説明

圧電振動デバイスの製造方法および圧電振動デバイス

【課題】 低背化に対応し、確実な配線導体の接続を行うことができる圧電振動デバイスの製造方法および、圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 透光性材料からなる第1と第2の基材2,4が、水晶基板3の表裏主面に、金属膜Sを介して接合される水晶振動子1の製造方法であって、
第2の基材4の表主面と水晶基板3の主面の、前記金属膜Sが配される位置よりも内側に、金属導体72,34,45,46を各々形成する導体形成工程と、
前記金属導体の少なくとも一部が平面視で重なるように、前記基材2,4を水晶基板3の表裏主面に各々接合してパッケージを形成するパッケージ形成工程と、
パッケージ外部の一方向から、レーザービームを前記重なった金属導体に照射し、当該金属導体同士を接続して内部配線導体を形成する配線導体形成工程と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスの製造方法と、圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機等に広く用いられている圧電振動デバイスの一例として、水晶振動子がある。例えば表面実装型の水晶振動子は、凹部を有する絶縁性材料からなる容器体(以下ベースと略称)の内部に、水晶振動片を搭載し、前記凹部を平板状の蓋体で気密封止した形態が一般的である(例えば特許文献1を参照)。前記ベースはセラミック材料(層)を複数積層し、焼成によって一体成形されるが、焼成時のセラミックの収縮状態によっては積層ズレが発生することがある。
【0003】
【特許文献1】特開平2−295210号
【0004】
ところで、近年の圧電デバイスの超小型化に伴い、水晶振動子においても外形寸法(縦横寸法)が、例えば1.6×1.2mm程度よりも小さくなってくると、前述の積層ズレの影響が顕在化してくるため、セラミックベースでの対応が限界に近づいてくる。また、ベースの超薄型化が進行すると、セラミックベースの場合、気密性が低下する可能性がある。また、上記超小型化により、個体での取り扱いも困難になってきている。
【0005】
前述の問題点に対応するため、複数の前記ベースがマトリクス状に連なった基板状のベース集合体と、多数個の水晶振動片が一体形成された水晶基板と、複数の蓋体がマトリクス状に連なった蓋体集合体を用いて、多数個の水晶振動子を一括的に製造する方法が用いられている。このような製造方法において、積層ズレの影響を抑制するためにベース集合体や蓋体集合体にガラス等の脆性材料を用いることが考えられるが、ベース内部の配線導体と、水晶振動片の励振電極から引き出された導体との電気的接続がセラミックベースに比べて困難になってくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低背化に対応し、確実な配線導体の接続を行うことができる圧電振動デバイスの製造方法および、圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、透光性を有する2つの基材が、透光性の圧電基板の表裏主面に、金属膜を介して接合されてなる圧電振動デバイスの製造方法であって、
少なくとも1つの前記基材の圧電基板と対向する主面と、前記圧電基板の主面の、前記金属膜が配される位置よりも内側の位置に、金属導体を各々形成する導体形成工程と、前記金属導体の少なくとも一部が平面視で重なるように、前記基材を、前記圧電基板の表裏主面に金属膜を介して各々接合することによってパッケージを形成するパッケージ形成工程と、パッケージ外部の一方向から、レーザービームあるいは電子ビームを、前記基材および圧電基板の内部を透過するように、前記重なった金属導体に照射し、当該金属導体同士を接続して内部配線導体を形成する配線導体形成工程とを、有する圧電振動デバイスの製造方法となっている。
【0008】
このような製造方法によると、前述の重なり合った2つの金属導体の接続を行うのに、パッケージ全体を加熱させて前記金属導体を溶融させる必要が無くなる。つまり、パッケージの外部から、平面視で重なった前記2つの金属導体に対して、レーザービームあるいは電子ビームを照射する。このとき、前記パッケージ(基材および圧電基板)は透光性であるため、レーザービームあるいは電子ビームが、当該パッケージの内部を透過して前記2つの金属導体に到達し、当該金属導体を溶融させて接続(一体化)を行うことができる。したがって、レーザービームや電子ビーム等のエネルギービームの局所的な加熱によって内部配線導体を形成することが可能となる。このように、パッケージ全体に与える熱量を抑制することができるため、熱膨張による基材の反りを緩和することができる。また、局所的な加熱によって、基材に形成される各種導体(電極)に必要以上に熱が加わるのを防止することができる。したがって、雰囲気加熱(全体加熱)による金属溶融の場合に比べて、放出ガスの影響を抑制することができる。これらの点により、圧電振動デバイスの特性劣化を防止することができる。
【0009】
また、本発明の製造方法によれば、パッケージを構成する部材が透光性材料で形成されているため、セラミック等の絶縁性物質(非透光性材料)で形成されている場合に比べ、レーザービームや電子ビームのエネルギー損失を抑制できるとともに、重なった金属導体部分が可視化されているので、容易にビーム照射後の接合状態を視認することができる。パッケージの超薄型化が進行すると、セラミック材料の場合、気密性が低下する可能性があるが、パッケージを構成する部材に、水晶・ガラス等の材料を用いれば、セラミックパッケージと比べて、気密性の低下を抑制することができる。
【0010】
さらに、本発明の製造方法によれば、パッケージを構成する全ての部材に、例えば水晶を用いると、3つの構成部材(2つの基材と圧電基板)の接合に寄与する金属膜が形成された位置よりも、内側の位置に前記金属導体が形成されても、水晶がセラミック材料よりも熱伝導率が小さいため、レーザービームや電子ビームの照射による前記金属導体の溶融時の熱が、前記金属膜に伝わりにくい。これにより、パッケージの気密性の低下を防止することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、請求項2の発明によると、透光性を有する2つの基材が、透光性の圧電基板の表裏主面に、金属膜を介して接合されてなる圧電振動デバイスであって、少なくとも1つの前記基材の主面と、前記圧電基板の主面には、前記金属膜が配される位置よりも内側の位置に金属導体が各々形成されているとともに、前記2つの基材と前記圧電基板との接合によって、少なくとも一部が平面視で重なり合った金属導体が、パッケージ外部の一方向からのレーザービームあるいは電子ビームの照射によって一体化された内部配線導体を備えている圧電振動デバイスである。
【0012】
このような構成によれば、一対の基材と圧電基板が透光性材料で形成されているため、パッケージ外部からレーザービームや電子ビームなどのエネルギービームを、当該パッケージに対して照射して、パッケージの内部配線導体を効率的に形成することができる。具体的に、一対の基材に水晶またはガラスを用い、圧電基板に例えば水晶を用いることによって、レーザービームあるいは電子ビームを効率良く透過させることができ、より高精度の気密封止を行うことができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、請求項3の発明によると、前記2つの基材と、前記圧電基板との接合によって、少なくとも一部が平面視で重なり合った金属導体の間にロウ材が介在し、レーザービームあるいは電子ビームの照射によって、前記重なり合った金属導体と前記ロウ材とが一体化された内部配線導体を備えている圧電振動デバイスである。
【0014】
このような構成であれば、2つの金属導体間に離間部位を形成することができるとともに、例えば前記ロウ材を、前記金属導体と繋がっている貫通導体から離間した位置に配置することによって、レーザービームあるいは電子ビームを前記金属導体に照射した際に貫通導体へ伝導する熱量を抑制することができる。これによって、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、低背化に対応し、確実な配線導体の接続を行うことができる圧電振動デバイスの製造方法および、圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
−第1の実施形態−
以下、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、本発明による第1の実施形態について図1乃至6に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、図2は本発明の第1の実施形態を示す第1の基材の長辺方向の断面図、図3は本発明の第1の実施形態を示す水晶基板の長辺方向の断面図、図4は本発明の第1の実施形態を示す第1の基材の長辺方向の断面図、図5は本発明の第1の実施形態におけるパッケージ形成工程を示す断面図を、図6は本発明の第1の実施形態における配線導体形成工程を示す断面図を表している。
【0017】
まず、本実施形態で適用される水晶振動子1について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す,製造完了状態における水晶振動子1の長辺方向の断面図である。水晶振動子1の主要構成部材は、平面視矩形状の第1の基材2と、中央部分が薄肉化され,断面視で両凹形状(所謂、逆メサ構造)の水晶基板3と、平面視矩形状の第2の基材4である。第1の基材2と、第2の基材4は、各々が金属膜S(詳細は後述するが、第1と第2の基材および水晶基板の各々に金属膜が形成されており、図1では各金属膜が溶融して一体化された状態となっている)を介して水晶基板3と接合されており、水晶基板3に形成された励振電極61,62は、引出電極と貫通導体33および内部配線導体M、貫通導体43,44を経由して、第2の基材4の下面(底面)に形成された外部接続電極5と電気的に接続された状態となっている。外部接続端子5は、外部機器等と電気的に接続するための接続端子であり、水晶振動子1は外部機器等内部の基板上に形成される導体(ランドパターン)上に半田等によって接合される。以下、水晶振動子1の各構成部材について図2乃至4に基づいて説明した後、水晶振動子1の製造方法について説明する。
【0018】
図2において、第1の基材2は平面視矩形状の平板であり、透光性材料である水晶が使用されている。第1の基材2の水晶基板3との接合面側(裏主面22)の周縁には、周状に金属膜S1が形成されている。金属膜S1は、クロム(Cr)を下地層として、その上層に金(Au)が真空蒸着法によって成膜され、さらに上層に金−錫合金(AuSn)が、電解メッキ法によって成膜された構成となっている。本実施形態では、Cr層が0.1〜20nm、Au層が50〜1,000nm、AuSnメッキ層が200〜20,000nmとなっている。また、前記AuSnメッキ層を電解メッキ法で直接形成する方法以外に、Auメッキ層とSnメッキ層を別々に電解メッキ法で形成した後、加熱溶融させて所望比率のAuSn合金を形成することも可能である。なお、前記金属膜S1の膜構成は一例であり、本膜構成に限定されるものではなく、その他の膜構成に対しても本発明は適用可能である。さらに、第1の基材2の裏主面22の周縁および、後述する第2の基材4の表主面41の周縁に形成される金属膜の膜構成として、前記膜構成の最上層(金−錫合金)のさらに上層に金の薄膜(Auフラッシュメッキ層)を電解メッキ法によって形成してもよい。
【0019】
図3において、前記水晶基板3は平面視矩形状のATカット水晶板であり、当該基板の表裏中央領域に平面視矩形状の薄肉部311,321と、当該薄肉部を囲繞する環状の厚肉部312,322が形成されている。前記薄肉部311,321は、薄肉化する部位以外の領域にレジストを被覆し、ウエットエッチングによって形成されている。水晶基板3の外形寸法は、第1の基材2の外形寸法と略同一となっている。
【0020】
薄肉部311,321の表面の中央部分には、水晶基板3を駆動させるための一対の励振電極61,62が対向して形成されている。そして、前記励振電極61,62は引出電極71,72とそれぞれ接続されている。引出電極71は、励振電極61から延出され、薄肉部311上から厚肉部312上にかけて連続して形成されており(薄肉部311と厚肉部312との境界部分の壁面にも形成)、引出電極72は、励振電極62から延出され、薄肉部321上から厚肉部322上にかけて連続して形成されている(薄肉部321と厚肉部322との境界部分の壁面にも形成)。ここで、前記励振電極61,62および引出電極71,72は、水晶基板3の表裏主面に下から順に、クロム,金の膜構成で真空蒸着法によって成膜されている。なお、前記電極の膜構成はこれに限定されるものではなく、その他の膜構成であってもよい。
【0021】
水晶基板3の厚肉部312,322の内部には、厚み方向に縦貫する貫通導体33が形成されている。貫通導体33は、貫通孔がウエットエッチングによって形成され、内部に金属導体が充填されている。本実施形態では、前記貫通導体33に金−錫合金(AuSn)が使用されている。なお、金−錫合金以外に金ゲルマニウム合金(AuGe)を用いることも可能である。そして、貫通導体33の上端部分は引出電極71の終端部と接続した状態となっている。厚肉部322の表面には、接続電極34が形成されており、貫通導体33の下端部分と電気的に接続された状態となっている。ここで、接続電極34は、金属膜S3と近接した位置で、かつ接触しないように配置されている。同様に、引出電極72の終端部も金属膜S3と近接し、かつ接触しない位置に配置されている。
【0022】
水晶基板3の厚肉部312,322の外周部分には、金属膜S2、S3が周状に各々形成されている。ここで金属膜S2とS3は同一の材料であり、クロム(Cr)を下地層として、その上層に金(Au)が真空蒸着法によって成膜された構成となっている。具体的に本実施形態では、Cr層が0.1〜20nm、Au層が50〜1,000nmとなっている。なお、前記金属膜S2、S3の膜構成は一例であり、本膜構成に限定されるものではなく、その他の膜構成に対しても本発明は適用可能である。
【0023】
図4に示す第2の基材4は、第1の基材2と同様に、透光性材料である水晶が使用されている。第2の基材4も平面視矩形状の平板であり、第2の基材4の外形寸法は、第1の基材2および水晶基板3の外形寸法と略同一となっている。そして、第2の基材4の水晶基板3との接合面側(表主面41)の周縁には金属膜S4が周状に形成されている。第2の基材4の内部には、厚み方向に縦貫する貫通導体43,44が形成されており、前述の貫通導体33と同様に、貫通孔がウエットエッチングによって形成され、内部に金属導体が充填されている。本実施形態では、前述の貫通導体33と同一の材料が使用されている。そして、貫通導体43,44の上端部分、すなわち第2の基材4の上面には接続電極45,46が所定の位置に形成されており、貫通導体43,44と各々接続されている。第2の基材4の下面(裏主面42)には外部接続端子5が形成されており、貫通導体43,44の下端部分と接続されている。ここで、接続電極45,46は、金属膜S4,S4と近接した位置で、かつ接触しないように配置されている。なお、本実施形態において、第1の基材2、水晶基板3、第2の基材4の各々に形成された金属膜S1、S2、S3、S4の形成幅は略同一となっている。
【0024】
以上が、水晶振動子1を構成する主要部材の説明であるが、前述の第1および第2の基材2,4と、水晶基板3は、それぞれウエハ状態から一括的に成形され、最終的に複数の水晶振動子が形成された後に個割り分割によって個片化される。このような方法により、水晶振動子1を構成する部材(第1および第2の基材、水晶基板)全てをウエハ状態で取り扱うことが可能となるため、個片状態で構成部材を取り扱う方法に比べて、取り扱いが非常に簡便になる。さらに、従来のセラミックパッケージに比べて小型化を図ることができる。以下、一単位を構成する水晶振動子について製造方法を図5乃至6に基づいて説明する。
【0025】
まず、表裏面に励振電極が形成された水晶基板3および、外部接続端子が形成された第2の基材4に各種導体(貫通導体や接続電極等)を形成する(導体形成工程)。次に、水晶基板3の下面側(322)に形成された金属膜S3が、第2の基材4の表主面41(水晶基板3との接合面側)に形成されている金属膜S4上に、平面視で略一致するように、水晶基板3を第2の基材4の上に位置決め載置する。前記位置決め載置は、画像認識手段を用いることによって適切な搭載位置が認識される。
【0026】
図5に示すように、前記位置決め載置によって、引出電極72の終端部と、第2の基材4の接続電極45とは平面視で略一致かつ、当接した状態となっている。同時に、水晶基板3の接続電極34の一部と、第2の基材4の接続電極46も平面視で略一致した状態となっている。なお、本実施形態では、引出電極72の終端部と接続電極45の総厚(同じく、接続電極34と接続電極46の総厚)は、S3とS4の総厚と略同一となっている。
【0027】
水晶基板3を、第2の基材4上に位置決め載置した後、水晶基板3と第2の基材4との超音波印加による金属拡散接合(FCB:Flip Chip Bonding)を行う(仮止め接合)。このとき、仮止め接合の位置は金属膜S3,S4の形成領域の外周縁寄り(金属膜の幅方向の中央よりも外側)で行うことが好ましい。これは後述するパッケージ形成工程において当接した2つの金属膜の溶融一体化に、レーザービームを用いる場合に好適である。
【0028】
次に、第1の基材2の裏主面22(水晶基板3との接合面側)に金属膜S1が、水晶基板3の表主面(312)に形成されている金属膜S2上に、平面視で略一致するように、第1の基材2を水晶基板3の上に位置決め載置する。前記位置決め載置は、画像認識手段を用いて行われる。
【0029】
第1の基材2を、水晶基板3上に位置決め載置した後、水晶基板3と第2の基材4との超音波印加による金属拡散接合を行う(仮止め接合)。このとき、仮止め接合の位置は金属膜S1,S2の形成領域の内周縁寄り(金属膜の幅方向の中央よりも内側)で行うことが好ましい。
【0030】
そして、図示していないが、真空雰囲気中で第1の基材2の上方から、レーザービーム(本実施形態ではグリーンレーザー)を第1の基材2(具体的にはS1とS2との仮止め接合部位)に向けて照射する。レーザービームは透光性材料である第1の基材2の内部を透過して、前記仮止め接合部分の金属膜(S1、S2)に到達して当該金属膜を溶融させる。これによって第1の基材2と水晶基板3との本接合が行われる。また、同様にして真空雰囲気中で第1の基材2の上方から、レーザービーム(グリーンレーザー)を第1の基材2(具体的にはS3とS4との仮止め接合部位)に向けて照射する。これにより、水晶基板3と第2の基材4との本接合が行われる。このように、第1および第2の基材が水晶基板と接合されることによってパッケージが形成される(パッケージ形成工程)。
【0031】
なお、上記レーザービームの,当接した2つの金属膜に対する照射位置は、接合対象によって異なった位置となっている。つまり、第1の基材2と水晶基板3との接合に対しては金属膜S1,S2の形成領域の内周縁寄りの位置であり、水晶基板3と第2の基材4との接合に対しては金属膜S3,S4の形成領域の外周縁寄りとなっている。このようにレーザービームの照射位置が異なることで、一方向からのレーザービームの照射によって各部材の本接合を行うことができる。これは第2の基材4の底面に形成された外部接続端子5がパッケージの片面に存在するが故に、パッケージ底面側からレーザービームを照射するのが困難な場合に特に有効となる。
【0032】
本実施形態では、レーザービームの照射位置を第1の基材2と水晶基板3との本接合に対しては、金属膜S1,S2の形成領域の内周縁寄りの位置に、水晶基板3と第2の基材4との本接合に対しては、金属膜S3,S4の形成領域の外周縁寄りとしているが、逆の位置関係であってもよい。また、本実施形態では本接合にグリーンレーザーを用いているが、これに限定されるものではなく、所謂エネルギービームに対して本発明は適用可能である。例えば、グリーンレーザーの代わりに電子ビームを利用して本接合を行ってもよい。また、本実施形態では金属膜材料として金および金−錫合金を使用しているが、これはグリーンレーザー(の波長)が金に対する吸収率が良いことから選定されている。したがって、グリーンレーザーと金との組み合わせは一例に過ぎず、レーザーの波長に応じて良好な吸収率が得られる金属材料を選定することが可能である。
【0033】
また、第1および第2の基材と水晶基板との接合手段はレーザービームの照射に限定されるものではなく、雰囲気加熱による金属膜の溶融であってもよい。さらに、本実施形態では本接合は真空雰囲気中にて行われているが、真空雰囲気以外に例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0034】
接続電極45,46は、水晶基板3と第2の基材4とを、位置決め載置したときに形成される内部空間に露出した状態となる。つまり、前記接合によって形成される内部空間に、貫通導体(43,44)と接続電極(45,46)で構成される金属導体の一部分が現れることになる。
【0035】
次に、図6に示すように、水晶基板3と第2の基材4との接合によって当接状態となった金属導体,すなわち、引出電極72の終端部と接続電極45、接続電極34の一部と接続電極46の、それぞれに対し、第1の基材2の上方(表主面21の上方)からレーザービームを照射する。このようにレーザービームを照射することにより、当接した2つの導体が溶融して一体化され、内部配線導体が形成される(配線導体形成工程)。
【0036】
本発明の製造方法によると、重なり合った前記2つの接続電極の接続を行うのに、パッケージ全体を加熱させて前記金属導体を溶融させる必要が無くなる。したがって、レーザービームや電子ビーム等のエネルギービームの局所的な加熱によって内部配線導体を形成することが可能となる。このように、パッケージ全体に与える熱量を抑制することができるため、熱膨張による基材の反りを緩和することができる。また、局所的な加熱によって、基材に形成される各種導体(電極)に必要以上に熱が加わるのを防止することができる。したがって、雰囲気加熱(全体加熱)による金属溶融の場合に比べて、放出ガスの影響を抑制することができる。これらの点により、圧電振動デバイスの特性劣化を防止することができる。
【0037】
さらに本発明の製造方法によれば、パッケージを構成する部材が透光性材料で形成されているため、セラミック等の絶縁性物質(非透光性材料)で形成されている場合に比べ、前記エネルギービームのエネルギー損失を抑制できるとともに、重なった金属導体部分が可視化されているので、容易にビーム照射後の接合状態を視認することができる。なお、パッケージを構成する部材に、水晶などの結晶性を有する材料を用いれば圧電デバイスの薄型化(低背化)が進行しても良好な気密性を確保できる。
【0038】
さらに、本発明の製造方法によれば、パッケージを構成する全ての部材に、例えば水晶を用いると、3つの構成部材(2つの基材と圧電基板)の接合に寄与する金属膜が形成された位置よりも、内側の位置に前記金属導体が形成されても、水晶がセラミック材料よりも熱伝導率が小さいため、レーザービームや電子ビームの照射による前記金属導体の溶融時の熱が、前記金属膜に伝わりにくい。これにより、パッケージの気密性の低下を防止することができる。
【0039】
−第2の実施形態−
本発明における第2の実施形態を、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、図7を用いて説明する。図7は本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、第1の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0040】
以下、本実施形態と第1の実施形態との相違点について説明する。本実施形態では、図7に示すように、水晶基板3の引出電極72の終端部と、第2の基材4の表主面(上面)41に形成された接続電極45との間と、接続電極34と接続電極46との間に、金属からなるロウ材7が介在した状態となっている。引出電極72の終端部および接続電極34の各々の厚みおよび、接続電極34と接続電極46の各々の厚みは略同一であり、第1の実施形態における当該部位の厚みよりも薄く形成されている。つまり、金属膜S(S3とS4の総厚)の厚みに比べて、引出電極72の終端部と接続電極34の総厚および、接続電極34と接続電極46の総厚が小さくなるようになっている。そして、実施形態本実施形態では、前記ロウ材7として金−錫合金が用いられている。なお、ロウ材7の材料は金−錫合金に限定されるものではなく、他の金属ロウ材を用いてもよい。
【0041】
ロウ材7を、引出電極72の終端部と接続電極34の間と、接続電極34の一部と接続電極46の間に配した後(このときロウ材の上下部分は金属導体(引出電極の終端部あるいは接続電極)と当接した状態となっている)、図7に示すように第1の実施形態と同様の方法で、レーザービームを第1の基材2の上方(表主面21の上方)から照射する。このようにレーザービームを照射することで、ロウ材7も前記金属導体(引出電極の終端部あるいは接続電極)とともに溶融し、一体化されることで内部配線導体が形成される。
【0042】
このような構成であれば、2つの金属導体間に離間部位を形成することができるとともに、例えばロウ材を、前記金属導体と繋がっている貫通導体から離間した位置に配置することによって、レーザービームあるいは電子ビームを前記金属導体に照射した際に貫通導体へ伝導する熱量を抑制することができる。これによって、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0043】
−第3の実施形態−
本発明における第3の実施形態を、圧電基板として水晶基板を用いた水晶振動子を例に挙げて、図8を用いて説明する。図8は本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図であり、第1の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0044】
以下、本実施形態と第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態で適用される水晶振動子1は図8に示すように、平面視矩形状の3つの部材各々に、互いに嵌合する凹部(薄肉部)および凸部(厚肉部)が形成されている。水晶基板3と第2の基材4とが接合されると、同時に引出電極72の終端部と接続電極34および、接続電極34と接続電極46が各々当接した状態となり、これらの当接した金属導体に対して、第1の基材2の上方(表主面21の上方)からレーザービームを照射して、当該金属導体を溶融一体化させ、内部配線導体を形成する。
【0045】
このような構造であれば、第1と第2の基材2,4と、水晶基板3とが、互いに嵌合される薄肉部あるいは厚肉部を有しているため、図8に示すように接続電極34、46に、水晶振動子1の外部からレーザービームを照射して当該接続電極を溶融一体化させる際に、スプラッシュ(溶融金属の飛散)が発生したとしても、水晶振動子1の特性劣化(例えば等価直列抵抗値の悪化等)を抑制することができる。つまり、前記嵌合によって、第2の基材4の厚肉部が接続電極34、46に近接して、スプラッシュに対して“障壁”となり、溶融金属物質の,パッケージ内部空間にある励振電極62への付着を抑制することができるためである。
【0046】
さらに、本実施形態の構成によれば、前記嵌合によって、第2の基材4の厚肉部が接続電極34、46に近接するため、水晶振動子1の外部からレーザービームを照射して当該接続電極を溶融一体化させる際に、金属導体およびロウ材から発生する放出ガスの励振電極等への付着を防止する“障壁”となる。これにより、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0047】
本発明の実施形態では、第1と第2の基材および、水晶基板の各々の外周部に金属膜が形成された構成となっているが、水晶基板には金属膜を形成せずに、第1と第2の基材にだけ金属膜を形成した構成であってもよい。あるいはまた、水晶基板にだけ金属膜を形成し、第1と第2の基材には金属膜を形成しない構成であってもよい。
【0048】
また、本発明の実施形態では、第1と第2の基材の材料として水晶が使用されているが、水晶以外にガラスやサファイアを使用してもよい。また、圧電基板は水晶に限定されるものではなく、他の圧電材料を用いてもよい。
【0049】
本発明の実施形態では水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、集積回路等の電子部品に水晶振動子を組み込んだ水晶発振器など、電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0050】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す第1の基材の長辺方向の断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す水晶基板の長辺方向の断図。
【図4】本発明の第1の実施形態を示す第1の基材の長辺方向の断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるパッケージ形成工程を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態における配線導体形成工程を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図。
【符号の説明】
【0053】
1 水晶振動子
2 第1の基材
3 水晶基板
4 第2の基材
5 外部接続端子
7 ロウ材
M 内部配線導体
S、S1、S2、S3、S4 金属膜
21 表主面(第1の基材)
22 裏主面(第1の基材)
311、321 薄肉部
312、322 厚肉部
34、45、46 接続電極
41 表主面(第2の基材)
42 裏主面(第2の基材)
33、43、44 貫通導体
61、62 励振電極
71、72 引出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する2つの基材が、透光性の圧電基板の表裏主面に、金属膜を介して接合されてなる圧電振動デバイスの製造方法であって、
少なくとも1つの前記基材の圧電基板と対向する主面と、前記圧電基板の主面の、
前記金属膜が配される位置よりも内側の位置に、金属導体を各々形成する導体形成工程と、
前記金属導体の少なくとも一部が平面視で重なるように、前記基材を、前記圧電基板の表裏主面に金属膜を介して各々接合することによってパッケージを形成するパッケージ形成工程と、
パッケージ外部の一方向から、レーザービームあるいは電子ビームを、前記基材および圧電基板の内部を透過するように、前記重なった金属導体に照射し、当該金属導体同士を接続して内部配線導体を形成する配線導体形成工程とを、
有する圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
透光性を有する2つの基材が、透光性の圧電基板の表裏主面に、金属膜を介して接合されてなる圧電振動デバイスであって、
少なくとも1つの前記基材の主面と、前記圧電基板の主面には、前記金属膜が配される位置よりも内側の位置に金属導体が各々形成されているとともに、
前記2つの基材と前記圧電基板との接合によって、少なくとも一部が平面視で重なり合った金属導体が、パッケージ外部の一方向からのレーザービームあるいは電子ビームの照射によって一体化された内部配線導体を備えていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記2つの基材と、前記圧電基板との接合によって、少なくとも一部が平面視で重なり合った金属導体の間にロウ材が介在し、レーザービームあるいは電子ビームの照射によって、前記重なり合った金属導体と前記ロウ材とが一体化された内部配線導体を備えていることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−260845(P2009−260845A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109547(P2008−109547)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】