説明

圧電振動デバイス

【課題】 気密封止後のべース内部応力を緩和し、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 上部に開口部7と、当該開口部7を囲繞する環状の堤部31と、当該堤部31の上面に形成された金属部31aとを有する絶縁材料から成るベース3の内底部に、水晶振動板4を搭載した後、前記金属部31aと、平面視矩形状の金属性蓋体2とを接合することによって前記開口部7を気密封止する圧電振動デバイスにおいて、前記蓋体2は少なくとも長辺側の中央部が上凸状に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動デバイスは、上部に開口部を有する断面視凹状でセラミック積層体から成る容器体(ベース)を用いて、前記ベースの内底面上に形成された一対の搭載パッド上に、表裏面に一対の励振電極が対向して形成された水晶振動板を、導電性接合材を介して接合することによって前記励振電極を電気的に接続し、前記開口部を平面視矩形状の金属から成る蓋体を用いて、例えばシーム溶接によって気密封止することによって得られる。
【0003】
前記ベースの下面(底面)には外部接続電極が形成されているとともに、当該ベースの内部には前記搭載パッドと前記外部接続電極とを電気的に接続する配線導体が形成されている。そして、前記ベースは前記開口部を囲繞する環状の堤部を具備しており、当該堤部上面には金属部が周状に形成されている。
【0004】
前記蓋体の前記ベースとの接合面側の全面にはロウ材が形成されており、シーム溶接による前記気密封止の場合、前記金属部上に、前記蓋体を略一致するように載置した後、一対のシームローラーを前記蓋体の対向する二辺の一端側の周辺上に当接させ、前記蓋体と前記金属部とに大電流を印加させつつ、他端側に向って圧接転動させることによって前記ロウ材と前記金属部とが接合される。
【0005】
前記シーム溶接時は、金属性蓋体が高温状態になるため、当該蓋体に接触しているベースの温度も熱伝導により上昇する。しかしながら、前記蓋体と前記ベースとでは熱膨張率(線膨張係数)が異なるので(蓋体>べース)、前記シーム溶接が完了して常温まで温度が低下する際に、蓋体とべースが収縮する量に差異が生じるために引張応力が発生する。つまり、蓋体の方がベースよりも収縮する量が大きいため、前記開口部が収縮する方向に引張応力が発生する。当該応力によって、図8に示すようにベース全体が上方へ湾曲し、ベース3の底面および側面などの割れやクラック、気密不良、配線導体の切断、水晶振動板4の保持部分へ応力増大による発振周波数のずれなどの不具合が発生する。
【0006】
前記のような不具合は、ベースが小型になるほどセラミックの厚みも薄くなるため、より顕在化してくる。また、ベースに割れやクラックが発生しない場合であっても、ベース内部応力が大きい状態にあると圧電振動デバイスの諸特性に悪影響を与える。
【0007】
上記のような問題を解決するために、ベース下方から、ヒーター等の加熱手段を用いて加熱することによって、当該ベースの上部と下部との温度差を無くすようにして封止後のベースの反りを防止するようにした製造方法が、特許文献1に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−283675号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の製造方法は、別途加熱手段および加熱手段の温度管理が必要となるため、製造コストの増大が懸念される。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、気密封止後のべース内部応力を緩和し、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる圧電振動デバイスの蓋体は、上部に開口部と当該開口部を囲繞する環状の堤部と、前記堤部上面に形成された金属部とを有するベースの内底部に電子部品素子を搭載した後、前記開口部を気密封止する平面視矩形状の金属性蓋体であって、前記気密封止は前記金属部と前記蓋体とが接合されることによって行われ、前記蓋体は少なくとも長辺側の中央部が上凸状に湾曲していることが特徴となっている。
【0012】
上記構造によると、気密封止時の蓋体の温度上昇による熱膨張によって、前記蓋体の湾曲度合が緩和されて前記ベースと接合されるとともに、気密封止後の温度低下によって、前記蓋体が前記ベースより多く収縮しても、始めから蓋体が湾曲して収縮マージンが確保されているため、ベース上方への引張応力を軽減することができる。よって、ベース下部(底面)の割れおよびクラックの発生を抑制することができる。
【0013】
また、前記蓋体は長辺方向だけでなく、短辺方向においても中央部が上凸状に湾曲していてもよい。この場合、前記気密封止後の当該圧電振動デバイスの温度低下による収縮応力を2方向で緩和できるため、より効果的である。
【0014】
また、請求項2によると、前記気密封止後には前記蓋体の長辺方向に略平面状態で前記ベースと接合されている蓋体を用いた圧電振動デバイスであるので、気密封止前の状態では従来の圧電振動デバイスよりも全高が高くなっても気密封止後には、従来の蓋体と略同一構造となり、圧電振動デバイスの低背化を妨げることがない。
【0015】
さらに、請求項3の発明によると、前記蓋体と前記金属部との接合が、シーム溶接によって行われることを特徴とする圧電振動デバイスであり、前記構造の蓋体によって、シーム溶接後に常温まで温度低下した際に、前記ベースにかかる応力を軽減することができるので、ベースの割れおよびクラック発生を抑制することができる。
【0016】
さらに、請求項4の発明によると、前記蓋体と前記金属部との接合が、雰囲気加熱による金属溶融によって行われることを特徴とする圧電振動デバイスであり、これにより、加熱炉などの加熱手段を用いることで容易に気密封止を行う事ができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、気密封止後のべース内部応力を緩和し、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
−第1の実施形態−
以下、本発明による第1の実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は圧電振動デバイスとして、表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0019】
図1は第1の実施形態を示す表面実装型の水晶振動子の分解斜視図を、図2は図1のA−A線における断面図に蓋体が載置された状態を、図3はシーム溶接前の状態を示す水晶振動子の上面図を、図4はシーム溶接前における水晶振動子の長辺方向の断面図を、図5はシーム溶接後の状態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。なお、図1乃至図5において、水晶振動片の表裏面に対向して形成されている一対の励振電極の記載を省略しているとともに、ベース底面に形成された外部接続電極の記載は省略している。また、図1乃至図2および図4において蓋体は、湾曲を分かりやすく表現するために湾曲度合を強調して図示している。
【0020】
本発明で適用される表面実装型の水晶振動子1は、図1に示すように上部が開口した断面視凹状のベース3と、当該ベース3の内底面上に収納される水晶振動板4と、前記ベース3の内部を気密封止する蓋体2とから構成されている。
【0021】
図1においてベース3は、平面視矩形状でアルミナ等のセラミックを主体として内外部に配線導体(図示せず)が形成された断面視凹状で、上部が開口した容器体である。前記ベース3は水晶振動板4の収納部7とその周囲に形成された提部31を有する構造となっており、当該堤部31の上面は平坦な状態になっている。
【0022】
前記堤部31の上面には、下から順にタングステンメタライズ層、ニッケルメッキ層、金メッキ層の3層から成る金属部31aが周状に形成されている。
【0023】
さらに、前記ベース3の内底部には、一対の搭載パッド5が形成されており、これらの搭載パッドは、前記配線導体を介して、ベース外部の底面に形成された外部接続電極と電気的に繋がっている。前記一対の搭載パッド5は例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層が形成されている。本実施形態では搭載パッド5はベース内底部上の一短辺部側に並列して形成されている。
【0024】
なお、前記ベース3の4角の外周上下部にキャスタレーションを形成し、そのうち一部のキャスタレーションを下方に形成された配線導体と、前記ベース下面(裏面)に形成された外部接続電極と接続して、電気的に繋がった状態となるようにしてもよい。
【0025】
図1において、水晶振動板4は直方体形状のATカット水晶振動板であり、励振電極411(裏面側の励振電極は図示せず)が当該水晶振動板4の表裏面に対向して蒸着等の手法によって成膜されている。そして水晶振動板4の一短辺端部の表裏面には、前記励振電極411から延出された引き出し電極412(裏面側の引き出し電極は図示せず)と接続した一対のパッド電極413も形成されている。そして前記一対のパッド電極413と、前記一対の搭載パッド5とが導電性接合材6を介して電気的に接続される。
【0026】
図1において、前記蓋体2はコバールを基体とする平面視矩形状で金属性の蓋体であり、当該蓋体2の表裏面にはニッケルメッキ層(図示せず)が形成されている。また蓋体2の裏面側(前記金属部31aとの接合面側)には前記ニッケルメッキ層の下に金属から成るロウ材8が全面に亘って形成されている。なお、本実施形態では、ロウ材として銀ロウが使用されている。
【0027】
さらに、図1において蓋体2は長辺方向が上凸状に、連続的で緩やかに湾曲した曲面形状となっている。前記曲面形状は、予め蓋体2とベース3の熱膨張率等の条件を考慮して設定され、所定曲率に成形加工された金型を用いてプレス成型によって形成される。本実施形態の場合、蓋体の基体材料としてコバールを、ベース材料にアルミナセラミックを、ロウ材として銀ロウを選定し、蓋体の長辺寸法が2.0mmの場合は、当該蓋体の長辺中央部とベース上面との空隙の大きさ、すなわち、蓋体長辺の弧の頂点からベース上面(水平面)に降ろした垂線の長さは、約0.05〜0.10mmとなる。このとき、前記曲面の曲率半径は、平板状態の蓋体長辺寸法の約2〜4倍程度となる。前記曲率半径は前記範囲が好ましいが、下限(平板状態の蓋体長辺寸法の約2倍)よりも若干下回る程度であっても、シーム溶接後のベース内部応力を緩和することができる。なお、前記空隙の大きさおよび曲率半径は一例であり、蓋体、ベース、ロウ材の材料選定および蓋体の長辺寸法の設定によって任意に変化する。
【0028】
以上が本実施形態の水晶振動子の主たる構成部材の説明である。次に、当該水晶振動子の製造方法について図2乃至図5を用いて説明する。
【0029】
まず、前記一対の搭載パッド5の上部に、ディスペンサ等によって導電性接合材6を適量塗布した後、水晶振動板保持ツール(図示せず)によって吸引保持された水晶振動板4を搭載し、所定の温度プロファイルにて前記導電性接合材6を硬化させ、水晶振動板4と搭載パッド5とを電気的機械的に接続する。なお、前記導電性接合材6は例えばペースト状のシリコーン系樹脂導電接合材が使用されるが、これに限定されるものではなく、エポキシ系樹脂導電接合材等を使用してもよい。
【0030】
水晶振動板4を導電性接合材6を介して前記搭載パッド5に接合した後、前記蓋体2を搭載ツール(図示せず)を使用して、ベース3の堤部上面に形成された金属部31aの上に載置する。このとき、前記金属部31aの上に、前記蓋体2の裏面に形成されたロウ材8が略一致するようにして蓋体2が載置される。(図2参照)
【0031】
前記蓋体2のベース上面への載置後に、一対のシームローラーRを蓋体2の対向する二短辺各々の略中央部分(2箇所)に当接させて仮止めを行う(図3参照)。前記仮止め作業は、蓋体2とベース3とを2箇所で仮固定することにより、接合位置のズレを防止する役割がある。
【0032】
前記仮止めの後に、図3に示すようにシームローラーRを蓋体2の対向する二短辺の、一端側の周辺上に当接させ、蓋体2と金属部31aとに大電流を印加させながら、蓋体2の対向する二短辺の他端側に向って転接させることによって、水晶振動子1の短辺方向における前記ロウ材8と前記金属部31aとが封止接合される。なお、本実施形態におけるシーム溶接は、真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて行われる。
【0033】
次に、図4に示すようにシームローラーRを、前記蓋体2の対向する二長辺の一端側の周辺上に当接させ、蓋体2と金属部31aとに大電流を印加させながら、他端側に向って転接させることによって、長辺方向における前記ロウ材8と前記金属部31aとが封止接合される。このとき、蓋体2は初期状態では長辺方向が上凸状に湾曲した状態であるが、シーム溶接時には前記蓋体2は高温状態に達するため、熱膨張により長辺方向に伸長した状態となる。さらに、シームローラーRの圧接転動によって、蓋体長辺方向は湾曲状態(弧状)から略平面状態(直線状)に変形するので、前記蓋体2と前記金属部31aとがロウ材8を介して略平面状態で接合される(図5参照)。
【0034】
前述のシーム溶接時において、高温状態になった金属性の蓋体2および前記金属部31aを通じて、ベース3に熱が伝わり、ベース全体の温度も上昇するが、前記蓋体2は予め蓋体およびベースの熱膨張率等を考慮して曲面を形成、すなわち熱膨張および熱収縮による変位量を見込んで予め蓋体2に曲面を形成しているので、降温時に蓋体2が収縮しても、蓋体2の長辺方向の形状は上凸状の弧から略直線状態に変位するにとどまるため、当該蓋体2と接合したベース3にかかる上方向(蓋体の方向)の引張応力を緩和することができる。
【0035】
このような蓋体の構造によって、シーム溶接後のベースにかかる応力を緩和することができるので、ベース底面の割れやクラックの発生を抑制することができる。前記割れやクラックは、ベースが小型になるほどセラミックの厚みが薄くなってベース自体の強度が低下するため発生しやすくなるが、本発明の蓋体の構造によって、割れやクラックの発生抑制に、より効果的に機能する。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを製造することができる。
【0036】
また、上記蓋体の構造によって、シーム溶接後のベース内部応力を緩和することができるので、ベース内部に形成されている配線導体が断線されることがなくなるため、発振停止を起こすことのない信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0037】
さらにまた、上記蓋体の構造により、蓋体2がベース3の金属部31aの上に載置された状態では従来の圧電振動デバイスよりも全高が高くなるが、シーム溶接後には、従来の蓋体のように略平面状態となるので、圧電振動デバイスの低背化を著しく妨げることはない。
【0038】
なお、本実施の形態においては封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を行っているが、封止用の金属リングを用いてもよい。また、低融点金属ロウ材を用いた雰囲気加熱封止でも適用可能である。
【0039】
−第2の実施形態−
以下、本発明の第2の実施形態について図6を基に説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。なお、本実施形態においても表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0040】
図6は第2の実施形態を示す表面実装型の水晶振動子の分解斜視図である。蓋体21はコバールを基体とする平面視矩形状で金属性の蓋体であり、当該蓋体21の表裏面にはニッケルメッキ層(図示せず)が形成されている。また蓋体21の裏面側には前記ニッケルメッキ層の下に金属から成るロウ材8が全面に亘って形成されている。本実施形態において、前記ロウ材として銀ロウが使用されている。
【0041】
図6に示すように、前記蓋体21は長辺だけでなく、短辺においても中央部が上凸状に湾曲したドーム状の形状となっている。
【0042】
このような構造の蓋体を用いて、シーム溶接によって気密封止を行う際、蓋体21とベース3の上面の金属部31aとのシームローラーRによる仮止めは、まず蓋体21の各短辺の一端側、つまり全部で2箇所について行う。なお前記仮止めは各短辺の両端、すなわり4角で行ってもよい。
【0043】
前記仮止めの後、シームローラーRを蓋体21の対向する二短辺の、一端側の周辺上に当接させ、蓋体21と金属部31aとに大電流を印加させながら、蓋体21の対向する二短辺の他端側に向って転接させて、短辺方向における前記ロウ材8と前記金属部31aとの接合を行う。なお、本実施形態においてもシーム溶接は、真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて行われる。
【0044】
次に、シームローラーRを、前記蓋体21の対向する二長辺の一端側の周辺上に当接させ、蓋体21と金属部31aとに大電流を印加させながら、他端側に向って転接させることによって、長辺方向における前記ロウ材8と前記金属部31aとが封止接合される。
【0045】
前記短辺および長辺、何れの方向のシーム溶接の際にも、蓋体21は初期状態では長辺および短辺双方向において上凸状に湾曲した状態であるが、シーム溶接時には前記蓋体2は高温状態に達するため、熱膨張により蓋体の外周から外側へ伸長した状態となる。さらに、シームローラーRの圧接転動によって、蓋体21は湾曲状態から略平面に変形するので、前記蓋体21と前記金属部31aとがロウ材8を介して略平面状態で接合される。
【0046】
前述のシーム溶接時において、高温状態になった金属性の蓋体21および前記金属部31aを通じて、ベース3に熱が伝わり、ベース全体の温度も上昇するが、前記蓋体21は予め蓋体およびベースの熱膨張率等を考慮して曲面を形成、すなわち熱膨張および熱収縮による変位量を見込んで予め蓋体21に曲面を形成しているので、降温時に蓋体21が収縮しても、蓋体21の形状は略直線状態を維持することができるため、当該蓋体21と接合したベース3にかかる上方向(蓋体の方向)の引張応力を緩和することができる。
【0047】
このような蓋体の構造の場合、長辺だけでなく短辺においても蓋体が上凸状に湾曲しているため、シーム溶接後のベースにかかる引張応力を直交する2方向で緩和することができ、ベース底面の割れやクラックの発生の抑制に、より効果的である。
【0048】
また、本発明の蓋体の構造によって、ベースが小型になっても前記割れやクラックの発生を抑制することができるので、信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0049】
さらに、上記蓋体の構造によると、シーム溶接後のベース内部応力をより緩和することができるので、ベース内部に形成されている配線導体が断線されることがなくなり、信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0050】
さらにまた、蓋体の長短辺両方の中央部が上凸状に湾曲した構造になっても、長辺だけが上凸状に湾曲した構造の蓋体と同等の全高(厚み方向の高さ)にすることができるため、蓋体21がベース3の金属部31aの上に載置された状態では従来の圧電振動デバイスよりも全高が高くなるものの、シーム溶接後には、従来の蓋体のように略平面状態となるので、圧電振動デバイスの低背化を著しく妨げることはない。
【0051】
−第3の実施形態−
以下、本発明の第3の実施形態について図7を基に説明する。図7は本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同様の効果を有する。なお、本実施形態においても表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0052】
図7において、ベース3および水晶振動板4は、前記第1の実施形態と同一の材質および同一の構造であるため、詳細な説明は割愛する。
【0053】
図7において蓋体22は平面視矩形状で、長辺方向が上凸状に反った曲面形状となっている。前記曲面形状の長辺方向の曲率は、予め蓋体22とベース3の熱膨張率等の条件を考慮して設定され、所定曲率に成形加工された金型を用いてプレス成型によって形成される。そして前記蓋体22はコバールを基体として、上層にニッケルメッキ層、さらに上層に金フラッシュメッキ層がそれぞれ全周に形成されている。各層の厚みは、第1の実施形態と同様に、ニッケル層は1.0〜4.0μm、金フラッシュ層は約0.01μmに形成されている。
【0054】
そして、図7に示すように蓋体22の封止接合面側には前記金フラッシュメッキ層の上層に低融点金属ロウ材8が周状に形成されている。本実施形態では前記ロウ材として、金−錫合金(Au−Sn合金)が使用される。ここで前記Au−Sn合金は、溶融後の状態において水晶振動子全体、つまり蓋体22に形成されている金フラッシュメッキ層と堤部31の上面に形成されている金属膜7を構成する金も含めて、Au:Sn=80:20の比率となるように蓋体22の封止接合面に形成されるAu−Sn合金の組成が予め調整されている。
【0055】
前記蓋体22と前記ベース3との封止接合は、封止治具(図示せず)を用いて行う。まず、蓋体22を前記封止治具内に載置する。前記封止治具は内部に凹部を有しており、当該凹部に前記蓋体22の封止接合面側を上にして載置される。そして前記蓋体22の上に、前記ベース3が金属部31aを下向きにした状態で載置される。このとき、蓋体22の長辺方向の湾曲度合は、当該蓋体の上部に載置されたベース3の自重によって、緩和された状態(曲率が大きくなった状態)となる。
【0056】
上記のようにベース3の金属部31aを下向きにして蓋体22の上に載置すると、前記蓋体22の封止接合面側の短辺周縁部分のロウ材8が、前記金属部31aに当接した状態となっている。そして、所定温度に制御された雰囲気中で加熱されることによって、蓋体22が熱膨張によって伸長するため、溶融した前記ロウ材8を介して蓋体22とベース3とが略平面状態で気密接合される。
【0057】
本実施形態の構成であれば、シーム溶接のようにシームローラーで蓋体を圧接しない雰囲気加熱による気密接合であっても、ベース自重による加重効果によって、湾曲していた蓋体22と金属部31aとの空隙が減少するとともに、蓋体の熱膨張による伸長によって、蓋体とベースとを略平面状態で気密接合でき、常温まで温度低下した際のベース内部応力を緩和することができる。したがって、ベースの割れおよびクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0058】
本発明の実施形態では圧電振動デバイスとしてATカット水晶振動子を挙げているが、その他の例として音叉型水晶振動子や、その他のカットの水晶振動子の製造においても本発明は適用可能である。さらに、ベース内底部上にICを搭載した後、ワイヤボンディングやフェースダウンボンディング等によってIC接続端子とベース内底部に形成されたパッド電極とが電気的に接続され、その上方に圧電振動素子が搭載された構造の発振器、あるいは、前記ICと圧電振動素子の位置関係が上下逆構造の発振器の製造においても本発明は適用可能である。
【0059】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示すシーム溶接前の水晶振動子の上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示すシーム溶接前の水晶振動子長辺方向の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示すシーム溶接後の水晶振動子長辺方向の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す封止前の水晶振動子の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。
【図8】従来の水晶振動子の長辺方向の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 水晶振動子
2 蓋体
3 ベース
4 水晶振動板
5 搭載パッド
6 導電性接合材
7 収納部
8 ロウ材
31 堤部
31a 金属部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部と当該開口部を囲繞する環状の堤部と、前記堤部上面に形成された金属部とを有するベースの内底部に電子部品素子を搭載した後、前記開口部を気密封止する平面視矩形状の金属性蓋体であって、前記気密封止は前記金属部と前記蓋体とが接合されることによって行われ、前記蓋体の少なくとも長辺側の中央部が上凸状に湾曲していることを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記ベースはセラミックの積層によって構成され、前記蓋体は前記気密封止後には当該蓋体の長辺方向に略平面状態で前記ベースと接合されていることを特徴とする請求項1に記載の蓋体を用いた圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記蓋体と前記金属部との接合が、シーム溶接によって行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記蓋体と前記金属部との接合が、雰囲気加熱による金属溶融によって行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−300641(P2008−300641A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145295(P2007−145295)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】