説明

地上位置システムおよび方法

【課題】ネットワーク設備および利用可能な帯域幅、取得できるGPS情報114、あるいは利用者やシステム要件に応じて異なるモードで動作可能なGPSシステム100を開示する。
【解決手段】モードには、移動通信機器104が機器の位置を計算するスタンドアロンモード、計算された位置を移動通信機器104が通信ネットワーク内のサーバー108、アプリケーション110、または PSAP112へ送信する自律モード、移動通信機器104が機器の位置を計算するのをネットワークが支援するネットワーク支援モード、ネットワークベースモード、およびその他のモードが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は米国特許法第119条(e)に基づき、2000年8月14日受理の米国仮出願第60/225,076号、“無線ネットワーク用マルチモード全地球測位システム”(Ashutosh Pande他)を優先権主張し、同出願を本明細書に添付する。
【0002】
(技術分野)
本発明は一般に全地球衛星システム(GSS)受信器に関し、特にマルチモード全地球測位システム(GPS)用の無線ネットワークに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
個人向け通信システム(PCS)機器を含む、携帯電話技術(テレフォニ)が普及している。そのような機器を用いた音声、データ、およびインターネット・アクセス等の他のサービスの提供は、セルラー(携帯電話)システムの利用者にさまざまな利便性を提供している。2方向ポケットベル機能、基幹無線通信(trunked radio)、警察、消防、および救急医療施設が利用する専用移動電話(SMR)もまた移動通信に不可欠となっている。
【0004】
携帯電話やPCS分野における最近注目すべき点は、全地球測位システム(GPS)技術の携帯電話器器その他の無線受信器への統合化である。例えば、本明細書に添付のKrasnerによる米国特許第5,874,914号は、基地局(移動電話交換局(MTSO)としても知られる)が、セルラーデータリンクを用い、衛星の天文歴情報の受信や利用をしなくても捕捉した衛星への擬似的距離を計算してドップラー情報を含むGPS衛星情報を遠隔機器へ送信する方法について述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GPSと携帯電話技術の統合に対する昨今の関心は、“911”呼出し(“拡張911”または“E911”とも呼ばれる)等の緊急呼出しが所定の携帯電話から発信されたならば、50フィート以内の精度で携帯電話の位置が特定されるべきであるとの連邦通信委員会(FCC)の新たな規制から生じている。このような位置データは、警察、緊急医療従事者、その他の司法担当者および公務員、並びに携帯電話の位置を特定する法的権限を必要とするか、または保持している他の当局者にとって有用である。さらに、移動電話に提供されるデータを移動電話利用者が用いて、携帯電話の利用者が特定しようとする他の場所や他の移動電話の方角、緯度、および経度位置(場所や位置)、携帯電話利用者の他の陸上の目印からの相対位置の特定、インターネット地図その他のGPS地図表示技術等を用いた携帯電話利用者への指示を得ることができる。このようなデータはE911呼出し以外の利用が可能であり、携帯電話およびPCS加入者にとって非常に有用であろう。
【0006】
しかし、Krasnerによるアプローチは、GPS専用データ・ウェアウハウスに接続可能なデータリンクの数により制限される。GPSデータを求めたり、必要としている携帯電話やPCS利用者の各々にGPS情報を配信するための追加要件を管理するためにシステムハードウェアをアップグレードする必要があり、それらの要件は、無線システムが管理および配信する標準的な音声およびデータトラフィックを扱うための要件よりも重要性が高いであろう。
【0007】
GPSシステムと無線ネットワーク間の支援に関連する別の特許として、Schuchman他による米国特許第5,365,450号があり、本明細書に添付する。Schuchman特許では、GPS受信器がGPS衛星を捕捉して追跡するために携帯電話システム全体にわたる天文歴情報支援が必要とされる。しかし、携帯電話その他の無線ネットワークは必ずしも移動GPS受信器に天文的支援を提供する機能を有するわけではない。
【0008】
従って、当分野において携帯電話やPCS加入者を含む無線通信システムへGPSデータを効率的に配信するニーズがあることがわかる。また、当分野においてGPS対応の携帯電話およびPCS電話のニーズがあることもわかる。また、当分野において携帯電話/PCS加入者向けにGPS衛星データを受信することができるGPS対応の携帯電話およびPCS電話のニーズ要があることもわかる。また、当分野においてE911を含む各種の用途に、地理的に近接した基地局を必要とせずに携帯電話利用者に対するGPS情報の利用および/または提供が可能な大規模な携帯電話システムのニーズがあることもわかる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
上述の従来技術における制約を最小限にすべく、また本明細書を精読/理解した上で明らかになるその他の制約を最小限すべく、本発明は移動機器の位置を特定するためのシステム、機器および方法を開示する。本システムは地上位置サーバーおよび無線通信機器を含む。地上位置サーバーは少なくとも1個のGPS衛星から少なくとも1個の信号を受信する。無線通信機器はGPS受信器セクションを含み、GPS受信器は無線通信機器の地上位置を特定するために、スタンドアロンモードおよび少なくとも他の1つのモードとの間を選択的に切り替わることができる。無線通信機器は地上位置サーバーへ無線通信機器が特定した地上位置を選択的に送信することができる。
【0010】
本発明の目的は、携帯電話およびPCS加入者を含む無線通信システムへGPSデータを効率的に配信する方法およびシステムを提供することである。本発明の別の目的は、GPS対応の携帯電話およびPCS電話を管理可能なシステムおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、GPS対応の携帯電話およびPCS電話向けに、携帯電話/PCS加入者が利用するGPS衛星データを受信できる方法およびシステムを提供することである。本発明のさらに別の目的は、大規模な携帯電話システム向けに、携帯電話利用者がE911を含む各種の用途にGPS情報の利用および/または提供が可能な方法およびシステムを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明を実施するための最良の形態)
以下の記述において、本明細書の一部を形成するとともに、本発明の特定の実施の形態を図解する添付図面を参照する。他の実施の形態を用いてもよく、また構造的な変更を加えても本発明の範囲から逸脱しないことが理解されよう。
【実施例】
【0012】
(概要)
GPSコンポーネントを無線通信システム(携帯電話、ポケットベル、2方向ポケットベル、情報携帯端末、ブルーツース(Bluetooth)およびPCSシステムを含む)と統合する際に、GPSシステムは、典型的な無線通信システム利用者が遭遇するであろう条件下でGPS衛星を捕捉して追跡する能力を備えていなければならない。例えば、屋内利用や、超高層ビルが邪魔で衛星が観測できない都心区域等、上空が見通せない密集した都市区域での利用等、条件のいくつかは、地上基地無線通信システムでは対処できるものの、GPSシステムには好ましくない。例えば、GPS受信器がGPS衛星からの信号を捕捉して、衛星を追跡し、求められればGPSシステムへ外部情報を一切配信することなくナビゲーションを行なう従来のスタンドアロンモードGPSには、初期特定所要時間(TTFF)が長いという問題があり、さらに屋内または上空の見通しが限定された条件下でGPS衛星信号を捕捉する能力が限定される。若干の追加情報があったとしてもTTFF時間が30秒を超える場合があるが、それは天文データをGPSシステム自身が捕捉せねばならず、またそのような情報を確実に捕捉するには強力な信号を必要とするからである。GPSシステムのこれらの要件は、位置情報の可用性の信頼性だけでなく携帯無線通信システム機器の電力消費量に影響を与える。
【0013】
これらの問題を克服すべく、本発明は各種の要因に依存する複数の動作モードを可能にする。本発明のGPSシステムは、例えばGPS受信器が強力な信号を受信していて、最新の天文または暦的データを有している場合、または正確な位置が必要とされない場合、スタンドアロンモードで利用することができる。しかし、本発明のGPSシステムが、十分強力なGPS信号を受信していない場合、例えば携帯無線通信機器を屋内で使用している場合には本発明のGPSシステムは異なる動作モード、例えばGPSシステムがGPS受信器から受信したGPS信号および無線通信システムから提供された追加情報を用いて捕捉、追跡、および/またはナビゲートするのを無線通信システムが助けたり“支援”する動作モードに切り替わることができる。この動作モードは“ネットワーク支援”モードと呼ばれる。さらに、本発明のGPSシステムは、より厳しい信号受信環境で用いられる場合、GPS受信器または携帯電話器に位置情報を提供するためには無線通信システムに完全に依存し、本発明のGPSシステムは次いで与えられた無線通信ネットワークまたは“ネットワークベース”動作モードで動作しよう。本発明のGPSシステムは、利用者が選択した好みや要求とともに数個の変数に基づいてこれらの動作モード間を切り替わることができ、またローカルまたはリモート制御のいずれかにより、あるいはGPSシステムに与えられた自動または手動コマンドのいずれかにより切り替わることができる。
【0014】
さらに、以下に述べるように本発明のマルチモード動作は統合化されたGPS/無線通信システムにさらなる利点をもたらす。
【0015】
(GPSアーキテクチャ)
図1にGPSアーキテクチャを示す。
【0016】
本発明の携帯電話器測位技術はGPS技術を用いて、E911および地上位置サービスを実装すべく各種の携帯電話器機器を支援する。無線ネットワーク通信サービスとともに本発明により可能となる低コスト、低消費電力、高性能、高精度GPS受信器を利用することにより、本発明の携帯電話器位置特定は無線支援GPSに対し信頼性が高く経済的なソリューションを提供する。
【0017】
本発明の携帯電話器位置特定技術は、完全スタンドアロンモード、ネットワーク支援モードから、ネットワークベースのサービスモード、その他のモードまで、あらゆる種類の地上位置サービスに対応している。本発明の技術はまた、CDMA、TDMA、AMP、およびポケットベルシステムまで含む広範な無線通信プラットホームを受け入れる。図1に携帯電話器の位置特定の概念を示す。
【0018】
システム100はGPS衛星102を示し、軌道内にあるGPS衛星102の衛星群、GPS受信器を構成する携帯電話器104、基地局106、地上位置(サーバー)サービスセンター108、地上位置終端アプリケーション110、および公共安全応答地点(PSAP)112を図解している。
【0019】
GPS衛星102は携帯電話器104および地上位置サーバー108において受信されたスペクトラム拡散信号114を送信する。図を見やすくするために他のGPS衛星102は図示しないが、他のGPS衛星102もまた携帯電話器104および地上位置サーバー108により受信された信号114を送信している。携帯電話器104が十分強力な信号114を受信可能な場合、携帯電話器104内のGPS受信器はGPSシステムで通常行なわれるように、携帯電話器114の位置を計算することができる。しかし、携帯電話器は通常、携帯電話器104の位置を自律的に計算するのに十分強力な信号114を受信できないか、または十分な数のGPS衛星102から信号を受信できないが、依然として基地局106とは通信可能である。従って、基地局106は信号116を介して携帯電話器104へ情報を送信することにより携帯電話器104を位置を計算可能にしたり、あるは携帯電話器104から地上位置サーバー108へ情報を送信することにより地上位置サーバー108が携帯電話器104の位置を計算可能にする。基地局106が携帯電話器104へ情報を転送して携帯電話器104が位置の計算を行なえるようにする場合を“無線支援GPS”と呼び、基地局106が携帯電話器104から地上位置サーバー108へ情報を転送して地上位置サーバー108が携帯電話器104の位置を計算する場合を“ネットワーク集中GPS”と呼ぶ。
【0020】
地上位置サーバーはまた、信号118を介して地上位置アプリケーション110と、また信号120を介してPSAP112と通信する。これらの信号118、120は無線接続経由でも、または地上電話回線網その他の有線ネットワーク経由でもよい。
【0021】
本発明の携帯電話器104位置特定技術は2種類の主要なサービスシステムを含む。すなわち、本発明のGPS受信器と携帯電話器104の組合わせ、および本発明の地上位置ソフトウェアモジュールを含む地上位置サーバー108である。さらに、2種類の支援システムがある。すなわちネットワーク情報転送機構を提供する基地局(BS)106基盤構造、および地上位置ネットワークサービスを主導できるPSAP112またはアプリケーション110システムである。
【0022】
携帯電話器104は、呼処理(CP)機能を実行する典型的な携帯電話器104部、および本発明の携帯電話器104で実行される位置計算、擬似距離測定その他のGPS機能用のGPSセクションを含む。シリアル通信リンク、その他の通信リンクがCPセクションとGPSセクションの間の通信を実行する。一群のハードウェア回線を用いてCPとGPSセクションの間における信号送信を行なう。
【0023】
図2に、本発明の呼処理セクション部とGPSセクションの間の典型的なインタフェースを示す。
【0024】
図2に示すように、携帯電話器104は呼処理(CP)セクション200および全地球測位システム(GPS)セクション202を含む。携帯電話器104内部で、あるいは携帯電話器104と携帯電話器104に付随する外部補助機器との間で、CPセクション200とGPSセクション202の間に通信が生起する。これらの通信はCPセクション200からGPSセクション202へ信号の転送を可能にし、通常はシリアル通信リンク204とハードウェア回線206上で生起するが、必要であれば他の接続を用いてもよい。
【0025】
別の実装方式において、例えばCPセクション200とGPSセクション202は同一デジタルプロセッサおよびその他の回路を共有していてもよい。このような場合、セクション間の通信はタスク間通信およびある種のデータ転送により実行可能であり、その際にCPセクション200とGPSセクション202の間で時間または周波数転送はハードウェア回線206を一切利用せず、回路内部で行なわれ、あるいは回路設計にもよるが潜在的に一切転送が必要とされないであろう。
【0026】
図3に、本発明の終端間システムの別の実装方式を示す。
【0027】
システム300は携帯電話器104で受信される信号114を示す。典型的な携帯電話器は、通常RS232データリンク306で接続されているGPS受信器クライアント302およびCPセクション304を含む。CPセクションは基地局106と通信し、基地局はセルラーおよび/またはセルラー/地上電話回線を介して主サーバー308と通信する。主サーバー308は、地上または無線ネットワークを介して、通常はTCP/IPプロトコルを用いて地上位置サーバー108およびアプリケーション110と通信する。
【0028】
GPS信号114はまた、一連の基準受信器310でも受信され、これらは基準受信器の位置を計算してGPS信号114からデータを抽出する。例えば時間、ドップラー、周波数等の抽出データは、GPS衛星群102内の全衛星についてGPSデータ中心312へ送られる。必要ならば、地上位置サーバー108は携帯電話器104で利用できるようにデータセンター312からデータを抽出し、必要な、または要求されたデータを携帯電話器104またはアプリケーション110から送信する。主サーバーはまた、求められればPSAP112とインターフェースを持つことが可能であり、求められるかまたは必要ならば主サーバー308と地上位置サーバー108を同時に位置特定することが可能である。
【0029】
本発明の物理的実装方式は、例えば携帯電話、PCS、2方向ポケットベル、専用移動無線(SMR)、ショートメッセージ交換サービス(SMS)等、利用する無線ネットワークに応じて図面に示すものと異なるかもしれない。図面は専ら説明目的のみに使われ、本発明の用途を他の無線システムに限定する意図はない。さらに本発明は、例えば地上線電話システム、ローカルエリア・ネットワーク等、有線接続されたシステムで利用することもできるが、これは本発明の範囲を逸脱しない。
【0030】
図4に、本発明の別の実施の形態を示す。
【0031】
システム400は、携帯電話器104が受信する信号114を送信しているGPS衛星群102を示す。携帯電話器104は、クライアント402とも呼ばれるGPS受信器402、サーバー404、およびCPセクション406を含む。システム400において、サーバー404は図3に示すサーバー108と同じ能力を持たないため“シン(軽装備)・サーバー”として知られている。システム400はGPS衛星群102からも信号114を受信するためにGPS基準受信器310を用いて、GPSデータをデータセンター312に保存する。この情報は、サーバー404を用いてCPセクション406とクライアント402の間でデータを受送信するアプリケーション110または携帯電話器104から要求があれば主サーバー308へ送信される。システム400はある種の支援データ、例えば天文データをサーバー404側の携帯電話器に保存して、要求があればGPSクライアント402に提供できるようにする。
【0032】
(無線ネットワークによるマルチモードGPS動作)
上述のように本発明のシステムは、例えば信号強度、オペレーターの介在、所望または要求するサービスの種類、期待性能(例えばTTFFが数秒なのか数十秒かかるのか)等、多くの変数に依存する異なるモードで動作可能である。各モードの動作を以下に記述する。
【0033】
(スタンドアロンモード)
スタンドアロンモードにおいて、移動通信機器(携帯電話器104やPDAとしても知られる)に置かれたGPS受信器202は無線通信ネットワークからは独立して動作する。GPS受信器202はGPS衛星102信号114を捕捉し、これらの信号114を用いてGPS受信器202の位置を特定する。GPS受信器202はまた、GPS衛星102信号114を用いて追跡、および必要ならばナビゲーション機能を行なう。特定された位置は移動通信機器104内部で用いられる。
【0034】
(自律モード)
自律モードにおいて携帯電話器104の位置はスタンドアロンモードと同様に、例えば携帯電話器104内のGPS受信器202によりセルラーその他の通信ネットワークから一切の支援なしに計算される。しかし、自律モードでは特定した位置を携帯電話器104内部で用いるのではなく、携帯電話器104は携帯電話器104の特定された位置を、例えば地上位置サーバー108、アプリケーション110、PSAP 112等の通信ネットワークへ無線通信ネットワークを介して返送する。
【0035】
(ネットワーク支援モード)
GPS受信器が無線通信ネットワークを用いてある種の位置情報をGPS受信器へ配信してGPS受信器が捕捉、追跡、およびナビゲーション機能を行なうのを“支援する”異なる動作モードが実装可能である。このような情報は、暦または代替暦情報、粗い位置情報、ドップラーデータ、捕捉した衛星の位置、時間および周波数支援、受信された無線信号の強度(GPS信号強度を推定するための参考値を得るため)、またはGPS受信器が捕捉、ナビゲート、または追跡するために必要な情報をGPS受信器が捕捉するのを支援する。そのような状況は、GPS受信器から上空の見通しが制約されている場合や、GPS受信器が遮蔽されているかGPS衛星信号が捕捉できないために自身で十分なGPS信号を捕捉することが不可能であるか、あるいは多重経路問題により衛星を追跡できない場合に起こり得る。さらに、このような状況はまた、所定のイベントにより条件付けられた利用者が望むかもしれない。例えば、携帯電話器からのE911呼び出し、利用者はTTFFが非常に短いことを望み、精度向上その他の理由により利用者はGPS計算に追加のネットワーク情報を含めるよう望むであろう。
【0036】
ネットワーク支援アプローチがネットワーク集中(他の文献ではネットワークアシストモードとも呼ばれる)と異なる理由は、ネットワーク支援アプローチではGPS受信器は、GPS受信器の位置を特定するのに必要な位置および追跡情報を最終的には独力で捕捉することができるからである。Krasner特許で述べているように、ネットワーク集中アプローチは、無線ネットワーク外から捕捉したGPS情報だけを用いて移動受信器の位置を特定することができない。その理由は、位置計算が本発明で述べるように移動通信機器内ではなく、基地局における無線ネットワーク内部で行なわれるためである。
【0037】
さらにネットワーク支援アプローチは、本発明に関して述べるように、初期捕捉が行なわれたならば、スタンドアロンモード、自律モード、またはその他のモード間を切り替わることを許す。ネットワーク支援モードおよび本発明のアーキテクチャにより追跡、例えば、微弱な信号環境であっても自律モードまたはスタンドアロンモードで利用者位置を連続的に更新できる。Krasner特許のネットワークアシストアーキテクチャは通常、後続位置を計算する際にネットワークからの支援に依存し続ける。
【0038】
ネットワーク支援モードは通常、微弱な信号環境におけるGPS信号の捕捉のためだけに用いられる。一旦GPS信号が捕捉されたならば、本発明のGPS受信器はネットワークからの支援なしでもGPS信号を追跡することができる。Krasner特許のネットワークアシストモードでは、ネットワークが捕捉だけでなく追跡目的でGPS受信器を支援することを求める。
【0039】
(ネットワークベースモード)
ネットワークベースモードはまた、GPS受信器がGPS信号を全く受信できない状況でも用いることができる。その場合、GPSシステムはどのような測位情報を得るにせよ無線通信ネットワークに依存しており、その結果無線通信ネットワークにより配信される情報に“集中している”。通常、ネットワークベースモードはGPSその他の衛星情報を用いることなく位置を計算する。携帯電話器104の位置はネットワークリソース、例えば、セルラー送信塔および到着時間差(TDOA)技術から配信される。携帯電話器104の位置を特定するためにGPSその他の測位システム情報を受信することができない区域に携帯電話器104がある場合、このようなモードは有用である。
【0040】
(その他のモード)
本発明のシステムは、スタンドアロン、自律、ネットワーク支援、またはネットワークベースの各モードにおいて、GPS衛星システム外からだけでなく無線通信ネットワーク外からも情報を受信することができる。例えば、自律モードまたはスタンドアロンモードにおいて、GPS受信器は音声やデータの送信にセルラー無線ネットワークを用いる一方で、GPS衛星およびブルーツース・ネットワークから情報を受信することができる。GPS捕捉、追跡、およびナビゲーション機能は、セルラーネットワークを用いずにブルーツース・ネットワークからの入力により拡張することができる。本発明の範囲の中で、ネットワーク支援またはネットワークベースモードの内部で生じる同様の働きが想定できる。さらに本発明は、無線通信ネットワーク内で利用すべくGPS情報を無線通信ネットワークへ返送する逆支援(RA)モードで動作可能である。
【0041】
さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のアーキテクチャおよびシステムを電話回線等の有線ネットワークへ拡張することができる。例えば、ラップトップやPDAにGPS機能が搭載されていて、機器が有線または無線インターネットリンクに接続されている場合、GPS計算はインターネットを介して支援されて建物内部の位置を計算することができる。位置はローカル環境で表示することも、あるいはサーバーへ送ることができる。このようなシステムはセキュリティその他の電話または有線接続されたシステム・アプリケーションに利用することができる。
【0042】
本発明はまた無線ネットワーク監視にも利用でき、無線信号強度その他任意の位置関連情報とともに位置情報を支援を求める全利用者から収集して、ネットワークの中心位置で、セルがカバーする区域、単一セル内のトラフィック量、トラフィックが集中する箇所、無線の受信状態が悪い区域、新しい基地局の追加や移動に関する決定の支援を連続的に監視することができる。その区域で利用されているすべての移動システムによりリアルタイムでサービスの品質を監視することができる。
【0043】
(動作モードの比較)
本発明の動作モードは、GPS受信器フレームワークにさらなる柔軟性を持たせる。TTFFを短縮する要求、ネットワーク帯域幅、または他の信号要求によりGPS受信器が制約されない場合、本発明のGPS受信器は所与の捕捉モードを自動的に選択すべくプログラム可能である。例えば、ネットワーク・トラフィックが混み合っている場合、すなわち無線通信ネットワークにおける帯域幅の可用性が小さい場合、本発明により利用者は自動的にまたは手動で自律モードまたはスタンドアロンモードを選択することができ、これは情報の支援を得るために無線通信ネットワークに依存しない。同様に、地上位置サーバー108の使用率が混み合っていて、情報支援の待ち時間が要件と合わない場合、利用者は自動的にまたは手動で自律またはスタンドアロンモードを選択することができる。しかし、無線ネットワークにおいて追加の帯域幅が利用可能であるか、または利用者がE911呼出しを行なうためにTTFFが短くなければならない場合、本発明は自律またはスタンドアロンモードの動作を手動で、または自動的に、自律またはスタンドアロン(天文データが最新であって、暗黙的支援情報がある場合)、ネットワーク基地局、ネットワーク支援モードにオーバーライドすることを許す。さらに、求められる信頼性ではネットワークが配信不可能であるか、またはネットワークに支援機能が備わっていない場合、GPSは他のモードまたは他の情報源を用いて、“拡張自律モード(AAM)”と呼ばれる動作モードで、自律またはスタンドアロンモードを拡張する。AAMは、ブルーツース、あるいは圧力計、加速度計、またはジャイロ等他のセンサーを用いて、通信用途に使われているネットワーク外でGPSを支援することができる。例えば、本発明は高層ビルの全階上でブルーツース送信機を利用して、自分の位置とフロア情報を電話へ送り、この“増補情報”はGPSが配置データを配信するために建物の中に捕捉できない場合に備えて、送られるであろう。
【0044】
本発明のマルチモードアーキテクチャは、利用可能であればネットワーク支援を利用することにより、自動的にシームレスかつ信頼できる応答を実現し、支援が利用不可能またはタイムリーに利用できない場合、システムが独立して動作できるようにする。ネットワーク支援された動作モードは自律またはスタンドアロンGPSの起動時制約を克服し、ネットワークベースモードと同程度の性能を可能にするが、起動後も引き続いてネットワーク接続している必要はない。支援データ(天文データ、おおよその位置、おおよその時間等)が何らかの通信媒体を介して携帯電話により受信されている場合、GPSの起動時において通信リンクはオフにすることができる。これがシン・サーバーを無線通信機器に直接搭載する保存後転送方式方法である。アーキテクチャのシームレスな特性と柔軟性により、サービスプロバイダがネットワークの能力と所望のサービス種類に基づいて自身のニーズを満たすべくシステムを調整できるようにする。
【0045】
さらに、動作モードの選択はサービスの種類または利用者がシステムに期待または要求する精度に依存していてよい。例えば、利用者がE911呼出しを行なった場合、GPS受信器は自動的に可能な最適なタイミングで最も正確な位置情報を提供するモードに設定することができる。そのモードはネットワークベースであるかもしれないが、移動GPS受信器が位置計算情報を特定できるように完全なGPS情報セットをネットワークが提供できない場合、ネットワークとGPS受信器の処理能力が並列に用いられるように受信器はネットワーク支援に切り替わることができる。別の例として、ある利用者が特定の場所への方向を求めている場合、受信器は自動的に、タイムリーに情報を提供する自律またはスタンドアロンモードを選択できるが、システムの電源や処理能力に対してこのような要求をすることはできない。さらに、本発明は利用者が自動選択された動作モードをオーバーライドすることを許す。本システムはまた、一旦所定のイベント、例えばGPS受信器の最初の位置計算が得られた場合、モード間を切り替わることができる。例えば、E911呼出しがなされた場合、本発明はネットワーク支援モードを選択して可能な限り速く受信器向けに位置情報を捕捉することができる。一旦その情報が届けられ、かつ最初の位置が計算されたならば、本発明は自律モードまたはスタンドアロンモード等の異なるモードに切り替わって、無線通信ネットワーク内で追加された帯域幅が他の利用者にも利用できるようにする。本発明のアーキテクチャはまた、支援情報の受信を可能にし、利用者に対し位置情報がネットワークに返送されることを了承するか、または、プライバシーの理由で望むならば、利用者だけが利用できるように移動システムに“固定する”、のいずれかの選択権を与える。
【0046】
本発明のアーキテクチャはまた、利用回数に応じてネットワークアクセスが利用者に課金される場合、たとえGPS受信器が利用者の要求に応える必要があると判断しても、支援用のネットワーク接続を拒否する選択権を利用者に与える。このような状況において、GPS受信器はスタンドアロンモードでの位置提供を試みるが、利用者の本来の要求が満たされるか否かは保証しない。本発明はこのように、無線通信ネットワークの帯域幅がより効率的に利用できるように帯域幅の管理を可能にする。本発明はさらに、GPS受信器上で利用可能な処理を含めてネットワークリソースの動的な割り当てを行なって、なるべく多くの情報を並列に処理できるようにする。これは多数の利用者の位置をより効率的に計算すべくGPSクライアントおよびネットワークサーバープロセッサの動的ローディングを可能にする。このアプローチにより、無線通信システムの基盤構造に殆ど影響を与えることなく無線通信システム利用者の数を増やすことができる。
【0047】
(多重相関アーキテクチャ)
本発明のシステムを支援するために、多重相関を用いて、自律またはスタンドアロンモードからネットワーク支援モードまたはネットワークベースモードへの切り替えを少なくしてシステムのTTFFを短縮し、より正確な位値またはより信頼性の高い結果を提供することができる。
【0048】
(分散スマート・クライアント・サーバー・アーキテクチャ)
GPS受信器(クライアントとしても知られる)および無線通信システム(サーバーとも呼ばれる)が捕捉、追跡、およびナビゲーションタスクの動作負荷を知的な仕方で分散可能にすることにより、本発明は捕捉を高速化し、TTFF時間を短縮し、GPS受信器システムを部分的に停止したり選択的に起動可能にして移動機器のGPS部の電力消費を低減させることができる。
【0049】
本発明のアーキテクチャはまた、GPS受信器に保存されている天文的データが依然として正しいことを検証すべくネットワーク支援モードを用いて天文的データの事前検査、例えば保存された天文的データの品質検査を可能にする。同様に、ネットワーク支援モードにより本発明が粗い位値捕捉シナリオに用いられる粗い位置データを導くことを可能にし、実際の場所特定のために既知の天文的または暦に基づく時間タグ近似位置とデータの後処理が使われる。
【0050】
もう一つの(拡大自律)モードはまた、近似位置特定でGPS受信器を支援する低電力ショートレンジ無線技術だけでなく、ブルーツース等の、低電力ショートレンジ無線技術を利用して、GPS受信器が初期特定所要時間(TTFF)時間を短縮することができる。
【0051】
本発明はまた、自律またはスタンドアロンとネットワーク支援モードの間を切り替わることにより、あるいはネットワーク支援モードのままで、無線通信ネットワークを介して、誤差を少しづつ変化させながら正確なローカル位置を取得すべく,例えばIono補正係数や更新された代替暦情報等の補正情報をGPSシステムへ送ることができる。本発明はまた、例えば、加速度計、圧力センサー、チルトメーター等各種のソースからのデータ“融合”を可能にでき、これらはまた無線通信機器上に存在して位置特定の精度を高めるとともに、無線通信機器におおよその位置、時間、および周波数情報を提供して無線通信機器がより正確に位置特定をできるようにし、および/または各クライアントに対するTTFF時間を短縮する。
【0052】
(逆支援)
本発明はまた、送信ビームを携帯電話器の方へ向けるべく無線通信システムを逆向きに支援(RA)することが可能な位置特定機器と無線通信システム設備の間で共通の周波数基準を共有するための装置を含む。これにより無線通信システムは各移動通信利用者に狙いを定めた成形送信ビームを向けたり形成する位相化配列技術を利用できるため、セル内部でさらに周波数の再利用やコードの再利用が可能になる。これにより形成または方向付けられた光線は通常、全方位ビームパターンよりもゲインが大きいため、基地局送信機の消費電力がより少なくなるとともに、移動通信利用者側の消費電力も少なくて済む。本発明のこの特徴により通信リンクを最適化して無線通信システム基地局の容量を増強するのに役立ち、コード分割多重アクセス(CDMA)ネットワークが非常に有用である。その理由は、CDMAネットワークの容量がコード効率ではなく、ネットワークに入る利用者が増えるにつれて増大するノイズ下限により制約されるためである。
【0053】
RAはまた、極めて正確な絶対時間と周波数基準を提供することにより、無線ネットワークの捕捉およびコード同期を速めるためにも利用できる。RAはまた、GPS位置を用いて、別の基地局に切り替わる時期の決定を支援することもできる(GPS支援の基地局ハンドオーバー)。
【0054】
RAはまた、ネットワークを通信媒体としてのみ利用して、第一の移動システムが絶対時間情報を取得してネットワーク時間とGPS時間の相違を測定し、その情報をネットワークへ返送する、移動体間通信にも利用できる。GPS支援情報を求める次の利用者は、GPS時間とネットワーク時間の差を受信し、この情報のネットワーク時間を修正してGPS時間を取得し、自身のGPS捕捉プロセスに役立てる。
【0055】
別の実施の形態において、ネットワークは、同一区域内で異なる時点に数人の利用者から冗長な較正情報を受信し、ネットワーク時間オフセットおよび周波数ドリフトをモデル化して将来における値を予想することができる。このように、どの移動体からも情報が受信されない期間の後であってもネットワークは新しい移動体にタイミング支援情報を提供することができる。
【0056】
利用者間RAもまた、周波数転送にあてはまる。ここに、ネットワーク周波数と移動体内GPS周波数の間で測定された周波数誤差はネットワークに返送されて、支援情報の一部として新しい利用者に返送される。
【0057】
サーバーを用いない移動体間直接GPS支援はまた、支援を求める次の利用者に再送する前に一時的に支援情報を保存するサーバーの介在なしに利用できる。位置を捕捉した移動体は、正しい天文歴情報と、恐らくネットワーク時間とGPSに対する周波数誤差を有し、基地局を介した同じ区域内の他の任意の移動体へもこの情報をブロードキャストすることができる。
【0058】
地上に基地を置く無線通信ネットワークは、クライアントの位置を与えられた際のクライアントにおける多重経路受信問題を修正すべく、多重経路のモデリングの支援および/またはモデリングツールの供給が可能であるため、RAはまたクライアントにおける多重経路問題を修正するためにも利用できる。
【0059】
さらに、本発明は、無線通信システムが位相ロックループ(PLL)を整列させて利用者の動きに付随する問題を解決するのを支援すべく、RAがGPS受信器からの速度情報を利用できるように。特に、GPSからの絶対利用者速度情報を用いて無線追跡ループを誘導することにより有効無線セル半径を広げ、それにより無線信号強度が弱くても無線動作が可能になる。
【0060】
(時間および周波数支援)
無線ネットワークシステムは通常、高品質の基準クロックを備えており、CDMA等ある種の無線ネットワークシステムは絶対GPS時間に同期させられている。本発明は、無線ネットワーク周波数基準を携帯受信器のGPSセクションへ転送してGPSクロック周波数オフセットを推定し、周波数の不確定性を大幅に減少させることができる。GPS時間基準はまた、GPSセクションへ転送されてGPSクロック時間を設定することができる。時間と周波数を転送する主な目的は、受信器側のクロック時間と周波数の不確定要素を減らし、それによりはTTFFを短縮するためである。時間転送はまた感度の向上にも寄与することができる。
【0061】
(時間転送)
図5に、本発明と共に用いられる時間転送機構を示す。
【0062】
システム500は、測位ユニット(LMU)を備えたCDMAやGSM等、絶対GPS時間に同期させられている典型的な無線ネットワークシステムを示す。通常、GPS時間基準502は携帯電話器104のGPSセクションへ転送されて、GPSクロック時間をGPS時間に同期させる。本発明の携帯電話器位置特定システムの場合、時間転送は3つのステップで実現できる。
【0063】
第一のステップにおいて、基地局(BS)クロック504はGPS時間基準502に同期させることができる。BSクロック504における時間精度はシステム構成に依存し、100〜300ナノ秒の範囲に含まれる。これは特定のタイプのネットワークに組み込まれた特徴である。
【0064】
第二のステップにおいて、CPクロック506は、BSクロック504からCPクロック506へ送信されたマスターフレームにおける特定の一イベントの受信を計時することによりBSクロック504に同期させられる。BSクロック504は300ナノ秒の精度で絶対GPS時間で予測可能な最初のビットの送信時間にマスターフレームを送信する。BSクロック504とCPクロック506の間の同期誤差は、BSクロック504信号のRF基準点、BSクロック504の集団遅延、携帯電話器104と基地局の間の距離による信号送信時間、CPセクションの集団遅延、および携帯電話器104アーキテクチャにより生起される。
【0065】
携帯電話器104が基地局を追跡する限り、携帯電話器104のCPセクションは絶対GPS時間を認知しており、リアルタイムにではなく製品統合フェーズの間測定および調整されてきた、携帯電話器104におけるGPS時間に付随する精度を予測することができる。携帯電話器104が基地局またはBSクロック504を見失えば、CPクロック506の精度が劣化する。CPクロック506性能劣化はCPクロック506周波数の安定性に基づいて予測でき、通常はAllan分散および直近の追跡の古さで表わされる。
【0066】
本発明の携帯電話器場所システムは、空中インターフェースに非依存なように設計されている。携帯電話器104製造業者は追跡条件、CPクロック 504周波数安定性、および空中インターフェース性能の知識を有するため、携帯電話器104製造業者はGPSクロック508にモデルおよび/またはインターフェースを提供して、絶対GPSが時間およびあらゆる不確定要素効果を含む付随精度を転送する好適なまたは最適な方法を決定することができる。
【0067】
第三のステップにおいて、GPSクロック508はGPSセクションとCPセクションの間の通信リンクを介してCPセクションクロック506に時間転送メッセージを求める。通常は、この時間転送要求メッセージはパラメータを含んでいない。
【0068】
CPセクション200はこのようなメッセージにいくつかの異なる方法で応答することができる。CPセクションは正確なタイミングイベントを生成して時間転送応答メッセージを返送できる。タイミングイベントは通常、1個の長方形パルスであり、立ち上がりエッジがアクティブであるか、立下りエッジがアクティブであるかのいずれかである。時間転送応答メッセージは通常、GPS週におけるタイミングイベントの時刻、その週の経過秒数、および秒単位の時間不確定要素を含んでいる。GPSクロック508を用いてタイミングイベントを計時することにより、GPSクロック508CPクロック506時間に同期させられる。
【0069】
CPセクション200はまた、GPSセクションに“デルタ”メッセージを返送することもできる。例えば、CPセクション200またはGPSセクション202はCPクロック506とGPSクロック508を監視することができる。時間転送要求があれば、どちらのセクションがクロックを監視しているにせよ、CPセクション200またはGPSセクション202がGPS時間502を受信し、GPSクロック508とGPS時間502の間の相違が計算される。このデルタは次いで、新たに時間転送が要求されるまでGPS計算と位置特定に利用できる。
【0070】
タイミング情報が典型的に必要とされるのは、GPSセクション202が新しいGPS衛星102を新たに探索し始めた場合である。タイミング同期はGPSセクション202の要求があった場合に定期的に行なうことができない。探索で利用可能な有効時間精度は、GPSクロック508の品質の故に直近の再較正からの時間経過とともに劣化するであろう。しかし、本発明に関して述べたアプローチではCPクロック506をBSクロック504を介してGPS時間基準502に固定する必要性だけでなく、GPSクロック508をCPクロック506に固定する必要性が低下ないし消滅する。Allan分散で表わされるGPSクロック508の周波数安定性は、温度に対する周波数安定性と同様に、GPS衛星102信号探索の開始時点における時間不確定要素を予測するために利用されるであろう。本発明は、携帯電話器104が経時劣化効果を正確に予測し、時間転送周期性を選択し、時間転送の実行を支援する。それはGPSクロック508の選択の制御および次の探索がいつ行なわれるかは本発明のシステムの制御下にあるためである。
【0071】
(周波数転送)
図6に、本発明と共に用いられる周波数転送を示す。
【0072】
米国で利用されているCDMAシステム等の携帯電話システムにおいて、各基地局(BS)106は高品質の基準クロックを備えている。システム600は、BSクロック周波数が関連付けられているBSクロック600が以下のようにCP602へ、次いでGPSクロック604へ転送され、必要に応じてGPSクロック604周波数オフセットを推定することができることを示す。
【0073】
通常、CPセクション200は無線ネットワーク信号を追跡して、BSクロック602に相対的にオフセット関係にあるCPクロック604の周波数を測定する。測定後のCPクロック604周波数の不確定要素は、ネットワーク標準により指定されたBSクロック602周波数オフセット、携帯電話器104追跡ループ性能、CPクロック604周波数安定性、および携帯電話器104の移動により生じる。
【0074】
CPセクション200は次いで、GPSセクション202へ周波数較正メッセージを周期的に送信する。このメッセージは通常、CPクロック604とBSクロック602の間の周波数誤差を含んでいる。周波数較正メッセージは、GPSクロック606および/またはCPクロック604の要件に基づく更新の必要だけでなく、携帯電話器の能力により決定される周期で送られる。例えば、GPSクロック606とCPクロック604が共に高品位水晶(high quality crystals)である場合、更新メッセージはGPSクロックとCPクロックが共に低品位水晶(low quality crystals)である場合よりも送られる回数が少なく、ある場合には1回だけで済むかもしれない。しかし、周波数誤差更新の周期性は携帯電話器104メーカーにより選択可能である。以下に述べるように、GPSクロック606はCPクロック604と比較されるため、周波数較正メッセージ間のいかなるCPクロック604対BSクロック602ドリフトもGPSクロック606の不確定要素に追加される。CPクロック604を設定する別の方法は、CPクロック604を受信された信号へ向けてBSクロック602に同期させ、周波数較正メッセージに対する要求を軽減するものである。
【0075】
本明細書に添付するKrasnerの米国特許第5,841,396号等、その他のアプローチは、GPSクロック606をCPクロック604に固定する位相ロックループアプローチについて述べている。本発明はこのようなアプローチが想定しているCPセクション200とGPSセクション204の間の付加的な回路および信号転送を回避し、それにより本発明は既存のセルラー、無線、または有線電話システムにより容易かつ廉価に実装可能になる。
【0076】
図7に、本発明と共に用いられる周波数転送アーキテクチャを示す。
【0077】
システム700に、GPSクロック606をCPクロック604に固定することなく、全体的な周波数誤差を合計周波数誤差推定により限定される範囲内に維持することが可能なシステムを示す。携帯電話器104メーカーは、較正後の残余推定周波数誤差およびCPクロック604のAllan分散特性に依存して、メッセージ周期の特定の範囲を設計することができる。GPSセクション202はCPクロック604の絶対周波数を認識していないため、送信される情報は(Hz単位の)絶対誤差ではなく、相対周波数誤差である。GPSセクション202が必要とするメッセージは名目CPクロック604周波数から独立している。
【0078】
GPSセクション202およびGPSクロック606は、CPクロック604周波数の不確定要素情報を利用して信号捕捉性能を最適化する。携帯電話器104の動き以外のすべてが誤差推定は、無線基盤構造とCPセクション200アーキテクチャに依存する。CPセクション200はGPS202へ周期的にメッセージを送る。それらのメッセージはCPクロック604のHz単位の名目周波数を含んでいる。例えば、分割されたCPクロック604の周波数がCPセクション604により、絶対周波数誤差を相対周波数誤差、CPクロック604相対周波数オフセット対BSクロック602周波数、およびCPクロック604周波数オフセット不確定要素へ変換すべく測定するためにカウンタ702へ送られる。
【0079】
GPSセクション202は次いで、カウンタ702を用いてGPSクロック606とCPクロック604の間の相対周波数を測定する。カウンタゲーティング信号の有効幅は所定個数のGPSクロック606パルスをカウントすることにより決定される。ゲーティング信号が持続する間のCPクロック604パルスの個数はGPSクロック606とCPクロック604の間の相対周波数誤差を特定するために使われる。
【0080】
周波数較正間の周波数ドリフトはGPSクロック606のAllan分散および温度に対するその安定性に依存する。較正の周期性は、GPSクロック606に割り当てられた最大周波数誤差およびGPSクロック606の品質と依存して調整可能である。別の実施の形態において、または実装の利便性のために、周波数分割手段をCPクロック604とカウンタ702の間に挿入することにより、カウンタにより測定される絶対周波数を減少させることができる。
【0081】
(プロセスチャート)
図8は、本発明を実施するために用いられるステップを示すフローチャートである。ブロック800は、移動機器において少なくとも1個のGPS衛星から少なくとも1個の信号を受信する様子を示し、その中で移動機器はスタンドアロンモードと少なくとも1個の別モードの間を選択的に切り替わることができる。ブロック802は、移動機器の地上位置を特定する様子を示す。ブロック804は、移動機器の特定された地上位置を無線ネットワークを介して選択的に地上位置サーバーへ送信する様子を示す。
【0082】
(結論)
これをもって本発明の好適な実施の形態の記述を終える。以下の段落は同じ目的を実現するためのいくつかの代替的な方法を記述する。本発明はGPSシステムに関して記述されているが、本発明の範囲から逸脱することなく任意の衛星測位システム(SATPS)で利用できる。さらに、携帯電話システムに関して記述しているが、本発明の範囲から逸脱することなく他の無線または有線システムを本明細書に記述された携帯電話システムの代わりに、または組み合わせて用いることができる。本発明の範囲から逸脱することなく他の周波数転送および時間転送方法を用いることも可能である。
【0083】
要約すれば、本発明は移動機器の位置を特定するシステム、機器、および方法を開示する。システムは地上位置サーバーおよび無線通信機器を含む。地上位置サーバーは少なくとも1個のGPS衛星から少なくとも1個の信号を受信する。無線通信機器はGPS受信器セクションを含み、その中でGPS受信器は無線通信機器の地上位置を特定するために自律モードまたはスタンドアロンモードと、少なくとも1個の別モードの間を選択的に切り替わることができる。無線通信機器は無線通信機器の特定された地上位置を選択的に地上位置サーバーへ送信することができる。
【0084】
上に述べた本発明の好適な実施の形態は、図解と説明目的で提示した。これらは本発明のすべてを網羅したものでも、また開示内容そのままに限定するものでもない。上述の内容を参考にして各種の改造や変更が可能である。本発明の範囲はこの詳細な記述ではなく、添付された請求項により限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0085】
以下の図面において同一図番は全体を通じて対応する部分を表わす。
【図1】典型的なGPSアーキテクチャの図である。
【図2】本発明の呼処理セクション部とGPSセクションの間のインタフェースを示す図である。
【図3】本発明に基づく別の終端間システムの実装を示す図である。
【図4】本発明のシン・サーバー実装を示す図である。
【図5】本発明に基づく、GPS時間基準とGPSクロックとの間に時間転送を示す図である。
【図6】本発明に基づく周波数転送ブロック図である。
【図7】本発明に基づく周波数転送アーキテクチャを示す図である。
【図8】本発明を実施するために用いるステップを示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のGPS衛星から少なくとも1個の信号を受信する地上位置サーバーと、
GPS受信器セクションを含む無線通信機器とを含み、
前記GPS受信器は、前記無線通信機器の地上位置を特定すべくスタンドアロンモードと少なくとも1個の別モードの間を選択的に切り替わることが可能であり、
前記少なくとも1個の別モードは自律モード、ネットワーク支援モード、およびネットワーク集中モードを含むグループから選択され、
前記選択的切り替わりは前記無線通信機器の地上位置の特定とほぼ同時に生起し、
前記無線通信機器は前記無線通信機器の特定された地上位置を前記地上位置サーバーへ選択的に送信することが可能である、地上位置システム。
【請求項2】
前記GPS受信器の前記選択的切り替わりは前記無線通信機器により自動的に行なわれる、請求項1に記載の地上位置システム。
【請求項3】
前記GPS受信器の前記選択的切り替わりは前記無線通信機器において手動で行なわれる、請求項1に記載の地上位置システム。
【請求項4】
前記無線通信機器の特定された地上位置の前記選択的送信は前記無線通信機器により自動的に行なわれる、請求項1に記載の地上位置システム。
【請求項5】
前記無線通信機器の特定された地上位置の前記選択的送信は前記無線通信機器において手動で行なわれる、請求項1に記載の地上位置システム。
【請求項6】
前記GPS受信器は、所定のイベントが生起した場合に、スタンドアロンモードと少なくとも1個の別モードの間を切り替わる、請求項1に記載の地上位置システム。
【請求項7】
前記所定のイベントは利用者により手動で選択される、請求項6に記載の地上位置システム。
【請求項8】
前記所定のイベントは少なくとも1個のGPS衛星信号の初期捕捉である、請求項6に記載の地上位置システム。
【請求項9】
前記GPS受信器の前記選択的切り替わりは、前記受信器を前記少なくとも1個の別モードからスタンドアロンモードへ切り替えることである、請求項8に記載の地上位置システム。
【請求項10】
前記少なくとも1個の別モードはネットワーク支援モードである、請求項9に記載の地上位置システム。
【請求項11】
前記少なくとも1個の別モードはさらに逆支援モードを含む、請求項10に記載の地上位置システム。
【請求項12】
前記無線通信機器は第二の情報源から情報を受信することができる、請求項11に記載の地上位置システム。
【請求項13】
前記第二の情報源は、ブルーツース(bluetooth)ネットワーク、専用移動無線ネットワーク、個人通信システム(PCS)ネットワーク、無線ローカルエリア・ネットワーク、赤外線ネットワーク、ポケットベルネットワーク、双方向ポケットベルネットワーク、あるいはFM放送ネットワークを含むグループから選択されている、請求項12に記載の地上位置システム。
【請求項14】
前記無線通信機器の地上位置は、GPS衛星信号および前記第二の情報源を用いて特定される、請求項13に記載の地上位置システム。
【請求項15】
前記無線通信機器は、前記無線通信機器の特定された地上位置を選択的に表示する、請求項6に記載の地上位置システム。
【請求項16】
移動機器の地上位置を特定する方法であって、
前記移動機器において少なくとも1個のGPS衛星から少なくとも1個の信号を受信するステップと、
前記移動機器の地上位置を特定するステップと、
前記移動機器の前記特定された地上位置を無線ネットワークを介して地上位置サーバーへ選択的に送信するステップとを含み、
前記移動機器は、スタンドアロンモードおよび少なくとも1個の別モードを含むグループから選択されたモードへ選択的に切り替わることが可能であり、
前記少なくとも1個の別モードは、自律モード、ネットワーク支援モード、およびネットワーク集中モードを含むグループから選択されていて、
前記地上位置は、前記選択されたモードへの切り替えとほぼ同時に、前記選択されたモードを用いて特定される方法。
【請求項17】
前記地上位置の特定は、前記移動機器により行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記地上位置の前記選択的送信は前記移動機器により行なわれ、前記地上位置は前記移動機器から前記地上位置サーバーへ送信される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
無線通信機器であって、
無線通信ネットワークと通信するための呼処理セクションと、
GPS受信器セクションとを含み、
前記GPS受信器セクションは、前記無線通信機器の地上位置を特定すべくスタンドアロンモードと少なくとも1個の別モードとの間を切り替え可能であり、
前記少なくとも1個の別モードは、自律モード、ネットワーク支援モード、およびネットワーク集中モードを含むグループから選択されていて、
前記選択的切り替えは、前記無線通信機器の前記地上位置の特定とほぼ同時に行なわれ、
前記無線通信機器は、前記無線通信機器の前記特定された地上位置を前記呼処理セクションへ選択的に送信して前記無線通信ネットワーク経由の転送が可能である無線通信機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送受信機であって、
音声またはデータを無線ネットワークへ送信し、音声またはデータを無線ネットワークから受信する呼処理セクションと、
少なくとも1つのGPS衛星から少なくとも1つの信号を受信するGPSセクション
を備え、その呼処理セクションが音声またはデータを送受信することに並行して、そのGPSセクションがそのGPS衛星からの信号を受信してその無線送受信機の位置を特定可能である、無線送受信機。
【請求項2】
前記呼処理セクションが、その呼処理セクションによって受信されたデータから処理されたGPSセクションを支援するための支援情報をGPSセクションへ送信可能である、請求項1の無線送受信機。
【請求項3】
前記GPSセクションが、GPSセクションによって受信された信号から処理された情報を呼処理セクションへ送信可能である、請求項2の無線送受信機。
【請求項4】
携帯電話機であって、
音声またはデータを無線ネットワークへ送信し、音声またはデータを無線ネットワークから受信する呼処理セクションと、
少なくとも1つのGPS衛星から少なくとも1つの信号を受信するGPSセクション
を備え、その呼処理セクションが音声またはデータを送受信することに並行して、そのGPSセクションがそのGPS衛星からの信号を受信してその携帯電話機の位置を特定可能である、携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−153873(P2006−153873A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−332122(P2005−332122)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【分割の表示】特願2002−520590(P2002−520590)の分割
【原出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(501382085)サーフ テクノロジー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】