説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】本発明は、ベース板の一方の主面に電極が形成され、他方の主面には電極が形成されない圧電振動片及び圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス(100)は、励振電極(131)と引出電極(132)とを有する圧電振動片(130a)と、実装面と接合面(122)とを有し実装面から接合面に至る側面から内側にくぼんだキャスタレーション(127)が形成されたガラス又は圧電材からなるベース板(120a)と、圧電振動片とベース板とを接合する非導電性の接合材(140)と、を備え、キャスタレーションが実装面から接合面側へ外側に伸びた第1面(127a)と、接合面から実装面に外側に伸び第1面よりも面積が狭い第2面(127b)と、を有し、第1面、第2面、及び接合材の側面に形成された配線電極(128)が外部電極(125)と同じ電極層で外部電極から引出電極まで伸びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。特に、キャスタレーションに形成された配線電極が接合材の側面を経由して圧電片の引出電極まで伸びた圧電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の振動数で振動する圧電振動片がベース板及びリッド板により挟まれて形成される圧電デバイスが知られている。このような圧電デバイスではベース板の側面にキャスタレーションが形成され、キャスタレーションに形成される配線電極を介して実装端子と励振電極とが電気的に接続される。
【0003】
例えば特許文献1は、ベース板にスルーホールが形成され、スルーホールに形成される電極を介してベース板の表裏面に形成される電極が互いに電気的に接合されている圧電デバイスを開示する。スルーホールはベース板の表裏面からエッチングされて形成されることにより、スルーホールの中間部がベース板の外側に突き出る、すなわちスルーホールの中間部の径が小さく形成される。キャスタレーションに関してもスルーホールと同様に、キャスタレーションの中間部がベース板の外側に突き出て形成される。そのため、キャスタレーションはベース板の表側方向に向いた面と裏側方向に向いた面とを有することになる。したがって、キャスタレーションに形成される電極は、キャスタレーションの表側及び裏側の両面からスパッタリング又は真空蒸着などを行うことにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−343017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、圧電デバイスの製造工程はより簡略化されることが望ましく、また、電極材には高価な金属が使われることもあり、その使用量が減らされることが望ましい。ベース板のキャスタレーションに一方の主面からスパッタリング又は真空蒸着などが行われれば、製造方向が簡略され、電極材の使用量も減らすことができる。
【0006】
そこで本発明は、スパッタリング又は真空蒸着することにより、外部電極と圧電振動片の引出電極までの配線電極とが形成される圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電デバイスは、一対の励振電極と該一対の励振電極から引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動片と、一対の外部電極を有する実装面と圧電振動片を配置する接合面とを有し、実装面から接合面に至る側面から内側にくぼんだ一対のキャスタレーションが形成されたガラス又は圧電材からなるベース板と、圧電振動片とベース板との間に配置され、圧電振動片とベース板とを接合する非導電性の接合材と、を備え、一対のキャスタレーションは実装面から接合面側へ外側に伸びた第1面と、接合面から実装面に外側に伸び第1面よりも面積が狭い第2面と、を有し、第1面、第2面、接合材の側面に形成された配線電極が、外部電極と同じ電極層で外部電極から引出電極まで伸びている。
【0008】
第2観点の圧電デバイスは、第1観点において、一対のキャスタレーションが第1面と第2面との間に第1面及び第2面よりもベース板の外側に突き出た突起面を有する。
【0009】
第3観点の圧電デバイスは、第1観点及び第2観点において、配線電極は、配線電極はキャスタレーションの中央領域に形成され、キャスタレーションとベース板の側面とが接するキャスタレーションの端部は、ガラス又は圧電材が露出している。
【0010】
第4観点の圧電デバイスは、第1観点から第3観点において、ベース板は長辺と短辺を有する矩形形状であり、キャスタレーションが短辺のみに短辺方向に伸びる形状又は短辺と長辺とが交差する角部から短辺方向に伸びる形状を含む。
【0011】
第5観点の圧電デバイスの製造方法は、外部電極が形成される実装面と実装面の反対側の接合面とを有するベース板を複数有するベースウエハを使って圧電デバイスを製造する製造方法において、ベースウエハがガラス又は圧電材からなり、実装面から第1距離離れた中間部まで径が小さくなり中間部から第1距離より短い第2距離離れた接合面まで径が大きくなる貫通孔が形成されたベースウエハを用意する工程と、励振電極を有する励振部と励振部を囲む枠部と励振電極から枠部まで引き出された引出電極を有する圧電ウエハを用意する工程と、貫通孔と引出電極が重なるようにしてベースウエハと圧電ウエハとを接合材で接合する接合工程と、貫通孔の側面及び接合材の側面を通って外部電極と外部電極から引出電極に伸びる配線電極とを形成する配線形成工程と、を備える。
【0012】
第6観点の圧電デバイスの製造方法は、第5観点において、配線形成工程では、ベースウエハの実装面に、外部電極に対応する第1開口及び貫通孔よりも狭く配線電極に対応する第2開口を有するマスクが配置され、スパッタリング又は真空蒸着によって配線電極が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一方の主面からスパッタリング又は真空蒸着などが行われることで、簡易な製造方法で圧電デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】圧電デバイス100の分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA−A断面の断面図である。 (b)は、ベース板120aの平面図である。 (c)は、外部電極125及びアース端子126が示されたベース板120aの平面図である。
【図3】圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。
【図4】圧電ウエハW130の平面図である。
【図5】ベースウエハW120の平面図である。
【図6】図5に示されるベースウエハW120の作製方法が示されたフローチャートである。
【図7】図5に示されるベースウエハW120の作製方法が示されたフローチャートである。
【図8】(a)は、圧電ウエハW130とベースウエハW120とが互いに接合されたウエハの部分断面図である。 (b)は、圧電ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハの部分断面図である。 (c)は、ベースウエハW120に電極が形成されたウエハの部分断面図である。
【図9】圧電デバイス200の分解斜視図である。
【図10】(a)は、図9のC−C断面の断面図である。 (b)は、ベース板220の平面図である。 (c)は、外部電極225及びアース端子226が示されたベース板220の平面図である。
【図11】圧電ウエハW230の平面図である。
【図12】ベースウエハW220の平面図である。
【図13】図12に示されるベースウエハW220の製造方法が示されたフローチャートである。
【図14】図12に示されるベースウエハW220の製造方法が示されたフローチャートである。
【図15】図12に示されるベースウエハW220の製造方法が示されたフローチャートである。
【図16】(a)は、圧電ウエハW230とベースウエハW220とが互いに接合されたウエハの部分断面図である。 (b)は、圧電ウエハW230とリッドウエハW110とが接合されたウエハの部分断面図である。 (c)は、ベースウエハW220に電極が形成されたウエハの部分断面図である。
【図17】(a)は、電極が形成されたベースウエハW220の−Y’軸側の面の平面図である。 (b)は、図17(a)の領域171の拡大平面図である。
【図18】(a)は、ベース板320の斜視図である。 (b)は、外部電極325及びアース端子326が示されたベース板320の平面図である。 (c)は、ベース板320が形成されるベースウエハの−Y’軸側の面の部分平面図である。
【図19】(a)は、ベース板420の斜視図である。 (b)は、外部電極425及びアース端子426が示されたベース板420の平面図である。 (c)は、ベース板420が形成されるベースウエハの−Y’軸側の面の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は表面実装型の圧電デバイスであり、プリント基板等に実装されて使用される。圧電デバイス100は主に、リッド板110と、ベース板120aと、圧電振動片130aとにより構成されている。リッド板110は例えばセラミック、ガラス又は圧電材等により形成され、ベース板120aは例えば水晶材等の圧電材により形成される。また、圧電振動片130aには例えばATカットの水晶材が用いられる。ATカットの水晶材は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶材の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100において圧電デバイス100の長辺方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0017】
ベース板120aはX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板120aの−Y’軸側の面は、圧電デバイス100がプリント基板等にハンダを介して電気的に接続されるための電極である外部電極125、及び圧電デバイス100に帯電した静電気等を除去するためのアース端子126が形成される実装面である。また、ベース板120aは、+Y’軸側の面である接合面122には非導電性の接合材140(図2参照)が塗布され、圧電振動片130aに接合される。さらに、ベース板120aには接合面122から−Y’軸方向に凹んで形成される凹部123が形成されており、ベース板120aの−X軸側の+Z’軸側、及び+X軸側の−Z’軸側の角部の側面には、ベース板120aの内側にくぼんだキャスタレーション127が形成されている。各キャスタレーション127には配線電極128が形成され、配線電極128は外部電極125に電気的に接続されている。
【0018】
リッド板110は、X軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。リッド板110の−Y’軸側の面には、圧電振動片130aに接合材140(図2参照)を介して接合される接合面112が形成されている。またリッド板110には、接合面112から+Y’軸方向に凹んで形成される凹部111が形成されている。
【0019】
圧電振動片130aは、所定の振動数で振動する励振部133と、励振部133の周りを取り囲むように形成される枠部134と、励振部133と枠部134とを連結する連結部135と、を有している。また、励振部133と枠部134との間の連結部135以外の領域には、圧電振動片130aをY’軸方向に貫通する貫通溝136が形成されている。さらに、励振部133の+Y’軸側及び−Y’軸側の面にはそれぞれ励振電極131が形成されている。+Y’軸側に形成されている励振電極131からは、−X軸側に形成されている連結部135及び貫通溝136の−X軸側の+Z’軸側の側面を介して枠部134の−Y’軸側の面の−X軸側の+Z’軸側の角部にまで引出電極132が引き出されている。また、−Y’軸側に形成されている励振電極131からは、+X軸側に形成されている連結部135を介して枠部134の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側の角部にまで引出電極132が引き出されている。
【0020】
図2(a)は、図1のA−A断面の断面図である。圧電デバイス100は、ベース板120aの接合面122と圧電振動片130aの枠部134の−Y’軸側の面とが非導電性の接合材140を介して接合され、リッド板110の接合面112と圧電振動片130aの枠部134の+Y’軸側の面とが非導電性の接合材140を介して接合されることにより形成されている。接合材140には、例えば融点が500度以下のガラス接合材である低融点ガラス及びポリイミド樹脂等の樹脂系接合材などが用いられる。ベース板120aのキャスタレーション127は、ベース板120aの−Y’軸側の面からベース板120aの接合面122側へ外側に伸びる第1面127aと、接合面122からベース板120aの−Y’軸側の面へ外側に伸び、第1面127aの面積よりも狭く形成される第2面127bと、を有している。すなわち、第1面127aの法線ベクトルは−Y’軸方向の成分を有しており、第2面127bの法線ベクトルは+Y’軸方向の成分を有している。ベース板120aの−Y’軸側の面には、外部電極125が形成されており、キャスタレーション127の第1面127a、第2面127b、及び接合材140の側面には配線電極128が形成されている。外部電極125と配線電極128とは同じ電極層により形成されており、外部電極125と圧電振動片130aの引出電極132とは配線電極128を介して互いに電気的に接続されている。
【0021】
図2(b)は、ベース板120aの平面図である。ベース板120aの+Y’軸側の接合面122には電極が形成されていない。また、キャスタレーション127には、ベース板120aが圧電振動片130aと接合された後に、配線電極128が形成される。
【0022】
図2(c)は、外部電極125及びアース端子126が示されたベース板120aの平面図である。図2(c)には、ベース板120aの+Y’軸側からベース板120aを透過してベース板120aの−Y’軸側の面に形成される外部電極125及びアース端子126が示されている。外部電極125はキャスタレーション127に接するように形成されており、アース端子126はキャスタレーション127が形成されないベース板120aの角部を含んで形成されている。また、外部電極125及びアース端子126は、圧電振動片120aの短辺及び長辺との間に、間隔が空かずに接するように形成される。
【0023】
圧電デバイスに使用される接合材は、プリント基板などに実装するときに使用されるハンダなどの熱により影響を受け、圧電デバイス内の封止が破れてしまう場合がある。圧電デバイス100では、法線ベクトルが−Y’軸方向の成分を有している第1面127aが第2面127bよりも広く形成されていることにより、ハンダが圧電振動片130aとベース板120aとの間に到達しにくい。そのため、圧電振動片130aとベース板120aとの間に形成される接合材140へのハンダによる影響を抑えることができる。
【0024】
<圧電デバイス100の製造方法>
図3は、圧電デバイス100の製造方法が示されたフローチャートである。以下、図3を参照して圧電デバイス100の製造方法について説明する。
【0025】
ステップS101では、圧電ウエハW130が用意される。圧電ウエハW130は圧電材により形成されるウエハであり、圧電ウエハW130には複数の圧電振動片が形成されている。
【0026】
図4は、圧電ウエハW130の平面図である。圧電ウエハW130には、圧電振動片130a及び圧電振動片130bがX軸方向及びZ’軸方向に交互に形成されている。また図4では、隣り合う各圧電振動片の境界に、後述されるステップS107でウエハが切断される線であるスクライブライン142が二点鎖線で示されている。圧電振動片130aは励振部133の+X軸側の−Z’軸側、及び−X軸側の+Z’軸側に連結部135が連結され、圧電振動片130bは励振部133の+X軸側の+Z’軸側、及び−X軸側の−Z’軸側に連結部135が連結されている。そのため、圧電振動片130aでは枠部134の−Y’軸側の面の+X軸側の−Z’軸側及び−X軸側の+Z’軸側の角部まで引出電極132が引き出され、圧電振動片130bでは枠部134の−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側及び−X軸側の−Z’軸側の角部まで引出電極132が引き出される。圧電振動片130a及び圧電振動片130bは、連結部135の形成位置、及び引出電極132が引き出される方向等が異なるのみであり、電気的特性は変わらない。
【0027】
ステップS102では、ベースウエハW120が用意される。ベースウエハW120には、凹部123及びベースウエハW120をY’軸方向に貫通する貫通孔143が形成されることによりベースウエハW120に複数のベース板が形成される。
【0028】
図5は、ベースウエハW120の平面図である。ベースウエハW120には、ベース板120a及びベース板120bがX軸方向及びZ’軸方向に交互に形成されている。また図5には、隣り合う各ベース板の境界に、後述されるステップS107でウエハが切断される線であるスクライブライン142が二点鎖線で示されている。X軸方向及びZ’軸方向に伸びるスクライブライン142の交点には、X軸方向及びZ’軸方向に1つ置きにベースウエハW120をY’軸方向に貫通する貫通孔143が形成されている。ベース板120aでは+X軸側の−Z’軸側及び−X軸側の+Z’軸側に貫通孔143が形成され、ベース板120bでは+X軸側の+Z’軸側及び−X軸側の−Z’軸側に貫通孔143が形成される。貫通孔143は、後述されるステップS107でウエハが切断された後にキャスタレーション127となる。
【0029】
図6及び図7は、図5に示されるベースウエハW120の作製方法が示されたフローチャートである。図6及び図7に示された各ステップの右横には各ステップを説明するための図が示されている。図6及び図7に示される各ステップを説明するための図は、図5に示されたベースウエハW120のB−B断面に相当する断面図である。以下、図6及び図7を参照してベースウエハW120の作製方法を説明する。
【0030】
図6のステップS201では、圧電材により形成されたウエハが用意される。図6(a)には、水晶などの圧電材により形成されたベースウエハW120の部分断面図が示されている。ステップS201において用意されるベースウエハW120は、図6(a)に示されるように、+Y’軸側及び−Y’軸側の面が平面状に形成されている。
【0031】
ステップS202では、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の両面に耐食膜150及びフォトレジスト151が形成される。図6(b)は、+Y’軸側及び−Y’軸側の面に耐食膜150及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW120の部分断面図である。ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面には、まず、耐食膜150が形成され、さらに、耐食膜150の表面にフォトレジスト151が形成される。耐蝕膜150は、ベースウエハW120に金属膜をスパッタリングもしくは蒸着などを行うことにより形成される。耐蝕膜150は、例えばベースウエハW220に下地としてニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)又はニッケル・タングステン(NiW)等の膜を形成し、下地の上に金(Au)又は銀(Ag)等を成膜することにより形成される。フォトレジスト151は、耐蝕膜150の表面にスピンコートなどの手法で均一に塗布される。
【0032】
ステップS203では、フォトレジスト151が露光及び現像され、耐食膜150がエッチングされる。図6(c)は、−Y’軸側の面のフォトレジスト151及び耐食膜150の一部が除去されたベースウエハW120の部分断面図である。ステップS203でフォトレジスト151及び耐食膜150が除去される領域は、圧電ウエハW120の−Y’軸側の面の貫通孔143が形成される領域144である。領域144は円形に形成され、その直径は長さWX1に形成される。
【0033】
ステップS204では、ベースウエハW120がウエットエッチングされ、貫通孔143の一部が形成される。図6(d)は、貫通孔143の一部がウエットエッチングされたベースウエハW120の部分断面図である。ステップS204では、ステップS203で形成された領域144に露出された圧電材のウエットエッチングを行うことにより、ベースウエハW120の−Y’軸側の面に貫通孔143の一部である第1貫通孔143aを形成する。圧電材はエッチングに対して異方性がある場合があり、また、ベースウエハW120の第1貫通孔143aの奥までエッチング液が循環しにくいため、第1貫通孔143aは+Y’軸方向に深くなるにしたがって第1貫通孔143aの口径が小さくなるように形成される。その口径の直径を長さWX2とすると、長さWX1は長さWX2よりも大きい。また、第1貫通孔143aのY’軸方向の深さは第1距離HY1に形成される。第1貫通孔143aは、ベース板のキャスタレーション127の第1面127a(図2参照)を形成する。
【0034】
図7のステップS205では、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面である両主面に耐食膜150及びフォトレジスト151が形成される。ステップS205は図6のステップS204から継続して行われるステップである。図7(a)は、+Y’軸側及び−Y’軸側の面に耐食膜150及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW120の部分断面図である。ステップS204の後、ベースウエハW120に形成されているすべての耐食膜150及びフォトレジスト151が除去される。そして再び、ベースウエハW120の+Y’軸側及び−Y’軸側の面の全面に耐食膜150及びフォトレジスト151が形成される。
【0035】
ステップS206では、フォトレジスト151が露光及び現像され、耐食膜150がエッチングされる。図7(b)は、フォトレジスト151が露光及び現像され、耐食膜150がエッチングされたベースウエハW120の部分断面図である。除去される耐食膜150及びフォトレジスト151は、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の貫通孔143が形成される領域145及び凹部123が形成される領域146である。領域145は、直径が長さWX2よりも長い長さWX3の円形に形成される。
【0036】
ステップS207では、ベースウエハW120がウエットエッチングされ、凹部123及び貫通孔143の一部が形成される。図7(c)は、貫通孔143の一部及び凹部123がウエットエッチングにより形成されたベースウエハW120の部分断面図である。ステップS207では、ステップS206で形成された領域145及び領域146に露出された圧電材のウエットエッチングを行うことにより、ベースウエハW120の+Y’軸側の面に貫通孔143の一部である第2貫通孔143b及び凹部123を形成する。第2貫通孔143bは−Y’軸方向に深くなるにしたがって第2貫通孔143bの口径が小さくなるように形成される。また、第2貫通孔143bのY’軸方向の深さは、第1距離HY1よりも短い第2距離HY2に形成される。第2貫通孔143bが形成されることにより、ベース板のキャスタレーション127の第2面127b(図2参照)が形成される。
【0037】
ステップS208では、フォトレジスト151及び耐食膜150が除去される。図7(d)は、フォトレジスト151及び耐食膜150が除去されたベースウエハW120の部分断面図である。図7(d)は、図5のB−B断面図である。ステップS208でフォトレジスト151及び耐食膜150が除去されることにより、凹部123及び貫通孔143が形成されたベースウエハW120が用意される。貫通孔143は、第1面127a及び第2面127bを含んでおり、第1面127aと第2面127bとの間には中間部127cが形成される。貫通孔143の中間部127cにおける直径は長さWX2に形成されている。
【0038】
図3に戻って、ステップS103では、リッドウエハW110が用意される。リッドウエハW110は、−Y’軸側の面に凹部111が形成されることにより、複数のリッド板110がリッドウエハW110に形成される。
【0039】
ステップS104では、ベースウエハW120と圧電ウエハW130とが互いに接合される。ステップS104は、接合工程である。
図8(a)は、圧電ウエハW130とベースウエハW120とが互いに接合されたウエハの部分断面図である。図8(a)には、図5のB−B断面を含んだ断面図が示されている。ベースウエハW120と圧電ウエハW130とは、ベースウエハW120の接合面122と圧電ウエハW130の枠部134の−Y’軸側の面とが接合材140を介して接合される。このとき、貫通孔143に面する引出電極132には接合材140は形成されない。また、ベースウエハW120と圧電ウエハW130とは、圧電振動片130aとベース板130aとが重なり、圧電振動片130bとベース板130bとが重なるように接合される。
【0040】
ステップS105では、圧電ウエハW130とリッドウエハW110とが互いに接合される。
図8(b)は、圧電ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハの部分断面図である。リッドウエハW110と圧電ウエハW130とは、リッドウエハW110の接合面112と圧電ウエハW130の枠部134の+Y’軸側の面とが接合材140を介して接合される。
【0041】
ステップS106では、ベースウエハW120に電極が形成される。
図8(c)は、ベースウエハW120に電極が形成されたウエハの部分断面図である。ステップS106は、ベースウエハW120の−Y’軸側の面に金属膜がスパッタリング又は真空蒸着などにより形成されることにより、ベースウエハW120にアース端子126、外部電極125及び配線電極128が形成される配線形成工程である。金属膜は、例えばベースウエハW120にマスク147を介してクロム(Cr)膜を形成し、さらにクロム膜の表面に金(Au)膜を形成することにより形成される。外部電極125及び配線電極128は同一の工程により形成されるため、外部電極125及び配線電極128は互いに連続して繋がる同一の金属膜により形成される。また、貫通孔143の+Y’軸側の開口は圧電ウエハW130の枠部134により封鎖されているため、貫通孔143の全体に金属膜が広がって形成される。さらに、貫通孔143に向いて露出されている接合材140及び引出電極132の表面にも金属膜が形成される。そのため、ステップS106により、外部電極125、配線電極128、及び引出電極132は互いに電気的に接続される。
【0042】
ステップS107では、ステップS108により電極が形成されたウエハがダイシングにより切断される。ステップS107では、図4、図5、及び図8(a)〜図8(c)に示されるスクライブライン142に沿ってウエハがダイシングソー(不図示)等により切断され、個々の圧電デバイス100が形成される。
【0043】
圧電デバイス100の製造方法では、ベースウエハW120の+Y’軸側の面にスパッタリング又は真空蒸着を行わないため、製造工程が簡略化されており好ましい。また、ベースウエハW120の+Y’軸側の面にスパッタリング又は真空蒸着を行わないことにより電極材の使用量を減らすことができるため好ましい。さらに、ベース板の貫通孔143は、法線ベクトルが−Y’軸方向の成分を有する第1面127aが第2面127bよりも面積が広く形成されているため、第1面127aが広く形成された貫通孔143にベースウエハW120の−Y’軸側からの金属膜の蒸着を行うことが容易である。また、第2面127bは、第2面127bの面積が狭く形成され、貫通孔143の+Y’軸側の開口が圧電振動片の枠部134によって封鎖されていることにより、第2面127bにおいても金属膜を形成することが容易になっている。すなわち、圧電デバイス100では、貫通孔143に電極を形成することが容易である。
【0044】
(第2実施形態)
ベース板は、ガラスが基材とされてもよい。ガラスにはウエットエッチングに対する異方性がないため、ベース板がガラスを基材とされた場合には、第1実施形態で示されたキャスタレーションとはキャスタレーションの形状が異なる。以下に、ガラスを基材としたベース板が使用された圧電デバイスについて説明する。また以下の説明では、第1実施形態と同じ部分については同じ番号を付してその説明を省略する。
【0045】
<圧電デバイス200の構成>
図9は、圧電デバイス200の分解斜視図である。圧電デバイス200は主に、リッド板110と、ベース板220と、圧電振動片130aとにより構成されている。圧電デバイス200では、ベース板220がガラスを基材として形成されている。
【0046】
ベース板220はX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板220の−Y’軸側の面は、プリント基板等にハンダを介して電気的に接続されるための電極である外部電極225(図10(a)参照)、及び圧電デバイス200に帯電した静電気等を除去するためのアース端子226(図10(c)参照)が形成される実装面である。また、ベース板220の+Y’軸側の面である接合面222には接合材140が塗布され、圧電振動片130aに接合される。さらに、ベース板220には接合面222から−Y’軸方向に凹んで形成される凹部223が形成されており、ベース板220の四隅の角部の側面には、ベース板220の内側にくぼんだキャスタレーション227が形成されている。キャスタレーション227は、ベース板220の長辺及び短辺に伸びて形成されている。また、キャスタレーション227は、実装面から接合面222側へ外側に伸びた第1面271と、接合面222から実装面に外側に伸び第1面271よりも面積が狭い第2面272と、第1面271と第2面272との間に第1面271及び第2面272よりもベース板220の外側に突き出た突起面273と、により形成されている。各キャスタレーション227には配線電極228が形成され、配線電極228は外部電極225に電気的に接続されている。
【0047】
図10(a)は、図9のC−C断面の断面図である。圧電デバイス200は、ベース板220の接合面222と圧電振動片130aの枠部134の−Y’軸側の面とが接合材140を介して接合され、リッド板110の接合面112と圧電振動片130aの枠部134の+Y’軸側の面とが接合材140を介して接合されることにより形成されている。ベース板220のキャスタレーション227は、第1面271と、第2面272と、突起面273と、を有している。第1面271及び第2面272はベース板220の内側にくぼんだ曲面として形成されており、突起面273はベース板220の外側に突き出て形成されている。ベース板220の−Y’軸側の面にはアース端子226(図10(c)参照)及び外部電極225が形成され、キャスタレーション227には配線電極228が形成されている。配線電極228は外部電極225と連続した同じ電極の層により形成されており、外部電極225と圧電振動片130aの枠部134に形成されている引出電極132とを電気的に接続している。
【0048】
図10(b)は、ベース板220の平面図である。ベース板220の+Y’軸側の面には電極が形成されていない。また、ベース板220の+X軸側の−Z’軸側及び−X軸側の+Z’軸側のキャスタレーション227には、ベース板220が圧電振動片130aと接合された後に、配線電極228が形成される。キャスタレーション227に形成される配線電極228は、ベース板220のZ’軸に平行な短辺及びX軸に平行な長辺に接しないように形成されている。すなわち、X−Z’平面において、配線電極228はキャスタレーション227のベース板220の短辺及び長辺に接する端部227aには形成されておらず、キャスタレーション227の端部227aではガラスが外部に露出されている。
【0049】
図10(c)は、外部電極225及びアース端子226が示されたベース板220の平面図である。図10(c)には、ベース板220の+Y’軸側からベース板220を透過してベース板220の−Y’軸側の面に形成される外部電極225及びアース端子226が示されている。外部電極225はキャスタレーション227に接し、ベース板220の短辺及び長辺に接しないように形成されており、アース端子226はベース板220の短辺、長辺、及びキャスタレーション227に接しないように形成されている。
【0050】
圧電デバイス200は、ベース板220のキャスタレーション227の第1面271がベース板220の内側にくぼんだ曲面で形成されていることにより、圧電デバイス200がプリント基板などに実装される場合にハンダが接合面222に達しにくく、接合材140がハンダの影響を受けにくいため好ましい。また、圧電デバイス200では、第2面272の面積が狭く形成されることによりベース板220の接合面222の面積が広く形成されている。そのため、接合材140の形成面積が広くなるように形成されているため好ましい。
【0051】
<圧電デバイス200の製造方法>
圧電デバイス200は、圧電デバイス100と同様に図3に示されたフローチャートに従って作製される。以下、圧電デバイス200の製造方法を、図3を参照しながら説明する。
【0052】
ステップS101では、圧電ウエハW230が用意される。圧電ウエハW230はガラスにより形成されたウエハであり、圧電ウエハW230には複数の圧電振動片130aが形成されている。
【0053】
図11は、圧電ウエハW230の平面図である。圧電ウエハW230には、圧電振動片130aがX軸方向及びZ’軸方向に並んで形成されている。また図11では、隣り合う各圧電振動片130aの境界に、スクライブライン142が二点鎖線で示されている。図11に示される各圧電振動片130aの引出電極132は、他の圧電振動片130aの引出電極130aには電気的に接続されていない。
【0054】
ステップS102では、ベースウエハW220が用意される。ベースウエハW220には、凹部223及びベースウエハW220をY’軸方向に貫通する貫通孔243が形成されることによりベースウエハW220に複数のベース板220が形成される。
【0055】
図12は、ベースウエハW220の平面図である。ベースウエハW220には、ベース板220がX軸方向及びZ’軸方向に並んで形成されている。また図12には、隣り合う各ベース板の境界に、スクライブライン142が二点鎖線で示されている。X軸方向及びZ’軸方向に伸びるスクライブライン142の交点には、ベースウエハW220をY’軸方向に貫通し、スクライブライン142のX軸方向及びZ’軸方向に沿って伸びる貫通孔243が形成されている。そのため、各ベース板220の四隅には貫通孔243が形成される。貫通孔243は、後述されるステップS107でウエハが切断された後にキャスタレーション227となる。
【0056】
図13、図14、及び図15は、図12に示されるベースウエハW220の製造方法が示されたフローチャートである。図13、図14、及び図15に示される各ステップの右横には各ステップを説明するための図が示されている。図13、図14、及び図15に示される各ステップを説明するための図は、図12に示されたベースウエハW220のD−D断面に相当する断面図である。以下に図13、図14、及び図15を参照してベースウエハW220の製造方法を説明する。
【0057】
図13のステップS211では、ガラスにより形成されたウエハが用意される。図13(a)にはガラスにより形成されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS211において用意されるウエハは、図13(a)に示されるように、+Y’軸側及び−Y’軸側の面が平面状に形成された平板である。
【0058】
ステップS212では、ベースウエハW220の+Y’軸側及び−Y’軸側の両面に耐蝕膜150及びフォトレジスト151が形成される。図13(b)には耐蝕膜150及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。図13(b)に示されるように、ベースウエハW220の+Y’軸側及び−Y’軸側の面に耐蝕膜150が形成され、耐蝕膜150の表面にフォトレジスト151が形成される。耐蝕膜150は、ベースウエハW220に金属膜をスパッタリングもしくは真空蒸着などを行うことにより形成される。耐蝕膜150は、例えばベースウエハW220に下地としてニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)又はニッケル・タングステン(NiW)等の膜を形成し、下地の上に金(Au)及び銀(Ag)等を成膜することにより形成される。フォトレジスト151は、耐蝕膜150の表面にスピンコートなどの手法で均一に塗布される。
【0059】
ステップS213では、フォトレジスト151が露光され現像される。図13(c)には、フォトレジスト151が露光及び現像されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS213でフォトレジスト151が露光され現像される箇所は、ベースウエハW220の+Y’軸側の面の凹部223(図9参照)に対応した凹み領域160、及び−Y’軸側の面の貫通孔243に対応した貫通領域161である。ベースウエハW220の基材がガラスである場合は、ベースウエハW220のウエットエッチングによってエッチングされる領域が広がるため、凹み領域160及び貫通領域161は凹部223及び貫通孔243の広さよりも狭く形成される。また、貫通領域161のX軸方向の幅をWA1とすると、幅WA1は、貫通孔243の大きさが大きくなりすぎないように小さく形成されることが望ましい。
【0060】
ステップS214では、耐蝕膜150がエッチングされる。図13(d)には、耐蝕膜150がエッチングされたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS214では、ステップS213でフォトレジスト151が露光及び現像された凹み領域160及び貫通領域161の耐蝕膜150がエッチングにより取り除かれる。
【0061】
図14のステップS215では、ベースウエハW220がウエットエッチングされる。図14(a)には、ガラスがエッチングされたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS215では、凹み領域160及び貫通領域161のガラスがエッチング液につけられることにより、凹み領域160及び貫通領域161の深さが深さHA1となるようにウエットエッチングされる。ガラスのウエットエッチングでは耐蝕膜150の下方もエッチングされるため、例えば、貫通領域161でエッチングされるガラスのX軸方向の幅WA2は、貫通領域161のX軸方向の幅WA1(図13(c)参照)よりも広くなる。
【0062】
ステップS216では、ベースウエハW220の+Y’軸側の面の耐蝕膜150及びフォトレジスト151が除去された後に、再びベースウエハW220の+Y’軸側の面に耐蝕膜150が形成され、耐蝕膜150の表面にフォトレジスト151が形成される。図14(b)には、+Y’軸側の面に耐蝕膜150及びフォトレジスト151が形成されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。耐蝕膜150及びフォトレジスト151は、ベースウエハW220の+Y’軸側の面の全面に形成される。
【0063】
ステップS217では、フォトレジスト151が露光され、現像される。図14(c)には、+Y’軸側の面のフォトレジスト151が露光され現像されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS217で露光され現像されるフォトレジスト151の箇所は、+Y’軸側の面の貫通孔243に対応した貫通領域162である。凹み領域160及び貫通領域161と同様に、ベースウエハW220はウエットエッチングによってエッチングされる領域が広がるため、貫通領域162は貫通孔243の+Y’軸側の面の広さよりも狭く形成される。また、貫通領域162のX軸方向の幅を幅WA3とする。
【0064】
ステップS218では、耐蝕膜150がエッチングされる。図14(d)には、耐蝕膜150がエッチングされたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS218では、貫通領域162に形成されている耐蝕膜150がエッチングされて除去される。
【0065】
図15のステップS219では、ベースウエハW220がウエットエッチングされる。図15(a)には、ガラスがウエットエッチングされたベースウエハW220の部分断面図が示されている。ステップS219では、貫通領域161及び貫通領域162の露出したガラスがエッチング液につけられることによりウエットエッチングされ、貫通領域161の深さが深さHA3に、貫通領域162の深さが深さHA2になるように形成される。貫通領域161の深さHA3の大きさは、深さHA1(図14(a)参照)と深さHA2との合計の値となる。また、ウエットエッチングの結果、貫通領域162でウエットエッチングされるガラスのX軸方向の幅は幅WA5となり、貫通領域161でウエットエッチングされるガラスのX軸方向の幅は幅WA4となる。幅WA5は幅WA3(図14(c)参照)よりも大きく、幅WA4は幅WA2(図14(a)参照)よりも大きく、幅WA4は幅WA5よりも大きい。
【0066】
ステップS220では、耐蝕膜150及びフォトレジスト151が除去される。図15(b)には、耐蝕膜150及びフォトレジスト151が除去されたベースウエハW220の部分断面図が示されている。図15(b)におけるベースウエハW220は、各ベース板220に凹部223が形成されている。また、貫通孔243が形成される位置のガラスの厚さは厚さHA4となっている。
【0067】
ステップS221では、サンドブラストにより貫通孔143が形成される。図15(c)は、サンドブラストにより貫通孔243が形成されたベースウエハW220の部分断面図である。ステップS221では、ベースウエハW220の−Y’軸側の面に研磨材を吹き付けるサンドブラストにより、貫通孔243が貫通され、突起面273が形成される。図15(c)は、図12のD−D断面の断面図である。
【0068】
図3に戻って、ステップS103では、リッドウエハW110が用意される。リッドウエハW110は、−Y’軸側の面に凹部111が形成されることにより、複数のリッド板110がリッドウエハW110に形成される。
【0069】
ステップS104では、ベースウエハW220と圧電ウエハW230とが互いに接合される。ステップS104は、接合工程である。
図16(a)は、圧電ウエハW230とベースウエハW220とが互いに接合されたウエハの部分断面図である。図16(a)には、図12のD−D断面を含んだ断面図が示されている。ベースウエハW220と圧電ウエハW230とは、ベースウエハW220の接合面222と圧電ウエハW230の枠部134の−Y’軸側の面とが接合材140を介して接合される。このとき、貫通孔243に面する引出電極132には接合材140は形成されない。また、図16(a)においては、引出電極132はスクライブライン142の上には形成されていないことが示されている。
【0070】
ステップS105では、圧電ウエハW230とリッドウエハW110とが互いに接合される。
図16(b)は、圧電ウエハW230とリッドウエハW110とが接合されたウエハの部分断面図である。リッドウエハW110と圧電ウエハW230とは、リッドウエハW110の接合面112と圧電ウエハW230の枠部134の+Y’軸側の面とが接合材140を介して接合される。
【0071】
ステップS106では、ベースウエハW220に電極が形成される。
図16(c)は、ベースウエハW220に電極が形成されたウエハの部分断面図である。ステップS106は、ベースウエハW220の−Y’軸側の面に金属膜がスパッタリング又は真空蒸着により形成されることにより、ベースウエハW220にアース端子226、外部電極225及び配線電極228が形成される配線形成工程である。金属膜は、例えばベースウエハW220にマスク148を介してクロム(Cr)膜を形成し、さらにクロム膜の表面に金(Au)膜を形成することにより形成される。外部電極225及び配線電極228は同一の工程により形成されるため、外部電極225及び配線電極228は互いに連続して繋がる同一の金属膜により形成される。また、貫通孔243の+Y’軸側の開口は圧電ウエハW230の枠部134により封鎖されているため、貫通孔243の全体に金属膜が形成される。さらに、貫通孔243に向いて露出されている接合材140及び引出電極132の表面にも金属膜が形成される。このステップS106により、外部電極225、配線電極228、及び引出電極132が電気的に接続され、複数の圧電デバイス200がウエハ上に形成される。図16(c)において、マスク148はスクライブライン142上にも配置されており、貫通孔243において隣接する圧電デバイス200の配線電極228は互いに電気的に接続しないように形成されている。
【0072】
図17(a)は、電極が形成されたベースウエハW220の−Y’軸側の面の平面図である。ベースウエハW220に形成される電極は、図17に示されるようにスクライブライン142上には形成されない。そのため、各ベース板220に形成されるアース端子226及び外部電極225は、隣接するベース板220に形成されるアース端子226及び外部電極225に電気的に接続されていない。また、図16(c)に示されるように、隣接する圧電デバイス200の配線電極228及び引出電極132は互いに電気的に接続されていないため、ウエハに形成される各圧電デバイス200は、それぞれ他の圧電デバイス200に電気的に接続されていない。そのためベースウエハW220に電極を形成した後に、図17(a)に示されるように、各圧電デバイス200に形成される一対の外部電極225にそれぞれプローブ149をあてることにより各圧電デバイス200の振動周波数を確認することができる。
【0073】
図17(b)は、図17(a)の領域171の拡大平面図である。図17(b)には、ステップS106で使用されるマスク148の一部が示されている。マスク148は、外部電極225が形成されるための開口である第1開口、及び貫通孔243に形成される配線電極228が形成されるための開口である第2開口を有しており、第1開口及び第2開口は互いに繋がっている。第1開口は外部電極225の平面形状にほぼ等しく、第2開口は貫通孔243に形成される配線電極228のX−Z’平面の形状よりも、貫通孔243側に一回り大きい平面形状を有している。図17(b)に示されるように、配線電極228は貫通孔243の一部のみに形成されているため、配線電極228が形成されるための第2開口の面積は貫通孔243の面積よりも狭い。また、マスク148は、アース端子226が形成されるための開口も有している。
【0074】
図3のステップS107では、ステップS106で電極が形成されたウエハがダイシングにより切断される。ダイシングは、ダイシングソーによりスクライブライン142に沿って行われ、個々の圧電デバイス200が形成される。
【0075】
圧電デバイスの製造工程においては、ウエハのダイシングを行う場合に圧電デバイスに形成される電極がダイシングソーに巻き込まれて剥がれてしまうことがある。また、ダイシングソーによりウエハとともに電極も切断される場合には、ダイシングのずれに起因して各圧電デバイスに形成される電極の面積が圧電デバイスごとに異なってしまい、各圧電デバイスのクリスタルインピーダンス(CI)値にばらつきが生じるという問題がある。圧電デバイス200はその製造方法において、図16(c)及び図17(b)に示されるように配線電極228がスクライブライン142上に形成されないため、圧電デバイス200の配線電極228がウエハのダイシングによる影響を受けず、各圧電デバイスに形成される電極の面積の大きさの不均一さに起因して各圧電デバイスのクリスタルインピーダンス(CI)値にばらつきが生じることがない。
【0076】
ベース板に形成されるキャスタレーションは様々な形状が考えられる。以下に、ベース板に形成されるキャスタレーションの変形例として、ベース板の角部から短辺方向に伸びるキャスタレーションを有するベース板320、及びベース板の角部を含まずベース板の短辺に形成されるキャスタレーションを有するベース板420について説明する。
【0077】
<ベース板320の構成>
図18(a)は、ベース板320の斜視図である。ベース板320はX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板320の−Y’軸側の面には、外部電極325(図18(b)参照)、及びアース端子326(図18(b)参照)が形成される実装面である。また、ベース板320の+Y’軸側の面である接合面322には接合材140が塗布され、圧電振動片130aに接合される。さらに、ベース板320には接合面322から−Y’軸方向に凹んで形成される凹部323が形成されており、ベース板320の四隅の角部の側面には、ベース板320の内側にくぼんでベース板320の角部から短辺方向に伸びるキャスタレーション327が形成されている。キャスタレーション327は、実装面から接合面322側へ外側に伸びた第1面371と、接合面322から実装面に外側に伸び第1面371よりも面積が狭い第2面372と、第1面371と第2面372との間に第1面371及び第2面372よりもベース板320の外側に突き出た突起面373と、により形成されている。ベース板320が圧電デバイスの一部として構成された場合には、ベース板320の各キャスタレーション327には配線電極328が形成され、配線電極328は外部電極325及び圧電振動片130aの引出電極132に電気的に接続される。
【0078】
図18(b)は、外部電極325及びアース端子326が示されたベース板320の平面図である。図18(b)には、ベース板320の+Y’軸側からベース板320を透過してベース板320の−Y’軸側の面に形成される外部電極325及びアース端子326が示されている。外部電極325はキャスタレーション327に接するように形成されており、アース端子326はキャスタレーション327に接しないように形成されている。外部電極325は、配線電極328に電気的に接続される。
【0079】
図18(c)は、ベース板320が形成されるベースウエハの−Y’軸側の面の部分平面図である。図18(c)は図17(b)と同様の領域が示された図であり、図18(c)と図17(b)とは貫通孔の形状が異なっている。図18(c)には、スクライブライン142の交点に形成され、Z’軸方向に伸びた矩形形状の貫通孔343が示されている。貫通孔343はZ’軸方向に伸びていることにより、1つの貫通孔343に形成される一対の配線電極328を互いに離して形成することができる。そのため、一対の配線電極328が互いに接触して電気的に接続されることが抑えられている。
【0080】
<ベース板420の構成>
図19(a)は、ベース板420の斜視図である。ベース板420はX軸方向に長辺が伸び、Z’軸方向に短辺が伸びた矩形形状に形成されている。ベース板420の−Y’軸側の面には、外部電極425(図19(b)参照)、及びアース端子426(図19(b)参照)が形成される実装面である。また、ベース板420の+Y’軸側の面である接合面422には接合材140が塗布され、圧電振動片130aに接合される。さらに、ベース板420には接合面422から−Y’軸方向に凹んで形成される凹部423が形成されており、ベース板420の四隅の角部を含まない短辺の側面には、ベース板420の内側にくぼんで形成されるキャスタレーション427が形成されている。キャスタレーション427は、実装面から接合面422側へ外側に伸びた第1面471と、接合面422から実装面に外側に伸び第1面471よりも面積が狭い第2面472と、第1面471と第2面472との間に第1面471及び第2面472よりもベース板420の外側に突き出た突起面473と、により形成されている。ベース板420が圧電デバイスの一部として構成された場合には、ベース板420の各キャスタレーション427には配線電極428が形成され、配線電極428は外部電極425及び圧電振動片130aの引出電極132に電気的に接続される。
【0081】
図19(b)は、外部電極425及びアース端子426が示されたベース板420の平面図である。図19(b)には、ベース板420の+Y’軸側からベース板420を透過してベース板420の−Y’軸側の面に形成される外部電極425及びアース端子426が示されている。外部電極425はキャスタレーション427に接するように形成されており、アース端子426はキャスタレーション327に接しないように形成されている。また、外部電極425及びアース端子426は、ベース板420の短辺及び長辺には接していない。外部電極425は、配線電極428に電気的に接続される。
【0082】
図19(c)は、ベース板420が形成されるベースウエハの−Y’軸側の面の部分平面図である。図19(c)には、ベース板420の−X軸側の半分と、他のベース板420の+X軸側の半分とがベースウエハで互いに接している状態が示されている。この2つのベース板420の間にはZ’軸方向に伸びるスクライブライン142が示されている。図19(c)には、このZ’軸方向に伸びるスクライブライン142に形成され、Z’軸方向に伸びる矩形形状の貫通孔443が示されている。貫通孔443はX軸方向に伸びるスクライブライン142には形成されない。貫通孔443はZ’軸方向に伸びていることにより、1つの貫通孔443に形成される一対の配線電極428を互いに離して形成することができる。そのため、一対の配線電極428が互いに接触して電気的に接続されることが抑えられている。
【0083】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0084】
例えば、図3に示された圧電デバイス100の製造工程では、ステップS105の前にステップS106の電極形成の工程が行われてもよい。この場合、外部電極にプローブを当てて圧電振動片の周波数を測定しながら、圧電振動片の+Y’軸側の面に形成されている励振電極131に金属を付加又は除去をすることにより、圧電振動片の周波数調整を行うことができる。そのため、圧電振動片の周波数調整を容易に行うことができる。また、第2実施形態で示されたガラスを基材としたベース板は、図6及び図7に示された方法により形成され、キャスタレーションが第1面及び第2面のみで形成され、突起面が形成されていなくてもよい。
【0085】
さらに、上記の実施形態では圧電振動片にATカットの水晶振動片である場合を示したが、同じように厚みすべりモードで振動するBTカット、又は音叉型水晶振動片などであっても同様に適用できる。さらに圧電振動片は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材に基本的に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
100、200 … 圧電デバイス
110 … リッド板
111、123、223、323、423 … 凹部
112、122、222、322、422 … 接合面
120a、120b、220、320、420 … ベース板
125、225、325、425 … 外部電極
126、226、326、426 … アース端子
127、227、327、427 … キャスタレーション
127a、271、371、472 … 第1面
127b、272、372、472 … 第2面
127c … 中間部
128、228、328、428 … 配線電極
130a、130b … 圧電振動片
131 … 励振電極
132 … 引出電極
133 … 励振部
134 … 枠部
135 … 連結部
136 … 貫通溝
140 … 接合材
142 … スクライブライン
143、243 … 貫通孔
143a … 第1貫通孔
143b … 第2貫通孔
147、148 … マスク
149 … プローブ
150 … 耐食膜
151 … フォトレジスト
227a … キャスタレーション227の端部
273、373、473 … 突起面
W110 … リッドウエハ
W120、W220 … ベースウエハ
W130、W230 … 圧電ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の励振電極と該一対の励振電極から引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動片と、
一対の外部電極を有する実装面と前記圧電振動片を配置する接合面とを有し、前記実装面から前記接合面に至る側面から内側にくぼんだ一対のキャスタレーションが形成されたガラス又は圧電材からなるベース板と、
前記圧電振動片と前記ベース板との間に配置され、前記圧電振動片と前記ベース板とを接合する非導電性の接合材と、を備え、
前記一対のキャスタレーションは前記実装面から前記接合面側へ外側に伸びた第1面と、前記接合面から前記実装面に外側に伸び前記第1面よりも面積が狭い第2面と、を有し、
前記第1面、前記第2面、前記接合材の側面に形成された配線電極は、前記外部電極と同じ電極層で前記外部電極から前記引出電極まで伸びている圧電デバイス。
【請求項2】
前記一対のキャスタレーションは前記第1面と前記第2面との間に前記第1面及び前記第2面よりも前記ベース板の外側に突き出た突起面を有する請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記配線電極は、前記配線電極は前記キャスタレーションの中央領域に形成され、前記キャスタレーションと前記ベース板の側面とが接する前記キャスタレーションの端部は、前記ガラス又は前記圧電材が露出している請求項1又は請求項2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記ベース板は長辺と短辺を有する矩形形状であり、
前記キャスタレーションは前記短辺のみに短辺方向に伸びる形状又は前記短辺と前記長辺とが交差する角部から前記短辺方向に伸びる形状を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
外部電極が形成される実装面と該実装面の反対側の接合面とを有するベース板を複数有するベースウエハを使って、圧電デバイスを製造する製造方法において、
前記ベースウエハはガラス又は圧電材からなり、前記実装面から第1距離離れた中間部まで径が小さくなり前記中間部から前記第1距離より短い第2距離離れた前記接合面まで径が大きくなる貫通孔が形成されたベースウエハを用意する工程と、
励振電極を有する励振部と前記励振部を囲む枠部と前記励振電極から前記枠部まで引き出された引出電極を有する圧電ウエハを用意する工程と、
前記貫通孔と前記引出電極が重なるようにして前記ベースウエハと前記圧電ウエハとを接合材で接合する接合工程と、
前記貫通孔の側面及び前記接合材の側面を通って前記外部電極と前記外部電極から前記引出電極に伸びる配線電極とを形成する配線形成工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記配線形成工程では、前記ベースウエハの前記実装面に、前記外部電極に対応する第1開口及び前記貫通孔よりも狭く前記配線電極に対応する第2開口を有するマスクが配置され、スパッタリング又は真空蒸着によって前記配線電極が形成される請求項5に記載の圧電デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−38524(P2013−38524A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171423(P2011−171423)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】