圧電薄膜共振子、フィルタおよびモジュール
【課題】低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制すること。
【解決手段】基板10と、基板上に形成された下部電極12と、前記下部電極上に形成された圧電膜14と、前記圧電膜上に形成された上部電極16と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域20の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域32が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭い圧電薄膜共振子。
【解決手段】基板10と、基板上に形成された下部電極12と、前記下部電極上に形成された圧電膜14と、前記圧電膜上に形成された上部電極16と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域20の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域32が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭い圧電薄膜共振子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜共振子、フィルタおよびモジュールに関し、例えば、共振領域端に厚膜領域を有する圧電薄膜共振子、フィルタおよびモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、高周波フィルタへの需要が急速に拡大している。特に小型で高い急峻性を有する弾性波フィルタへの需要は旺盛である。弾性波フィルタには、弾性波共振子が用いられる。例えば、2GHz帯を越える高周波数帯において、小型化および低損失な共振子として圧電薄膜共振子が注目されている。圧電薄膜共振子は、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極に挟まれた圧電膜を備える。圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが重なる領域が共振に寄与する共振領域である。共振特性には、主に共振膜の膜厚方向に伝搬する弾性波が寄与する。この膜厚方向に伝搬する弾性波が横方向に伝搬するとスプリアスの原因となる。
【0003】
特許文献1には、共振領域の端部に上部電極の膜厚が共振領域の中央部より薄い薄膜領域を設けることにより、弾性波の横方向への伝搬を抑制し、スプリアスを抑制することが記載されている。さらに、特許文献2および非特許文献1には、薄膜領域の外側に、共振領域の中央部より上部電極の膜厚が厚い厚膜領域を設けることにより、より確実に、弾性波の横方向への伝搬を抑制し、スプリアスを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109472号公報
【特許文献2】特開2007−6501号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proceeding of IEEE international ultrasonic symposium 2006, pp456-459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、損失が大きくなってしまう。また、特許文献2および非特許文献1の方法では、上部電極の膜厚を三段階にすることになり、製造コストが増大する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭いことを特徴とする圧電薄膜共振子である。本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【0009】
本発明は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅wは、前記圧電薄膜共振子の共振周波数をfr、前記圧電膜のスティフネスをc11、前記圧電膜の密度をρとしたとき、
であることを特徴とする圧電薄膜共振子である。本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、前記圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長の1/2以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記共振領域の前記下部電極下には空隙または音響多層膜が形成されている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記共振領域の外側の前記圧電膜は、前記共振領域の前記圧電膜より薄い構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記厚膜領域においては、前記下部電極および前記上部電極のいずれか一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成され、前記共振領域の外側の前記下部電極および前記上部電極の他方は、前記共振領域より薄い構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記圧電膜のポアソン比は、0.3以下である構成とすることができる。
【0016】
本発明は、上記圧電薄膜共振子を含むフィルタである。
【0017】
本発明は、入力端子と出力端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振子と、前記入力端子と前記出力端子との間に直列に接続され、上記圧電薄膜共振子である1または複数の直列共振子と、を具備することを特徴とするフィルタである。
【0018】
上記構成において、前記1または複数の並列共振子は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成されており、前記1または複数の並列共振子の厚膜領域の幅は、前記1または複数の直列共振子の厚膜領域より広い構成とすることができる。
【0019】
本発明は、上記フィルタを含むことを特徴とする分波器である。
【0020】
上記構成において、共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタと、を具備し、前記第1フィルタは、上記フィルタであることを特徴とする分波器である。
【0021】
本発明は、上記圧電薄膜共振子を含むモジュールである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は、直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【図2】図2(a)は、1段ラダー型フィルタの構成図であり、図2(b)は、1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図3】図3(a)は、圧電薄膜共振子の平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【図4】図4(a)から図4(c)は、圧電薄膜共振子の別の例を示す断面図である。
【図5】図5(a)は、厚み縦振動の分散曲線を示す模式図であり、図5(b)は、図5(a)の分散曲線を有する共振子の通過特性のスミスチャートの模式図である。
【図6】図6は、ラダー型フィルタの通過特性を示す模式図である。
【図7】図7は、伝搬定数に対する周波数を示す模式図である。
【図8】図8(a)から図8(i)は、各定在波を示す模式図である。
【図9】図9(a)は、比較例1に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図9(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図10】図10(a)は、比較例2に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図,図10(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図11】図11(a)および図11(b)は、比較例2の共振領域中央部および薄膜領域における分散曲線を示す図である。
【図12】図12(a)は、比較例3に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図12(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図13】図13(a)からおよび図13(c)は、それぞれ比較例3の共振領域中央部、薄膜領域および厚膜領域における分散曲線を示す図である。
【図14】図14(a)は、比較例4に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図14(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図15】図15(a)および図15(b)は、それぞれ比較例4の共振領域中央部および厚膜領域における分散曲線を示す図である。
【図16】図16は、AlNの分散曲線の計算結果である。
【図17】図17は、実施例1においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。
【図18】図18(a)から図18(d)は、実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図19は、比較例3においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。
【図20】図20(a)から図20(d)は、実施例1および比較例3におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図21】図21は、基準、実施例1および比較例3の共振子の通過特性を示すスミスチャートである。
【図22】図22(a)および図22(b)は、実施例2に係る圧電薄膜共振子の断面を示す図である。
【図23】図23は、実施例3に係るラダー型フィルタの回路図である。
【図24】図24は、実施例4に係る分波器の回路図である。
【図25】図25は、実施例5に係る通信用モジュールのブロック図である。
【図26】図26は、実施例6に係る発振モジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、ラダー型フィルタを例にスプリアスについて説明する。図1(a)は、直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【0025】
図1(a)に示すように、直列共振子Sは、共振子を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子Tin、他方を出力端子Toutとしたものである。図1(b)に示すように、並列共振子Pは、共振子を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Tinと出力端子Toutの短絡線路に接続したものである。
【0026】
図1(c)の横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振子Sの通過特性を実線S、並列共振子Pの通過特性を点線Pで示す。図1(c)に示すように、直列共振子Sの通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有する。共振点frsにおいて通過量は最大となり、反共振点fasにおいて通過量は最小となる。一方、並列共振子Pの通過特性は、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有する。共振点frpにおいて通過量は最小となり、反共振点fapにおいて通過量は最大となる。
【0027】
図2(a)は、1段ラダー型フィルタの構成図であり、図2(b)は、1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。図2(a)に示すように、直列共振子Sが入力端子Tinと出力端子Toutとに直列に接続され、並列共振子Pが出力端子Toutとグランドとの間に接続される。例えば、直列共振子Sの共振点frsと並列共振子Pの反共振点fapとは概一致するように設計する。
【0028】
図2(b)の横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図2(a)の構成により、直列共振子Sと並列共振子Pとの通過特性が合成され、図2(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振子Sの共振点frsと並列共振子Pの反共振点fapとの付近において最大となる。一方、直列共振子Sの反共振点fas及び並列共振子Pの共振点frpにおいて極小となる。並列共振子Pの共振点frpと直列共振子Sの反共振点fasとの間の周波数帯域が通過帯域となり、並列共振子Pの共振点frp以下及び直列共振子Sの反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダー型フィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0029】
次に、共振子として圧電薄膜共振子を説明する。図3(a)は、圧電薄膜共振子の平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図3(a)および図3(b)のように、基板10上に、下部電極12が形成されている。下部電極12上に圧電膜14が形成されている。圧電膜14上に上部電極16が形成されている。圧電膜14を挟み下部電極12と上部電極16が対向する領域が共振領域20である。共振領域20下の基板10には、空隙18が形成されている。
【0030】
図4(a)から図4(c)は、圧電薄膜共振子の別の例を示す断面図である。図4(a)においては、基板10の上面に凹部を設け、基板10と下部電極12との間に空隙18が設けられている。図4(b)においては、基板10の上面は平坦であり、下部電極12と基板10との間に空隙18ができるように下部電極11を形成している。図4(c)においては、基板10と下部電極12との間に、空隙18の代わりに、弾性波を反射する音響反射膜19が設けられている。音響反射膜19としては、音響インピーダンスの高い膜と低い膜を弾性波の波長の膜厚で交互に積層した膜を用いることができる。
【0031】
図3(a)から図4(c)のように、圧電薄膜共振子は、薄膜により形成される脆弱なデバイスであり、ハンドリング等により損傷を受けないように基板10上に形成されている。しかしながら、優れた共振特性を得るためには、基板10と共振領域20とは音響的に絶縁されていることが好ましい。このため、空隙18または音響反射膜19は、共振領域20を包含するように設けられることが好ましい。または、空隙18または音響反射膜19は、共振領域20を部分的に含む領域に形成されていてもよい。
【0032】
圧電薄膜共振子は、下部電極12と上部電極16との間に高周波数信号を印加した際に、圧電膜14内で励振される厚み縦振動のバルク波を利用して共振特性を得る。圧電薄膜共振子は、厚み縦振動のバルク波の圧電膜14の膜厚方向の振動エネルギーの伝搬を利用する。しかしながら、圧電膜14の膜厚方向に交差する方向(例えば、膜厚方向に直交する方向、例えば、圧電膜14の平面方向)にも振動エネルギーの伝搬が存在する。この圧電膜14の膜厚方向に交差する方向に伝搬する振動エネルギーは、スプリアスとして、膜厚方向の振動エネルギーの伝搬である主振動に重畳し観測される。
【0033】
図5(a)は、厚み縦振動の分散曲線を示す模式図である。図5(a)において、横軸は圧電膜14の平面方向の伝搬定数(波数)である。縦軸は周波数である。周波数軸の右側は伝搬定数が実数であり、伝搬曲線がこの範囲の周波数においては、圧電膜14の平面方向のエネルギー伝搬が存在する。周波数軸の左側は伝搬定数が虚数であり、伝搬曲線がこの範囲の周波数においては、圧電膜14の平面方向のエネルギー伝搬が存在しない。すなわち、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬しない。分散曲線が周波数軸と交わる点は遮断周波数である。図5(a)では、遮断周波数以上の周波数においては、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬しない。一方、遮断周波数以下の周波数においては、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬する。一般的には、遮断周波数は、共振子の共振周波数とほぼ一致する。図5(a)のように、分散曲線が遮断周波数より低周波数領域において実数となるのは、一般的にポアソン比が0.3以下の物質である。ポアソン比が0.3以下の物質として、例えば(002)方向に配向された窒化アルミニウム(AlN)等がある。
【0034】
図5(b)は、図5(a)の分散曲線を有する共振子の通過特性のスミスチャートの模式図である。図5(b)のように、共振点より低周波数側にスプリアスが生成されている。このように、図5(a)の分散曲線を有する共振子は、共振周波数より低い周波数において、圧電膜14の平面方向の伝搬定数が実数のため、弾性波が圧電膜14の平面方向に伝搬し、スプリアスが生成される。一方、共振周波数より高い周波数において、圧電膜14の平面方向の伝搬定数が虚数のため、弾性波が圧電膜14の平面方向に伝搬せず、スプリアスが生成されない。
【0035】
図6は、ラダー型フィルタの通過特性を示す模式図である。図5(b)の通過特性を有する共振子を用い、ラダー型フィルタを形成する。図6の点線は、図5(b)のスプリアスの影響を考慮しないラダー型フィルタの通過特性を示す。図6の実線は、図5(b)のスプリアスの影響を考慮したラダー型フィルタの通過特性を示す。図6のように、スプリアスを考慮すると、通過帯域内に複数のリップルが形成される。このリップルは、各共振子のスプリアスが重畳されたため生じたものである。このように、共振子のスプリアスは、フィルタの挿入損失を劣化させ、また通過特性内のリップスを発生させる。このため、共振子のスプリアスの抑制が求められる。
【0036】
スプリアスの抑制を検討するに当りピストンモードについて検討する。図7は、伝搬定数に対する周波数を示す模式図である。図8(a)から図8(i)は、各定在波を示す模式図である。図8(a)のように、励振領域の長さdの端部が支持されない圧電板24を仮定する。圧電板24には、0次から高次の定在波が生成される。このうち、0次から7次の定在波の周波数をそれぞれω0からω7とする。図8(b)から図8(i)の太実線は、それぞれ0次から7次の定在波を示している。図7において、0次の定在波は、伝搬定数が0の弾性波に対応する。すなわち、ω0は共振周波数にほぼ等しい。1次から6次の定在波は、それぞれ伝搬定数が2π/(d/1)から2π/(d/6)の弾性波に対応する。
【0037】
図8(b)から図8(i)のように、ピストンモードにおいては、圧電板24の端部が支持されていないため、端部において、弾性波の変位は最大値となる。この変位モードをピストンモードとよぶ。ピストンモードにおいては、変位量を圧電板24の長さ方向に積分したとき、図8(b)の0次の定在波以外は、ゼロとなる。これは、0次の定在波以外では、圧電板24の表面の電荷の総和がゼロになることを示している。よって、共振応答以外には電気的に出力されず、スプリアスは生成されない。0次の定在波の場合は、伝搬定数は0であり、圧電体24の平面方向の伝搬がないため、スプリアスは生成されない。
【0038】
以上のように、ピストンモードにおいては、スプリアスは生成されない。しかしながら、実際の共振子においては、共振領域20が基板10に支持されている。このため、圧電板の端部が完全自由端ではない。
【0039】
比較例1を参照し、スプリアスが生じるモデルについて説明する。図9(a)は、比較例1に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図9(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。図9(a)は、比較例1の共振領域20の端部付近の基板10、下部電極12、圧電膜14、上部電極16および空隙18を示す模式図である。図9(b)は、図9(a)の圧電膜14の平面方向の位置Xに対する圧電膜14の変位を示す図である。破線は、理想的な場合を示している。理想的には、圧電膜14の変位は共振領域20の端でアブラプトに0になる。しかしながら、実際の圧電膜14の変位は実線のように、位置Xに対しなだらかに変化する。これは、圧電膜14の端部が完全自由端ではないため、基板10で支持される領域の圧電膜14は、単純減衰振動するためである。共振領域20では、この振動の干渉を受けて、ピストンモードが歪められる。この結果、0次の定在波以外の定在波においても、共振領域20内の平面方向の電荷の総和が有値となり、スプリアス応答が電気的に出力されてしまう。
【0040】
次に、比較例2について説明する。比較例2は特許文献1に対応する例である。図10(a)は、比較例2に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図,図10(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。図10(a)のように、共振領域20の端に薄膜領域30が設けられている。薄膜領域30において、上部電極16の膜厚が薄くなっている。その他の構成は、比較例1の図9(a)と同じであり説明を省略する。
【0041】
図11(a)および図11(b)は、比較例2の共振領域中央部および薄膜領域における分散曲線を示す図である。図11(a)のように、共振領域20の中央部においては、共振領域20の共振周波数frはほぼ遮断周波数f0である。遮断周波数f0より低周波数側がスプリアスが生成する周波数領域40となっている。図11(b)のように、薄膜領域30においては、上部電極16が薄いため、遮断周波数f0が高周波数側にシフトする。これにより、薄膜領域30においては、共振領域20の中央部における弾性波と同じ周波数の弾性波の波数が大きくなる。よって、図10(b)のように、実際の位置Xに対する変位が理想的な変位に近づく。したがって、比較例2においては、比較例1に比べ、スプリアスが抑制される。
【0042】
次に、比較例3について説明する。比較例3は特許文献2および非特許文献1に対応する例である。図12(a)は、比較例3に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図12(b)は、圧電膜14の変位を示す模式図である。図12(a)のように、比較例2の図10(a)に比べ、薄膜領域30の外側に厚膜領域32が設けられている。厚膜領域32において上部電極16の膜厚が共振領域20の中央部より厚くなっている。その他の構成は、比較例2の図10(a)と同じであり説明を省略する。
【0043】
図13(a)からおよび図13(c)は、それぞれ比較例3の共振領域中央部、薄膜領域および厚膜領域における分散曲線を示す図である。図13(a)および図13(b)の分散曲線は、比較例2の図11(a)および図11(b)と同じである。このため、図12(b)のように、位置Xに対する変位は、比較例2の図10(b)とほぼ同じである。図13(c)のように、厚膜領域32においては、上部電極16が厚いため、遮断周波数f0が低周波側にシフトする。これにより、厚膜領域32においては、共振領域20の共振周波数frの弾性波の分散定数は虚数となり、伝搬できなくなる。これにより、圧電膜14の平面方向に伝搬する弾性波を厚膜領域32においてより確実に減衰させることができる。よって、スプリアスをより確実に抑制できる。
【0044】
しかしながら、比較例2および比較例3においては、図11(b)および図13(b)のように、薄膜領域30において、遮断周波数f0が共振領域20の共振周波数frより高周波数側にシフトする。このため、共振領域20の共振周波数frより高い周波数においても伝搬定数が実数である。これにより、共振に寄与しない弾性波が減衰せず、損失が生じてしまう。
【0045】
次に、比較例4について説明する。図14(a)は、比較例4に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図14(b)は、圧電膜14の変位を示す模式図である。図14(a)のように、共振領域20の端に厚膜領域32が設けられている。厚膜領域32において上部電極16の膜厚が共振領域20の中央部より厚くなっている。その他の構成は、比較例1の図9(a)と同じであり説明を省略する。
【0046】
図15(a)および図15(b)は、それぞれ比較例4の共振領域中央部および厚膜領域における分散曲線を示す図である。図15(a)および図15(b)の分散曲線は、比較例3の図13(a)および図13(c)と同じである。図15(b)のように、厚膜領域32においては、共振領域20の共振周波数frの弾性波の分散定数は虚数となり、伝搬できなくなる。これにより、圧電膜14の平面方向に伝搬する弾性波を厚膜領域32において減衰させることができる。よって、損失を小さくすることができる。しかしながら、比較例4は比較例2のように薄膜領域30が設けられていない。よって、図11(b)のように、遮断周波数f0を高くできない。このため、図14(b)のように、比較例1と同様に、変位は位置Xに対しなだらかに変化する。よって、スプリアスを抑制することができない。
【0047】
図2(b)のように、直列共振子Sにおいては、共振周波数frs以下の周波数帯域にスプリアスが生じると、通過帯域内にスプリアスが影響してしまう。一方、並列共振子Pにおいては、共振周波数frp以下の周波数帯域にスプリアスが生じても通過帯域外である。特許文献1においては、直列共振子として、スプリアスを抑制可能な比較例2の共振子を用い、並列共振子として、損失を抑制可能な可能な比較例4の共振子を用いることが提案されている。
【0048】
しかしながら、この方法では、直列共振子の上部電極16に薄膜領域30を形成し、並列共振子の上部電極16に厚膜領域32を形成することになる。このように、上部電極16に薄膜領域30と厚膜領域32を形成するのでは、上部電極16の加工が複雑となり、製造コストが増大してしまう。同様に、比較例3に係る共振子のように、1つの共振子内の上部電極16に、薄膜領域30と厚膜領域32とを形成する場合も製造コストが増大してしまう。以下に、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することが可能な実施例について説明する。
【実施例1】
【0049】
図16は、AlNの分散曲線の計算結果である。図16の横軸は波数、縦軸は周波数である。分散曲線は、下部電極12を膜厚が350nmのモリブデン膜、上部電極16を膜厚が300nmのモリブデン膜、圧電膜14を膜厚が1050nmのAlN膜として計算した。
【0050】
図16において、モードTEは、厚み縦振動モードであり、モードTSは厚み横すべり振動のモードを示す。モードTE1で示した実線が圧電薄膜共振子として機能するための主モードである。主モードTE1のうち波数が実数であり、かつ波数とともに周波数が減少する領域がスプリアスが生成される領域(図16のTE1のうち破線領域)である。ここで、図16において、主モードTE1と同じ厚み縦振動モードの低次の振動モードTE0(破線で図示)に着目する。図16では、主モードTE1が1次モードであり、モードTE0は0次モードである。モードTE0は、共振点がなく、共振に寄与しない。すなわち、機械共振には用いられず、電気特性として寄与しないモードである。このモードTE0を共振領域20の端部において、利用することにより、損失を増加させることなくスプリアスを抑制できることを見出した。
【0051】
図17は、実施例1においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。図17のように、共振領域20の端部に厚膜領域32が形成されている共振子について有限要素法を用いシミュレーションを行った。図17の構成は、図14(a)と同じである。共振領域20の中心(左側の点線)を鏡面境界としている。シミュレーションにおいては、共振領域20の幅(全体の共振領域20の幅の半分)Wrを40μm、共振領域20の中央部に対する厚膜領域32の上部電極16の高さt、厚膜領域32の幅Wをパラメータとした。高さt=0の共振子を基準の共振子とした。共振点のQ値、反共振点のQ値、実効的電気機械結合係数Keff2、スプリアスの増加量を計算した。
【0052】
スプリアスの増加量は、複数のスプリアスを共振点から近い順に、1次、2次、3次、…n次のスプリアスとし、1次から3次のスプリアスの減衰量の総和を計算した。この減衰量の総和から基準の共振子の減衰量の総和を引いた値を、スプリアスの増加量とした。スプリアス増加量が負の場合、基準の共振子に比べスプリアスが抑制されていることを示している。
【0053】
図18(a)から図18(d)は、実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。図18(a)は、厚膜領域32の幅Wに対する共振点のQ値、図18(b)は、幅Wに対する反共振点のQ値、図18(c)は、幅Wに対する実効的電気機械結合係数Keff2、図18(d)は、幅Wに対するスプリアス増加量を示している。幅Wが0の黒丸は基準の共振子の値を示している。白四角、白三角および白丸はそれぞれ高さtが25nm、100nm、および200nmの計算結果である。
【0054】
図18(d)より、厚膜領域32の幅Wが800μm以下では、いずれの高さtにおいてもスプリアス増加量は、ほぼ負になる。すなわち、基準の共振子に比べスプリアスがほぼ抑制されている。さらに、図18(a)から図18(c)のように、厚膜領域32の幅Wが800μm以下の領域では、共振点のQ値、反共振点のQ値および実効的電気機械結合係数Keff2とも微増している範囲が多い。これにより、厚膜領域32の幅Wを800μm以下としても共振特性に悪影響はない。
【0055】
表1は、高さt=200nmのときの、1次から3次のスプリアスが生成される周波数におけるモードTE0の波長を示す表である。表1のように、スプリアスの次数によらず、モードTE0の波長は1.69μmから1.7μmである。以上の結果から、スプリアスが抑制される厚膜領域32の幅Wは、モードTE0の波長の約1/2以下である。
【表1】
【0056】
モードTE0は、主モードであるモードTE1と同様の厚み縦振動モードである。このため、モードTE0とモードTE1とは干渉し易い。このため、共振領域20の端部において、厚膜領域32の幅WをモードTE0と干渉させることにより、モードTE1のスプリアスが抑制できたものと考えられる。さらに、モードTE0は共振には寄与しないため、モードTE0により共振特性への悪影響はほとんどないものと考えられる。
【0057】
このような、考察によれば、厚膜領域32の幅Wは、モードTE0の波長以下であることが好ましく、モードTE0の波長の1/2以下であることがより好ましい。さらに、1/3以下であることがより好ましい。
【0058】
ここで、圧電膜14が単層の圧電薄膜共振子を仮定した場合、モードTE0の分散式は数式1のようになる。
【数1】
ここで、fは励振周波数、kは端数、c11は圧電膜14のスティフネス、ρは圧電膜の密度である。
【0059】
実際の圧電薄膜共振子においては、下部電極12および上部電極16等が圧電膜14に付加される。このため、数式1は数式2のように不等式となる。
【数2】
共振周波数をfrとすると、モードTE0の波長λは、数式3の不等式を満たす。
【数3】
【0060】
例えば、共振子の共振周波数fr=2.07GHz、AlNのスティフネスc11=3.45×1011N/m2、AlNの密度ρ=3260kg/m3とすると、数式3は、λ<5μmとなる。これは、上述のモードTE0の波長の計算結果であるλ=1.69〜1.7μmと一致する。5μmと1.69〜1.7μmとの差は、下部電極12および上部電極16の質量付加に相当すると考えられる。図18の計算では、実効的電気機械結合係数keff2を高めるため、下部電極12および上部電極16の密度を高く、膜厚を厚くしているため、音速が減じられ、モードTE0と数式3との乖離が大きくなっている。
【0061】
上述のように、厚膜領域32の幅WをモードTE0と干渉させるためには、厚膜領域32の幅Wは、数式4の不等式を満たすことが好ましい。
【数4】
【0062】
次に、実施例1と比較例3との比較を行なった。図19は、比較例3においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。図19のように、共振領域20の端部に薄膜領域30および厚膜領域32が形成されている共振子について有限要素法を用いシミュレーションを行った。図19の構成は、図12(a)と同じである。共振領域20の中心を鏡面境界としている。シミュレーションにおいては、共振領域20の中央部に対する厚膜領域32の上部電極16の高さt0、共振領域20の中央部に対する薄膜領域30の上部電極16の高さt、厚膜領域32の幅W0、薄膜領域30の幅Wをパラメータとした。幅W0を2μm、高さt0を100nm、高さtを25nmと固定してシミュレーションした。実施例1のシミュレーションに用いた構造は図17と同じである。実施例1の高さtは200nmとしてシミュレーションした。
【0063】
図20(a)から図20(d)は、実施例1および比較例3におけるシミュレーション結果を示す図である。図20(a)は、幅Wに対するスプリアス増加量、図20(b)は、幅Wに対する共振点のQ値、図20(c)は、幅Wに対する反共振点のQ値、図20(d)は、幅Wに対する実効的電気機械結合係数Keff2を示している。黒丸は比較例3、白丸は実施例1を示している。幅W=0の黒丸は基準の共振子を示している。
【0064】
図20(a)のように、比較例3においては、幅W=2μm近傍にてスプリアスの抑制が最大となる。一方、実施例1においては、幅W=0.4μm近傍においてスプリアスの抑制が最大となる。図20(b)および図20(c)において、スプリアスの抑制が最大となる幅Wにおいて、共振点のQ値および反共振点のQ値を比較すると、比較例3では、幅W=2μmにおいて、Q値は、基準の共振子より小さくなる。一方、実施例1では、幅W=0.4μmにおいて、Q値は、基準の共振子と同程度である。
【0065】
図21は、基準、実施例1および比較例3の共振子の通過特性を示すスミスチャートである。実線が実施例1の幅W=0.4μm、破線が比較例3の幅W=2μm、点線が基準の共振子のシミュレーション結果を示している。比較例3においては、共振点より高い周波数において、通過特性が基準より内側を通る。これは、比較例3において、損失が多いことを示している。一方、実施例1においては、共振点より高い周波数において、基準の共振子とほぼ同じである。このように、実施例1は、基準の共振子とほぼ同じ損失である。一方、共振点より低周波数側において、実施例1は基準の共振子よりスプリアスが小さい。このように、実施例1においては、損失の増大を抑えつつ、スプリアスを抑制することができる。
【0066】
実施例1によれば、厚膜領域32の幅Wを、圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭くする。これにより、厚膜領域32と圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波とを干渉させスプリアスを抑制することができる。
【0067】
ここで、圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、例えば、圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波である。すなわち、例えば、厚膜領域32の幅WをモードTE0の波長より狭くする。これにより、共振特性の劣化を抑制し、かつスプリアスを抑制することができる。
【0068】
さらに、厚膜領域32の幅Wは、数式4を満足する。これにより、厚膜領域32と弾性波とを干渉させスプリアスを抑制することができる。
【0069】
さらに、実施例1によれば、共振領域20に上部電極16の厚膜領域32の幅Wを設定するだけであり、比較例3のように、上部電極16に厚膜領域32と薄膜領域30とを形成しない。このため、上部電極16の加工が簡単となり、製造コストを抑制できる。
【0070】
なお、実施例1においては、厚膜領域32を上部電極16が共振領域20の中央部に対し厚く形成された領域としたが、厚膜領域32は、下部電極12および上部電極16の少なくとも一方が共振領域20の中央部に対し厚く形成された領域でもよい。しかしながら、下部電極12に段差があると、配向性の高い圧電膜14を形成した際に、圧電膜14のクラックの起点になりやすい。よって、良好な膜質の圧電膜14を形成するためには、共振領域20内の下部電極12の膜厚は一定であり、上部電極16の共振領域20の端の膜厚を中央部に対し厚くすることが好ましい。
【0071】
下部電極12および上部電極16としては、モリブデン以外にも、Cr(クロム)、Ru(ルテニウム)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)もしくはIr(イリジウム)等の金属膜またはこれらの複合膜を用いることができる。基板10としては、Si基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板等を用いることができる。圧電膜14はAlN以外にも、ZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PbTiO3(チタン酸鉛)等を用いることができる。しかしながら、図5(a)のように、遮断周波数より小さい周波数において、伝搬定数が実数となるためには、圧電膜14のポアソン比は0.3以下であることが好ましい。
【実施例2】
【0072】
図19(a)および図20において、実施例1は比較例3に比べ、損失は小さいものの、スプリアスの抑制度は大きくない。これは、スプリアスを抑制する共振領域20の端部に波数が虚数となる領域が存在しないためと考えられる。モードTE0は、遮断周波数を有さないモードであるため、上部電極16の厚膜化または薄膜化により、共振領域の外側に波数が虚数となる領域を形成することが難しい。
【0073】
図22(a)および図22(b)は、実施例2に係る圧電薄膜共振子の断面を示す図である。図22(a)のように、厚膜領域32の外側の領域34において、圧電膜14の膜厚が共振領域20より薄くなっている。また、図22(b)のように、厚膜領域32の外側の領域34において、下部電極12の膜厚が共振領域20より薄くなっている。これにより、厚膜領域32と領域34とで、モードTE0の波数の差を広げることが可能である。これにより、厚膜領域32と領域34との音響インピーダンスの不整合を増大させ、スプリアスの抑制を高めることができる。
【0074】
実施例2によれば、図22(a)のように、共振領域20の外側の圧電膜14は、共振領域20の圧電膜14より薄くすることができる。これにより、スプリアスをより抑制することができる。
【0075】
また、図22(b)のように、厚膜領域32においては、下部電極12および上部電極16のいずれか一方が共振領域20の中央部に対し厚く形成されている場合、共振領域20の外側の下部電極および上部電極の他方は、共振領域20より薄いことが好ましい。これにより、スプリアスをより抑制することができる。
【実施例3】
【0076】
実施例3は、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子をラダー型フィルタに用いる例である。図23は、実施例3に係るラダー型フィルタの回路図である。図23のように、実施例3に係るラダー型フィルタは、1または複数の直列共振子S1からS3および1または複数の並列共振子P1およびP2を備えている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振子S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振子P1およびP2が並列に接続されている。
【0077】
図5(b)のように、スプリアスが共振周波数より低周波数側において生じる場合、図2(b)のように、直列共振子Sにスプリアスが発生すると、通過帯域内にリップルが発生してしまう。一方、並列共振子Pにスプリアスが発生しても、通過帯域内にリップルは発生しない。
【0078】
そこで、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子を直列共振子S1からS3として用いる。これにより、通過帯域のスプリアスを抑制できる。
【0079】
さらに、直列共振子S1からS3においては、実施例1の厚膜領域32の幅Wを狭くし、図18(d)のように、スプリアスを抑制する。一方、並列共振子P1およびP2においては、厚膜領域32の幅Wを広くし、図18(a)および図18(b)のように、Q値を高くする。このように、並列共振子P1およびP2の厚膜領域32の幅を直列共振子S1からS3の厚膜領域32より広くする。これにより、通過帯域内のリップルを抑制し、通過帯域の損失の小さいラダー型フィルタを提供することができる。さらに、薄膜領域30を設けなくてよいため、製造コストを抑制できる。
【実施例4】
【0080】
実施例4は、実施例3に係るラダー型フィルタを分波器に用いる例である。図24は、実施例4に係る分波器の回路図である。図24のように、実施例4に係る分波器54は、第1フィルタ50および第2フィルタ52を備えている。第1フィルタ50は、共通端子Tantと第1端子T1との間に接続されている。第2フィルタ52は、共通端子Tantと第2端子T2との間に接続されている。第2フィルタ52の通過帯域は第1フィルタ50より高周波数側である。一般的には、通過帯域が低い第1フィルタ50が送信フィルタであり、通過帯域が高い第2フィルタ52が受信フィルタである場合が多い。
【0081】
第1フィルタ50が送信フィルタ、第2フィルタ52が受信フィルタの場合、第1フィルタ50は第1端子T1に入力された送信信号をフィルタリングして共通端子Tantに出力する。第1フィルタ50は、受信信号を抑圧することにより、受信信号が第1端子T1に出力されることを抑制する。第2フィルタ52は、共通端子Tantに入力された受信信号をフィルタリングして第2端子T2に出力する。第2フィルタ52は、送信信号を抑圧することにより、送信信号が第2端子T2に出力されることを抑制する。
【0082】
直列共振子のQ値が低い場合、通過帯域の高周波数側の急峻性が劣化する。このため、比較例3のように、スプリアスの抑制と、Q値との間にトレードオフのある共振子を直列共振子に用いた場合、通過帯域の高周波側の急峻性が犠牲となってしまう。実施例1および実施例2の共振子は、図20(a)から図20(c)のように、スプリアスの抑制と、Q値との両立が可能である。よって、通過帯域の高周波数側の急峻性が要求されるフィルタに用いることが好ましい。よって、第1フィルタ50と第2フィルタ52とのうち少なくとも第1フィルタ50を実施例3に係るラダー型フィルタとすることが好ましい。
【実施例5】
【0083】
実施例5は、実施例4に係る分波器を備える通信モジュールの例である。図25は、実施例5に係る通信用モジュールのブロック図である。図25のように、通信モジュール60は、アンテナ68、アンテナスイッチ62、分波器バンク64、並びにアンプモジュール46を備える。通信モジュール60は、例えば携帯電話用のRFモジュールであり、GSM(Global System for Mobile Communication)通信方式及びW−CDMA通信方式等、複数の通信方式に対応している。GSM方式については、850MHz帯(GSM850)、900MHz帯(GSM900)、1800MHz帯(GSM1800)、1900MHz帯(GSM1900)に対応している。アンテナ104は、GSM方式及びW−CDMA方式いずれの送受信信号をも送受信できる。
【0084】
分波器バンク64は、複数の分波器64a〜64cを含む。複数の分波器64aから64cは、それぞれ送信フィルタ50a〜50cおよび受信フィルタ52a〜52bを含む。複数の分波器64aから64cは、それぞれ複数の通信方式の各々に対応した分波器である。アンテナスイッチ62は、送受信する信号の通信方式に応じて、分波器バンク64が備える複数の分波器から、通信方式に対応する分波器を選択し、選択された分波器とアンテナ68とを接続する。各分波器はアンプモジュール66に接続されている。アンプモジュール66は分波器64a〜64cの送信フィルタ50a〜50cが受信した信号を増幅し、処理部に出力する。またアンプモジュール66は、処理部により生成された信号を増幅し分波器の受信フィルタ52a〜52bに出力する。
【0085】
分波器64a〜64cの少なくとも1つが実施例4に係る分波器54である。これにより、通過帯域のリップルを抑制しかつ損失の小さな通信モジュールを提供できる。通信モジュールは、例えば無線LAN(Local Area Network)、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)等の電子装置に搭載してもよい。
【実施例6】
【0086】
実施例6は、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子を含む発振モジュールの例である。図26は、実施例6に係る発振モジュールのブロック図である。図26のように、発振モジュール70は、増幅器72、圧電薄膜共振子74および加算器76を備えている。増幅器72の出力は、圧電薄膜共振子74を介し増幅器72の入力に帰還されている。加算器76は、増幅器72の出力を入力に正帰還させる。これにより、発振モジュール70は、発振器として機能する。
【0087】
実施例5および実施例6のように、通信モジュールおよび発振モジュールのようなモジュールに、実施例1または実施例2の圧電薄膜共振子を用いることができる。
【0088】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 基板
12 下部電極
14 圧電膜
16 上部電極
18 空隙
20 共振領域
32 厚膜領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜共振子、フィルタおよびモジュールに関し、例えば、共振領域端に厚膜領域を有する圧電薄膜共振子、フィルタおよびモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、高周波フィルタへの需要が急速に拡大している。特に小型で高い急峻性を有する弾性波フィルタへの需要は旺盛である。弾性波フィルタには、弾性波共振子が用いられる。例えば、2GHz帯を越える高周波数帯において、小型化および低損失な共振子として圧電薄膜共振子が注目されている。圧電薄膜共振子は、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極に挟まれた圧電膜を備える。圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが重なる領域が共振に寄与する共振領域である。共振特性には、主に共振膜の膜厚方向に伝搬する弾性波が寄与する。この膜厚方向に伝搬する弾性波が横方向に伝搬するとスプリアスの原因となる。
【0003】
特許文献1には、共振領域の端部に上部電極の膜厚が共振領域の中央部より薄い薄膜領域を設けることにより、弾性波の横方向への伝搬を抑制し、スプリアスを抑制することが記載されている。さらに、特許文献2および非特許文献1には、薄膜領域の外側に、共振領域の中央部より上部電極の膜厚が厚い厚膜領域を設けることにより、より確実に、弾性波の横方向への伝搬を抑制し、スプリアスを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109472号公報
【特許文献2】特開2007−6501号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proceeding of IEEE international ultrasonic symposium 2006, pp456-459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、損失が大きくなってしまう。また、特許文献2および非特許文献1の方法では、上部電極の膜厚を三段階にすることになり、製造コストが増大する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭いことを特徴とする圧電薄膜共振子である。本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【0009】
本発明は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅wは、前記圧電薄膜共振子の共振周波数をfr、前記圧電膜のスティフネスをc11、前記圧電膜の密度をρとしたとき、
であることを特徴とする圧電薄膜共振子である。本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、前記圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長の1/2以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記共振領域の前記下部電極下には空隙または音響多層膜が形成されている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記共振領域の外側の前記圧電膜は、前記共振領域の前記圧電膜より薄い構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記厚膜領域においては、前記下部電極および前記上部電極のいずれか一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成され、前記共振領域の外側の前記下部電極および前記上部電極の他方は、前記共振領域より薄い構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記圧電膜のポアソン比は、0.3以下である構成とすることができる。
【0016】
本発明は、上記圧電薄膜共振子を含むフィルタである。
【0017】
本発明は、入力端子と出力端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振子と、前記入力端子と前記出力端子との間に直列に接続され、上記圧電薄膜共振子である1または複数の直列共振子と、を具備することを特徴とするフィルタである。
【0018】
上記構成において、前記1または複数の並列共振子は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成されており、前記1または複数の並列共振子の厚膜領域の幅は、前記1または複数の直列共振子の厚膜領域より広い構成とすることができる。
【0019】
本発明は、上記フィルタを含むことを特徴とする分波器である。
【0020】
上記構成において、共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタと、を具備し、前記第1フィルタは、上記フィルタであることを特徴とする分波器である。
【0021】
本発明は、上記圧電薄膜共振子を含むモジュールである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は、直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【図2】図2(a)は、1段ラダー型フィルタの構成図であり、図2(b)は、1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図3】図3(a)は、圧電薄膜共振子の平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【図4】図4(a)から図4(c)は、圧電薄膜共振子の別の例を示す断面図である。
【図5】図5(a)は、厚み縦振動の分散曲線を示す模式図であり、図5(b)は、図5(a)の分散曲線を有する共振子の通過特性のスミスチャートの模式図である。
【図6】図6は、ラダー型フィルタの通過特性を示す模式図である。
【図7】図7は、伝搬定数に対する周波数を示す模式図である。
【図8】図8(a)から図8(i)は、各定在波を示す模式図である。
【図9】図9(a)は、比較例1に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図9(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図10】図10(a)は、比較例2に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図,図10(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図11】図11(a)および図11(b)は、比較例2の共振領域中央部および薄膜領域における分散曲線を示す図である。
【図12】図12(a)は、比較例3に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図12(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図13】図13(a)からおよび図13(c)は、それぞれ比較例3の共振領域中央部、薄膜領域および厚膜領域における分散曲線を示す図である。
【図14】図14(a)は、比較例4に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図14(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。
【図15】図15(a)および図15(b)は、それぞれ比較例4の共振領域中央部および厚膜領域における分散曲線を示す図である。
【図16】図16は、AlNの分散曲線の計算結果である。
【図17】図17は、実施例1においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。
【図18】図18(a)から図18(d)は、実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図19は、比較例3においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。
【図20】図20(a)から図20(d)は、実施例1および比較例3におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図21】図21は、基準、実施例1および比較例3の共振子の通過特性を示すスミスチャートである。
【図22】図22(a)および図22(b)は、実施例2に係る圧電薄膜共振子の断面を示す図である。
【図23】図23は、実施例3に係るラダー型フィルタの回路図である。
【図24】図24は、実施例4に係る分波器の回路図である。
【図25】図25は、実施例5に係る通信用モジュールのブロック図である。
【図26】図26は、実施例6に係る発振モジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、ラダー型フィルタを例にスプリアスについて説明する。図1(a)は、直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【0025】
図1(a)に示すように、直列共振子Sは、共振子を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子Tin、他方を出力端子Toutとしたものである。図1(b)に示すように、並列共振子Pは、共振子を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Tinと出力端子Toutの短絡線路に接続したものである。
【0026】
図1(c)の横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振子Sの通過特性を実線S、並列共振子Pの通過特性を点線Pで示す。図1(c)に示すように、直列共振子Sの通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有する。共振点frsにおいて通過量は最大となり、反共振点fasにおいて通過量は最小となる。一方、並列共振子Pの通過特性は、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有する。共振点frpにおいて通過量は最小となり、反共振点fapにおいて通過量は最大となる。
【0027】
図2(a)は、1段ラダー型フィルタの構成図であり、図2(b)は、1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。図2(a)に示すように、直列共振子Sが入力端子Tinと出力端子Toutとに直列に接続され、並列共振子Pが出力端子Toutとグランドとの間に接続される。例えば、直列共振子Sの共振点frsと並列共振子Pの反共振点fapとは概一致するように設計する。
【0028】
図2(b)の横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図2(a)の構成により、直列共振子Sと並列共振子Pとの通過特性が合成され、図2(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振子Sの共振点frsと並列共振子Pの反共振点fapとの付近において最大となる。一方、直列共振子Sの反共振点fas及び並列共振子Pの共振点frpにおいて極小となる。並列共振子Pの共振点frpと直列共振子Sの反共振点fasとの間の周波数帯域が通過帯域となり、並列共振子Pの共振点frp以下及び直列共振子Sの反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダー型フィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0029】
次に、共振子として圧電薄膜共振子を説明する。図3(a)は、圧電薄膜共振子の平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。図3(a)および図3(b)のように、基板10上に、下部電極12が形成されている。下部電極12上に圧電膜14が形成されている。圧電膜14上に上部電極16が形成されている。圧電膜14を挟み下部電極12と上部電極16が対向する領域が共振領域20である。共振領域20下の基板10には、空隙18が形成されている。
【0030】
図4(a)から図4(c)は、圧電薄膜共振子の別の例を示す断面図である。図4(a)においては、基板10の上面に凹部を設け、基板10と下部電極12との間に空隙18が設けられている。図4(b)においては、基板10の上面は平坦であり、下部電極12と基板10との間に空隙18ができるように下部電極11を形成している。図4(c)においては、基板10と下部電極12との間に、空隙18の代わりに、弾性波を反射する音響反射膜19が設けられている。音響反射膜19としては、音響インピーダンスの高い膜と低い膜を弾性波の波長の膜厚で交互に積層した膜を用いることができる。
【0031】
図3(a)から図4(c)のように、圧電薄膜共振子は、薄膜により形成される脆弱なデバイスであり、ハンドリング等により損傷を受けないように基板10上に形成されている。しかしながら、優れた共振特性を得るためには、基板10と共振領域20とは音響的に絶縁されていることが好ましい。このため、空隙18または音響反射膜19は、共振領域20を包含するように設けられることが好ましい。または、空隙18または音響反射膜19は、共振領域20を部分的に含む領域に形成されていてもよい。
【0032】
圧電薄膜共振子は、下部電極12と上部電極16との間に高周波数信号を印加した際に、圧電膜14内で励振される厚み縦振動のバルク波を利用して共振特性を得る。圧電薄膜共振子は、厚み縦振動のバルク波の圧電膜14の膜厚方向の振動エネルギーの伝搬を利用する。しかしながら、圧電膜14の膜厚方向に交差する方向(例えば、膜厚方向に直交する方向、例えば、圧電膜14の平面方向)にも振動エネルギーの伝搬が存在する。この圧電膜14の膜厚方向に交差する方向に伝搬する振動エネルギーは、スプリアスとして、膜厚方向の振動エネルギーの伝搬である主振動に重畳し観測される。
【0033】
図5(a)は、厚み縦振動の分散曲線を示す模式図である。図5(a)において、横軸は圧電膜14の平面方向の伝搬定数(波数)である。縦軸は周波数である。周波数軸の右側は伝搬定数が実数であり、伝搬曲線がこの範囲の周波数においては、圧電膜14の平面方向のエネルギー伝搬が存在する。周波数軸の左側は伝搬定数が虚数であり、伝搬曲線がこの範囲の周波数においては、圧電膜14の平面方向のエネルギー伝搬が存在しない。すなわち、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬しない。分散曲線が周波数軸と交わる点は遮断周波数である。図5(a)では、遮断周波数以上の周波数においては、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬しない。一方、遮断周波数以下の周波数においては、弾性波は圧電膜14の平面方向に伝搬する。一般的には、遮断周波数は、共振子の共振周波数とほぼ一致する。図5(a)のように、分散曲線が遮断周波数より低周波数領域において実数となるのは、一般的にポアソン比が0.3以下の物質である。ポアソン比が0.3以下の物質として、例えば(002)方向に配向された窒化アルミニウム(AlN)等がある。
【0034】
図5(b)は、図5(a)の分散曲線を有する共振子の通過特性のスミスチャートの模式図である。図5(b)のように、共振点より低周波数側にスプリアスが生成されている。このように、図5(a)の分散曲線を有する共振子は、共振周波数より低い周波数において、圧電膜14の平面方向の伝搬定数が実数のため、弾性波が圧電膜14の平面方向に伝搬し、スプリアスが生成される。一方、共振周波数より高い周波数において、圧電膜14の平面方向の伝搬定数が虚数のため、弾性波が圧電膜14の平面方向に伝搬せず、スプリアスが生成されない。
【0035】
図6は、ラダー型フィルタの通過特性を示す模式図である。図5(b)の通過特性を有する共振子を用い、ラダー型フィルタを形成する。図6の点線は、図5(b)のスプリアスの影響を考慮しないラダー型フィルタの通過特性を示す。図6の実線は、図5(b)のスプリアスの影響を考慮したラダー型フィルタの通過特性を示す。図6のように、スプリアスを考慮すると、通過帯域内に複数のリップルが形成される。このリップルは、各共振子のスプリアスが重畳されたため生じたものである。このように、共振子のスプリアスは、フィルタの挿入損失を劣化させ、また通過特性内のリップスを発生させる。このため、共振子のスプリアスの抑制が求められる。
【0036】
スプリアスの抑制を検討するに当りピストンモードについて検討する。図7は、伝搬定数に対する周波数を示す模式図である。図8(a)から図8(i)は、各定在波を示す模式図である。図8(a)のように、励振領域の長さdの端部が支持されない圧電板24を仮定する。圧電板24には、0次から高次の定在波が生成される。このうち、0次から7次の定在波の周波数をそれぞれω0からω7とする。図8(b)から図8(i)の太実線は、それぞれ0次から7次の定在波を示している。図7において、0次の定在波は、伝搬定数が0の弾性波に対応する。すなわち、ω0は共振周波数にほぼ等しい。1次から6次の定在波は、それぞれ伝搬定数が2π/(d/1)から2π/(d/6)の弾性波に対応する。
【0037】
図8(b)から図8(i)のように、ピストンモードにおいては、圧電板24の端部が支持されていないため、端部において、弾性波の変位は最大値となる。この変位モードをピストンモードとよぶ。ピストンモードにおいては、変位量を圧電板24の長さ方向に積分したとき、図8(b)の0次の定在波以外は、ゼロとなる。これは、0次の定在波以外では、圧電板24の表面の電荷の総和がゼロになることを示している。よって、共振応答以外には電気的に出力されず、スプリアスは生成されない。0次の定在波の場合は、伝搬定数は0であり、圧電体24の平面方向の伝搬がないため、スプリアスは生成されない。
【0038】
以上のように、ピストンモードにおいては、スプリアスは生成されない。しかしながら、実際の共振子においては、共振領域20が基板10に支持されている。このため、圧電板の端部が完全自由端ではない。
【0039】
比較例1を参照し、スプリアスが生じるモデルについて説明する。図9(a)は、比較例1に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図9(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。図9(a)は、比較例1の共振領域20の端部付近の基板10、下部電極12、圧電膜14、上部電極16および空隙18を示す模式図である。図9(b)は、図9(a)の圧電膜14の平面方向の位置Xに対する圧電膜14の変位を示す図である。破線は、理想的な場合を示している。理想的には、圧電膜14の変位は共振領域20の端でアブラプトに0になる。しかしながら、実際の圧電膜14の変位は実線のように、位置Xに対しなだらかに変化する。これは、圧電膜14の端部が完全自由端ではないため、基板10で支持される領域の圧電膜14は、単純減衰振動するためである。共振領域20では、この振動の干渉を受けて、ピストンモードが歪められる。この結果、0次の定在波以外の定在波においても、共振領域20内の平面方向の電荷の総和が有値となり、スプリアス応答が電気的に出力されてしまう。
【0040】
次に、比較例2について説明する。比較例2は特許文献1に対応する例である。図10(a)は、比較例2に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図,図10(b)は、圧電膜の変位を示す模式図である。図10(a)のように、共振領域20の端に薄膜領域30が設けられている。薄膜領域30において、上部電極16の膜厚が薄くなっている。その他の構成は、比較例1の図9(a)と同じであり説明を省略する。
【0041】
図11(a)および図11(b)は、比較例2の共振領域中央部および薄膜領域における分散曲線を示す図である。図11(a)のように、共振領域20の中央部においては、共振領域20の共振周波数frはほぼ遮断周波数f0である。遮断周波数f0より低周波数側がスプリアスが生成する周波数領域40となっている。図11(b)のように、薄膜領域30においては、上部電極16が薄いため、遮断周波数f0が高周波数側にシフトする。これにより、薄膜領域30においては、共振領域20の中央部における弾性波と同じ周波数の弾性波の波数が大きくなる。よって、図10(b)のように、実際の位置Xに対する変位が理想的な変位に近づく。したがって、比較例2においては、比較例1に比べ、スプリアスが抑制される。
【0042】
次に、比較例3について説明する。比較例3は特許文献2および非特許文献1に対応する例である。図12(a)は、比較例3に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図12(b)は、圧電膜14の変位を示す模式図である。図12(a)のように、比較例2の図10(a)に比べ、薄膜領域30の外側に厚膜領域32が設けられている。厚膜領域32において上部電極16の膜厚が共振領域20の中央部より厚くなっている。その他の構成は、比較例2の図10(a)と同じであり説明を省略する。
【0043】
図13(a)からおよび図13(c)は、それぞれ比較例3の共振領域中央部、薄膜領域および厚膜領域における分散曲線を示す図である。図13(a)および図13(b)の分散曲線は、比較例2の図11(a)および図11(b)と同じである。このため、図12(b)のように、位置Xに対する変位は、比較例2の図10(b)とほぼ同じである。図13(c)のように、厚膜領域32においては、上部電極16が厚いため、遮断周波数f0が低周波側にシフトする。これにより、厚膜領域32においては、共振領域20の共振周波数frの弾性波の分散定数は虚数となり、伝搬できなくなる。これにより、圧電膜14の平面方向に伝搬する弾性波を厚膜領域32においてより確実に減衰させることができる。よって、スプリアスをより確実に抑制できる。
【0044】
しかしながら、比較例2および比較例3においては、図11(b)および図13(b)のように、薄膜領域30において、遮断周波数f0が共振領域20の共振周波数frより高周波数側にシフトする。このため、共振領域20の共振周波数frより高い周波数においても伝搬定数が実数である。これにより、共振に寄与しない弾性波が減衰せず、損失が生じてしまう。
【0045】
次に、比較例4について説明する。図14(a)は、比較例4に係る共振子の共振領域の端部付近の断面模式図、図14(b)は、圧電膜14の変位を示す模式図である。図14(a)のように、共振領域20の端に厚膜領域32が設けられている。厚膜領域32において上部電極16の膜厚が共振領域20の中央部より厚くなっている。その他の構成は、比較例1の図9(a)と同じであり説明を省略する。
【0046】
図15(a)および図15(b)は、それぞれ比較例4の共振領域中央部および厚膜領域における分散曲線を示す図である。図15(a)および図15(b)の分散曲線は、比較例3の図13(a)および図13(c)と同じである。図15(b)のように、厚膜領域32においては、共振領域20の共振周波数frの弾性波の分散定数は虚数となり、伝搬できなくなる。これにより、圧電膜14の平面方向に伝搬する弾性波を厚膜領域32において減衰させることができる。よって、損失を小さくすることができる。しかしながら、比較例4は比較例2のように薄膜領域30が設けられていない。よって、図11(b)のように、遮断周波数f0を高くできない。このため、図14(b)のように、比較例1と同様に、変位は位置Xに対しなだらかに変化する。よって、スプリアスを抑制することができない。
【0047】
図2(b)のように、直列共振子Sにおいては、共振周波数frs以下の周波数帯域にスプリアスが生じると、通過帯域内にスプリアスが影響してしまう。一方、並列共振子Pにおいては、共振周波数frp以下の周波数帯域にスプリアスが生じても通過帯域外である。特許文献1においては、直列共振子として、スプリアスを抑制可能な比較例2の共振子を用い、並列共振子として、損失を抑制可能な可能な比較例4の共振子を用いることが提案されている。
【0048】
しかしながら、この方法では、直列共振子の上部電極16に薄膜領域30を形成し、並列共振子の上部電極16に厚膜領域32を形成することになる。このように、上部電極16に薄膜領域30と厚膜領域32を形成するのでは、上部電極16の加工が複雑となり、製造コストが増大してしまう。同様に、比較例3に係る共振子のように、1つの共振子内の上部電極16に、薄膜領域30と厚膜領域32とを形成する場合も製造コストが増大してしまう。以下に、低損失、低コストであり、かつスプリアスを抑制することが可能な実施例について説明する。
【実施例1】
【0049】
図16は、AlNの分散曲線の計算結果である。図16の横軸は波数、縦軸は周波数である。分散曲線は、下部電極12を膜厚が350nmのモリブデン膜、上部電極16を膜厚が300nmのモリブデン膜、圧電膜14を膜厚が1050nmのAlN膜として計算した。
【0050】
図16において、モードTEは、厚み縦振動モードであり、モードTSは厚み横すべり振動のモードを示す。モードTE1で示した実線が圧電薄膜共振子として機能するための主モードである。主モードTE1のうち波数が実数であり、かつ波数とともに周波数が減少する領域がスプリアスが生成される領域(図16のTE1のうち破線領域)である。ここで、図16において、主モードTE1と同じ厚み縦振動モードの低次の振動モードTE0(破線で図示)に着目する。図16では、主モードTE1が1次モードであり、モードTE0は0次モードである。モードTE0は、共振点がなく、共振に寄与しない。すなわち、機械共振には用いられず、電気特性として寄与しないモードである。このモードTE0を共振領域20の端部において、利用することにより、損失を増加させることなくスプリアスを抑制できることを見出した。
【0051】
図17は、実施例1においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。図17のように、共振領域20の端部に厚膜領域32が形成されている共振子について有限要素法を用いシミュレーションを行った。図17の構成は、図14(a)と同じである。共振領域20の中心(左側の点線)を鏡面境界としている。シミュレーションにおいては、共振領域20の幅(全体の共振領域20の幅の半分)Wrを40μm、共振領域20の中央部に対する厚膜領域32の上部電極16の高さt、厚膜領域32の幅Wをパラメータとした。高さt=0の共振子を基準の共振子とした。共振点のQ値、反共振点のQ値、実効的電気機械結合係数Keff2、スプリアスの増加量を計算した。
【0052】
スプリアスの増加量は、複数のスプリアスを共振点から近い順に、1次、2次、3次、…n次のスプリアスとし、1次から3次のスプリアスの減衰量の総和を計算した。この減衰量の総和から基準の共振子の減衰量の総和を引いた値を、スプリアスの増加量とした。スプリアス増加量が負の場合、基準の共振子に比べスプリアスが抑制されていることを示している。
【0053】
図18(a)から図18(d)は、実施例1におけるシミュレーション結果を示す図である。図18(a)は、厚膜領域32の幅Wに対する共振点のQ値、図18(b)は、幅Wに対する反共振点のQ値、図18(c)は、幅Wに対する実効的電気機械結合係数Keff2、図18(d)は、幅Wに対するスプリアス増加量を示している。幅Wが0の黒丸は基準の共振子の値を示している。白四角、白三角および白丸はそれぞれ高さtが25nm、100nm、および200nmの計算結果である。
【0054】
図18(d)より、厚膜領域32の幅Wが800μm以下では、いずれの高さtにおいてもスプリアス増加量は、ほぼ負になる。すなわち、基準の共振子に比べスプリアスがほぼ抑制されている。さらに、図18(a)から図18(c)のように、厚膜領域32の幅Wが800μm以下の領域では、共振点のQ値、反共振点のQ値および実効的電気機械結合係数Keff2とも微増している範囲が多い。これにより、厚膜領域32の幅Wを800μm以下としても共振特性に悪影響はない。
【0055】
表1は、高さt=200nmのときの、1次から3次のスプリアスが生成される周波数におけるモードTE0の波長を示す表である。表1のように、スプリアスの次数によらず、モードTE0の波長は1.69μmから1.7μmである。以上の結果から、スプリアスが抑制される厚膜領域32の幅Wは、モードTE0の波長の約1/2以下である。
【表1】
【0056】
モードTE0は、主モードであるモードTE1と同様の厚み縦振動モードである。このため、モードTE0とモードTE1とは干渉し易い。このため、共振領域20の端部において、厚膜領域32の幅WをモードTE0と干渉させることにより、モードTE1のスプリアスが抑制できたものと考えられる。さらに、モードTE0は共振には寄与しないため、モードTE0により共振特性への悪影響はほとんどないものと考えられる。
【0057】
このような、考察によれば、厚膜領域32の幅Wは、モードTE0の波長以下であることが好ましく、モードTE0の波長の1/2以下であることがより好ましい。さらに、1/3以下であることがより好ましい。
【0058】
ここで、圧電膜14が単層の圧電薄膜共振子を仮定した場合、モードTE0の分散式は数式1のようになる。
【数1】
ここで、fは励振周波数、kは端数、c11は圧電膜14のスティフネス、ρは圧電膜の密度である。
【0059】
実際の圧電薄膜共振子においては、下部電極12および上部電極16等が圧電膜14に付加される。このため、数式1は数式2のように不等式となる。
【数2】
共振周波数をfrとすると、モードTE0の波長λは、数式3の不等式を満たす。
【数3】
【0060】
例えば、共振子の共振周波数fr=2.07GHz、AlNのスティフネスc11=3.45×1011N/m2、AlNの密度ρ=3260kg/m3とすると、数式3は、λ<5μmとなる。これは、上述のモードTE0の波長の計算結果であるλ=1.69〜1.7μmと一致する。5μmと1.69〜1.7μmとの差は、下部電極12および上部電極16の質量付加に相当すると考えられる。図18の計算では、実効的電気機械結合係数keff2を高めるため、下部電極12および上部電極16の密度を高く、膜厚を厚くしているため、音速が減じられ、モードTE0と数式3との乖離が大きくなっている。
【0061】
上述のように、厚膜領域32の幅WをモードTE0と干渉させるためには、厚膜領域32の幅Wは、数式4の不等式を満たすことが好ましい。
【数4】
【0062】
次に、実施例1と比較例3との比較を行なった。図19は、比較例3においてシミュレーションに用いた構造を示す図である。図19のように、共振領域20の端部に薄膜領域30および厚膜領域32が形成されている共振子について有限要素法を用いシミュレーションを行った。図19の構成は、図12(a)と同じである。共振領域20の中心を鏡面境界としている。シミュレーションにおいては、共振領域20の中央部に対する厚膜領域32の上部電極16の高さt0、共振領域20の中央部に対する薄膜領域30の上部電極16の高さt、厚膜領域32の幅W0、薄膜領域30の幅Wをパラメータとした。幅W0を2μm、高さt0を100nm、高さtを25nmと固定してシミュレーションした。実施例1のシミュレーションに用いた構造は図17と同じである。実施例1の高さtは200nmとしてシミュレーションした。
【0063】
図20(a)から図20(d)は、実施例1および比較例3におけるシミュレーション結果を示す図である。図20(a)は、幅Wに対するスプリアス増加量、図20(b)は、幅Wに対する共振点のQ値、図20(c)は、幅Wに対する反共振点のQ値、図20(d)は、幅Wに対する実効的電気機械結合係数Keff2を示している。黒丸は比較例3、白丸は実施例1を示している。幅W=0の黒丸は基準の共振子を示している。
【0064】
図20(a)のように、比較例3においては、幅W=2μm近傍にてスプリアスの抑制が最大となる。一方、実施例1においては、幅W=0.4μm近傍においてスプリアスの抑制が最大となる。図20(b)および図20(c)において、スプリアスの抑制が最大となる幅Wにおいて、共振点のQ値および反共振点のQ値を比較すると、比較例3では、幅W=2μmにおいて、Q値は、基準の共振子より小さくなる。一方、実施例1では、幅W=0.4μmにおいて、Q値は、基準の共振子と同程度である。
【0065】
図21は、基準、実施例1および比較例3の共振子の通過特性を示すスミスチャートである。実線が実施例1の幅W=0.4μm、破線が比較例3の幅W=2μm、点線が基準の共振子のシミュレーション結果を示している。比較例3においては、共振点より高い周波数において、通過特性が基準より内側を通る。これは、比較例3において、損失が多いことを示している。一方、実施例1においては、共振点より高い周波数において、基準の共振子とほぼ同じである。このように、実施例1は、基準の共振子とほぼ同じ損失である。一方、共振点より低周波数側において、実施例1は基準の共振子よりスプリアスが小さい。このように、実施例1においては、損失の増大を抑えつつ、スプリアスを抑制することができる。
【0066】
実施例1によれば、厚膜領域32の幅Wを、圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭くする。これにより、厚膜領域32と圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波とを干渉させスプリアスを抑制することができる。
【0067】
ここで、圧電膜14の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、例えば、圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波である。すなわち、例えば、厚膜領域32の幅WをモードTE0の波長より狭くする。これにより、共振特性の劣化を抑制し、かつスプリアスを抑制することができる。
【0068】
さらに、厚膜領域32の幅Wは、数式4を満足する。これにより、厚膜領域32と弾性波とを干渉させスプリアスを抑制することができる。
【0069】
さらに、実施例1によれば、共振領域20に上部電極16の厚膜領域32の幅Wを設定するだけであり、比較例3のように、上部電極16に厚膜領域32と薄膜領域30とを形成しない。このため、上部電極16の加工が簡単となり、製造コストを抑制できる。
【0070】
なお、実施例1においては、厚膜領域32を上部電極16が共振領域20の中央部に対し厚く形成された領域としたが、厚膜領域32は、下部電極12および上部電極16の少なくとも一方が共振領域20の中央部に対し厚く形成された領域でもよい。しかしながら、下部電極12に段差があると、配向性の高い圧電膜14を形成した際に、圧電膜14のクラックの起点になりやすい。よって、良好な膜質の圧電膜14を形成するためには、共振領域20内の下部電極12の膜厚は一定であり、上部電極16の共振領域20の端の膜厚を中央部に対し厚くすることが好ましい。
【0071】
下部電極12および上部電極16としては、モリブデン以外にも、Cr(クロム)、Ru(ルテニウム)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)もしくはIr(イリジウム)等の金属膜またはこれらの複合膜を用いることができる。基板10としては、Si基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板等を用いることができる。圧電膜14はAlN以外にも、ZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PbTiO3(チタン酸鉛)等を用いることができる。しかしながら、図5(a)のように、遮断周波数より小さい周波数において、伝搬定数が実数となるためには、圧電膜14のポアソン比は0.3以下であることが好ましい。
【実施例2】
【0072】
図19(a)および図20において、実施例1は比較例3に比べ、損失は小さいものの、スプリアスの抑制度は大きくない。これは、スプリアスを抑制する共振領域20の端部に波数が虚数となる領域が存在しないためと考えられる。モードTE0は、遮断周波数を有さないモードであるため、上部電極16の厚膜化または薄膜化により、共振領域の外側に波数が虚数となる領域を形成することが難しい。
【0073】
図22(a)および図22(b)は、実施例2に係る圧電薄膜共振子の断面を示す図である。図22(a)のように、厚膜領域32の外側の領域34において、圧電膜14の膜厚が共振領域20より薄くなっている。また、図22(b)のように、厚膜領域32の外側の領域34において、下部電極12の膜厚が共振領域20より薄くなっている。これにより、厚膜領域32と領域34とで、モードTE0の波数の差を広げることが可能である。これにより、厚膜領域32と領域34との音響インピーダンスの不整合を増大させ、スプリアスの抑制を高めることができる。
【0074】
実施例2によれば、図22(a)のように、共振領域20の外側の圧電膜14は、共振領域20の圧電膜14より薄くすることができる。これにより、スプリアスをより抑制することができる。
【0075】
また、図22(b)のように、厚膜領域32においては、下部電極12および上部電極16のいずれか一方が共振領域20の中央部に対し厚く形成されている場合、共振領域20の外側の下部電極および上部電極の他方は、共振領域20より薄いことが好ましい。これにより、スプリアスをより抑制することができる。
【実施例3】
【0076】
実施例3は、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子をラダー型フィルタに用いる例である。図23は、実施例3に係るラダー型フィルタの回路図である。図23のように、実施例3に係るラダー型フィルタは、1または複数の直列共振子S1からS3および1または複数の並列共振子P1およびP2を備えている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振子S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振子P1およびP2が並列に接続されている。
【0077】
図5(b)のように、スプリアスが共振周波数より低周波数側において生じる場合、図2(b)のように、直列共振子Sにスプリアスが発生すると、通過帯域内にリップルが発生してしまう。一方、並列共振子Pにスプリアスが発生しても、通過帯域内にリップルは発生しない。
【0078】
そこで、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子を直列共振子S1からS3として用いる。これにより、通過帯域のスプリアスを抑制できる。
【0079】
さらに、直列共振子S1からS3においては、実施例1の厚膜領域32の幅Wを狭くし、図18(d)のように、スプリアスを抑制する。一方、並列共振子P1およびP2においては、厚膜領域32の幅Wを広くし、図18(a)および図18(b)のように、Q値を高くする。このように、並列共振子P1およびP2の厚膜領域32の幅を直列共振子S1からS3の厚膜領域32より広くする。これにより、通過帯域内のリップルを抑制し、通過帯域の損失の小さいラダー型フィルタを提供することができる。さらに、薄膜領域30を設けなくてよいため、製造コストを抑制できる。
【実施例4】
【0080】
実施例4は、実施例3に係るラダー型フィルタを分波器に用いる例である。図24は、実施例4に係る分波器の回路図である。図24のように、実施例4に係る分波器54は、第1フィルタ50および第2フィルタ52を備えている。第1フィルタ50は、共通端子Tantと第1端子T1との間に接続されている。第2フィルタ52は、共通端子Tantと第2端子T2との間に接続されている。第2フィルタ52の通過帯域は第1フィルタ50より高周波数側である。一般的には、通過帯域が低い第1フィルタ50が送信フィルタであり、通過帯域が高い第2フィルタ52が受信フィルタである場合が多い。
【0081】
第1フィルタ50が送信フィルタ、第2フィルタ52が受信フィルタの場合、第1フィルタ50は第1端子T1に入力された送信信号をフィルタリングして共通端子Tantに出力する。第1フィルタ50は、受信信号を抑圧することにより、受信信号が第1端子T1に出力されることを抑制する。第2フィルタ52は、共通端子Tantに入力された受信信号をフィルタリングして第2端子T2に出力する。第2フィルタ52は、送信信号を抑圧することにより、送信信号が第2端子T2に出力されることを抑制する。
【0082】
直列共振子のQ値が低い場合、通過帯域の高周波数側の急峻性が劣化する。このため、比較例3のように、スプリアスの抑制と、Q値との間にトレードオフのある共振子を直列共振子に用いた場合、通過帯域の高周波側の急峻性が犠牲となってしまう。実施例1および実施例2の共振子は、図20(a)から図20(c)のように、スプリアスの抑制と、Q値との両立が可能である。よって、通過帯域の高周波数側の急峻性が要求されるフィルタに用いることが好ましい。よって、第1フィルタ50と第2フィルタ52とのうち少なくとも第1フィルタ50を実施例3に係るラダー型フィルタとすることが好ましい。
【実施例5】
【0083】
実施例5は、実施例4に係る分波器を備える通信モジュールの例である。図25は、実施例5に係る通信用モジュールのブロック図である。図25のように、通信モジュール60は、アンテナ68、アンテナスイッチ62、分波器バンク64、並びにアンプモジュール46を備える。通信モジュール60は、例えば携帯電話用のRFモジュールであり、GSM(Global System for Mobile Communication)通信方式及びW−CDMA通信方式等、複数の通信方式に対応している。GSM方式については、850MHz帯(GSM850)、900MHz帯(GSM900)、1800MHz帯(GSM1800)、1900MHz帯(GSM1900)に対応している。アンテナ104は、GSM方式及びW−CDMA方式いずれの送受信信号をも送受信できる。
【0084】
分波器バンク64は、複数の分波器64a〜64cを含む。複数の分波器64aから64cは、それぞれ送信フィルタ50a〜50cおよび受信フィルタ52a〜52bを含む。複数の分波器64aから64cは、それぞれ複数の通信方式の各々に対応した分波器である。アンテナスイッチ62は、送受信する信号の通信方式に応じて、分波器バンク64が備える複数の分波器から、通信方式に対応する分波器を選択し、選択された分波器とアンテナ68とを接続する。各分波器はアンプモジュール66に接続されている。アンプモジュール66は分波器64a〜64cの送信フィルタ50a〜50cが受信した信号を増幅し、処理部に出力する。またアンプモジュール66は、処理部により生成された信号を増幅し分波器の受信フィルタ52a〜52bに出力する。
【0085】
分波器64a〜64cの少なくとも1つが実施例4に係る分波器54である。これにより、通過帯域のリップルを抑制しかつ損失の小さな通信モジュールを提供できる。通信モジュールは、例えば無線LAN(Local Area Network)、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)等の電子装置に搭載してもよい。
【実施例6】
【0086】
実施例6は、実施例1または実施例2に係る圧電薄膜共振子を含む発振モジュールの例である。図26は、実施例6に係る発振モジュールのブロック図である。図26のように、発振モジュール70は、増幅器72、圧電薄膜共振子74および加算器76を備えている。増幅器72の出力は、圧電薄膜共振子74を介し増幅器72の入力に帰還されている。加算器76は、増幅器72の出力を入力に正帰還させる。これにより、発振モジュール70は、発振器として機能する。
【0087】
実施例5および実施例6のように、通信モジュールおよび発振モジュールのようなモジュールに、実施例1または実施例2の圧電薄膜共振子を用いることができる。
【0088】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 基板
12 下部電極
14 圧電膜
16 上部電極
18 空隙
20 共振領域
32 厚膜領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された圧電膜と、
前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、
前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭いことを特徴とする圧電薄膜共振子。
【請求項2】
基板と、
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された圧電膜と、
前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、
前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅wは、前記圧電薄膜共振子の共振周波数をfr、前記圧電膜のスティフネスをc11、前記圧電膜の密度をρとしたとき、
であることを特徴とする圧電薄膜共振子。
【請求項3】
前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、前記圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波であることを特徴とする請求項1記載の圧電薄膜共振子。
【請求項4】
前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長の1/2以下であることを特徴とする請求項3記載の圧電薄膜共振子。
【請求項5】
前記共振領域の前記下部電極下には空隙または音響多層膜が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項6】
前記共振領域の外側の前記圧電膜は、前記共振領域の前記圧電膜より薄いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項7】
前記厚膜領域においては、前記下部電極および前記上部電極のいずれか一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成され、
前記共振領域の外側の前記下部電極および前記上部電極の他方は、前記共振領域より薄いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項8】
前記圧電膜のポアソン比は、0.3以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子を含むフィルタ。
【請求項10】
入力端子と出力端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に直列に接続され、請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子である1または複数の直列共振子と、を具備することを特徴とするフィルタ。
【請求項11】
前記1または複数の並列共振子は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成されており、
前記1または複数の並列共振子の厚膜領域の幅は、前記1または複数の直列共振子の厚膜領域より広いことを特徴とする請求項10記載のフィルタ。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項記載のフィルタを含むことを特徴とする分波器。
【請求項13】
共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、
前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタと、を具備し、
前記第1フィルタは、請求項10または11に記載のフィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子を含むモジュール。
【請求項1】
基板と、
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された圧電膜と、
前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、
前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長より狭いことを特徴とする圧電薄膜共振子。
【請求項2】
基板と、
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された圧電膜と、
前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、
前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成され、前記厚膜領域の幅wは、前記圧電薄膜共振子の共振周波数をfr、前記圧電膜のスティフネスをc11、前記圧電膜の密度をρとしたとき、
であることを特徴とする圧電薄膜共振子。
【請求項3】
前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波は、前記圧電薄膜共振子が共振する弾性波の主モードと同じ振動モードの低次モードの弾性波であることを特徴とする請求項1記載の圧電薄膜共振子。
【請求項4】
前記厚膜領域の幅は、前記圧電膜の厚さ方向に交差する方向に伝搬する弾性波の波長の1/2以下であることを特徴とする請求項3記載の圧電薄膜共振子。
【請求項5】
前記共振領域の前記下部電極下には空隙または音響多層膜が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項6】
前記共振領域の外側の前記圧電膜は、前記共振領域の前記圧電膜より薄いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項7】
前記厚膜領域においては、前記下部電極および前記上部電極のいずれか一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成され、
前記共振領域の外側の前記下部電極および前記上部電極の他方は、前記共振領域より薄いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項8】
前記圧電膜のポアソン比は、0.3以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子を含むフィルタ。
【請求項10】
入力端子と出力端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に直列に接続され、請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子である1または複数の直列共振子と、を具備することを特徴とするフィルタ。
【請求項11】
前記1または複数の並列共振子は、基板と、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記圧電膜を挟み下部電極と上部電極とが対向する共振領域の端において、前記下部電極および前記上部電極の少なくとも一方が前記共振領域の中央部に対し厚く形成された厚膜領域が形成されており、
前記1または複数の並列共振子の厚膜領域の幅は、前記1または複数の直列共振子の厚膜領域より広いことを特徴とする請求項10記載のフィルタ。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項記載のフィルタを含むことを特徴とする分波器。
【請求項13】
共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、
前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタと、を具備し、
前記第1フィルタは、請求項10または11に記載のフィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項記載の圧電薄膜共振子を含むモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−244616(P2012−244616A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116357(P2011−116357)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]