説明

地上デジタルテレビジョン放送における緊急速報の受信機及び送信装置、並びに伝送システム

【課題】地上デジタルテレビジョン放送における緊急速報の送信装置及び受信機、並びに伝送システムを提供する。
【解決手段】本発明の送信装置1は、緊急速報データを所定のフォーマットに変換する緊急速報データ変換部2と、変換した緊急速報データに対応した誤り検出用パリティビットを演算する誤り検出パリティ演算部3と、緊急速報データ及び誤り検出用パリティビットに対して誤り訂正符号を演算して付加する誤り訂正符号演算部4と、緊急速報データ、誤り検出用パリティビット、及び誤り訂正符号を、伝送制御信号に変調するために、所定のトランスポートストリームに多重する放送TS再多重部5と、放送TS再多重部5で生成した放送トランスポートストリームをISDB−T方式の変調波に変調するISDB−T変調部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送において、伝送制御制御信号で緊急速報を送信する送信装置、及び伝送制御制御信号で緊急速報を受信する受信機、並びに伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地上デジタルテレビジョン放送の伝送システムとして、例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial、ARIB規格STD‐B31)方式が実用化されている。
【0003】
そこでは、アナログ放送から引き続き、大規模地震や津波警報、地方自治体からの要請に応じて、放送局が緊急警報放送を実施した場合に、電源が入っていない地上デジタルテレビジョン放送の受信機を起動するための仕組みが設けられている。
【0004】
例えば、受信機の復調動作に関わる情報を伝送するために設けられている、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control: 伝送制御)信号と呼ばれる信号がある。
【0005】
このTMCC信号には、緊急警報放送用起動フラグと呼ばれる、緊急警報放送に基づきビットの値を変更される情報が記載されている。この緊急警報放送用起動フラグを検出して、その値が1である場合、緊急警報放送が行われることから、この緊急警報放送用起動フラグにより受信機を立ち上げることができる。
【0006】
これを、待機消費電力を抑えて動作し、受信機の電源が入っていない受信機を起動して受信機に知らせる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、緊急警報放送用起動フラグを検出する伝送制御信号受信回路を備えることにより、緊急警報放送用起動フラグが1のとき、地上デジタルテレビジョン放送の受信機の電源を投入し、受信機に緊急警報放送の視聴を促す技術である。
【0007】
一方、気象庁は、平成19年10月1日から緊急地震速報(例えば、非特許文献1参照)の一般への提供を開始した。これに伴い、テレビジョン並びにラジオの放送局の一部で前記速報が発表される際には、チャイム音とともにテレビジョン画面に表示または音声で伝えるなどの放送を実施することを開始した。
【0008】
また、緊急地震速報を含む災害、防災情報等の地上デジタルテレビジョン放送における伝送のため、TMCC信号による起動フラグの送受信に加え、AC(Auxiliary Channel)キャリアを利用する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。TMCCキャリアの緊急警報放送用起動フラグと、例えば部分受信セグメント内の特定のACキャリアに置かれた信号種別ビットとの組み合わせにより、緊急速報の種別及び開始又は終了を提示する。その他ARIB規格STD‐B10の緊急情報記述子及び緊急速報の映像・音声を、ACキャリアを用いて伝送する。この緊急情報記述子は、信号種別ビットを含み部分受信セグメントのAC信号に格納され、映像・音声は他のセグメントのAC信号に格納されて伝送される。
【0009】
特許文献2の技術においても、受信機の電源が入っていない場合、又は他のチャンネルを受信している場合に、電源投入やチャンネル切り替えを促すことが開示されており、この制御のため部分受信セグメント内のTMCC信号及びAC信号を受信し、電源投入後又はチャンネル切り替え後に、その他の災害・防災情報並びに映像・音声の再生を行う技術が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−319771号公報
【特許文献2】特開2007−243936号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料”、気象庁地震火山部、[平成20年1月31日検索]、インターネット〈URL:http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/Whats_EEW/reference.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
TMCCキャリア又はACキャリアで情報を伝送する際に、伝送路におけるデータ誤りを訂正するために、誤り訂正符号を用いることが考えられる。例えば、TMCC情報に対しては、差集合巡回符号(273,191)の短縮符号(184,102)を用いることがよくある。一方、AC情報においては、誤り訂正符号を用いることに関する規定は存在しない。地上デジタル放送波の一部信号(TMCC又はACなど)を用いて、受信機のユーザ(放送を視聴せずに、受信機を保持するのみの者も含む)に緊急速報を知らせる際に、誤り訂正符号の訂正能力を超えたデータ誤りが発生した場合に、それに起因する緊急速報の誤報を回避するための具体的な対策が必要となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、伝送制御制御信号で緊急速報を送信する送信装置、及び伝送制御制御信号で緊急速報を受信する受信機、並びに伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
地上デジタル放送波の伝送制御信号(TMCC信号又はAC信号などの伝送制御に必要な既知の制御信号を、総括して伝送制御信号と称する)を用いて、受信機のユーザに緊急速報を知らせる際の誤報を回避する手段を提供する。具体的には、送信側では、送信される緊急速報と併せて誤り検出用パリティビットを送信し、受信側では、誤り訂正復号処理で訂正できなかったデータ誤りによる緊急速報の誤報を回避させるようにする。
【0015】
即ち、本発明の送信装置は、地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置であって、緊急速報データを所定のフォーマットに変換する緊急速報データ変換部と、変換した緊急速報データに対応した誤り検出用パリティビットを演算する誤り検出パリティ演算部と、前記緊急速報データ及び誤り検出用パリティビットに対して誤り訂正符号を演算して付加する誤り訂正符号演算部と、前記緊急速報データ、前記誤り検出用パリティビット、及び前記誤り訂正符号を、伝送制御信号に変調するために、所定のトランスポートストリームに多重する放送TS再多重部と、前記放送TS再多重部で生成した放送トランスポートストリームをISDB−T方式の変調波に変調するISDB−T変調部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の送信装置において、伝送する緊急速報が、緊急警報放送、緊急地震速報、ニュース速報に関連する情報のいずれかであることを特徴とする。また、本発明の送信装置において、緊急速報を伝送する伝送制御信号は、TMCC信号及び/又はAC信号からなることを特徴とする。なお、緊急地震速報は、地震動警報とも称される。
【0017】
更に、本発明の受信機は、地上デジタルテレビジョン放送波を受信する受信機であって、伝送制御信号内には、緊急速報データ、誤り検出用パリティビット、及び誤り訂正符号用パリティビットを含む所定のフォーマットの電文情報が多重されており、受信した無線周波信号を中間周波信号に変換するRF受信部と、変換した中間周波信号から伝送制御信号を復調する伝送制御信号復調部と、復調した伝送制御信号内の情報に対して誤り訂正の復号処理を行う誤り訂正復号部と、当該誤り訂正の復号処理の後の伝送制御信号内の情報に誤りが無いか否かを、伝送される誤り検出用パリティビットを用いて再度確認するデータ誤り検出部と、前記データ誤り検出部の検出結果に基づいて、前記緊急速報データの出力を制御する緊急速報データ出力部とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の受信機において、伝送する緊急速報が、緊急警報放送、緊急地震速報、ニュース速報のいずれかであることを特徴とする。また、本発明の受信機において、緊急速報を伝送する伝送制御信号は、TMCC信号及び/又はAC信号からなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の受信機において、誤り訂正の復号処理を行う前に、復調した伝送制御情報からパケットヘッダを抽出し、パケットヘッダ内に含まれる緊急速報の有無や信号識別を判定するパケットヘッダ抽出・判定部を更に備え、緊急速報が有ると判定した場合のみ、前記誤り訂正復号部及び前記データ誤り検出部を動作させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の伝送システムは、送信装置と受信機とを備える地上デジタルテレビジョン放送の伝送システムであって、前記送信装置は、緊急速報データを所定のフォーマットに変換する緊急速報データ変換部と、変換した緊急速報データに対応した誤り検出用パリティビットを演算する誤り検出パリティ演算部と、前記緊急速報データ及び誤り検出用パリティビットに対して誤り訂正符号を演算して付加する誤り訂正符号演算部と、前記緊急速報データ、前記誤り検出用パリティビット、及び前記誤り訂正符号を、伝送制御信号に変調するために、所定のトランスポートストリームに多重する放送TS再多重部と、前記放送TS再多重部で生成した放送トランスポートストリームをISDB−T方式の変調波に変調するISDB−T変調部とを備え、前記受信機は、前記変調波の無線周波信号を受信して、受信した無線周波信号を中間周波信号に変換するRF受信部と、変換した中間周波信号から伝送制御信号を復調する伝送制御信号復調部と、復調した伝送制御信号内の情報に対して誤り訂正の復号処理を行う誤り訂正復号部と、当該誤り訂正の復号処理の後の伝送制御信号内の情報に誤りが無いか否かを、伝送される誤り検出用パリティビットを用いて再度確認するデータ誤り検出部と、前記データ誤り検出部の検出結果に基づいて、前記緊急速報データの出力を制御する緊急速報データ出力部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地上デジタル放送信号のTMCC信号又はAC信号で伝送された緊急速報を、受信信号を復調した後に、誤り訂正符号によってデータ誤りを訂正し、更に復調された緊急速報データを再度データ誤り検出することで、受信者への緊急速報の誤報を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の送信装置及び受信装置に係るTMCC信号のビット割当およびリザーブ割当例である。
【図2】本発明の送信装置及び受信装置に係るモード3のTMCC信号のキャリア割当を示す図である。
【図3】本発明の送信装置及び受信装置に係るAC信号のビット割当例である。
【図4】本発明の送信装置及び受信装置に係るモード3のAC信号のキャリア割当を示す図である。
【図5】本発明による実施例1の送信装置のブロック図である。
【図6】本発明による実施例1の受信機のブロック図である。
【図7】本発明による実施例2の受信機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明に係る実施例1の伝送システムにおける送信装置及び受信機について説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る実施例1の伝送システムは、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送に用いられ、実施例1の送信装置は、伝送制御信号(TMCC信号又はAC信号)を用いて、緊急速報(以下、緊急警報放送及び緊急地震速報を含む情報を総括して、緊急速報と称する)を伝送する機能を有する。また、実施例1の受信機は、伝送制御信号によって緊急速報を受信する機能を有する。
【0025】
AC信号に関しては、変調方式をDBPSKとすることを除いて、特に規格上規定されていない。TMCC信号は、伝送パラメータの指定や受信機制御の用途などが既に規定されている。
【0026】
TMCC信号は、204シンボルで構成され、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)のモード3の同期変調部の場合、キャリア番号#101、#131、#286及び#349の4箇所にあるTMCCキャリアによって運ばれる、受信機の復調動作に関わる情報を伝送するために設けられている信号として知られている(図1及び図2参照)。TMCC信号を用いて緊急速報を伝送する場合には、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の規格に定められているTMCC情報の後方に割り当てられている、将来の拡張用としての「リザーブビット」(B110〜B121)を利用して緊急速報の情報を伝送する。例えば、図1に示すように、TMCC情報内のリザーブビットにて、緊急速報用の「起動フラグ[1]」、及び緊急速報の「信号識別[3]」を含む「パケットヘッダ[4]」と、「緊急速報データ[4]」と、誤り検出用の「パリティビット(検出用)[4]」とを設けた電文情報のフォーマットで、緊急速報を伝送する(以下、[]はビット数を表す)。ただし、「起動フラグ」は、2ビットで構成することもでき、この場合、‘00’が「地震動警報有り」を示し、‘11’が「地震動警報無し」を示す。従って、起動フラグは、緊急速報(例えば、地震動の警報情報)の伝送の開始/終了を示すフラグ(開始/終了フラグ)として機能する。
【0027】
また、TMCC信号は、AC信号と比して、任意に使用できる伝送情報枠が少なくなるため、より多くの情報を短時間に伝送できるように、例えば後述する信号識別[3]を伝送して、他の詳細な緊急速報の詳細情報をAC信号に割り当てるようにしてもよい。
【0028】
例えば、送信装置は、以下のように定義した「信号識別」を伝送する。
【0029】
“000”:緊急地震速報起動信号(該当地域有)
“001”:緊急地震速報起動信号(該当地域無)
“010”:緊急警報放送起動信号
“011”:緊急地震速報試験信号
“100”:緊急警報放送起動信号
“101”:第1プッシュ型サービス起動信号
“110”:第2プッシュ型サービス起動信号
“111”:起動フラグ信号無し
【0030】
後述する受信機は、信号識別に応じて、それぞれの「信号識別」毎に定義された動作を実行することができる。概略的には、「信号識別」の000〜110の場合、「緊急地震速報」か、「緊急警報放送」か、「プッシュ型コンテンツ配信」を識別することができる。「信号識別」の111の場合、前述の起動フラグ検出が誤動作であることを把握でき、詳細情報の解析を行わずに起動フラグの監視を再継続する動作に移行して、誤検知を防止することができる。尚、緊急地震速報起動信号における該当地域の有無の相違は、現在受信中の放送エリアに強い揺れが推定される地域が含まれている場合に、以降の詳細情報の解析を待たずに所定の動作を実行するためである。また、緊急地震速報試験信号は、試験的な送信であることを受信機側に知らしめるためである。さらに、プッシュ型サービス起動信号を2つ用意しているのは、任意のコンテンツサービスを提供するのに異なるコンテンツ配信を識別して同時に送信するような場合を想定しているためである。
尚、「信号識別」において、“000”を「緊急地震速報起動信号(該当地域有)」、“001”を「緊急地震速報起動信号(該当地域無)」と定義しているので、この「該当地域有」と「該当地域無」の区別によっても、緊急地震速報が該当する地域を、ほぼ都道府県単位の各放送局が緊急速報を送信する放送エリアの範囲で判別することができる。
【0031】
AC信号は、204シンボルで構成され、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)のモード3の同期変調部の場合、キャリア番号#7、#89、#206、#209、#226、#244、#377及び#407の8箇所にあるACキャリアによって運ばれる信号である(図3及び図4参照)。本発明の理解を容易にするために、図3の例では、AC信号を用いて緊急速報を伝送する場合には、TMCC信号と同一フレーム長であることから、TMCC信号と同様のDBPSK変調における「差動復調の基準[1]」(図2及び4では、「基準」として図示)、TMCC信号と同様の「同期信号[16]」、緊急速報の「起動フラグ[1]」及び緊急速報の「信号識別[3]」を含む「パケットヘッダ[4]」と、「緊急速報データ[97]」と、「誤り検出用パリティビット[4]」と、「誤り訂正用パリティビット[82]」とを設けた電文情報のフォーマットで、緊急速報を伝送する。
【0032】
尚、本発明に係る緊急速報の電文情報のフォーマットは、任意の態様で構成することができ、その一例としてのみ説明するものである。従って、「パケットヘッダ」は、任意の情報を含む「緊急速報データ」の情報を識別するとともに、緊急速報の有無を識別する情報を格納するものであり、「緊急速報データ」は、緊急警報放送、緊急地震速報、ニュース速報のいずれかの情報をその許容されるビット範囲内で伝送することができる。更に、緊急速報に用いる「パケットヘッダ」、「緊急速報データ」、「誤り検出用パリティビット」、及び「誤り訂正用パリティビット」のビット割当は、任意の態様で選定できる。更に、複数種類の態様で電文情報を用意する場合には、その種別を表す情報を「パケットヘッダ」に組み入れて、受信機側で識別可能にするようにしてもよい。
【0033】
図5に、本発明による実施例1の送信装置のブロック図を示す。実施例1の送信装置1は、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送信号のTMCC信号又はAC信号に緊急速報データと冗長ビットを変調して出力する装置である。
【0034】
例えば放送事業者は、気象庁から緊急地震速報を受信した場合、本実施例の送信装置1によって、緊急速報を格納する電文情報(例えば緊急地震速報の情報)を、例えばモード3の場合に、4か所のTMCCキャリアが運ぶTMCC情報のリザーブ、及び/又は8箇所のACキャリアが運ぶAC情報に格納して、受信機に向けて送信する。尚、本発明は、ISDB−T方式のモード3に限定するものではないし、複数ある全てのTMCCキャリア又はACキャリアを用いて伝送しなければならないものではなく、特定のキャリア番号で異なる緊急速報の情報を伝送するように構成することができるものである。
【0035】
実施例1の送信装置1は、緊急速報データ変換部2と、誤り検出パリティ演算部3と、誤り訂正符号演算部4と、放送TS再多重部5と、ISDB−T変調部6とを備える。伝送する緊急速報データは、緊急速報データ変換部2に入力される。
【0036】
緊急速報データ変換部2は、伝送する緊急速報データを所定のフォーマットに変換する。
【0037】
誤り検出パリティ演算部3は、フォーマット変換された緊急速報データを入力して、フォーマット変換後の緊急速報データに対して、誤り検出用の冗長ビットを演算し、それを付加したデータ列を出力するものである。誤り検出用に付加する冗長ビットとしては、パリティ方式、チェックサム方式、巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)方式などが挙げられる。本発明による実施例1の送信装置は、いずれの方式を採用してもよい。
【0038】
ここで云うパリティ方式とは、データ列の合計が偶数か奇数かを判定することで誤り検出する方式である。また、チェックサム方式とは、ビット単位のデータ列をバイト単位のデータ列に変換し、その総和の下位1バイトを抽出、判定する方式である。更に、巡回冗長検査(CRC)方式とは、別途定められた生成多項式にて求めたCRCパリティビットを判定する方式である。以上、それぞれの方式の概要について説明したが、詳細な説明は既知なので割愛する。
【0039】
誤り訂正符号演算部4は、誤り訂正符号演算部4から出力される、緊急速報データ列に誤り検出パリティビットが付加されたデータ列を入力する。緊急速報データと誤り検出用パリティビットを含めたビット列に対して、一例として差集合巡回符号(273,191)の短縮符号で訂正符号を付加したとすると、誤り訂正用のパリティビットは、82ビットを付加することとなる。これ以外の誤り訂正符号を使用する場合は、当然パリティビット数も変わってくる。
【0040】
放送TS再多重部5は、誤り訂正符号演算部4から出力されるデータ列を入力する。この放送TS再多重部5では、入力されたデータ列にパケットヘッダを追加したデータ列を所定のトランスポートストリーム(TS)に記述する。例えば、TMCC信号のリザーブの場合は、IIP情報のmodulation_control_configuration_informationに、TMCC_reserved_future_useというシンタックスに記述する。
【0041】
AC信号の多重方法については、TSパケットのダミーバイト部分へ多重する方法と、無効階層TSパケットとして多重する方法などがある。TMCC信号又はAC信号への多重方法の詳細については、社団法人電波産業会の「地上デジタルテレビジョンの伝送方式 標準規格」ARIB STD−B31の第5章及び第6章を参照されたい。以上のようにして、放送TS再多重部5で生成した放送TSは、ISDB−T変調部6に入力され、ISDB−T変調部6は、多重フレーム構造を有する、地上デジタルテレビジョンの信号を出力する。
【0042】
このようにして、TMCC信号又はAC信号で緊急速報を伝送する場合、誤り訂正符号だけでなく、併せて誤り検出用のパリティビットを送信装置で付加することにより、受信側で誤り訂正復号処理後のデータ列を再度誤り検出することが可能となり、本実施例の受信機を利用する受信者への緊急速報の誤報を回避させる。
【0043】
図6に、本発明による実施例1の受信機のブロック図を示す。実施例1の受信機は、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送信号のTMCC信号又はAC信号を復調して、得られた緊急速報データと冗長ビットにより、誤り訂正と誤り検出した後に緊急速報を出力する装置である。
【0044】
実施例1の受信機7は、アンテナ8と、RF受信部9と、TMCC・AC復調部10と、誤り訂正復号部11と、データ誤り検出部12と、緊急速報データ出力部13とを備える。
【0045】
RF受信部9は、アンテナ8を介して受信したISDB−T方式の無線周波(RF)信号が入力され、中間周波(IF)信号に変換して出力する。
【0046】
TMCC・AC復調部10は、RF受信部9から出力されるIF信号を入力して、このIF信号からTMCC信号及びAC信号を復調し、TMCC情報及びAC情報を出力する。TMCC及びACの復調に際しては、FFT処理を使用してもよいし、1有効シンボル期間にわたる積分処理を利用してもよい。
【0047】
誤り訂正復号部11は、復調したTMCC情報又はAC情報を入力する。誤り訂正復号部11は、本実施例の送信装置で予め付加された誤り訂正符号を利用して、TMCC情報及びAC情報のデータ誤りを訂正する処理を行う。TMCCの場合は、差集合巡回符号(273,191)の短縮符号(184,102)の復号処理を行い、AC情報については送信装置で付加された誤り訂正符号を復号する処理を行った後に、TMCC情報及びAC情報を出力する。
【0048】
データ誤り検出部12は、訂正処理後のTMCC情報及びAC情報を入力し、訂正処理したTMCC情報及びAC情報に誤りが無いかを再度確認し、TMCC情報及びAC情報とともに、データ誤り検出の結果を出力する。
【0049】
緊急速報データ出力部13は、データ誤り検出部12から、TMCC情報及びAC情報と、データ誤り検出の結果を入力し、入力されたデータ誤り検出結果を基に、受信機7の出力を制御する。つまり、緊急速報データ出力部13は、データ誤りを検出された旨の検出結果を受け取った場合は、受信していたTMCC情報及びAC情報を破棄して、次のTMCC情報及びAC情報を待つ。一方で、緊急速報データ出力部13は、データ誤りを検出しなかった旨の検出結果を受け取った場合は、TMCC情報及びAC情報を出力し、緊急速報を受信機のユーザに知らせる動作(アラームや表示など)を行う。
【0050】
このように、本発明による実施例1の送信装置及び受信機によれば、誤り訂正符号による訂正処理を行っても、訂正符号の種類や受信環境によっては、符号自体の持つ訂正能力を超えて、ビット誤りが発生する場合においても、誤り訂正復号処理後に、データ誤り検出部で再確認することで、緊急速報の誤報を回避することができる。
【0051】
次に、本発明に係る実施例2の伝送システムにおける送信装置及び受信機について説明する。
【実施例2】
【0052】
本発明に係る実施例2の伝送システムは、実施例1と同様に、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送に用いられ、実施例2の送信装置は、実施例1と同様に、緊急速報を、伝送制御信号(TMCC信号又はAC信号)を用いて伝送する。従って、実施例2の送信装置は、実施例1と同様であるため、その説明は省略する。一方、実施例2の受信機は、実施例1と同様に、伝送制御信号によって緊急速報を受信する機能を有するが、実施例1の構成と比較して、パケットヘッダ抽出・判定部14を更に備える点で相違する。従って、実施例1と同様な構成要素には同一の参照番号を付しており、その説明は省略する。
【0053】
図7に、実施例2の受信機のブロック図を示す。実施例2の受信機17は、実施例1の受信機7に、TMCC・AC復調部10と誤り訂正復号部11との間に、パケットヘッダ抽出・判定部14を更に備える。概説するに、実施例2の受信機17は、TMCC・AC復調部10によってISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送信号のTMCCキャリア又はACキャリアを復調し、パケットヘッダ抽出・判定部14によってTMCC信号におけるTMCC情報のリザーブ内、又はAC信号で運ばれる緊急速報の情報内で、パケットヘッダに含まれる緊急速報の「起動フラグ」(緊急速報の有無を示す情報)、及び「信号識別」(情報種類の識別コード)を抽出し、これらの内容を判定して、緊急速報が有ると判定された場合にのみ、「信号識別」に対応する緊急速報データ、誤り検出用パリティビット、及び誤り訂正用のパリティビット(冗長ビット)を誤り訂正復号部11に送出し、誤り訂正復号部11及びデータ誤り検出部12によって、誤り訂正、及び誤り検出した結果の緊急速報を緊急情報出力部13から出力する。
【0054】
実施例2の受信機17は、実施例1の受信機7と異なるパケットヘッダ抽出・判定部14について更に詳細に説明する。
【0055】
パケットヘッダ抽出・判定部14は、TMCC・AC復調部10から出力されるTMCC情報又はAC情報を入力し、入力されるTMCC情報又はAC情報のうち、パケットヘッダ部分を抽出し、パケットヘッダに含まれる緊急速報の「起動フラグ」(緊急速報の有無を示す情報)及び「信号識別」の内容を判定する。パケットヘッダ抽出・判定部14は、パケットヘッダ内の「起動フラグ」に緊急速報の伝送が有ると判定した場合、誤り訂正復号部11にTMCC情報及びAC情報を出力する。一方、パケットヘッダ抽出・判定部14は、パケットヘッダ内の「起動フラグ」に緊急速報の伝送が無いと判定した場合、TMCC情報又はAC情報を廃棄して、誤り訂正復号部11へと出力しない。従って、パケットヘッダ抽出・判定部14は、緊急速報の伝送の有無を表す制御信号を発生させて、緊急速報の伝送の有りの場合には、後続の誤り訂正復号部11に情報を送出し、緊急速報の伝送の無しの場合には、次のTMCC情報及びAC情報を待つように受信機7の動作を制御する。
【0056】
このように、本発明による実施例2の送信装置及び受信機によれば、誤り訂正符号による訂正処理を行っても、訂正符号の種類や受信環境によっては、符号自体の持つ訂正能力を超えて、ビット誤りが発生する場合においても、パケットヘッダの内容判定を経た上で、誤り訂正復号処理後に、データ誤り検出部で再確認するように構成したため、更に緊急速報の誤報を回避させることができる。
【0057】
また、本発明による実施例2の受信機では、緊急速報が有ると判定されれば誤り訂正、誤り検出を行い、誤報を回避しながら受信者へ緊急速報を知らせ、緊急速報が無いと判定されれば、その時点でTMCC情報又はAC情報を破棄し、誤り訂正処理、誤り検出処理を無駄に動作させることを防ぐことができるため、受信機の無用な電力消費を防ぐことも可能となる。
【0058】
上述の実施例については特定の符号化方式を代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、本発明に係る受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。例えば、当該携帯電話が待機モードである場合には、「起動フラグ」に緊急速報の伝送が有ると判定した場合に携帯電話の通常モードに移行させるように構成してもよい。なお、緊急速報の情報はISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)内のAC信号により送出される。携帯電話など移動・携帯端末の多くでは、この部分受信セグメント(セグメント番号#0)を受信して番組を視聴する(ワンセグサービス)。よって、携帯電話などに具備される各実施例の受信機は、緊急速報の情報を伝送するAC信号を受信できる。一方、他のセグメントを受信する固定受信向けのデジタルテレビなどに具備される各実施例の受信機においても、AC信号については部分受信セグメント内のものを受信することにより、緊急速報の情報を受信できる。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明による送信装置及び受信機は、迅速、且つ、確実な緊急地震速報の伝達を可能とするので、所定の伝送制御信号を用いる伝送方式の用途に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 送信装置
2 緊急速報データ変換部
3 誤り検出パリティ演算部
4 誤り訂正符号演算部
5 放送TS再多重部
6 ISDB−T変調部
7 受信機
8 アンテナ
9 RF受信部
10 TMCC・AC復調部
11 誤り訂正復号部
12 データ誤り検出部
13 緊急速報データ出力部
14 パケットヘッダ抽出・判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置であって、
緊急速報データを所定のフォーマットに変換する緊急速報データ変換部と、
変換した緊急速報データに対応した誤り検出用パリティビットを演算する誤り検出パリティ演算部と、
前記緊急速報データ及び誤り検出用パリティビットに対して誤り訂正符号を演算して付加する誤り訂正符号演算部と、
前記緊急速報データ、前記誤り検出用パリティビット、及び前記誤り訂正符号を、伝送制御信号に変調するために、所定のトランスポートストリームに多重する放送TS再多重部と、
前記放送TS再多重部で生成した放送トランスポートストリームをISDB−T方式の変調波に変調するISDB−T変調部とを備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、伝送する緊急速報が、緊急警報放送、緊急地震速報、ニュース速報に関連する情報のいずれかであることを特徴とする送信装置。
【請求項3】
前記緊急速報を伝送する伝送制御信号は、TMCC信号及び/又はAC信号からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
地上デジタルテレビジョン放送波を受信する受信機であって、
伝送制御信号内には、緊急速報データ、誤り検出用パリティビット、及び誤り訂正符号用パリティビットを含む所定のフォーマットの電文情報が多重されており、
受信した無線周波信号を中間周波信号に変換するRF受信部と、
変換した中間周波信号から伝送制御信号を復調する伝送制御信号復調部と、
復調した伝送制御信号内の情報に対して誤り訂正の復号処理を行う誤り訂正復号部と、
当該誤り訂正の復号処理の後の伝送制御信号内の情報に誤りが無いか否かを、伝送される誤り検出用パリティビットを用いて再度確認するデータ誤り検出部と、
前記データ誤り検出部の検出結果に基づいて、前記緊急速報データの出力を制御する緊急速報データ出力部とを備えることを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項4に記載の受信機において、伝送する緊急速報が、緊急警報放送、緊急地震速報、ニュース速報のいずれかであることを特徴とする受信機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の受信機において、誤り訂正の復号処理を行う前に、復調した伝送制御情報からパケットヘッダを抽出し、パケットヘッダ内に含まれる緊急速報の有無や信号識別を判定するパケットヘッダ抽出・判定部を更に備え、
緊急速報が有ると判定した場合のみ、前記誤り訂正復号部及び前記データ誤り検出部を動作させることを特徴とする受信機。
【請求項7】
前記緊急速報を伝送する伝送制御信号は、TMCC信号及び/又はAC信号からなることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項8】
送信装置と受信機とを備える地上デジタルテレビジョン放送の伝送システムであって、
前記送信装置は、
緊急速報データを所定のフォーマットに変換する緊急速報データ変換部と、
変換した緊急速報データに対応した誤り検出用パリティビットを演算する誤り検出パリティ演算部と、
前記緊急速報データ及び誤り検出用パリティビットに対して誤り訂正符号を演算して付加する誤り訂正符号演算部と、
前記緊急速報データ、前記誤り検出用パリティビット、及び前記誤り訂正符号を、伝送制御信号に変調するために、所定のトランスポートストリームに多重する放送TS再多重部と、
前記放送TS再多重部で生成した放送トランスポートストリームをISDB−T方式の変調波に変調するISDB−T変調部とを備え、
前記受信機は、
前記変調波の無線周波信号を受信して、受信した無線周波信号を中間周波信号に変換するRF受信部と、
変換した中間周波信号から伝送制御信号を復調する伝送制御信号復調部と、
復調した伝送制御信号内の情報に対して誤り訂正の復号処理を行う誤り訂正復号部と、
当該誤り訂正の復号処理の後の伝送制御信号内の情報に誤りが無いか否かを、伝送される誤り検出用パリティビットを用いて再度確認するデータ誤り検出部と、
前記データ誤り検出部の検出結果に基づいて、前記緊急速報データの出力を制御する緊急速報データ出力部とを備えることを特徴とする、地上デジタルテレビジョン放送の伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−136354(P2010−136354A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249450(P2009−249450)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】