説明

圧力調整器異常検出装置および圧力調整器異常検出方法

【課題】圧力調整器の異常を、短時間で、かつ簡単な作業で検査し見出すことができるようにする。
【解決手段】この発明の圧力調整器異常検出装置1は、圧力調整器2の異常を検出する装置であり、圧力調整器2に冠着し内部が密閉状態となる蓋体3と、その蓋体3の内周面に取り付けられた内部検出用センサ4と、その内部検出用センサ4からの検出情報に基づいて圧力調整器2の異常の有無を判別する圧力調整器異常判別手段5と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス用圧力調整器の異常を検出する圧力調整器異常検出装置および圧力調整器異常検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LPガス設備のような高圧ガス用設備では、使用先でのガス圧力を安定させるために圧力調整器が用いられている。この圧力調整器は、その内部のダイヤフラムが経年劣化等により損傷する場合があり、例えばダイヤフラムに孔が開いてガス漏れが発生したような場合、その異常を検知するために、連絡を受けたガス事業者が気密検査を行う必要があった。
【0003】
この気密検査においては、配管設備に圧力計等を接続する必要があり、また配管に圧力をかけてから数分間状況を確認する必要があり、検査に時間を要していた。
【0004】
さらに、その検査時には、使用先の消費者がLPガスの使用を中断しなければならず、ガス事業者の検査員がそのことを消費者に事前に通知したり、また消費者も不便を強いられ、全体的に手間が掛かり煩雑なものとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、圧力調整器の異常を、短時間で、かつ簡単な作業で検査し見出すことができる圧力調整器異常検出装置および圧力調整器異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、高圧ガス用圧力調整器の異常を検出する圧力調整器異常検出装置において、上記圧力調整器に冠着し内部が密閉状態となる蓋体と、上記蓋体の内周面に取り付けられた内部検出用センサと、上記内部検出用センサからの検出情報に基づいて圧力調整器の異常の有無を判別する圧力調整器異常判別手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明において、上記内部検出用センサをガス圧力センサとするものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明において、上記内部検出用センサをガス濃度検出センサとするものである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、上記した請求項1から3の何れか1項に記載の発明において、上記圧力調整器の異常が、ダイヤフラムからのガス漏れであるとするものである。
【0010】
さらに、請求項5に記載の発明は、高圧ガス用圧力調整器の異常を検出する圧力調整器異常検出方法において、上記圧力調整器に蓋体を冠着させてその内部を密閉状態とし、上記蓋体の内周面に取り付けられた内部検出用センサからの検出情報に基づいて圧力調整器の異常の有無を判別する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の圧力調整器異常検出装置および圧力調整器異常検出方法では、圧力調整器に蓋体を冠着させてその内部を密閉状態とし、その蓋体の内周面に取り付けられた内部検出用センサからの検出情報に基づいて圧力調整器の異常の有無を判別するようにした。ガス事業者の検査員は、蓋体を圧力調整器に冠着させるだけで、検査を行うことができるので、圧力調整器の異常を短時間で見出すことができる。また、使用先でガス機器が使用されていても検査を行うことができ、消費者に対する事前の通知も必要でなく、簡単な作業で検査を行うことができる。したがって、検査の頻度を増やすことも可能となり、早期に異常を検知でき、安全性が高まる。
【0012】
また、気密検査を実施するための従来の圧力計等の機材に比べ、蓋体等の可搬式の検知装置のみのため、検査作業が簡単になり合理化につなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1はこの発明の圧力調整器異常検出装置の構成を示す図である。図1において、この発明の圧力調整器異常検出装置1は、、高圧ガス用圧力調整器(以下単に「圧力調整器」という)2の異常を検出する装置であり、圧力調整器2に冠着し内部が密閉状態となる蓋体3と、その蓋体3の内周面に取り付けられた内部検出用センサ4と、その内部検出用センサ4からの検出情報に基づいて圧力調整器2の異常の有無を判別する圧力調整器異常判別手段5と、を備えている。圧力調整器2は、容器11の出口側に取り付けられ、容器11からの高圧ガスの圧力を所定圧力に調整し、ガス出口通路20からガス消費側へ供給している。
【0015】
次に、この圧力調整器異常検出装置1のより具体的な構成を図2を用いて説明する。
【0016】
図2は圧力調整器異常検出装置の構成例を示す図である。図2において、圧力調整器2は、ボディ21と、このボディ21の上部開口に装着されるキャップ22とで構成されている。ボディ21の左側端部には、容器11からのガスが導入されるガス入口通路23が形成されており、ボディ21の右側端部には、所定圧に減圧されたガスが流出するガス出口通路20が形成されている。
【0017】
ガス入口通路23とガス出口通路20との間には、減圧室24が設けられており、この減圧室24は、流入されたガスの圧力(1.5MPa程度の圧力)を2.8KPa程度の圧力に減圧する。減圧室24は、気圧室としての大気室25側から押圧部材としてのスプリング26により当該減圧室24側に押圧されるダイヤフラム27を備えている。ダイヤフラム27は、ゴム部材からなり周縁がボディ21とキャップ22との間に挟持固定されて、大気室25と減圧室24とを気密に区画している。
【0018】
キャップ22には、大気室25を大気と連結する連通孔22aが設けられている。
【0019】
スプリング26は大気室25に設けられており、比較的大径のばねからなり、一端が大気室25の内壁に形成された突起部25aに当接し他端がダイヤフラム27の上面に当接して配置されている。
【0020】
ダイヤフラム27の中心には、作動桿28が上下に貫通して設けられており、この作動桿28の下部にはレバー29の一端が連結されている。レバー29の他端には、支点ピン29aと可動ピン29bとが挿通しており、レバー29が支点ピン29aを中心として回動可能になっている。可動ピン29bは、弁棒35の一端にも挿通しており、弁棒35の他端には、ノズル37を開閉すべく左右方向に移動可能な弁体としての弁36が設けられている。
【0021】
上記の圧力調整器2は次のように作用する。容器11のバルブが開かれると、容器11からの高圧ガスはノズル37を通って減圧室24に入る。このとき、ガス出口通路20が閉じられていると、減圧室24のガス圧力は高くなり、ダイヤフラム27を押し下げているスプリング26に打ち勝って、ダイヤフラム27は上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム27に連結されているレバー29は、支点ピン29aを中心として反時計方向に回動するため、可動ピン29bが左方に移動する。このため、弁棒35も左方に移動してガス入口通路23のノズル37を閉止するので、減圧室24へのガス流入は止まり、減圧室24の圧力はそれ以上に上昇しない。
【0022】
一方、ガスをガス出口通路20から流出させる、つまり燃焼器側でガスの消費を始めると、減圧室24の圧力は下がり、ダイヤフラム27も下がる。これにより、ダイヤフラム27に連結されているレバー29は支点ピン29aを中心として時計方向に回動するため、可動ピン29bが右方に移動する。このため、弁棒35も右方に移動して弁36が開き、ガス入口通路23から高圧のガスが流入する。このように、圧力調整器2は、ダイヤフラム27の上下動によって、ガス入口通路23から流出するガスの圧力を所定の圧力に制御している。
【0023】
この圧力調整器2のキャップ22の底周部22bには、蓋体30が冠着される。この蓋体30は、下端が開口した逆椀状のもので、圧力調整器2のキャップ22の底周部22bに簡単に冠着したり取り外したりすることができるようになっている。この蓋体30には、その上端内周面の略中央に圧力センサ40が取り付けられている。また蓋体30には、その上端内周面に、開閉栓32aで開閉自在となる通気孔32が形成され、またその周壁部31の下端全周に亘ってウレタン等からなる弾性部材33が設けられている。
【0024】
蓋体30の開閉栓32aを開いた状態で、蓋体30を、キャップ22の底周部22bに冠着すると、弾性部材33がキャップ22の底周部22bに密着し、開閉栓32aを閉じることで、蓋体30の内側の空部30aが密閉状態となる。
【0025】
圧力調整器異常検出装置10は、上記の蓋体30、圧力センサ40および異常検出部50とから構成されている。異常検出部50は、圧力センサ40の検出信号に基づいて圧力調整器2の異常の有無を判別する異常判別部51と、異常判別部51で異常であるとの判別結果が出された場合その異常をブザー等で報知する報知部52とを備えている。この異常検出部50は、マイコンのCPUを中心に構成され、異常判別部51および報知部52は、ROMに記憶された本発明に係るプログラムに従ってCPUが動作するソフトウェアの機能を含むものとなっている。
【0026】
次に、上記した圧力調整器異常検出装置10を用いて、圧力調整器2の内部に使用されているダイヤフラム27の異常を点検する場合について説明する。この点検の際には、検査員は、先ず蓋体30を圧力調整器2のキャップ22に被せ、開閉栓32aを閉じる。このとき、蓋体30の空部30aは密閉状態となる。そして、圧力調整器異常検出装置10を作動させ、圧力センサ40による圧力測定を、所定の時間(例えば30秒間)に渡って行う。
【0027】
図3は圧力センサによる測定結果を示す図で、(a)は圧力調整器が正常の場合を、(b)は圧力調整器が異常の場合をそれぞれ示している。蓋体30を圧力調整器2のキャップ22に被せ、開閉栓32aを閉として通気孔32を閉じ、蓋体30の空部30aを密閉状態としたとき、ダイヤフラム27が正常であれば、圧力センサ40が検出した空部30aの圧力は図3(a)に示すように、通気孔32を閉じる前とほとんど変化しない。これに対して、ダイヤフラム27が異常であれば、圧力センサ40が検出した空部30aの圧力は、図3(b)に示すように、通気孔32を閉じる前の圧力に対して確実に上昇し、その後安定した値を示す。この圧力上昇は、ダイヤフラム27が損傷を受けてダイヤフラム27からガスが漏洩していると、そのガスは大気室25および連通孔22aを通って、蓋体30の空部30aに流入し、密閉状態にある空部30aの圧力を上昇させることによるものであり、その後圧力調整器2の圧力調整機能によって空部30aの圧力は安定するようになる。
【0028】
異常検出部50の異常判別部51は、入力された圧力センサ40の圧力測定結果に基づいて、その圧力測定値が、図3(a)に示すように、緩やかな変化であれば正常であると判別し、図3(b)に示すように、急激な圧力上昇がみられれば異常であると判別して報知部52に異常信号を出力し、報知部52がブザー等を鳴らして検査員に通知する。
【0029】
検査員は上記の検査作業を終了すると、開閉栓32aを開放し、蓋体30を取り外して、全行程を完了する。
【0030】
このように、本発明では、圧力調整器2に蓋体30を冠着させてその内部を密閉状態とし、その蓋体30の内周面に取り付けられた圧力センサ40からの検出結果に基づいて圧力調整器2の異常の有無を判別するようにした。ガス事業者の検査員は、蓋体30を圧力調整器2に冠着させるだけで、検査を行うことができるので、圧力調整器2の異常を短時間で見出すことができる。また、使用先でガス機器が使用されていても検査を行うことができ、消費者に対する事前の通知も必要でなく、簡単な作業で検査を行うことができる。したがって、検査の頻度を増やすことも可能となり、早期に異常を検知でき、安全性が高まる。
【0031】
また、気密検査を実施するための従来の圧力計等の機材に比べ、蓋体30等の可搬式の検知装置のみのため、検査作業が簡単になり合理化につなげることができる。
【0032】
なお、上記の説明では、蓋体30の内部の状態を検出する内部検出用センサとして、圧力センサ40を用いるようにしたが、その他のセンサ、例えばガス濃度検出センサを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の圧力調整器異常検出装置の構成を示す図である。
【図2】圧力調整器異常検出装置の構成例を示す図である。
【図3】圧力センサによる測定結果を示す図で、(a)は圧力調整器が正常の場合を、(b)は圧力調整器が異常の場合をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0034】
1 圧力調整器異常検出装置
2 圧力調整器
3 蓋体
4 内部検出用センサ
5 圧力調整器異常判別手段
10 圧力調整器異常検出装置
11 容器
20 ガス出口通路
21 ボディ
22 キャップ
22a 連通孔
22b 底周部
23 ガス入口通路
24 減圧室
25 大気室
25a 突起部
26 スプリング
27 ダイヤフラム
28 作動桿
29 レバー
29a 支点ピン
29b 可動ピン
30 蓋体
30a 蓋体の空部
31 周壁部
32 通気孔
32a 開閉栓
33 弾性部材
35 弁棒
36 弁
37 ノズル
40 圧力センサ
50 異常検出部
51 異常判別部
52 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガス用圧力調整器の異常を検出する圧力調整器異常検出装置において、
上記圧力調整器に冠着し内部が密閉状態となる蓋体と、
上記蓋体の内周面に取り付けられた内部検出用センサと、
上記内部検出用センサからの検出情報に基づいて圧力調整器の異常の有無を判別する圧力調整器異常判別手段と、
を備えることを特徴とする圧力調整器異常検出装置。
【請求項2】
上記内部検出用センサはガス圧力センサである、請求項1に記載の圧力調整器異常検出装置。
【請求項3】
上記内部検出用センサはガス濃度検出センサである、請求項1に記載の圧力調整器異常検出装置。
【請求項4】
上記圧力調整器の異常は、ダイヤフラムからのガス漏れである、請求項1から3の何れか1項に記載の圧力調整器異常検出装置。
【請求項5】
高圧ガス用圧力調整器の異常を検出する圧力調整器異常検出方法において、
上記圧力調整器に蓋体を冠着させてその内部を密閉状態とし、
上記蓋体の内周面に取り付けられた内部検出用センサからの検出情報に基づいて圧力調整器の異常の有無を判別する、
ことを特徴とする圧力調整器異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−116563(P2009−116563A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288084(P2007−288084)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度、原子力安全・保安院、安全管理対策の調査研究(調整器の経年劣化異常検知技術の調査研究)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【Fターム(参考)】