説明

地盤改良工法および地盤改良装置

【課題】地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤を効率的に締め固めて強化することができる地盤改良工法および地盤改良装置を提供する。
【解決手段】可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体Aを徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める。地盤中に挿入された圧入管1と、当該圧入管1を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入する圧入装置を用いる。圧入装置2はシリンダー11と当該シリンダー11内に注入材を吸入およびシリンダー11内に吸入された注入材を圧入管1を介して地盤中に圧入するピストン12と当該ピストン12を作動させるスクリュージャッキ13とから構成する。可塑状ゲル注入材を地盤中に一定吐出量、一定圧入圧力および一定速度で圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を地盤中に徐々に拡大させながら形成することにより、地盤を周囲に押しやるように締め固めて軟弱地盤を強化する地盤改良工法および地盤改良装置に関し、特に可塑状ゲル注入材の圧入に伴う周辺地盤の割裂によって注入材が逸脱するのを防止し、また地盤の状況に応じて塊状ゲル固結体が確実に形成されかつ拡大して周辺地盤を確実に締め固めることを可能にしたものであり、例えば、宅地や工場建設地、あるいは道路などの地盤の安定化や斜面(法面)の強化に適用でき、さらには既存構造物直下の地盤改良に適用して既存構造物の耐震補強も行なうことができる。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の強度を高めて地盤沈下や滑り破壊などを抑制する地盤改良工法として、地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入し、当該可塑状ゲル注入材を地盤中で塊状に徐々に拡大させて周囲の地盤を周囲に押しやるように締め固めて軟弱地盤を強化する地盤改良工法(可塑状ゲル圧入工法)が本出願人によってすでに提案されている。
【0003】
従来の可塑状ゲル圧入工法は、地盤中に挿入した圧入管を介し、ダイヤフラムポンプやプランジャーポンプ等の高圧ポンプを利用して加圧によって流動性を有する可塑状ゲル注入材を地盤中に高圧注入することにより、圧入管の周囲に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して地盤を周囲に押しやるように締め固めて地盤を強化するものであった。
【0004】
しかし、複雑に構成された範囲における軟弱地盤を土層に対応して注入材の逸脱を生じることなく塊状固結体を形成し締固めるためには密実に改良しなくてはならなかった。
【0005】
また、既に非流動性のスランプゼロの骨材とセメントの混合物を地盤中に圧入して地盤を改良する、コンパクショングラウト工法も知られている。
【0006】
しかし、この方式による地盤改良は流動性のない材料を圧入するために大きな装置を必要とし、かつ材料を遠方から送流することができないため都市部の狭隘な施工条件下では適用不能であった。
【0007】
また、水平方向または斜め方向から、或いは上方に向っての地盤改良も困難であった。また、圧入に伴う周辺地盤の隆起を生じやすい等の問題もあった。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−62113号公報
【特許文献2】特開2007−9194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人の研究によれば、沖積層の複雑な土層からなる軟弱地盤を、土層に応じて塊状ゲル化物の拡大により締め固めるには、流動性のある懸濁材料を用いる必要があることがわかった。
【0010】
また都市部の狭隘な作業条件下での地盤改良をするためにも流動性のある材料を用い、遠方のプラントから送液管をもって建造物の直下に斜め、あるいは水平に設けた圧入管から圧入しなくてはならない。
【0011】
しかし、流動性のある懸濁液を用いた場合、注入管にそって、或いは地盤の弱い部分に割裂を生じて注入液が拡がるため塊状の固結体の形成が困難であり、従って固結体周辺の地盤の締め固め効果が得られない。
【0012】
本出願人はこの問題を解決するために単なる懸濁液ではなく、可塑状ゲルを地盤に圧入する工法を発明してすでに出願した。
【0013】
可塑状ゲルはそれ自体で全配合液がゲル化する。ゲル体は静置しておけば流動性はなく、力を加えれば流動する。静置したままにしておけば徐々に固化して流動性を失う。或いは脱水すればゲル体中の水分の含有量が低下するため流動性を失い固化する。
【0014】
可塑状ゲル圧入工法は、可塑状ゲル注入材を地盤中に連続的に圧入して地盤中に塊状ゲル化物を形成し、その外周部にポンプ圧による脱水によって薄膜を形成し、その薄膜内部のゲル状体が薄膜を押し拡げ、拡大して塊状体を拡大する。
【0015】
塊状ゲル化物は外周部から徐々に固結して流動性を失い、同時に周囲の地盤が周囲に押しやられて締め固められることにより地盤が強化されるものであって、上記可塑状ゲルの特徴を効果的に利用した画期的な発明である。
【0016】
本出願人は可塑状ゲル圧入工法を更に研究してその問題点を把握して改良して本発明を完成したものである。
【0017】
本出願人の研究によれば、我国における複雑な土層よりなる沖積地盤で各層毎に逸脱することなく塊状ゲルを拡大し、かつ周辺地盤を破壊することなく締固めを行うためには、特に以下の点が必要であることがわかった。
【0018】
1.可塑状ゲルを逸脱することなく大きく拡大するには周辺地盤を破壊することなく徐々に密度を上げていかなくてはならないから締固め度の増大に対応して最適の圧入速度と圧入圧力を連続的にコントロールしなくてはならない。
【0019】
しかし従来の方式では、可塑状ゲル注入材の高圧注入にダイヤフラムポンプやプランジャーポンプを使用するため、毎分当りの可塑状ゲル注入材の吐出量が多くなり過ぎて、或いは脈状になって、地盤を破壊したりして地盤状況に対応して破壊しない程度にできるだけ高圧で加圧または減圧を連続的に変化させて加圧を圧入量を調整して、圧入することが難しい。
【0020】
また、圧入圧力が高くなるとポンプ内で脱水現象を生じて材料が凝結し、このため継続して圧入できなくなることがあり、さらにポンプが空回りする等の問題が生じて施工が困難になることがあった。
【0021】
2.従来の方式ではポンプの機構上、可塑状ゲル注入材は単に一方手的に押し出されることによって地盤中に圧入されるため、単調載荷となり締め固め効果が必ずしも充分とはいえなかった。
【0022】
なぜならば可塑状ゲルを一方的に圧入しつづければ周辺の間隙水圧は大きくなり地盤が弱い部分から破壊されて可塑状ゲルが逸脱し、大きな可塑状ゲルの塊状体が形成されにくいからである。
【0023】
一方、砂の三軸試験結果より求められる変形特性として、同一の軸ひずみを繰り返し載荷した場合と単調載荷した場合とでは、繰り返し載荷した方が大きな体積変化を生じることが知られている。
【0024】
すなわち、間隙水圧の上昇と消散を繰り返すことによって、周辺地盤がゆるみ、そのゆるんだ部分に可塑状ゲルが圧入されるため大きな塊状ゲル体が形成される。この工程を繰り返すことにより亀裂を生ずることなく、塊状ゲル体が拡大し、周辺地盤は密実に締固められる。
【0025】
さらに、従来の方法では可塑状ゲル注入材の吐出が図20に図示するように脈動注入となり、可塑状ゲル注入材の圧入速度と圧入圧力が脈動にあわせて変動するため、不均等な圧力変動で周辺地盤が亀裂を生じ、可塑状ゲルが逸脱し易くなり、締固めが不充分か或いはゲル体の径が小さくなり、締固め効果が小さくなる。また、可塑状ゲル注入材の真の圧入速度と圧入圧力を把握し、圧入量を管理することが困難となり、最適な圧入量とその改良効果を把握できないという課題があった。
【0026】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入し、当該注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤が破壊に到らない程度に連続的に薄膜を加圧して脈状亀裂注入を防ぎながら地盤を周囲に押しやるように締め固めて地盤を効率的かつ経済的に強化できる地盤改良工法および地盤改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1記載の地盤改良工法は、可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良工法であって、地盤中に挿入された圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入する圧入装置を用い、前記可塑状ゲル注入材を地盤中に一定吐出量、一定圧入圧力および一定速度で圧入することを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、可塑状ゲル注入材の吐出量、圧入圧力および圧入速度を一定に保持しつつ、可塑状ゲル注入材を地盤中に連続的に圧入することにより地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止し、或いは間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することにより、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤を周囲に押しやるように締め固めて地盤を強化するものである。
【0029】
本発明によれば、軟弱な地盤であっても可塑状ゲル注入材を低吐出量、低圧力及び低速度で地盤中に連続的に圧入することにより、地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止でき、また間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することができ、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより地盤を強化することができる。
【0030】
請求項2記載の地盤改良工法は、可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良工法であって、地盤中に挿入された圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入する圧入装置を用い、前記可塑状ゲル注入材を地盤中に地盤の状況に応じて吐出量、圧入圧力および圧入速度を変えながら圧入することを特徴とするものである。
【0031】
本発明によれば、地盤の土層に応じて可塑状ゲル注入材の吐出量、圧入圧力および圧入速度を一定、増、減と連続的に調整することにより、地盤の状況に応じて地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止することができ、また間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することにより、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、きわめて効率的に地盤を強化することができる。
【0032】
例えば、地盤が軟弱土層の場合、初期の圧入には可塑状ゲル注入材を低吐出速度かつ低圧下で圧入することにより周辺地盤が破壊されるのを防止することができ、塊状ゲル固結体が大きくなるにつれて周辺が締まり、それに対応して吐出速度を増大して圧入圧力を上げることにより、塊状ゲル固結体の拡大と周辺土層の締固めを進行させることができる。そして、塊状ゲル固結体の周辺土の締固めが進行すれば圧入圧をさらに増大しても土層に脈状逸脱を生ずることなく圧入、締固めを進行させることができる。
【0033】
請求項3記載の地盤改良工法は、請求項1または2記載の地盤改良工法において、圧入装置は、可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入管を介して圧入するためのシリンダー、ピストンおよびジャッキを備え、前記ジャッキにより前記ピストンを作動させて可塑状ゲル注入材の圧入・吸入を繰り返すことにより可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入することを特徴とするものである。
【0034】
ジャッキには、例えば油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、或いは水圧、圧気によって作動するジャッキを用いることができる。これはジャッキがシリンダー内のピストンや載荷板を連続的に上下して圧力の大きさも加圧の増加、減少も連続的に制御できることによる。従ってシリンダー内の可塑状ゲル注入材は地盤の締固め度に応じてジャッキで地盤に押し込み圧を増して塊状ゲルを増大させることができる。
【0035】
例えば、宅地や工場建設地、あるいは道路等の地盤の安定化や斜面(法面)の強化に適用することができ、さらには既存の建物や構造物直下に適用して耐震補強を図ることができる。
【0036】
また、塊状ゲル固結体は地盤中で徐々に拡大させながら形成することにより、周囲の地盤を塊状ゲル固結体によって周囲に押しやるように締め固めるので、砂地盤に限らず、粘土などの粘性土地盤の地盤改良にも適用できる。
【0037】
また、砂の三軸試験結果より求められる変形特性から可塑状ゲル注入材を圧入する際、繰り返し載荷のような過程を得ることで体積ひずみ(ダイレイタンシー)によるより大きな締め固め効果を発揮することが予測されるが、本発明によれば、ピストンの駆動源にスクリュージャッキまたは油圧ジャッキを利用していることで、ピストンを適宜往復動させることにより繰り返し載荷の過程を容易に実現することが可能なため、体積ひずみ(ダイレイタンシー)を容易に発生させることができ、より大きな地盤の締め固め効果を得ることができる。
【0038】
また、可塑状ゲル注入材は単調に圧入するよりも一定のインターバルを取りながら圧入する方が、地盤の体積ひずみ(ダイレイタンシー)が発生しやく締め固めの効果はさらに大きくなる。(図19(a),(b)参照)
また、本発明によれば、圧入・吸入による圧入圧力の変加を地盤に加えながら可塑状ゲル注入材を圧入することにより、可塑状ゲル注入材の圧入を効率的に行なうことができる。
【0039】
また、ジャッキを用いてシリンダー内のピストンを作動させて塑状ゲル注入材を圧入することによって地盤状況、圧入状況を把握しながら、その状況に対応して最適の圧入速度、圧入量、地盤の改良状況、圧入圧力の変化を地盤中に加えながら地盤の緩みをつくりながら塊状ゲル固結体の増大を行うことができる。
【0040】
また、圧入管にドレンーン機能を有するものを利用することにより地盤の締め固めと同時に間隙水の排水も可能になり締め固めをきわめて効率敵に行なうことができる。
【0041】
また、ドレーン機能を有する金属製圧入管を可塑状ゲル固結体によって不安定な斜面地盤に定着することにより圧入管を補強材とする排水管を地盤中に設置し、排水と補強を同時に行う地盤補強に用いることができる。また地震時に過剰間隙水圧を消散させる基礎地盤の強化パイルとして用いることもできる(図6参照)。
【0042】
さらに、可塑状ゲル注入材を一定の圧入圧力でかつ一定の吐出量で圧入することが可能なことから(図19(a),(b)参照)、可塑状ゲル注入材の圧入圧力に変動がないため、可塑状ゲル注入材の圧入速度と注入圧力をリアルタイムで管理し、可塑状ゲル注入材の圧入圧力から最適な圧入量を把握し、かつその効果を確認することが可能なため、最適量の可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入することにより効率的かつ経済的に地盤改良を行うことができる(図2、図11参照)。
【0043】
なお、可塑状ゲル注入材の圧入量と圧入圧力は変位計と圧力計を利用することにより容易に計測することができ、また計測したこれらのデータは、制御装置(PC)で管理することができる。
【0044】
また、可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入するための圧入管には、一液配合では単管ロッド式(図4,5参照)のほか、シングルパッカ方式(図6参照)、ダブルパッカ方式(図7参照)’を用いることができ、また二液式では二重管ロットを用いて注入することができる。さらに、二液式(図3参照)ではA液とB液の押し出す速度を変化させることにより配合比率をコントロールすることができる。
【0045】
本発明で用いる可塑状ゲル注入材は、シリカ系非硬化性粉状体と水、あるいはシリカ系非硬化性粉状体とカルシウム系粉状硬化発現材と水とを有効成分とし、注入時にポンブ加圧を加えると流動化するが、ポンプ加圧を停止すると流動性を失い、加圧すると流動性を回復するが、外周面は脱水して含水量が少なくなり、流動性を失って表面に薄膜が形成され、その薄膜が内部の流動性のある可塑状ゲルによって押されて広がるため、ゲル化物が地盤中で徐々に拡大すると共に周辺地盤を圧縮締め固める。
【0046】
本発明における可塑状ゲル注入材は流動性をもちながら、地盤中では逸脱することなく、塊状ゲルをつくり、しかも表面が脱水に伴って膜をつくりながらその内部では流動性をもち拡大させる流動特性を必要とする。このためには以下の特性をもつことが好ましい。
【0047】
可塑状ゲル注入材が以下の(1)と(3)、又は(1)と(2)と(3)を有効成分として含み、かつ圧入時のテーブルフローが12cm以上又は/並びに圧入時のスランプが5cmより大きく、または/並びにシリンダーによるフローが8cmより大きく地盤中への圧入前又は圧入中に可塑状ゲルに到る注入材であることが望ましい。
【0048】
(1)シリカ系非硬化性粉状体(F材)
(2)カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
【0049】
可塑状ゲル注入材は脱水率30パーセント以内で可塑状ゲルに到り、また可塑状ゲル注入材は粘土やベントナイト、フライアッシュスラグ流動化土等、カルシウム系粉状硬化発現材を用いなくても地盤中で脱水によって流動性を失って塊状体を形成し、周辺地盤と同等あるいはそれ以上の強度を発現するものであってもよい。
【0050】
また、非硬化性粉状体(F材)はフライアッシュ、スラグ、焼却灰、粘土、土砂および珪砂の群から選択される材料である。
【0051】
カルシウム系粉状硬化発現材(C材)はセメント、石灰、石膏およびスラグの群から選択される材料である。ただし、スラグは非硬化性粉状体がスラグの場合に硬化発現材から除外する。
【0052】
硬化発現材は1〜40重量パーセントである。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはいずれも重量を示す。
【0053】
水粉体比は20〜200重量パーセントである。ただし、水粉体比=W/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはいずれも重量を示す。
【0054】
可塑状ゲル注入材は添加剤として水ガラスやアルミニウム塩等のゲル化促進剤、増粘剤、界面活性剤等の解こう剤、アルミ粉末等の起泡剤、および粘土等の流動化材からなる群から選ばれる一つ以上の流動性調整材を含む。
【0055】
請求項4記載の地盤改良工法は、請求項3記載の地盤改良工法において、前記ジャッキは油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、或いは水圧、圧気によって作動するジャッキであることを特徴とするものである。
【0056】
請求項5記載の地盤改良工法は、請求項1〜4のいずれか1に記載の地盤改良工法において、可塑状ゲル注入材は、列状または格子状に選択された複数地点に圧入することを特徴とするものである。
【0057】
請求項6記載の地盤改良工法は、請求項1〜5のいずれか1に記載の地盤改良工法において、可塑状ゲル注入材は複数地点に同時にまたは順番に圧入することを特徴とするものである。
【0058】
本発明によれば、各注入地点における締め固め作用が互いに拘束効果を発揮し、より効果的な締め固めが可能になる。この場合、少なくとも三地点に可塑状ゲル注入材を同時に高圧注入することにより大きな締め固め効果が得られる(図12(a),(b)参照)。
【0059】
請求項7記載の地盤改良工法は、請求項1〜6のいずれか1に記載の地盤改良工法において、可塑状ゲル注入材は一定のインターバルをとって圧入することを特徴とするものである。可塑状ゲル注入材は単調に圧入するよりも一定のインターバルをとって連続的に圧入する方が地盤の体積ひずみ(ダイレイタンシー)が発生しやすいため、低吐出量でもより大きな締め固めの効果が得られる(図19参照)。
【0060】
請求項8記載の地盤改良工法は、請求項1〜7のいずれか1に記載の地盤改良工法において、地盤中にドレーン材を設置して地盤中の脱水を促進し、あるいは吸水口を有する圧入管から可塑状ゲル注入材を圧入すると共に、可塑状ゲル注入材の圧入によってゲル中の水分や土中水を吸水口から脱水することを特徴とするものである。
【0061】
本発明によれば、地盤中にペーパードレーンや排水管などのドレーン材を設置し、あるいは圧入管に吸水口を有する圧入管を使用することで、地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入して地盤を周囲に押しやるように締め固めながら塊状ゲル固結体を形成すると同時に、ドレーン材または圧入管を介して地下水を排水することができるため地盤改良を効率的に行うことができる。
【0062】
請求項9記載の地盤改良工法は、請求項1〜7のいずれか1に記載の地盤改良工法において、地盤中に引張抵抗力を有する圧入管、または引張抵抗部材とともに圧入管を挿入し、地盤を圧縮して密度を増加すると同時に前記圧入管または引張抵抗部材の引張力を地盤に付与することを特徴とするものである。この場合の圧入管には鋼管を用いることができ、また、引張抵抗部材には鉄筋や鋼材などを用いることができる。
【0063】
請求項10記載の地盤改良工法は、請求項1〜9のいずれか1に記載の地盤改良工法において、建造物下方の地盤中に注入管を曲線状または斜めに、あるいは水平に設置し、当該圧入管を介して地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入して建造物下方の地盤を強化することを特徴とするものである。
【0064】
請求項11記載の地盤改良工法は、請求項1〜10のいずれか1に記載の地盤改良工法において、可塑状ゲル注入材の圧入量と圧入圧力を計測する圧力計、流量計を備え、かつ地盤の変位を計測するための変位計とこれらを受けて注入と注入ポイントを調整する制御装置を備えていることを特徴とするものである。
【0065】
請求項12記載の地盤改良装置は、可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良装置であって、地盤中に挿入される圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入するシリンダー、ピストンおよびジャッキを備え、前記ジャッキで前記ピストンを作動させて可塑状ゲル注入材の圧入・吸入を繰り返すことにより前記可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入するように構成されていることを特徴とするものである。
【0066】
請求項13記載の地盤改良装置は、請求項12記載の地盤改良装置において、ジャッキは油圧ジャッキスクリュージャッキ、或いは水圧、圧気によって作動するジャッキであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0067】
請求項1記載の発明によれば、可塑状ゲル注入材の吐出量、圧入圧力および圧入速度を一定に保持しつつ、可塑状ゲル注入材を地盤中に連続的に圧入することにより地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止し、或いは間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することにより、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤を周囲に押しやるように締め固めて地盤を強化することができる。
【0068】
例えば、軟弱な地盤であっても可塑状ゲル注入材を低吐出量、低圧力及び低速度で地盤中に連続的に圧入することにより、地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止でき、また間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することができ、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより地盤を強化することができる。
【0069】
請求項2記載の発明によれば、地盤の土層に応じて可塑状ゲル注入材の吐出量、圧入圧力および圧入速度を一定、増、減と連続的に調整することにより、地盤の状況に応じて地盤の亀裂や注入材の逸脱を防止することができ、また間隙水圧の増大、減少、消散を連続的に制御することにより、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、きわめて効率的に地盤を強化することができる。
【0070】
例えば、地盤が軟弱土層の場合、初期の圧入には可塑状ゲル注入材を低吐出速度かつ低圧下で圧入することにより周辺地盤が破壊されるのを防止することができ、塊状ゲル固結体が大きくなるにつれて周辺が締まり、それに対応して吐出速度を増大して圧入圧力を上げることにより、塊状ゲル固結体の拡大と周辺土層の締固めを進行させることができる。そして、塊状ゲル固結体の周辺土の締固めが進行すれば圧入圧をさらに増大しても土層に脈状逸脱を生ずることなく圧入、締固めを進行させることができる。
【0071】
請求項3記載の発明によれば、ピストンを作動させる駆動源にスクリュージャッキまたは油圧ジャッキを利用することにより、低吐出量の可塑状ゲル注入材でも高圧注入することが可能なめ、地盤中に塊状ゲル固結体を形成して地盤を締め固めて強化することができ、例えば、宅地や工場建設地、あるいは道路等の地盤の安定化や斜面(法面)の強化、さらには既存の建物や構造物直下の地盤に液状化対策として利用することができる効果がある。
【0072】
また、塊状ゲル固結体は地盤中で徐々に拡大させながら形成することにより、周囲の地盤を塊状ゲル固結体によって周囲に押しやるように締め固めるので、砂地盤に限らず、粘土などの粘性土地盤の地盤改良にも適用できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
図1−図3は、それぞれ本発明の地盤改良装置の一実施形態を示し、図において、符号1は地盤中に可塑状ゲル注入材(以下「注入材」という)を圧入する圧入管、2は圧入管1を介して地盤中に注入材を高圧注入する圧入装置、3は地盤中に圧入される注入材を製造する注入材製造プラントである。
【0074】
また、符号4は圧入装置2と圧入管1、および圧入装置2と注入材製造プラント3との間に配置され、注入材製造プラント3から圧入装置2へ、および圧入装置2から圧入管1へ注入材をそれぞれ圧送する圧送管、5は注入材の圧送経路を注入材製造プラント3から圧入装置2へ、圧入装置2から圧入管1へと切り換える三方切替えバルブ、そして、符号6はこれらの装置全体を管理制御する制御装置(PC)である。
【0075】
また、符号7は、注入材の圧入による地盤面の変位(主として隆起)を測定する地盤変位計であり、その測定結果に関する情報は制御装置6に送信されるようになっている。
【0076】
そして、地盤変位計7による測定結果に基づいて注入材の圧入量、流量圧力、圧入速度および圧入ポイントの切り替え等を行うことにより地盤変位が過大にならないように、地盤変位に対応してリアルタイムで地盤変位の許容限度内に納まるように圧入圧力、圧入速度、および土層毎の圧入量を調整して締固め密度の増大を図ることができるようになっている。
【0077】
また、図2において、符号18は、注入材の圧送経路を各圧入管1に切り換えるための切換えバルブである。
【0078】
圧入管1には、一液配合では単管ロッド式、シングルパッカ方式あるいはダブルパッカ方式の圧入管が用いられ、二液配合では二重管複相式やマルチパッカ方式の圧入管が用いられている。
【0079】
単管ロッド方式の場合、先端部に注入材吐出口を有する圧入管1が用いられ、たとえば図4(a)〜(d)に図示するように、圧入管1を地盤中に挿入し、当該圧入管1を介して地盤中に注入材を圧入しながら圧入管1を徐々に引き抜くことにより柱状に連続する塊状ゲル固結体Aを形成することができる。
【0080】
また、その際、例えば図5(a)〜(d)に図示するように、鉄筋などからなる引張抵抗部材8を塊状ゲル固結体A内に挿入することにより地盤を強化することもできる。なお、引張抵抗部材8は圧入管1と共に地盤中に挿入することにより設置することができる。
【0081】
また、シングルパッカ方式の場合は、例えば図6に図示するように側壁に複数の注入材吐出口9aと当該注入材吐出口9aを開閉するゴムスリーブからなるバルブ9bを有する圧入外管9と、先端に注入材吐出口10aと当該注入材吐出口10aの上側に位置してパッカ10bを有する圧入内管10が用いられる。
【0082】
そして、図示するように、圧入外管9を地盤中に挿入し、当該圧入外管9内に圧入内管10を挿入し、かつパッカ10bを膨張させて圧入外管9内を注入材吐出口9aの上側で密封した後、注入内管10を介して地盤中に注入材を圧入することにより地盤中に塊状ゲル固結体Aを形成することができる。この作業を各注入材吐出口9aの位置で行いながら圧入内管10を徐々に引き抜くことにより柱状に連続する塊状ゲル固結体Aを圧入外管9と一体に形成することができる。
【0083】
ダブルパッカ方式の場合は、例えば図7に図示するように圧入外管9にはシングルパッカ方式と同じ圧入外管が用いられ、圧入内管10には先端に注入材吐出口10aと当該注入材吐出口10aの上側と下側に位置して二個のパッカ10b,10bを有する圧入内管が用いられる。
【0084】
そして、圧入外管9を地盤中に挿入し、当該圧入外管9内に圧入内管10を挿入し、かつパッカ10b,10bを膨張させて圧入外管9内を注入材吐出口9aの上下間で密封した後、注入内管10を介して地盤中に注入材を圧入することにより地盤中に球状の塊状ゲル固結体Aを形成することができる。
【0085】
この作業を各注入材吐出口9aの位置で行いながら圧入内管10を徐々に引き抜くことにより柱状に連続する塊状ゲル固結体Aを圧入外管9と一体に形成することができる。
【0086】
また特に、図示するように、注入材の圧入を注入材吐出口9aの一個ないし複数個おきに行うことにより、注入材吐出口9aからなる排水孔10cと塊状ゲル固結体Aを注入外管9の軸方向に交互に形成することができる。
【0087】
さらに、二液配合では、二重管ロッドを用いて注入することができ、その際A液とB液の押し出す速度を変化させることにより配合比率をコントロールすることができる(図3参照)。
【0088】
圧入装置2は、シリンダー11と当該シリンダー11内に注入材製造プラント3で製造された注入材を吸入し、かつシリンダー11内に吸入された注入材を押し出し、圧送管4を介して圧入管1に圧送し、さらに圧入管1を介して注入材を地盤中に圧入するピストン12および当該ピストン12を作動させるスクリュージャッキまたは油圧ジャッキ13とから構成されている(例えば、図1参照)。
【0089】
図1において、注入材製造プラント3で製造された注入材をシリンダー11内に吸入するときは、三方切替えバルブ5において圧入装置2と注入材製造プラント3間の経路を確保し、スクリュージャッキまたは油圧ジャッキ113を作動させてピストン12(図面上、上に移動させる)を後退させてシリンダー11内にサクションを発生させる。そうするとシリンダー11内の負圧によって注入材製造プラント3で製造された注入材はシリンダー11内に吸入される。
【0090】
一方、シリンダー11内に吸入された注入材を地盤中に圧入するときは、三方切替えバルブ5において圧入管1と圧入装置2間の経路を確保し、ジャッキ13を作動させてピストン12を前進させて(図面上ピストン12を下降させる)、ピストン12の先端に取り付けられた載荷板14によって注入材をシリンダー11の外に押し出す。
【0091】
そうすると、注入材は、圧送管4を介して圧入管1に圧送され、圧入管1から地盤中に圧入される。その際、圧入管1を徐々に引き上げることにより、図1に図示するように地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体Aを柱状に形成することができる。
【0092】
この場合の注入材の吸入工程と圧入工程、およびこれらの工程の速度、圧入量、圧入速度の調整、圧入圧力の調整等は制御装置6において遠隔操作で管理されている。
【0093】
また、可塑状ゲル注入材の圧入時の圧入量と圧入圧力は、シリンダー11内に取り付けられた圧力計15と載荷板14に取り付けられた変位計16によって計測され、制御装置6において管理されている(図2参照)。
【0094】
図1においてさらに詳しく説明すると、三方切替えバルブ5のうちのバルブ5a、5bを開け、バルブ5cを閉じてピストン12をジャッキ13で引き上げると注入材はシリンダー11内に吸入される。
【0095】
次に、バルブ5a、5cを開け、バルブ5bを閉じてピストン12を押し下げると注入材は地盤中に圧入される。以上を繰り返しながら圧入管1を徐々に引上げることにより、図示するように地盤中に柱状に連続する塊状ゲル固結体Aを形成することができる。
【0096】
その際、地盤の硬さに応じてピストン12の押し下げ速度を遅くすれば地盤は破壊されることなく徐々に塊状ゲル固結体Aが拡大し、塊状ゲル固結体Aが拡大するにつれ周辺地盤が締め固められて地盤強度が高められる。したがって、圧入を続けて加圧力を増加して圧入量を調整していけば、塊状ゲル固結体Aは周辺地盤を破壊したり脈状に逸脱することなく拡大する。
【0097】
また、ピストン12を引上げるとき、バルブ5bを閉じたままバルブ5cと5aまたはバルブ5a、5b、5cを開けておけば、地盤中に注入された注入材が圧入管1内に引き戻されるように動くため地盤中の塊状ゲル固結体に負圧が働いてその周辺地盤の間隙水圧が低減される結果、周辺の土がくずれて空間が生ずる。
【0098】
そこで次に、バルブ5cを閉じバルブ5aと5bを開けてシリンダー11内に注入材を吸入して後、バルブ5bを閉じてバルブ5a、5cを開けて注入材を圧入すると、土がくずれて生じた空間内に注入材が圧入される。
【0099】
この場合、ジャッキ13によるピストン12の上下動、バルブ5a、5b,5cの開閉、シリンダー11内におけるピストン12の移動速度、加圧力、各ステージにおける注入材の圧入速度と圧入量、さらに地盤の抵抗力と圧入ステージの移行に関する情報と指令は制御装置6により管理できるようになっている。また、地盤変位計7からの情報に基づいて圧入操作を行なえるようになっている。
【0100】
また、図2において、圧力計15は注入材圧入時の地盤の抵抗力、即ち圧入圧力を、変位計16はシリンダー11の変位量、変位速度、圧入量、圧入速度をそれぞれ計測し、計測結果は制御装置6において管理することができる。
【0101】
すなわち、本発明は、ジャッキ13によってシリンダー11内のピストン12を作動させて注入材を地盤中に圧入し、そのときの地盤状況、圧入状況を把握しながら、その状況に対応して最適の圧入速度、圧入量、地盤の改良状況、圧入圧力の変化を地盤中に加えながら、地盤の緩みをつくりながら塊状ゲル固結体の増大を行うことができる。
【0102】
なお、図2は、一台の圧入装置2に複数の圧入管1を接続したものであり、圧入装置2と各圧入管1を接続する圧送管4を切替えバルブ18の開閉によって適宜切り替えることにより、注入材を複数の注入地点に順番に圧入することも、複数の注入地点に同時に圧入することもできる。
【0103】
図8(a)〜(c)は、注入材製造プラント3で製造された注入材をシリンダー11内に注入材製造プラント3とシリンダー11間に接続された注入材圧送ポンプ17によって吸入する方法を示し、この方法によればシリンダー11内に注入材を短時間でかつ確実に吸入することができる。
【0104】
この場合、シリンダー11内に注入材を吸入するときは、圧入管側の切換えバルブ18aを閉じ、注入材製造プラント3側の切換えバルブ18bを開け、さらにピストン12を引いてシリンダー11内を中空にした状態で、圧送ポンプ17を作動させる。
【0105】
そして、シリンダー11内の注入材を圧入管側に圧送し、圧入管を介して地盤中に圧入するときは、切換えバルブ18aを開け、切換えバルブ18bを閉じ、そしてジャッキを作動させてピストン12を図面上、押し下げればよい。
【0106】
図9は、注入材製造プラント3で製造された注入材をシリンダー11内に吸入する工程と、シリンダー11内に吸入された注入材を地盤中に圧入する工程を同時に行なう方法を示し、この方法によれば、動作に無駄がなく注入材の圧入をきわめて効率的に行なうことができ、また装置のコンパクト化が図れる。
【0107】
この場合、2個のシリンダー11,11が同一軸上に一定の間隔をおいて配置され、各シリンダー11内にピストン12がそれぞれ配置され、かつ2個のピストン12のピストンロッド12aは同一軸上で一体に形成されている。
【0108】
また、各シリンダー11には圧入管1側の切換えバルブ18aと注入材製造プラント3側の切換えバルブ18bがそれぞれ取り付けられている。
【0109】
そして、一方のシリンダー11内に注入材製造プラント3から注入材を吸入すると同時に他方のシリンダー11内に吸入された注入材を圧入管1を介して地盤中に圧入することができる。
【0110】
また、図10は、図9に図示する装置を複数設置することにより、複数の圧入管1を介して複数地点に注入材を同時にまたは順番に圧入する方法を示したものである。
【0111】
また、図11は、シリンダー11の容量を大型化すると共に圧入装置2から圧入管1側に伸びる圧送管4を複数に分岐し、そのそれぞれに圧入管1を接続することにより、複数の圧入管1によって複数地点に同時にまたは順番に注入材を圧入できるようにした地盤改良装置を示したものである。
【0112】
この実施形態によれば、緩く堆積した地盤には注入材を多く圧入し、一方ある程度締め固められた地盤に対しては少なく圧入することにより、均一な堆積状態に締め固めることができる。なお、可塑状ゲル注入材の圧入時の圧入量と圧入圧力は圧力計15によって計測され、その情報は制御装置6に送信される。
【0113】
また、図12(a),(b)に図示するように近接する三地点または四地点の注入地点に注入材を同時に圧入することにより、圧入地点の中心部では大きな拘束効果が発揮され、効率的な締め固めを行なうことができる。
【0114】
図13に図示するように、1つの注入材製造プラント3に多数の圧入装置2を接続し、各圧入装置2に圧入管1をそれぞれ接続し、かつこれら注入材製造プラント3、圧入装置2および圧入管1を一つの制御装置6によって制御することにより、多数の圧入管1を介して複数の注入地点に同時に或いは順次に注入材を圧入することができる。
【0115】
また、図12(a),(b)に図示するような配置のもとで、注入材の圧入を行うことにより、固結体によって一定範囲の土を拘束しながら圧入することができる(図12参照)。
【0116】
また、図14に図示するように、注入材を複数地点に列状に圧入することによって、塊状ゲル固結体Aどうしは直接連結していなくてもその間隙が締め固めの影響範囲内ならば、その間の地盤の密度が増大して地盤強度は増大するので、塊状ゲル固結体Aが形成されているのと同様の効果が期待される。
【0117】
さらに、図15に図示するように、地盤を一定範囲ごとに完全に取り囲むように平面格子状に連続する塊状ゲル固結体を形成することができる。このようにすれば、地震時においても、固結体Aからなる固結壁は地震等の繰り返しせん断力を塊状ゲル固結体Aとその間の締固めゾーンによって遮断し、固結壁によって取り囲まれた内部の過剰間隙水圧の上昇を押さえ液状化を抑制することができる。
【0118】
また、固結体がコンクリート体の場合は、その周辺の地盤の密度は密になることはないが、可塑状ゲル注入材を圧入する場合は、その周辺部も密度が増大するし、かつ壁全体としては耐震構造であるところから壁体自体は地震動によって破壊されにくく、震動を吸収しやすい。
【0119】
また、図16に図示するように、柱状に連続する塊状ゲル固結体Aの側部が凹凸状をなしていることにより、塊状ゲル固結体A,A間の地盤は、段状に相対変位することなく表面はゆるやかな変位が生ずるのみであるから、上部の構造物(図省略)は完全に損傷することなく容易に復旧可能な程度の破損にとどまるという利点がある。
【0120】
また、圧入管にドレンーン機能を有する部材を利用することにより地盤の締め固めと同時に間隙水の排水も可能になり、締め固めをきわめて効率敵に行なうことができる。
【0121】
また、排水機能と補強機能を有する圧入管を地盤中に設置することにより、地中水の排水と地盤の補強を同時に行うことができる。この場合の圧入管には鋼管(孔開き鋼管等)などを用いることができる。
【0122】
さらに、こうして一個ないし複数の塊状ゲル固結体Aが一体に形成された圧入管は、地震時に過剰間隙水圧を消散させる基礎地盤の強化パイルとして用いることもできる(図6参照)。
【0123】
図17と図18は、建物や貯蔵タンクなどといった既存の建物や構造物直下の地盤に対して主に地盤改良、液状化防止または空洞充填などを目的に本発明を適用した例を示したものである。
【0124】
その施工方法を説明すると、図17(a),(b)において、貯蔵タンク等の既存構造物19直下の地盤中にドレーン機能(排水機能)を有する圧入管20を既存構造物19の下側を跨ぐように複数並列に敷設し、その両端20a,20bを地表に突出させる。
【0125】
また、圧入管20の一端側20aから既存構造物19直下の地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入して各圧入管20の外周部に複数の塊状ゲル固結体Aを徐々に拡大させながら形成する。
【0126】
そうすると、固結体A周囲の地盤は、塊状ゲル固結体Aが徐々に拡大することにより周囲に押しやられるようにして締め固められて地盤が強化される。その際、地盤が締め固められることにより発生した間隙水は、ドレーン機能を有する圧入管20を介して圧入管20の反対側の端部20bから地上に排水される。
【0127】
なお、圧入管20を敷設するためのボーリング孔を先にボーリング削孔し、後からボーリング孔に圧入管20を挿入してもよい。また、圧入管20は地盤改良の完了後も半永久的にドレーン機能を有するものである。
【0128】
図18(a),(b)において、貯蔵タンク等の既存構造物19直下の地盤中にボーリング機能を備えた圧入管20を既存構造物19の下側を跨ぐように複数並列かつ複数段に敷設し、その一端側20aを地上に突出させる。
【0129】
また、圧入管20の一端側20aから既存構造物19直下の地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入して各圧入管20の外周部に複数の塊状ゲル固結体Aを徐々に拡大させながら形成する。
【0130】
そうすると、固結体A周囲の地盤は、塊状ゲル固結体Aが徐々に拡大することにより周囲に押しやられるようにして締め固められて地盤が強化される。
【0131】
なお、圧入管20の敷設は、電磁誘導方式、挿入式ジャイロ、傾斜・方位計と無線通信システムを用いた方式等、複数の位置確認システムから圧入管20の先端の位置を確認できる装置を備えた自在ボーリングによって行なう。
【0132】
また、自在ボーリングによってボーリング孔を先に削孔し、その後、ボーリング孔に圧入管20を挿入して塊状ゲル固結体Aを形成してもよい。
【0133】
図19(a),(b)は、本発明の効果を実験により確認したものであり、実験に際し、可塑状ゲル注入材の吸入量が20リットルのシリンダーを備えた圧入装置を用い、4回の注入工程により4個の塊状ゲル固結体Aを地盤中に形成した(図1参照)。
【0134】
図19(a)は可塑状ゲル注入材の圧入時間と圧入量との関係を、図19(b)は可塑状ゲル注入材の圧入量と圧入圧力との関係を示し、いずれの場合も一定に変化していることがわかる。これにより、可塑状ゲル注入材の圧入圧力をリアルタイムで管理し、最適な圧入量を把握することができるため、効率的かつ経済的な地盤改良を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成することにより、地盤の締め固めによる地盤強化を効率的かつ確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】地盤改良装置の概要を示す全体図である。
【図2】地盤改良装置の概要を示す全体図である。
【図3】地盤改良装置の一部概要を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、施工手順を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、施工手順を示す図である。
【図6】施工手順を示す図である。
【図7】施工手順を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、圧入装置の概要を示す図である。
【図9】圧入装置の概要を示す図である。
【図10】圧入装置の概要を示す図である。
【図11】地盤改良工法の概要を示す全体図である。
【図12】(a),(b)は、複数地点に同時注入または順番に圧入する際の圧入管の配置例を示す平面図である。
【図13】複数地点に同時圧入または順番に圧入する圧入装置の概要を示す図である。
【図14】複数地点に同時圧入または順番に圧入する際の圧入管の配置例を示す平面図である。
【図15】塊状ゲル固結体の配置例を示す平面図である。
【図16】図15の縦断面図である。
【図17】本発明の地盤改良工法を既存構造物直下の地盤に対して適用した例を示し、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図18】本発明の地盤改良工法を既存構造物直下の地盤に対して適用した例を示し、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図19】本発明の効果を実験により示したものであり、(a)は注入材の圧入時間と圧入量との関係を、(b)は注入材の圧入量と圧入圧力との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図20】ダイヤフラムポンプ等の従来の高圧注入ポンプを使用して注入材を高圧注入したときの圧入時間と圧入速度・圧力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0137】
1 圧入管
2 圧入装置
3 注入材製造プラント
4 圧送管
5 三方切替えバルブ
6 制御装置(PC)
7 地盤変位計
8 引張り抵抗部材
9 圧入外管
10 圧入内管
11 シリンダー
12 ピストン
13 ジャッキ
14 載荷板
15 圧力計
16 変位計
17 注入材圧送ポンプ
18 切換えバルブ
18a 切換えバルブ
18b 切換えバルブ
19 既存構造物
20 圧入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良工法であって、地盤中に挿入された圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入する圧入装置を用い、前記可塑状ゲル注入材を地盤中に一定吐出量、一定圧入圧力および一定速度で圧入することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良工法であって、地盤中に挿入された圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入する圧入装置を用い、前記可塑状ゲル注入材を地盤中に地盤の状況に応じて吐出量、圧入圧力および圧入速度を変えながら圧入することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
圧入装置は、可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入管を介して圧入するためのシリンダー、ピストンおよびジャッキを備え、前記ジャッキにより前記ピストンを作動させて圧入・吸入を繰り返すことにより可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入することを特徴とする請求項1または2記載の地盤改良工法。
【請求項4】
前記ジャッキは油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、或いは水圧または圧気によって作動するジャッキであることを特徴とする請求項3記載の地盤改良工法。
【請求項5】
可塑状ゲル注入材は、複数の注入地点から列状または格子状に選択された複数地点に圧入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項6】
可塑状ゲル注入材は複数地点に同時にまたは順番に圧入することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項7】
可塑状ゲル注入材は一定のインターバルをとって圧入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項8】
地盤中にドレーン材を設置して地盤中の脱水を促進し、あるいは吸水口を有する圧入管を介して可塑状ゲル注入材を圧入すると共に、可塑状ゲル注入材の圧入によってゲル中の水分や土中水を吸水口から脱水することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項9】
地盤中に引張抵抗力を有する圧入管、または引張抵抗部材とともに圧入管を挿入し、地盤を圧縮して密度を増加すると同時に前記圧入管または引張抵抗部材の引張力を地盤に付与することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項10】
建造物下方の地盤中に圧入管を曲線状または斜めに、あるいは水平に挿入し、当該圧入管を通して地盤中に可塑状ゲル注入材を圧入して建造物下方の地盤を強化することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項11】
可塑状ゲル注入材の圧入量を計測する流量計、可塑状ゲル注入材の圧入圧力を計測する圧力計、地盤の変位を計測する変位計、さらにこれらの計測器から得られる計測値に基づいて可塑状ゲル注入材の注入量と注入ポイントを調整する制御装置を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の地盤改良工法。
【請求項12】
可塑状ゲル注入材の圧入により地盤中に可塑状ゲル注入材からなる塊状ゲル固結体を徐々に拡大させながら形成して、地盤を周囲に押しやるように締め固める地盤改良装置であって、地盤中に挿入される圧入管と、当該圧入管を介して可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入するシリンダー、ピストンおよびジャッキを備え、前記ジャッキで前記ピストンを作動させて圧入・吸入を繰り返すことにより前記可塑状ゲル注入材を地盤中に圧入するように構成されていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項13】
ジャッキは油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、或いは水圧または圧気によって作動するジャッキであることを特徴とする請求項12記載の地盤改良装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−59673(P2010−59673A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225995(P2008−225995)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)社団法人地盤工学会 第43回地盤工学研究発表会 平成20年度発表講演集 平成20年(2008年)7月9日〜12日 広島市において(2分冊の1)発行日:平成20年6月12日 (2)社団法人土木学会 第63回年次学術講演会講演概要集(全国大会開催期間:平成20年9月10日〜12日)(CD−ROM)発行日:平成20年8月13日
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】