノズル4に供給し、その充填ノズル4を介して容器5に充填する。以下、同様な動作を間欠的に繰り返すことで、固液混合物が容器5に対して定量ずつ供給される。
【0013】
以上の充填動作において、ヘッダー12では、図2〜図4に示すように、供給タンク11から固液混合物が接続管17を通ってマニホールド14内に入り、複数の分岐管18から同時に吸い出されるという動作が間欠的に繰り返される。このマニホールド14内を固液混合物が流れる際、固液混合物はマニホールド14の内周面と円筒状部材22の外周面とで形成される狭い環状の通路21を流れ且つ羽根23でらせん状に案内されることで流速が適度に大きくなり、乱流状態となっている。このため、固液混合物の攪拌が行われ、マニホールド14内で固液混合物が停止している際に、固形物の浮き上がりや沈降が生じて不均一となっていても、マニホールド14内を流れて各分岐管18に到達するまでには均一に混合される。かくして、固液混合物が均一に混合された状態で(固形物含有率を一定とした状態で)、複数の充填用の配管2に供給され、各容器5に充填される。
【0014】
ここで、羽根23を不連続としてマニホールド14の中心軸線方向の流れを許容するバイパス通路25を形成しているのは、固液混合物を羽根23によってらせん状に案内する際に固液混合物の一部をバイパスさせて、流速が過大となるのを防止すると共にらせん状の流れとバイパスした流れをぶつからせて攪拌効果を増すためである。通路25を無くして全部の固液混合物をらせん状に流すと、流速が大きくなり過ぎ、固液混合物に負担がかかり過ぎて、粘度が変化するとか固形物が破壊されるといった品質劣化を生じることがあり、また、計量装置3が固液混合物を吸引した際に、その吸引にマニホールド14内での固液混合物の流れが追いつかず、気泡を生じてしまうといった問題が生じる。これらの問題を生じないように、バイパス通路25を設けている。バイパス通路25の大きさはこれらの問題を生じないように、環状の通路21の面積、固液混合物の流量及び物性等を考慮して定めればよく、おおよその目安としては、図4に示すように、ヘッダー12を中心軸線方向に見た状態で、バイパス通路25の全面積が環状の通路21の全面積の30〜70%程度に選定すればよい。なお、このバイパス通路25の円周方向の形成位置は任意であり、マニホールド14の長さ方向の位置に応じて異なる位置となるようにしてもよい。また、バイパス通路25の大きさ、個数等はマニホールド14の全長に渡って一定とする必要はなく、例えば、マニホールド14の端部に近づくに連れてバイパス通路25の大きさを小さくするとか、個数を少なくするといった変更を加えても良い。
【0015】
バイパス通路25としては、図示した実施の形態におけるように、羽根23を不連続として、隣接した羽根23と羽根23の間をバイパス通路とする場合に限らず、羽根23として連続した形態のものを設け、その一部に溝や穴を形成してバイパス通路としてもよく、更には、連続した形態の羽根の外径を小さくし、マニホールド14の内周面との間隙をバイパス通路としてもよい。
【0016】
攪拌部材15に円筒状部材22を設けたのは、マニホールド14内の固液混合物の通路を環状の通路21とし、通路21の厚さ(半径方向の寸法)を適度に小さくして攪拌しやすくするため及び通路の容積を小さくして固液混合物の平均滞留時間を短縮するためである。ただし、環状の通路21の厚さはあまり小さくすると、固形物が通り抜けにくくなって却って固形物の含有率が不均一になる恐れがあるので、固形物の大きさに応じて適度に大きくすることが必要であり、例えば、食品用途では、環状の通路21の厚さを、4mm程度以上とすることが好ましい。マニホールド14内の固液混合物の平均滞留時間は短いほど、滞留中における固形物の浮き上がりや沈降を防止できると共に、流速が大きくなって攪拌効果が増し、固液混合物の均一化を図ることができるので好ましいが、平均滞留時間をあまり短くするとマニホールド14内での流速が大きくなりすぎて固液混合物の品質劣化を生じる。従って、平均滞留時間はこれらを考慮して定めるものであり、食品用途では、一つの目安として、12秒程度以下とすることが好ましい。なお、円筒状部材22を省略し、代わりにマニホールド14の内径を小さくして平均滞留時間を短くし、マニホールド内に固液混合物を案内する羽根のみを備えた攪拌部材を挿入、固定するように変更してもよい。
【0017】
図2から良く分かるように、攪拌部材15に形成している羽根23は、その傾斜方向が、マニホールド14の長手方向の中央を境にして反対方向となるようにしている。これにより、マニホールド14の中央領域に供給される固液混合物が、左右に振り分けられ、マニホールド14の左右の領域をほぼ対象に流れて、左右に対象に設けている複数の分岐管18に供給される。かくして、マニホールド14の中心領域をはさんで左右に配置している分岐管18から吸引される固液混合物を一層均一とすることができる。なお、羽根23を設けたことにより、マニホールド14内で攪拌が行われるので、羽根23の傾斜方向は必ずしも、実施の形態に示すように左右対象とする必要はなく、マニホールド14の全長において同方向に傾斜させた構成としてもよい。また、羽根23の傾斜角度を一定とする必要はなく、マニホールド14内の場所に応じて適当に異ならせてもよい。更に、上記実施の形態では、固液混合物をらせん状に流すように、羽根23を不連続ではあるがらせん状に設けているが、不連続な多数の羽根を用いる場合、その羽根は必ずしもらせん状とする必要はなく、固液混合物に大きく攪拌効果を与えることが望ましい場合には、一部の羽根の取り付け位置を、らせん状の位置から左右に適当にずらせるとか、羽根の傾斜方向や傾斜角度を適当に変えるといった変更を加えて、一層攪拌が行われるようにしてもよい。
【0018】
以上に説明した実施の形態に係る分配供給装置1では、ヘッダー12から固液混合物が間欠的に吸引されているが、本発明に係る分配供給装置はこの場合に限らず、ヘッダー12を連続的に固液混合物が流れて複数の分岐管に送り出される場合にも適用可能である。更に、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲の記載の範囲内で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の固液混合物の分配供給装置は、つぶ入りジュース、おかゆ、レトルト食品等の食品である固液混合物を取り扱う装置に好適に使用できるが、食品に限らず、他の固液混合物を取り扱う装置に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る固液混合物の分配供給装置を備えた充填装置の概略構成図
【図2】図1に示す分配供給装置のヘッダーを示す概略断面図
【図3】図2に示すヘッダーの一部を拡大して示す概略断面図
【図4】図3に示すヘッダーを、中心軸線方向に見た概略断面図
【符号の説明】
【0021】
1 固液混合物の分配供給装置
2 配管
3 計量装置
4 充填ノズル
5 容器
11 供給タンク
12 ヘッダー
14 マニホールド
15 攪拌部材
17 接続管
18 分岐管
21 環状の通路
22 円筒状部材
23 羽根
25 バイパス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混合物を収容した供給タンクと、該供給タンクからの固液混合物を複数の配管に分配して供給するヘッダーを備え、該ヘッダーが、前記供給タンクに接続されると共に前記複数の配管に接続される分岐管を備えた円筒状のマニホールドと、該マニホールド内を流れる固液混合物の一部を円周方向で且つ前記マニホールドの中心軸線に対して傾斜した方向に案内するよう、前記マニホールド内に挿入された攪拌部材を有することを特徴とする固液混合物の分配供給装置。
【請求項2】
前記攪拌部材が、前記マニホールド内に同心状に配置され、マニホールドの内周面との間に環状の通路を形成する円筒状部材と、その外周面に中心軸線に対して傾斜した方向に形成された羽根と、マニホールドの中心軸線方向の流れを許容するバイパス通路を備えていることを特徴とする請求項1記載の固液混合物の分配供給装置。
【請求項3】
前記マニホールドの中央領域に前記供給タンクが接続され、前記マニホールドの全域に前記複数の分岐管が設けられており、そのマニホールド内に挿入された攪拌部材の羽根の傾斜方向がマニホールドの長手方向の中央を境にして反対方向となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の固液混合物の分配供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−7039(P2006−7039A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185517(P2004−185517)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】