説明

圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの気密封止方法

【課題】 低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの気密封止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 水晶基板3と、当該水晶基板3の表裏面の各々に金属膜201,301,302,401を介して接合される透光性材料からなる第1のパッケージ基材2と第2のパッケージ基材4とで構成される水晶振動子1であって、前記第1と第2のパッケージ基材2,4と前記水晶基板3との接合領域は平面視で重なっていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスと、圧電振動デバイスの気密封止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動デバイスは、携帯電話などの移動体通信機等に広く用いられている。そして、表面実装型の水晶振動子は、低背化および省スペース化要求に対応した形態の水晶振動子であり、凹部を有する容器体(以下ベースと略称)と、前記凹部内に搭載される水晶板と、前記凹部を気密封止するための平板状の蓋体を主要構成部材として構成されている。
【0003】
近年の小型化に伴い、例えば水晶振動子の縦横寸法が、2.0×1.6mm程度まで小さくなってくると、個体での取り扱いが困難となってきている。そのため、複数の前記ベースがマトリクス状に連なった基板状のベース集合体と、多数個の水晶片が一体形成された水晶基板、複数の蓋体がマトリクス状に連なった蓋体集合体を用いて多数個の水晶振動子を一括的に製造する方法が知られている。このような製造方法において、例えば前記蓋体集合体を透光性材料で形成すると、レーザービームを当該蓋体集合体の内部を透過させて、蓋体とベースとの接合部を局所的に加熱して気密接合することができる。このような封止方法は、多数個での取り扱いではないが、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−326290号
【0005】
しかし、特許文献1においてベースはセラミックで形成されており、電子部品素子の小型化が進行するとセラミックパッケージ(セラミックベース)では限界が近づいてくる。また、低背化対応も困難になってくる。
【0006】
また、例えば凹部を有する透光性材料からなる蓋体の集合体2枚を、中心部よりも周囲の方が厚肉となるような水晶片(所謂、逆メサ形状)の集合体の表裏面に接合することによって水晶振動デバイスを形成する方法がある。このような構成の場合、前記2枚の蓋体集合体の前記凹部を前記水晶基板に対向するようにして位置決めし、当該蓋体集合体の外部からレーザー照射によって接合材(金属膜)を介して水晶基板と前記2枚の蓋体集合体とを接合する。このとき1つの水晶振動子の形成領域について図5を用いて説明すると、前記水晶基板の表裏面の接合領域(レーザービーム照射領域)は平面視で重なった状態となっている。そして、レーザービームを二方向(第1のパッケージ基材2の上方からと、第2のパッケージ基材4の下方からの二方向で、かつ、断面視で同一直線上)から接合材に向けて照射することで水晶振動子1の気密封止が行われる。まず上側の接合材201および301にレーザービームを照射して、上側の接合材201および301の一部を溶融させて第1のパッケージ基材2と水晶基板3を接合する。そして下側の接合材302および401にレーザービームを照射して第2のパッケージ基材4と水晶基板3を接合する。しかし、このときレーザービームが前記下側の接合材(302、401)を透過して上側の接合材(201、301)に到達して、第1のパッケージ基材と水晶基板との接合領域に欠損(空隙)を生じる恐れがある。このような問題は、上側の接合材のレーザービームによる接合後に、第1のパッケージ基材と水晶基板との接合体を上下反転させて水晶基板の未接合面への第2のパッケージ基材の接合を行う場合でも同様である。以上のことから、安定した気密封止を行うことが困難となってくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの気密封止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、圧電基板と、当該圧電基板の表裏面の各々に金属膜を介して接合される、透光性材料からなる第1と第2のパッケージ基材とで構成される圧電振動デバイスであって、前記第1と第2のパッケージ基材と、前記圧電基板との接合領域は平面視で重なっていないことを特徴とする圧電振動デバイスであるので、例えばレーザービームあるいは電子ビーム等のエネルギービームを、当該圧電振動デバイスの外部から前記第1および第2のパッケージ基材に照射して、前記金属膜を溶融させて気密封止を行う場合であっても安定した気密封止を行うことができる。すなわち、前記第1と第2のパッケージ基材と前記圧電基板(例えば水晶などの透光性材料)との接合領域(前記エネルギービームの照射領域)が平面視で重なっていないので、一方向からレーザービームを照射して気密封止を行う場合、レーザービームが圧電基板の内部を透過して反対側の金属膜の接合領域には到達しない。したがって前記2つのパッケージ基材と水晶基板との接合領域に損傷を与えることがなく、安定した気密封止を行うことができる。
【0009】
また、圧電基板に非透光性材料を用いた場合は一方向からではなく、二方向(第1のパッケージ基材の上方からと、第2のパッケージ基材の下方から)レーザービームを照射することも可能である。このような場合でもレーザービームによる金属膜の接合領域は平面視で重ならないように、圧電振動デバイスの表裏(上下)でずれた状態でレーザービームを照射することで、安定した気密封止を行うことができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、請求項2の発明によると、前記第1のパッケージ基材は、前記第2のパッケージ基材よりも小さな外形寸法で形成され、第1のパッケージ基材は平面視で第2のパッケージ基材に内包された状態であるので、信頼性の高い気密封止を行うことができる。例えば、レーザービームあるいは電子ビーム等のエネルギービームを、圧電デバイスの一方向から照射する場合であっても前記接合領域は平面視で重なっていないため、エネルギービームが第1あるいは第2のパッケージ基材および圧電基板の内部を透過して金属膜に到達しても、第1と第2のパッケージ基材の各々と圧電基板との接合に寄与する金属膜の接合領域へダメージを与えることがない。
【0011】
また、このような構成であれば、前記金属膜を第1と第2のパッケージ基材の周縁領域に形成すれば、前記接合領域が平面視で重ならない構造にすることが可能となり、接合領域も平面視で重ならない構造とすることができる。したがって、エネルギービームを用いて第1と第2のパッケージ基材と圧電基板との接合を一方向から行うのに好適である。前述のように二方向からエネルギービームを照射して接合を行う場合よりも簡便な封止工程を実現できる。あるいはまた、一つのパッケージ基材と圧電基板の片面との接合後に、もう一つのパッケージ基材と圧電基板の片面との接合のために表裏(上下)反転させる方法も可能であるが、このような方法に比べ、本発明の圧電振動デバイスであれば封止工程における作業工数を削減することができ、生産効率が向上する。
【0012】
上記構成によると、第1と第2のパッケージ基材は透光性材料で形成されているが、具体的には水晶またはガラスを用い、圧電基板に例えば水晶を用いることによって、レーザービームあるいは電子ビームを効率良く透過させることができ、より精度の高い気密封止を行うことができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、請求項3の発明によると、透光性の圧電基板と、当該圧電基板の表裏面の各々に金属膜を介して接合される透光性材料からなる第1と第2のパッケージ基材とで、構成される圧電振動デバイスの気密封止方法であって、前記第1のパッケージ基材は前記第2のパッケージ基材よりも小さな外形寸法で形成されているとともに、第1のパッケージ基材が平面視で第2のパッケージ基材に内包されるように、前記圧電基板の表裏面の各々に第1と第2のパッケージ基材を、前記金属膜を介して仮止め接合を行う工程と、前記仮止め接合された部分に対し、一方向からレーザービームあるいは電子ビームを照射することによって、前記第1と第2のパッケージ基材と圧電基板との本接合を行う工程と、からなる圧電振動デバイスの気密封止方法であるので、パッケージ基材と圧電基板との位置ずれを防止できるとともに、効率的で高精度の気密封止を実現できる。
【0014】
前記仮止め接合は、例えば超音波溶接法によって仮止め接合を行うことが可能であるが、治具を用いることによって行うことも可能である。つまり、前記圧電基板と略同一外形寸法で、第1のパッケージ基材の外形寸法より僅かに大きい寸法の開口部を有する治具を用意し、圧電基板の周縁と当該治具の周縁が略一致するようにして、前記治具を圧電基板上に載置した後、第1のパッケージ基材を前記開口部内に収納載置して仮固定する。この状態で第1のパッケージ基材にレーザービームや電子ビームを照射することによって、第1のパッケージ基材と圧電基板とを接合することができる。同様にして、圧電基板と第2のパッケージ基材とをレーザービームや電子ビームによって接合することができる。なお、このとき前記治具を透光性材料で形成しておけば、当該治具の上方から当該治具にレーザービームや電子ビームを照射して、当該治具の内部を透過させることによって、圧電基板の反対側の面にある金属膜へ到達させて接合を行うことも可能である。あるいはまた、前記治具を用いずに、レーザービームや電子ビームを用いてパッケージ基材と圧電基板との仮止め接合を行ってもよい。
【0015】
さらに、封止手段としてレーザービームあるいは電子ビーム等のエネルギービームを用いているので、高融点の金属膜に対しても対応可能となるとともに、例えばシーム溶接法などの加熱封止方法に比べて処理時間を短縮することができる。
【0016】
また、透光性材料からなる第1および圧電基板の内部を透過させて接合界面にある前記金属膜を溶融させることができるので、従来のような非透光性材料からなる部材を用いてレーザー等のエネルギービームによって接合界面にある金属膜を溶融させる場合に比べ、封止痕が滑らかで、封止痕を狭小化することができる。
【0017】
通常、抵抗加熱蒸着法等によって成膜された金属膜の表面状態は、微視的には凸凹状であり、“山”や“谷”が連続したような表面状態となっている。このような金属膜を互いに超音波溶接法によって接合する場合、接合界面は“山”の部分同士が点接触して接合したような状態となっており、“谷”の部分が空隙(ボイド)となり、気密性が不完全な状態となる。しかし、請求項2の発明によると、超音波溶接法による仮止め接合に、エネルギービームによって金属膜を溶融させるため、溶融金属が前記“谷”の部分を埋めるように流入することによって接合界面が平滑化され、平らな状態に近づけることができる。これによって気密不良を防止し、安定した気密封止を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、低背化に対応し、安定した気密封止を行うことができる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの気密封止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
−第1の実施形態−
以下、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、本発明による第1の実施形態について図1に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。なお、図1において、水晶振動子の底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子と水晶基板の表裏面に形成された電極とを電気的に接続する配線導体の記載は省略している。
【0020】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図1に示すように平面視矩形状の第1のパッケージ基材2と、中央部分が薄肉の断面視で両凹形状の水晶振動片3と、平面視矩形状の第2のパッケージ基材4とから構成されている。以下、水晶振動子1単体の構成要素について説明した後、水晶振動子1の製造方法について説明を行う。
【0021】
図1において前記水晶振動片3は平面視矩形状のATカット水晶板であり、中央領域が薄肉となった凹陥部31と、当該凹陥部の周囲には環状の厚肉部32が形成されている。前記凹陥部31は、水晶振動子片3を薄肉化する部分以外の領域にレジストを形成し、ウエットエッチングによって形成される。
【0022】
前記凹陥部31の表裏面には、水晶振動片3を駆動させるための一対の励振電極33が対向して形成されている。ここで、励振電極33は水晶振動片3の主面(表裏面)に下から順に、クロム,金,クロムの膜構成で蒸着法等によって成膜されている。なお、前記電極の膜構成はこれに限定されるものではなく、その他の膜構成であってもよい。そして、前記励振電極33は引き出し電極(図示せず)と接続されており、引き出し電極の一部は、水晶振動子片3を厚み方向に縦貫する導通路(図示せず)および第2のパッケージ基材4の内部の配線導体(図示せず)を介して最終的に第2のパッケージ基材4の下面に形成された外部接続端子(図示せず)に電気的に繋がっている。水晶振動子1は前記外部接続端子が各種デバイス内の基板上に形成される導体(ランドパターン)に半田等によって固定されて使用されることになる。なお、前記励振電極33と前記外部接続端子との電気的接続方法は一例であり、本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
水晶振動片3の厚肉部32の表裏面各々には、第2の金属膜301および第3の金属膜302が形成されており、前記金属膜(301と302)は同一材料となっている。第2および第3の金属膜には金が用いられており、水晶振動片3の厚肉部32の表裏面(周縁領域)各々の位置に、真空蒸着法によって周状に成膜されている。ここで、第2の金属膜301と第3の金属膜302とは平面視で重なった位置関係にある。しかしながら、レーザービームによる封止時(後述)の前記金属膜への照射位置は異なっている。つまり、エネルギービームによる接合領域は平面視で重ならない位置関係となっている。なお、ここでいう接合領域とはエネルギービームの金属膜への照射領域のことをいう。なお、第2の金属膜301と第3の金属膜302との位置関係は一例であり、前記位置関係は本実施形態に限定されるものではない。例えば、第2の金属膜301と第3の金属膜302とが平面視で一部分だけが重なっている位置関係であってもよい。
【0024】
図1において第1のパッケージ基材2は平面視矩形状の平板であり、透光性材料である水晶が使用されている。平面視において、図1に示すように第1のパッケージ基材2の外形寸法は水晶振動片3の外形寸法と略同一となっており、前記第1のパッケージ基材2の水晶振動片3との接合面側の周縁には、第1の金属膜201が周状に真空蒸着法によって成膜されている。ここで、前記第1の金属膜201は金からなり、形成幅は前記第2の金属膜301の形成幅と略同一となるように形成されている。
【0025】
第2のパッケージ基材4の材料には、第1のパッケージ基材2と同様に水晶が使用されている。第2のパッケージ基材4も平面視矩形状の平板であり、第2のパッケージ基材4の外形寸法は水晶振動片3の外形寸法と略同一となっている。そして第2のパッケージ基材4の水晶振動片3との接合面側の周縁には、第4の金属膜401が周状に形成されている。ここで、前記第4の金属膜401は、本実施形態では金が使用されている。前記第4の金属膜401の形成幅は前記第3の金属膜302の形成幅と略同一となっている。
【0026】
以上は水晶振動子1を構成する主要部材の説明であるが、前述の第1および第2のパッケージ基材2,4と、水晶振動片3は、それぞれウエハ状態から一括的に成形され、最終的に複数の水晶振動子が形成された後に個割り分割によって個片化される。このような方法により、水晶振動子1を構成する部材(第1および第2のパッケージ基材、水晶振動片)全てをウエハ状態で取り扱うことが可能となるため、従来のように個片状態で構成部材を取り扱う方法に比べて、取り扱いが非常に簡便になる。さらに従来のようなセラミックパッケージに比べて小型化を図ることができる。以下、一単位を構成する水晶振動子について製造方法を説明する。
【0027】
まず、第1のパッケージ基材2に形成された第1の金属膜201を、水晶振動片3の上面(第1のパッケージ基材2との接合面側)に形成されている第2の金属膜301上に、平面視で略一致するように位置決め載置される。なお、前記位置決め載置は画像認識手段によって適切な搭載位置が認識される。第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との仮止め接合を行う。このとき、仮止め接合の位置は金属膜201、301の形成領域の内周縁寄り(金属膜の幅方向の中央よりも内側)で行うことが好ましい。
【0028】
前記仮止め接合が行われた部分に対して、真空雰囲気中で上方(具体的には第1のパッケージ基材2よりも上部の位置)から、グリーンレーザーを用いてレーザービームを照射する。レーザービームは透光性材料である第1のパッケージ基材2の内部を透過して、前記仮止め接合部分の金属膜に到達して当該金属膜を溶融させる。これによって第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との本接合が完了する。
【0029】
次に、上記第1のパッケージ基材2と接合された水晶振動片3を上下反転させ、水晶振動片3の第2のパッケージ基材4との接合面側に形成されている第3の金属膜302上に、第2のパッケージ基材4に形成された第4の金属膜401を、平面視で略一致するように、位置決め載置する。前記位置決め載置も前記画像認識手段によって適切な搭載位置が認識されるようになっている。そして、前記位置決め載置後に、前述の第3の金属膜302と第4の金属膜401を介して、超音波溶接法による金の拡散接合によって、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との仮止め接合を行う。このとき、仮止め接合の位置は金属膜302、401の形成領域の外周縁寄り(金属膜の幅方向の中央よりも外側)で行うことが好ましい。
【0030】
前記第3の金属膜302と第4の金属膜401との仮止め接合が行われた部分に対して、真空雰囲気中にて、水晶振動片3の上方(具体的には第3の金属膜302と第4の金属膜401との仮止め接合部分に対して鉛直方向で上方から)から、グリーンレーザーを用いてレーザービームを照射する。レーザービームは透光性材料である水晶振動片3の内部を透過して、前記第3の金属膜302と第4の金属膜401との仮止め接合部分の金属膜に到達して、当該金属膜を溶融させる。これによって水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との本接合を行う。このように本発明による気密封止方法によると、第1と第2のパッケージ基材と水晶振動片との本接合時に接合領域は平面視で重なっていないため、レーザービームの照射時に一方の金属膜の接合領域に損傷を与えることがない。したがって、安定した気密封止を行うことができる。また、パッケージ基材が従来のようにセラミック等の絶縁性物質(非透光性材料)で形成されている場合に比べ、本発明では透光性材料で形成されているため、レーザービームのエネルギー損失を抑制できるとともに、仮止め接合部分が可視化されているので、容易にビーム照射後の接合状態を視認することができる。
【0031】
レーザービームの照射径は金属膜201、301、302、401の形成幅に比して小さいため、照射位置を選択することが可能である。なお、本実施形態では前記金属膜の形成幅は約150μmで、レーザービーム(後述)の照射径は80μm以下である。なお、本実施形態では本接合は真空雰囲気中にて行われているが、真空雰囲気に限定されるものではなく、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0032】
なお、超音波溶接法による仮止め接合部分の接合界面には、微視的には非常に小さな空隙(ボイド)が発生することがあるが、レーザービームを用いて仮止め接合部分の金属自体を溶融させることによって、前記空洞部分を埋めて平滑化を図ることができる。したがって、気密不良を防止でき、安定した気密封止を行うができる。
【0033】
本実施形態では第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との本接合を実施した後に、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との超音波溶接による仮止め接合および本接合を行っているが、この順序に限定されるものではない。例えば、先に水晶振動片3と第1および第2のパッケージ基材2,4との仮止め接合を行った後に、レーザービームによる本接合を行ってもよい。この場合、水晶振動片3と第2のパッケージ基材4との本接合を第1のパッケージ基材1と水晶振動片3との本接合よりも先に行ってもよい。あるいはまた、2台のレーザー照射装置を用いることによって、第1および第2パッケージ基材2,4と水晶振動片3との本接合を一括同時に行うことも可能である。この場合、気密封止工程に要する時間を短縮することができるため、水晶振動子1の生産効率の向上に寄与する。なお、本実施形態では本接合時にグリーンレーザーを用いているが、これに限定されるものではなく、所謂エネルギービームに対して本発明は適用可能である。例えばグリーンレーザーの代わりに電子ビームを利用して本接合を行ってもよい。また、本実施形態では金属膜材料として金を使用しているが、グリーンレーザー(の波長)は金に対する吸収率が良いため、封止効率を向上させることができる。なお、グリーンレーザーと金との組み合わせは一例であり、本組み合わせに限定されるものではなく、レーザー波長に応じて良好な吸収率が得られる金属材料を選定することが可能である。
【0034】
本実施形態では第1と第2のパッケージ基材および、水晶振動片のそれぞれに金属膜が形成された構成となっているが、水晶振動片には金属膜を形成せずに、第1と第2のパッケージ基材にだけ金属膜を形成した構成であってもよい。あるいはまた、水晶振動片にだけ金属膜を形成し、第1と第2のパッケージ基材には金属膜を形成しない構成であってもよい。
【0035】
また、本発明の実施形態では、2つのパッケージ基材の材料として水晶が使用されているが、水晶以外にガラスやサファイアを使用してもよい。
【0036】
−第2の実施形態−
本実施形態における第2の実施形態を、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、図2乃至図3を用いて説明する。図2は本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。図3は第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図であり、第1の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0037】
図2に示すように、水晶振動片3の厚肉部32の表裏面各々には、第2の金属膜301および第3の金属膜302が形成されており、前記金属膜(301と302)は金で構成されている。第2の金属膜301は水晶振動片3の上面側の周縁から内側に離間し、厚肉部32の上面の位置に真空蒸着法によって周状に成膜されている。第3の金属膜302は、水晶振動片3の下面側の周縁を含む領域に真空蒸着法によって周状に成膜されている。ここで、第2の金属膜301と第3の金属膜302とは平面視で重ならない位置関係にある。つまり金属膜の、エネルギービームによる接合領域は重ならない位置関係にある。
【0038】
このような構成の圧電振動デバイスを製造する場合、第1のパッケージ基材2に形成された第1の金属膜201を、水晶振動片3の上面(第1のパッケージ基材2との接合面側)に形成されている第2の金属膜301上に、平面視で略一致するように位置決め載置される。なお、前記位置決め載置は画像認識手段によって適切な搭載位置が認識される。そして、前記位置決め載置された状態において、第1のパッケージ基材2は水晶振動片3に平面視で内包された状態となっている。前記位置決め載置後に、前述の第1の金属膜201と第2の金属膜301を介して、超音波溶接法による金の拡散接合によって、第1のパッケージ基材2と水晶振動片3との仮止め接合を行う。
【0039】
このように本実施形態によると、前記仮止め接合された部分に対し、一方向からレーザービームを照射してパッケージ基材と水晶振動片との本接合を行うので、レーザービームの照射時に水晶振動片の表裏面の金属膜に欠損(空隙)を生じることがない。つまり、第1および第2のパッケージ基材と圧電基材との接合領域は平面視で重なっていないため、エネルギービームが第1のパッケージ基材および圧電基板の内部を透過して、第2のパッケージ基材側の金属膜に到達しても、第3および第4の金属膜の接合領域へは損傷を与えることがない。したがって、安定した気密封止を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態のように、第1〜第4の金属膜を、第1と第2のパッケージ基材の周縁領域に形成するとともに、前記第1のパッケージ基材が平面視で第2のパッケージ基材に内包された状態であれば、前記接合領域が平面視で重ならない構造にすることが可能となり、接合領域も平面視で重ならない構造とすることができる。したがって、エネルギービームを用いて第1と第2のパッケージ基材と圧電基板との接合を一方向から行うのに好適である。これにより、二方向からエネルギービームを照射して接合を行う場合よりも簡便な封止工程を実現できる。また、一つのパッケージ基材と圧電基板3の片面との接合後に、もう一つのパッケージ基材と圧電基板3の片面との接合のために表裏(上下)反転させる方法も可能であるが、このような方法に比べ、本発明の圧電振動デバイスであれば封止工程における作業工数を削減することができ、生産効率が向上する。
【0041】
なお、図3に示すように、水晶振動片の内側方向(凹部31)から外側に離れた位置、つまり金属膜201、301、302、401の周縁に近い位置(図3のLで示す周状のライン)にレーザービームを照射すると金属膜の溶融時のスプラッシュ(溶融金属の飛散)を抑制効果が期待できるため好適である。なお、本実施形態では本接合は真空雰囲気中にて行われているが、真空雰囲気に限定されるものではなく、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0042】
−第3の実施形態−
本実施形態における第2の実施形態を、圧電薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)を例に挙げて、図4を用いて説明する。図4は第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0043】
第1および第2のパッケージ基材は、ともに水晶からなる平面視矩形状の平板であり、第1のパッケージ基材2は水晶基板5よりも小さな外形寸法で形成されている。第2のパッケージ基材4は水晶基板5と略同一の外形寸法となっている。
【0044】
本実施形態では、図4に示すように水晶基板5の上面に、下部電極36と上部電極35に挟まれるように窒化アルミニウム(AlN)の圧電薄膜34が形成されている。なお前記窒化アルミニウムの代わりに酸化亜鉛(ZnO)を用いることも可能である。そして水晶基板5の下部電極36の下部は、エッチングによってキャビティ(空洞)が形成されている。そして前記上部電極35および下部電極36は、水晶基板5の内部を厚み方向に縦貫する導通路(図示せず)と、第2のパッケージ基材4の内部の配線導体(図示せず)を介して、最終的に第2のパッケージ基材4の下面側に形成された外部接続端子(図示せず)と電気的に繋がっている。なお、前記上部電極35および下部電極36は、(Mo)で構成されている。ここでモリブデン以外にアルミニウム(Al)やルテニウム(Ru)を用いてもよい。
【0045】
水晶基板5の表裏面には、第1の実施形態と同様に、第2の金属膜301と第3の金属膜302が真空蒸着法によって周状に形成されている。前記金属膜301と302は図4に示すように、平面視で一部が重なった状態となっている。すなわち、第2の金属膜301の外周縁部分と、第3の金属膜302の内周縁部分を含む領域が平面視で重なった状態となっている。ただし、第1のパッケージ基材2および第2のパッケージ基材4とのレーザービームによる接合領域(具体的には第1の金属膜201および第4の金属膜401の一部領域)に相当する部分は平面視で重なっていない状態となっている。このような金属膜の配置により、例えば水晶基板5および第2のパッケージ基材4の外形寸法を縮小することができるので、圧電振動デバイスの更なる小型化を図ることが可能となる。
【0046】
第1のパッケージ基材2と第2のパッケージ基材4の各々の、水晶基板5との接合面側にも第1の金属膜201と第4の金属膜401がそれぞれ真空蒸着法によって周状に形成されている。
【0047】
第1のパッケージ基材2は、平面視で水晶基板5に内包されるように、水晶基板5の表面側に前記第1の金属膜201と第2の金属膜301を介して超音波溶接による仮止め接合が行われる。第1のパッケージ基材2と水晶基板5との仮止め接合後、グリーンレーザーを前記仮止め接合部分に照射して第1のパッケージ基材2と水晶基板5との本接合を行う。同様にして、水晶基板5と第2のパッケージ基材4との仮止め接合と本接合を行う。このような構成によると、前記仮止め接合された部分に対し、一方向からレーザービームを照射することによって、パッケージ基材と水晶基板との本接合を行う気密封止方法であるので、パッケージ基材と水晶基板との位置ずれを防止することができる。
【0048】
また、レーザービームによって仮止め接合された部分の金属膜を溶融させることによって、接合界面における空隙(ボイド)に溶融金属を充填させることが可能になる。これにより、前記接合界面における空隙を抑制して平らな状態に近づけることができる。その結果、良好な気密性を有する圧電薄膜デバイスを提供することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態において封止に用いられる金属膜として、金が用いられているが、これに限定されるものではなく、金以外に、金−錫合金(Au−Sn合金)や、錫−銀合金(Sn−Ag合金)、金−ゲルマニウム(Au−Ge合金)など他の金属を使用することも可能である。例えば金属膜として金−錫合金を用いる場合、金属膜の融点が低下するため、レーザーの出力を低下させて調整することによって対応が可能である。
【0050】
また、本発明の実施形態では、平面視矩形状で平板状の2つのパッケージ基材が用いられているが、これに限定されるものではなく、2つのパッケージ基材によって水晶振動片に形成された励振電極を気密封止できれば、パッケージ基材の形状は任意に設定してもよい。例えば、凹状に形成された2つのパッケージ基材の凹部分が、水晶振動片に対向するようにして気密接合された形態であってもよい。あるいは、平板状のパッケージ基材と水晶振動片と、箱状体で凹状に形成されたパッケージ基材とで構成された形態であってもよい。
【0051】
本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、集積回路等の電子部品に水晶振動子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0052】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図5】従来の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図
【符号の説明】
【0055】
1 水晶振動子
2 第1のパッケージ基材
201 第1の金属膜
3 水晶振動片
31 凹陥部
32 厚肉部
33 励振電極
34 圧電薄膜
35 上部電極
36 下部電極
37 キャビティ
301 第2の金属膜
302 第3の金属膜
4 第2のパッケージ基材
401 第4の金属膜
5 水晶基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、当該圧電基板の表裏面の各々に金属膜を介して接合される、透光性材料からなる第1と第2のパッケージ基材とで構成される圧電振動デバイスであって、
前記第1と第2のパッケージ基材と、前記圧電基板との接合領域は平面視で重なっていないことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記第1のパッケージ基材は、前記第2のパッケージ基材よりも小さな外形寸法で形成され、第1のパッケージ基材は平面視で第2のパッケージ基材に内包された状態であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
透光性の圧電基板と、当該圧電基板の表裏面の各々に金属膜を介して接合される透光性材料からなる第1と第2のパッケージ基材とで、構成される圧電振動デバイスの気密封止方法であって、
前記第1のパッケージ基材は前記第2のパッケージ基材よりも小さな外形寸法で形成されているとともに、
第1のパッケージ基材が平面視で第2のパッケージ基材に内包されるように、前記圧電基板の表裏面の各々に第1と第2のパッケージ基材を、前記金属膜を介して仮止め接合を行う工程と、
前記仮止め接合された部分に対し、一方向からレーザービームあるいは電子ビームを照射することによって、前記第1と第2のパッケージ基材と圧電基板との本接合を行う工程と、
からなる圧電振動デバイスの気密封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−130672(P2009−130672A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304239(P2007−304239)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】