説明

垂直軸風車及び発電システム

【課題】風力エネルギを利用した発電システムのエネルギ変換効率を向上させる。
【解決手段】本発明の風車は、少なくとも1つの羽根4と、羽根4を風車回転軸Awを中心に公転可能に支持する支持部材と、を含む風車本体1を備える。羽根4は、羽根回転軸回りに自転可能に支持部材に支持されている。風車本体1は、風向に対して風車回転軸Awを挟んだ一側では、羽根4の角度を、それに発生する抗力が風車本体1の回転力となる角度にする角度制御手段と、他側では、羽根4の角度を、それに発生する揚力が風車本体1の回転力となる角度にする角度制御手段31、51をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸風車及びそれを備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、風力発電用の風車として、回転軸が垂直方向に延びる垂直軸風車や、回転軸が水平方向に延びる水平軸風車が知られている。また、垂直軸風車には、羽根に発生する抗力が風車の回転力となる抗力型(例えば、特許文献1参照)、羽根に発生する揚力が風車の回転力となる揚力型が含まれる。サポニウス型風車や自転羽根式風車などの抗力型の風車は、構造が簡単で、発電機部分などの機械部分が低位置にあるため点検や修理がしやすく、低風速から始動可能であるなどの特性を持つ。
【特許文献1】特開平2004−211569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような抗力型の風車では、風向に対して風車の回転軸を挟んだ一側では、羽根に発生する抗力によって回転力が生じるが、上記回転軸を挟んだ他側では、羽根に発生する抗力が回転力にならない上に、風車の回転力を減少させる力が働いてしまうことになり、このような抗力型の風車を備えた発電システムは、風力エネルギのエネルギ変換効率が悪いという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1の風車では、羽根に向かって進行する風を増速させる増速部設けて、風力エネルギのエネルギ変換効率の向上を図っている。これは、上記増速部によって、羽根に発生する抗力を大きくし、通常よりも大きな回転力を得て、風力エネルギのエネルギ変換効率を向上させようとしている。
【0005】
しかしながら、このように増速部を設け回転力を大きくした風車であっても、依然として、回転力を生み出さず、回転力を減少させる力が働く部分が残されたままである、という問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、風力エネルギを利用した発電システムのエネルギ変換効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の垂直軸風車は、少なくとも1つの羽根と、垂直方向に延びる風車回転軸回りに回転可能な軸部材を有すると共に、上記羽根を、上記軸部材の回転と同期して上記風車回転軸を中心に公転可能に支持する支持部材と、を含む風車本体を備える。
【0008】
上記羽根は、略垂直方向に延びる羽根回転軸回りに自転可能に上記支持部材に支持されており、上記風車本体は、上記羽根の公転に伴い該羽根の風向に対する角度を所定の角度に制御する角度制御手段をさらに含む。
【0009】
そして、上記角度制御手段は、風向に対して上記風車回転軸を挟んだ一側では、上記羽根の角度を、それに発生する抗力が風車本体の回転力となる角度にする一方、上記風車回転軸を挟んだ他側では、上記羽根の角度を、それに発生する揚力が風車本体の回転力となる角度にする。
【0010】
上記の構成によると、羽根を羽根回転軸回りに自転可能にすると共に、角度制御手段によって、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根に発生する抗力が風車本体の回転力となるように羽根の角度を制御し、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根に発生する揚力が風車本体の回転力となるように羽根の角度を制御する。つまり、従来の抗力型の風車では、羽根の抗力が風車の回転力を減少させることになる側が、本発明においては、羽根の揚力によって回転力が得られる側になる。そのため、風車本体の回転力を減少させることがなく、エネルギ変換効率が向上する。
【0011】
また、上記羽根は、その横断面を翼型とし、該羽根の羽根回転軸を、その翼弦方向の中心に対して前縁側にずれて設定して、上記羽根を、その前縁が風上側となるように風力によって付勢されるようにし、上記角度制御手段は、風向に対して上記風車回転軸を挟んだ一側において、上記風力によって付勢される羽根と係合することにより、上記羽根の角度を、それに発生する抗力が風車本体の回転力となる角度に規制する抗力用規制部材と、上記風車回転軸を挟んだ他側において上記風力によって付勢される羽根と係合することにより、上記羽根の角度を、それに発生する揚力が風車本体の回転力となる角度に規制する揚力用規制部材と、を含む、としてもよい。
【0012】
こうすることで、羽根の角度は、翼弦方向の中央に対してずれた羽根回転軸と、抗力用規制部材と、揚力用規制部材とによって、羽根の公転に伴い自動的に制御されることになる。そのため、羽根の公転位置を電気的に検出したり、羽根を電気的に回転させたりする必要がなくなり、発電システムにおいて余分なエネルギを消費することが抑制される。
【0013】
また、羽根の横断面が翼型であることによって、羽根に発生する揚力が大きくなるため、風車本体のトルク向上が図られる。
【0014】
上記揚力用規制部材は、上記風車回転軸を挟んだ他側における風下側で、上記風車本体の径方向に対する羽根の角度を公転に対して一定にする第1の規制部材と、上記風車回転軸を挟んだ他側における風上側で、上記風車本体の径方向に対する羽根の角度を公転に伴い変更させる第2の規制部材と、を含む、としてもよい。
【0015】
このことにより、風車回転軸を挟んだ他側においては、その風下側と風上側との双方で、羽根の揚力を風車本体の回転力とすることができ、エネルギ変換効率のさらなる向上が図られる。
【0016】
上記第2の規制部材は、上記羽根と係合することによって該羽根を公転に伴い自転させるガイドレールとし、上記ガイドレールを、上記風車回転軸回りに回動可能に設け、上記風車本体は、上記ガイドレールを、風向に応じて上記風車回転軸を挟んだ他側における風上側の所定位置に位置づける移動手段をさらに含む、としてもよい。
【0017】
風向に応じて移動手段がガイドレールを所定位置に移動させることによって、風向の変化に対応して、羽根に発生する抗力が風車本体の回転力となる側と、羽根に発生する揚力が風車本体の回転力となる側とが、それぞれ設定されることになる、従って、風車が風向に対し無指向性となる結果、風車の稼働率が高まる。
【0018】
ここで、上記移動手段は、例えばガイドレールに連結された尾翼とすることができ、この場合、ガイドレールは風向に対し自動的に移動することになり、風向を検出してガイドレールを移動させるといった、電気的な制御が不要になる。
【0019】
本発明の発電システムは、上記の垂直軸風車と、上記軸部材に連結されかつ、該軸部材の回転によって駆動される発電機と、を備える。
【0020】
このことにより、上記のエネルギ変換効率の高い垂直軸風車を、風力発電システムの風車として機能させることで、風力エネルギを利用した発電システムのエネルギ変換効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の垂直軸風車によると、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では抗力が、他側では揚力が風車本体の回転力となるように、羽根の角度を規制することによって、風車本体の回転力を減少させることがなく、エネルギ変換効率の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明の発電システムによると、上記垂直軸風車を備えることによって、風力エネルギから電気エネルギへの変換を、エネルギ変換効率の高い風車によってすることが可能になり、風力エネルギを利用した発電システムのエネルギ変換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本実施形態に係る発電システムは、風力エネルギと太陽熱エネルギとのそれぞれを電気エネルギに変換するハイブリッドシステムであり、風車と発電機とを備えている。この風車は風力によって回転する形態(風力発電モード)と、羽根を太陽光を集光するための反射板として利用することにより太陽光を集光する形態(太陽熱発電モード)とに切り替えることが可能にされている。
【0025】
(風車の構成)
図1は、本発電システムに用いられる風車Wの全体を概略的に示した図であり、この風車Wは、軸部材21及び、この軸部材21の周囲に周方向に等間隔に配置された3つの羽根4を含む風車本体1と、風車本体1を回転可能に支持する台座91及び支柱92と、を備える。
【0026】
上記台座91は、放射状に延びる3つの脚部91aを有し、上記支柱92は、この台座91の中央位置に固定されて垂直上方に延びている。
【0027】
上記支柱92の上端部には、上記台座91の脚部91aと同様に放射状に延びる3つの腕部93が固定されており、各腕部93の先端部と、上記台座91の各脚部91aとの間にワイヤ(虎綱)94が張られて、上記支柱92を支持している。
【0028】
上記軸部材21は、図2に示すように(尚、図2は、図1にAで示す矢印の方向に沿って見た風車本体1の図である)、内筒21aと外筒21bとからなる二重構造であり、内筒21aが上記支柱92に外挿されることによって、この軸部材21は垂直方向に延びる軸、つまり風車回転軸Aw回りに回転する。尚、上記内筒21aと外筒21bとは一体的に回転する。
【0029】
上記外筒21bには、図1,2に示すように、その上端部に、周方向に等間隔を空けてそれぞれ径方向の外方に延びる3つの上側アーム22が取り付けられると共に、その下端部に、各上側アーム22と同じ周方向位置でそれぞれ径方向の外方に延びる3つの下側アーム23が取り付けられている。各上側アーム22と各下側アーム23とは、上記軸部材21の回転と一体的に風車回転軸Aw回りに回転する。この各上側アーム22及び各下側アーム23と、上記軸部材21とによって、羽根4を支持する支持部材が構成され、この支持部材と羽根4とによって風車本体1が構成される。
【0030】
上記外筒21bにはまた、上記上側アーム22よりも下側位置に、ガイドレール31を備えた案内部材32が取り付けられており、この案内部材32は、風車回転軸Aw回りに上記軸部材21(外筒21b)に対して相対的に回転可能にされている。
【0031】
そして、上記各羽根4は、上記各上側アーム22の先端部と各下側アーム23の先端部とを互いに連結するように縦向きに配置されていた状態で、各上側アーム22及び各下側アーム23によって支持される。これによって、各羽根4は、上記軸部材21の回転と同期して、風車回転軸Awを中心として回転(公転)する。
【0032】
各羽根4は、図3〜5に示すように、所定の間隔を空けて平行に並んだ2つの桁41と、その2つの桁41の間で長手方向に所定の間隔を空けて配設されて、両桁41,41を互いに連結する複数の(図例では6個の)リブ42とからなるフレームに対して、その一側面側(後述するように、リブ42において円弧状となっている側)に外板としての布材44をはり付けることによって構成されている。
【0033】
この布材44は、風車Wにおいて風を受ける部分となる他に、後述するように、羽根4を反射板として用いる際にその反射面44aとなる部分である。そのため、少なくとも反射面44aとなる側の表面は、その反射率が高いことが望ましく、一例として樹脂コーティングをした布に、アルミ蒸着を施すことによって反射率を高めた布材44を用いてもよい。尚、上記羽根4において反射面44aとなる側は、図3、5において図示される側である。
【0034】
上記各桁41は、図4に示すように、その長手方向に放物線状に湾曲している一方、上記各リブ42は、図5に示すように、円弧状に形成されており、これにより、上記各羽根4は、縦断面形状が放物線形状でかつ、横断面形状が円弧翼型となっている。
【0035】
尚、以下の説明では、図3において右上側となる側を羽根4の上側、左下側となる側を羽根4の下側と呼ぶと共に、図5において左側となる縁を羽根4の前縁、右側となる縁を羽根4の後縁として、その左右方向を翼弦方向と呼ぶ。また、図4において上向きとなる面側を羽根4の圧力面側、下向きとなる面側を羽根4の負圧面側と呼ぶ。
【0036】
上記各羽根4の上端部には上部ブラケット45が固定されており、この上部ブラケット45には、上方に延びる上部回転軸45aが取り付けられている。この上部回転軸45aは、翼弦方向の中央位置から前縁側にずれた位置に設けられている。また、各羽根4の下端部には下部ブラケット46が固定されており、この下部ブラケット46には、下方に延びる下部回転軸47が、上部回転軸45aと同様に翼弦方向の中央位置から前縁側にずれた位置に取り付けられている。ここで、上部回転軸45aは断面円形状の棒状であるのに対し、下部回転軸47は、図3〜5,9に示すように、その軸方向の中間位置に位置する断面矩形状の矩形部47aと、その矩形部47aを挟んだ一側(下部ブラケット46側)に位置する断面円形状の大径部47bと、他側に位置する断面円形状の小径部47cと、からなる。
【0037】
上部回転軸45aは、図6,7に示すように、軸受部材24を介して上側アーム22の先端部に支持される。つまり、上記上側アーム22の先端部には、その先端面に開口しかつアームの長手方向に基端側に向かって延びる凹溝22aが形成されており、上部回転軸45aの先端に取り付けられた上記軸受部材24がこの凹溝22a内に挿入されることによって、上部回転軸45aは上側アーム22の先端部に支持される。
【0038】
上記軸受部材24は、横断面形状が正六角形状を有する柱状の部材であり、その内部には下端面に開口する挿入孔24aを有している。上部回転軸45aの先端部は、2つのベアリング24b,24bを介して軸受部材24の挿入孔24aに内挿されており、軸受部材24は上部回転軸45aに対して相対的に回転可能となっている。そうして、上記軸受部材24が上側アーム22に設けられた凹溝22a内に挿入されることによって、正六角の横断面形状を有する軸受部材24は、上側アーム22に対して回転が規制されることになるため、上部回転軸45aが、上側アーム22に対して回転可能に支持されることになる。
【0039】
上記上側アーム22の先端部には、凹溝22a内に挿入された軸受部材24が凹溝22aの開口から抜けることを防止するロック部材25が設けられている(図7参照、尚、図6ではロック部材25の図示を省略している)。このロック部材25は、凹溝22a内に挿入された軸受部材24よりも上側アーム22の先端側位置でその凹溝22aを横切るように突出した状態(図7の一点鎖線参照)と、凹溝22aから退避させた状態(図7の破線参照)とに切り替わるロックピン25aを備える。ロックピン25aが突出した状態では、軸受部材24とロックピン25aとの干渉によって軸受部材24が凹溝22aから外れることが防止されるロック状態となり、ロックピン25aが退避した状態では、軸受部材24が凹溝22aから外れることが許容されるアンロック状態となる。上記ロック部材25は、風力発電モードにおいてはロック状態とされ、太陽熱発電モードにおいてはアンロック状態とされる。尚、ロックピン25aは手動で突出・待避状態が切り替わっても、例えばソレノイド等による電動で突出・待避状態が切り替わってもよい。また、ロック部材25はロックピン25aを備えたものに限らず、軸受部材24と干渉することによってその軸受部材24が凹溝22aから外れることを防止するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0040】
下部回転軸47は、図8,9に示すように、下側アーム23の先端部に固定された軸支持部材26に支持される。この軸支持部材26は、下側アーム23の長手方向に直交するヒンジ軸Ah回りに回動するヒンジ部27と、ヒンジ部27に対して相対的に回転可能(後述するように、羽根回転軸Ab回りに回転可能)に設けられた軸受部28と、を有している。軸受部28は下部回転軸47が内挿される挿入孔28aを有していて、下部回転軸47の大径部47b及び小径部47cのそれぞれが、ベアリング28b,28cを介して上記挿入孔28aに支持されている。これにより、上記下部回転軸47が、軸支持部材26ひいては下側アーム23に対して回転可能に支持されることになる。
【0041】
このように、上部回転軸45aが上側アーム22の先端部に対して回転可能に支持される一方、下部回転軸47が下側アーム23の先端部に対して回転可能に支持されることにより、上記羽根4は、羽根回転軸Ab回りに回転(自転)可能とされている。尚、羽根回転軸Abは、図2に示すように、その上側の方が下側よりも径方向の外方となるように垂直方向に対して所定の角度だけ傾いていると共に、図5に示すように、翼弦方向の中心に対して前縁側に所定距離だけずれた位置に位置している。
【0042】
上記風車Wが風力発電モードのときには、詳しくは後述するが、各羽根4は、風を受けて風車回転軸Awを中心として公転するに伴い、風向に対する角度が所定の角度となるように、上記羽根回転軸Ab回りに所定の回転角度範囲で自転する。
【0043】
すなわち、羽根回転軸Abが翼弦方向の中央に対して前縁側にずれていることで、羽根4はその前縁が風上側となるように風力によって付勢され、公転に伴い風車本体1の径方向に対する羽根4の角度は変化する。上記風車本体1には、風力によって付勢される羽根4の角度を、所定の角度に制御するために、揚力用規制部材と、抗力用規制部材6とが設けられている。この内、揚力用規制部材は、第1の規制部材51と、第2の規制部材としてのガイドレール31とを含む。
【0044】
第1の規制部材51は、図2,6,7に示すように、各上側アーム22の所定位置に、下方に突出して設けられた片状の部材からなる。そして、各羽根4の上部ブラケット45には、図3,5〜7に示すように、その前縁近傍で上方に突出して、上記第1の規制部材51に係合する係合部材45bが取り付けられている。第1の規制部材51と係合部材45bとが係合することによって(図6,7に一点鎖線で示す羽根の状態)、図10に示すように、風向に対する羽根4の角度が所定の角度に規制される。具体的には、第1の規制部材51は、上記風車回転軸Awを挟んだ他側(図10における左側)における風下側で、羽根4の揚力の方向L1が風車Wの接線方向に略一致するように、風向に対する羽根4の角度を規制する。そうすることによって、羽根4の揚力によって風車Wの回転力が得られるようにする。ここで、上記第1の規制部材51は、上記風車本体1の径方向に対する羽根4の角度、換言すれば上側又は下側アーム22,23の長手方向に対する羽根4の角度を公転に対して一定にする。
【0045】
ガイドレール31を有する案内部材32は、図1,2,10に示すように、ガイドレール31を風車回転軸Aw回りに回転可能に支持するための上記軸部材21に外挿されるリング33及び該リング33から径方向の外方に延びる複数のブラケット34と、上記ガイドレール31とは逆側において上記リング33に対し固定され径方向の外方に延びる尾翼35とを備えている。ガイドレール31は、風車回転軸Awに沿って見て、およそ風車本体1の1/4円の範囲を所定形状に湾曲して延びており、その径方向の外側の面がガイド面31aとされている。そして、各羽根4の上部ブラケット45には、図3,5〜7に示すように、その後縁近傍に設けられて上記ガイド面35a上を転動するガイドローラ45cが取り付けられている。
【0046】
上記案内部材32は、尾翼35を有することにより風向に応じて風車回転軸Aw回りに回動し、それによって上記ガイドレール31は、風向に対し風車回転軸Awを挟んだ左側における風上側の所定位置に位置するようになる。そうして、風車回転軸Aw回りに公転する各羽根4が上記ガイドレール31の近傍に位置したときには、図6,7,10に示すように(図6,7では二点鎖線で示す羽根の状態)、そのガイドローラ45cがガイド面31aに当接し、各羽根4が公転するに伴いガイドローラ45cがガイド面31a上を転動する。そのことにより、羽根4は自転しながら公転する。つまり、案内部材32は、上記風車回転軸Awを挟んだ他側(図10における左側)における風上側で、羽根4の揚力の方向L2が風車Wの接線方向に略一致するように、風向に対する羽根4の角度を規制し、そのことにより、羽根4の揚力によって風車Wの回転力が得られるようにする。ここで、上記案内部材32は、第1の規制部材51とは異なり、上記風車本体1の径方向に対する羽根4の角度、換言すれば上側又は下側アーム22,23の長手方向に対する羽根4の角度を公転に伴い変更させる。
【0047】
抗力用規制部材6は、図8,9に示すように、各下側アーム23の先端部に取り付けられた軸支持部材26に対し固定されている。つまり、軸支持部材26の軸受部28には、下側アーム23の長手方向にほぼ沿うように風車本体1の径方向内方に延びる支持アーム61の基端が固定されており、抗力用規制部材6はこの支持アーム61の先端部に取り付けられている。この抗力用規制部材6は、支持アーム61に固定される収容部63と、この収容部63から上方に突出する突出状態(図8,9の実線参照)と収容部63に収容される待避状態(図8,9の二点鎖線参照)とに切り替わる係止部62と、を有している。係止部62が突出状態にあるときには、係止部62と羽根(図8では二点鎖線で示す羽根であり、図9では実線で示す羽根である)4の下端部とは干渉するようになり、その係止部62と羽根4との干渉によって、図10に示すように、風向に対する羽根4の角度は所定の角度に規制される。具体的には、抗力用規制部材6は、上記風車回転軸Awを挟んだ一側(図10における右側)で、羽根4の抗力の方向が風車Wの接線方向に略一致するように、風向に対する羽根4の角度を規制する。そうすることによって、羽根4の抗力によって風車Wの回転力が得られるようにする。ここで、上記抗力用規制部材6は、上記風車本体1の径方向に対する羽根4の角度、換言すれば上側又は下側アーム22,23の長手方向に対する羽根4の角度を公転に対して一定にする。
【0048】
一方、係止部62が待避状態にあるときには、係止部62と羽根4の下端部とは干渉しないため、羽根4の角度は規制されない。このことにより、羽根4は羽根回転軸Ab回りに自由に(360°)回転することが可能になる。これは、後述するように、風車Wを風力発電モードから太陽熱発電モードに切り替える際、及び太陽熱発電モードから風力発電モードに切り替える際に行われる。尚、係止部62は、手動によって突出状態と待避状態とに切り替わってもよいし、例えばソレノイド等によって突出状態と待避状態とに切り替わるようにしてもよい。
【0049】
上記軸支持部材26の軸受部28にはまた、図8,9に示すように、下部回転軸47のに対し直交する方向に相対する2つの固定ボルト28d,28dが、それぞれ下部回転軸47に向かってねじ込まれるように取り付けられており、この2つの固定ボルト28d,28dがねじ込まれることにより、上記下部回転軸47の矩形部47aがその2つの固定ボルト28d,28dによって挟持される。尚、図9は、2つの固定ボルトによって矩形部47aが挟持されている状態を示す。この状態では、下部回転軸47が軸受部28に対して相対的に回転することが規制される。このように下部回転軸47の回転を規制することは、後述するように、風車Wが太陽熱発電モードのときに行われる。つまり、太陽熱発電モードのときには、各羽根4を、その圧力面側を風車本体1の内側にその負圧面側を風車本体1の外側にすると共に、その翼弦方向をヒンジ軸Ahの方向と略一致する向きにした状態(図9に二点鎖線で示す状態)で、下部回転軸47の回転を規制する。
【0050】
尚、ここでは各固定ボルト28dを手動で締め付けることによって下部回転軸47の回転を規制するようにしているが、下部回転軸47の回転を規制する機構はこれに限らず、種々の機構を採用することが可能である。例えば固定ボルト28dの代わりにソレノイド等によって駆動されるピンを設け、そのピンによって下部回転軸47の矩形部47aを挟持する、といった電動制御によって下部回転軸47の回転を規制する機構を採用してもよい。また、2つの固定ボルト28d,28d(又はソレノイド駆動のピン)によって矩形部47aを挟持する構成に限らず、下部回転軸47に径方向に貫通する貫通孔を設けておき、ボルト(又はピン)をその貫通孔内に挿入することによっても、下部回転軸47の回転を規制することは可能であり、そうした構成を採用してもよい。さらに、下部回転軸47を回転させるモータ等の駆動源をさらに含むことによって、そのモータによって下部回転軸47を回転させて各羽根4を所定の向きにした状態にすることも可能である。
【0051】
上述したように、本風車Wは、太陽熱発電モードにおいては、各羽根4を反射板とすることによって太陽熱を集熱する。換言すれば、上記風車Wは、太陽熱発電モードにおいては、3つの集熱手段2(図11参照)を有することになる。
【0052】
上記各集熱手段2は、上記羽根4と、その羽根4に対応して設けられた吸熱部7とからなる。吸熱部7は、熱搬送媒体を集光された太陽光によって加熱するものであり、羽根4(羽根4は、その圧力面側を風車本体1の内側にその負圧面側を風車本体1の外側にすると共に、その翼弦方向をヒンジ軸Ahの方向と略一致する向きにした状態である)に対し、その反射面44aに相対すると共に、放物線形状を有する羽根4の長手方向に対してはその焦点に相当する位置で(図2,8参照)かつ、羽根4の翼弦方向に対してはその中央に相当する位置に(図9参照)位置づけられる。つまり、この吸熱部7は、図8,9に示すように、上記軸支持部材26の軸受部28に固定された支持パイプ71に支持されており、この支持パイプ71は、上記軸受部28から上記支持アーム61に沿って風車本体1の内方に延びると共に、上記抗力用規制部材6よりも風車本体1の内側位置で上方に延びて設けられている。尚、上記支持パイプ71は熱搬送媒体の経路14(図11参照)の一部を構成する。
【0053】
上記軸受部28はまた、上記羽根回転軸Abと同軸となるように設けられたウォームホイール29aとウォーム29bとからなるウォームギヤ29を有しており、ウォーム29bに取り付けられたハンドル29cを回転操作することによって、軸受部28は羽根回転軸Ab回りに、ヒンジ部27に対して相対的に回転する。そうして、軸受部28が羽根回転軸Ab回りに回転するに伴い、固定ボルト28dによって回転が規制された状態の羽根4と吸熱部7とが共に羽根回転軸Ab回りに回転するようになる。このように、羽根4と吸熱部7とからなる集熱手段2を羽根回転軸Ab回りに回転させたときに、羽根4と吸熱部7との相対的な位置は常に一定であり、吸熱部7は羽根4の焦点の相当する位置に位置する。
【0054】
図1,2に示すように、上記各上側アーム22には、その先端部に第1プーリ81が取り付けられると共に、その基端部に第2プーリ82が取り付けられている。また、各下側アーム23には、その基端部に第3プーリ83が取り付けられていると共に、その中間部にワイヤ85が巻き付けられたウィンチ84が取り付けられている。このウィンチ84は電動駆動であってもよいし、手動駆動であってもよい。そして、このウィンチ84から下側アーム23に沿って引き出されたワイヤ85は、第3プーリ83によってその引き出し方向が上方に変換されて、二重構造の軸部材21の内筒21aと外筒21bとの間の空間内を上方に向かって配設される。そして、上記ワイヤ85は、第2プーリ82によってその引き出し方向が水平方向に変換されて上側アーム22の先端部に向かって配設される。そうして、ワイヤ85の先端は上記第1プーリ81を介して、上記羽根4の上部回転軸45aを軸支する軸受部材24に固定される。上記ウィンチ84を、ワイヤ85の繰り出し方向に駆動したときには(尚、このときロック部材25はアンロック状態である)、羽根回転軸Abが垂直方向に対して傾斜していることにより、羽根4は、その自重によってヒンジ軸Ahを中心として回動し、その反射面44aが上方を臨むように倒伏する(図2の二点鎖線参照)。一方、上記ウィンチ84を、ワイヤ85の巻き取り方向に駆動したときには、羽根4はヒンジ軸Ahを中心として回動し、羽根4の長手方向が略垂直方向となるように起立する(図2の実線参照)。このように、このように、各羽根4は、下側アーム23に設けたウィンチ84の駆動によって、起立姿勢(図2の実線で示す状態)と倒伏姿勢(図2の二点鎖線で示す状態)との間で、任意にその姿勢(傾倒角度)を変更することができる。
【0055】
ここで、上記吸熱部7は軸支持部材26の軸受部28に対して固定されているため、図2に二点鎖線で示すように、軸支持部材26のヒンジ部27がヒンジ軸Ah回りに回動して羽根4が倒伏するに伴い、吸熱部7もヒンジ軸Ah回りに回動する。このように、羽根4と吸熱部7とからなる集熱手段2をヒンジ軸Ah回りに回動させたときに、羽根4と吸熱部7との相対的な位置は常に一定であり、吸熱部7は羽根4の焦点の相当する位置に位置する。
【0056】
そうして後述するように、羽根4の反射面44aで反射した太陽光は、羽根4のヒンジ軸Ah回りの姿勢、及び羽根回転軸Ab回りの向きに拘わらず、常に吸熱部7に集光されるようになる。
【0057】
(風力発電モード)
次に、上記風車Wの、風力発電モードにおける動作について、図10を参照しながら説明する。図10は、風車回転軸Awに沿って風車本体1を上方から見た図であり、図10では、風車回転軸Aw回りの公転に伴う風向に対する羽根4の角度の変化を、1つの羽根4について示している。尚、図10において風車Wは時計回りに回転し、風向は紙面上側から下側に向かう方向とする。また、同図に示す白丸は羽根回転軸Abを示しており、径方向外方の白丸は、上側アーム22と羽根回転軸Abとの交点を、径方向内方の白丸は下側アーム23と羽根回転軸Abとの交点をそれぞれ示す。
【0058】
風力発電モードにおいては、各羽根4は起立姿勢にされると共に、各羽根4の向きは、その圧力面側が風車本体1の外方に、その負圧面側が風車本体1の内方となるようにされる。また、抗力用規制部材6の係止部62は突出状態にされる。これにより、各羽根4は、羽根回転軸Ab回りに、抗力用規制部材6に干渉する角度(図10のR1参照)から、揚力用規制部材(第1の規制部材51)と係合する角度(図10のR6参照)まで回転することが可能にされている。
【0059】
上述したように、案内部材32は、風向に応じて風車回転軸Aw回りに回転することによって、ガイドレール31は、図10に示すように、風向に対し風車回転軸Awを挟んだ左側における風上側に位置する。
【0060】
一方、羽根回転軸Abは、上述したように、羽根4に対し、その翼弦方向の中央位置に対して前縁側にずれて設定されているため、羽根4は、風力によってその前縁が風上側に、その後縁が風下側になるように付勢される。
【0061】
ここで、図10においてR1で示す公転角度位置においては、風力によって付勢される羽根4は抗力用規制部材6(係止部62)と干渉することになり、それによって、羽根4は、その翼弦方向が風車本体1の径方向にほぼ一致する向きとなる(図8では二点鎖線で示し、図9では実線で示す羽根の状態)。この状態では、羽根4の抗力の方向(図10の矢印D参照)が風車本体1の接線方向に略一致する。そうして、羽根4の抗力が風車Wの回転力となり、羽根4はR1の公転角度位置からR4の公転角度位置へと移動する。尚、この移動の間、羽根4と風車本体1の径方向との成す角度は、抗力用規制部材6によって一定にされる。
【0062】
次に、R4の公転角度位置からR5の公転角度位置に羽根4が移動する間に、その前縁が風上側に、その後縁が風下側になるように、羽根4は風力によって図10における時計回りに自転する。そして、R6の公転角度位置において揚力用規制部材(第1の規制部材51)と羽根4の係合部材45bとが互いに係合し(図6,7の一点鎖線で示す羽根の状態)、羽根4は風向に対して所定の角度を有する向きとなる。これにより、羽根4の揚力の方向(図10の矢印L1参照)が風車本体1の接線方向に略一致し、羽根4の揚力が風車Wの回転力となる。そうして、羽根4はR6の公転角度位置からR9の公転角度位置へと移動する。尚、この移動の間、羽根4と風車本体1の径方向との成す角度は、第1の規制部材51によって一定にされる。
【0063】
R9の公転角度位置においては、風向に対する羽根4の角度が略0°となるため、風車Wの回転力はほとんど得られないものの、風車Wの回転に対する抵抗もほとんどない。
【0064】
そして、R10の公転角度位置からR11の角度位置に羽根4が移動する間に、羽根4の後縁近傍に設けられたガイドローラ45cがガイドレール31のガイド面31a上を転動するようになり(図6,7の二点鎖線で示す羽根の状態)、羽根4は自転しながら公転する。これにより、羽根4の揚力の方向(図10の矢印L2参照)が風車本体1の接線方向に略一致し、羽根4の揚力が風車Wの回転力となる。そうして、羽根4はR11の公転角度位置からR12の公転角度位置へと移動する。尚、この移動の間、羽根4と風車本体1の径方向との成す角度は変化する。
【0065】
R12の公転角度位置からR1の公転角度位置に羽根4が移動する間に、ガイドローラ45cがガイドレール31から外れ、上記風力によって付勢される羽根4は、再び抗力用規制部材6と干渉する。このようにして羽根4は公転を繰り返し、その公転によって上記軸部材21が風車回転軸Aw回りに回転する。
【0066】
従って、本実施形態に係る風車Wは、風車回転軸Awを挟んだ一側(図10では右側)においては、羽根4の抗力により風車Wの回転力が得られ、その他側(図10では左側)においては、羽根4の揚力により風車Wの回転力が得られる。このことにより、風車Wの回転力を減少させることがなくなり、エネルギ変換効率が向上する。
【0067】
つまり、従来の抗力型風車では、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根の抗力によって風車本体1の回転力が得られるものの、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根の抗力が風車本体1の回転力にならない上に、風車本体1の回転力を減少させることになり、エネルギ変換効率が低下していた。
【0068】
これに対し、上記風車Wは、従来の抗力型風車において風車本体1の回転力を減少させていた側、つまり図10における左側においても回転力が得られることになるのである。
【0069】
特に第1の規制部材51と、ガイドレール31(第2の規制部材)とを備えることによって、風車回転軸Awを挟んだ他側において、その風上側と風下側とのそれぞれにおいて、羽根4の揚力を風車Wの回転力とすることができる。その結果、エネルギ変換効率をさらに向上させることができる。
【0070】
また、各羽根4は、その横断面形状が円弧翼型であることにより羽根4の揚力が大きくなるため、風車Wのトルク向上が図られる。
【0071】
さらに、上記風車Wでは、羽根回転軸Abを羽根4の翼弦方向中央に対してずらして設定すると共に、羽根4の公転に伴う、その羽根4の風向に対する角度の制御を、抗力用規制部材6及び揚力用規制部材(第1の規制部材51及びガイドレール31)によって行うため、羽根4の角度制御が自動的に行われることになる。そのため、羽根4の角度制御のためのエネルギが不要である。
【0072】
加えて、上記案内部材32が風向に対し所定の位置に移動することにより、風向が変化したときにも、その変化に対応して、羽根4の抗力が風車Wの回転力となる側と、羽根4の揚力が風車Wの回転力となる側とが、それぞれ設定される。つまり、風車Wが風向に対し無指向性となる結果、風車Wの稼働率が高まる。ここで、上記案内部材32は、その尾翼35によって風向に対し自動的に所定の位置に移動するため、風向を検出してガイドレールを移動させるといった、電気的な制御は不要である。
【0073】
(太陽熱発電モード)
次に、上記風車Wの、太陽熱発電モードにおける動作について説明する。太陽熱発電モードにおいては、上記風車Wは太陽熱を集熱する集熱装置として機能する。
【0074】
太陽熱発電モードにおいては、各羽根4は、その圧力面側が風車本体1の内方に、その負圧面側が風車本体1の外方にされかつ、その翼弦方向がヒンジ軸Ahの方向と略一致する向きにされる。ここで、上述した風力発電モードから太陽熱発電モードへの移行の際には、抗力用規制部材6の係止部62を待避状態とすることによって、風力発電モードにおいては圧力面側が風車本体1の外方に、その負圧面側が風車本体1の内方にされていた各羽根4を、羽根回転軸Ab回りに回転(自転)させて、圧力面側を風車本体1の内方に、負圧面側を風車本体1の外方にすることが可能になる。
【0075】
その状態において、2つの固定ボルト28d,28dをねじ込むことによって、下部回転軸47の回転を規制する。これによって、吸熱部7は、羽根4の反射面44aに相対して、その焦点に相当する位置に位置づけられる。
【0076】
そして、上記各羽根4の向きを、太陽光の照射方向に応じて調整する。つまり、方角に対する各羽根4の向きの調整は、風車回転軸Aw回りに風車Wを回転させて3つの羽根4の位置を調整することと、軸支持部材26に設けられたハンドル29cを操作して、その軸受部28を羽根回転軸Ab回りに回転させて、各羽根4の反射面の向きを調整することと、によって行う。また、仰角に対する各羽根4の向き(姿勢)の調整は、各下側アーム23に設けたウィンチ84を駆動することによって、各羽根4の傾斜角度を調整することによって行う(図2参照)。そうして各羽根4の反射面44aが太陽を臨むように、各羽根4の姿勢及び向きを調整し、各吸熱部7に太陽光を集光する。それにより、各吸熱部7において熱搬送媒体が加熱されることになる。
【0077】
このように、羽根4と吸熱部7とからなる集熱手段2は、風車回転軸Aw、羽根回転軸Ab、及びヒンジ軸Ahの3つの軸によってその位置を変えることが可能になり、反射面44aを太陽の照射方向に向ける自由度が高まり、太陽熱の集熱効率が向上する。
【0078】
尚、上記風車W、ウォームギヤ29及びウィンチ84をそれぞれ電動駆動に構成して、それらを太陽追尾システムによって制御するようにすることによって、太陽の照射方向に応じて各羽根4の向きを自動的に調整することも可能である。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る風車Wは、風力発電システムの風車として機能させることと、太陽熱発電システムの集熱装置として機能させることとが、切り替え可能であるため、自然エネルギを利用した発電システムの稼働率を高めることができる。
【0080】
また、上記風車Wのみを設置すればよいため、例えば風力発電システムの風車と、太陽熱発電システムの集熱装置との双方を設置する場合に比べて設置面積が小さくなり、設置効率の向上が図られる。
【0081】
(発電システムの構成)
次に、上記風車Wを含む発電システムの構成例について、図11を参照しながら説明する。
【0082】
上述したように、上記風車Wは、風力発電モードにおいて回転する軸部材21と、太陽熱発電モードにおいて太陽熱を集熱する3つの集熱手段2と、を備えており、上記軸部材21は、切替機構11を介して発電機12に連結される。また、上記各集熱手段2は、媒体経路14(上記支持パイプ71を含む)を介して熱・動力変換手段13に接続される。この熱・動力変換手段13は、吸熱部7において加熱される熱搬送媒体が搬送する熱エネルギを、機械動力に変換する手段であり、例えばスターリングエンジンや蒸気タービン等の、公知の、種々の構成を採用することが可能である。この熱・動力変換手段13の出力軸13aも上記切替機構11を介して発電機12に連結される。
【0083】
上記切替機構11は、上記風車W(軸部材21)及び熱・動力変換手段13(出力軸13a)を選択的に上記発電機12に連結させるものであり、この発電機12は、切替機構11の切替に応じて上記風車W、又は熱・動力変換手段13によって駆動されるようになっている。つまり、風力発電モードにおいては、上記発電機12が軸部材21の回転によって駆動され、太陽熱発電モードにおいては、上記発電機12が熱・動力変換手段13によって駆動されることになる。
【0084】
このように、本発電システムは、風力及び太陽熱の双方のエネルギを電気エネルギに変換することが可能になり、稼働率を向上させることができる。
【0085】
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0086】
すなわち、上記実施形態では、風車本体1が備える羽根4を3枚としたが、羽根4の枚数はこれに限られず、1枚であってもよく、任意に設定することが可能である。
【0087】
また、上記各羽根4は、その横断面形状が円弧翼型であったが、羽根の横断面形状はこれに限らず、適宜設定することが可能である。
【0088】
さらに、上記実施形態では、羽根4の角度を規制する手段として、羽根4や、羽根4に設けた部材45b、45cと係合する部材(第1の規制部材51,ガイドレール31、係止部62)を設けたが、羽根4の角度を規制する手段はこれに限らず、例えば羽根4の回転軸45a、47に係合する部材としてもよい。また、上記実施形態とは異なり、各羽根4の角度をその公転角度位置に応じて逐次変更するようにしてもよい。
【0089】
さらに、上記実施形態では、抗力用規制部材6の係止部62を待避可能にしているが、これに代えて揚力用規制部材である第1の規制部材51を待避可能にしてもよいし、係止部62及び第1の規制部材51をそれぞれ待避可能にしてもよい。
【0090】
さらに、上記実施形態では、各羽根4の姿勢(傾倒角度)の調整を、ワイヤ85及びウィンチ84によって行っているが、各羽根4の姿勢を調整する構成はこれに限るものではない。
【0091】
さらに、上記実施形態における発電システムでは、風力発電モードと太陽熱発電モードとに切り替え可能となっているが、太陽熱発電モードに切り替え可能でなくてもよい。つまり、吸熱部7やウィンチ84、ワイヤ85等は省略可能である。その場合、発電システムとしては、軸部材21を直接的に発電機12に連結すればよい。
【0092】
加えて、上記実施形態における発電システムは一例であり、本風車Wを含む発電システムは種々の形態を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、風力エネルギを利用した発電システムに有用であり、特にそのエネルギ変換効率を高める上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態に係る風車の全体を示す概略斜視図である。
【図2】図1の矢印A方向に見た、一部破断の矢視図である。
【図3】羽根の斜視図である。
【図4】羽根の縦断面図である。
【図5】羽根の正面図である。
【図6】羽根と上側アームとの支持部分を拡大して示す一部破断の正面説明図である。
【図7】羽根と上側アームとの支持部分を拡大して示す平面説明図である。
【図8】羽根と下側アームとの支持部分を拡大して示す正面説明図である。
【図9】羽根と下側アームとの支持部分を拡大して示す一部破断の側面説明図である
【図10】羽根の公転に伴う羽根の自転の様子を示す平面
【図11】風車を備えた発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0095】
1 風車本体
4 羽根
6 抗力用規制部材
21 軸部材(支持部材)
22 上側アーム(支持部材)
23 下側アーム(支持部材)
31 ガイドレール(揚力用規制部材、第2の規制部材、角度制御手段)
32 案内部材
35 尾翼(移動手段)
51 第1の規制部材(揚力用規制部材、角度制御手段)
Ab 羽根回転軸
Aw 風車回転軸
W 風車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの羽根と、
垂直方向に延びる風車回転軸回りに回転可能な軸部材を有すると共に、上記羽根を、上記軸部材の回転と同期して上記風車回転軸を中心に公転可能に支持する支持部材と、を含む風車本体を備え、
上記羽根は、略垂直方向に延びる羽根回転軸回りに自転可能に上記支持部材に支持されており、
上記風車本体は、上記羽根の公転に伴い該羽根の風向に対する角度を所定の角度に制御する角度制御手段をさらに含み、
上記角度制御手段は、風向に対して上記風車回転軸を挟んだ一側では、上記羽根の角度を、それに発生する抗力が風車本体の回転力となる角度にする一方、上記風車回転軸を挟んだ他側では、上記羽根の角度を、それに発生する揚力が風車本体の回転力となる角度にする垂直軸風車。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直軸風車において、
上記羽根は、その横断面が翼型であり、該羽根の羽根回転軸は、その翼弦方向の中心に対して前縁側にずれて設定されており、上記羽根は、その前縁が風上側となるように風力によって付勢され、
上記角度制御手段は、
風向に対して上記風車回転軸を挟んだ一側において上記風力によって付勢される羽根と係合することにより、上記羽根の角度を、それに発生する抗力が風車本体の回転力となる角度に規制する抗力用規制部材と、
上記風車回転軸を挟んだ他側において上記風力によって付勢される羽根と係合することにより、上記羽根の角度を、それに発生する揚力が風車本体の回転力となる角度に規制する揚力用規制部材と、を含む垂直軸風車。
【請求項3】
請求項2に記載の垂直軸風車において、
上記揚力用規制部材は、
上記風車回転軸を挟んだ他側における風下側で、上記風車本体の径方向に対する羽根の角度を公転に対して一定にする第1の規制部材と、
上記風車回転軸を挟んだ他側における風上側で、上記風車本体の径方向に対する羽根の角度を公転に伴い変更させる第2の規制部材と、を含む垂直軸風車。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直軸風車において、
上記第2の規制部材は、上記羽根と係合することによって該羽根を公転に伴い自転させるガイドレールであり、
上記ガイドレールは、上記風車回転軸回りに回動可能に設けられており、
上記風車本体は、上記ガイドレールを、風向に応じて上記風車回転軸を挟んだ他側における風上側の所定位置に位置づける移動手段をさらに含む垂直軸風車。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の垂直軸風車と、
上記軸部材に連結されかつ、該軸部材の回転によって駆動される発電機とを備えた発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−274965(P2006−274965A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97439(P2005−97439)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(505117054)白浜町 (3)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(390036515)株式会社鴻池組 (41)
【出願人】(505115706)高田機工株式会社 (7)
【出願人】(505117331)
【出願人】(505115670)
【出願人】(505117102)
【Fターム(参考)】