説明

地下タンクの洗浄方法

【課題】特に地下タンクの撤去作業前に可燃性蒸気対策として、比較的安価且つ安全性の高い地下タンクの洗浄方法を提供する。
【解決手段】高圧ホース10の先端には洗浄ノズル20が装着され、後端には高圧洗浄機30が接続されて、高圧水が供給される。高圧ホース10は、通気管・油面計口Lを通って地下タンクT内に挿入されている。サクション口Sには、先端が地下タンクTの底面近くまで延びたサクションパイプ40が差し込まれ、サクションパイプ40の他端には、ホース50を介してエアー駆動式ダイヤフラムポンプ60が接続され、さらにホース70を介してバキューム車80に接続されている。高圧ホース10に高圧洗浄機30から高圧水が供給されると、洗浄ノズル20から高圧水Hが噴き出し、地下タンクT内面に残っていたガソリン等の付着物を洗い流す。同時に、地下タンクT内に溜まった洗浄廃水Wをサクションパイプ40から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として石油製品を貯蔵するために地下に埋設された地下タンクの内面を洗浄する地下タンクの洗浄方法に関し、特に地下タンクの撤去作業前に行う洗浄工程に適した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主としてガソリン・灯油・軽油・重油などの石油製品を貯蔵するために、地下に埋設された地下タンクが利用されている。このような地下タンクを老朽化などの理由により撤去しようとする場合、環境及び安全面に十分に配慮することが要求される。特に地下タンク内部の可燃性蒸気対策は、燃焼・爆発の防止のために、十分に行わなければならない。可燃性蒸気対策として、従来、水張工法と窒素置換工法の2つが実施されてきた。水張工法は、地下タンク内の残油を極力回収した後、水を流し込んで満水状態にし、地下タンクと配管接続部を掘り出した後、水を抜き取り、地下タンクを撤去・搬出する工程を含む。窒素置換工法は、残油回収後、中和剤と水を注入して静置し、中和剤と水を回収し、地下タンクの配管すべての蓋をして、地下タンク内に窒素を注入し、その後地下タンクと配管接続部を掘り出して地下タンクを撤去・搬出する工程を含む。水張方法は、地下タンクを掘り出す際にタンク内が満水状態なので安全性は高いが、その後抜いた水は産業廃棄物として処分するための廃棄コストが高くつく。窒素置換工法は比較的安価に実施可能だが、地下タンク内に可燃性蒸気が残っており、工事中に蓋が外れる等により地下タンク内の酸素濃度が高まると、燃焼や爆発を起こす可能性がある。
【0003】
特開2006−231153公報には、既設鋼製貯油埋設タンク内のクリーニング方法が開示されている。クリーニング作業は、水で薄めた洗剤を泡立たせ、泡が白くなるまで埋設タンク内水面に散布し、タンク内の油分を分離した水を水中ポンプで汲み出し、水で薄めた中和剤を高圧洗浄機を使って埋設タンク鋼板内側に吹きかけて油分及び揮発性ガスを除去し、錆、スラッジ及び洗浄汚水はバキュームポンプを使って汲み出すことにより行われる。この方法は特にタンクの内側をFRPによりライニング施工する前処理として提案されているのでコスト及び手間がかかり、地下タンク撤去作業前の可燃性蒸気対策としては適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−231153公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の目的は、特に地下タンクの撤去作業前に可燃性蒸気対策として、比較的安価且つ安全性の高い地下タンクの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、先端に洗浄ノズルが装着され、高圧液体が供給される高圧ホースを地下タンク内に挿入し、洗浄廃液を回収しつつ、洗浄ノズルから噴き出す高圧液体にて地下タンク内を洗浄する洗浄工程を含んで地下タンクの洗浄方法を構成した。
【0007】
本発明に係る地下タンクの洗浄方法においては、先端に洗浄ノズルが装着された高圧ホースが地下タンク内に挿入される。高圧ホースに高圧液体を供給すると、洗浄ノズルから高圧液体が噴き出し、地下タンク内面の残留物やスラッジ等の付着物を洗い流す。これを、地下タンク内に溜まった洗浄廃液を回収しつつ行うことにより、地下タンクの内面を洗浄することができる。
【0008】
本発明に係る地下タンクの洗浄方法において利用可能な液体は、水(界面活性剤等の洗浄剤や中和剤等を含んでいてもよい)、灯油・軽油や有機溶剤であり、静電気の発生を抑えるために揮発性の低いものが適している。地下タンクの撤去作業前に行う場合には、コスト面より、工業用水や上水が有利に使用できる。地下タンクを洗浄後に再度貯蔵用に利用する場合には、貯蔵される対象に適合した液体を使用するのが望ましく、例えば重油用のタンクであれば、洗浄用の液体として灯油・軽油が使用される。
【0009】
洗浄ノズルは、先端方向とは逆の向きである後方に向けて高圧液体を噴き出すタイプが好ましく、望ましくは、高圧液体の軌跡が洗浄ノズルから後方に広がる円錐状を形成するように噴き出すタイプである。後方に向けて高圧液体を噴き出す力で洗浄ノズルは地下タンク内を自然に前進する。また後方に円錐状を形成するようにすれば、地下タンク内をくまなく洗浄することができ、かつ噴き出す力が半径方向について均等になり、合力としての前進する力が高圧ホースにより支持されるので、洗浄ノズルが暴れにくい。
【0010】
高圧液体は高圧洗浄機より供給され、その圧力は高圧液体が水の場合に例えば30〜70kg/cmであり、水量は50〜100L/minである。洗浄廃液は、地下タンクに貯留していた液体や高圧液体が可燃性の場合、好ましくはエアー駆動式ダイヤフラムポンプのような火花を発生しないタイプのポンプにより回収される。例えば洗浄廃液は、地下タンク内に挿通されているサクションパイプを通じて、エアー駆動式ダイヤフラムポンプにより吸い上げられ、さらにバキューム車に送られる。
【0011】
先端に洗浄ノズル他装着された高圧ホースの挿入、及び洗浄廃液の回収は、地下タンクに予め接続されている配管接続部を通じて行うことができ、地下タンクに穴を開ける等の作業は必須ではない。配管接続部として利用可能なのは、例えば高圧ホースの挿入のためには通気管・油面計口であり、洗浄廃液の回収のためにはサクション管である。
【0012】
本発明に係る地下タンクの洗浄方法は、洗浄工程の終了後、地下タンク内に換気用エアーホースを挿入してエアーを送り込み、地下タンク内の強制換気を行うガスフリー工程をさらに含んでいてもよい。
【0013】
これは、石油製品など可燃性の液体用地下タンクの撤去作業前に洗浄を行う場合に適した工程であり、これにより可燃性ガスの濃度を低下させ、その後の撤去作業における爆発等の事故の発生を防止することができる。このガスフリー工程は、ガス濃度測定器により地下タンク内のガス濃度を測定し、多くとも爆発下限界の1/5(20%LEL)以下にガス濃度が低下するまで続行することが好ましい。エアーは、例えばコンプレッサーにより供給される。
【0014】
本発明に係る地下タンクの洗浄方法は、洗浄ノズルの少なくとも地下タンク内面に接する部分は、防爆金属で覆われているように構成してもよい。
【0015】
特に高圧液体または地下タンクに貯蔵する対象となる液体が可燃性である場合、高圧液体を噴き出す洗浄ノズルが暴れて、地下タンク内面に激突し、火花を発して引火するおそれがある。それを避けるために、洗浄ノズルの少なくとも地下タンク内面に接する部分は、防爆金属で覆う。防爆金属の例としては、真鍮、ベリリウム銅合金などが挙げられ、例えば洗浄ノズルは全て真鍮製とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明に係る地下タンクの洗浄方法は、特に地下タンクの撤去作業前の可燃性蒸気対策として適しており、しかも比較的安価且つ安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る地下タンクの洗浄方法の一つの実施の形態における洗浄工程を実行している状態を示す概略図である。
【図2】図2は、図1の実施の形態におけるガスフリー工程を実行している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明に係る地下タンクの洗浄方法の一つの実施の形態について説明する。なお以下の説明は、発明をより深く理解するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
図1は、本発明に係る地下タンクの洗浄方法の一つの実施の形態における洗浄工程を実行している状態を示す。図1において、高圧ホース10の先端には洗浄ノズル20が装着されており、後端には高圧洗浄機30が接続されて、高圧水が供給される。高圧ホース10は、通気管・油面計口Lを通って地下タンクT内に挿入されている。サクション口Sには、先端が地下タンクTの底面近くまで延びたサクションパイプ40が差し込まれており、サクションパイプ40の他端には、ホース50を介してエアー駆動式ダイヤフラムポンプ60が接続されており、さらにホース70を介してバキューム車80に接続されている。地下タンクTはガソリンスタンドに設けられたガソリン貯蔵用タンクであり、その他にも通気口V等の配管接続部が設けられている。
【0020】
本実施の形態は、ガソリン貯蔵用タンクの撤去に伴う可燃蒸気対策として行われるもので、洗浄作業の前に、作業に必要なマンホール、キャップ、フランジ等の開放、サクションパイプ40の挿入、エアー駆動式ダイヤフラムポンプ60やバキューム車80へのアース線の設置を行い、まずエアー駆動式ダイヤフラムポンプ60を作動させて、サクションパイプ40を通じて、可能な限り、地下タンクT内に残っているガソリンをバキューム車80に回収しておく。この作業後、洗浄工程の終了までに、適宜中和剤を地下タンクT内に注入してもよい。
【0021】
残っているガソリンが回収されると、続いて洗浄工程が実施される。先端に洗浄ノズル20が装着された高圧ホース10が通気管・油面計口Lを通って地下タンクT内に挿入され、高圧ホース10に高圧洗浄機30から高圧水が供給されると、洗浄ノズル20から高圧水Hが噴き出し、地下タンクT内面に残っていたガソリン等の付着物を洗い流す。同時に、地下タンクT内に溜まった洗浄廃液Wをサクションパイプ40から回収する。
【0022】
本実施の形態における洗浄ノズル20は、先端方向とは逆の向きである後方に向けて高圧水Hを噴き出すように構成されている。高圧水Hの軌跡は洗浄ノズル20から後方に広がる円錐状を形成するように噴き出す。後方に向けて高圧水Hを噴き出す力により、洗浄ノズル20は地下タンクT内を自然に前進するので、作業員Pは徐々に高圧ホース10を繰り出すことにより、地下タンクTの内面の洗浄箇所も移動していく。また、高圧水Hの噴き出す方向を円錐状にしたので、高圧水Hの噴き出す力が半径方向について均等になり、合力としての前進する力は高圧ホース10により支持されるので、洗浄ノズルが暴れにくい。実際の作業においては、作業員Pは洗浄ノズル20をゆっくりと前進させ、図1におけるサクションパイプ40の先端近くを通り、地下タンクTの前端に突き当たったら、高圧ホース10を引っ張って通気管・油面計口Lの真下まで洗浄ノズル20を引き戻し、また前進させるように洗浄ノズル20を往復させる操作を繰り返して、まんべんなく地下タンクTの内面を洗浄するようにする。
【0023】
高圧洗浄機30より供給される高圧水Hの圧力は、30〜70kg/cmであり、水量は50〜100L/minである。高圧水Hは工業用水であり、特に洗浄剤や中和剤等は混合されていない。洗浄ノズル20は、暴れて地下タンクTの内面と接触して火花を発生しないように、全て防爆金属である真鍮により製造されている。
【0024】
洗浄工程は、間断なく継続的に、または複数回に分けて断続的に行われ、十分に洗浄が済んだと判断されたら終了となる。例えば回収された洗浄廃水Wに含まれているガソリンがほとんど視認できなくなったら、終了とする。終了後、地下タンクT内に中和剤を注入してもよい。
【0025】
洗浄工程の終了後、図2に示すようなガスフリー工程が行われる。地下タンクT内には、通気管・油面計口L及びサクション口Sから、2本の換気用エアーホース90が挿入されている。各エアーホース90には、コンプレッサー100が接続されている。
【0026】
コンプレッサー100を作動させて、各エアーホース90からエアーEを送風し、地下タンクT内の強制換気を行う。ガスフリー工程は、1時間ごとに、図示しないガス濃度測定器により地下タンクT内のガス濃度を測定し、多くとも爆発下限界の1/5(20%LEL)以下にガス濃度が低下するまで続行される。
【0027】
ガスフリー工程が終了したら、地下タンクT及び配管接続部が掘り出され、地下タンクTと配管接続部とが切り離され、地下タンクが撤去・搬出されて、地下タンク撤去作業が終了する。
【0028】
以上のように本実施の形態に係る地下タンクの洗浄方法は、地下タンクの撤去作業前の可燃性蒸気対策として、比較的安価且つ高い安全性を確保しつつ、可燃性蒸気を除去することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 高圧ホース
20 洗浄ノズル
30 高圧洗浄機
40 サクションパイプ
50、70 ホース
60 エアー駆動式ダイヤフラムポンプ
80 バキューム車
90 エアーホース
100 コンプレッサー
T 地下タンク
L 通気管・油面計口
S サクション口
V 通気口
H 高圧水
W 洗浄廃水
E エアー
P 作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に洗浄ノズルが装着され、高圧液体が供給される高圧ホースを地下タンク内に挿入し、洗浄廃液を回収しつつ、洗浄ノズルから噴き出す高圧液体にて地下タンク内を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする地下タンクの洗浄方法。
【請求項2】
洗浄工程の終了後、地下タンク内に換気用エアーホースを挿入してエアーを送り込み、地下タンク内の強制換気を行うガスフリー工程をさらに含む請求項1に記載の地下タンクの洗浄方法。
【請求項3】
ガスフリー工程は、ガス濃度測定器により地下タンク内のガス濃度を測定し、多くとも爆発下限界の1/5(20%LEL)以下にガス濃度が低下するまで続行する請求項2に記載の地下タンクの洗浄方法。
【請求項4】
洗浄ノズルの少なくとも地下タンク内面に接する部分は、防爆金属で覆われている請求項1乃至3のいずれかに記載の地下タンクの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−36738(P2011−36738A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183606(P2009−183606)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(302025707)志村興運株式会社 (1)
【Fターム(参考)】