説明

圧電デバイス用シート基板とその圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法。

【課題】 素子搭載部材の枠部の内周縁部から外周縁部までの幅のバラツキを低減し、安定して気密封止することができる圧電デバイス用シート基板を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の圧電デバイス用シート基板は、凹部空間を有する素子搭載部材となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部が設けられた圧電デバイス用シート基板であって、素子搭載部材の角部と、前記余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられていることを特徴とするものである。よって、素子搭載部材を個片化する際に、枠部の内周縁部から外周縁部までの幅のバラツキを低減することで、蓋部材が枠部主面と接合できない箇所ができることを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイスの製造で使用される複数の素子搭載部材によって設けられた圧電デバイス用シート基板と、その圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、音叉型屈曲水晶振動素子、蓋体とから主に構成されている。
素子搭載部材は、基板部と枠部で構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に枠部が設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する基板部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられ、音叉型水晶振動素子が搭載される。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
また、枠部の主面には、封止用導体パターンが設けられている。前記封止用導体パターンは、例えば、タングステン(W)等のメタライズにニッケル(Ni)メッキや金(Au)メッキ等を施すことにより設けられている。
この音叉型屈曲水晶振動素子を囲繞する素子搭載部材の枠部の封止用導体パターンには金属製の蓋体が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
【0003】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子は、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる2本の平板形状の振動腕部とによって構成されている。
これらの基部、振動腕部の表面には、素子搭載部材の圧電振動素子搭載パッドと電気的に接続を取る接続用電極、励振用電極、周波数調整用金属膜が形成されている。
この音叉型屈曲水晶振動素子は、接続用電極を圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤で固着することで片持ち固定されている。このときの振動腕部において、基部と反対側を向く端部が先端部となる。
また、この先端部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触すると、周波数が変動してしまうため、従来の圧電デバイスでは、前記素子搭載部材の凹部空間内底面の圧電振動素子搭載パッドにバンプが形成されている構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このバンプによって、音叉型屈曲水晶振動素子を支持すると共に梃子の原理が働き、音叉型屈曲水晶振動素子の振動腕部の先端部が凹部空間内底面に接触しないように浮かすことができる。
【0004】
また、圧電デバイス用シート基板は、複数の素子搭載部材がマトリクス状に配置された状態で設けられている。この素子搭載部材を個片化することで、複数の圧電デバイスを得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−289055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電デバイス用シート基板では、素子搭載部材を個片化する際に、素子搭載部材の角部に封止用導体パターンのバリが生じてしまうといった課題があった。また、前記バリが生じることで、その素子搭載部材を用いて圧電デバイスを製造する際には、前記バリが蓋部材を接合するためのシーム溶接用ローラ電極と接触し、短絡することで封止材が飛散し、圧電振動素子に付着することで発振周波数が変動してしまうといった課題があった。
【0007】
また、従来の圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法では、素子搭載部材を個片化する際に、枠部の内周縁部から外周縁部までの幅にバラツキが生じ、蓋部材が枠部主面と接合できない箇所を生じてしまう。そのため、第1の凹部空間を気密封止することができないといった課題があった。
【0008】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、素子搭載部材の枠部の内周縁部から外周縁部までの幅のバラツキを低減し、安定して気密封止することができる圧電デバイス用シート基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電デバイス用シート基板は、凹部空間を有する素子搭載部材となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部が設けられた圧電デバイス用シート基板であって、素子搭載部材の角部と、前記余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法は、凹部空間を有する複数の素子搭載部材となる部分と、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部を有し、隣り合う素子搭載部材の角部と、余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられ、前記第1の凹部の間に第1の凹部よりも小さい第2の凹部が設けられている圧電デバイス用シート基板を準備する圧電デバイス用シート基板準備工程と、隣接する第1の凹部及び第2の凹部の中心を通り、素子搭載部材の凹部空間の内壁と並行になるように素子搭載部材を個片化する素子搭載部材個片化工程と、素子搭載部材の凹部空間に設けられた圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、圧電振動素子を気密封止するように素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電デバイス用シート基板によれば、凹部空間を有する素子搭載部材となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部が設けられた圧電デバイス用シート基板であって、素子搭載部材の角部と、前記余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられていることによって、個片の素子搭載部材にした際に、角部に封止用導体パターンが設けられていないため、バリの発生を低減することができる。前記バリの発生を低減できることで、その素子搭載部材を用いて圧電デバイスを製造する際には、封止部材が飛散しないので、圧電振動素子の発振周波数の変動を低減することができる。
【0012】
本発明の圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法によれば、隣接する第1の凹部及び第2の凹部の中心点を通り、素子搭載部材の凹部空間の内壁と並行になるように素子搭載部材を個片化する素子搭載部材個片化工程と、を含むことで、素子搭載部材を個片化する際に、枠部の内周縁部から外周縁部までの幅のバラツキを低減することで、蓋部材が枠部主面と接合できない箇所ができることを低減することができる。よって、安定して、凹部空間を気密封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いて製造された圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いて製造された圧電デバイスの蓋部材を外した状態を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いて製造された圧電デバイスの素子搭載部材の状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法で圧電デバイス用シート基板準備工程を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法で素子搭載部材個片化工程を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法で圧電振動素子搭載工程を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法で蓋部材接合工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた音叉型屈曲水晶振動素子の場合について説明する。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0015】
(圧電デバイス用シート基板)
図1に示すように、圧電デバイス用シート基板200は、凹部空間を有する素子搭載部材となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部が設けられることで構成されている。
【0016】
(素子搭載部材)
図1に示すように、素子搭載部材210は、余剰部220と隣り合うようにして設けられている。
また、図2〜図3に示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、第1の枠部210bと、第2の枠部210cとで構成されている。
【0017】
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
前記素子搭載部材210の凹部空間K1を囲繞する第2の枠部210cの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン212が形成されている。
【0018】
凹部空間K1内で露出した第1の枠部210bの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
前記圧電振動素子搭載パッド211の主面には、それぞれに2個一対の第一のバンプBP1が設けられている。
素子搭載部材210の基板部210aの他方の主面の両端には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
【0019】
基板部210aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられており、所定の圧電振動素子搭載パッド211と外部接続用電極端子Gを接続している。
また、圧電振動素子搭載パッド211と封止用導体パターン212は、例えば、タングステン(W)等のメタライズにニッケル(Ni)メッキや金(Au)メッキ等を施すことにより設けられている。
【0020】
図3及び図4に示すように、第一のバンプBP1は、前記圧電振動素子搭載パッド211の主面の所定の範囲で設けられている。
第一のバンプBP1は、後述する音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111の位置になるように設けられている。つまり、第一のバンプBP1が基部111に接触し、第1のバンプBP1を支点にして後述する音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部を浮かせている。
第一のバンプBP1は、圧電振動素子搭載パッド211と封止用導体パターン212と同様に、例えば、タングステン(W)等のメタライズにニッケル(Ni)メッキや金(Au)メッキ等を施すことにより設けられている。
図3に示す第一のバンプBP1の縦幅は、例えば100〜200μmであり、第一のバンプBP1の横幅は、例えば200〜300μmである。
【0021】
また、図3及び図4に示すように、導電性接着剤DSは、圧電振動素子搭載パッド211の主面に、第一のバンプBP1にかからないように塗布されている。つまり、音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111の位置に導電性接着剤DSは塗布されている。
導電性接着剤DSと第一のバンプBP1との間隔は、例えば100〜200μmである。
このように圧電振動素子搭載パッド211に、導電性接着剤DSが塗布されるので、音叉型屈曲水晶振動素子100を導電性接着剤DS上に搭載しても、導電性接着剤DSの厚みを確保することができる。
導電性接着剤DSの厚みは、第一のバンプBP1の厚みと同じ厚みとなる。つまり、この際の導電性接着剤DSの厚みは、音叉型屈曲水晶振動素子100を搭載した状態で15μm〜30μmである。
【0022】
また、図1及び図4に示すように、前記素子搭載部材210の枠部210cの4つの角部には、円柱状の第1の凹部H1を切断した際に形成された
切り欠き部213が形成されている。
また、前記枠部210cの4つの角部に形成された切り欠き部213には、封止用導体パターン212が設けられていない。
【0023】
(余剰部)
図1に示すように、余剰部220は、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に設けられている。つまり、余剰部220は、前記素子搭載部材210と隣り合うようにして複数設けられている。
また、余剰部220の幅の長さW3(図5参照)は、例えば、50〜150μmであり、ダイシング法を用いた際のダイサー(図示せず)の厚みと同じ長さとなっている。つまり、余剰部220は、素子搭載部材210が個片化する際に削除されることになる。
【0024】
(第1の凹部)
図1に示すように、円柱状の第1の凹部H1は、隣り合う素子搭載部材210の角部と、前記余剰部220とを含めて設けられている。例えば、第1の凹部H1は、その縁が向かい合う4つの素子搭載部材210の角部にかかりつつ、円の中心点CP1が余剰部220上に位置するように設けられている。
【0025】
(第2の凹部)
図1に示すように、円柱状の第2の凹部H2は、2つの前記第1の凹部H1の間で、前記素子搭載部材210の長辺と前記余剰部220とを含めて設けられている。例えば、第2の凹部H2は、その縁が素子搭載部材210の長辺にかかりつつ、円の中心点CP2が余剰部220上に位置するように設けられている。
前記第2の凹部H2の直径は、第1の凹部H1の直径よりも小さくなっている。
【0026】
(音叉型屈曲水晶振動素子)
図2に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110と、その水晶片110の表面に設けられた励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a及び123bと、周波数調整用金属膜124a及び124bと、導配線パターン125、126とにより概略構成される。
【0027】
図2に示すように、水晶片110は、基部111と振動腕部112とからなり、振動腕部112が第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとから成る。
基部111は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸回りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。
第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。
このような水晶片110は、基部111と各振動腕部112とが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィー技術と化学エッチング技術により製造される。
【0028】
水晶片110aは、平板状となる基部111と、この基部111の一辺から同一方向に延出している2本一対の振動腕部112と、から構成されている。
なお、振動腕部112は、2本一対であることから、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとして説明する。
【0029】
また、図2に示すように、励振用電極122aは、第一の振動腕部112aの表裏主面に設けられている。また、励振用電極122bは、第一の振動腕部112aの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124aは、第一の振動腕部112aの表主面及び側面の先端部に設けられている。
また、接続用電極123aは、基部111の第一の振動腕部112a側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0030】
図2に示すように、励振用電極121aは、第二の振動腕部112bの表裏主面に設けられている。また、励振用電極121bは、第二の振動腕部112bの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124bは、第二の振動腕部112bの表主面及び両側面の先端部に設けられている。
接続用電極123bは、基部111の第二の振動腕部112b側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0031】
なお、音叉型屈曲水晶振動素子100は、周波数調整用金属膜124a及び124bを構成する金属の量を増減させることにより、その振動周波数値を所望する値に調整することができる。
【0032】
図2に示すように、励振用電極121a及び122bと、周波数調整用金属膜124aと接続用電極123aとは、水晶素板110表面に設けられた、例えば導配線パターン125により電気的に接続している。
接続用電極123aは、基部111に設けられている導配線パターン125により励振用電極121aと電気的に接続している。また、接続用電極123aは、励振用電極122bと電気的に接続している。
【0033】
また、図2に示すように、励振用電極121b及び122aと、周波数調整用金属膜124bと接続用電極123bとは、水晶片110表面に設けられた、例えば導配線パターン126により電気的に接続している。
接続用電極123bは、励振用電極121b及び周波数調整用金属膜124bと電気的に接続している。また、基部111の表主面に設けられた導配線パターン126は、励振用電極122a及び励振用電極121bと電気的に接続している。
【0034】
なお、各励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a、123bと、周波数調整用金属膜124a、124bと、導配線パターン125、126とは、例えば下地金属としてのCr層と、その下地金属の上に重ねて設けられたAu層とから構成されている。
【0035】
この音叉型屈曲水晶振動素子100を振動させる場合、接続用電極123a及び123bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第二の振動腕部112bの励振用電極121bは+(プラス)電位となり、励振用電極121aは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第一の振動腕部112aの励振用電極は、第二の振動腕部112bの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに伸縮現象が生じ、各振動腕部112に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0036】
蓋体230は、図2及び図3に示すように、素子搭載部材210の封止用導体パターン212上に第一の凹部空間K1の開口部を覆うように配置接合される。この蓋体230には、前記封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231が設けられている。
また、このような封止部材231は、前記封止用導体パターン212表面の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。
【0037】
また、前記素子搭載部材210上に配置される蓋体230は、従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に整形することによって製作される。蓋体230の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面に少なくとも封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231である銀ロウ層が形成される。銀ロウ層の厚みは、10μm〜40μmである。
【0038】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0039】
尚、前記素子搭載部材210は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、圧電振動素子搭載パッド211、封止用導体パターン212、外部接続用電極端子G等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔(図示せず)内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0040】
本発明の圧電デバイス用シート基板200によれば、凹部空間K1を有する素子搭載部材210となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材210となる部分の間に余剰部220を有し、素子搭載部材210の角部と、前記余剰部220とを含めて円柱状の第1の凹部H1が設けられていることによって、個片の素子搭載部材210にした際に、角部に封止用導体パターン212が設けられていないため、バリの発生を低減することができる。前記バリの発生を低減できることで、その素子搭載部材210を用いて圧電デバイス300を製造する際には、封止部材231が飛散しないので、圧電振動素子100の発振周波数の変動を低減することができる。
【0041】
次に本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法について、図5〜図8を用いて説明する。
【0042】
(圧電デバイス用シート基板準備工程)
図5に示すように、圧電デバイス用シート基板準備工程は、凹部空間K1を有する複数の素子搭載部材210となる部分と、隣り合う素子搭載部材210となる部分の間に余剰部220を有し、隣り合う素子搭載部材210の角部と、前記余剰部220とを含めて円柱状の第1の凹部H1が設けられ、前記第1の凹部H1の間に第2の凹部H2が設けられている圧電デバイス用シート基板を準備する工程である。
【0043】
図5に示すように、素子搭載部材210は、余剰部220と隣り合うようにして設けられている。
また、図2〜図3に示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、第1の枠部210bと、第2の枠部210cとで構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
前記素子搭載部材210の凹部空間K1を囲繞する第2の枠部210cの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン212が形成されている。
【0044】
また、前記素子搭載部材210の枠部210cの4つの角部には、素子搭載部材210を個片化する際に際に形成された切り欠き部213が形成されている。
また、前記枠部210cの4つの角部に形成された切り欠き部213には、封止用導体パターン212が設けられていない。
【0045】
図5に示すように、余剰部220は、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に設けられている。つまり、余剰部220は、前記素子搭載部材210と隣り合うようにして複数設けられている。
また、図5に示す余剰部220の幅の長さW3は、例えば、50〜150μmであり、ダイシング法を用いた際のダイサー(図示せず)の厚みと同じ長さとなっている。つまり、余剰部220は、素子搭載部材210が個片化する際に削除されることになる。
【0046】
図5に示すように、円柱状の第1の凹部H1は、隣り合う素子搭載部材210の角部と、前記余剰部220とを含めて設けられている。例えば、第1の凹部H1は、その縁が向かい合う4つの素子搭載部材210の角部にかかりつつ、円の中心点CP1が余剰部220上に位置するように設けられている。
また、図5に示す第1の凹部H1の直径W1は、例えば150μm〜300μmである。
【0047】
図5に示すように、円柱状の第2の凹部H2は、2つの前記第1の凹部H1の間で、前記素子搭載部材210の長辺と前記余剰部220とを含めて設けられている。例えば、第2の凹部H2は、その縁が素子搭載部材210の長辺にかかりつつ、円の中心点CP2が余剰部220上に位置するように設けられている。
また、前記第2の凹部H2の直径は、第1の凹部H1の直径よりも小さくなっている。図5に示す第2の凹部H2の直径W2は、例えば50μm〜150μmである。
【0048】
また、第1の凹部H1と第2の凹部H2の深さは、枠部210bの主面に設けられた封止用導体パターン212の厚みと同じ長さで設けられている。つまり、封止用導体パターンを円柱状に除去することで第1の凹部H1及び第2の凹部H2が形成されている。
【0049】
(素子搭載部材個片化工程)
図6に示すように、素子搭載部材個片化工程は、前記隣接する第1の凹部H1の中心点CP1及び第2の凹部H2の中心点CP2を通り、素子搭載部材210の凹部空間K1の内壁と平行になるように素子搭載部材210を個片化する工程である。
【0050】
素子搭載部材210の短辺方向は、記隣接する第1の凹部H1の中心点CP1と第1の凹部H1の中心点CP1を通り、素子搭載部材210の凹部空間K1の内壁と平行になるように切断される。
素子搭載部材210の長辺方向は、記隣接する第1の凹部H1の中心点CP1と第2の凹部H1の中心点CP2と第1の凹部H1の中心点CP1と通るようにして、素子搭載部材210の凹部空間K1の内壁と平行になるように切断される。
【0051】
また、図1及び図4に示すように、前記素子搭載部材210の枠部210cの4つの角部には、円柱状の第1の凹部H1を切断した際に形成された切り欠き部213が形成されている。
また、前記枠部210cの4つの角部に形成された切り欠き部213には、封止用導体パターン212が設けられていない。
【0052】
前記圧電デバイス用シート基板200の切断は、ダイサーを用いたダイシングやレーザによる切断によって行なわれ、前記圧電デバイス用シート基板200が個々の素子搭載部材210毎に分割される。これにより、複数個の素子搭載部材210が同時に得られる。
ダイサーとしては、例えば、ダイヤモンド砥粒等を電鋳により固定した円盤状の電鋳ブレードやダイヤモンド砥粒等を、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂を結合材として使用したレジンブレードがある。
レーザとしては、YAGレーザの3倍波で、波長が例えば、300〜400nmのものを用いる。
【0053】
(圧電振動素子搭載工程)
図7に示すように、圧電振動素子搭載工程は、前記素子搭載部材210の凹部空間K1内に設けられた圧電振動素子搭載パッド211に圧電振動素子100を搭載する工程である。
素子搭載部材210の凹部空間K1内の基板部110aには2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられており、前記圧電振動素子搭載パッド211上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSに音叉型屈曲水晶振動素子100の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極124(図3参照)を付着させる形態で圧電振動素子100を搭載する。
大気雰囲気中または窒素雰囲気中の硬化アニール炉の内部空間に前記素子搭載部材210を収容した状態で、前記導電性接着剤DSを加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッド211と前記音叉型屈曲水晶振動素子100とを導通固着する。
加熱硬化とは、導電性接着剤DSを加熱することにより、硬化させることをいう。
【0054】
炉本体は、内部空間を有し、前記素子搭載部材210を格納する役割を果たす。
加熱部は、前記内部空間を所定の温度に加熱する役割を果たす。加熱部は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられている。
供給部は、前記内部空間にガスを供給する役割を果たす。ガスは、例えば窒素等が用いられている。
制御部は、炉本体の内部空間の温度や酸素濃度、加熱部の昇温速度、供給部のガス供給量の制御を行うものである。
【0055】
(蓋部材接合工程)
図8に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子100を気密封止するように素子搭載部材210に蓋部材230を接合する工程である。
蓋部材230は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、音叉型屈曲水晶振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材230は、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中で、前記素子搭載部材210の第2の枠部210c上に載置され、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212と蓋部材230に設けられた封止部材231が溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極(図示せず)を蓋部材230に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材230の外側縁部に沿って動かすことで、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212に接合される。
【0056】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、隣接する第1の凹部H1及び第2の凹部H2の中心を通り、素子搭載部材210の凹部空間K1の内壁と並行になるように素子搭載部材210を個片化する素子搭載部材個片化工程と、を含むことで、素子搭載部材210を個片化する際に、枠部210b、210cの内周縁部から外周縁部までの幅のバラツキを低減することで、蓋部材230が第2の枠部210cの主面と接合できない箇所を低減することができる。よって、安定して圧電デバイスの凹部空間K1内を気密封止することができる。
【0057】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【符号の説明】
【0058】
210・・・素子搭載部材
210a・・・基板部
210b・・・第1の枠部
210b・・・第2の枠部
K1・・・凹部空間(第1の凹部空間)
211・・・圧電振動素子搭載パッド
G・・・外部接続用電極端子
100・・・圧電振動素子(音叉型屈曲水晶振動素子)
110・・・水晶素板
230・・・蓋部材
231・・・封止部材
220・・・余剰部
200・・・圧電デバイス用シート基板
H1・・・第1の凹部
H2・・・第2の凹部
DS・・・導電性接着剤
300・・・圧電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部空間を有する素子搭載部材となる部分が複数設けられ、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部が設けられた圧電デバイス用シート基板であって、
素子搭載部材の角部と、前記余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられていることを特徴とする圧電デバイス用シート基板。
【請求項2】
凹部空間を有する複数の素子搭載部材となる部分と、隣り合う素子搭載部材となる部分の間に余剰部を有し、隣り合う素子搭載部材の角部と、前記余剰部とを含めて円柱状の第1の凹部が設けられ、前記第1の凹部H1の間で、前記素子搭載部材の長辺と前記余剰部とを含めて円柱状の第2の凹部が設けられている圧電デバイス用シート基板を準備する圧電デバイス用シート基板準備工程と、
前記隣接する第1の凹部及び第2の凹部の中心を通り、素子搭載部材の凹部空間の内壁と並行になるように素子搭載部材を個片化する素子搭載部材個片化工程と、
前記素子搭載部材の凹部空間に設けられた圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、
前記圧電振動素子を気密封止するように前記素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とする圧電デバイス用シート基板を用いた圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−182564(P2012−182564A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42700(P2011−42700)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】