説明

圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロ素子、振動ジャイロセンサー及び電子機器

【課題】小型化と周波数温度特性の改善とを図った圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロセンサー、及びこれらを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】圧電振動素子1の圧電基板7は、複数の振動腕15a、15b、その振動腕の一方の端部間を連接する基部10、各振動腕15a、15bの他方の端部に夫々形成され幅広で且つ第1の溝部22a〜24aが形成された錘部20a、20b、及び、各振動腕15a、15bの振動中心線に沿って形成された第2の溝部17a〜18b、を備えている。各振動腕15a、15bの表裏面と側面に夫々励振電極が形成されており、屈曲−捩じり結合振動が励振される。圧電振動素子1は、励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、その周波数温度特性が温度に関し三次特性となるように圧電基板7の切断角度と、第一溝部及び第2の溝部の幅と深さと、及び振動腕の厚さを夫々設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、振動ジャイロ素子等に関し、特に小型化を図ると共に周波数温度特性を改善した圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロ素子、振動ジャイロセンサー及びそれらを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モバイルコンピューター、ハードディスク・ドライブ等の小型情報機器や、携帯電話等の移動体通信機には、基準周波数源として圧電デバイスが広く用いられている。圧電デバイスを搭載した電子機器の小型化が進むに伴い、圧電デバイスには更なる小型化が求められている。
特許文献1には、水晶の電気軸(結晶軸の1つ)の回りに0°から−15°の範囲で切り出された音叉型水晶振動子が開示されている。音叉型水晶振動子に励振される屈曲振動モード、捩れ振動モードの夫々の共振周波数f、fを互いに近接させ、結合させることにより主振動の屈曲振動モードの周波数温度特性を改善した水晶振動子である。
一般的に水晶振動子の周波数温度特性Δf/fは、温度Tに関する多項式で表わされるが、実用的には三次式で近似され、その一次係数〜三次係数はα、β、γで表わされる。
屈曲振動モードの周波数温度特性Tfは、捩れ振動モードの影響を受け、圧電基板hに依存する。種々の切断角θに対し、一次係数α=0となるように厚みhを設定し、更に二次係数βが零になる切断角度θと厚さhとを、予め計算で求めた値から設定する。これにより、周波数温度特性Tfは三次係数γのみに依存し、温度特性の良好な水晶振動子が得られると開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、互いに平行な複数の振動腕の各先端部に、振動腕より幅広の拡大部を設けた音叉型圧電振動子が開示されている。この拡大部は有底の孔を有し、この有底の孔には圧電材料より比重が大きい材料が充填して錘とすることにより、音叉型圧電振動子の小型化が図られると記されている。
また、特許文献3には、振動ジャイロ素子が開示されている。振動ジャイロ素子は、基部と、基部から直線状に両側へ延出された1対の検出用振動腕と、基部から両側へ検出用振動腕に直交する方向に延出された1対の連結腕と、各連結腕の先端部からそれと直交して両側へ延出された各1対の駆動用振動腕を備えている。更に、基部から各検出用腕に沿って延出される2対の梁と、同方向に延出された各梁が連結された1対の支持部と、を同一平面に備え、支持部を検出用振動腕の延出する方向であって検出用振動腕の外側で、且つ前記駆動用振動腕の間に配置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−75326号公報
【特許文献2】特開2004−282230公報
【特許文献3】特開2010−2430公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された、屈曲振動モードと捩じり振動モード夫々の周波数を近接させ互いに結合させることにより周波数温度特性を改善した音叉型圧電振動子は、小型化が難しいという問題があった。
また、特許文献2に記載の音叉型圧電振動子は、振動腕の先端部に錘部を形成することにより小型化は可能であるが、周波数温度特性は二次特性であり、周波数安定度に問題があった。
また、特許文献3の記載の振動ジャイロ素子は、温度変化により角速度の感度が変わるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型化と周波数温度特性の改善とを図った圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロセンサー、及びこれらを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本圧明係る圧電振動素子は、複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々連接され該各振動腕の他方の端部の幅よりも幅広の錘部と、前記錘部の表面及び裏面の少なくとも一方の面に前記各振動腕の長手方向に沿って延びる第1の溝部、及び、前記各振動腕の表裏面に夫々形成された第2の溝部、を備えた圧電基板と、前記錘部の表裏面と前記各第2の溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた屈曲−捩じり結合振動をする圧電振動素子であって、前記圧電振動素子の周波数温度特性が温度に関し三次特性であることを特徴とする。
【0008】
音叉型圧電振動素子の各振動腕の先端部に夫々錘部を形成し、該錘部の表裏面に振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる第1の溝部を形成すると共に、各振動腕の振動中心線に沿った表裏面に夫々第2の溝部を形成する。このように構成すると、音叉型圧電振動素子に励振される屈曲振動と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0009】
[適用例2]また圧電振動素子は、前記基部は、前記振動腕の前記一方の端部と連接した一端を備える基部本体と、該基部本体の前記振動腕と連接した一端と対向する側の他端に連接した連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる支持腕と、を備えていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0010】
圧電振動素子の基部が、基部本体と、連結部と、L字状及び逆L字状の各支持腕と、を有し、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を連結部を介して基部本体の一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕より各支持腕に漏洩する振動エネルギーを低減することでき、CI値が小さくなると共に、耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0011】
[適用例3]また圧電振動素子は、前記圧電基板は水晶板から構成され、前記水晶板の主面の法線が、水晶結晶の光学軸に対して水晶結晶の電気軸の回りに0度から−15度の範囲内の角度で傾いていることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0012】
圧電基板の切断角度が電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された音叉型圧電振動素子を構成する。このような切断角度を選ぶと、屈曲−捩じり結合振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数をほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例4]また圧電振動素子は、前記第一の溝部は、前記長手方向に沿って離間して並ぶ複数の溝を備えていることを特徴とする適用例1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0014】
第一の溝部が前記のように形成された圧電振動素子を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有する圧電振動素子が得られるという効果と、錘部平坦面に励振電極間を電気的に接続するリード電極を形成することができるという利点もある。
【0015】
[適用例5]また圧電振動素子は、前記第一の溝部は、前記錘部の先端縁から前記錘部の中間部にかけて延在し、且つ前記振動腕における振動中心線に対し線対称となる前記錘部の表裏面の位置に形成されていることを特徴とする適用例1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0016】
第一の溝部を前記のように形成した圧電振動素子を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、温度特性が改善されるという効果と、錘部平坦面に励振電極間を電気的に接続するリード電極を形成することができるという利点もある。
【0017】
[適用例6]また圧電振動素子は、前記第一の溝部は、前記第二の溝部と連続形成されると共に、該第一の溝部の先端部は前記錘部の先端縁まで延在し、且つ前記振動中心線に対し線対称となる前記錘部の表裏面の位置に形成されていることを特徴とする適用例1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0018】
第一の溝部を前記のように形成した圧電振動素子を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、圧電振動素子の温度特性が改善されるという効果と、第一及び第二溝部形成用マスクが容易になるという利点もある。
【0019】
[適用例7]また圧電振動素子は、前記第一の溝部は、その少なくとも一部の幅が前記第二の溝部よりも幅広に形成されていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0020】
第一の溝部を前記のように形成した圧電振動素子を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、圧電振動素子の温度特性が改善されるという効果と、第一の溝部の幅を適切に設定することにより屈曲振動周波数と捩れ振動周波数との結合が容易になるという利点もある。
【0021】
[適用例8]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を載置する絶縁基板とを備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0022】
音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子を絶縁基板に収容して、圧電振動子を構成することにより、小型でQ値が高く、周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0023】
[適用例9]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0024】
屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子と、IC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例10]本発明に係る振動ジャイロ素子は、適用例1に記載の圧電振動素子が、前記基部から連接した角速度を検出するための検出用振動腕を備えることを特徴とする振動ジャイロ素子である。
【0026】
各駆動腕用振動腕の先端部に夫々錘部を形成し、該錘部の表裏面に振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる第1の溝部を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心線に沿った表面裏面に夫々第2の溝部を形成した振動ジャイロ素子を構成する。このような振動ジャイロ素子を構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例11]振動ジャイロセンサーは、適用例10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする振動ジャイロセンサーである。
【0028】
以上のように振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が改善されると共に、錘部を設けることにより小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0029】
[適用例12]本発明に係る電子機器は、適用例8に記載の圧電振動子、又は適用例11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器である。
【0030】
以上のように圧電振動子を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善さるという効果がある。また、以上の振動ジャイロセンサーを備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略平面図であり、(b)は振動腕の断面図。
【図2】振動腕の先端部に設けた錘部の断面図。
【図3】(a)〜(c)は夫々錘部の変形例を示す平面図。
【図4】(a)は梁の先端部に溝を形成する場合の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図、(b)は梁の中央部に溝を形成する場合の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図、(c)は梁の板厚を変えた場合の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図。
【図5】(a)(b)は錘部の表裏面に凹部を設けた場合、(c)は錘部の先端部の表裏面に溝を設けた場合の平面図。
【図6】図5(a)〜(c)は夫々対応した屈曲振動、捩れ振動の共振周波数及び共振周波数差(Δf)を示す図。
【図7】(a)は音叉振動(屈曲振動)の周波数温度特性、(b)は捩れ振動の周波数温度特性、(c)は屈曲−捩れ結合振動の周波数温度特性を示す図。
【図8】振動腕の板厚hを変えた場合の屈曲振動と捩れ振動との結合示す図。
【図9】(a)は屈曲−捩れ結合振動の、板厚hと屈曲振動及び捩れ振動夫々の一次係数、二次係数との関係を示す図、(b)はその要部拡大図。
【図10】屈曲−捩れ結合振動を用いた圧電振動子の断面図。
【図11】圧電発振器の断面図。
【図12】(a)は振動ジャイロセンサーの平面図、(b)は断面図、(c)は動作を説明する模式図。
【図13】電子機器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略平面図である。圧電振動素子1は、平板状の圧電基板7と、圧電基板7の表裏面及び側面に形成した薄膜の電極25と、を備えている。
圧電基板7は、図1(a)に示すように、互いに並行(平行)して直線状に延びる細幅帯状の複数(本例では二本)の振動腕15a、15bと、各振動腕15a、15bの一方の端部(基端部)間を連接する基部10と、各振動腕15a、15bの他方の端部(先端部)に夫々連接して一体形成され、且つ各振動腕15a、15bの前記他方の端部の幅よりも幅広な錘部20a、20bと、各振動腕15a、15bの振動中心線Cに沿った表面及び裏面に夫々形成された第2の溝部17a(17b)、18a(18b)と、を備えている。
錘部20a、20bは、振動中心線Cに沿った表面及び裏面の少なくとも一方の面(本例では両面)に、各振動腕15a、15bの長手方向(振動腕の一方の端部と他方の端部とを結ぶ線分に沿った延び方向)に沿って直線状に延びる第1の溝部22a(22b)、24a(24b)を備えている。図2、図3で、22b、24bは、錘部20a、20bの裏面に夫々形成された第1の溝部を示している。
なお、振動中心線Cとは振動腕の重心を通る振動腕の長手方向に延びた線のことである。
【0033】
図1(b)に示した薄膜の電極25は、錘部20a、20bの夫々の表裏面及び第1の溝部22a、22b、24a、24bと、図1(b)に示すように、各第2の溝部17a(17b)、18a(18b)内を含めた各振動腕15a、15bの表裏面及び側面と、に夫々形成され、且つ基部10に設けた複数の電極パッド(図示せず)との間を夫々リード電極(図示せず)にて電気的に接続される励振電極30、32、34、36と、を備えている。薄膜の電極25は、蒸着法、又はスパッタ法を用いて真空装置の中で形成される。なお、第1の溝部22a、22b、24a、24b内に密度の大きい金属、例えば金Au等を付着するだけで錘部20a、20bとしての機能を果たせる場合には、必ずしも錘部20a、20bの平坦面に電極を形成する必要はない。
【0034】
図1(a)に示す基部10は、振動漏れ低減と耐衝撃性改善のために、基部本体12aと、基部本体12aの振動腕15a、15bとは反対側の他端縁中間部(振動腕と連接した一端と対抗する側の他端)に設けた細幅の連結部12dと、連結部12dを介して連接され且つ基部本体12aとは離間した状態で幅方向に沿って延びた先から、振動腕15a、15bとを間に置いて長手方向に沿って延びる左右一対の支持腕12b、12cと、を備えている。つまり、L字状の支持腕12bの基端部と、逆L字状の支持腕12cの基端部とが連接され、この連接部分が連結部12dを介して基部本体12aの一方の端縁中央に連結されてコ字状をなし、基部本体12aの他方の端縁には各振動腕15a、15bの基端部が連結されている基部の例である。
図1の実施形態において、基部10は、基部本体12aと、連結部12dと、左右一対の支持腕12b、12cと、を備えていると説明したが、基部本体12aのみでもよい。
また、各振動腕15a、15bは、基部体12aの端部より間隔を隔して互いに平行に延出し、各振動腕15a、15bの先端部には夫々振動腕15a、15bの他方の端部の幅よりも幅広の錘部20a、20bが連設一体化されている。
【0035】
圧電基板7は、例えば水晶基板を用いる場合には、Z板(光軸(Z軸)に垂直に切り出された基板)を電気軸(X軸)の回りに0°から−15°回転して切り出した基板を用いる。なお、圧電基板7の外形、錘部20a、20bの第1の溝部22a、22b、24a、24b、各振動腕15a、15bの第2の溝部17a(17b)、18a(18b)は、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工で形成されている。
【0036】
図1(b)は、(a)のP−P断面図であり、各振動腕15a、15bに夫々形成された励振電極30、32、34、36の配置を示す図である。励振電極30、34は、各溝部17a(17b)、18a(18b)の表面、及び側面に形成され、励振電極32、36は各振動腕15a、15bの夫々両側面に形成されている。
励振電極30、36と、励振電極32、34とは、互いに異符号の電圧が前記電極パッドを介して印加される。つまり、励振電極30、36に+電圧が印加されるとき、励振電極32、34には−電圧が印加され、図1(b)の矢印で示すような電界が生じ、圧電振動素子1の重心を通る中心線Cgに対し対称な音叉振動(屈曲振動)が励振される。
なお、溝部17a(17b)、18a(18b)を形成することにより、電界強度が強まり、音叉振動をより効率的に励振することができる。即ち、圧電振動素子のCI(クリスタルインピーダンスー)を小さくすることができる。
【0037】
図2は、図1(a)のQ−Q断面図である。錘部20a、20bは、図1(a)の平面図、図2の断面図に示すように、矩形平板状であって、第1の溝部22a、22b、24a、24bは、各振動腕15a、15bの長手方向に沿った錘部20a、20bの両端部に離間して配置され、且つ振動中心線Cに対して線対称であり、先端側の第1の溝部、及び基端側の第1の溝部を備えている。
図3(a)〜(c)は、第1の溝部22a、22b、24a、24bの変形例を示す平面図である。なお、図1(a)に示すように、錘部20a、20bは同一形状であるので、一方の錘部20aを用いて説明する。図3(a)に示す第1の溝部22a(22b)は、錘部20aの振動腕15aの長手方向先端縁から長手方向中間部にかけて延在し、且つ振動中心線Cに対し線対称に形成されている。
【0038】
図3(b)に示す第1の溝部22a(22b)は、第1の溝部22a(22b)の基端部が第2の溝部17a(17b)の先端部と連続形成されると共に、第1の溝部22a(22b)の先端部は、錘部20aの先端縁まで延在し、且つ振動中心線Cに対し線対称に形成されている。
図3(c)に示す第1の溝部22a(22b)は、その少なくとも一部の幅が第2の溝部17a(17b)の幅よりも幅広に形成されている。
【0039】
音叉型水晶振動素子1には、その重心を通り、振動腕15a、15b方向の中心線Cgに対し、互いに対称に振動する屈曲振動と、中心線Cgに対し、互いに対称な捩れ振動とが励振される。励振電極を適切に形成することにより何れの振動モードを主振動とするかが選択できる。図1は音叉振動(屈曲振動)を主振動モードする実施例である。
本発明の圧電振動素子の一例として、水晶Z板を電気軸(X軸)回りにθ(0度から−15度の範囲)回転して切り出した基板を用いて、音叉型水晶振動素子1を形成する。各振動腕15a、15bには、第2の溝部17a、17b、18a、18bを形成すると共に、各振動腕15a、15bの先端部に設けた錘部20a、20bの表裏面に第1の溝部22a、22b、24a、24bを形成する。
つまり、切断角度θと、第1の溝部22a、22b、24a、24bと、第2の溝部17a、17b、18a、18bとを適切に選定することにより、音叉型水晶振動素子1に励起される屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動の共振周波数f、fを、互いに近接させることによって二つ振動モードを結合させ、主振動の屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、小型化を図った音叉型水晶振動素子を構成している。
【0040】
屈曲振動及び捩れ振動夫々の共振周波数f、fを互いに近接させる手段を図4(a)〜(c)を用いて説明する。
図4(a)〜(c)は、図1(a)に示す圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)に励起される屈曲振動の共振周波数fと、捩じり振動の共振周波数fとが、錘部20a、20bの第1の溝部22a(22b)、24a(24b)、振動腕15a、15bの第2の溝部17a、17b、及び振動腕15a、15bの厚さhにより、どのように変化するかを定性的に説明する図である。なお、図4(a)、(b)の横軸のA、Bは梁(振動腕)15の形状を示し、Aは梁15に溝を形成する前、Bは溝を形成した場合である。図4(c)は梁15の板厚を変えた場合である。
【0041】
溝部を形成する前の梁15に励振される屈曲振動及び捩じり振動の共振周波数をf、fとし、梁15の先端部に溝部22a(22b)を形成した場合の共振周波数を夫々f’、f’とする。図4(a)に示すように、梁(振動腕)15の先端部に溝部22a(22b)を形成すると、屈曲振動、捩じり振動夫々の共振周波数f’、f’は、共に上昇するが、捩じり振動の周波数増加幅df=(f’−f)に対し、屈曲振動の周波数増加幅df=(f’−f)の方が大きい。
【0042】
一方、図4(b)に示すように、梁(振動腕)15の中央部に溝部17a(17b)を形成すると、捩じり振動、屈曲振動の共振周波数f’、f’は共に低下するが、捩じり振動の周波数減少幅df=(f−f’)は、屈曲振動の周波数減少幅df=(f−f’)に比べて、大きくなる。
また、図4(c)に示すように、梁15の板厚hを厚くすると、屈曲振動の周波数f’は元の周波数fより僅かに減少するが、捩じり振動の共振周波数f’は元の周波数fより増加する。
以上のように、梁(振動腕)15に形成する溝部の位置、梁(振動腕)15の厚さを適切に選ぶことにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
【0043】
図5(a)〜(c)は、音叉型水晶振動素子1の外形形状は変えずに、錘部20a、20bの表裏面に形成する凹部、溝部のみを変化させた場合の錘部20a、20bの平面図である。図5(a)、(b)は錘部20a、20bの表裏面の中央部に、振動腕15a、15bの長さ方向に沿い、振動中心線Cに対し線対称に、対向する凹部21a(21b)、21’a(21’b)を形成した例である。図5(b)の凹部21a(21b)、21’a(21’b)の面積の方が、図5(a)の凹部21a(21b)、21’a(21’b)の面積より大きく形成してある。図5(c)は、錘部20a、20bの表裏面に先端より中央部にかけ、振動腕15a、15bの長さ方向に沿い、振動中心線Cに対し線対称に溝部22a(22b)、24a(24b)を形成した例である。
【0044】
図6は、図5(a)〜(c)に示した形状の錘部20a、20を有する音叉型水晶振動素子1に、励振される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数f、fと、差周波数Δf=(f−f)と、を有限要素法を用いたシミュレーションで求めた図である。縦軸左側が共振周波数f、fを示し、縦軸右側が差周波数Δfを示している。横軸は図5(a)〜(c)に示した形状の錘部20a、20を有する音叉型水晶振動素子1に対応して符号a、b、cで示している。
図6のaとbとの夫々の共振周波数を比べると、音叉型水晶振動素子1の外形形状を変えずに、錘部20a、20bの凹部の大きさを変化させた場合は、凹部の面積の大きい方が、差周波数Δfが小さくなることが分かる。これは図4(a)に示すように、梁(振動腕)15の先端部の質量を減ずると屈曲振動の周波数の上昇の方が、捩れ振動の周波数の上昇より大きく、差周波数Δf=(f−f)が減少することからも説明できる。また、aの屈曲振動の周波数よりbの屈曲振動の周波数の方が、周波数が高くなることも図4(a)より説明できる。
図6のcは、錘部20a、20bの先端部に溝部22a(22b)、24a(24b)を形成した例で、差周波数Δf=(f−f)を更に小さくできることを示している。差周波数Δf=(f−f)を小さくすることにより、例えばΔf/((f−f)/2)の値を10%以下にすると、屈曲振動と捩じり振動の結合が密になり、主振動とする屈曲振動の周波数温度特性が改善される。
【0045】
図7は、音叉型水晶振動素子1で励振される屈曲振動と捩じり振動とを互いに結合させることにより、主振動の屈曲振動の周波数温度特性が改善される様子を、図を用いて定性的に表わしたものである。一般的に水晶振動子の周波数温度特性Δf/f(=(f−f)/f、fは所定の温度における周波数)は、式(1)のように温度Tの多項式で表わすことができる。
Δf/f=α(T−T)+β(T−T+γ(T−T+・・ (1)
図7(a)は主振動である屈曲振動の周波数温度特性で、温度Tに関し、二次曲線を呈している。図7(b)は捩れ振動の周波数温度特性で、周波数Δf/fは温度Tに関し、一次式で近似される。図7(c)は、屈曲振動と捩れ振動を結合させた場合の主振動である屈曲振動の周波数温度特性を示す図である。主振動の屈曲振動に捩れ振動を結合させることにより、屈曲振動の周波数温度特性を表わす多項式Δf/fの一次係数αと、二次係数βをほぼ零とすることが可能となり、主振動の屈曲振動の周波数温度特性は三次係数γで近似でき、図7(c)に示すよう常温を含む所望の温度範囲において三次曲線(三次特性)を呈する。
【0046】
図8は、音叉型水晶振動子1の振動腕15a、15bの板厚hを変化させた場合、屈曲振動と捩れ振動との結合の度合いをシミュレーションで求め、図示したものである。屈曲振動の共振周波数fは、厚さhに関しほぼ平坦で、hの増加につれて僅かに減少する。一方、捩れ振動の共振周波数fは、厚さhの増加に応じ、ほぼ比例するように増加する。図8の例では、86μmより少し薄い板厚hで結合が大きくなることが分かる。
【0047】
図9(a)は、音叉型水晶振動子1に励振される屈曲振動の一次係数α、二次系数βと、捩れ振動の一次係数α’、二次係数β’と、をシミュレーションで求め、それを図示したものである。屈曲振動の一次係数α、二次係数βを夫々菱形◆、四角■で示し、捩れ振動の一次係数α’、二次係数β’を夫々白抜き菱形◇、白抜き四角□で示している。図9(a)より捩れ振動の一次係数α’が他の係数に比べ大きいことが分かる。つまり、捩れ振動では一次係数α’が支配的である。
また、屈曲振動の一次係数α、二次係数βは、図9の例では、振動腕15a、15bの板厚hが84μmから85μmの範囲で極めて小さくなることが分かる。
【0048】
図9(b)は、振動腕15a、15bの板厚hを82μmから86μmの範囲で変化させた場合の屈曲振動、捩れ振動の夫々の一次係数、二次係数α、β、α’、β’を板厚hに対し示した図である。図9(b)の例では、屈曲振動の一次係数α、二次係数βとも板厚h=84.5μm近辺でほぼ零になることが判明した。また捩れ振動の二次係数β’も板厚h=84.5μm近傍でほぼ零になることが分かる。
つまり、図9の音叉型水晶振動素子1の例では、板厚hを84.5μmに設定することにより、主振動である屈曲振動の周波数温度特性の一次係数α、二次係数βを共に零とすることができる。そのため屈曲振動の周波数温度特性は3次曲線を呈し、周波数温度特性が大幅に改善されると共に、錘部20a、20bの設けることにより振動腕が短縮され、小型の音叉型水晶振動素子1が得られる。
【0049】
また、錘部20a、20bの表裏面に形成した電極、第一の溝部22a、22b、24a、24b内に形成した電極、振動腕15a、15bに形成した電極をレーザー光を照射することにより、音叉型圧電振動子に励振される屈曲振動と捩れ振動との結合度の微調整をすることが可能である。
また、落下衝撃等による周波数変動を考慮すると錘部の表裏面の電極(特に先端部)は避け、第一の溝部内にのみに錘用の電極を形成する方がよい場合がある。
【0050】
図1に示すように、本発明の圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1は、各振動腕の先端部に夫々錘部を形成し、該錘部の表裏面に振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる第1の溝部を形成すると共に、各振動腕の振動中心線に沿って表裏面に夫々第2の溝部を形成する。このように構成すると、音叉型圧電振動素子1に励起される屈曲振動と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。屈曲−捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0051】
また、図1(a)に示すように、圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1の基部が、基部本体と、連結部と、L字状及び逆L字状の各支持腕と、を有し、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を連結部を介して基部本体の一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕より各支持腕に漏洩する振動エネルギーを低減することができ、CI値が小さくなると共に、耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0052】
また、図1(a)に示す圧電基板7の切断角度が、電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1を構成する。このように切断角度を選ぶと、屈曲-捩れ結合振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数をほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、第一の溝部22a〜24bが、図1(a)に示すように形成された圧電振動素子1を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有する圧電振動素子が、得られるという効果と、錘部20a、20bの平坦面に励振電極間を電気的に接続するリード電極を形成することができるという利点もある。
【0053】
また、第一の溝部22a〜24bが、図3(a)〜(c)に示すように形成された圧電振動素子を構成することにより、屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、温度特性が改善されるという効果ある。更に、図3(a)の例では錘部20aの平坦面に励振電極間を電気的に接続するリード電極を形成することができるという利点、図3(b)の例では、第一及び第二溝部形成用マスクが容易になるという利点、図3(c)の例では、第一の溝部の幅を適切に設定することにより屈曲振動周波数と捩れ振動周波数との結合が容易になるという利点もある。
【0054】
図10は、本発明に係る第2の実施の形態の圧電振動子2の構成を示す断面図である。圧電振動子2は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、ガラス等からなる窓部材54を有する蓋部材52とから成る。
パッケージ本体40は、図10に示すように、絶縁基板として第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。
第3の基板43は中央部が除去されており、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。
素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に支持腕12b、12cに形成したパッド電極(図示せず)に対応するように配置されている。
【0055】
圧電振動子2の構成は、パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤50、例えばエポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子1を載置して荷重をかける。
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤50を硬化させるために所定の温度の高温炉に所定の時間入れる。アニール処理を施した後、上方からレーザー光を照射して各錘部20a、20b、各振動腕15a、15bに形成された周波数調整用金属膜の一部を蒸散させて周波数粗調を行う。ガラス窓部54を備えて蓋部材52を、パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44に、シーム溶接する。
パッケージの貫通孔48を封止する前に、加熱処理を施す。パッケージの上下を逆にして、貫通孔48内の段差部上に金属球の充填材48aを載置する。充填材48aとしては金−ゲルマニウム合金等がよい。充填材48aにレーザー光を照射して溶融させ、貫通孔48を封止すると共にパッケージ内部を真空とする。パッケージの外部から窓部材54を介してレーザー光をパッケージ内に照射し、振動腕15a、15bに形成した周波数調整用金属膜を蒸散させて周波数微調整を行い、圧電振動子2を完成する。
【0056】
図10の構成の圧電振動子2に、落下などの衝撃が加えられたときの圧電振動素子1の変形について説明する。圧電振動子2のパッケージの主面に直交方向に衝撃力が加えられると、圧電振動素子1は、素子搭載パッド47を支点として、変形し易い支持腕支持部12b、12cがパッケージ本体40の底面に向かって変形する。次に、この変形が基部10の外側端縁12eで反射し、変形が基部本体12aの中央部に伝搬し、基部本体12aを含めた全体がパッケージ本体40の底面側に沈み込む。その結果、振動腕15a、15bは、その先端側がパッケージ底面に向かって変形する。つまり、基部10の構造が基部本体12aに連結部12dを介して支持腕12b、12cに連接されていることにより、加えられた衝撃を基部10の構造で緩和するように構成されている。
図10の断面図に示すように、音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1を絶縁基板40に収容して、圧電振動子2を構成することにより、小型でQ値が高く、周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0057】
図11は、本発明に係る第3の実施の形態圧電発振器3の構成を示す断面図である。圧電発振器3は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振するIC部品78と、圧電振動素子1を真空封止すると共にIC部品78を収容するパッケージ本体60、及び窓部材75a有する蓋部材75と、を備えている。圧電振動素子1にレーザー光を照射しての粗調製、微調整する手法、また、パッケージの内部を真空にして貫通孔68の封止する手法等は、圧電振動子2の場合と同様であるので省略する。IC部品78はパッケージ本体60のIC部品搭載パッド69に、金属バンプ76等を用いて電気的に導通接続する。
なお、図11に示した圧電発振器3では、IC部品78が気密封止されていない例を示したが、IC部品78をパッケージ内部に配置し、気密封止してもよい。
【0058】
図11の断面図に示すように、屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1と、IC部品78と、これらを収容するパッケージ60と、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0059】
図12は、本発明に係る第4の実施の形態の振動ジャイロセンサー4の構成を示す図であり、蓋体を取り除いて示している。図12(a)は、振動ジャイロセンサー4の平面図であり、同図(b)はP−P断面図である。
振動ジャイロセンサー4は、振動ジャイロ素子80と、振動ジャイロ素子80を収容するパッケージと、を概略備えている。パッケージは、絶縁基板(パッケージ本体)79と、絶縁基板79を気密封止する蓋体と、を備えている。
振動ジャイロ素子80は、基部本体81と、基部本体81の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕85a、85bとを備えた基部を備えている。更に、振動ジャイロ素子80は、基部本体81の対向する他の2つの端縁から夫々検出用振動腕85a、85bと直交する方向に同一直線上に突設された1対の第1の連結腕82a、82bと、各第1の連結腕82a、82bの先端部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、を備えている。
【0060】
更に、基部は、基部本体81の対向する他の2つの端縁から夫々検出用振動腕85a、85bと直交する方向に同一直線上に突設された各1対の第2の連結腕と、各第2の連結腕の先端部からそれと直交する両方向へ夫々突設され、検出用振動腕85a、85bと、駆動用振動腕83a、3b及び84a、84bとの間に配置された各1対の支持腕86a、86b及び87a、87bと、を備えている。
励振電極は、少なくとも1対の検出用振動腕85a、85bと、各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、に夫々形成されている。支持腕86a、86b及び87a、87bには、複数の電極パッド(図示せず)が形成され、この電極パッドと励振電極との間は、夫々電気的に接続されている。
【0061】
図12(c)は振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。振動ジャイロセンサー4は角速度が加わらない状態では、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。このとき、駆動用振動腕83a、83bと、駆動用振動腕84a、84bとが、重心Gを通るY’軸方向の直線に関して線対称の振動を行っているため、基部本体81、連結腕82a、82b、検出用振動腕85a、85bはほとんど振動しない。
振動ジャイロセンサー4にZ’軸回りの角速度ωが加わると、駆動用振動腕83a、83b、84a、84b及び第1の連結腕82a、82bにコリオリ力が働き、新たな振動が励起される。この振動は重心Gに対して周方向の振動である。同時に、検出用振動腕85a、85bは、この振動に応じて検出振動が励起される。この振動により発生した歪を検出用振動腕85a、85bに形成した検出電極が検出して角速度が求められる。
【0062】
本発明の振動ジャイロセンサー4の特徴は、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bの先端部に錘部26が設けられ、各錘部26の表裏面には振動腕の長さ方向に沿って振動中心線に線対称に第1の溝部27が形成されている。さらに、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bには、振動腕の長さ方向に沿って振動中心線に線対称に第2の溝部28が形成されている。振動ジャイロ素子80の圧電振動基板の切断角度θと、錘部26の第1の溝部27と、駆動腕83a、83b、84a、84bの第2の溝部28と、駆動腕83a、83b、84a、84bの板厚を適切に選定することにより、振動ジャイロ素子80に励起される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数f、fを互いに近接させることができる。二つ振動モードを結合させ、主振動の屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、錘部26を設けることにより駆動用振動腕、検出用親王腕を短縮することにより、小型の振動ジャイロセンサー4を構成することができる。
【0063】
図12(a)に示すように、各駆動腕用振動腕83a〜84bの先端部に夫々錘部26を形成し、該錘部26の表裏面に振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる第1の溝部27を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心線に沿った表面裏面に夫々第2の溝部28を形成した振動ジャイロ素子80を構成する。このような振動ジャイロ素子80を構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
また、図12(a)に示すように、振動ジャイロ素子をパッケージに収容して振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が改善されると共に、錘部を設けることにより小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0064】
図13は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器5には上記の第2の実施形態で説明した圧電振動子2を備えている。圧電振動子2を用いた電子機器5として、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯用電子機器が挙げられる。これらの電子機器5において圧電振動子5は、基準信号源として用いられ、小型で精度の良い圧電振動子2を備えることにより、小型で携帯性に優れ、特性の良好な電子機器を提供できる。
図13に示すように、図10の圧電振動子2を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善さるという効果がある。また、図12(a)の振動ジャイロセンサーを備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0065】
1…圧電振動素子、2…圧電振動子、3…圧電発振器、4…振動ジャイロセンサー、5…電子機器、7…圧電基板、10…基部、12a…基部本体、12b、12c…支持腕、12d…連結部、12e…外側端縁、15…梁、15a、15b…振動腕、17a、17b、18a、18b、28…第2の溝部、20a、20b、26…錘部、21a、21b、21’a、21’b…凹部、22a、22b、24a、24b、27…第1の溝部、25…電極、30、32、34、36…励振電極、40、60、79…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…金属シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、48、68…貫通孔、48a…充填材、50…導電性接着剤、52、75…蓋部材、54、75a…窓部材、部品搭載パッド…69、78…IC部品、80…振動ジャイロ素子、81…基部本体、82a、82b…第1の連結腕、83a、83b、84a、84b…駆動用振動腕、85a、85b…検出用振動腕、86a、86b、87a、87b…支持腕、C…振動中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々連接され該各振動腕の他方の端部の幅よりも幅広の錘部と、前記錘部の表面及び裏面の少なくとも一方の面に前記各振動腕の長手方向に沿って延びる第1の溝部、及び、前記各振動腕の表裏面に夫々形成された第2の溝部、を備えた圧電基板と、
前記錘部の表裏面と前記各第2の溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、
を備えた屈曲−捩じり結合振動をする圧電振動素子であって、
前記圧電振動素子の周波数温度特性が温度に関し三次特性である圧電振動素子。
【請求項2】
前記基部は、前記振動腕の前記一方の端部と連接した一端を備える基部本体と、該基部本体の前記振動腕と連接した一端と対向する側の他端に連接した連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる支持腕と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記圧電基板は水晶板から構成され、前記水晶板の主面の法線が、水晶結晶の光学軸に対して水晶結晶の電気軸の回りに0度から−15度の範囲内の角度で傾いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記第一の溝部は、前記長手方向に沿って離間して並ぶ複数の溝を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記第一の溝部は、前記錘部の先端縁から前記錘部の中間部にかけて延在し、且つ前記振動腕における振動中心線に対し線対称となる前記錘部の表裏面の位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記第一の溝部は、前記第二の溝部と連続形成されると共に、該第一の溝部の先端部は前記錘部の先端縁まで延在し、且つ前記振動中心線に対し線対称となる前記錘部の表裏面の位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記第一の溝部は、その少なくとも一部の幅が前記第二の溝部よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を載置する絶縁基板とを備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項10】
請求項1に記載の圧電振動素子が、前記基部から連接した角速度を検出するための検出用振動腕を備えることを特徴とする振動ジャイロ素子。
【請求項11】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする振動ジャイロセンサー。
【請求項12】
請求項8に記載の圧電振動子、又は請求項11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−178644(P2012−178644A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39519(P2011−39519)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】