地中掘進装置
【課題】地中掘進装置の掘進時の推進先導管のローリングを抑止し適切なオーバーカットを可能とする。
【解決手段】推進管2内の内管6の先端にはモータで回転する回転部9がある。回転部の掘削ビット21は半径方向外向きの拡縮ジャッキ20により内方とオーバーカット位置との間で移動できる。内管の先端に設けた修正ジャッキ30は回転部に連結されている。内管に設けた掘進反力ジャッキ31は推進管に向けて移動し推進管を固定する。掘削ビット21の拡縮時には土砂が障害とならず、動作が確実である。修正ジャッキで先頭を傾斜させて掘削方向を修正できる。掘進反力ジャッキで内管と推進管2を固定すれば、ビット21の掘進抵抗力の反力は内管に分散され、掘進機のローリングを抑止できる。
【解決手段】推進管2内の内管6の先端にはモータで回転する回転部9がある。回転部の掘削ビット21は半径方向外向きの拡縮ジャッキ20により内方とオーバーカット位置との間で移動できる。内管の先端に設けた修正ジャッキ30は回転部に連結されている。内管に設けた掘進反力ジャッキ31は推進管に向けて移動し推進管を固定する。掘削ビット21の拡縮時には土砂が障害とならず、動作が確実である。修正ジャッキで先頭を傾斜させて掘削方向を修正できる。掘進反力ジャッキで内管と推進管2を固定すれば、ビット21の掘進抵抗力の反力は内管に分散され、掘進機のローリングを抑止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設管となる推進管の先端に掘削機械を設け、該掘削機械で地中を掘削しながら推進管を継ぎ足しながら推進していき、該推進管による管路を地中内に敷設していくことができる地中掘進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進工法とは、発進立坑・到達立坑間において、工場で製造された推進管の先端に掘進機又は刃口を取り付け、ジャッキ推力等によって管を地中に圧入して管渠を埋設する工法である。
【0003】
推進工法に用いられる掘進機は、推進管の種類、推進管径、推進距離、掘削対象土質等の条件に適応できるように掘削機構、排土機構で区分されている。
掘削機構は、推進対象土質・掘削面(切羽)の水圧・土庄に適応するようになっており、各々の工法によって掘削ビット構造や切羽の安定方式が異なる。
排土機構は、掘削した土砂の性状によって、パイプによる流体搬送、バキューム搬送、オーガスクリュー搬送、人力搬送等の方式が採られている。切羽の湧水、土庄等をバランスさせる切羽の安定方式としては、泥水方式・土庄方式・泥土圧方式等が一般的に採用されている。
このような推進工法に用いられる地中掘進装置としては、例えば下記特許文献1、2に示すようなものが知られている。
【特許文献1】特開平7−293193号公報
【特許文献2】特開平9−195674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状の推進工法による管渠埋設では、推進対象土質、推進管径、推進距離等の条件を検討し、適応できる推進工法を選択し、採用する。したがって、一般にこれらの諸条件に全て適応可能な工法は存在しないと言える。
【0005】
推進工法において、推進区間の対象土質の変化で掘削不能となった場合には、掘進機を開削して回収し、適応可能なたの種類の掘進機に交換して再度施工するか、あるいは推進管渠を引き抜いて掘進機を回収し、同種類の他の掘進機を変えて再推進しなければならない等の不都合があった。又、掘進機回収のための掘削や引き抜きは、地表面の陥没等、周囲地盤へ影響し、危険で不経済的であった。
【0006】
一般的に掘削ビットは限定した対象土質に適応するように製作されており、掘削ビットの損耗は、推進区間内で対応することができる。しかし、推進区間途中での土質変化が掘削ビットの損耗を大幅に早めたり、また掘削ビットで適応できない土質に変化する事態が発生する場合もある。このような場合においても、前記同様、掘進機の回収のために掘削を行ったり、推進管渠の引き抜きをする等の不都合が生じていた。
【0007】
推進距離(推進区間)が長くなると、これらの対象土質の変化等による掘進機の不都合という問題に加えて、推進力が不足するという問題があった。推進管渠が計画線上に直線状に推進されており、かつ推進管外径より適切な寸法にオーバーカットされていれば計画通りの推進力で推進管路の埋設ができる。しかし、現状の推進技術では、計画線上で直線状に高精度で推進するためには、推進方向の修正が必要である。この方向修正の手段としては、推進先導管を推進方向修正側に首振りし、首振りした状態で推進して推進管の方向を修正する方式が採られている。しかし、頻繁に方向修正が行なわれると推進管路は推進管接合部でジグザグと折れ曲った状態となり、推進管周りのオーバーカットでできた隙間部分が、推進管の圧入によって埋められ、地山との摩擦抵抗が大きくなり、さらに大きな推進力を必要とする等の不都合が生じてしまう。そのため推進力不足を来たし推進ができない事態に立ち至ってしまう場合もあるという問題があった。
【0008】
従来方式の推進方向修正に伴う推進管の首振り手段は、一般的に推進先導管内に装着した推進管軸方向にスライドする複数の首振りジャッキ(方向修正ジャッキ)によって行なわれる。この方向修正ジャッキは、推進先導管内に設置され、ジャッキ反力は後続の推進管が受ける。推進先導管と後続推進管の接合部は相対的に回転自在となっており、発進立坑内の推進機による回転力により、推進先導管は掘削機回転方向に自然回転する(ローリング現象)。仮に推進先導管と後続推進管を回転しないように接合したとしても、後続推進管の継手は回転自在であるため、推進先導管及び後続推進管のローリング現象はまぬがれないものとなる。
【0009】
方向修正において、仮に右方向に首振りして推進管の推進方向を右側に修正したいとする時は、推進管先導管の左側のジャッキを張り出して推進先導管の右に向けて推進すると推進管は右側に推進される。仮に推進先導管が掘進中にローリングした場合は、推進先導管の回転によって方向修正ジャッキの位置が変動するため、推進管を押し切るまでの間に推進管の方向性が変動してしまう。そのため推進管の方向性を常に測定し、方向修正は頻繁に行なわなければならなかった。
【0010】
掘進機は推進先導管内に装着されており推進先導管がローリングすると掘進機もローリングする。しかも推進先導管内に首振りジャッキが着装されているため推進先導管がローリングすると、首振り位置が変化してしまい、推進方向の制御を難しくする。このように、推進先導管のローリング問題は方向修正において最も不都合なものとなっている。
従って、推進工法による掘進においては、推進先導管をローリングさせないことが的確な方向修正を行うために重要な課題である。
【0011】
地盤を推進管外径よりも大径に掘削するオーバーカットのための従来の手段としては、推進時に推進管内径に縮小した状態から掘削ビットが推進管外径より大きく拡張する機能を有する掘進機や、推進管軸方向に沿って掘削ビットを油圧ジャッキで推進先導管前面へ向けて押し出し、切羽を掘削する時の地盤の抵抗で拡げる方式の掘進機が知られている。これらの方式では、切羽が掘削ビットの回転に対して掘削抵抗が得られるある程度強度のある地盤でなければならない。
【0012】
また、これらの方式において必要に応じて推進管内に収納するよう縮小する場合には、掘削回転を逆方向に回転して引き戻し、また油圧ジャッキで推進管軸方向に引き戻す場合には、掘削ビットに付着した土砂や先導体内の堆積土砂の詰まりによって、縮小が不可能となる等のトラブルが発生していた。
【0013】
したがって従来の掘削ビットが拡縮する機能を持つ掘進機においては、推進途中(推進区間)での掘削ビットの交換及びオーバーカットが適切に行なわれない場合があるという問題があった。
【0014】
本発明は、従来の掘進機(地中掘進装置)における以上説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、掘進機において掘削ビットを推進管内径へ引き戻す機能と推進管外形よりもオーバーカットするよう掘削ビットを拡張する機能を確実なものとすることを課題としており、掘進時の推進先導管のローリングを抑止し、掘削ビットで適切にオーバーカットすることにより、推進方向制御を確実にし推進力抵抗を削減し、安全かつ経済的な管渠埋設を可能とする地中掘進装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された地中掘進装置は、
地中に圧入される推進管と、
前記推進管内に挿入されて推進される内管と、
前記内管の先端に設けられた駆動手段と、
前記内管の先端の先方に設けられ、前記駆動手段に連結されて前記推進管の先端部の内側で回転駆動される回転部と、
前記回転部の前端に取り付けられて前記推進管の先端部の先方に配置され、前記回転部に対して回転の径方向に往復移動可能とされて前記推進管の外側をオーバーカット可能な掘削ビットと、
を有することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記推進管の先端部が、前記推進管の後方部分に対して折曲可能に接合されており、
前記内管の先端の内周には、前記回転部に連結された複数の修正ジャッキが周方向に所定角度間隔で設けられており、
前記複数の修正ジャッキを選択的に駆動することにより、前記回転部の中心軸を前記内管の軸方向に対して前記推進管の先端部とともに傾斜させて、推進方向を修正できるようにしたことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記掘削ビットが前記回転部の前端に周方向に所定角度間隔で取り付けられ、前記回転部には、前記各掘削ビットごとにビット拡縮ジャッキが設けられて各掘削ビットを径方向に往復移動させるように連結されており、
前記ビット拡縮ジャッキの油圧経路が前記回転部の中心軸からスイベル継手部を経て前記内管の先端の内部に導かれており、
前記駆動手段が前記内管の先端の中心から外れた位置に設置されており、前記回転部の中心軸に動力伝達機構を介して連動連結されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記内管の径方向に向けて伸縮自在となるように前記内管に設けられ、前記推進管の内面を押圧固定して内管と推進管を固定することにより、掘削ビットに加わる掘進抵抗力を前記内管に分散する掘進反力ジャッキを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の地中掘進装置によれば、推進管の先端部から前面へ突出した掘削ビットが回転して掘削する際に、ビット拡縮ジャッキによる確実な動作により掘削ビットを推進管軸にほぼ直交する方向に移動して推進管の外径よりも外側に配置することができ、推進管の外形よりも大きく掘削するオーバーカットを行うことができる。その際、掘進の際に地盤から受ける掘進抵抗力は推進管には加わらず、内管に分散される。また、掘進途中において、修正ジャッキを適宜駆動して回転部及び推進管の先端部を傾斜させることにより、推進方向を修正することができる。ここで、掘削ビット及びこれを駆動する駆動機構は内管に固定されているため、掘削抵抗力は掘進反力ジャッキだけでなく内管自体に分散して加わり、ローリングに対しても内管がローリング抑制の役割を担っている。従って、仮に回転部を含む内管の先端部分がローリングしても、掘進反力ジャッキを縮退させ、立坑内からの操作で内管全体を回転させれば、回転部を含む内管の先端部分を正規の位置に戻すことができ、ローリングにより方向修正が適切に行なわれない従来方式の不都合を是正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本願発明における最良の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態(以下、本例と呼ぶ。)における地中掘進装置の断面図であり、図2はその先端側を示す拡大断面図であり、図3はその中途部を示す拡大断面図である。
図4は軸に直交する面で見た掘削ビットの拡張時の状態を示す図であり、図5は軸に直交する面で見た掘削ビットの縮小時の状態を示す図であり、図6は軸に直交する面で見た修正ジャッキの配置図であり、図7は軸に直交する面で見たビット拡縮ジャッキの配置図である。
図8乃至図15は本例における地中推進工事の工程図である。
【0021】
(1)地中掘進装置の構造(図1〜図7)
本例の地中掘進装置1の構造を図1〜図7を参照して説明する。
図1に示すように、工事終了後は埋設管として地中に残る推進管2は、最も外側に配置されている。推進管は、図1中には示していない発進立坑内に設置された推進機によって地中に推進されながら、順次接続されていく。推進管内には内管が挿入され、この内管も推進管と同様に発進立坑内にある推進機によって地中に推進されながら順次接続されていく。なお、図3に示すように、推進管と内管は、その他の附属部品等と単位長さごとに組み合わされており、所定長さ推進する度に発進立坑内で次々と接続されていく。
【0022】
このように、地中掘進装置1は、基本的に内側の内管と外側の推進管2からなる2重管構造であるが、その先端は、2号先導管3及びさらにその先端の1号先導管4と呼ばれている。これら1号及び2号先導管4,3が回転掘削機構を有する推進先導管5となる。なお、2号先導管3において推進管2と内管6との間には止水部材7が設けられており、両管2,6の間に浸入した泥水等が発進立坑内に流れ込まないように構成されている。
【0023】
1号先導管4は、2号先導管3の内管6に接続された支管8と、その前方部分において回転する回転部9を有している。支管8の前方に配置された回転部9は、前方が開放された筒型の基体10と、基体10の内部で回転する中心軸11と一体に構成されたビット保持盤12とを有している。一方、支管8の前端の内側には、中心を外れた位置に駆動手段である油圧式のビット回転モータ13が固定されており、ビット回転モータ13は、減速機構14,15を介してビット保持盤12を中心軸11を中心に回転駆動する。
【0024】
図1及び図4乃至5に示すように、前記回転部9のビット保持盤12の前端には、3基の油圧式のビット拡縮ジャッキ20が、進退方向を半径方向に向けて、周方向に120度間隔で外向きに取り付けられている。各ビット拡縮ジャッキ20にはそれぞれ掘削ビット21が取り付けられており、これらの掘削ビット21は推進管2の先端部の先方に配置されている。従って、ビット拡縮ジャッキ20を駆動すれば、掘削ビット21は、推進管2の内方に収まる位置と、推進管2の外側をオーバーカット可能な外側の位置との間で径方向に往復移動して任意の位置で確実に固定することができる。
【0025】
ビット拡縮ジャッキ20の内側には、位置が固定された3つの小掘削ビット22が設けられており、これら掘削ビット21及び小掘削ビット22は、回転部9の基体10の前面に設けられたカバー23に設けられた通孔から前方に突出している。なお、このカバー23には通孔のほかに土砂の取り入れ口も設けられており、図3に示す送排泥管24(図中1本だが実際は送泥管と排泥管の2系統からなる。)で内管6を経由して発進立坑に掘削した土砂や泥水を送ることができる。
【0026】
図2に示すように、前記ビット拡縮ジャッキ20の油圧経路は、回転部9の中心軸11からスイベル継手部25を経て支管8の先端の内部に導かれており、さらに2号先導管3内に設けられた油圧ユニット26に接続されている。なお、油圧ユニット26は発進立坑内に設けておき、必要に応じて継ぎ足される油圧配管を介して油圧ユニット26と前記ビット拡縮ジャッキ20の油圧経路を接続してもよい。
【0027】
前記掘削ビット21を除いて前記回転部9の大半を収納している推進管2の先端部27と、推進管2の後方部分とは、それぞれ凹凸の歯車状の構造を互いに差し込んでなる接合構造を備えたジョイント部28によって折曲可能に接合されており、1号先導管4の推進管2の先端部27は所望の方向に向けられるようになっている。そして、図1及び図6に示すように、支管8の先端部には、複数の油圧式の修正ジャッキ30が、周方向に120度間隔かつ管の軸方向前方を向けて設けられている。各修正ジャッキ30の後端は支管8に回動可能に連結され、そのロッドの先端は前記回転部9の基体10に連結されている。従って、複数の修正ジャッキ30を選択的に駆動することにより、前記回転部9と推進管2の先端部27を傾斜させて首振り運動させ、本装置の推進方向を修正することができる。
【0028】
図1及び図6に示すように、1号先導管4の支管8の後端に接続された2号先導管3の内管6内には、周方向に120度間隔で、3基の掘進反力ジャッキ31が半径方向外側に向けて配置されており、推進管2の内面を押圧できるように構成されている。この掘進反力ジャッキ31が、推進管2の軸方向に対して直角方向に伸展して推進管2の内面に押圧固定されれば、掘削ビット21の掘進抵抗力(推進力)の反力が内管6に分散され、合わせて推進先導管5の掘削時のローリングを抑止することができる。
【0029】
また、2号先導管3内には、この掘進反力ジャッキ31と、前記ビット拡縮ジャッキ20と、前記修正ジャッキ30に油圧を供給する油圧ユニット26が設けられている。なお、前記ビット回転モータ13に対しては、油圧制御盤32を介して内管6内に敷設された油圧配管33から、発進立坑内の油圧ユニット34が油圧を供給する。
【0030】
このように、本例の地中掘進装置1の1号先導管4は、掘削ビット21の部分を含めた回転部9と、回転部9に駆動力を与える駆動手段であるビット回転モータ13が設置された非回転部分とに区分され、掘削ビット21は1号先導管4の先端部27に設けられて前方に突出した状態で回転し、ビット回転モータ13は1号先導管4の支管8内に固定設置されている。そして、この支管8は後続の2号先導管3の内管6に固定されており、具体的には支管8と内管6はフランジをボルト締めする等の固定構造で連結されている。もちろん、支管8及び内管6の外径は推進管2内をスライドできるように推進管2の内径より小径とされている。
【0031】
(2)地中掘進装置1の作用(図8〜図15)
本例の地中掘進装置1を用い、泥水方式で鋼製の推進管2を推進する工程を図8〜図15を参照して具体的に説明する。
図8に示すように、発進立坑50内に推進架台51を設置固定する。推進架台51の上に推進ジャッキ52及び反力盤53を設置する。反力盤53は推進ジャッキ52の推力に耐えられる強固なものとし、鋼製あるいはコンクリート製のものを使用する。
【0032】
推進ジャッキ52には、推進管2を圧入する時に位置がずれないように推進管2がはまり込む凹部が付いた押し輪54を設置する。切羽側の坑口に推進管を固定し、かつ掘削時に推進管周りから掘削土砂が立坑へ流入しないようドーナツ状に形成したゴム板パッキンで、刃の鍔状に推進管の周囲を被覆する坑口設備を設ける。
【0033】
図9に示すように、発進立坑50内に推進装置を設置した後、掘削機と掘進機駆動装置を装着した支管8をあらかじめ組み込んだ1号先導管4を推進架台51に設置する。切羽側は、坑口設備のゴム板パッキンに挿入され、推進ジャッキ52側は押し輪54をはめ込み固定する。掘進機内の各々の装置は地上の油圧ユニット34、図示しない配電ユニットや各操作ユニット等に接続し、試運転後に推進を開始する。
【0034】
図10に示すように、1号先導管4を推進した後、掘進機内の油圧、電気等の動力伝達手段を発進立坑50側から切り離し、押し輪54をはずして推進ジャッキ52を後退する。1号先導管4と後退した推進ジャッキ52の間に、あらかじめ油圧制御盤、油圧ユニット26、止水部材7、掘進反力ジャッキ31、送排泥管24等を装着した内管6を組み込んだ2号先導管3を設置し、1号先導管4に接続する。各々の装置は地上の油圧ユニット34、配電ユニット、各操作ユニットに再度接続し、1号先導管4同様推進する。
【0035】
図11〜図13に示すように、1号先導管4同様、各機器操作用の油圧配管33、送排泥管24を装着した内管6を組み込んだ2号先導管3を推進する。2号推進管2を押し切ってから推進ジャッキ52を後退させる。
【0036】
以後、同様にして後続推進管2を先行推進管2に接続しつつ、推進を継続し、図14に示すように1号先導管4を到達抗60に到達させる。2号先導管3以下の推進管2には、図3に示したように予め油圧配管33、送排泥管24を装着した内管6を組み込んである。2号先導管3と後続の推進管2との接合は熔接接合であり、推進管2相互の接合は熔接接合である。到達立抗60で1号及び2号先導管4,3が回収されるまで推進管2を接続してさらに推進する。マンホール到達等の条件によっては、推進先導管5は回収せずにそのまま埋殺しにしても良い。
【0037】
図15に示すように、推進管2が到達立抗60に到達後、推進管2内の油圧配管33、送排泥管24等を装着した内管6を引き戻して一本毎回収し、地中に推進された推進管2による管渠埋設が完成する。
【0038】
以上の工程における本例の地中掘進装置1の作用について詳述する。
本例の地中掘進装置1は、修正ジャッキ30の伸縮操作により、推進管2の先端部27が回転部9とともに左右、上下、いずれの方向にも自由自在に首振り可能となっている。仮に、右方向に首振りして推進方向に修正したい時は、図6に示す3つの修正ジャッキ30のうち、真上にある修正ジャッキ30と、進行方向に向かって行こうとする方向と反対側(右に行くなら左側)にある修正ジャッキ30を適宜伸長させ、1号先導管4を所望の方向(ここでは右方向)に首振りすることができる。
【0039】
支管8内には、修正ジャッキ30の他にビット回転モータ13が所定位置に装着されている。掘削ビット21は1号先導管4の先端より前面へ突き出しており、ビット拡縮ジャッキ20を伸長すると、掘削ビット21の外径が1号先導管4の外径より拡張する。掘削ビット21が回転しても1号先導管4に干渉しないよう構成されている。したがって、掘削ビット21は、1号先導管4の外径よりも拡張して地盤を掘削することができる。この拡張して行う掘削により、オーバーカットが適切に行なわれて推進管2が地中に圧入される際の推進抵抗が削減される。
【0040】
従来技術では、掘削ビットを外周側へ拡げる手段として、推進軸方向にスライドして掘削ビットを推進先導管の先端より突き出して拡張する方式があったが、この機構では掘削ビットを推進管の内径に縮小する際には推進軸方向に後退させ、推進先導管の内面をスライドして縮小していた。この場合、推進先導管内に取り込んだ土砂等が障害となってスライドできない場合が生じるという不都合があった。
【0041】
ところが、本発明によれば、掘削ビット21を外周側へ拡張する機構は、各掘削ビット21の後方にビット拡縮ジャッキ20(本実施例では3基)をそれぞれ設け、これを推進管2の軸に対して直交する方向に伸長して掘削ビット21を拡げる方式を採用している。この方式によれば、取り込んだ土砂が障害となることも無く、確実に掘削ビット21を拡縮できる。
【0042】
本例の地中掘進装置1では、2号先導管3内の内管6の中に、複数の掘進反力ジャッキ31が設置されており、推進管2の軸方向に対して直角方向に伸縮することができる。従って、この掘進反力ジャッキ31が伸長すれば、2号先導管3を推進管2に固定することができる。これによって、掘削ビット21の掘進抵抗力(推進力)の反力は内管6に分散され、合わせて掘進機のローリングを抑止することができる。掘進反力ジャッキ31は、推進管2の軸方向について複数ヶ所に設置しても良い。
【0043】
従来方式の地中掘進装置では、掘進時の抵抗力は後続の推進管からの反力を得て支えていたが、後続の推進管2の接合部は回転自在であったため掘削ビットの掘削回転に伴うローリング現象の発生は避けられないものであった。
【0044】
ところが、本発明では、掘削ビット21、駆動装置等の諸装置は支管8に固定し、さらに支管8は内管6に接続しているため、掘削抵抗力は掘進反力ジャッキ31だけでなく、内管6自体に分散されることとなり、ローリングに対しても内管6が全体としてローリング抑制の役割を担っている。
【0045】
従って、仮に地中掘進装置1がローリングしたとしても、掘進反力ジャッキ31を一旦縮小して内管6全体を回転させれば(図示しないが、発進立坑50内からの操作で内管6を回転させればよい。)、地中掘進装置1を正規の位置に戻すことができる。これによって地中掘進装置1の方向修正を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本例における地中掘進装置1の断面図である。
【図2】図2は、本例の先端側を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、本例の中途部を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、軸に直交する面で見た掘削ビット21の拡張時の状態を示す図である。
【図5】図5は、軸に直交する面で見た掘削ビット21の縮小時の状態を示す図である。
【図6】図6は、軸に直交する面で見た修正ジャッキ30の配置図である。
【図7】図7は、軸に直交する面で見たビット拡縮ジャッキ20の配置図である。
【図8】図8は本例における地中推進工事の工程図である。
【図9】図9は本例における地中推進工事の工程図である。
【図10】図10は本例における地中推進工事の工程図である。
【図11】図11は本例における地中推進工事の工程図である。
【図12】図12は本例における地中推進工事の工程図である。
【図13】図13は本例における地中推進工事の工程図である。
【図14】図14は本例における地中推進工事の工程図である。
【図15】図15は本例における地中推進工事の工程図である。
【符号の説明】
【0047】
1 地中掘進装置
2 推進管
3 2号先導管
4 1号先導管
5 推進先導管
6 内管
9 回転部
11 中心軸
13 駆動手段としてのビット回転モータ
14,15 動力伝達機構としての減速機構
20 ビット拡縮ジャッキ
21 掘削ビット
25 スイベル継手部
27 推進管の先端部
28 ジョイント部
30 修正ジャッキ
31 掘進反力ジャッキ
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設管となる推進管の先端に掘削機械を設け、該掘削機械で地中を掘削しながら推進管を継ぎ足しながら推進していき、該推進管による管路を地中内に敷設していくことができる地中掘進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進工法とは、発進立坑・到達立坑間において、工場で製造された推進管の先端に掘進機又は刃口を取り付け、ジャッキ推力等によって管を地中に圧入して管渠を埋設する工法である。
【0003】
推進工法に用いられる掘進機は、推進管の種類、推進管径、推進距離、掘削対象土質等の条件に適応できるように掘削機構、排土機構で区分されている。
掘削機構は、推進対象土質・掘削面(切羽)の水圧・土庄に適応するようになっており、各々の工法によって掘削ビット構造や切羽の安定方式が異なる。
排土機構は、掘削した土砂の性状によって、パイプによる流体搬送、バキューム搬送、オーガスクリュー搬送、人力搬送等の方式が採られている。切羽の湧水、土庄等をバランスさせる切羽の安定方式としては、泥水方式・土庄方式・泥土圧方式等が一般的に採用されている。
このような推進工法に用いられる地中掘進装置としては、例えば下記特許文献1、2に示すようなものが知られている。
【特許文献1】特開平7−293193号公報
【特許文献2】特開平9−195674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状の推進工法による管渠埋設では、推進対象土質、推進管径、推進距離等の条件を検討し、適応できる推進工法を選択し、採用する。したがって、一般にこれらの諸条件に全て適応可能な工法は存在しないと言える。
【0005】
推進工法において、推進区間の対象土質の変化で掘削不能となった場合には、掘進機を開削して回収し、適応可能なたの種類の掘進機に交換して再度施工するか、あるいは推進管渠を引き抜いて掘進機を回収し、同種類の他の掘進機を変えて再推進しなければならない等の不都合があった。又、掘進機回収のための掘削や引き抜きは、地表面の陥没等、周囲地盤へ影響し、危険で不経済的であった。
【0006】
一般的に掘削ビットは限定した対象土質に適応するように製作されており、掘削ビットの損耗は、推進区間内で対応することができる。しかし、推進区間途中での土質変化が掘削ビットの損耗を大幅に早めたり、また掘削ビットで適応できない土質に変化する事態が発生する場合もある。このような場合においても、前記同様、掘進機の回収のために掘削を行ったり、推進管渠の引き抜きをする等の不都合が生じていた。
【0007】
推進距離(推進区間)が長くなると、これらの対象土質の変化等による掘進機の不都合という問題に加えて、推進力が不足するという問題があった。推進管渠が計画線上に直線状に推進されており、かつ推進管外径より適切な寸法にオーバーカットされていれば計画通りの推進力で推進管路の埋設ができる。しかし、現状の推進技術では、計画線上で直線状に高精度で推進するためには、推進方向の修正が必要である。この方向修正の手段としては、推進先導管を推進方向修正側に首振りし、首振りした状態で推進して推進管の方向を修正する方式が採られている。しかし、頻繁に方向修正が行なわれると推進管路は推進管接合部でジグザグと折れ曲った状態となり、推進管周りのオーバーカットでできた隙間部分が、推進管の圧入によって埋められ、地山との摩擦抵抗が大きくなり、さらに大きな推進力を必要とする等の不都合が生じてしまう。そのため推進力不足を来たし推進ができない事態に立ち至ってしまう場合もあるという問題があった。
【0008】
従来方式の推進方向修正に伴う推進管の首振り手段は、一般的に推進先導管内に装着した推進管軸方向にスライドする複数の首振りジャッキ(方向修正ジャッキ)によって行なわれる。この方向修正ジャッキは、推進先導管内に設置され、ジャッキ反力は後続の推進管が受ける。推進先導管と後続推進管の接合部は相対的に回転自在となっており、発進立坑内の推進機による回転力により、推進先導管は掘削機回転方向に自然回転する(ローリング現象)。仮に推進先導管と後続推進管を回転しないように接合したとしても、後続推進管の継手は回転自在であるため、推進先導管及び後続推進管のローリング現象はまぬがれないものとなる。
【0009】
方向修正において、仮に右方向に首振りして推進管の推進方向を右側に修正したいとする時は、推進管先導管の左側のジャッキを張り出して推進先導管の右に向けて推進すると推進管は右側に推進される。仮に推進先導管が掘進中にローリングした場合は、推進先導管の回転によって方向修正ジャッキの位置が変動するため、推進管を押し切るまでの間に推進管の方向性が変動してしまう。そのため推進管の方向性を常に測定し、方向修正は頻繁に行なわなければならなかった。
【0010】
掘進機は推進先導管内に装着されており推進先導管がローリングすると掘進機もローリングする。しかも推進先導管内に首振りジャッキが着装されているため推進先導管がローリングすると、首振り位置が変化してしまい、推進方向の制御を難しくする。このように、推進先導管のローリング問題は方向修正において最も不都合なものとなっている。
従って、推進工法による掘進においては、推進先導管をローリングさせないことが的確な方向修正を行うために重要な課題である。
【0011】
地盤を推進管外径よりも大径に掘削するオーバーカットのための従来の手段としては、推進時に推進管内径に縮小した状態から掘削ビットが推進管外径より大きく拡張する機能を有する掘進機や、推進管軸方向に沿って掘削ビットを油圧ジャッキで推進先導管前面へ向けて押し出し、切羽を掘削する時の地盤の抵抗で拡げる方式の掘進機が知られている。これらの方式では、切羽が掘削ビットの回転に対して掘削抵抗が得られるある程度強度のある地盤でなければならない。
【0012】
また、これらの方式において必要に応じて推進管内に収納するよう縮小する場合には、掘削回転を逆方向に回転して引き戻し、また油圧ジャッキで推進管軸方向に引き戻す場合には、掘削ビットに付着した土砂や先導体内の堆積土砂の詰まりによって、縮小が不可能となる等のトラブルが発生していた。
【0013】
したがって従来の掘削ビットが拡縮する機能を持つ掘進機においては、推進途中(推進区間)での掘削ビットの交換及びオーバーカットが適切に行なわれない場合があるという問題があった。
【0014】
本発明は、従来の掘進機(地中掘進装置)における以上説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、掘進機において掘削ビットを推進管内径へ引き戻す機能と推進管外形よりもオーバーカットするよう掘削ビットを拡張する機能を確実なものとすることを課題としており、掘進時の推進先導管のローリングを抑止し、掘削ビットで適切にオーバーカットすることにより、推進方向制御を確実にし推進力抵抗を削減し、安全かつ経済的な管渠埋設を可能とする地中掘進装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された地中掘進装置は、
地中に圧入される推進管と、
前記推進管内に挿入されて推進される内管と、
前記内管の先端に設けられた駆動手段と、
前記内管の先端の先方に設けられ、前記駆動手段に連結されて前記推進管の先端部の内側で回転駆動される回転部と、
前記回転部の前端に取り付けられて前記推進管の先端部の先方に配置され、前記回転部に対して回転の径方向に往復移動可能とされて前記推進管の外側をオーバーカット可能な掘削ビットと、
を有することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記推進管の先端部が、前記推進管の後方部分に対して折曲可能に接合されており、
前記内管の先端の内周には、前記回転部に連結された複数の修正ジャッキが周方向に所定角度間隔で設けられており、
前記複数の修正ジャッキを選択的に駆動することにより、前記回転部の中心軸を前記内管の軸方向に対して前記推進管の先端部とともに傾斜させて、推進方向を修正できるようにしたことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記掘削ビットが前記回転部の前端に周方向に所定角度間隔で取り付けられ、前記回転部には、前記各掘削ビットごとにビット拡縮ジャッキが設けられて各掘削ビットを径方向に往復移動させるように連結されており、
前記ビット拡縮ジャッキの油圧経路が前記回転部の中心軸からスイベル継手部を経て前記内管の先端の内部に導かれており、
前記駆動手段が前記内管の先端の中心から外れた位置に設置されており、前記回転部の中心軸に動力伝達機構を介して連動連結されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載された地中掘進装置は、請求項1記載の地中掘進装置において、
前記内管の径方向に向けて伸縮自在となるように前記内管に設けられ、前記推進管の内面を押圧固定して内管と推進管を固定することにより、掘削ビットに加わる掘進抵抗力を前記内管に分散する掘進反力ジャッキを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の地中掘進装置によれば、推進管の先端部から前面へ突出した掘削ビットが回転して掘削する際に、ビット拡縮ジャッキによる確実な動作により掘削ビットを推進管軸にほぼ直交する方向に移動して推進管の外径よりも外側に配置することができ、推進管の外形よりも大きく掘削するオーバーカットを行うことができる。その際、掘進の際に地盤から受ける掘進抵抗力は推進管には加わらず、内管に分散される。また、掘進途中において、修正ジャッキを適宜駆動して回転部及び推進管の先端部を傾斜させることにより、推進方向を修正することができる。ここで、掘削ビット及びこれを駆動する駆動機構は内管に固定されているため、掘削抵抗力は掘進反力ジャッキだけでなく内管自体に分散して加わり、ローリングに対しても内管がローリング抑制の役割を担っている。従って、仮に回転部を含む内管の先端部分がローリングしても、掘進反力ジャッキを縮退させ、立坑内からの操作で内管全体を回転させれば、回転部を含む内管の先端部分を正規の位置に戻すことができ、ローリングにより方向修正が適切に行なわれない従来方式の不都合を是正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本願発明における最良の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態(以下、本例と呼ぶ。)における地中掘進装置の断面図であり、図2はその先端側を示す拡大断面図であり、図3はその中途部を示す拡大断面図である。
図4は軸に直交する面で見た掘削ビットの拡張時の状態を示す図であり、図5は軸に直交する面で見た掘削ビットの縮小時の状態を示す図であり、図6は軸に直交する面で見た修正ジャッキの配置図であり、図7は軸に直交する面で見たビット拡縮ジャッキの配置図である。
図8乃至図15は本例における地中推進工事の工程図である。
【0021】
(1)地中掘進装置の構造(図1〜図7)
本例の地中掘進装置1の構造を図1〜図7を参照して説明する。
図1に示すように、工事終了後は埋設管として地中に残る推進管2は、最も外側に配置されている。推進管は、図1中には示していない発進立坑内に設置された推進機によって地中に推進されながら、順次接続されていく。推進管内には内管が挿入され、この内管も推進管と同様に発進立坑内にある推進機によって地中に推進されながら順次接続されていく。なお、図3に示すように、推進管と内管は、その他の附属部品等と単位長さごとに組み合わされており、所定長さ推進する度に発進立坑内で次々と接続されていく。
【0022】
このように、地中掘進装置1は、基本的に内側の内管と外側の推進管2からなる2重管構造であるが、その先端は、2号先導管3及びさらにその先端の1号先導管4と呼ばれている。これら1号及び2号先導管4,3が回転掘削機構を有する推進先導管5となる。なお、2号先導管3において推進管2と内管6との間には止水部材7が設けられており、両管2,6の間に浸入した泥水等が発進立坑内に流れ込まないように構成されている。
【0023】
1号先導管4は、2号先導管3の内管6に接続された支管8と、その前方部分において回転する回転部9を有している。支管8の前方に配置された回転部9は、前方が開放された筒型の基体10と、基体10の内部で回転する中心軸11と一体に構成されたビット保持盤12とを有している。一方、支管8の前端の内側には、中心を外れた位置に駆動手段である油圧式のビット回転モータ13が固定されており、ビット回転モータ13は、減速機構14,15を介してビット保持盤12を中心軸11を中心に回転駆動する。
【0024】
図1及び図4乃至5に示すように、前記回転部9のビット保持盤12の前端には、3基の油圧式のビット拡縮ジャッキ20が、進退方向を半径方向に向けて、周方向に120度間隔で外向きに取り付けられている。各ビット拡縮ジャッキ20にはそれぞれ掘削ビット21が取り付けられており、これらの掘削ビット21は推進管2の先端部の先方に配置されている。従って、ビット拡縮ジャッキ20を駆動すれば、掘削ビット21は、推進管2の内方に収まる位置と、推進管2の外側をオーバーカット可能な外側の位置との間で径方向に往復移動して任意の位置で確実に固定することができる。
【0025】
ビット拡縮ジャッキ20の内側には、位置が固定された3つの小掘削ビット22が設けられており、これら掘削ビット21及び小掘削ビット22は、回転部9の基体10の前面に設けられたカバー23に設けられた通孔から前方に突出している。なお、このカバー23には通孔のほかに土砂の取り入れ口も設けられており、図3に示す送排泥管24(図中1本だが実際は送泥管と排泥管の2系統からなる。)で内管6を経由して発進立坑に掘削した土砂や泥水を送ることができる。
【0026】
図2に示すように、前記ビット拡縮ジャッキ20の油圧経路は、回転部9の中心軸11からスイベル継手部25を経て支管8の先端の内部に導かれており、さらに2号先導管3内に設けられた油圧ユニット26に接続されている。なお、油圧ユニット26は発進立坑内に設けておき、必要に応じて継ぎ足される油圧配管を介して油圧ユニット26と前記ビット拡縮ジャッキ20の油圧経路を接続してもよい。
【0027】
前記掘削ビット21を除いて前記回転部9の大半を収納している推進管2の先端部27と、推進管2の後方部分とは、それぞれ凹凸の歯車状の構造を互いに差し込んでなる接合構造を備えたジョイント部28によって折曲可能に接合されており、1号先導管4の推進管2の先端部27は所望の方向に向けられるようになっている。そして、図1及び図6に示すように、支管8の先端部には、複数の油圧式の修正ジャッキ30が、周方向に120度間隔かつ管の軸方向前方を向けて設けられている。各修正ジャッキ30の後端は支管8に回動可能に連結され、そのロッドの先端は前記回転部9の基体10に連結されている。従って、複数の修正ジャッキ30を選択的に駆動することにより、前記回転部9と推進管2の先端部27を傾斜させて首振り運動させ、本装置の推進方向を修正することができる。
【0028】
図1及び図6に示すように、1号先導管4の支管8の後端に接続された2号先導管3の内管6内には、周方向に120度間隔で、3基の掘進反力ジャッキ31が半径方向外側に向けて配置されており、推進管2の内面を押圧できるように構成されている。この掘進反力ジャッキ31が、推進管2の軸方向に対して直角方向に伸展して推進管2の内面に押圧固定されれば、掘削ビット21の掘進抵抗力(推進力)の反力が内管6に分散され、合わせて推進先導管5の掘削時のローリングを抑止することができる。
【0029】
また、2号先導管3内には、この掘進反力ジャッキ31と、前記ビット拡縮ジャッキ20と、前記修正ジャッキ30に油圧を供給する油圧ユニット26が設けられている。なお、前記ビット回転モータ13に対しては、油圧制御盤32を介して内管6内に敷設された油圧配管33から、発進立坑内の油圧ユニット34が油圧を供給する。
【0030】
このように、本例の地中掘進装置1の1号先導管4は、掘削ビット21の部分を含めた回転部9と、回転部9に駆動力を与える駆動手段であるビット回転モータ13が設置された非回転部分とに区分され、掘削ビット21は1号先導管4の先端部27に設けられて前方に突出した状態で回転し、ビット回転モータ13は1号先導管4の支管8内に固定設置されている。そして、この支管8は後続の2号先導管3の内管6に固定されており、具体的には支管8と内管6はフランジをボルト締めする等の固定構造で連結されている。もちろん、支管8及び内管6の外径は推進管2内をスライドできるように推進管2の内径より小径とされている。
【0031】
(2)地中掘進装置1の作用(図8〜図15)
本例の地中掘進装置1を用い、泥水方式で鋼製の推進管2を推進する工程を図8〜図15を参照して具体的に説明する。
図8に示すように、発進立坑50内に推進架台51を設置固定する。推進架台51の上に推進ジャッキ52及び反力盤53を設置する。反力盤53は推進ジャッキ52の推力に耐えられる強固なものとし、鋼製あるいはコンクリート製のものを使用する。
【0032】
推進ジャッキ52には、推進管2を圧入する時に位置がずれないように推進管2がはまり込む凹部が付いた押し輪54を設置する。切羽側の坑口に推進管を固定し、かつ掘削時に推進管周りから掘削土砂が立坑へ流入しないようドーナツ状に形成したゴム板パッキンで、刃の鍔状に推進管の周囲を被覆する坑口設備を設ける。
【0033】
図9に示すように、発進立坑50内に推進装置を設置した後、掘削機と掘進機駆動装置を装着した支管8をあらかじめ組み込んだ1号先導管4を推進架台51に設置する。切羽側は、坑口設備のゴム板パッキンに挿入され、推進ジャッキ52側は押し輪54をはめ込み固定する。掘進機内の各々の装置は地上の油圧ユニット34、図示しない配電ユニットや各操作ユニット等に接続し、試運転後に推進を開始する。
【0034】
図10に示すように、1号先導管4を推進した後、掘進機内の油圧、電気等の動力伝達手段を発進立坑50側から切り離し、押し輪54をはずして推進ジャッキ52を後退する。1号先導管4と後退した推進ジャッキ52の間に、あらかじめ油圧制御盤、油圧ユニット26、止水部材7、掘進反力ジャッキ31、送排泥管24等を装着した内管6を組み込んだ2号先導管3を設置し、1号先導管4に接続する。各々の装置は地上の油圧ユニット34、配電ユニット、各操作ユニットに再度接続し、1号先導管4同様推進する。
【0035】
図11〜図13に示すように、1号先導管4同様、各機器操作用の油圧配管33、送排泥管24を装着した内管6を組み込んだ2号先導管3を推進する。2号推進管2を押し切ってから推進ジャッキ52を後退させる。
【0036】
以後、同様にして後続推進管2を先行推進管2に接続しつつ、推進を継続し、図14に示すように1号先導管4を到達抗60に到達させる。2号先導管3以下の推進管2には、図3に示したように予め油圧配管33、送排泥管24を装着した内管6を組み込んである。2号先導管3と後続の推進管2との接合は熔接接合であり、推進管2相互の接合は熔接接合である。到達立抗60で1号及び2号先導管4,3が回収されるまで推進管2を接続してさらに推進する。マンホール到達等の条件によっては、推進先導管5は回収せずにそのまま埋殺しにしても良い。
【0037】
図15に示すように、推進管2が到達立抗60に到達後、推進管2内の油圧配管33、送排泥管24等を装着した内管6を引き戻して一本毎回収し、地中に推進された推進管2による管渠埋設が完成する。
【0038】
以上の工程における本例の地中掘進装置1の作用について詳述する。
本例の地中掘進装置1は、修正ジャッキ30の伸縮操作により、推進管2の先端部27が回転部9とともに左右、上下、いずれの方向にも自由自在に首振り可能となっている。仮に、右方向に首振りして推進方向に修正したい時は、図6に示す3つの修正ジャッキ30のうち、真上にある修正ジャッキ30と、進行方向に向かって行こうとする方向と反対側(右に行くなら左側)にある修正ジャッキ30を適宜伸長させ、1号先導管4を所望の方向(ここでは右方向)に首振りすることができる。
【0039】
支管8内には、修正ジャッキ30の他にビット回転モータ13が所定位置に装着されている。掘削ビット21は1号先導管4の先端より前面へ突き出しており、ビット拡縮ジャッキ20を伸長すると、掘削ビット21の外径が1号先導管4の外径より拡張する。掘削ビット21が回転しても1号先導管4に干渉しないよう構成されている。したがって、掘削ビット21は、1号先導管4の外径よりも拡張して地盤を掘削することができる。この拡張して行う掘削により、オーバーカットが適切に行なわれて推進管2が地中に圧入される際の推進抵抗が削減される。
【0040】
従来技術では、掘削ビットを外周側へ拡げる手段として、推進軸方向にスライドして掘削ビットを推進先導管の先端より突き出して拡張する方式があったが、この機構では掘削ビットを推進管の内径に縮小する際には推進軸方向に後退させ、推進先導管の内面をスライドして縮小していた。この場合、推進先導管内に取り込んだ土砂等が障害となってスライドできない場合が生じるという不都合があった。
【0041】
ところが、本発明によれば、掘削ビット21を外周側へ拡張する機構は、各掘削ビット21の後方にビット拡縮ジャッキ20(本実施例では3基)をそれぞれ設け、これを推進管2の軸に対して直交する方向に伸長して掘削ビット21を拡げる方式を採用している。この方式によれば、取り込んだ土砂が障害となることも無く、確実に掘削ビット21を拡縮できる。
【0042】
本例の地中掘進装置1では、2号先導管3内の内管6の中に、複数の掘進反力ジャッキ31が設置されており、推進管2の軸方向に対して直角方向に伸縮することができる。従って、この掘進反力ジャッキ31が伸長すれば、2号先導管3を推進管2に固定することができる。これによって、掘削ビット21の掘進抵抗力(推進力)の反力は内管6に分散され、合わせて掘進機のローリングを抑止することができる。掘進反力ジャッキ31は、推進管2の軸方向について複数ヶ所に設置しても良い。
【0043】
従来方式の地中掘進装置では、掘進時の抵抗力は後続の推進管からの反力を得て支えていたが、後続の推進管2の接合部は回転自在であったため掘削ビットの掘削回転に伴うローリング現象の発生は避けられないものであった。
【0044】
ところが、本発明では、掘削ビット21、駆動装置等の諸装置は支管8に固定し、さらに支管8は内管6に接続しているため、掘削抵抗力は掘進反力ジャッキ31だけでなく、内管6自体に分散されることとなり、ローリングに対しても内管6が全体としてローリング抑制の役割を担っている。
【0045】
従って、仮に地中掘進装置1がローリングしたとしても、掘進反力ジャッキ31を一旦縮小して内管6全体を回転させれば(図示しないが、発進立坑50内からの操作で内管6を回転させればよい。)、地中掘進装置1を正規の位置に戻すことができる。これによって地中掘進装置1の方向修正を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本例における地中掘進装置1の断面図である。
【図2】図2は、本例の先端側を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、本例の中途部を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、軸に直交する面で見た掘削ビット21の拡張時の状態を示す図である。
【図5】図5は、軸に直交する面で見た掘削ビット21の縮小時の状態を示す図である。
【図6】図6は、軸に直交する面で見た修正ジャッキ30の配置図である。
【図7】図7は、軸に直交する面で見たビット拡縮ジャッキ20の配置図である。
【図8】図8は本例における地中推進工事の工程図である。
【図9】図9は本例における地中推進工事の工程図である。
【図10】図10は本例における地中推進工事の工程図である。
【図11】図11は本例における地中推進工事の工程図である。
【図12】図12は本例における地中推進工事の工程図である。
【図13】図13は本例における地中推進工事の工程図である。
【図14】図14は本例における地中推進工事の工程図である。
【図15】図15は本例における地中推進工事の工程図である。
【符号の説明】
【0047】
1 地中掘進装置
2 推進管
3 2号先導管
4 1号先導管
5 推進先導管
6 内管
9 回転部
11 中心軸
13 駆動手段としてのビット回転モータ
14,15 動力伝達機構としての減速機構
20 ビット拡縮ジャッキ
21 掘削ビット
25 スイベル継手部
27 推進管の先端部
28 ジョイント部
30 修正ジャッキ
31 掘進反力ジャッキ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に圧入される推進管と、
前記推進管内に挿入されて推進される内管と、
前記内管の先端に設けられた駆動手段と、
前記内管の先端の先方に設けられ、前記駆動手段に連結されて前記推進管の先端部の内側で回転駆動される回転部と、
前記回転部の前端に取り付けられて前記推進管の先端部の先方に配置され、前記回転部に対して回転の径方向に往復移動可能とされて前記推進管の外側をオーバーカット可能な掘削ビットと、
を有する地中掘進装置。
【請求項2】
前記推進管の先端部が、前記推進管の後方部分に対して折曲可能に接合されており、
前記内管の先端の内周には、前記回転部に連結された複数の修正ジャッキが周方向に所定角度間隔で設けられており、
前記複数の修正ジャッキを選択的に駆動することにより、前記回転部の中心軸を前記内管の軸方向に対して前記推進管の先端部とともに傾斜させて、推進方向を修正できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【請求項3】
前記掘削ビットが前記回転部の前端に周方向に所定角度間隔で取り付けられ、前記回転部には、前記各掘削ビットごとにビット拡縮ジャッキが設けられて各掘削ビットを径方向に往復移動させるように連結されており、
前記ビット拡縮ジャッキの油圧経路が前記回転部の中心軸からスイベル継手部を経て前記内管の先端の内部に導かれており、
前記駆動手段が前記内管の先端の中心から外れた位置に設置されており、前記回転部の中心軸に動力伝達機構を介して連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【請求項4】
前記内管の径方向に向けて伸縮自在となるように前記内管に設けられ、前記推進管の内面を押圧固定して内管と推進管を固定することにより、掘削ビットに加わる掘進抵抗力を前記内管に分散する掘進反力ジャッキを備えたことを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【請求項1】
地中に圧入される推進管と、
前記推進管内に挿入されて推進される内管と、
前記内管の先端に設けられた駆動手段と、
前記内管の先端の先方に設けられ、前記駆動手段に連結されて前記推進管の先端部の内側で回転駆動される回転部と、
前記回転部の前端に取り付けられて前記推進管の先端部の先方に配置され、前記回転部に対して回転の径方向に往復移動可能とされて前記推進管の外側をオーバーカット可能な掘削ビットと、
を有する地中掘進装置。
【請求項2】
前記推進管の先端部が、前記推進管の後方部分に対して折曲可能に接合されており、
前記内管の先端の内周には、前記回転部に連結された複数の修正ジャッキが周方向に所定角度間隔で設けられており、
前記複数の修正ジャッキを選択的に駆動することにより、前記回転部の中心軸を前記内管の軸方向に対して前記推進管の先端部とともに傾斜させて、推進方向を修正できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【請求項3】
前記掘削ビットが前記回転部の前端に周方向に所定角度間隔で取り付けられ、前記回転部には、前記各掘削ビットごとにビット拡縮ジャッキが設けられて各掘削ビットを径方向に往復移動させるように連結されており、
前記ビット拡縮ジャッキの油圧経路が前記回転部の中心軸からスイベル継手部を経て前記内管の先端の内部に導かれており、
前記駆動手段が前記内管の先端の中心から外れた位置に設置されており、前記回転部の中心軸に動力伝達機構を介して連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【請求項4】
前記内管の径方向に向けて伸縮自在となるように前記内管に設けられ、前記推進管の内面を押圧固定して内管と推進管を固定することにより、掘削ビットに加わる掘進抵抗力を前記内管に分散する掘進反力ジャッキを備えたことを特徴とする請求項1記載の地中掘進装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図15】
【公開番号】特開2006−144385(P2006−144385A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336107(P2004−336107)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000208204)大林道路株式会社 (31)
【出願人】(591036653)株式会社常磐ボーリング (1)
【出願人】(504428751)株式会社トッケン (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000208204)大林道路株式会社 (31)
【出願人】(591036653)株式会社常磐ボーリング (1)
【出願人】(504428751)株式会社トッケン (8)
【Fターム(参考)】
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