説明

型締装置及び型締制御方法

【課題】電磁石を用いて作用させる型締力を適切に制御することのできる型締装置を提供する。
【解決手段】電磁石によって型締力を作用させる型締装置であって、目標型締力に応じた前記電磁石への電流指令を生成する第一の電流指令生成部と、前記電磁石による前記型締力を検出する型締力検出部と、前記型締力検出部によって検出される型締力の検出値に基づいて前記電流指令を補正する補正指令を生成する第二の電流指令生成部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置及び型締制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して固定金型と可動金型との間のキャビティ空間に充填(てん)し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、前記固定金型に対して可動金型を移動させて型閉じ、型締め及び型開きを行うために型締装置が配設される。
【0003】
該型締装置には、油圧シリンダに油を供給することによって駆動される油圧式の型締装置、及び電動機によって駆動される電動式の型締装置があるが、該電動式の型締装置は、制御性が高く、周辺を汚すことがなく、かつ、エネルギー効率が高いので、多く利用されている。この場合、電動機を駆動することによってボールねじを回転させて推力を発生させ、該推力をトグル機構によって拡大し、大きな型締力を発生させるようにしている。
【0004】
ところが、前記構成の電動式の型締装置においては、トグル機構を使用するようになっているので、該トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性及び安定性が悪く、成形中に型締力を制御することができない。そこで、ボールねじによって発生させられた推力を直接型締力として使用することができるようにした型締装置が提供されている。この場合、電動機のトルクと型締力とが比例するので、成形中に型締力を制御することができる。
【0005】
しかしながら、前記従来の型締装置においては、ボールねじの耐荷重性が低く、大きな型締力を発生させることができないだけでなく、電動機に発生するトルクリップルによって型締力が変動してしまう。また、型締力を発生させるために、電動機に電流を常時供給する必要があり、電動機の消費電力量及び発熱量が多くなるので、電動機の定格出力をその分大きくする必要があり、型締装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを使用し、型締動作には電磁石の吸着力を利用した型締装置が考えられる(例えば、特許文献1)。斯かる型締装置では、型締工程中における型締力を一定に保つため、型締力に関してフィードバック制御が行われる。従来、斯かるフィードバック制御を行う制御部は、例えば、以下のように構成されていた。
【0007】
図1は、従来の制御部の構成例を示す図である。図1において、100は型締装置を示す。160は、型締装置100の型締力を制御する制御部を示す。制御部160は、加算器161、積分器162、及びアンプ163等を有する。加算器161には、非図示の上位コントローラより型締力指令(目標とする型締力(目標型締力)の大きさを示す指令)が入力され、また、型締装置100の型締力検出器155より型締力の検出値が入力される。加算器161は、型締力指令値と型締力検出値とに基づいて目標型締力に対する誤差(型締力誤差)を算出し、積分器162に出力する。積分器162は、型締力誤差を積分することにより、型締力誤差が補正されるような電流値を算出し、当該電流値を示す電流指令をアンプ163に出力する。アンプ163は、電流指令に示される電流値の電流を電磁石49に供給する。以降、型締力検出値が逐次加算器161に入力され、フィードバック制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−244567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単に、一般的なフィードバック制御を行っただけでは、電磁石の特性に鑑みて、望ましい状態に型締力を制御することは困難であった。
【0010】
図2は、従来のフィードバック制御によって得られる型締力を説明するための図である。図2において、横軸は時間の経過を示す、縦軸は型締力の検出値を示す。曲線L0は、上述したフィードバック制御によって得られる型締力を時間の経過に応じて示したものである。
【0011】
型締め開始以降、曲線L0の傾きは非常に緩やかである。これは、電磁石の立ち上がり応答性の悪さに起因している。すなわち、電磁石は、或る電流値の電流が供給されても、ギャップ間の距離が大きいと電磁力は小さいため、その電流値に対応する力を瞬時に作用させることはできないからである。したがって、型締力の検出値が目標型締力に到達するまでに或る程度の時間を要してしまう。
【0012】
このように、単なるフィードバック制御では、迅速に目標型締力が得られないという問題がある。目標型締力に到達するまでの時間が長くなってしまうと、それだけ成形サイクルも長くなり生産性が低下してしまう。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、電磁石を用いて作用させる型締力を適切に制御することのできる型締装置及び型締制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、電磁石によって型締力を作用させる型締装置であって、目標型締力に応じた前記電磁石への電流指令を生成する第一の電流指令生成部と、前記電磁石による前記型締力を検出する型締力検出部と、前記型締力検出部によって検出される型締力の検出値に基づいて前記電流指令を補正する補正指令を生成する第二の電流指令生成部とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記第一の電流指令生成部にて生成された前記電流指令と前記第二の電流生成指令部にて生成された前記補正指令とに基づいて、前記電磁石へ供給する補正電流指令を算出する補正電流指令算出部を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記第一の電流指令生成部は、前記型締力を発生させる立ち上がり電流指令と、発生させられた型締力を維持する維持電流指令とを有する電流指令を生成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第二の電流指令生成部は、前記維持電流指令に基づき維持されている型締力と前記型締力検出部により検出される型締力の検出値との誤差に基づいて前記補正指令を生成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記第一の電流指令生成部は、型締め開始時には前記目標型締力に対応する電流よりも大きな電流値を示す電流指令を生成することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記第二の電流指令生成部は、前記目標型締力と前記型締力の検出値との誤差に基づいて前記補正指令を生成することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記型締力の検出値に基づいて前記第二の電流生成部の作動及び停止を切り替える切り替え部を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記切り替え部は、第一の電流指令生成部により生成された電流指令のうち維持電流指令に基づき制御されている場合に、前記第二の電流指令生成部の作動及び停止を切り替えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記切り替え部は、目標型締力が維持されるべき間は、前記第二の電流指令生成部を作動させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記切り替え部は、型締め開始後から所定の期間は、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記切り替え部は、前記目標型締力の変更開始時から所定の期間は、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記切り替え部は、前記目標型締力が0のときは、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁石を用いて作用させる型締力を適切に制御することのできる型締装置及び型締制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の制御部の構成例を示す図である。
【図2】従来のフィードバック制御によって得られる型締力を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
【図5】第一の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。
【図6】電流パターン生成器によって生成される電流パターンを説明するための図である。
【図7】第一の実施の形態における制御部による型締力の制御を説明するための図である。
【図8】第二の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。
【図9】第二の実施の形態における制御部による型締力の制御を説明するための図である。
【図10】モータ枠で磁界の発生領域を閉鎖した回転型モータを適用した本願の変形例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0029】
図3は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図4は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
【0030】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイド(図においては、2本のガイドGdのうちの1本だけを示す。)、11は、該ガイドGd上に載置され、前記フレームFr及びガイドGdに対して固定された第1の固定部材としての固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。なお、前記リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対してわずかに移動することができるように前記ガイドGd上に載置される。
【0031】
なお、本実施の形態においては、固定プラテン11はフレームFr及びガイドGdに対して固定され、リヤプラテン13はガイドGdに対してわずかに移動することができるようになっているが、リヤプラテン13をフレームFr及びガイドGdに対して固定し、固定プラテン11をガイドGdに対してわずかに移動することができるようにすることができる。
【0032】
前記タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。
【0033】
前記タイバー14の前端部には図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成される。そして、リヤプラテン13の後端面の近傍には図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットn2とを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とは別体に形成することもできる。
【0034】
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0035】
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるためのガイド穴23が形成される。該ガイド穴23は、前端面に開口させられ、ボールナットn2を収容する大径部24、及び吸着板22の後端面に開口させられ、ガイドポスト21と摺動させられる摺動面を備えた小径部25を備える。本実施の形態において、吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
【0036】
ところで、前記可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28が、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設される。前記リニアモータ28は、第1の駆動要素としての固定子29、及び第2の駆動要素としての可動子31を備え、前記固定子29は、前記フレームFr上において、前記ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、前記可動子31は、可動プラテン12の下端において、前記固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0037】
前記可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、前記コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、前記コイル35は、各磁極歯33に巻装される。なお、前記磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、前記固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、前記磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成される。
【0038】
したがって、前記コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0040】
ところで、前記可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。そして、型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。そして、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が進退自在に配設される。該ロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達する。
【0041】
なお、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0042】
また、型締装置10において、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ28の動作と型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37と動作とは、制御部60によって制御される。制御部60の詳細については後述する。
【0043】
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に形成された第2の駆動部材としての吸着部51から成り、該吸着部51は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46にコイル48が巻装される。
【0044】
なお、前記コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
【0045】
本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
【0046】
したがって、電磁石ユニット37において、前記コイル48に電流(直流電流)を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
【0047】
そして、前記ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
【0048】
そのために、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41、及び前記吸着板22の中央部分にロッド39を貫通させるための穴42が形成され、前記穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持された型厚調整機構としてのナット44とが螺合させられる。
【0049】
前記ナット44の外周面に図示されない大径のギヤが形成され、前記吸着板22に型厚調整用の駆動部としての図示されない型厚調整用モータが配設され、該型厚調整用モータの出力軸に取り付けられた小径のギヤと、前記ナット44の外周面に形成されたギヤとが噛合させられる。
【0050】
そして、金型装置19の厚さに対応させて、型厚調整用モータを駆動し、前記ナット44をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。すなわち、可動プラテン12と吸着板22との相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、コア46及びヨーク47、並びに吸着板22の全体が電磁積層鋼板によって構成されるようになっているが、リヤプラテン13におけるコア46の周囲及び吸着部51を電磁積層鋼板によって構成するようにしてもよい。本実施の形態においては、リヤプラテン13の後端面に電磁石49が形成され、該電磁石49と対向させて、吸着板22の前端面に吸着部51が進退自在に配設されるようになっているが、リヤプラテン13の後端面に吸着部を、該吸着部と対向させて、吸着板22の前端面に電磁石を進退自在に配設することができる。
【0052】
次に、制御部60の詳細について説明する。図5は、第一の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。第一の実施の形態において制御部60は、制御部60aとして説明する。制御部60aは、上位コントローラ601、電流パターン生成器602、積分器603、アンプ604、加算器605及び606等より構成される。
上位コントローラ601は、CPU及びメモリ等を備え、メモリに記録された制御プログラムをCPUによって処理することにより、リニアモータ28及び電磁石49の動作を制御する。上位コントローラ601は、型締力の大きさを示す指令(型締力指令)とリニアモータ28が移動すべき位置を示す指令(位置指令)とを出力する。なお、本実施の形態では、リニアモータ28の制御についての詳細な説明は便宜上省略する。したがって、図中においても、リニアモータ28の制御を行うための構成要素は省略されている。
【0053】
上位コントローラ601からの型締力指令は、電流パターン生成器602に入力される。電流パターン生成器602は、例えば、サーボカードによって構成され、型締力指令に示される型締力に応じた電流パターンを生成する。ここで、電流パターンとは、電磁石49(コイル48)に供給する時系列の電流値を示す情報をいう。電流パターン生成器602は、生成された電流パターンに従って、電磁石49に供給する電流値を示す信号(電流指令)を時間の経過に応じて加算器606に逐次出力する。
【0054】
上位コントローラ601からの型締力指令は、また、加算器605にも入力される。加算器605には、型締装置10に設置された型締力検出器55によって検出される型締力の検出値(実績値)も入力される。加算器605は、型締力指令に示される型締力の値(型締力指令値)と型締力検出値に基づいて、型締力指令に対する実績値の誤差(型締力誤差)を算出する。算出された型締力誤差は、積分器603に入力される。なお、型締力検出器55は、タイバー14の伸び量を検出するセンサ若しくはロッド39上に配設されたロードセル等の荷重検出器、又は電磁石49と吸着部51との間の磁束を検出するセンサによって構成してもよい。
【0055】
積分器603は、型締力誤差を解消するために型締力誤差を積分することにより電流指令に対する補正値を算出し、当該補正値を示す信号(補正指令)を加算器606に逐次出力する。
【0056】
補正電流指令部としての加算器606は、電流パターン生成器602より入力される電流指令において示される電流値(電流指令値)を、積分器603より入力される補正指令に示される電流値(補正指令値)によって補正し、補正された電流値を示す信号(補正電流指令)をアンプ604に逐次出力する。
【0057】
アンプ604は、例えば、ドライバカードによって構成され、加算器606より入力される補正電流指令に応じた電流を電磁石49に供給する。当該電流の供給に応じて電磁石49は駆動する。
【0058】
なお、本実施の形態では、電流パターン生成器602によって第一の電流指令生成部610が構成され、加算器605及び積分器603によって第二の電流指令生成部620が構成される。
【0059】
次に、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
【0060】
制御部60は、型開閉処理を行い、型閉じ時に、図4の状態において、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図3に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、最適なギャップδが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0061】
可動プラテン12が所定の位置(可動金型16が固定金型15に当接される位置、又は、当接されるわずか手前の位置)に到達すると型締工程が開始される。すなわち、上位コントローラ61は、予め設定された型締力の目標値(目標型締力)を示す型締力指令を電流パターン生成器602及び加算器605に出力する。電流パターン生成器602は、型締力指令に応じた電流パターンを生成し、当該電流パターンに従って、電流指令を時間の経過に応じて出力する。ここで、電流パターンは、電磁石49による型締力の立ち上がり応答性が向上されるように生成される。
【0062】
図6は、電流パターン生成器によって生成される電流パターンを説明するための図である。図6において(A)には、電流パターンL1が点線の折れ線によって示されている。(A)の縦軸は電流値を示し、横軸は時間の経過を示す。一方、(B)には、電流パターンに応じた電流値がそのままコイル48に供給された場合に得られる型締力の遷移が曲線L2によって示されている。(B)の縦軸は型締力を示し、横軸は時間の経過を示す。なお、(A)の横軸と(B)の横軸との時間の経過は一致する。
【0063】
図示されるように電流パターンL1は、型締め開始時から所定の期間(t1〜t2)は、型締力を発生させる立ち上がり電流指令を含み、その後(t2以降)は、型締力を維持する維持電流指令を含む。立ち上がり電流指令においては、目標型締力に対応する電流値の電流(定格電流)を超える電流、例えば、最大電流(制御部60aが適切に供給可能な最大の電流値の電流)が電流指令値とされている。維持電流指令においては、定格電流が電流指令値とされている。斯かる電流パターンに基づけば、t1〜t2の期間において定格電流を大きく超える電流がコイル48に供給される。その結果、図中(B)の曲線L2において符号aによって示される部分(t1〜t2の期間)の傾きが大きくなる。すなわち、電磁石49の立ち上がり応答性が向上する。このように、電流パターン生成器601は、電磁石49の立ち上がり応答性を向上させることができるような電流パターンを生成する。
【0064】
但し、電磁石49によって得られる型締力は、電磁石49のヒステリシスによる影響や、電磁石49と吸着部51との間のギャップδの誤差、また、樹脂の変形による誤差等によって、同じ電流値に対して常に同じ大きさが得られるとは限らない。したがって、定格電流が供給されたとしても目標型締力が得られるとは限らず、図中(B)に示されるように、目標型締力と実績値との間には型締力誤差eが生じ得る。
【0065】
そこで、制御部60aは、型締力誤差eの発生を防止するため、電流パターンに基づく電流をそのままコイル48に供給するのではなく、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御を行うことによりコイル48への供給電流を補正する。
【0066】
すなわち、加算器605は、型締力指令値と、型締力検出器55より逐次入力される型締力検出値とに基づいて型締力誤差を算出し、積分器603に出力する。積分器603は、型締め開始時より型締力誤差を積分することによって、型締力誤差を解消するために電磁石49に供給する電流の補正値を算出し、当該補正値を示す補正指令を加算器606に出力する。
【0067】
加算器606は、電流パターン生成器602より入力される電流指令において示される電流値を、積分器603より入力される補正指令に示される電流値によって補正し、補正された電流値を示す信号(補正電流指令)をアンプ604に出力する。アンプ604は、加算器606より入力される補正電流指令に応じた電流を電磁石49のコイル48に供給する。
コイル48に電流が供給されることにより電磁石49が駆動し、吸着部51が電磁石49の吸着力によって吸着される。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0068】
型締め中は、制御部60aによる電流パターンに基づく制御と型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御とによって型締力は以下のように制御される。
【0069】
図7は、第一の実施の形態における制御部による型締力の制御を説明するための図である。図7中、図6と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0070】
図中(A)において、曲線L3は、補正電流指令に基づいてアンプ604より実際にコイル48に供給される電流の電流値(補正電流指令の電流値)の遷移を示す。また、図中(B)において、曲線L4は、曲線L3に示される電流がコイル48に供給された結果、検出される型締力を示す。
【0071】
曲線L3に示されるように、制御部60aは、型締め開始時から所定の期間(t1〜t3)は最大電流を供給する。これは、電流パターンL1の立ち上がり電流指令に基づく制御の結果である。型締め開始時からしばらくの間最大電流が供給されることにより、電磁石49の立ち上がり応答性が向上し、型締力は急速に増加する(曲線L4において符号aによって示される部分)。
【0072】
また、第一の実施の形態において、制御部60aの積分器603は、型締め開始時より型締力誤差の積分を開始する。すなわち、第一の実施の形態では、型締め開始時より、立ち上がり電流指令に基づく型締力の型締力検出器55による検出値に基づいた補正指令に基づく制御が開始される。
【0073】
ところで、曲線L3に示されるように、制御部60aは、電流パターンL1に指定されている期間(t1〜t2)よりも長い間(t1〜t3)最大電流を供給する。これは、t2の時点において、型締力が目標型締力に到達しておらず、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御によりその分の型締力誤差が積分器603によって積分され、積分器603からの補正指令によって電流パターンL1に基づく電流指令が補正されるからである。したがって、目標型締力が得られるt3まで、最大電流が供給される。
【0074】
目標型締力が得られると、制御部60aは、電流パターンL1の維持電流指令に従って、供給電流を定格電流まで低下させようとする。但し、電磁石49の応答性は、立ち上がり時だけでなく、その逆方向(立ち下がり時)においても良くないため、供給電流が低下し始めた後(t3以降)も、曲線L4において符号bに示されるように型締力は増加を続ける。その結果生じる型締力誤差についても、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御が行われ、積分器603は、当該型締力誤差を積分し、補正指令を出力する。その結果、加算器606において、電流パターン生成器602からの維持電流指令は、補正指令によって補正され、曲線L3において符号cに示されるように、定格電流より電流値の低い電流がコイル48に供給される。型締力は、供給電流の低下に遅れて低下を始め、目標型締力に近付く。
【0075】
その後、例えば、図6(B)に示されるように、定格電流では目標型締力を得られない場合は、積分器603は、型締力誤差eを積分することにより補正指令を出力する。当該補正指令によって維持電流指令が補正されることにより、曲線L3において符号dに示されるように、定格電流よりも大きな電流がコイル48に供給される。その結果、図中ではt4において目標型締力に到達し、定常状態となる。定常状態となった後も、型締保持中においては、型締力検出器55によって検出される型締力検出値が加算器605に逐次入力され、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御によりコイル48に供給される電流が調整される。その結果、安定した型締力で型締めが行われる。
【0076】
この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。なお、前記荷重検出器として、ロッド39上に配設されたロードセル、タイバー14の伸び量を検出するセンサ等を使用することができる。
【0077】
そして、各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、制御部60aは、型開き時に、図3の状態において、前記コイル48に電流を供給するのを停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図4に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0078】
上述したように、第一の実施の形態における制御部60aを有する型締装置によれば、電流パターン生成器602によって、電磁石の特性を考慮した電流パターンが生成され、当該電流パターンに基づいて型締力に関して制御が行われる。したがって、型締力の立ち上がり応答性を向上させることができ、成形サイクルを短縮することができる。また、積分器603、加算器605及び加算器606等によって、型締力に関して型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御が行われるため、目標型締力を適切に維持することができる。
【0079】
次に、第二の実施の形態について説明する。第一の実施の形態の制御部60aでは、図7(B)に示されるように、t3〜t4の期間において型締力が目標型締力を超えてしまう現象(すなわち、型締力のオーバーシュート)が発生している。型締力のオーバーショートは、金型の保護や、不良成形の防止の観点より好ましくない。そこで、第二の実施の形態では、斯かる問題点を解決した例について説明する。
【0080】
図8は、第二の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。図8中、図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。第二の実施の形態において制御部60は、制御部60bとして説明する。
【0081】
制御部60bは、制御部60aの構成要素に加え、更に切り替え監視器607を構成要素としている。切り替え監視器607は、積分器603のON/OFFを切り替える、すなわち、切り替え監視器607は、上位コントローラ601より入力される型締力指令値と型締力検出器55より入力される型締力検出値とに基づいて、積分器603を適切なタイミングで作動させ、適切なタイミングで停止させる。積分器603が作動するということは、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御が作動することを意味する。また、積分器603が停止するということは型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御が停止することを意味する。
【0082】
以下、切り替え監視器607を備えた積分器60bによる型締力の制御について説明する。図9は、第二の実施の形態における制御部による型締力の制御を説明するための図である。図9中、図7と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0083】
第二の実施の形態において、切り替え監視器607は、型締め開始当初は、積分器603に停止命令を出力することにより積分器603を停止させておく。したがって、図中において、t1〜t5の間は、積分器603による型締力誤差の積分は行われず、加算器606による電流パターン生成器602からの立ち上がり電流指令に基づく電流指令値の補正は行われない。その結果、図中(A)に示されるようにt1〜t5の間は、電流パターンL1に示される通りの電流がコイル48に供給される。なお、(A)において、t1〜t5の間は、曲線L3の軌跡は電流パターンL1と一致するが、電流パターンL1を示す破線の視認性を考慮して、曲線L3を示す実線は記載されていない。
【0084】
ここで、型締力が安定し始めるまで積分器603の動作を停止させるのは、型締め開始時から型締力誤差の積分が行われることが、第一の実施の形態における型締力のオーバーシュートの原因の一つとして挙げられるからである。すなわち、図7(B)において、t1〜t2の間に積分された型締力誤差を補正するために、最大電流を供給する期間が延長され、その結果型締力が目標型締力到達時t3以降においてオーバーシュートしてしまうからである。しがたって、第二の実施の形態では、型締め開始後、型締力が不安定な期間(t1〜t5)においては、切り替え監視器607は積分器603の動作を停止させる。
【0085】
維持電流指令に基づいて型締力が安定し始めると(t5)、切り替え監視器607は、積分器603に作動命令を出力する。なお、切り替え監視器607は、型締力検出器55より入力される型締力検出値の時間に応じた変位を監視することにより、型磁力の安定を検出する。例えば、切り替え監視器607は、所定時間内において型締力検出値の変位が所定値以内であったら、型締力は安定したと判定する。
【0086】
積分器603は、作動命令に応じて作動(すなわち、型締力誤差の積分)を開始する。図9(B)の例では、積分開始時t5における維持電流指令に基づく型締力の検出値は、目標型締力を下回っている。そこで、積分器603は、斯かる型締力誤差を補正するための補正指令を加算器606に出力する。加算器606は、電流パターン生成器602からの維持電流指令に基づく電流指令値を補正指令値によって補正する。その結果、曲線L3に示されるように、供給電流は、定格電流を上回る値となる。供給電流の増加に伴い、型締力も増加し、図中(B)では、t6において目標型締力に到達する。なお、第二の実施の形態では、維持電流指令に基づいて型締力が安定し始めてから型締力誤差の積分を開始しているため、電流指令値に対する急激な補正は行われず、型締力がオーバーシュートする可能性が低減される。したがって、t6において目標型締力に到達すると、そのまま定常状態となる。定常状態となった後も、型締保持中(目標型締力が維持されるべき期間)においては、切り替え監視器607は、積分器603を作動させる。したがって、型締力検出器55入力される型締力検出値に基づいて、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御によりコイル48に供給される電流が調整される。その結果、安定した型締力で型締めが行われる。
【0087】
なお、図中では省略されているが、型締工程中において型締力を低下させるための型締力指令(すなわち、現在の型締力より低い型締力を示す型締力指令)が上位コントローラから入力されたときは、切り替え監視器607は、積分器603に停止命令を出力し、積分器603を停止させる。したがって、この場合、当該型締力指令に応じて電流パターン生成器602によって生成される電流パターンに従った電流がそのままコイル48に供給される。その結果、型締力は低下し始め、型締力指令が示す型締力付近で安定する。型締力が安定し始めると、切り替え監視器607は、積分器603を作動させる。このように、型締力が急激に低下する期間における型締力誤差の積分を行わないことにより、型締力が必要以上に低下してしまうことが防止される。
【0088】
また、型締工程が終了し、上位コントローラ601からの型締力指令が示す型締力が0となると、切り替え監視器607は、積分器603を停止させる。これにより、電流パターン生成器602より出力される電流指令の電流値が0であるにも拘わらず、型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御によって、型締力が増加してしまうのを防止することができる。すなわち、積分器603が作動したままでは、型締力誤差が積分されることにより補正指令が積分器603より出力され、その補正指令が示す電流値の電流がコイル48に供給されてしまうからである。そして、コイル48に電流が供給されることにより、型締力誤差が更に大きくなり、その型締力誤差を補正するためにより絶対値の大きい補正指令が積分器603より出力され、その補正指令によって更に絶対値の大きい電流値の電流がコイル48に供給されるといったループが形成されてしまうからである。なお、力の大きさは電流値の二乗に比例するため、補正指令の電流値がマイナスであっても、型締力を低下させる方向には働かない。
【0089】
上述したように、第二の実施の形態における制御部60bによれば、切り替え監視器607によって、型締力が不安定な期間(立ち上がり時、立ち下がり時等)における型締力検出器55の検出値に基づいた補正指令に基づく制御が停止される。したがって、型締力がオーバーシュートする可能性を低減させることができる。その結果、第一の実施の形態に比べて目標型締力への到達時間を更に短縮することができ、成形サイクルを短縮することができる。
【0090】
なお、本実施の形態においては、型締力検出部として金型に加わる荷重を検出する型締力検出器55を用いることが望ましいため、型締力検出器55を用いた例を示した。但し、型締力検出部として、電磁石の磁束密度を検出する磁束密度検出器を用いてもよいし、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップδを計測する距離検出器等を用いてもよい。
【0091】
ところで、本実施の形態における型締装置の制御方法は、型開閉動作をリニアモータ28の駆動によって行う型締装置でなくても良い。特にリニアモータ28の場合には、磁石がフレーム表面に露出するために粉塵等が付着する虞がある。このため、型開閉駆動部としてリニアモータ28を用いずに、モータ枠で磁界の発生領域を閉鎖した回転型モータを適用した本願の変形例を図10に示す。
【0092】
第2の駆動部としての電磁石ユニットの説明は、図1及び図2と同様のため、説明を省略する。第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部(型開閉駆動部)としての型開閉用モータ74が、フレームに固定されたモータサポート73に移動不能に取り付けられている。ここで、型開閉モータ74には、モータ枠で磁界の発生領域を閉鎖した回転型モータが適用される。回転型モータからは図示しないモータ軸が突出し、モータ軸はボールねじ軸72に連結している。ボールねじ軸72はボールねじナット71と螺合することで、回転型モータで発生した回転運動を直進運動へ変換する運動方向変換装置を構成している。そして、ボールねじナット71は可動プラテン12の下部より突出した可動プラテンフランジ部12aに回転不能に配設される。これにより、型開閉モータ74が回転することにより、可動プラテン12は前後し、可動金型16の型開閉動作を行うことができる。
【0093】
さらに、型開閉モータ74の後端には位置検出器75が取り付けられ、型開閉モータ74の回転角度を読み込んで、可動プラテン12の位置を把握することができる。これにより、型開閉処理部61は型開閉モータ74を制御する。
【0094】
本構成では、電磁石によって金型装置19への型締力の発生中、より具体的には昇圧が開始された後において、金型の位置ずれの発生の虞がなくなると、型開閉処理部61は、型開閉モータ74への電流の供給を可変に制御する。具体的には、電流の供給を停止させる。これにより、型開閉モータ74が位置制御されることによる型締力への影響がなくなる。
【0095】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0096】
本国際出願は、2007年8月28日に出願した日本国特許出願2007−221573号に基づく優先権を主張するものであり、2007−221573号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0097】
10 型締装置
11 固定プラテン
12 可動プラテン
12a 可動プラテンフランジ部
13 リヤプラテン
14 タイバー
15 固定金型
16 可動金型
17 射出装置
18 射出ノズル
19 金型装置
21 ガイドポスト
22 吸着板
23 ガイド穴
24 大径部
25 小径部
28 リニアモータ
29 固定子
31 可動子
37 電磁石ユニット
39 ロッド
41、42 穴
43 ねじ
44 ナット
45 コイル配設部
46 コア
47 ヨーク
48 コイル
49 電磁石
51 吸着部
55 型締力検出器
71 ボールねじナット
72 ボールねじ軸
73 モータサポート
74 型開閉モータ
75 位置検出器
601 上位コントローラ
602 電流パターン生成器
603 積分器
604 アンプ
605、606 加算器
607 切り替え監視器
Br1 軸受部材
Gd ガイド
Fr フレーム
n1、n2 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石によって型締力を作用させる型締装置であって、
目標型締力に応じた前記電磁石への電流指令を生成する第一の電流指令生成部と、
前記電磁石による前記型締力を検出する型締力検出部と、
前記型締力検出部によって検出される型締力の検出値に基づいて前記電流指令を補正する補正指令を生成する第二の電流指令生成部とを有することを特徴とする型締装置。
【請求項2】
前記第一の電流指令生成部にて生成された前記電流指令と前記第二の電流生成指令部にて生成された前記補正指令とに基づいて、前記電磁石へ供給する補正電流指令を算出する補正電流指令算出部を有することを特徴とする請求項1記載の型締装置。
【請求項3】
前記第一の電流指令生成部は、前記型締力を発生させる立ち上がり電流指令と、発生させられた型締力を維持する維持電流指令とを有する電流指令を生成することを特徴とする請求項1記載の型締装置。
【請求項4】
前記第二の電流指令生成部は、前記維持電流指令に基づき維持されている型締力と前記型締力検出部により検出される型締力の検出値との誤差に基づいて前記補正指令を生成することを特徴とする請求項3記載の型締装置。
【請求項5】
前記第一の電流指令生成部は、型締め開始時には前記目標型締力に対応する電流よりも大きな電流値を示す電流指令を生成することを特徴とする請求項1記載の型締装置。
【請求項6】
前記第二の電流指令生成部は、前記目標型締力と前記型締力の検出値との誤差に基づいて前記補正指令を生成することを特徴とする請求項1記載の型締装置。
【請求項7】
前記型締力の検出値に基づいて前記第二の電流生成部の作動及び停止を切り替える切り替え部を有することを特徴とする請求項1記載の型締装置。
【請求項8】
前記切り替え部は、第一の電流指令生成部により生成された電流指令のうち維持電流指令に基づき制御されている場合に、前記第二の電流指令生成部の作動及び停止を切り替えることを特徴とする請求項7記載の型締装置。
【請求項9】
前記切り替え部は、目標型締力が維持されるべき間は、前記第二の電流指令生成部を作動させることを特徴とする請求項7記載の型締装置。
【請求項10】
前記切り替え部は、型締め開始後から所定の期間は、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする請求項7記載の型締装置。
【請求項11】
前記切り替え部は、前記目標型締力の変更開始時から所定の期間は、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする請求項7記載の型締装置。
【請求項12】
前記切り替え部は、前記目標型締力が0のときは、前記第二の電流指令部を停止させることを特徴とする請求項7記載の型締装置。
【請求項13】
電磁石によって型締力を作用させる型締制御方法であって、
目標型締力に応じた前記電磁石への電流指令を生成し、
前記電磁石による前記型締力を検出し、
前記型締力の検出値に基づいて前記電流指令を補正する補正指令を生成することを特徴とする型締制御方法。
【請求項14】
前記電流指令と前記補正指令とに基づいて、前記電磁石へ供給する補正電流指令を算出することを特徴とする請求項13記載の型締制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162093(P2012−162093A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127292(P2012−127292)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2009−530122(P2009−530122)の分割
【原出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】