説明

型、インプリント方法及び物品製造方法

【課題】ショット領域と型との位置合わせとインプリント処理後のエッチング処理との双方を円滑に行う技術を提供する。
【解決手段】インプリント装置用の型3は、基板側の表面に、パターンを有する中央領域11と一対の第1周辺領域15とを含む。前記中央領域は、x軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有する。前記一対の第1周辺領域は、前記中央領域の前記y軸に平行な一対の辺を含み、前記中央領域の外側に配置される。第1周辺領域は、型側マーク7が形成され、インプリント処理のときに型と基板上に形成された基板側マーク6との間に樹脂が充填されない第1領域15aと、型側マークが形成されず、インプリント処理のときに型と基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填される第2領域15bとからなる。第2領域は、中央領域の中心を通り前記y軸に平行な直線に対して第1領域と線対称な領域を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型、インプリント方法及び物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケ−ルの微細パタ−ンの転写を可能にする技術であり、磁気記憶媒体や半導体デバイスを量産するためのナノリソグラフィ技術の1つとして実用化されつつある。インプリント技術では、電子線描画装置等の装置を用いて微細パタ−ンが形成された型を原版としてシリコン基板やガラスプレ−ト等の基板上に微細パタ−ンが形成される。この微細パタ−ンは、基板上に樹脂を塗布し、その樹脂を介して基板に型のパタ−ンを押し付けた状態でその樹脂を硬化させることによって形成される。現時点において実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法及び光硬化法がある。
【0003】
熱サイクル法では、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板に型を押し付け、冷却した後に樹脂から型を引き離すことによりパタ−ンが形成される。光硬化法では、紫外線硬化樹脂を使用し、樹脂を介して基板に型を押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂から型を引き離すことによりパタ−ンが形成される。熱サイクル法は、温度制御による転写時間の増大及び温度変化による寸法精度の低下を伴うが、光硬化法には、そのような問題が存在しないため、現時点においては、光硬化法がナノスケ−ルの半導体デバイスの量産において有利である。
【0004】
これまで樹脂の硬化方法や用途に応じて多様なインプリント装置が実現されてきた。半導体デバイス等の量産向け装置を前提とした場合、ステップアンドフラッシュ式インプリントリソグラフィ(以下、SFIL)を応用したインプリント装置が有効である。SFILに適合したインプリント装置が特許文献1に開示されている。このようなインプリント装置は、基板ステ−ジ、樹脂の塗布機構、インプリントヘッド、光照射系及び位置決めマ−ク検出機構を有する。上記のようなインプリント装置では、基板と型とを位置合わせするための計測は、型を基板に押し付けたときに型側マークと基板側マークをショット領域ごとに光学的に同時に観察し、ずれ量を補正して硬化させるいわゆるダイバイダイ方式を採用していた。
【0005】
ダイバイダイ方式では、インプリント処理の際に型側マークに樹脂が充填されてしまう。型を形成する石英は樹脂とほぼ同等の屈折率であるため、そこに樹脂が充填されると検出に十分なコントラストが得られなくなってしまう。そこで、特許文献1では、インプリント処理時にも型側マークに樹脂が充填されないような工夫を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−509825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インプリント処理を行うときに、型と基板を接触させて押し付け合っても、型と基板との間には微小な間隔が残る。この間隔に樹脂が入るため、パターンの有る無しに関わらずインプリント処理がなされた基板上には、形成されたパターンと同時に、樹脂の薄膜が一面に構成される。この薄膜のことを残膜と呼ぶことがある。
しかし、特許文献1に記載されるように、マーク部に樹脂を充填しない構造では、マーク部に樹脂の薄膜が形成されないため、インプリント処理後のエッチング工程などにおいて、実素子パターン部とマーク部でエッチング状態の差が出てしまう。
【0008】
そこで、本発明は、ショット領域と型との位置合わせとインプリント処理後のエッチング処理との双方を円滑に行うために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの側面は、パターンが形成され、基板に塗布された樹脂にインプリント処理によって前記パターンを転写するためのインプリント装置用の型であって、前記型の前記基板側の表面は、前記パターンを有する中央領域と一対の第1周辺領域とを含み、前記中央領域は、xyz座標系のx軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有し、前記一対の第1周辺領域は、前記中央領域の前記y軸に平行な一対の辺を含み、前記中央領域の外側に配置され、前記一対の第1周辺領域は、型側マークが形成され、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填されない第1領域と、型側マークが形成されず、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填される第2領域と、からなり、前記第2領域は、前記中央領域の中心を通り前記y軸に平行な直線に対して前記第1領域と線対称な領域を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ショット領域と型との位置合わせとインプリント処理後のエッチング処理との双方を円滑に行うインプリント装置用の型に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インプリント装置を示した図である。
【図2】型側マークおよび基板側マークを示した図である。
【図3】従来のインプリント装置とインプリント方法を示した図である。
【図4】従来のインプリント装置の変形例とインプリント方法を示した図である。
【図5】従来のインプリント方法を示した図である。
【図6】本発明の型とインプリント方法を示した図である。
【図7】本発明のインプリント方法を示した図である。
【図8】本発明のインプリント方法を示した図である。
【図9】本発明のインプリント方法の別例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
インプリント装置は、図1に示すように、基板ステージ1に支持された基板2上のショット領域と型3との位置合わせを行うため、型3を支持する支持体(ヘッド)4に検出器(スコープ)5を固定している。スコープ5は、基板2上の各ショット領域に構成された位置合わせを行うための指標となる基板側マーク6と型3に形成された型側マーク7とを近接させて観察することで、基板2と型3との相対位置を計測する。塗布機構8は揮発性が高い樹脂を用いる場合、ショット領域毎に又は数ショット領域毎に、インプリント処理を行うべきショット領域に樹脂を塗布する。なお、揮発性が低い樹脂を用いる場合は、基板2の全面に樹脂を塗布した後でインプリント処理を行っても良い。インプリント装置は、樹脂を塗布し、塗布された樹脂に型3を押し付けた状態で樹脂を硬化させるインプリント動作を基板2のショット領域毎に行う。
【0014】
図2を用いて、モアレ模様を用いた型側マークと基板側マークとの相対位置を計測する手法を説明する。図2a、図2bに示される、ピッチの異なる2種類の格子マーク7,6を型3と基板2とにそれぞれ構成する。これらの型側マーク7と基板側マーク6とを重ねると、図2cのように、明暗の縞模様が生じる。この縞模様がモアレ模様である。モアレ模様は、型側マーク7と基板側マーク6の相対位置関係によって明暗の位置が変化する。例えば、2つのマーク7,6の片方を少しだけ右へずらしてやると、図2cに示されるモアレ模様は、図2dのようなモアレ模様に変化する。このモアレ模様は、2つのマーク7,6間の実際のずれ量を拡大し大きな明暗縞として発生するため、スコープ5の解像力が低くても精度良く2つのマーク7,6の相対位置関係を計測することができる。これを利用して、型3と基板2の相対位置を算出する。なお、モアレ信号にこだわることはなく、例えば型側マーク7と基板側マーク6とを結像光学系で同時に計測し、その相対位置を計測することでも可能である。
【0015】
ダイバイダイ計測を行うため、型3の実素子領域を基板2のインプリント位置へ樹脂を介して接触させた状態で基板側マーク6と型側マーク7との相対位置計測を行う。そこで算出した値を用いて型3と基板2との相対位置を補正し、正しい重ね合わせ位置に来たときに紫外線や熱により樹脂を硬化させて型3のパターンを基板2に転写する。
【0016】
図3はインプリント部分を拡大した模式図である。基板2上のショット領域間のスクライブライン9上に、アライメントマーク(基板側マーク)6が構成されている。型3の中央領域11に形成されたパターンを基板2上の所望の実素子領域10へ転写する。パターンとは、実際のデバイスに組み込まれるパターンのことを指す。このとき、スコープ5を用いて基板側マーク6と型側マーク7とを観察し、それらの相対位置を算出する。なお、中央領域11のみを樹脂12に接触させるため、中央領域11を型の中で少し凸部にしている。図3中のこの凸部14をメサと呼ぶ。
【0017】
算出された相対位置情報に基づいて、型3もしくは基板2の位置を補正し、押印することで型3の中央領域11のパターンを実素子領域10へ重ね合わせ精度よく転写する。このとき特に工夫をしていない場合、図3bに示されるように、インプリント処理時に型側マーク7に樹脂が充填されてしまう。型3を通して、基板側マーク6と型側マーク7とを同時計測する場合、型3は石英のような光透過性の物質を用いる。この場合、型3と樹脂12との屈折率がほぼ同じであるため、型側マーク7が見えないもしくは著しくコントラストが低下し、接液した状態での相対位置計測ができなくなる。
【0018】
そこで、インプリント処理時にも型側マーク7に樹脂が充填されない工夫を3つあげる。
(1)図4aの型3は、型側マーク7の周辺に溝13を構成し、樹脂を実素子領域10のみに塗布することで、樹脂12が型側マーク7へ流れ込んでこないように構成されている。これによると、インプリント処理の際に基板2上の樹脂12は広がるが、溝13でせき止められるため、図4bのように、樹脂12が型側マーク7に流れ込んでくるのを抑制する。
(2)図4cの型3では、型側マーク7がメサ部14と完全に分離して構成されている。型側マーク7は、図4aの例よりもさらにメサ部14と分離しているため、実素子領域10へ塗布された樹脂12は、図4dに示されるように、型側マーク7へ流れ込むことはない。
(3)図4eの型3では、メサ内の型側マーク7を形成する凸構造を中央領域11より低くすることで、樹脂12と型側マーク7とが接しないように構成された例である。樹脂12と型側マーク7が接しないため、図4fのように、型側マーク7内に樹脂12が充填されることはない。
【0019】
以上のように、インプリント処理で型側マーク7内に樹脂12が充填されないようにする工夫は可能であり、樹脂12が型側マーク7内に充填されなければ、型側マーク7を検出できなくなることはなくなる。しかし、樹脂12が型側マーク7に充填されなければ基板側マーク6は樹脂に覆われることなく、残ってしまう。
【0020】
図4a、図4c又は図4eの型3を用いてインプリント処理を行った結果を図5に示す。図5aは、インプリント処理される基板2の下地に基板側マーク6のパターンが入った基板である。図5bは、型3を示している。図5cは、図5bのX−Xのラインの断面構造である。ここでは、一例として、図4eの型構造にした。図5dは、図5aの基板2に、図5bの型3をインプリント処理したあとの基板2の様子を示している。当然ながら、インプリント処理時に型側マーク7に樹脂が充填されないような構造になっているため、基板2のハッチング部には樹脂が存在しているが基板側マーク6の部分には樹脂が存在していない。この状態では、次工程で基板2の全面を一律にエッチングする際に、樹脂の存在しない部分と樹脂の存在する部分(ハッチング部分)とでエッチングに差が出てしまい、製品の品質に関わる不具合となる。
【0021】
そこで、本発明では、インプリント装置用の型として、以下のような型3を使用する。図6bに、型3の上面図を示し、図中X−X’ラインでの断面構造を図6cに示す。また、図6aは、基板2上の1つのショット領域の近傍を示している。基板2の表面は、図6aに示されるように、型3のパターンが転写される実素子領域10と、それを取り囲むスクライブライン領域9とを含む。スクライブライン領域9は、ショット領域の外側に形成された複数の基板側マークの領域を構成している。スクライブライン領域9は、xyz座標系のy軸に平行な方向に沿って延びる第1スクライブライン領域9aとx軸に平行な方向に沿って延びる第2スクライブライン領域9bとを含む。
【0022】
型3の基板側の表面は、実素子領域10に転写するパターンを有する中央領域11と一対の第1周辺領域15と、一対の第2周辺領域16とを有する。中央領域11は、x軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有する。一対の第1周辺領域15は、y軸に平行な方向に沿って延びる第1スクライブライン領域9aに対応して、中央領域11のy軸に平行な一対の辺を含む一対の直線のそれぞれの外側に中央領域11を挟むように配置される。第1周辺領域15は、第1領域15aと第2領域15bとからなる。第1領域15aには、型側マーク7が形成され、インプリント処理のときに型3と第1スクライブライン領域9aに形成された基板側マーク6との間に樹脂が充填されない。第2領域15bには、型側マーク7が形成されず、インプリント処理のときに型3と第1スクライブライン領域9aに形成された基板側マーク6との間に樹脂が充填される。
【0023】
一対の第2周辺領域16は、x軸に平行な方向に沿って延びる第2スクライブライン領域9bに対応して、中央領域11のx軸に平行な一対の辺を含む一対の直線のそれぞれの外側に中央領域11を挟むように配置される。第2周辺領域16は、第3領域16aと第4領域16bとからなる。第3領域16aには、型側マーク7が形成され、インプリント処理のときに型3と第2スクライブライン領域9bに形成された基板側マーク6との間に樹脂が充填されない。第4領域16bには、型側マーク7が形成されず、インプリント処理のときに型3と第2スクライブライン領域9bに形成された基板側マーク6との間に樹脂が充填される。
【0024】
図6dは、図6aに示されたあるショット領域に対してインプリント処理がなされた後の基板上の様子を示している。インプリント処理が行われたショット領域のうち、実素子領域10と、スクライブライン領域9の中で型3の第2領域15b及び第4領域16bの直下に位置した領域には樹脂の層が形成される。一方、スクライブライン領域9のうち、型3の第1領域15a及び第3領域16aの直下に位置した領域には、当該ショット領域に対するインプリント処理では樹脂が塗布されない。図6bには、第1領域15aと第2領域15bとが互いにy軸に対して平行な直線に対して線対称の関係にあり、また、第3領域16aと第4領域16bとが互いにx軸に対して平行な直線に対して線対称の関係にある。しかし、第2領域15bは、そのすべてがy軸に平行な直線に対して第1領域15aと線対称の関係にある必要はなく、第1領域15aと線対称な領域を含めばよい。また、第2領域15bが第1領域15aと線対称な領域を含めば、第4領域16bは第3領域16aと線対称な領域を含まなくてもよい。
【0025】
図6b、図6cにおいて、型側マーク7はインプリント時にも樹脂が充填されない構造を有している。型側マーク7の構成された第1領域15aとショット領域の中心を通ってY軸と対称な領域15b(図6bのハッチング部分である第2領域)が形成されている。第2領域15bは、中央領域11のパターンを形成するための凸部の表面と同じ高さで平坦に形成されている。同様に、型側マーク7の構成された第3領域16aとショット領域の中心を通ってX軸と対称な領域16b(図6bのハッチング部分である第4領域)が形成されている。第4領域16bは、パターンを形成するための凸部の表面と同じ高さで平坦に形成されている。図6dのスクライブライン9の領域のうちハッチング部分には、当該領域に対向する型3の第2領域15b、第3領域16bに型側マーク7が形成されておらず、薄い樹脂層しか形成されないため、薄い樹脂層の下のマーク6を観察することは容易である。
【0026】
このようなインプリント処理をショットレイアウトにしたがって繰り返し実行した模式図のうち、基板2の上面図が図7で、基板2及び型3のX−X’の位置での断面図が図8である。図7、図8は、図7a中の4つのショット領域をショット領域Aからショット領域Dの順にインプリント処理する様子を示している。なお、ショット領域Aに来るまでに、図中矢印の順でインプリント処理が行われてきたものとする。塗布機構8を用いてショット領域Aのインプリントする領域に樹脂を塗布する(図8a)。インプリント装置は、ショット領域Aにインプリント処理を行う(図7b、図8b)。基板側マーク6Aと基板側マーク6Aは、そのまま観察でき、且つインプリント処理時にそれぞれの基板側マーク6A,6Aと位置合わせされる型側マーク7には樹脂が充填されないため、コントラスト良く高精度に相対位置計測を行うことができる。また、基板側マーク6A、6Aの上面は、すでにインプリント処理されているが、前述したように薄い樹脂層が形成されているだけであるため、そこを通しての観察は可能である。樹脂の光透過率が低い場合など、樹脂が被っているために基板側マーク6A、6Aが観察できない場合には、インプリント処理がなされない基板側マーク6A、6Aを用いて位置合わせを行う。
【0027】
続いて、インプリント装置は、塗布機構8を用いて隣接するショット領域Bのインプリント処理を行う領域に樹脂を塗布する(図8c)。そして、インプリント装置は、隣接するショット領域Bをインプリント処理する(図7c、図8d)。ショット領域Bをインプリント処理するとき、基板側マーク6B,6Bは、樹脂が被っておらずそのまま観察でき、且つインプリント処理時に基板側マーク6B,6Bと位置合わせを行う型側マーク7には樹脂が充填されない。そのため、基板側マーク6B,6Bと型側マーク7とを用いてコントラスト良く高精度に相対位置計測を行うことができる。この際、基板側マーク6B、6Bに対して、すでにインプリント処理されているが、前述したように薄い樹脂層が形成されているだけである。そのため、薄い樹脂層を通して基板側マーク6B、6Bの観察は可能であり、かつ、薄い樹脂層はすでに硬化しているため、型側マーク7に樹脂が充填されることはない。ショット領域Aのインプリント処理時に、インプリント処理されなかった基板側マーク6Aは、隣接するショット領域Bがインプリント処理されるときに、樹脂で覆われる(図7c)。
【0028】
このようにして、残りのショット領域Cおよびショット領域Dをインプリント処理した結果の基板2の状態を示すのが図7dと図7eである。ショット領域Aをインプリント処理した際に、インプリント処理されなかった基板側マーク6Aは、隣接するショット領域Dをインプリント処理する際に樹脂で覆われる様子が分かる。ショット領域Aに着目すると、ショット領域Aに対して行うインプリント工程が、ショット領域Aを囲むスクライブライン領域9に、樹脂が充填されない領域と樹脂が充填される領域とを形成するようにインプリントする第1のインプリント工程で該当する。また、ショット領域Aに隣接するショット領域B等に対して行うインプリント工程が、ショット領域Aを囲むスクライブライン領域9で樹脂が充填されなかった領域に樹脂を充填するように隣接ショット領域をインプリントする第2のインプリント工程に該当する。
【0029】
最初のショット領域やレイアウト端部のショット領域は、上記一連のインプリント処理では樹脂で覆われない部分が発生する。しかしながら、先にも述べたように全面が同一条件でなければ、後のエッチング工程で場所依存が発生してしまう。そこでウエハ端は、欠けショットとしてインプリント処理する可能性があり、その際に同様にして未充填領域にインプリント処理を行う。
【0030】
以上のように、本手法では、実素子パターンをインプリント処理する際に位置合わせに用いる基板側マークに対してインプリント処理せず、隣接するショット領域をインプリント処理する際に前記基板側マークに対してインプリント処理する。そして、そうすることで、高精度なアライメントと、基板面内における樹脂のインプリント状態の均一化を両立することができる。
【0031】
なお、揮発性が低い樹脂を基板の全面に塗布した場合、基板面に樹脂層は構成されるが、薄い樹脂層の厚みをインプリント部分と合わすため、インプリント工程は必要であり、本手法は有効である。また、本実施形態では、各ショット領域の周囲4辺に構成した基板側マーク6を観察することで、計測精度を向上させるとともにショット領域の大きさやひずみなども計測することを念頭に置いた。しかし、ショット領域のXY方向の位置ずれだけを検出するのでよければ、ショット領域の1辺に構成した基板側マーク6のみを観察するだけで良いため、図9のように丸枠を付したマークでよい。図9では、図7と同様の手順でインプリントを進めるが、図中、各ショット領域の下辺のマークのみを計測してインプリント処理を進めるため、単純な型形状で実施可能である。
【0032】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成され、基板に塗布された樹脂にインプリント処理によって前記パターンを転写するためのインプリント装置用の型であって、
前記型の前記基板側の表面は、前記パターンを有する中央領域と一対の第1周辺領域とを含み、
前記中央領域は、xyz座標系のx軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有し、
前記一対の第1周辺領域は、前記中央領域の前記y軸に平行な一対の辺を含み、前記中央領域の外側に配置され、
前記一対の第1周辺領域は、
型側マークが形成され、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填されない第1領域と、
型側マークが形成されず、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填される第2領域と、
からなり、
前記第2領域は、前記中央領域の中心を通り前記y軸に平行な直線に対して前記第1領域と線対称な領域を含む、
ことを特徴とする型。
【請求項2】
前記型の前記基板側の表面は、一対の第2周辺領域を含み、
前記一対の第2周辺領域は、前記中央領域の前記x軸に平行な一対の辺を含み、前記中央領域の外側に配置され、
前記一対の第2周辺領域は、
型側マークが形成され、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填されない第3領域と、
型側マークが形成されず、インプリント処理のときに前記型と前記基板上に形成された基板側マークとの間に樹脂が充填される第4領域と、
からなり、
前記第4領域は、前記中央領域の中心を通り前記x軸に平行な直線に対して前記第3領域と線対称な領域を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の型。
【請求項3】
前記型側マークは、前記基板側マークとの相対位置が計測できる位置に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型。
【請求項4】
前記第2領域及び前記第4領域は、前記中央領域の表面と同じ高さ位置で平坦に形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の型。
【請求項5】
請求項1に記載の型を基板に塗布された樹脂と接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板のショット領域毎に行うインプリント方法であって、
前記第1領域の直下に位置して樹脂が充填されない基板側マークと前記第1領域に形成された型側マークとを観察することによって、インプリント処理を行うべきショット領域と前記型とを位置合わせする工程と、
前記位置合わせされたショット領域における前記第1領域の直下の第1スクライブライン領域には樹脂を充填することなくインプリント処理する工程と、
をショット領域ごとに実行し、
あるショット領域のインプリント処理を行うときに前記第1領域の直下に位置して樹脂が充填されなかった第1スクライブライン領域は、当該あるショット領域に隣接するショット領域のインプリント処理を行うときに、前記第2領域の直下に位置して樹脂が充填される、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の型を基板に塗布された樹脂と接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板のショット領域毎に行う請求項5に記載のインプリント方法であって、
前記位置合わせする工程で、前記第3領域の直下に位置して樹脂が充填されない基板側マークと前記第3領域に形成された型側マークとをさらに観察し、
前記インプリント処理する工程で、前記位置合わせされたショット領域における前記第3領域の直下の第2スクライブライン領域に樹脂を充填せず、
あるショット領域のインプリント処理を行うときに前記第3領域の直下に位置して樹脂が充填されなかった第2スクライブライン領域は、当該あるショット領域に隣接するショット領域のインプリント処理を行うときに、前記第4領域の直下に位置して樹脂が充填される、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項7】
前記位置合わせする工程で、未だ樹脂で覆われていない基板側マークと前記型側マークとを観察することによって、前記インプリント処理を行うべきショット領域と前記型とを位置合わせする、ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記位置合わせする工程で、他のショット領域におけるインプリント処理によって既に充填されて硬化した樹脂で覆われた基板側マークと前記型側マークとを観察することによって、前記インプリント処理を行うべきショット領域と前記型とを位置合わせする、ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のインプリント方法。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載のインプリント方法を用いてパタ−ンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パタ−ンを形成された基板を加工する工程と、
を含む物品の製造方法。
【請求項10】
基板上に塗布された樹脂とパターンが形成された型とを接触させることで前記基板上のショット領域に前記パターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域の外側に形成された複数の基板側マークの領域に、前記型と前記基板の間に樹脂が充填されない領域と、前記型と前記基板の間に樹脂が充填される領域とを形成するように、前記ショット領域をインプリントする第1のインプリント工程と、
前記樹脂が充填されない領域に、前記樹脂が充填されるように、前記ショット領域に隣接するショット領域をインプリントする第2のインプリント工程と、
を有し、
前記第1のインプリント工程で、前記樹脂が充填されない領域の基板側マークと前記型に形成された型側マークとを観察することによって、前記基板上の前記ショット領域と前記型に形成された前記パターンとを位置合わせを行う、
ことを特徴とするインプリント方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−164832(P2012−164832A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24437(P2011−24437)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】