説明

圧縮機

【課題】油貯留室での潤滑油の巻き上げを無くして油供給通路に冷媒ガスが進入すること防止することができるとともに、吐出脈動を低減することができる圧縮機を提供する。
【解決手段】ベーン圧縮機10において、油分離器40には潤滑油の油排出口42c、及び冷媒ガスのガス排出口42bが形成されている。吐出室30内において、リヤサイドプレート15における吐出室30に対向する端面には貯留室区画部50が接合されるとともに、リヤサイドプレート15の端面と貯留室区画部50の内面との間には油貯留室31が区画されている。油排出口42cは油貯留室31に向けて開口している。さらに、吐出室30内には貯留室区画部50によって、第1マフラー部51、及び第1マフラー部51より広い第2マフラー部52が区画されている。油分離器40のガス排出口42bは第2マフラー部52に向けて開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機構から吐出された冷媒ガスに含まれる潤滑油を分離する油分離器が設けられ、油分離器に冷媒ガスから分離された潤滑油を排出する油排出口が形成されるとともに冷媒ガスのガス排出口が形成された圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示のように、ベーン圧縮機において、ハウジング内にはシリンダブロックが収容されるとともに、このシリンダブロックの両端それぞれにはサイドプレートが接合されている。シリンダブロックの内部にはロータが回転可能に収容され、このロータには複数のベーン溝が形成されるとともに各ベーン溝にはベーンが収容されている。これらベーンによってシリンダブロック内には作動室(圧縮室)が形成されている。そして、ロータ及びベーンが回転することにより作動室で冷媒ガスが圧縮されるようになっている。
【0003】
また、特許文献1において、リヤのサイドプレートにおけるリヤ側の端面とハウジングの内面との間には油貯留室が区画されている。また、油貯留室内には油分離器が収容されている。油分離器は、ケースに形成された油分離室と、この油分離室の上部に設けられた油分離筒とを備える。また、ケースには油分離室から油貯留室へ潤滑油を流下させる油通路(油排出口)が形成されている。さらに、ケースには案内板が一体に設けられ、この案内板により油貯留室の下部に貯留された潤滑油の油面を安定化させている。加えて、リヤのサイドプレートには、一端が油貯留室に連通し他端が圧縮機構(ベーン溝等)に連通する油供給通路が形成されている。
【0004】
そして、作動室で圧縮された冷媒ガスが油分離器に供給されると、冷媒ガスは油分離筒の外周面に吹き付けられるとともに、油分離筒の外周面を旋回しながら油分離室の下方へ導かれる。このとき、遠心分離によって冷媒ガスから潤滑油が分離される。冷媒ガスから分離された潤滑油は油通路から滴下し、油貯留室に貯留される。一方、潤滑油が分離された冷媒ガスは、油分離筒の内部を上方へ移動し、油貯留室へ排出された後、ベーン圧縮機外(例えば、外部冷媒回路)へ導出される。また、油貯留室に貯留された潤滑油は、油供給通路から圧縮機構に供給されるようになっている。
【特許文献1】特開平7−12072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のベーン圧縮機において、油貯留室内に油分離器が収容されているため、油貯留室には油分離器から冷媒ガスが直接排出される。このため、油貯留室に排出された冷媒ガスにより、油貯留室に貯まった潤滑油が巻き上げられ、油貯留室の潤滑油量が減少して油面が低下してしまうという問題があった。この油面が低下した状態で、ベーン圧縮機の振動等によって油面が変動すると、油供給通路に冷媒ガスが進入して油供給通路から圧縮機構に冷媒ガスが供給されてしまう。一方で、油貯留室に貯まった潤滑油量が増加し過ぎると、吐出脈動を低減させる効果の大きい油貯留室の容積が減少してしまい、ベーン圧縮機の吐出脈動による異常騒音が増大してしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、油貯留室での潤滑油の巻き上げを無くして油供給通路に冷媒ガスが進入すること防止することができるとともに、吐出脈動を低減することができる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハウジングに設けられた区画部材により、前記ハウジング内が圧縮機構側と、該圧縮機構で圧縮された冷媒ガスが吐出される吐出室側とに区画され、前記区画部材における前記吐出室に対向する端面に、前記圧縮機構から吐出された冷媒ガスに含まれる潤滑油を分離する油分離器が設けられ、前記油分離器に前記冷媒ガスから分離された潤滑油を排出する油排出口が形成されるとともに前記冷媒ガスのガス排出口が形成された圧縮機であって、前記吐出室内において、前記区画部材における前記吐出室に対向する端面には貯留室区画部が接合されるとともに、前記端面と前記貯留室区画部の内面との間に前記潤滑油を貯める油貯留室が区画され、該油貯留室に前記油排出口が連通するとともに、前記区画部材には、一端が前記油貯留室に連通するとともに他端が前記圧縮機構に連通する油供給通路が形成されており、さらに、前記吐出室内には前記貯留室区画部によって、該貯留室区画部の外面と、この外面に対向する前記ハウジングの内面との間の空間よりなる第1マフラー部、及び前記第1マフラー部以外の空間よりなり、かつ前記第1マフラー部より広い第2マフラー部が区画されており、前記第2マフラー部に向けて前記ガス排出口が開口しているものである。
【0008】
これによれば、吐出室内には、区画部材の端面と貯留室区画部の内面とによって油貯留室が区画されるとともに、貯留室区画部の外側に第1マフラー部と第2マフラー部が区画されている。すなわち、油貯留室は吐出室内では第1及び第2マフラー部から隔離された別空間になっている。そして、油分離器で分離された潤滑油は、第1及び第2マフラー部ではなく油貯留室に貯留される。このため、油分離器のガス排出口から冷媒ガスが第1及び第2マフラー部に吐出されても、油貯留室内の潤滑油は冷媒ガスによって巻き上げられることが無く、巻き上げに伴う潤滑油量の低下を防止することができる。その結果として、油貯留室内に潤滑油を常に保持することができ、油供給通路における油貯留室側の開口を潤滑油でシールして油供給通路に冷媒ガスが進入することを防止することができる。
【0009】
また、油分離器で分離された潤滑油は、第1マフラー部及び第2マフラー部とは別空間の油貯留室に貯まるため、第1マフラー部及び第2マフラー部に潤滑油が貯まることが無い。このため、吐出脈動の緩衝作用を有している第1マフラー部及び第2マフラー部の容積が、潤滑油が貯まることによって減少することを防止することができる。さらには、吐出室には、広さの異なる第1マフラー部と第2マフラー部が並存している。よって、第1マフラー部及び第2マフラー部により吐出室に冷媒ガスが吐出された際の吐出脈動を効果的に低減させることができる。
【0010】
また、前記貯留室区画部は前記油分離器に一体成形されていることを要旨とする。これによれば、例えば、貯留室区画部を油分離器とは別体に設ける場合に比して、油分離器をコンパクトにすることができるとともに、貯留室区画部を油分離器に組付ける作業を無くして圧縮機の製造コストを抑えることができる。
【0011】
また、前記油分離器は、油分離筒が収容されるとともに油分離室が形成された筒状のケース本体と、前記ケース本体の下部側に一体成形された前記貯留室区画部とからなり、前記貯留室区画部の外面たる外側面は、前記吐出室を形成する前記ハウジングの内周面に沿って延びる円弧状をなすとともに、貯留室区画部の外面たる上端面は平面状をなし、該上端面の中央部から前記ケース本体が延設されているものである。これによれば、吐出室内に、広さの異なる第1マフラー部と第2マフラー部を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油貯留室での潤滑油の巻き上げを無くして油供給通路に冷媒ガスが進入すること防止することができるとともに、吐出脈動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の圧縮機をベーン圧縮機に具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。なお、以下の説明においてベーン圧縮機の「前」及び「後」は、図1に示す矢印Y1の方向を前後方向とし、「上」及び「下」は、図1に示す矢印Y2の方向を上下方向とする。
【0014】
図1に示すように、ベーン圧縮機10のハウジングHは、リヤハウジング11と、このリヤハウジング11の前端面(一端面)に接合されたフロントハウジング12とから形成されている。リヤハウジング11(ハウジングH)の内部には筒状をなすシリンダブロック13が収容されている。このシリンダブロック13の内周面は楕円状に形成されている(図2参照)。
【0015】
また、ハウジングHの内部において、シリンダブロック13の前端面(一端面)にはフロントサイドプレート14が接合されるとともに、シリンダブロック13の後端面(他端面)には、区画部材としてのリヤサイドプレート15が接合されている。そして、シリンダブロック13の外周面と、この外周面に対向するリヤハウジング11(ハウジングH)の内周面と、フロントサイドプレート14及びリヤサイドプレート15においてシリンダブロック13に対向する端面との間には、吐出空間Daが区画形成されている。フロントサイドプレート14において、シリンダブロック13に対向する端面には背圧溝14aが凹設されるとともに、リヤサイドプレート15において、シリンダブロック13に対向する端面には背圧溝15aが凹設されている。
【0016】
また、フロントサイドプレート14及びリヤサイドプレート15には回転軸17が回転可能に支持されるとともに、回転軸17はシリンダブロック13内を貫通している。シリンダブロック13内において、回転軸17には円筒状をなすロータ18が回転軸17に一体回転可能に止着されている。図2に示すように、ロータ18の外周面には、ロータ18の軸方向全体に亘って延びるベーン溝18aが複数形成されるとともに、各ベーン溝18aそれぞれにはベーン20が出没可能に収容されている。各ベーン溝18aは前端(一端)がフロントサイドプレート14の背圧溝14aに連通可能に形成されているとともに、後端(他端)がリヤサイドプレート15の背圧溝15aに連通可能に形成されている。
【0017】
そして、回転軸17の回転に伴うロータ18の回転によってベーン20の先端面がシリンダブロック13の内周面に接触すると、ロータ18の外周面と、シリンダブロック13の内周面と、隣り合うベーン20と、フロントサイドプレート14及びリヤサイドプレート15との間に圧縮室21が区画される。ベーン圧縮機10において、ロータ18の回転方向に関して圧縮室21が容積を拡大する行程が吸入行程となり、圧縮室21が容積を減少する行程が圧縮行程となる。よって、リヤハウジング11、シリンダブロック13、フロントサイドプレート14、リヤサイドプレート15、回転軸17、ロータ18、及びベーン20によってベーン圧縮機10の圧縮機構Cが構成されている。
【0018】
また、図1に示すように、ベーン圧縮機10において、フロントハウジング12の上部には吸入ポート24が形成されるとともに、フロントハウジング12内には吸入ポート24に連通する吸入空間Saが形成されている。さらに、フロントサイドプレート14には、吸入空間Saと連通する吸入口14bが形成されている。また、シリンダブロック13には、シリンダブロック13を軸方向全体に亘って貫通する吸入通路13bが形成されている。そして、吸入行程中の圧縮室21と吸入空間Saとは、吸入口14b及び吸入通路13bを介して連通される。
【0019】
図2に示すように、シリンダブロック13の上下方向における中央部に位置し、かつシリンダブロック13の両側に位置する外周面それぞれには切欠部13dが、シリンダブロック13の外周面から凹むように形成されている。両切欠部13dそれぞれは、シリンダブロック13の軸方向全体に亘って延びるように形成されるとともに、吐出空間Daの一部を形成している。また、シリンダブロック13には、圧縮行程中の圧縮室21と吐出空間Daとを連通するように吐出口13aが形成されている。切欠部13dを形成するシリンダブロック13の外周面には、吐出弁22が取り付けられるとともに、この吐出弁22により吐出口13aは開閉可能となっている。そして、圧縮室21で圧縮された冷媒ガスは、吐出弁22を押し退けて吐出口13aを介して切欠部13d(吐出空間Da)へ吐出されるようになっている。
【0020】
図1に示すように、リヤハウジング11の後側には、リヤサイドプレート15によって吐出室30が区画形成されている。すなわち、リヤハウジング11内は、リヤサイドプレート15によって圧縮機構C側と吐出室30側とに区画されている。
【0021】
図1及び図3に示すように、リヤサイドプレート15には、吐出室30に向けて膨出する通路形成部15cが形成されている。この通路形成部15cには、一対の吐出通路15bが形成されている。各吐出通路15bは通路形成部15cの後端面に凹設された溝部15fと、この溝部15fの下端(一端)に連通し、通路形成部15cを厚み方向に貫通するように延びる絞り部15gとから形成されている。絞り部15gは、前端(一端)が吐出空間Daに向けて開口して吐出空間Daに連通するとともに、後端(他端)が溝部15fの下端(一端)に連通している。そして、吐出空間Daの冷媒ガスは、吐出通路15bの絞り部15g及び溝部15fを通過して吐出室30に供給されるため、吐出室30は吐出空間Daよりも低圧雰囲気になっている。
【0022】
また、通路形成部15cには、油供給通路15dが形成されている。油供給通路15dは、通路形成部15cの下端面から回転軸17に向けて直線状に延びるように形成されるとともに、リヤサイドプレート15の背圧溝15aに向けて延びるように形成されている。そして、油供給通路15dは、下端(一端)に通路形成部15cの下端面に開口する供給口15eを有する。
【0023】
図1に示すように、ベーン圧縮機10において、吐出室30内には冷媒ガス中に含まれる潤滑油を分離するための油分離器40が設けられており、この油分離器40内は吐出室30内と同圧であり、吐出空間Daより低圧となっている。油分離器40は、両吐出通路15bを覆うように通路形成部15cの後端面にガスケットGを介して接合固定されている。
【0024】
図6に示すように、油分離器40は、板状をなす接合板部41に一体成形された筒状をなすケース本体42を有するとともに、このケース本体42の下部側に一体成形された貯留室区画部50を有する。ケース本体42内には、有底円筒状の油分離室43が形成されるとともに、ケース本体42内における油分離室43の上部には円筒状の油分離筒44が嵌合固定されている。ケース本体42には、各吐出通路15bの上端(他端)と連通するように一対の連通通路42aが形成されるとともに、連通通路42aは油分離筒44の外周面に対向するように形成されている。ケース本体42の上部にはガス排出口42bが形成されるとともに、このガス排出口42bからは、油分離筒44内を通過した冷媒ガスがケース本体42外へ排出されるようになっている。また、ケース本体42の下部には、油分離室43内の潤滑油を油分離器40外へ排出する油排出口42cが形成されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、貯留室区画部50は、後端面50aが半円状に形成されるとともに、貯留室区画部50の外面のうちの外側面50bは、吐出室30を形成するリヤハウジング11の内周面に沿って延びる円弧状に形成されている。さらに、貯留室区画部50の外面のうちの上端面50cは平面状をなし、油分離器40がリヤサイドプレート15に接合された状態では、貯留室区画部50の上端面50cは水平面になっており、ケース本体42は、貯留室区画部50の上端面50cにおける中央部から上方に向けて延設されている。
【0026】
また、貯留室区画部50は後端面50aが、ケース本体42の後端と面一となる位置まで接合板部41より後側にまで膨出形成されている。図1、図5及び図6に示すように、貯留室区画部50の内側の空間は、ケース本体42の下部を囲むように略U字状に形成されている。そして、ケース本体42に形成された油排出口42cは、貯留室区画部50の内側の空間に向けて開口している。
【0027】
図1に示すように、リヤサイドプレート15における吐出室30に対向する端面に油分離器40が接合された状態において、貯留室区画部50におけるリヤサイドプレート15に対向する前端面50dは、リヤサイドプレート15の吐出室30側の端面に密接している。そして、リヤサイドプレート15の端面と、貯留室区画部50の内面との間に囲まれる空間によって油貯留室31が区画され、この油貯留室31は貯留室区画部50によって吐出室30内に独立して形成された密閉空間となっている。油貯留室31内には、油排出口42cが開口し、油分離室43と油貯留室31とが油排出口42cを介して連通している。また、油貯留室31内には、油供給通路15dの供給口15eが開口し、油貯留室31に油供給通路15dが連通している。また、油貯留室31とベーン溝18aとは、油供給通路15d及び背圧溝14a,15aを介して繋がっている。
【0028】
また、貯留室区画部50の後端面50aと、この後端面50aと対向するリヤハウジング11の内端面11aとの間の空間W1、及び貯留室区画部50の外側面50bと、この外側面50bと対向するリヤハウジング11の内周面11bとの間の空間W2(図6参照)によって、吐出室30に冷媒ガスの第1マフラー部51が区画されている。空間W1,W2それぞれは微少な隙間になっている。
【0029】
一方、図6に示すように、吐出室30内において、貯留室区画部50の上端面50cより上側であり、ケース本体42の上部の周囲に囲まれる空間には、冷媒ガスの第2マフラー部52が区画されている。すなわち、吐出室30内において、第1マフラー部51以外の空間に第2マフラー部52が区画されている。第2マフラー部52は、第1マフラー部51の空間W1,W2いずれに対しても広い空間になっている。なお、油分離器40におけるガス排出口42bは、第2マフラー部52に向けて開口している。
【0030】
そして、吐出室30内に貯留室区画部50が配設されることにより、吐出室30内には油貯留室31と、この油貯留室31とは別空間の第1マフラー部51及び第2マフラー部52とが区画形成されている。
【0031】
次に、上記構成のベーン圧縮機について、その動作を説明する。
さて、回転軸17が回転されると、ロータ18及びベーン20が回転し、冷媒ガスが吸入空間Saから吸入口14b、及び吸入通路13bを介して吸入行程中の圧縮室21に吸入される。そして、圧縮室21に吸入された冷媒ガスは、圧縮行程中の圧縮室21の容積減少により圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、吐出口13aから吐出空間Daに吐出される。
【0032】
吐出空間Daに吐出された冷媒ガスは、絞り部15gによって絞られ、その後、溝部15fに流入する。冷媒ガスは、溝部15fから連通通路42aへ流入し、連通通路42aから油分離器40に供給される。そして、冷媒ガスは連通通路42aから油分離筒44の外周面に吹き付けられるとともに、油分離筒44の外周面を旋回しながら油分離室43の下方へ導かれる。このとき、遠心分離によって冷媒ガスから潤滑油が分離される。そして、冷媒ガスから分離された潤滑油は油排出口42cから油貯留室31へ滴下し、貯留室区画部50内に排出される結果、油貯留室31に貯留される。
【0033】
油分離器40において、潤滑油が分離された冷媒ガスは、油分離筒44の内部を上方へ移動し、ガス排出口42bから吐出室30における第2マフラー部52へ排出される。このとき、冷媒ガスは油分離筒44内より広い空間たる第2マフラー部52へ排出され、第2マフラー部52で膨張する。さらに、冷媒ガスは、第2マフラー部52より狭い第1マフラー部51に流入し、第1マフラー部51で絞られる。
【0034】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)吐出室30内に油分離器40が設けられたベーン圧縮機10において、油分離器40に貯留室区画部50を一体成形した。そして、この貯留室区画部50をリヤサイドプレート15に接合することにより、吐出室30内に、リヤサイドプレート15の端面と貯留室区画部50の内面とで囲まれる空間に油貯留室31を区画するとともに、貯留室区画部50を隔てた油貯留室31の外側に第1マフラー部51と第2マフラー部52を区画した。よって、油分離器40で分離された潤滑油は、第1マフラー部51及び第2マフラー部52から隔離された別空間の油貯留室31に貯留される。このため、油分離器40のガス排出口42bから冷媒ガスが第2マフラー部52に吐出されたとき、この冷媒ガスによって油貯留室31内の潤滑油が巻き上げられることが無い。その結果として、油貯留室31内に潤滑油を常に保持することができ、供給口15e周りで潤滑油の油面を高く維持することができる。このため、供給口15eを潤滑油でシールして供給口15eから油供給通路15dに冷媒ガスが進入することを防止することができる。
【0035】
(2)吐出室30内に油分離器40を設けた状態において、貯留室区画部50によって第1マフラー部51が区画されている。また、油分離器40におけるケース本体42の上部の周囲には、第1マフラー部51より広い第2マフラー部52が区画されている。よって、吐出室30内には、広さの異なる2つのマフラー部51,52が並存している。その結果、第1マフラー部51と第2マフラー部52により、冷媒ガスが吐出室30に吐出された際の吐出脈動を効果的に低減させることができ、吐出脈動による異常騒音を低減することができる。
【0036】
(3)吐出室30内に貯留室区画部50を設けたことにより、吐出室30内には第1マフラー部51及び第2マフラー部52とは別空間に油貯留室31が設けられている。このため、吐出脈動の緩衝作用を有している第1マフラー部51及び第2マフラー部52の容積が、潤滑油が貯まることによって減少することを防止して吐出脈動を低減することができる。
【0037】
(4)貯留室区画部50は油分離器40に一体成形されている。このため、例えば、油分離室43及び油分離筒44を備えたケース本体42(油分離器40)と、貯留室区画部50とを別体に形成する場合に比して、油分離器40をコンパクトにすることができるとともに、ケース本体42と貯留室区画部50とを組付ける作業を無くしてベーン圧縮機10の製造コストを抑えることができる。
【0038】
(5)貯留室区画部50は、後端面50aの正面視が半円状をなし、外側面50bは円弧状をなすとともに、上端面50cは平面状をなしている。そして、ケース本体42は、貯留室区画部50の上端面50cにおける中央部から上方に向けて延設されている。このため、円筒状をなすリヤハウジング11内に貯留室区画部50が収容された状態では、吐出室30における貯留室区画部50の外側に第1マフラー部51が区画されるとともに、第1マフラー部51以外の空間に第2マフラー部52を確実に区画することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 貯留室区画部50は、油分離器40のケース本体42と別体形成されていてもよく、ケース本体42に貯留室区画部50を接合するとともに、リヤサイドプレート15に貯留室区画部50を接合して吐出室30内に油貯留室31を区画してもよい。
【0040】
○ 第1マフラー部51に潤滑油が貯まるのを防止するために、第1マフラー部51の最下部と、第1マフラー部51より低圧な雰囲気(例えば、吸入通路13b)とを連通する油抜き通路を別途備えていてもよい。
【0041】
○ 本発明は、圧縮機としてのスクロール式圧縮機に具体化してもよく、この場合、圧縮機構Cはスクロール式であるとともに、区画部材は固定スクロール鏡板によって形成される。
【0042】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記圧縮機構はスクロール式である請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態のベーン圧縮機を示す縦断面図。
【図2】実施形態のベーン圧縮機内を示す図1の2−2線断面図。
【図3】リヤサイドプレートを示す図。
【図4】油分離器を示す斜視図。
【図5】貯留室区画部の内側を示す斜視図。
【図6】油分離器内を示す図1の6−6線断面図。
【符号の説明】
【0044】
C…圧縮機構、H…ハウジング、10…圧縮機としてのベーン圧縮機、11a…ハウジングの内面としての内端面、11b…ハウジング内面としての内周面、15…区画部材としてのリヤサイドプレート、15d…油供給通路、30…吐出室、31…油貯留室、40…油分離器、42…ケース本体、42b…ガス排出口、42c…油排出口、43…油分離室、44…油分離筒、50…貯留室区画部、50a…外面としての後端面、50b…外面としての外側面、50c…外面としての上端面、51…第1マフラー部、52…第2マフラー部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられた区画部材により、前記ハウジング内が圧縮機構側と、該圧縮機構で圧縮された冷媒ガスが吐出される吐出室側とに区画され、前記区画部材における前記吐出室に対向する端面に、前記圧縮機構から吐出された冷媒ガスに含まれる潤滑油を分離する油分離器が設けられ、前記油分離器に前記冷媒ガスから分離された潤滑油を排出する油排出口が形成されるとともに前記冷媒ガスのガス排出口が形成された圧縮機であって、
前記吐出室内において、前記区画部材における前記吐出室に対向する端面には貯留室区画部が接合されるとともに、前記端面と前記貯留室区画部の内面との間に前記潤滑油を貯める油貯留室が区画され、該油貯留室に前記油排出口が連通するとともに、前記区画部材には、一端が前記油貯留室に連通するとともに他端が前記圧縮機構に連通する油供給通路が形成されており、
さらに、前記吐出室内には前記貯留室区画部によって、該貯留室区画部の外面と、この外面に対向する前記ハウジングの内面との間の空間よりなる第1マフラー部、及び前記第1マフラー部以外の空間よりなり、かつ前記第1マフラー部より広い第2マフラー部が区画されており、前記第2マフラー部に向けて前記ガス排出口が開口している圧縮機。
【請求項2】
前記貯留室区画部は前記油分離器に一体成形されている請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記油分離器は、油分離筒が収容されるとともに油分離室が形成された筒状のケース本体と、前記ケース本体の下部側に一体成形された前記貯留室区画部とからなり、前記貯留室区画部の外面たる外側面は、前記吐出室を形成する前記ハウジングの内周面に沿って延びる円弧状をなすとともに、貯留室区画部の外面たる上端面は平面状をなし、該上端面の中央部から前記ケース本体が延設されている請求項2に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−31757(P2010−31757A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195177(P2008−195177)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】