説明

土壌掘削工具用スィベルおよび土壌改良工法

【課題】この発明は、従来の設備が活用できて少ない初期投資で、地上に排泥をほとんど出さないで土壌強化工事や土壌浄化が行える装置や工法を提供することを目的とする。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具用スィベル1は、上端部に設けられた動力連結部2と、動力連結部2の下に同軸に設けられた回転部3と、下端部に設けられた三重管ロッド接続部5と、回転部3を回転自在に支持する固定部4とを有し、回転部3には第1流体通路7と第2流体通路8と第3流体通路9とが独立に設けられており、固定部4には第1流体通路7に流体を供給する第1流体導入口10と第2流体通路8に流体を供給する第2流体導入口11と第3流体通路9に流体を供給する第3流体導入口12とが設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る土壌掘削工具用スィベルおよび土壌改良工法は、軟弱な地盤の改良や汚染された土壌の浄化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたらせん状羽根を有し、この軸体でらせん状羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成され、らせん状羽根の上面および下面に爪を設けた土壌掘削工具を回転させ、かつ先導管より圧縮空気を噴出しながら土壌を掘削し、所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌させながららせん状羽根部よりセメントミルクを注入して土壌とセメントミルクを混合させ、土壌中に改良体を造成することにより、地上にセメントミルクを含む排泥を発生させず、環境問題を引き起こすことなく軟弱地盤の改良工事を実現することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、さらに三重管構造のスィベルおよび中間ロッドによって圧縮空気やセメントミルクを供給することや、周囲に空気を吐出するための管を備えた注入材吐出ノズルが記載されている。
【特許文献1】特開2003−90189
【特許文献2】特開2004−27493
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載された土壌掘削工具は簡易な装置でありながら、効果的に施工することができるものである。地上に排泥をほとんど出さないので環境に対しても良好であり、排泥処理費用がかからないので低コストで土壌強化工事や土壌浄化が行える。
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載された建設用機械は専用の作業台車を使用するようになっており、大型のアースオーガが使えないような狭い場所でも施工できる利点を有する。これらの装置は従来のアースオーガに比べて小型で簡易な装置である。しかしながら、すでにアースオーガを有する者にとっては、全て新たに専用の装置を導入するとなると、初期投資が大きいものとなるという問題点がある。
【0006】
また、十分な作業スペースがある作業現場においては、大型の設備を活用することにより、大規模な施工を効率的に行うことも望まれる。
【0007】
この発明は、従来の設備が活用できて、少ない初期投資で地上に排泥をほとんど出さないで土壌強化工事や土壌浄化が行える装置や工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、この発明の土壌掘削工具用スィベルは、上端部に設けられた動力連結部と、動力連結部の下に同軸に設けられた回転部と、下端部に設けられた三重管ロッド接続部と、回転部を回転自在に支持する固定部とを有し、回転部には第1流体通路と第2流体通路と第3流体通路とが独立に設けられており、固定部には第1流体通路に流体を供給する第1流体導入口と第2流体通路に流体を供給する第2流体導入口と第3流体通路に流体を供給する第3流体導入口とが設けられているものである。さらに、動力連結部および三重管ロッド接続部に正逆双方向に相対的な回転を防止する回転防止手段が設けられていることが好ましい。
【0009】
この発明の土壌改良工法は、土壌掘削工具用スィベルをアースオーガ作業装置のオーガ動力装置に取り付け、土壌掘削工具用スィベルに三重管ロッドを接続し、さらに三重管ロッドの下端部に土壌掘削工具を接続して土壌中に改良体を造成する土壌改良工法であって、
土壌掘削工具用スィベルは独立に設けられた3つの流体通路とその3つ流体通路にそれぞれ流体を供給する3つの流体導入口を有するものであり、
土壌掘削工具は、先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたら土壌撹拌羽根を有し、前記軸体で土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成され、土壌撹拌羽根の上面および下面に爪を設けたものであり、土壌掘削工具を回転させ、かつ3つの流体導入口のいずれより圧縮空気を導入し先導管より圧縮空気を噴出させながら土壌を掘削し、
所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌させながら土壌撹拌羽根部より3つの流体導入口のいずれより注入材を導入して地中に注入材を注入して土壌と注入材を混合させ、土壌中に改良体を造成するものである。さらに、土壌掘削工具用スィベルはリーダー接続部材を介してアースオーガ作業装置のリーダーのレール上を上下自在に取り付けられ、リーダー接続部材はアーム長さのことなる複数のものが備えられており、土壌掘削工具の土壌撹拌羽根の大きさに合わせてリーダー接続部材を選択することによって、土壌掘削工具用スィベルの軸中心とリーダーの距離を調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、独立に設けられた3つの流体通路とその3つ流体通路にそれぞれ流体を供給する3つの流体導入口を有する土壌掘削工具用スィベルにより、先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたら土壌撹拌羽根と注入材吐出ノズルを有する土壌掘削工具をアースオーガ作業装置で使用できるようにし、従来の設備が活用できて少ない初期投資で、地上に排泥をほとんど出さないで土壌強化工事や土壌浄化が行える装置や工法を実現できるという効果を有する。大規模な施工への適用や作業効率の向上が実現できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は土壌掘削工具用スィベルを示す縦断面図である。土壌掘削工具用スィベル1の上端部には、アースオーガ作業装置のオーガ動力装置に接続するための動力連結部2が設けられている。回転部3は動力連結部2に同軸に設けられており、固定部4に対して回転自在に支持されている。また、土壌掘削工具用スィベル1の下端部には、三重管ロッドと接続するための三重管ロッド接続部5が設けられている。
【0012】
動力連結部2はアースオーガのオーガ動力装置に接続する部分であり、ここでは、先端部が六角柱状に形成されている。アースオーガのオーガ動力装置には、この六角柱が収まる凹部が設けられており、平面状の側面同士が合わせ面となる。これによって、オーガ動力装置と動力連結部2は正逆どちらの方向に対しても相対的な回転が規制され、両者は一体となって回転する。
【0013】
回転部3は三重管構造となっており、軸に沿って第1流体通路7が、その外周に第2流体通路8が、さらにその外周に第3流体通路9が、それぞれ同心円状に設けられている。これらの3つの流体通路は独立している。
【0014】
回転部3の外部には固定部4が設けられており、回転部3は軸受けを介して回転自在に固定部4に支持されている。固定部4の内部は概ね円柱状の穴が貫通しており、回転部3の外側面を囲むようになっている。固定部4の外部には上部より第1流体導入口10、第2流体導入口11、第3流体導入口12が設けられ、注入材や圧縮空気を流通させるためのホース類が接続できる。固定部4の内面には、3つの環状の溝13,14,15が形成されていて、それぞれが第1流体導入口10、第2流体導入口11、第3流体導入口12とつながっている。一方、回転部3には、3つの流体通路7,8,9につながる横穴が、それぞれ3つの環状の溝13,14,15の位置と合うように形成されている。
【0015】
三重管ロッド接続部5は回転部3の下端に設けられている。ここに、三重管ロッドの上端部が接続される。動力連結部2と同様に正逆どちらの方向に対しても相対的な回転が規制されるよう構成されている。また、接続時には、土壌掘削工具用スィベル1の3つの流体通路7,8,9はそれぞれ三重管ロッドの流体通路をつながるようになっている。
【0016】
以上、この土壌掘削工具用スィベル1を介して三重管ロッドはアースオーガに取り付けられ、オーガ動力装置の動力が三重管ロッドに伝達される。固定部4は回転しないので、この固定部4に設けられた第1流体導入口10、第2流体導入口11、第3流体導入口12に各種ホースを接続し、3つの流体通路7,8,9を介して流体を三重管ロッドに供給することができる。
【実施例1】
【0017】
ついで、この発明の実施例について説明する。図2は、土壌掘削設備の構成を示す正面図である。作業台車21はアースオーガ装置に設けられているものを使用する。作業台車21にはリーダー22が設けられており、このリーダー22に沿って上下動可能なようにオーガ動力装置23が設けられている。
【0018】
動力連結部2とオーガ動力装置23の下端部を接続することによって、土壌掘削工具用スィベル1が取り付けられる。図3は土壌掘削工具用スィベル1とリーダー22の接続を示す断面図であり、図1のA−A断面図である。リーダー22は2本のレール24を有し、このレール24上を上下自在にスライダー25が設けられる。土壌掘削工具用スィベル1の固定部4にリーダー接続部材26が設けられており、アーム27の先端部でスライダー25と接続されている。この例では、レール24間距離は600mmであり、レール24の中心同士を結ぶ直線に対して土壌掘削工具用スィベル1の軸心の距離が655mmになるように設定されている。この土壌掘削工具用スィベル1とリーダー22との距離は、土壌掘削工具の径の大きさに合わせて設定される。したがって、アーム長の異なる複数のリーダー接続部材26を準備しておけば、異なる土壌掘削工具をその径に合わせて最適な位置に取り付けることができる。この場合、オーガ動力装置23にも同様の取付け部材を設け、オーガ動力装置23と土壌掘削工具用スィベル1の軸心を合わせる。また、レール24の径や間隔に合わせてスライダー24を選択すれば、同じ土壌掘削工具用スィベル1を異なるリーダー22に使用することができる。
【0019】
土壌掘削工具用スィベル1の下端には三重管ロッド28が三重管ロッド接続部5によって取り付けられる。図4は、三重管ロッド28を示す縦断面図である。大中小の3本の管が同心円状に配置されており、第1流体通路7と第2流体通路8と第3流体通路9が形成されている。施工する深さをカバーするだけの長さを有する。
【0020】
三重管ロッド28の下端には土壌掘削工具29が取り付けられる。図5は、土壌掘削工具29を示す一部断面図の正面図である。土壌掘削工具29は軸体30のまわりに土壌撹拌羽根31を有するものである。先端に先導管32を有し、切削チップ33が設けられている。切削チップ33により地盤を切削しながら、先導管32が地中に入っていく。先導管2に続いて軸体30が設けられ、その周囲に回転羽根である土壌撹拌羽根31が設けられている。軸体30は中空となっているが、図5に示すように土壌撹拌羽根31が設けられている部分は、軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成されている。ここでは、図5に示すように円筒の両側に円錐を接続したような形状になっており、両端部から中央部へ向かって径が大きくなっている。また、図5に示す例において土壌撹拌羽根31はらせん状羽根であり、このらせん形状においても、両端部から中央部へ向かって全体として径が大きくなっている。
【0021】
軸体30は中空となっているが、内部には第1の内管34と第2の内管35が設けられており、内管34、35は注入材吐出ノズル36(注入材排出口)へつながっている。注入材吐出ノズル36は軸体30の最も径が大きい位置において外へ向かって設けられている。本例では注入材吐出ノズル36は2本設けられているが、3本以上設けてもよい。図6は注入材吐出ノズル36の詳細を示す横断面図であり、図7は同縦断面図である。注入材吐出ノズル36は第1の管36aと第2の管36cを有し、それぞれの管の内面にはらせん溝36b、36dが設けられている。らせん溝36b、36dの回転方向は同じである。第2の管36cは第1の管36aの外周に設けてられている。三重管ロッド28の第1流体通路7は第1の内管34につながっており、第2流体通路8は第1の内管34と第2の内管35の間に形成される流路につながる。第3流体通路9は先導管32につながっている。
【0022】
土壌撹拌羽根31の上下面および外周部にはそれぞれ長方形の板状の爪37が複数取り付けられている。爪37は軸体4を中心とする円周に接する方向に、すなわち、爪37の板厚の方向が半径方向になるように設けられている。土壌撹拌羽根31の下面および外周部の爪37には、切削チップ38が設けられている。図7は、外周部に設けられた爪を示す断面図である。一方、土壌撹拌羽根31の上面に設けられた爪には切削チップは取り付けられていない。
【0023】
図8は土壌掘削工具の底面図であり、爪37の配置例を示す。多数の爪37が設けられているが、爪37は土壌撹拌羽根31の下面のうち、下から見える領域のみに設けられており、手前の羽根に隠れる領域には設けられない。また、外周部において、注入材吐出ノズル36がある位置およびそれから90度ずれた位置には、外部に突出するような爪37aが設けられている。
【0024】
ついで、この土壌掘削設備による土壌改良工法について説明する。作業台車21を施工場所に移動させ、施工ポイント上に土壌掘削工具29の位置を合わせる。土壌掘削工具用スィベル1の第1流体導入口10にはセメントミルク等の注入材を供給する注入材ホースを接続する。第2流体導入口11、第3流体導入口12には圧縮空気を供給する圧縮空気ホースを接続する。注入材ホースにはグラウトポンプを介して注入材タンクが接続されており、圧縮空気ホースにはコンプレッサが接続されてる。
【0025】
土壌掘削工具29により掘り進めるときには、コンプレッサで空気を第3流体導入口12より送り土壌掘削工具29の先導管32より噴出するとともに、土壌掘削工具29の土壌撹拌羽根31が下向きに進行する方向にオーガ動力装置23を回転させる。削孔は(1)空気を送る方法、(2)水を送る方法、(3)空気と水を送る方法、がある。道路等がある場所では空気と水を使用したほうが水の使用が少なくなって道路を水浸しにすることがないが、水を排出しても問題にならないような場所においては水のみで削孔してもよい。空気と水で削孔する場合は、コンプレッサと水供給管をエジェクターに接続し、水と空気を混合した上で第3流体導入口を通して圧送する。土壌掘削工具29の進行に合わせて、オーガ動力装置23と土壌掘削工具用スィベル1をリーダー22のレール24に沿って下げていく。土壌掘削工具29はアースオーガ装置のリーダー22に取り付けられているので、最終深さまでそのまま掘り進めることができる。土壌撹拌羽根31の下面および外周部の爪37には、切削チップ38が設けられているので、効果的に土砂を切削・撹拌させるとともに、切削された土砂を滑らかに後方に送る。切削した土砂を滑らかに後方に送るために、土壌撹拌羽根31のループは先端から中央部にむかって径が広がり、また上部へ向かって径が小さくなる形状になっている。また、軸体30で土壌撹拌羽根31が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなる形状である。そのため、中央部においても土壌撹拌羽根31および軸体30は強固であり、また掘り進みながらスムーズに土砂を後方に送るため、施工中に土壌掘削工具29が地中で破損しにくくなり、比較的硬い地盤や粘土質の場所でも施工ができる。
【0026】
最終深さまで掘り進めたら、オーガ動力装置23の回転方向を逆にして、土壌掘削工具29が上向きに進行するよう回転させながら、土壌掘削工具1を引き上げる。この際、注入材ホースより注入材を第1流体導入口10に導入し、土壌掘削工具29の注入材吐出ノズルより注入材を地中に注入する。さらに圧縮空気ホースより高圧の圧縮空気を第2流体導入口11送り込む。注入材吐出ノズル36の第1の管36aの内面にはらせん溝36bが設けられているために、注入材は管の長さ方向に対して回転しながら吐出され、遠くまで届く。さらに注入材の周りには、やはり注入材と同方向に回転しながら進行する空気が随伴しており、この空気に運ばれて注入材はより遠くまで到達することができる。なお、注入材吐出ノズル36の第1の管36a及び第2の管36cのらせん溝の方向は、引き上げ時における土壌掘削工具29の回転方向に合せて決められている。本例では、引き上げ時には土壌掘削工具29は左回転であるので、注入材吐出ノズル36の第1の管及び第2の管のらせん溝も左回転になるよう設けられている。引き上げ時には土壌撹拌羽根31の上面の爪37が土砂を撹拌する。土砂の機械的撹拌と注入材の噴出による土砂の撹拌が同時に行われ、切削された土砂と注入材は効率的に混合される上、土壌撹拌羽根31によって下方へ送られていくので、切削された土砂が排泥として地上に排出されることがない。ここで土壌掘削工具29を逆回転させる方法として、土壌掘削工具29を一定の深さに保ちながら逆回転させる作業と土壌掘削工具29を回転させずに所定の間隔だけ引き上げる作業とを交互に繰り返えすようにすることが、排泥の発生をより効果的に防止するので好ましい。引き上げるときは、掘り進めるときとは逆に、オーガ動力装置23と土壌掘削工具用スィベル1をリーダー22のレール24に沿って上げていく。所定の高さまで引き上げたら注入材の注入を停止して、土壌掘削工具1を引き上げる。このようにして一つの穴の施工が完了したら、作業台車23を次の位置に移動させ、同様の施工を繰り返す。
【0027】
注入材の一例について詳細に説明する。ここでは注入材としては高濃度のセメントミルクを用いる。本工法に使用するセメントミルクは改良体の強度を十分なものとするために通常の工法の場合(例えば練りあがりの注入材1m3中にセメント量760kg程度)よりセメントの比率を多くすることが好ましい。ここで、セメント量を多くすると注入材の比重が大きくなりポンプでの吸引が悪くなりやすいので、芳香族スルホンと特殊変性リグニンを主成分とする減水剤を配合することが好ましい。この減水剤の配合によりセメントミルクが流れやすくなってポンプにより送りやすくなるとともに、改良体の強度が増す。本実施例においては減水剤として芳香族スルホンと特殊変性リグニンを主成分とする商品名サンフローSW−2000S(日本製紙株式会社)を使用し、練りあがりの注入材1m3中にセメント1000kgとサンフローSW−2000Sを5kg配合し、改良体の圧縮強度1MPa(設計基準強度)を得た。このように従来の工法よりも高濃度のセメントミルクを用いるので、注入する量は少なくてすみ、また比重が大きいため上には上がりにくく、この点も排泥を出させにくくすることに貢献している。プラントで空気と混合されたセメントミルクを0.6〜2.5MPaの低圧で噴出する方法と、18.0〜29.0MPaの超高圧でセメントミルクを噴出する方法があるが、本例では後者の超高圧噴出撹拌を用いた。注入材吐出ノズル36の管の内面に設けられたらせん溝により空気とセメントミルクに回転力を与えられ、かつ注入材の周囲を同方向に回転する空気が随伴して吐出されるため、セメントミルクは遠くまで飛ぶことができ、土壌撹拌羽根31の径よりも大きな径の地中杭を形成できる。例えば、直径1mの土壌撹拌羽根31を用いた場合に、超高圧噴出を用いて1.8m程度の地中杭が得られていたが、本発明に係る注入材吐出ノズルを使用することにより、セメントミルクの飛ぶ距離は30%程度増加し、直径2.3m程度の地中杭を形成することができる。切削された土砂はセメントミルクと混合され、改良体として地中杭を構成するので、地上に排泥として排出されない。引き上げるときは、土壌撹拌羽根31の回転によって、上から土砂を引き込むとともに撹拌・混合された土砂とセメントを羽根により下に強く押し付けるので、強固な地中杭を形成でき、また、排泥の発生を強力に抑制する。このため、排泥による環境問題を起こすことがなく、また、排泥の処理のための多額の費用も発生しないため、地球環境に優しく、施工性、経済性、安全性にすぐれた工法となっている。
【0028】
らせん溝を備えた注入材吐出ノズル36を使用した超高圧噴出撹拌により、セメントミルクを横方向に効果的に高圧噴射するために、らせん状羽根の径よりも広い範囲の改良体の造成が可能であり、工期の短縮および経済性の向上が実現できるとともに、密着施工や改良体相互の施工が可能となり工事の全体的な一体化がはかれる。単位時間当たりの注入量には留意が必要で、過度の注入を行うと排泥を発生させないという本発明の効果が発揮できない場合がある。排泥を発生させない限界での単位時間当たり注入量を前もって把握した上で、その限界注入量の70%程度で注入するのが排泥防止をより確かなものにする上で好ましい。本実施例では70リットル/minとした。引き上げ速度(以下、1m引き上げるのに要する時間で表示)は、C<0.01N/mm2(=MPa)での粘性土では3.0min/m、0.01N/mm2≦C≦0.03N/mm2(5≦N≦10)の土質では5.0min/m、10≦N≦15の砂質土では6.0min/mとした。また、グラウトポンプとしては70〜150リットル/minの能力のものを用い、主に140リットル/min程度の注入量で使用する直径1.5mの土壌撹拌羽根31にも対応できるようにした。
【0029】
ここで用いたアースオーガ装置は広く普及しているものであり、多くの建設業者は既に保有している。この既設の設備を活用することによって、少ない初期投資で排泥の出ない工法を導入することができる。大型のリーダーやオーガ動力装置を使用することによって、大規模な施工も実現できる。また、作業速度も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、軟弱地盤の強化を行う土壌改良工法として利用することができる。新たな設備投資が少なく、建設業に広く適用できるものである。排泥をほとんど排出しないので、環境に悪影響を与えることがなく、また排泥処理の費用がかからず低コストで施工することができる。大規模な工事にも適用でき、作業速度も高まっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】土壌掘削工具用スィベルを示す一部断面正面図である。
【図2】土壌掘削設備を示す正面図である。
【図3】図1の断面図である。
【図4】三重管ロッドを示す縦断面図である。
【図5】土壌掘削工具を示す一部断面正面図である。
【図6】注入材吐出ノズルを示す横断面図である。
【図7】同縦断面図である。
【図8】爪を示す断面図である。
【図9】土壌掘削工具を示す底面図である。
【符号の説明】
【0032】
1.土壌掘削工具用スィベル
2.動力連結部
3.回転部
4.固定部
5.三重管ロッド接続部
7.第1流体通路
8.第2流体通路
9.第3流体通路
10.第1流体導入口
11.第2流体導入口
12.第3流体導入口
21.作業台車
22.リーダー
23.オーガ動力装置
24.レール
26.リーダー接続部材
27.アーム
28.三重管ロッド
29.土壌掘削工具
30.軸体
31.土壌撹拌羽根
32.先導管
33.切削ビット
36.注入材吐出ノズル
37.爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に設けられた動力連結部と、動力連結部の下に同軸に設けられた回転部と、下端部に設けられた三重管ロッド接続部と、回転部を回転自在に支持する固定部とを有し、回転部には第1流体通路と第2流体通路と第3流体通路とが独立に設けられており、固定部には第1流体通路に流体を供給する第1流体導入口と第2流体通路に流体を供給する第2流体導入口と第3流体通路に流体を供給する第3流体導入口とが設けられている土壌掘削工具用スィベル。
【請求項2】
土壌掘削工具用スィベルをアースオーガ作業装置のオーガ動力装置に取り付け、土壌掘削工具用スィベルに三重管ロッドを接続し、さらに三重管ロッドの下端部に土壌掘削工具を接続して土壌中に改良体を造成する土壌改良工法であって、
土壌掘削工具用スィベルは独立に設けられた3つの流体通路とその3つ流体通路にそれぞれ流体を供給する3つの流体導入口を有するものであり、
土壌掘削工具は、先導管と軸体と軸体の周囲に取り付けられたら土壌撹拌羽根と注入材吐出ノズルを有し、前記軸体で土壌撹拌羽根が取り付けられる部分は軸方向に沿って中央部が太く両端部が細くなるように構成され、土壌撹拌羽根の上面および下面に爪を設けたものであり、
土壌掘削工具を回転させ、かつ3つの流体導入口のいずれより圧縮空気を導入し先導管より圧縮空気を噴出させながら土壌を掘削し、
所定の深さに達した後に土壌掘削工具を逆回転させて土壌を撹拌させながら土壌撹拌羽根部より3つの流体導入口のいずれより注入材を導入して注入材吐出ノズルより注入材を地中に注入して土壌と注入材を混合させ、土壌中に改良体を造成する土壌改良工法。
【請求項3】
土壌掘削工具用スィベルはリーダー接続部材を介してアースオーガ作業装置のリーダーのレール上を上下自在に取り付けられ、リーダー接続部材はアーム長さの異なる複数のものが備えられており、土壌掘削工具の土壌撹拌羽根の大きさに合わせてリーダー接続部材を選択することによって、土壌掘削工具用スィベルの軸中心とリーダーの距離を調整するものである請求項2に記載の土壌改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−204983(P2007−204983A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23408(P2006−23408)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(399070228)山伸工業株式会社 (6)
【出願人】(302002535)有限会社さかわ土木工業 (4)
【Fターム(参考)】