説明

圧力調整器

【課題】圧力調整器のダイヤフラム等の振動を抑制して異音の発生を抑え、かつ耐久性を向上させる。
【解決手段】減圧弁5a、5bを開閉駆動するダイヤフラム13に連結された切替軸を軸方向に摺動自在に支持する支持部材20の筒孔内面に対向する切替軸の外周にリングパッキン25を装着して、リングパッキン25と支持部材20の筒孔との摺動抵抗によりダイヤフラム13の振動を抑制して、異音の発生を抑えるにあたり、リングパッキンの断面を長円形に形成し、支持部材20の筒孔の内面に対向する面に周方向に沿って凹溝25aを形成し、グリースを塗布して摺動抵抗を管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス供給源からの液化ガス(LPG)を使用先の圧力に調整して供給する圧力調整器に係り、特に、ガスボンベの圧力低下を検知して自動的に他のガスボンベに切り替えて継続してLPGを供給する自動切替機構を備えた圧力調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液化ガス供給源である例えばガスボンベからのLPGを、使用先の燃焼器などのガス器具に適した圧力に調整するために圧力調整器が用いられている。このような圧力調整器としては、例えば、特許文献1、2に記載されているように、ガスボンベ等から供給される高圧(例えば、0.15〜1.56MPa)のLPGを、一旦中圧(例えば、0.12MPa程度)に減圧し、さらに低圧(例えば、2.55〜3.3kPa程度)に減圧するものが知られている。
【0003】
また、それら特許文献1、2の中圧減圧部は、一又は複数からなる一方のガスボンベ系統が空に近くなったときに、予備の一又は複数からなる他方のガスボンベ系統に自動的に切り替えて、使用先に継続してLPGを供給する自動切替機構を備えて構成されている。すなわち、コイルスプリングで設定圧に応じて付勢されたダイヤフラムにより中圧室を画成し、中圧室に第1と第2の減圧弁を介して2つの流入ポートを連通させ、それぞれの流入ポートに一方のガスボンベ系統と他方のガスボンベ系統を接続する。そして、中圧室のダイヤフラムの変位に応じて第1又は第2の減圧弁の開度を調整して中圧室の圧力を調整するようになっている。特に、ダイヤフラムの変位領域を2段階に分け、小さい変位領域では一方(第1又は第2)の減圧弁を作動させ、大きい変位領域では他方(第2又は第1)の減圧弁を作動させる自動切替機構が備えられている。
【0004】
特許文献1、2に記載の自動切替機構は、ダイヤフラムに切替軸を回動自在に連結し、その切替軸の先端に円板状の切替カムを設け、切替カムの下面のカム面の対称位置に凸状部と凹状部を設け、凸状部と凹状部に第1と第2の減圧弁を作動させる弁棒を当接させて形成されている。これにより、ダイヤフラムの変位領域が小さい変位領域では、凸状部に当接する弁棒の例えば第1の減圧弁が開閉作動され、凹状部に当接する弁棒の第2の減圧弁は閉じた状態に保持される。そして、第1の減圧弁に連通されたガスボンベ系統のLPGが空に近くなると、中圧室の圧力が大きく低下し、ダイヤフラムの変位が大きくなって凹状部に当接する弁棒の第2の減圧弁が開閉作動され、第2の減圧弁に連通されたガスボンベ系統に切り替えられる。その後、空になったガスボンベ系統を新たなガスボンベに置き換え、切替軸を回転して第2の減圧弁の弁棒に当接する切替カムのカム面を凹状部から凸状部に切り替えて、初期状態に戻す。
【0005】
このように構成されることから、特許文献1、2に記載の圧力調整器によれば、ガスボンベから供給される高圧のLPGを一旦中圧に減圧した後、使用先のガス圧力に応じた低圧に減圧して供給できるとともに、ガスボンベの圧力低下を検知して自動的に他のガスボンベに切り替えて継続してLPGを供給することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−078033号公報
【特許文献2】特開2004−227088公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2に記載された圧力調整器の中圧減圧部のダイヤフラムは、第1又は第2の減圧弁の開閉動作に応じた圧力変動により微小に振動し、これによりダイヤフラムに連結された中圧減圧部の部品が振動して異音が発生するという問題がある。
【0008】
そこで、特許文献1、2では、ダイヤフラムに連結された切替軸の外周面にOリングパッキンを装着し、切替軸を回転可能にかつ軸方向に摺動可能に支持する筒状部材との間に適度な摺動抵抗を持たせて、ダイヤフラム及び切替軸の振動を抑制して、異音の発生を抑えている。
【0009】
しかしながら、圧力調整器の容量、つまり流通するガス量が大きくなる程、例えば8kg/hから10kg/hに増量すると、ダイヤフラムの変位量に応じて切替軸の摺動ストロークが長くなるため、異音が発生しやすくなり、従来のOリングパッキンの摺動抵抗程度では対応することが困難になることが予想される。
【0010】
そこで、Oリングパッキンの断面形状を例えば長円形にして、切替軸を支持する筒状部材との接触面積を広げることにより、摺動抵抗を高めることが考えられる。しかし、単に摺動抵抗を高めると、減圧弁の応答速度が遅れるから、圧力調整器の出口を急に閉じた場合の瞬間閉塞圧力が上昇するという問題が発生する。
【0011】
また、切替軸を支持する筒状部材をツメ部を介して圧力調整器の上カバーに係止する構造を採用すると、切替軸の摺動ストロークが長くなることによってツメ部への負担が増大し、耐久性が低下するおそれがあるという問題がある。
【0012】
これらの問題は、自動切替機構を備えた中圧減圧部において顕著であるが、自動切替機構を備えていない圧力調整器のダイヤフラムの振動を、ダイヤフラムに連結された軸体とその軸体を摺動自在に支持する筒体との間の摺動抵抗により抑制する場合にも、共通の問題である。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、圧力調整器のダイヤフラム等の振動を抑制して異音の発生を抑えることができ、かつ耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は、液化ガス供給源に接続される入力ポートと、該入力ポートに連通された減圧弁と、該減圧弁の減圧側に連通された圧力室と、該圧力室に連通された減圧ガス出口流路と、前記圧力室の一部の室壁を画成するダイヤフラムと、該ダイヤフラムを前記圧力室の圧力に抗して付勢するばね部材と、前記ダイヤフラムに連結されて軸方向に変位する軸体と、該軸体を軸方向に摺動自在に支持する筒体と、該筒体の内面に対向する前記軸体の外周に形成された凹溝内に装着されたリングパッキンと、前記ダイヤフラムの変位に応じて前記減圧弁を開閉する弁棒を備えてなる圧力調整器において、前記軸体の外周に装着されたリングパッキンは、断面が長円形に形成され、前記筒体の内面に対向する面に周方向に沿って凹溝が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
すなわち、ダイヤフラムに連動して変位する軸体を摺動自由に支持する筒体との間の摺動抵抗を適切に管理するため、軸体の外周に装着するリングパッキンの断面を長円形にし、さらに筒体の内面に対向するリングパッキンの面に周方向に沿って凹溝を形成する。これにより、2点で筒体内面に接触するから、初期でも一定の摺動抵抗を確保でき、耐久性を向上して摺動抵抗の上昇を抑えることができる。また、リングパッキンの断面を長円形にしたことから、パッキンの摺動方向両端部の曲率を大きくとることにより、摺動方向の反対側にパッキンが引っ張られるのを防止できる。これらにより、圧力調整器のダイヤフラム等の振動を抑制して異音の発生を抑えることができ、かつ耐久性を向上させることができる。
【0016】
この場合において、リングパッキンの全周にグリースを塗布するが、特に凹溝の内部にはグリースが十分に付着していることが好ましい。これにより、ダイヤフラムの振動によりリングパッキンが振動的に摺動を繰り返しても、凹溝の中央にグリースが残るので、摺動抵抗の急激な上昇を抑えることができる。また、リングパッキンを合成ゴムで形成し、さらにゴムの硬度を従来の硬度(例えば、A70±5程度)よりもA10程度(例えば、A80±5程度)に硬度を上げることが好ましい。これにより、パッキン表面の変形量を減少させることができる。
【0017】
本発明は、2系等のガスボンベを切り替えて使用する自動切替機構を備えた圧力調整器に用いることが好適である。
【0018】
すなわち、異なる液化ガス供給源に接続される第1と第2の入力ポートと、該第1と第2の入力ポートにそれぞれ連通された第1と第2の減圧弁と、該第1と第2の減圧弁の減圧側に共通に連通された圧力室と、該圧力室に連通された減圧ガス出口流路と、前記圧力室の一部の室壁を画成するダイヤフラムと、該ダイヤフラムを前記圧力室の圧力に抗して付勢するばね部材と、前記ダイヤフラムに固定された筒状の連動子と、該連動子に気密に挿通され該連動子に回動自在に連結された切替軸と、該切替軸の前記圧力室の外側の軸部を軸方向に摺動自在に支持する筒体と、該筒体の内面に対向する前記切替軸の外周に形成された凹溝内に装着されたリングパッキンと、該切替軸の前記圧力室側の突出部に設けられ円板状の面の一部を凸状にしたカム面を有する切替カムと、該カム面に対向させて位置をずらして配設され前記第1と第2の減圧弁を開閉する第1と第2の弁棒を備えてなる圧力調整器において、前記切替軸の外周に装着されたリングパッキンは、断面が長円形に形成され、前記筒体の内面に対向する面に周方向に沿って凹溝が形成されてなることを特徴とする。
【0019】
この場合において、前記切替軸と前記切替カムは、樹脂で一体形成され、前記連動子は、樹脂で形成され、該連動子の端部に形成されたツメ部を前記切替軸の外周面に形成された周方向溝に係止して回動自在に前記切替軸を保持する構成とすることが好ましい。また、上述したように、リングパッキンは、合成ゴムで形成し、凹溝を含む部分にグリースを塗布すること、さらにゴムの硬度を従来よりもA10程度上昇させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧力調整器のダイヤフラム等の振動を抑制して異音の発生を抑えることができ、かつ耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の圧力調整器の一実施形態の断面図である。本実施形態は、2系等のガスボンベを切り替えて使用する自動切替機構を備えた圧力調整器に適用した例であるが、図1では中圧減圧部の断面のみを示している。つまり、本実施形態の圧力調整器は、特許文献1、2に記載された圧力調整器と同様に、中圧減圧部の他に低圧減圧部が同一のボディに一体化して組み付けられているが、図示及び説明を簡単化するため、中圧減圧部についてのみ説明する。
【0022】
図1に示すように、中圧減圧部1は、ボディ2とカバー3により気密に形成され、ボディ2に第1の流入ポート4aと第2の流入ポート4bが形成されている。流入ポート4a、4bには、それぞれ図示していない異なるガスボンベ系統が接続されるようになっている。流入ポート4a、4bは、第1の減圧弁5aと第2の減圧弁5bの高圧室6a、6bにそれぞれ連通されている。
【0023】
減圧弁5a、5bは、弁座を有する弁本体7a、7bと、弁本体7a、7bの弁座に接離可能に設けられた弁体8a、8bと、弁体8a、8bを弁座方向に付勢するコイルスプリング9a、9bと、弁体8a、8bに連結された弁棒10a、10bを有して形成され、弁棒10a、10bは弁本体7a、7bに形成された貫通孔に挿通されて中圧室11内に突き出して設けられている。弁本体7a、7bは、高圧側を高圧室6a、6bに臨ませて気密にボディ2に装着されている。弁本体7a、7bの減圧側には、中圧室11を画成する仕切板12が設けられ、弁棒10a、10bは仕切板12を貫通して、軸方向に移動可能に設けられている。中圧室11は、図示していない減圧ガス流路を介して、図示していない低圧減圧部に連通されている。
【0024】
中圧室11の一部の室壁を画成するダイヤフラム13は、仕切板12に対向する位置に設けられ、周辺部をボディ2とカバー3に挟持されている。ダイヤフラム13は、一端がカバー3に当接されたコイルスプリング14により中圧室11の圧力に抗して仕切板12側に付勢されている。
【0025】
ダイヤフラム13には、中心部を貫通して筒状の連動子15が固定されている。連動子15の筒孔内に円柱状の切替軸16が挿入して設けられ、連動子15の筒端に形成されたツメ部15aが切替軸16の外周に形成された溝部16aに係止されている。これにより、切替軸16は、連動子15に対して回動自由に支持され、かつ、軸方向に位置が拘束されている。
【0026】
中圧室11に突出した切替軸16の先端部は、仕切板12に形成された孔に回転可能に軸支されている。また、切替軸16の突出部には、円板状の切替カム17が設けられている。切替カム17は、円板に周縁部の下面の一部に凸部17aを形成したカム面を有している。凸部17aの周方向端部は、緩やかな傾斜面を介して円板面移行するように形成されている。弁体8a、8bに連結された弁棒10a、10bの先端は、切替カム17のカム面の回転方向の対称位置に当接可能に設けられている。
【0027】
一方、切替軸16の上部は、筒状の支持部材20の筒孔に挿通されている。支持部材20は、カバー3に形成された筒状の支持部21に装着され、下端に形成されたツメ部20aを支持部21の下端に係止して固定されている。支持部材20には、装着時にツメ部20aが変形しやすいように切り込み20bが形成されている。
【0028】
また、切替軸16の上端には、切替状態を示す表示部22が取り付けられ、この表示部22は、切替レバー23の頂部に設けられたのぞき窓24を透して確認できるようになっている。切替レバー23は、図示していないが、切替軸16に係合して設けられ、切替レバー23を180度回転することにより、切替カム17を180度回転可能に形成されている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴部について、図1〜図3を参照して説明する。支持部材20の筒孔内に位置する切替軸16の外周面に凹溝16bが周方向に沿って形成され、その凹溝16b内にリングパッキン25が装着されている。リングパッキン25は、図示のように、合成ゴムを用いて断面が長円形に形成され、支持部材20の筒孔に対向する面に凹溝25aが周方向に形成されている。そして、リングパッキン25の全体にグリースを塗布して支持部材20の筒孔に挿入する。また、支持部材20の筒孔に対向する面の摺動方向の端部は、大きな曲率に形成されている。また、ゴム硬度は、従来よりもA10程度高いものが用いられている。
【0030】
このように構成される本実施形態の圧力調整器の動作について説明する。切替カム17が図1の位置にあるときは、第1の流入ポート4aに連結されたガスボンベ系統からLPGが供給されるようになっている。つまり、中圧室11の圧力が設定圧よりも低いときは、ダイヤフラム13が図において下方に変位し、これによって切替カム17のカム面の凸部17aに当接している弁棒10aが下方に押し下げられる。これにより、第1の減圧弁5aの弁体8aが弁座から離れて第1の流入ポート4aからLPGが導入され、中圧室11の圧力が上昇してダイヤフラム13が図において上方に変位する。中圧室11の圧力が設定圧に達すると、弁体8aが弁座に当接してLPGの導入が停止する。このようにして、中圧室11に連通する低圧減圧部から使用先へのLPGの供給量に応じて第1の減圧弁5aが開閉され、中圧室11の圧力が設定圧に保持される。
【0031】
第1の流入ポート4aに連結されたガスボンベ系統が空に近くなると、第1の減圧弁5aを開いても中圧室11の圧力を設定圧に保持できなくなり、ダイヤフラム13がさらに下方に変位する。そして、切替カム17の凸部17a以外のカム面が弁棒10bに当接する位置まで下方に押し下げられると、第2の減圧弁5bの弁体8bが弁座から離れ、第2の流入ポート4bに接続されたガスボンベ系統に切り替えられて、LPGが中圧室11に導かれる。この状態は、のぞき窓24から表示部22の表示(例えば、赤表示)を見ることで確認できる。
【0032】
その後、適当な時期に、切替レバー23を180度回転すると、切替カム17の凸部17aが第2の減圧弁5bの弁棒10bに当接され、第2の減圧弁5bの開閉動作によって中圧室11の圧力が設定圧に保持される。また、第1の減圧弁5aは閉じられるから、適宜時期に、第1の流入ポート4aに接続されたガスボンベ系統を新たなガスボンベに交換することにより、ガスボンベ系統は異なるが初期状態に戻される。
【0033】
このように、第1又は第2の減圧弁5a、bの開閉動作に伴い、中圧室11の圧力変動が生じ、これによりダイヤフラム13が振動し、これに伴い切替カム17等の関連部品が振動して異音を発生するおそれがある。この点、本実施形態によれば、切替軸16に装着されたリングパッキン25と支持部材20との摺動摩擦により振動が抑制されるから、異音の発生を抑えることができる。
【0034】
特に、本実施形態によれば、リングパッキン25の断面を長円形にし、さらにリングパッキン25の外周面に周方向に沿って凹溝25aを形成したことから、2点で支持部材の筒孔内面に接触させることができる。その結果、初期でも一定の摺動抵抗を確保でき、耐久性を向上して摺動抵抗の上昇を抑えることができる。また、リングパッキン25の断面を長円形にし、図3に示すように、パッキンの摺動方向両端部の曲率を大きくとることにより、摺動方向の反対側にパッキンが引っ張られるのを防止できる。
【0035】
また、リングパッキン25にグリースを塗布することにより、ダイヤフラム13の振動によりリングパッキン25が振動的に摺動を繰り返しても、凹溝25aの中央にグリースが残るので、摺動抵抗の急激な上昇を抑えることができる。また、圧力調整器の容量を大きくして切替軸16の摺動ストロークが長くなっても、耐久性を向上することができる。
【0036】
このように、ダイヤフラム13に連動して変位する切替軸16を摺動自由に支持する支持部材20との間の摺動抵抗を適切に管理できるから、ダイヤフラム13等の振動を抑制して異音の発生を抑えることができ、かつ耐久性を向上させることができる。また、摺動抵抗を適切に管理できるから、減圧弁の応答速度を適切に管理して、圧力調整器の出口を急に閉じた場合の瞬間閉塞圧力の上昇を抑えることができる。
【0037】
また、リングパッキン25を合成ゴムで形成し、さらにゴムの硬度を従来の硬度(例えば、A70±5程度)よりもA10程度(例えば、A80±5程度)に硬度を上げることにより、パッキン表面の変形量を減少させて、一層、耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、切替軸16と切替カム17は、アセタール樹脂などの樹脂で一体形成することが好ましい。これにより部品点数を削減して、製作工数を低減できる。また、連動子15は、アセタール樹脂などの樹脂で形成することにより、連動子15の端部に形成されたツメ部15aを切替軸16の外周面に形成された周方向溝16aに係止して回動自在に切替軸16を保持する構成とすることが好ましい。これにより、一層部品点数を削減して、製作工数を低減できる。
【0039】
また、切替軸16の摺動ストロークが長くなると支持部材20のツメ部20aへの負担が増大するが、本実施形態によれば、切替軸16を摺動自由に支持する支持部材20との間の摺動抵抗を適切に管理できるから、ツメ部20aの耐久性の低下を軽減できる。
【0040】
このように構成されることから、本実施形態の圧力調整器によれば、ガスボンベから供給される高圧のLPGを一旦中圧に減圧した後、使用先のガス圧力に応じた低圧に減圧して供給できるとともに、ガスボンベの圧力低下を検知して自動的に他のガスボンベに切り替えて継続してLPGを供給することができる。
【0041】
特に、圧力調整器のダイヤフラム等の振動を抑制して異音の発生を抑えることができ、かつ耐久性を向上させることができる。
【0042】
なお、本発明は、自動切替機構を備えた上記の実施形態の中圧減圧部に適用されるに限られるものではなく、自動切替機構を備えていない圧力調整器のダイヤフラムの振動を、ダイヤフラムに連結された軸体とその軸体を摺動自在に支持する筒体との間の摺動抵抗により抑制する場合にも適用でき、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の圧力調整器の中圧減圧部の断面構成図である。
【図2】切替軸に装着したリングパッキンと支持部材との摺動部の拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のリングパッキンの断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 中圧減圧部
2 ボディ
3 カバー
4a、b 流入ポート
5a、b 減圧弁
6a、b 高圧室
10a、b 弁棒
11 中圧室
12 仕切板
13 ダイヤフラム
14 コイルスプリング
15 連動子
16 切替軸
17 切替カム
17a 凸部
20 支持部材
23 切替レバー
25 リングパッキン
25a 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス供給源に接続される入力ポートと、該入力ポートに連通された減圧弁と、該減圧弁の減圧側に連通された圧力室と、該圧力室に連通された減圧ガス出口流路と、前記圧力室の一部の室壁を画成するダイヤフラムと、該ダイヤフラムを前記圧力室の圧力に抗して付勢するばね部材と、前記ダイヤフラムに連結されて軸方向に変位する軸体と、該軸体を軸方向に摺動自在に支持する筒体と、該筒体の内面に対向する前記軸体の外周に形成された凹溝内に装着されたリングパッキンと、前記ダイヤフラムの変位に応じて前記減圧弁を開閉する弁棒を備えてなる圧力調整器において、
前記リングパッキンは、断面が長円形に形成され、前記筒体の内面に対向する面に周方向に沿って凹溝が形成されてなることを特徴とする圧力調整器。
【請求項2】
異なる液化ガス供給源に接続される第1と第2の入力ポートと、該第1と第2の入力ポートにそれぞれ連通された第1と第2の減圧弁と、該第1と第2の減圧弁の減圧側に共通に連通された圧力室と、該圧力室に連通された減圧ガス出口流路と、前記圧力室の一部の室壁を画成するダイヤフラムと、該ダイヤフラムを前記圧力室の圧力に抗して付勢するばね部材と、前記ダイヤフラムに固定された筒状の連動子と、該連動子に気密に挿通され該連動子に回動自在に連結された切替軸と、該切替軸の前記圧力室の外側の軸部を軸方向に摺動自在に支持する筒体と、該筒体の内面に対向する前記切替軸の外周に形成された凹溝内に装着されたリングパッキンと、該切替軸の前記圧力室側の突出部に設けられ円板状の面の一部を凸状にしたカム面を有する切替カムと、該カム面に対向させて位置をずらして配設され前記第1と第2の減圧弁を開閉する第1と第2の弁棒を備えてなる圧力調整器において、
前記リングパッキンは、断面が長円形に形成され、前記筒体の内面に対向する面に周方向に沿って凹溝が形成されてなることを特徴とする圧力調整器。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力調整器において、
前記切替軸と前記切替カムは、樹脂で一体形成され、
前記連動子は、樹脂で形成され、該連動子の端部に形成されたツメ部を前記切替軸の外周面に形成された周方向溝に係止して回動自在に前記切替軸を保持することを特徴とする圧力調整器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の圧力調整器において、
前記リングパッキンは、合成ゴムで形成され、前記凹溝を含む部分にグリースが塗布されてなることを特徴とする圧力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−257440(P2008−257440A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98347(P2007−98347)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】