説明

圧縮機の制御装置

【課題】圧縮機がロック状態になった場合に、不必要な停止時間を削減し、かつ、圧縮機モータやインバータ回路などを保護する。
【解決手段】
圧縮機モータ52を駆動制御する制御手段28は、圧縮機モータのロック状態を検出すると圧縮機モータ52を第1所定時間T1停止させた後に再起動させる第1再起動処理を行い、ロック状態以外の圧縮機の異常を検出すると圧縮機モータ52を第1所定時間T1より長い第2所定時間T2停止させた後に再起動させる第2再起動処理を行い、前記第1再起動処理を所定回数N行った後に圧縮機モータ52のロック状態を検出すると、前記第2再起動処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスDCモータにより駆動するレシプロ式の圧縮機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫などではブラシレスDCモータを駆動源とするレシプロ式の圧縮機を用いて冷凍サイクル内に冷媒を吐出するようになっている。
【0003】
このような圧縮機の制御装置では、圧縮機モータを回転制御しているにもかかわらず、圧縮機モータの回転が確認できないロック状態を検知すると、圧縮機の吐出側と吸込側との圧力差が大きく過負荷状態にあるとして、圧縮機モータを所定時間停止させて、圧縮機の吐出側と吸込側との圧力バランスを図った後に圧縮機モータを再起動させる保護制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記した圧縮機の制御装置では、圧縮機の吐出側と吸込側との圧力バランスをとるために数分間程度圧縮機モータを停止させることとなるため、例えば、モータ負荷が小さすぎて加速しすぎた場合や、外来ノイズが発生した場合や、多極モータにおける位置決め時のロータ固定位置条件によって、圧縮機モータが起動に失敗してロック状態になると、既に圧縮機の吐出側と吸込側との圧力バランスがとれているにもかかわらず、圧縮機の再起動を長い時間待つ必要があり、冷蔵庫内の温度が上昇するおそれがあり問題がある。
【特許文献1】特開平9−84387号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、圧縮機がロック状態になった場合に、不必要な停止時間を削減し、かつ、圧縮機モータやインバータ回路などを保護することができる圧縮機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧縮機の制御装置は、ブラシレスDCモータで回転するレシプロ式の圧縮機の制御装置において、前記ブラシレスDCモータに駆動電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御する制御手段と、前記ブラシレスDCモータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記回転速度検出手段によって前記ブラシレスDCモータのロック状態を検出するロック検出手段と、ロック状態以外の前記圧縮機の異常を検出する異常検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記ロック検出手段がロック状態を検出すると、前記ブラシレスDCモータを第1所定時間停止させた後に再起動させる第1再起動処理を行い、前記異常検出手段が前記圧縮機の異常を検出すると、前記ブラシレスDCモータを第1所定時間より長い第2所定時間停止させた後に再起動させる第2再起動処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の圧縮機の制御装置では、不必要な停止時間を削減しつつ圧縮機モータやモータ駆動回路などを適切に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る圧縮機の制御装置10のブロック回路図、図2は圧縮機の制御装置10の制御動作を示したフロー図である。
【0009】
制御装置10は、三相のブラシレスDCモータ(以下、圧縮機モータという)52により駆動される圧縮機を制御するものであって、例えば、冷蔵庫や空気調和器の冷凍サイクルなどに用いられるものである。
【0010】
この制御装置10は、図1に示すように、インバータ回路12と、整流回路14と、交流電源16と、PWM形成部18と、駆動電流検出部20と、速度検出部22と、ロック検出部24と、異常検出部26と、主制御部28と、表示部30と、を備えている。
【0011】
圧縮機を回転させる圧縮機モータ52は、上記したように三相のブラシレスDCモータであって、u相、v相、w相の各固定子巻線54u,54v,54wにインバータ回路12が三相の駆動電流を流す。
【0012】
このインバータ回路12は、6個のパワースイッチング半導体であるトランジスタTr1〜Tr6より構成されており、各スイッチングトランジスタTr1〜Tr6に対して並列に逆方向にダイオードが接続されている。また、スイッチングトランジスタT1とTr4に直列に駆動電流を検知するための検知抵抗R1が接続され、スイッチングトランジスタTr2とTr5に直列に検知抵抗R2が接続され、スイッチングトランジスタTr3とTr6に直列に検知抵抗R3が接続されている。
【0013】
整流回路14は商用電源(例えば、AC100V)である交流電源16から交流電圧が供給され、これを整流してインバータ回路12に供給する。
【0014】
PWM形成部18は、6個のスイッチングトランジスタTr1〜Tr6のゲート端子にPWM信号を供給することで、所定のタイミングで各スイッチングトランジスタTr1〜Tr6をON/OFFする。
【0015】
駆動電流検出部20は、検知抵抗R1,R2,R3における電圧値を検知して、各相の電圧値をアナログ値からデジタル値に変換し、各相の固定子巻線54u,54v,54wに流れる駆動電流Iu,Iv,Iwを出力する。
【0016】
速度検出部22は、駆動電流検出部20から出力された駆動電流Iu,Iv,Iwを、磁束に対応した電流成分であるd軸電流Idと、圧縮機モータ52のトルクに対応した電流成分であるq軸電流Iqと、に変換し、得られたq軸電流Iqとd軸電流Idに基づいて圧縮機モータ52の回転角θと回転速度ωを検出する。
【0017】
ロック検出部24は、速度検出部22から入力される回転速度ωに基づいて圧縮機モータ52のロック状態を検出しロック信号を出力する。
【0018】
異常検出部26は、ロック状態以外の圧縮機の異常を検出し異常信号を出力するもので、本実施形態では、電源異常検出部26a、脱調検出部26b、過電流検出部26cから構成されている。
【0019】
電源異常検出部26aは、整流回路14よりインバータ回路12に入力される電圧値が所定の範囲にあるか否か判別し、所定の範囲に無い場合は電源異常であるとして異常信号を出力する。
【0020】
脱調検出部26bは、駆動電流検出部20から出力された駆動電流Iu,Iv,Iwが入力され、圧縮機モータ52が脱調状態にあるか否か判別し、脱調状態にあれば異常信号を出力する。
【0021】
過電流検出部26cは、駆動電流検出部20から出力された駆動電流Iu,Iv,Iwが入力され、インバータ回路12に所定電流値以上の過電流が流れたか否か判別し、過電流状態にあれば異常信号を出力する。
【0022】
主制御部28は、外部から入力される速度指令信号Sと、速度検出部22からの回転速度ωと、に基づいてフィードバック制御を行い、速度指令信号Sに合わせた回転速度ωrefで圧縮機モータ52が回転するようにPWM形成部18からPWM信号をインバータ回路42に出力させる。
【0023】
また、主制御部28は、ロック検出部24からロック信号や異常検出部26から異常信号が入力されると、圧縮機モータ52を停止させた後、再起動処理を実行するとともに、 例えば、圧縮機が配設される冷蔵庫などに設けられた表示部30に圧縮機の異常が発生した旨を表示させる。
【0024】
詳細には、図2に示すように、まず、ステップS1において、後述する第1再起動処理を実行した回数Nと、第2再起動処理を実行した回数Nと、回避フラグと、を0にそれぞれリセットしてステップS2に進む。
【0025】
ステップS2では、ロック検出部24から主制御部28にロック信号が入力されたか否か判断し、入力があれば圧縮機モータ52がロック状態にあるとしてステップS3に進み、入力がなければステップS4に進む。
【0026】
ステップS3では、回避フラグが設定されているか否か判断し、設定されていなければステップS5に進み、設定されていればステップS6に進む。
【0027】
ステップS5では、第1再起動処理を実行した回数Nが所定回数(本実施形態では、例えば、2回)以上であるか否か判断し、2回より小さい場合はステップS7に進み、2回以上の場合はステップS8に進み回避フラグをセットしステップS6に進む。
【0028】
ステップS7では圧縮機モータ52を停止させ、所定時間T1(例えば、30秒間)経過後に実行回数Nをインクリメントして再起動を行う第1再起動処理を実行し(ステップS9,ステップS10,ステップS11)、ステップS12において所定時間T3(例えば、5秒間)経過後にステップS2に戻ってロック信号及び異常信号の入力の有無を判断し、正常に圧縮機モータ52が起動できたか否か再度判断する。
【0029】
ステップS4では、異常検出部26から主制御部28に異常信号が入力されたか否か判断し、入力があれば圧縮機が電源電圧異常、脱調、過電流状態のいずれかの異常状態にあるとしてステップS6に進み、入力がなければ圧縮機が正常に運転されているとして再起動処理を行わず終了する。
【0030】
ステップS6では、第2再起動処理を実行した回数Nが所定回数(本実施形態では、例えば、5回)以上であるか否か判断し、5回より小さい場合はステップS13に進み、5回以上の場合はステップS16に進み停止フラグをセットして圧縮機モータ52の起動を禁止するとともに、表示部30にその旨を表示する。
【0031】
ステップS13では圧縮機モータ52を停止させ、所定時間T1より長い時間に設定された所定時間T2(例えば、360秒間)経過後に実行回数Nをインクリメントして再起動を行う第2再起動処理を実行し(ステップS14,ステップS15,ステップS11)、ステップS12において所定時間T3(例えば、5秒間)経過後にステップS2に戻ってロック信号及び異常信号の入力の有無を判断し、正常に圧縮機モータ52が起動できたか否か再度判断する。
【0032】
以上のように、本実施形態では、圧縮機モータ52のロックが検知されると、圧縮機モータ52を停止させてから短時間で再起動する第1再起動処理を行うため、既に圧縮機の吐出側と吸込側との圧力バランスがとれている場合には、圧縮機モータ52を直ちに再起動することができ、また、第1再起動処理を所定回数繰り返し実行しても圧縮機モータ52が起動できない場合には、第1再起動処理より長時間圧縮機モータを停止させてから再起動する第2再起動処理を行い、圧縮機の吐出側と吸込側との圧力バランスをとってから起動させることができる。
【0033】
また、圧縮機モータ52のロック以外の異常が発生している場合、短時間で再起動を繰り返す第1再起動処理を行わず第2再起動処理を行うため、短時間で再起動を繰り返してインバータ回路12等の制御装置10の破損を防ぐことができる。
【0034】
しかも、本実施形態では、第1再起動処理を所定回数繰り返し実行しても圧縮機モータ52が起動できない場合には、回避フラグを設定し圧縮機モータ52が正常起動されるまで第1再起動処理の実行を禁止するため、過度に再起動されるのを抑えることができ、駆動装置10を保護することができる。
【0035】
なお、上記した本実施形態において、第1再起動処理を実行中に異常検出部26から主制御部28に異常信号が入力された場合、第1再起動処理を中止して第2再起動処理を行っても良い。
【0036】
また、上記した本実施形態では、第1再起動処理を所定回数繰り返し実行しても圧縮機モータ52が起動できない場合に回避フラグを設定し第1再起動処理の実行を禁止したが、例えば、図3に示すように、回避フラグの設定に替えて、第1再起動処理を実行した回数Nをゼロにリセットして(ステップS8)、第1再起動処理を所定回数繰り返し実行しても圧縮機モータ52が起動できない場合に第2再起動処理を実行し、第2再起動処理を実行しても圧縮機モータ52が起動できない場合に、再び第1再起動処理を所定回数実行するように設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の1実施形態に係る圧縮機の制御装置のブロック回路図である。
【図2】本発明の1実施形態に係る圧縮機の制御装置の制御動作を示したフロー図である。
【図3】本発明の変更例に係る圧縮機の制御装置の制御動作を示したフロー図である。
【符号の説明】
【0038】
10…制御装置 12…インバータ回路 14…整流回路
16…交流電源 18…PWM形成部 20…駆動電流検出部
22…速度検出部 24…ロック検出部 26…異常検出部
28…主制御部 30…表示部 52…圧縮機モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスDCモータで回転するレシプロ式の圧縮機の制御装置において、
前記ブラシレスDCモータに駆動電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御する制御手段と、前記ブラシレスDCモータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記回転速度検出手段によって前記ブラシレスDCモータのロック状態を検出するロック検出手段と、ロック状態以外の前記圧縮機の異常を検出する異常検出手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記ロック検出手段がロック状態を検出すると、前記ブラシレスDCモータを第1所定時間停止させた後に再起動させる第1再起動処理を行い、
前記異常検出手段が前記圧縮機の異常を検出すると、前記ブラシレスDCモータを第1所定時間より長い第2所定時間停止させた後に再起動させる第2再起動処理を行う
ことを特徴とする圧縮機の制御装置。
【請求項2】
前記第1再起動処理を所定回数行った後に前記ロック検出手段がロック状態を検出すると、前記制御手段は、前記第2再起動処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機の制御装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記ブラシレスDCモータの入力電圧異常、脱調、及び過電流の少なくともいずれか一つを前記圧縮機の異常として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1再起動処理中に前記異常検出手段が前記圧縮機の異常を検出すると、前記第1再起動処理を中止して第2再起動処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1再起動処理を所定回数行った後に前記ロック検出手段がロック状態を検出すると、前記ブラシレスDCモータが正常起動されるまで前記第1再起動処理の実行を禁止し、第2再起動処理のみを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれ1項に記載の圧縮機の制御装置。
【請求項6】
前記第2再起動処理を所定回数行った後にロック状態又は前記圧縮機の異常を検出すると、前記制御手段は、前記ブラシレスDCモータの起動を禁止し、その旨を表示部に表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧縮機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−108754(P2009−108754A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281619(P2007−281619)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】