説明

型として発泡体を使用するアクリルポリマーの熱成形方法、およびそれから成形された製品

本発明は、アクリルポリマー含有シートを型内で加熱することにより熱成形する方法であって、型が(a)加熱されたシートと接触すると劣化する発泡体と、(b)発泡体の劣化を防止するため、シートと発泡体の間に配置される遮熱材とを含む方法に関する。多くの用途では、得られた製品は発泡体を除去せずに使用可能である。また、発泡体は、長距離輸送の際などにアクリルシートを保護する役割を担うことができる。本発明は、また、多層製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルポリマーを含む組成物から作製されたシートを熱成形する方法、およびそれにより成形された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル含有組成物は、機能と外観の美しさが共に要求されるキッチンのカウンタートップ、シンクおよび内壁材のために、建築産業において特に有用な3次元固体表面材としてよく知られており、DuPont社のCorian(登録商標)固体表面材はその一例である。固体表面材は、色彩および美観を広範囲に選択できる無孔質で容易に清浄化可能な表面を有するといった固有の品質が消費者を惹きつけている。建築産業では、アクリル含有組成物は一般にフラットなシートとして使用されている。しかし、アクリル含有組成物は、フラットなシートを出発材料として使用して熱成形することが可能である。
【0003】
アクリル固体表面シートを熱成形しようとする試みは、経済的および実際的な実現可能性を制約する数多くの困難にぶつかっているが、それは主に従来の成形技術の欠陥によるものである。1つの問題は、熱成形品の価値と比較して熱成形用の型の製作コストが高いことにある。別の問題は、型の重量が重いことであり、特に型に長寿命が要求される場合に重くなる。
【0004】
熱成形用の型は、中密度ファイバーボードおよび合板などの材料から作られている。これらの材料は手軽に入手でき、容易に製造でき、また一般に十分な等方性を有している。これらの材料から作られた型は、アクリルシートの成形に必要な温度で直ちに劣化することはないが、熱成形温度に繰り返し暴露されると層状剥離が生じるおそれがある。特に、同じ型で多数の部品を熱成形するときには、型はアルミニウムなどの金属からも作られる。全体的に見れば、型材料の選択は、部品1個当たりの型のコストが最も安価になるように、型の寿命と初期費用とのバランスから決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートの再成形に必要な高温に耐える軽量の型を使用してアクリル含有シートを経済的に熱成形する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、摂氏80〜130度の範囲のガラス転移点を有するアクリルポリマーを含む組成物を含有するシートの成形方法であって、
(a)摂氏115〜200度の範囲の温度にシートを加熱する工程と、
(b)加熱シートの表面に高圧または真空下の差圧を加えてシートを変形させる工程であって、シートは、シートを変形させることのできる型で支持されており、型は、
(i)シートが加熱される最高温度で物理的に劣化する発泡体と、
(ii)シートと発泡体の間に配置され、少なくとも0.05ft2・°F・h/BTUの熱抵抗値を有することを条件として、発泡体の表面形状に追随する遮熱材と、
を含む、工程と
を含む成形方法に関する。
【0007】
得られた物品を使用するにあたり、発泡体と遮熱材は取り除いてもよい。あるいは、発泡体を輸送用および緩衝用材料として使用し、輸送後に初めて取り除くようにしてもよい。他の実施態様では、発泡体と遮熱材は成形シートとともに残され、最終使用でも取り除かれなくてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
シート状のアクリル含有ポリマー
本発明の型は、アクリルポリマーを含有するシートの熱成形に使用される。好ましいアクリルポリマーはメチルメタクリレートである。説明の目的で記載すれば、シートは、メチルメタクリレートモノマーに溶解したメチルメタクリレートポリマー(ポリマー−イン−モノマー溶液)、重合開始剤、および無機充填剤、好ましくは、Ray B.Dugginsの米国特許第3,847,865号明細書に開示されているようなアルミナ三水和物を含有する溶液から形成される。アクリルポリマーは摂氏80〜130度の範囲のガラス転移点を有する。
【0009】
アクリルポリマーは、シート重量に対して通常15〜80%、好ましくは20〜45%含まれ、メチルメタクリレートのホモポリマー、およびメチルメタクリレートと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、ビニルアセテート、スチレン、アルキルアクリレート、アクリロニトリル、アルキルメタクリレート、アルキレンジメタクリレートおよびアルキレンジアクリレートなどの多官能性アクリルモノマー)とのコポリマーを含んでいてもよい。さらに、シートはポリエステルなどの他のポリマーを少量含有していてもよい。
【0010】
シートは、難燃性を向上させるために、通常20〜85重量%、好ましくは約55〜80重量%の無機充填剤を含有する。充填剤として有用な材料としては、チタン酸塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リトポン、カオリン、マグネサイト、マイカ、酸化鉄、二酸化珪素、および各種のシエナが挙げられる。好ましい充填剤は、上で参照したDugginsの特許に開示されているアルミナ三水和物である。任意選択により、シート材料は、ABS樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、エチレンコポリマー、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリル、ポリジエン、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレア、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエステルなどの、各種の、充填および非充填の、顔料または染料が添加された、不溶性または架橋されたポリマーを含む装飾用粒子を含有してもよい。他の有用で巨視的な半透明および透明な装飾用粒子は、めのう、雪花石膏、曹長石、方解石、玉髄、チャート、長石、フリント石英、ガラス、孔雀石、大理石、雲母、黒曜石、オパール、水晶、ケイ石、石膏岩、砂、シリカ、石灰華、珪灰石などの天然または合成の鉱物または物質;布、天然および合成の繊維;並びに金属片である。
【0011】
アクリル含有組成物をキャスト成形またはモールド成形し、硬化させて、半透明性、耐候性、家庭で普通に見られる物質に対する防汚性、難燃性、および耐応力割れ性などの特性の重要な組み合わせを有するシート構造体を製造する。シートは、さらに、切断および研磨などの従来の技術により機械加工することができる。この特性の特定の組み合わせにより、そのような構造体はキッチンまたはバスルームのカウンタートップ、水の跳ね返りパネル、タオルラックなどのモールド成形品などとして特に有用なものになる。適切なシート厚さは、例えば、10分の1〜10分の8インチ(1/10インチ(”)〜8/10インチ)の範囲である。
【0012】
発泡体
上記アクリル組成物の熱成形において型として使用する発泡体は、熱成形温度範囲内、すなわち摂氏115〜200度で劣化する。そのような劣化は、一般に物理的または化学的劣化であり、発泡体の強度の低下および/または表面特性の低下をもたらす。例を挙げれば、アクリル含有組成物に面する発泡体の表面は、軟化、溶融および/または炭化する。しかしながら、次項で詳述するように、そうしなければ熱成形プロセスを遂行するために必要な高温および時間で劣化するであろう発泡体は、遮熱材の使用によって保護される。
【0013】
適切な発泡体の例を挙げれば、Michigan州、MidlandのDow Chemical社から入手可能なTrymer(商標)発泡体製品群、またはIndiana州、IndianapolisのElliot CompanyによるElfoam製品群などのポリイソシアヌレート発泡体、およびポリスチレン発泡体がある。押出成形されたポリスチレン発泡体材料は、ハンドツールからコンピュータ制御CNCパワーツールに至る手段により容易に成形することができる。押出成形されたポリスチレン発泡体の例としては、Ohio州、ToledoのOwens Corning Insulating Systems、LLCから入手可能なFORMULAR(登録商標)硬質発泡体断熱材;Michigan州、MidlandのDow社によるSTYROFOAM(登録商標)押出成形ポリスチレン断熱材;およびGeorgia州、AtlantaのPactiv社から入手可能なGreen−Guard(登録商標)が挙げられる。
【0014】
適切な発泡体に要求される圧縮強度は、熱成形プロセスで使用する圧力に応じて容易に決定できることは理解できよう。一般に、圧力が高くなれば、構造的剛性を維持するために、発泡体に要求される圧縮強度は増大する。発泡体の圧縮強度に影響する因子としては、発泡体密度および発泡体の化学組成が挙げられる。一般に、(同じ化学組成であると仮定すると、)発泡体の密度が高いほどより大きな圧力に耐え得る、より硬質な発泡体となる。発泡体の選定には、温度の上昇とともに圧縮強度が低下することを考慮する必要がある。
【0015】
1層もしくはそれ以上の層からなる発泡体を使用することができ、それらの層の化学組成は必ずしも同じである必要がないことは理解できよう。発泡体を最終物品中に残す場合、1つのタイプの発泡体を遮熱材に対向させ、別のタイプの発泡体を遮熱材とは反対方向に対向させることが望ましい。一般に、遮熱材に対向する発泡体表面は、直接または接着剤を介して遮熱材と接する。
【0016】
熱成形プロセスにおける発泡体の機能は、型として働くことと、そのようなプロセスで使用する圧力に耐えることである。真空条件の使用が熱成形の範囲に含まれるため、使用圧力は大気圧より高い場合も低い場合もある。
【0017】
遮熱材
遮熱材は、発泡体を、熱成形されているアクリル含有シートの熱から保護する。前項に記載したように、遮熱材を伴わない発泡体は、さもなければ、熱成形に使用した温度で軟化、溶融および/または炭化する。本明細書中で使用するとき、「遮熱材」および「ヒートバリア」は同義の用語である。
【0018】
遮熱材は、少なくとも0.05ft2・°F・h/BTU、より好ましくは0.5ft2・°F・h/BTUの熱抵抗値を有することが要求される。熱抵抗を増大させても利益が大きくなることは殆どないため、実際的な熱抵抗値の上限は10ft2・°F・h/BTUである。これらの値は、ASTM標準C1363−05「Standard Test Method for Thermal Performance of Buildind Materials and Envelope Assemblies by Means of a Hot Box Apparatus」にしたがって計算される。
【0019】
一般に、遮熱材は熱成形で使用する圧力下で型の輪郭に密着するものであるため、その厚さは薄いものになるであろう。説明の目的で記載するなら、特にエラストマー材料では比較的厚いものが使用されることもあるが、遮熱材の厚さは1または2インチ以下であろう。
【0020】
遮熱材の表面の不規則性が熱成形過程で軟化状態にあるアクリルシートへ転写されるため、殆どの場合、遮熱材の表面は不規則性がない表面、すなわち人が触れて滑らかな、または平らであると感じる表面を有する。しかし、遮熱材に面したアクリルシートの表面が日々の使用で一般に見えない表面である場合には、不規則性に対する制約はそれほど厳密でなくてよい。とはいえ、遮熱材の過度の不規則性はアクリルシートの反対側の面、すなわち遮熱材に面していない側のシート表面にある程度の不規則性をもたらすおそれがある。
【0021】
場合によっては、熱成形過程でアクリルシートに表面模様を付与するために、遮熱材に一定の表面模様を意図的に付けることがある。
【0022】
遮熱材に適した材料の例としては、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムまたはシリコーンゴムなどのゴム、フェルト、紙、およびアラミド(例えば、ポリ(1,3−フェニレンイソフタルアミド))などの天然または合成素材からなる織布が挙げられる。
【0023】
型の作製
上記の発泡体は型として働き、したがって、アクリルシートの再成形における所望の最終形状に合わせた形状に形成される。遮熱材は、一般に、最初に発泡体に貼り付けられるときに、型の形に沿うことになる。エラストマー材料を使用するような場合には、遮熱材は、圧力が加えられるまでは、型の形状に完全には密着しない。
【0024】
熱成形
加圧前のアクリルシートの初期加熱で高温(本プロセスでは摂氏115〜200度の範囲である)を使用する熱成形の条件は、この分野ではよく知られている。例を挙げれば、アクリルシートは、プラテンまたは対流式加熱炉で、シートが均一な温度になるまで加熱されてもよい。
【0025】
アクリルシートは、高圧下、または真空の使用により、型の表面に密着する。最適圧力がシート温度のみならず部品のデザインにも依存するという前提のもとに、加える圧力の例を挙げれば、5〜125psigの範囲である。
【0026】
あるいは、そして好ましい態様の多くの場合に、熱成形に真空状態が使用され、プラスチックの成形に使用する真空テーブルを使用することができる。テーブルを介して真空に引かれ、真空膜の両側に生じた圧力差により、アクリルシートを型に密着させるために必要な力が生じる。真空での圧力差の例を挙げれば、1〜14psigの範囲である。
【0027】
成形されたアクリルシートは冷却され、さらなる加工、またはヒートバリア/発泡体の組み合わせの除去を行わずに直接使用することができる。場合によっては、成形されたアクリルシートに、その後の使用に応じてトリミングおよび/または研磨が施される。
【0028】
最終使用
成形されたアクリルシートは、ヒートバリア/発泡体をすぐには除去せずに、あるいは最終的に除去せずに、使用することができる。例を挙げれば、型は輸送中の成形アクリルシートを保護する輸送用材料として機能し得る。また、成形アクリルシートと共に発泡体が存在することは、ある特定のビル建築では望ましいことであり、そこでは、発泡体は恒久的な取り付け材料としての役割を担う。
【0029】
成形アクリルシートは、また、ヒートバリアを残し、発泡体のみを除去して使用することもできる。そのような使用の例としては、エラストマーで形成されたヒートバリアに、それがなければ成形アクリルシートに伝わる振動を減衰させる働きをさせることが挙げられる。
【0030】
あるいは、遮熱材/発泡体は成形アクリルシートから除去される。
【0031】
本発明をさらに詳しく説明するために、以下に実施例を示す。
【実施例】
【0032】
実施例1−無保護発泡体の最高温度の決定
適切な遮熱材を決定するために簡単な実験を行った。これらの実験は、成形範囲の低温端で1/4インチの固体表面を形成するために必要な「最低基準」と、成形範囲の高温端で1/2インチの固体表面を成形するために必要な「一般的に適切な基準」を決定するように設計された。それぞれの場合で、固体表面を均一な温度に加熱した。その後、試験用遮熱材で覆った一片の発泡体の上に置いた。シリコーン膜を試験用サンプル上まで下げ、真空に引いた。遮熱材の両側の熱電対で温度を記録した。系を冷却した後、発泡体および固体表面からの遮熱材除去の容易性、並びに発泡体の損傷を評価した。
【0033】
【表1】

【0034】
無保護のFoamular(登録商標)250は、有効な成形には低すぎる温度の固体表面と直接接触したときに軟化し始めるため、1/4インチまたは1/2インチ固体表面材の成形用としては一般に適していない。無保護のElfoam(登録商標)P200ポリイソシアヌレート発泡体は、より低温での1/4インチ固体表面の成形には使用することができる。より高温での1/4インチ固体表面と、非常に低温の場合を除く全ての1/2インチ固体表面の熱成形では、熱的保護をしないElfoam(登録商標)P200ポリイソシアヌレート発泡体は適していない。
【0035】
実施例2−保護された発泡体の最低基準の決定
エラストマー遮熱材
無保護の発泡体の場合と同様に、有用な熱成形範囲の低温端での1/4インチ固体表面という最も要求度が低い場合について、遮熱材の適合性を決定することができる。これらの実験では、発泡体および遮熱材の初期温度は18〜21℃であり、Corian(登録商標)固体表面の初期温度は121〜123℃であった。それぞれの場合で、熱成形用の型としてFoamular(登録商標)250押出ポリスチレン発泡体を使用した。
【0036】
【表2】

【0037】
実験は、これらの条件では多くのエラストマーが1/16インチ厚さでさえも適していることを示している。発泡体の外観の僅かな変化は、より良好な遮熱材を使用すれば生産期間を延長できることを示しているといえるものの、成形できる製品の数が制限されるという問題を示すものではない。固体表面を遮熱材から剥がすことが困難であることは、遮熱材として実際に使用することが可能ではあるものの困難であることを示している。
【0038】
遮熱材としての一般的な適合性を試験するために、1/2インチの固体表面を使用し、より高温で遮熱材を試験した。初期温度がより高くなったことに加えて、厚さが増したことは、環境へ放散する必要がある熱が増大したことを意味し、遮熱材とその下の発泡体の両者をより長時間、より高温に暴露させることになる。これらの実験では、発泡体および遮熱材の初期温度は18〜21℃の範囲であり、Corian(登録商標)固体表面の初期温度は152〜154℃の範囲であった。それぞれの場合で、熱成形用の型としてFoamular(登録商標)250押出ポリスチレン発泡体を使用した。
【0039】
【表3】

【0040】
1/2インチ固体表面を使用したより高温での実験は、1/16インチでは多くのエラストマーが発泡体および固体表面から除去できるが、発泡体を十分に断熱せず、大きな変形が起きたことを示している。シリコーンだけは、発泡体のピーク温度が他のエラストマーの場合と比べてはるかに低く、遮熱材として適すると一般に考えられる性能を示した。1/4インチEPDMの試験では、厚さが増加すると断熱および熱吸収が増加し、1/16インチの場合に比べて発泡体のピーク温度は大きく低下しており、1/4インチEPDMが適切な遮熱材となることがわかる。より厚い遮熱材で遮熱材性能が向上することは、他のエラストマーについても期待できよう。
【0041】
要約すれば、Foamular(登録商標)250は、シート温度が105℃(221°F)以下で1/4インチ固体表面を使用して直接成形する場合にのみ適しており、その温度は成形に要する望ましい温度より低いことから、遮熱材が必要なことを示している。Elfoam(登録商標)P200ポリイソシアヌレート発泡体は、1/4インチ固体表面の成形についてはシート温度が137℃(279°F)まで、1/2インチ固体表面の成形については123℃(253°F)まで適しているが、それを超えると遮熱材が必要である。EPDMは1/16インチ厚さでは最低熱成形条件で適するが、より高温の1/2インチ固体表面に対しては1/4インチ厚さのEPDM遮熱材が必要である。
【0042】
紙および織布
【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
低温の1/4インチシートでは、遮熱材は許容できる性能を示した。高温での、熱容量がより大きい1/2インチシートでは、試験したフェルトのみが十分な熱的保護を示し、発泡体は重大な損傷を受けなかった。
【0046】
断熱性エポキシ樹脂遮熱材
無保護の発泡体の場合と同様に、有用な熱成形範囲の低温端での1/4インチ固体表面という最も要求度が低い場合について、遮熱材の適合性を決定することができる。これらの実験では、発泡体および遮熱材の初期温度は18〜21℃であり、Corian(登録商標)固体表面の初期温度は121〜123℃であった。それぞれの場合で、熱成形用の型としてFoamular(登録商標)250押出ポリスチレン発泡体を使用した。
【0047】
アルミニウム充填エポキシ樹脂を使用して行った前の実験では、この系ではエポキシ樹脂は離型性を向上させるが、アルミニウムは良好な熱伝導体であるために、耐熱性が大きく変わることはないことを示した。本実験では、塗料用添加剤として販売されている中空セラミック球をエポキシ樹脂接着剤に加えた。35グラムのセラミックを100グラムのエポキシ樹脂接着剤に加え、押出ポリスチレン発泡体に塗布し硬化させた。
【0048】
【表6】

【0049】
要約
Foamular(登録商標)250は、シート温度が105℃(221°F)以下で1/4インチ固体表面を直接成形する場合にのみ適しており、その温度は成形に要する温度未満であることから、遮熱材が必要なことを示している。Elfoam(登録商標)P200ポリイソシアヌレート発泡体は、1/4インチ固体表面の成形についてはシート温度が137℃(279°F)まで、1/2インチ固体表面の成形については123℃(253°F)まで適しているが、それを超えると遮熱材が必要である。MDF型で広く使用されているアルミニウム充填エポキシ樹脂塗料によって、押出ポリスチレン発泡体を使用可能にするだけに十分な熱的保護は与えられない。エポキシ樹脂中に中空セラミック球を使用することにより、良好な断熱性を有する遮熱材が得られた。
【0050】
実施例3−型の設計
設計は、設計者により提供された部材表面を定義した電子ファイルから開始した。この情報を、成形すべきシートの厚さと遮熱材の厚さと共に、型の表面を設計するために使用した。その後、発泡体の厚さと機械の能力に基づいて、この表面を数層に分割した。この実施例では、Owens Corning Foamular(登録商標)250の2インチ厚さの発泡体を使用した。その後、表面の設計からマシーンコードを生成した。工具の速度と形状を型の材料により決定する。発泡体を、CNCにより、通常、MDFとほぼ同じ毎分300〜400インチの速度でカットする。速度はMDFとほぼ同じであるが、材料除去速度は格段に速い。発泡体に対するスピンドルの負荷は極めて低く、各パス当たりより多くの材料を除去することができる。除去速度はMDFの4倍を超え、工作時間を75%削減することに繋がる。層をCNCでカットした後、ホットメルト接着剤を使用して組み立て、最終形状を形作る。
【0051】
実施例4−手作業による固体表面部材ブランクの作製方法
固体表面部材ブランクの形状は、デジタル的に計算することもできるが、本実施例では手作業で作製した。最初の工程は型に基準線を引くことであった。一枚のクラフト紙を型に被せ、所望の形状の輪郭をクラフト紙にトレースした。クラフト紙を型から取り、ハサミで輪郭を切り取った。その後、切り取ったクラフト紙を固体表面に置いた。紙の輪郭を固体表面シートにトレースし、その部材をハンドルーターで切り出した。
【0052】
実施例5−固体表面の熱成形
Corian(登録商標)固体表面シート材料から作製した部材を、280°Fに均一になるまでプラテン炉中で加熱した。発泡体の型を真空テーブル上に置き、1/4インチの高強度耐候性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマー)ゴム製遮熱材を型の上に載せ、位置合わせした。加熱した固体表面ブランクを型の上に載せ、位置合わせを行い、真空膜を降下させた。テーブルを介して真空に引き、これにより生じた真空膜の両側の圧力差により、固体表面ブランクを型に密着させるために必要な力が生じた。熱成形された部材を放置して冷却し、その後、型から取り外した。
【0053】
実施例6−後加工用固定治具としての発泡体の使用
部材を取り外した後、遮熱材を除去し、熱成形した部材をトリミングおよび研磨する際の保持用として発泡体を使用した。ハンドルーターやCNCマシーンなどのパワーツールを使用してトリミングする際の作業用固定治具として発泡体を使用すれば、振動を減衰させることがわかった。後加工に向けて系をより硬くするために、ホットメルト接着剤を使用して、熱成形した部材を一次的に型に接着した。熱成形部材は、仕上げ加工の後、やさしくてこで持ち上げれば容易に取り外すことができる。
【0054】
実施例7−輸送用支持体としての発泡体の使用
輸送のために、ホットメルト接着剤により部材を発泡体に接着し固定した。発泡体は軽量で、均一な支持、衝撃の吸収、および振動の減衰が可能であるため、発泡体からなる熱成形用の型は、魅力的な輸送形態となる。
【0055】
実施例8−据え付け用固定治具としての発泡体の使用
最後に、この場合には、発泡体はまた、支持構造体として最終据え付けに不可欠の部材でもあった。ホットメルト接着剤およびシリコーン接着剤によりCorian(登録商標)固体表面部材を発泡体に固定した。発泡体は、部材を壁および床に固定するための構造的剛性と適切な表面を提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂氏80〜130度の範囲のガラス転移点を有するアクリルポリマーを含む組成物を含有するシートの成形方法であって、
(a)摂氏115〜200度の範囲の温度にシートを加熱する工程と、
(b)前記加熱シートの表面に高圧または真空下の圧力を適用して前記シートを変形させる工程であって、前記シートは、前記シートを変形させることのできる型で支持されており、前記型は、
(i)前記シートが加熱される最高温度で物理的に劣化する発泡体と、
(ii)前記シートと発泡体の間に配置され、少なくとも0.05ft2・°F・h/BTUの熱抵抗値を有することを条件として、前記発泡体の表面形状に追随する遮熱材と、
を含む、工程と
を含む成形方法。
【請求項2】
前記シートは、1/10インチ〜8/10インチの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シートは、アルミナ三水和物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記発泡体は、ポリスチレンまたはポリイソシアヌレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遮熱材は、0.004〜2インチの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遮熱材は、少なくとも0.5ft2・°F・h/BTUの熱抵抗値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遮熱材は、天然ゴム、ラテックスゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン、ネオプレンEPDM、ブチルゴム、エピクロルヒドリン、シリコーンゴム、クラフト紙、またはセラミック球充填エポキシ樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)摂氏80〜130度の範囲のガラス転移点を有するアクリルポリマーを含む組成物を含有する成形シートと、
(b)(i)(a)および(c)の表面形状に追随し、(ii)少なくとも0.05ft2・°F・h/BTUの熱抵抗値を有する遮熱材と、
(c)摂氏115〜200度の範囲の温度で劣化する発泡体と、
を順に含む製品。

【公表番号】特表2012−511453(P2012−511453A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540901(P2011−540901)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067546
【国際公開番号】WO2010/068787
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】