説明

基地局、移動局、測距システム、および測位システム

【課題】測位における符号長の大きさを、受信時刻の検出において必要とされる精度が得られ、かつ、受信時刻の検出に要する時間を短縮するように決定することができる基地局、移動局、測距システム、および測位システムを提供する
【解決手段】移動局から送信され、受信部26により受信された電波をサンプリング部27によりサンプリングすることによって得られる符号に含まれる拡散符号と予め記憶された該拡散符号のレプリカ符号との相関値が相関値演算部28により算出され、同期時刻検出部30により前記相関値に基づいて受信した電波に含まれる拡散符号の同期時刻が検出され、符号長決定部32により、同期時刻検出部30における同期時刻検出の際に算出される相関値のピーク値と同期時刻検出部30に予め設定された要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の符号長の大きさの拡散符号を含む電波を送信する移動局、拡散符号を含む電波を受信し、その受信時刻を検出し、また、要求された受信時刻の検出精度を満たすために必要となる拡散符号の符号長の大きさを決定する基地局、前記基地局によって検出される受信時刻に基づいて前記移動局および基地局の距離を算出する測距システム、および前記測距システムによって算出される複数の前記基地局および前記移動局との距離と前記複数の基地局の位置についての情報に基づいて移動局の位置を算出する測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動局が送信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻に基づいて、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの距離を算出し、算出された距離に基づいて移動局の位置の検出を行なう測位システムが提案されている。
【0003】
かかる測位システムにおいては、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの距離は、電波の伝搬時間に基づいて算出される。また、この電波の伝搬時間は移動局による電波の送信時刻と前記複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻に基づいて算出されることから、測位精度を高精度に行なうためには、前記複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻の検出をより高精度に行なう必要がある。特許文献1には、無線端末間でスペクトラム拡散された信号の位相を精密に検出することにより電波の伝搬時間を検出する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特表2001−510566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで無線通信においては、信号波形の立ち上がり時刻などに生ずる時間ゆらぎ、すなわちジッタ(jitter)が含まれる。ジッタが大きいと受信器における受信時刻検出における誤差が大きく、すなわち受信時刻検出の精度が悪くなる。受信時刻検出における誤差あるいは精度は測位誤差に影響するため、ジッタが受信時刻検出結果に与える影響を低減することが望ましい。
【0006】
ジッタが受信時刻検出誤差に及ぼす影響を緩和する手段として、受信時刻検出に使用する拡散符号長の大きさを大きくすることが考えられる。ジッタが受信時刻検出における誤差に与える影響を相対的に低減することができるためである。しかし符号長の大きさを大きくすることにより測位に要する時間は長くなるため符号長はシステム性能上必要最低限であることが望ましい。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、測位における符号長の大きさを、受信時刻の検出において必要とされる精度が得られ、かつ、受信時刻の検出に要する時間を短縮するように決定することができる基地局、移動局、測距システム、および測位システムを提供することにある。
【0008】
本発明者は、以上の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、無線通信において発生するジッタの大きさと、受信時刻検出時において用いられる同期時刻検出の際に算出される受信した電波に含まれる符号とそのレプリカ符号との相関値の大きさとには相関があるという点を見いだした。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明は、(a)拡散符号を含む電波を送信する移動局と無線通信する基地局であって、(b)該移動局から送信された拡散符号を含む電波を受信する受信部と、(c)受信した電波を2値化するサンプリング部と、(d)該サンプリング部によりサンプリングされた符号に含まれる拡散符号と予め記憶された該拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する相関値算出部と、(e)該相関値算出部によって算出される相関値に基づいて前記受信した電波に含まれる拡散符号と前記レプリカ符号との同期時刻を検出する同期時刻検出部と、(f)該同期時刻検出部における同期時刻検出の際に算出される前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される予め設定された要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを決定する符号長決定部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、(a)前記符号長決定部は、前記要求精度の値と前記移動局から送信される拡散符号の符号長の大きさとに基づいて、前記要求精度を満たす前記相関値の範囲を算出する相関値範囲算出部と、(b)前記相関値と前記相関値範囲算出部によって算出された範囲との関係を評価する相関値評価部と、を有し、(c)該相関値評価部により、前記相関値が前記範囲を下回ると評価される場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを増加させ、前記相関値が前記範囲を上回ると評価される場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを減少させるように決定することを特徴とする基地局である。
【0011】
また、請求項3にかかる発明は、前記符号長決定部は、(a)前記同期時刻検出部による同期時刻検出の精度、前記相関値、および前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさとの関係を算出する関係算出部を有し、(b)該関係算出部により算出された関係、前記要求精度、および前記相関値に基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを決定することを特徴とする基地局である。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、(a)基地局によって受信される拡散符号を含む電波を送信する移動局であって、(b)前記基地局の符号長決定部において決定された符号長の大きさに基づいて送信する拡散符号の符号長の大きさを設定する符号長設定部と、(c)該符号長設定部によって設定された符号長の大きさの拡散符号を生成する拡散符号生成部と、(d)該拡散符号生成部によって生成された拡散符号を含む電波を送信する送信部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5にかかる発明は、(a)移動局から送信された拡散符号を含む電波を基地局が受信することにより、その受信結果に基づいて該移動局と該基地局との距離を算出する測距システムであって、(b)前記基地局は請求項1乃至3のいずれか1に記載の基地局であり、(c)前記移動局は請求項4に記載の移動局であり、(d)前記同期時刻検出部によって検出される同期時刻と、該移動局によって送信された電波の送信時刻とに基づいて前記移動局および基地局間の距離を算出する測距部を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6にかかる発明は、(a)移動局から送信される拡散符号を含む電波を3つ以上の基地局が受信することにより、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する測位システムであって、(b)前記基地局は請求項1乃至3にいずれか1に記載の基地局であり、(c)前記移動局は請求項4に記載の移動局であり、(d)前記同期時刻検出部によって検出される前記3つ以上の各基地局における同期時刻と、該3つ以上の基地局のそれぞれの位置についての情報に基づいて前記移動局の位置を算出する測位部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる基地局によれば、前記移動局から送信され、受信部により受信された電波をサンプリング部によりサンプリングすることによって得られる符号に含まれる拡散符号と予め記憶された該拡散符号のレプリカ符号との相関値が前記相関値演算部により算出され、前記同期時刻検出部により、前記相関値算出部によって算出された相関値に基づいて前記受信した電波に含まれる拡散符号と前記レプリカ符号との同期時刻が検出され、前記符号長決定部により、前記同期時刻検出部における同期時刻検出の際に算出される前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される予め設定された要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。
【0016】
請求項2にかかる基地局によれば、前記相関値範囲算出部により、前記要求精度の値と前記移動局から送信される拡散符号の符号長の大きさとに基づいて、前記要求精度を満たす前記相関値の範囲が算出され、前記相関値評価部により、前記相関値と前記相関値範囲算出部によって算出された範囲との関係を評価され、さらに符号長決定部により、前記相関値が前記範囲を下回ると前記相関値評価部により評価された場合には、前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを増加させ、前記相関値が前記範囲を上回ると評価された場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを減少させるように決定するので、前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。
【0017】
請求項3にかかる基地局によれば、前記符号長決定部の有する関係算出部により、前記同期時刻検出部による同期時刻検出の精度、前記相関値、および前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさとの関係が算出され、また、前記符号長決定部によって、前記関係算出部により算出された関係、前記要求精度、および前記相関値に基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定されるので、前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。
【0018】
また、請求項4にかかる移動局によれば、前記符号長設定部により、前記基地局の符号長決定部において決定された符号長の大きさに基づいて送信する拡散符号の符号長の大きさが設定され、前記拡散符号生成部により、前記符号長設定部によって設定された符号長の大きさの拡散符号が生成され、前記送信部により、前記拡散符号生成部によって生成された拡散符号を含む電波が送信されるので、基地局の同期時刻検出部に要求される要求精度に必要な符号長の大きさの拡散符号が移動局から送信される。
【0019】
また、請求項5にかかる測距システムによれば、該測距システムを構成する基地局は請求項1乃至3のいずれか1に記載の基地局であり、該測距システムを構成する移動局は請求項4に記載の移動局であり、また、前記測距部により、前記同期時刻検出部によって検出される同期時刻と、前記移動局によって送信される電波の送信時刻とに基づいて前記移動局および基地局間の距離が算出されるので、前記同期時刻は、前記相関値の大きさと前記同期時刻検出部に要求される要求精度の値とに基づいてその符号長の大きさが決定される拡散符号の同期検出によって得られ、その同期時刻を用いて前記測距部によって算出される移動局と基地局との距離は、正確に算出される。
【0020】
また、請求項6にかかる測距システムによれば、前記3つ以上の基地局のそれぞれにおいて前記同期時刻検出部により検出される前記同期時刻と前記3つ以上の基地局のそれぞれの位置についての情報に基づいて、前記測位部により前記移動局の位置が算出されるので、前記移動局による電波の送信時刻と基地局の同期時刻とに基づいて正確に算出される移動局と基地局との距離に基づいて、移動局の位置が正確に算出される。
【0021】
好適には、測距システムは、前記移動局および前記基地局がそれぞれ有する時計の時刻を同期する時計同期部を有するので、前記移動局による電波の送信時刻と基地局の受信時刻とに基づいて算出される移動局と基地局との距離は、正確に算出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の測位システム8の構成の一例を示した図である。図1に示すように、測位システム8は、移動可能な移動局10、既知の位置に固定され、前記移動局10と無線による通信を行なう機能を有する第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局12(以下、第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)、および例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されるサーバ14を含んで構成される。なお、移動局10の数は1個以上であればとくに限定されない。また、基地局12はそれぞれ、通信ケーブル18によってサーバ14と接続され、例えば基地局12およびサーバ14によりLANが構築され、相互に通信可能とされている。
【0024】
図2は、本発明の測距システム6の構成の一例を示した図である。図2に示すように、測距システム6は前記移動局10から送信された電波を前記基地局12が受信し、その受信結果を前記サーバ14が処理することにより、前記移動局10と前記基地局12との距離lを算出する。前述の図1に示す測位システム8において、サーバ14が各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出し、その距離に基づいて移動局10の位置を算出する場合においては、前記測位システム8は各基地局12と、移動局10とサーバ14を含む複数の測距システム6を含んで構成されているともいえる。すなわち、図1において、測位システム8は、第1基地局12Aと移動局10との間の距離を算出する測距システム6A、第2基地局12Bと移動局10との間の距離を算出する測距システム6B、第3基地局12Cと移動局10との間の距離を算出する測距システム6C、第4基地局12Dと移動局10との間の距離を算出する測距システム6D、を含んで構成されているともいえる。なお、図2においては、測距の対象は移動可能な移動局10とされ、また、基地局12は固定されているが、単に2つの無線局の間の距離を算出する場合においては、両者はともに移動可能であってもよい。
【0025】
図3は、基地局12の有する機能の一例の概要を説明するブロック図である。基地局12は、アンテナ22、送受信切換回路24、受信部26、サンプリング部27、相関値算出部28、同期時刻検出部30、符号長決定部32、相関値範囲算出部34、相関値評価部36、送信部38、時計同期部40、時計42、有線通信インタフェース44などを含んで構成される。また、この基地局12は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記相関値算出部28、同期時刻検出部30、符号長決定部32、時計同期部40などにおける処理を実行するようになっている。
【0026】
受信部26および送信部38は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ22を用いて電波の送受信を行なう。例えば送信部38は、後述する移動局10の作動を制御する指令や、後述する符号長決定部32において決定された移動局10から送信される符号の符号長の大きさに関する情報を含む電波を送信する。また、受信部26は、移動局10によって送信される電波を受信し、その内容を必要に応じて時計同期部40、あるいは相関値算出部28などに渡し処理を実行させる。すなわち、送信部38は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有し、また、受信部26は、アンテナ22によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。このとき、送信部38および受信部26が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、送信部38および受信部26はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。サンプリング部27は、このデジタル復調のための機構の1つであり、前記受信部26において受信された電波の波形を解析し、例えば受信された電波の受信電圧の値が所定の閾値を超えた状態を1、閾値を超えていない状態を0のように2値化する。すなわち、このサンプリング部27により、受信波に含まれる信号は1と0とのいずれかに2値化されたデジタル信号として出力される。なお、このサンプリング部27による2値化は、1と0との2値化にかぎられず、例えば1と−1との2値化であってもよい。
【0027】
また、アンテナ22は、前述の送信部38および受信部26が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10の位置、すなわち基地局12から見た移動局10の方向に関わらず基地局12からの距離が同じ位置に移動局10が存在する場合には同じ強さで電波を受信できるように、アンテナ22は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0028】
送受信切換回路24は、前記受信部26と送信部38との何れを作動状態とするかを切り換える。すなわち、基地局12が無線の受信状態にあるか送信状態にあるかを切り換える。好適には例えば、通常は基地局12を受信状態としておき、例えば後述する符号長決定部32において符号長の大きさが決定される場合など、移動局10へ無線により送信する必要がある時においてのみ、基地局12が送信状態とされてもよい。
【0029】
相関値算出部28は、移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する。具体的には、予め移動局10が送信する拡散符号と同一のレプリカ符号を相関値算出部28が有しておき、そのレプリカ符号と、受信された移動局10からの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とをマッチドフィルタ(図12参照)に入力することにより、両者の相関値を得ることができる。このマッチドフィルタは遅延素子を含んで構成されており、少なくとも一方の入力、図12においては受信符号を任意のビット数(遅延量)だけ遅延させて相関値を算出することができる。そして、前記受信符号を、たとえば図12の遅延素子等を用いて所定の遅延量づつ遅延させ、再度相関値を算出する。この遅延を前記拡散符号の1符号長に相当するまで繰り返す。ここで、図12のマッチドフィルタによって算出される2つの符号a,bの相関値Rは、次のように定義される。
【数1】

ここで、Nは2つの符号a,bの符号長の大きさであり、a、bk+ιは符号a、bのそれぞれk番目のビット、k+ι番目のビットの内容である。また、ιは前記遅延素子などによる遅延量である。前記数1の右辺第2項においては、2つの符号a、bの各ビットごとの排他的論理和を算出し、算出された排他的論理和の合計に2を乗ずるものである。すなわち、前記2つの符号a、bの各ビットの内容が一致するほど、前記数2の右辺第2項の値は小さくなり、前記a、bの各ビットの内容が完全に一致するとその値は0となる。これに伴って、相関値Rの値は前記2つの符号a、bの各ビットの内容が一致するほど大きくなり、前記a、bの各ビットの内容が完全に一致するとその値はa、bの符号長の大きさの値Nで最大となる。ところで、このように算出される相関値Rは符号長の大きさNに依存する値である。一方、本発明においては、符号長の大きさの異なる符号の相関値のピーク値を比較するため、符号長の大きさで規格化した値であるRNORM(ι)を用いている。具体的には、本発明で用いる規格化された相関値(以下単に「相関値」という。)RNORM(ι)は、
NORM(ι)=R(ι)/N
で表される。
【0030】
同期時刻検出部30は、前記相関値算出部28によって算出される相関値に基づいて前記受信符号とレプリカ符号とが同期した時刻である同期時刻を検出する。具体的には、同期時刻検出部30は、前記相関値算出部28によって算出される相関値がピークを生じた際の時刻を同期時刻として検出する。これは、同期時には相関値に鋭いピークを生ずるという拡散符号の特性を用いたものである。
【0031】
ところで、一般に無線通信においては、通信伝送の中で現れる時間ゆらぎ(ジッタ;jitter)が生ずる。このジッタは、信号波形の立ち上がり時刻やパケットの到着間隔に現れるものであり、前記基地局12の受信部26によって受信される移動局10からの電波に含まれる信号である受信符号にもジッタが含まれる。受信符号がジッタを含む場合には、前記相関値算出部28による相関値の算出において誤差を生ずる。そのため、前記同期時刻検出部30による同期時刻の検出においても誤差を生じ、さらに、後述する測距部74によって算出される移動局10と基地局12との距離、あるいは測位部76によって算出される移動局10の位置についても誤差を生ずることとなる。
【0032】
一方、ジッタの大きさと前記相関値算出部28によって算出される相関値のピーク時における大きさ(相関値のピーク値)とは相関がある。すなわち、ジッタが大きいほど、相関値のピーク値は小さくなる。なお、ジッタの大きさとは、例えば、所定回数の信号波形の立ち上がりに対して発生したジッタの大きさの標準偏差が好適に用いられる。
【0033】
図7および図8は、符号長の大きさNをN=63とした拡散符号を移動局10から送信した場合における、発生するジッタの標準偏差の大きさと、相関値算出部28によって算出される相関値のピーク値および同期時刻検出部30によって検出される同期時刻検出の誤差の大きさの標準偏差との関係のシミュレーション結果を示した表および図である。なお、同期時刻検出の誤差の大きさは、その標準偏差の大きさで表されている。図7の表および図8のグラフに示すように、ジッタの標準偏差の大きさが大きくなるほど相関値のピークの大きさは小さくなり、また、ジッタの標準偏差の大きさが大きくなるほど同期時刻検出の誤差の標準偏差は大きくなる。
【0034】
ジッタによって生ずる誤差を低減するためには、相関値の算出を行なうための拡散符号の符号長の大きさを大きくすることが考えられる。拡散符号の符号長の大きさを大きくすると、信号の立ち上がりおよび立ち下がりの回数が増加する。これは見かけ上の測定回数が増えたことと同じといえる。したがって、同期時刻検出部30による同期時刻の検出における誤差(同期時刻検出誤差)を低減することができる。図9および図10は、ジッタの標準偏差を12.5(ns)であるとした場合において、移動局10から送信される符号長の大きさをそれぞれ31、63、127、255とした場合の、同期時刻検出部30による同期時刻検出の誤差の大きさの標準偏差(ns)との関係についてのシミュレーションを行なった結果を示す表および図である。図9の表および図10の図に示すように、相関値の算出に用いられる拡散符号の符号長の大きさが大きくなるほど、同期時刻検出部30による同期時刻検出の誤差の大きさは小さくなることがわかる。
【0035】
図6は、ジッタ、相関値算出部28により算出される相関値のピーク値、拡散符号の符号長の大きさ、同期時刻検出部30による同期時刻検出における誤差、測位部76による測位の誤差の関係を表した図である。この図において、四角で表されたブロックは観測することのできない量、細線の楕円で表されたブロックは観測可能な量、太線の楕円で表されたブロックは制御可能な量を表している。図6に示すように、ジッタが大きくなるほど、同期時刻検出における誤差が大きくなり(正の相関)、同期時刻検出における誤差が大きくなるほど測位誤差が大きくなる(正の相関)。しかしながら、ジッタの大きさを測定することはできず、同期時刻検出における誤差や測位誤差の大きさを測定することはできない。また、ジッタの大きさが大きくなるほど、相関値のピーク値は小さくなり(負の相関)、拡散符号の符号長の大きさが大きくなるほど、同期時刻検出における誤差は小さくなる(負の相関)。
【0036】
従って、測定可能な量である相関値のピーク値に基づいて符号長の大きさを大きくすることにより、測位誤差を所望の値よりも小さいものとすることが可能である。しかしながら、符号長の大きさを大きくすることは、前記相関値算出部28による相関値の算出に要する時間が長くなるため、結果として測距部74による測距、あるいは測位部76による移動局10の測位に要する時間が長くなる。そのため、符号長の大きさは、例えば同期時刻検出の誤差を予め設定される許容範囲におさめることのできる最小の大きさであることが望ましい。
【0037】
そこで、符号長決定部32は、同期時刻検出の誤差が予め設定される許容範囲内となる最小の符号長の大きさとなるように、移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさを決定する。具体的には例えば、符号長決定部32は相関値範囲算出部34、および相関値評価部36を含んで構成される。相関値範囲算出部34はまず、移動局10が送信しうる拡散符号の符号長の大きさのそれぞれについて、所定の相関値の間隔ごとに同期時刻検出の誤差の標準偏差の値をシミュレーションにより算出する。図11は、想定されるジッタの標準偏差の大きさを例えば12.5(ns)とした場合に、拡散符号の符号長の大きさと相関値の大きさとの組み合わせに対応して得られる同期時刻検出の誤差の標準偏差の値を表した表である。この図11の表によれば、例えば、符号長の大きさ63の拡散符号が移動局10から基地局12へ送信される場合であって、その拡散符号を受信した基地局12の相関値算出部28において算出される相関値のピーク値が0.980であった場合には、その基地局12の同期時刻検出部30において検出される同期時刻の検出誤差の標準偏差は8.9(ns)である。なお、前記所定の相関値の間隔は、前記相関値算出部28における分解能に基づいて決定される。例えば、相関値算出部28の分解能が0.005である場合には、図11の表の相関値の間隔はその分解能と同一の0.005とされる。
【0038】
続いて、相関値範囲算出部34は、操作者による入力などにより予め設定される同期時刻検出に許容される誤差の値に基づいて、符号長の大きさごとに、その許容される誤差を満たす最小の相関値の範囲を算出する。具体的には例えば、システムに要求される同期時刻検出の誤差が8(ns)以内とされる場合には、相関値範囲算出部34は、図11の表において太線で囲まれたセルがその誤差を満たすものと判断し、太線で囲まれたセルのうち、各符号長の大きさごとに、最も下に位置するセルに対応する相関値の範囲を、その誤差を満たすのに適した相関値の範囲であると算出する。すなわち、図11の例でいえば、前述のように同期時刻検出の誤差が8(ns)以内とされる場合においては、符号長の大きさが31の場合には、0.990以上、符号長の大きさが63の場合0.985以上0.990未満、符号長の大きさが127の場合0.980以上0.985未満、符号長の大きさが255の場合0.970以上0.975未満がそれぞれ適当な相関値の範囲であると判断する。
【0039】
相関値評価部36は、前記相関値算出部28において算出された相関値のピークと、前記相関値範囲算出部34において算出された相関値の範囲とを比較し、算出された相関値のピークが前記相関値の範囲内にあるか、前記相関値の範囲の上限を超えているか、前記相関値の範囲の下限を下回っているかを判断する。具体的には例えば、要求される同期時刻の検出精度が8.0(ns)であり、移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが63の場合には、前記相関値範囲算出部34によって算出される相関値の範囲の上限thupは0.990、下限thlowは0.985であるので、前記相関値算出部28において算出される相関値のピークが上限thupを上回っているか、上限thup未満かつ下限thlow以上であるか、あるいは下限thlowを下回っているかを評価する。
【0040】
そして、符号長決定部32は、前記相関値評価部36による相関値の評価に基づいて、次回に相関値算出部28において相関値を算出するための拡散符号の符号長の大きさを決定する。具体的には、前記前記相関値評価部36において、算出された相関値のピークが下限thlowを下回っていると評価された場合には、符号長の大きさを大きくなるように、また、相関値のピークが上限thupを上回っていると評価された場合には、符号長の大きさを小さくなるように変更する。一方、相関値のピークが上限thup未満かつ下限thlow以下であると評価された場合には、その符号長の大きさを維持する。より具体的には、要求される同期時刻の検出精度が8.0(ns)であり、移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが63の場合には、前記相関値範囲算出部によって算出される相関値の範囲の上限thupは0.990、下限thlowは0.985であるので、前記相関値算出部28において算出される相関値のピークが上限thup=0.990を上回っている場合には、符号長の大きさが31に決定され、下限thlow=0.985を下回っている場合には符号長の大きさを127に決定する。なお、本実施例においては、符号長の大きさとは拡散符号のビット数を意味するものであり、拡散符号を構成する原始多項式の次数がnの拡散符号の符号長の大きさは2−1である。また、符号長の大きさの変更は、例えば拡散符号を構成する原始多項式の次数を1つ減少あるいは増加させることによって行なわれる。
【0041】
時計42は、時刻を計測するものであって、例えば同期時刻検出部30が同期時刻を検出する際などに参照される。また、時計同期部40は時計42の時刻と後述する移動局10の時計68の時刻とを同期させる。具体的には例えば、移動局10が既知の位置に存在する場合において、移動局10から送信された電波に含まれる送信時刻情報と、移動局10から基地局12までの距離に基づいて算出される電波の伝搬時間と、基地局12において移動局10から送信された電波の受信時間とに基づいて、基地局12の時計42の時刻と後述する移動局10の時計68の時刻との時刻ずれを算出し、かかる時刻ずれが零となるようにいずれかの時計の時刻を補正することにより、基地局12の時計42の時刻と後述する移動局10の時計68の時刻とを同期させる。
【0042】
有線通信インタフェース44は、通信ケーブル18を介して基地局12とサーバ14との情報通信を行なう。具体的には、基地局12の同期時刻検出部30によって検出される電波の受信時刻としての同期時刻や、移動局10から送信される電波に含まれる送信時刻についての情報が基地局12からサーバ14に送信されるほか、サーバ14からは、基地局12は移動局10の作動に関する指令などが送信される。
【0043】
図4は移動局10の有する機能の概要を説明するブロック図である。移動局10は、アンテナ52、受信部56、送信部64、伝文解析部58、符号長設定部60、拡散符号生成部62、時計同期部66、時計68などを有して構成される。また、この移動局10は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記伝文解析部58、符号長設定部60、拡散符号生成部62、時計同期部66などにおける処理を実行するようになっている。
【0044】
受信部56および送信部64は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ52を用いて電波の送受信を行なう。例えば送信部64は、前記基地局12に対し相関値を算出するための拡散符号を含む電波を送信する。また、受信部56は、基地局12の符号長決定部32によって決定された拡散符号の符号長の大きさに関する情報や、電波の送信開始などの移動局10の作動に関する指令を含む電波を受信し、その内容を必要に応じて時計同期部66、あるいは伝文解析部58などに渡し処理を実行させる。すなわち、送信部64は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有し、また、受信部56は、アンテナ52によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。このとき、送信部64および受信部56が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、送信部64および受信部56はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0045】
また、アンテナ52は、前述の送信部64および受信部56が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10からの距離が同じ場合にアンテナ22からの距離が同じ基地局12において移動局10からの方向に関わらず同じ強さで電波を受信できるように、アンテナ22は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0046】
送受信切換回路54は、前記無線部56と送信部64との何れを作動状態とするかを切り換える。すなわち、移動局10が無線の受信状態にあるか送信状態にあるかを切り換える。好適には例えば、通常は移動局10を受信状態としておき、例えば送信部64により基地局12に対して拡散符号が送信される場合など、無線により送信する必要がある時においてのみ、移動局10が送信状態とされてもよい。
【0047】
伝文解析部58は、受信部56において受信され、復号された基地局12からの電波の内容を解析し、移動局10の制御作動に関する指令を取り出す。
【0048】
符号長設定部60は、移動局10が電波によって送信する拡散符号の符号長の大きさが設定される。この拡散符号の符号長の大きさは、前記基地局12の符号長決定部32によって決定され、その情報が基地局12から移動局10へ無線によって伝達されたものとされる。
【0049】
拡散符号生成部62は、移動局10が電波によって送信する拡散符号を生成する。このとき、生成される拡散符号の符号長の大きさは、前記符号長設定部60によって設定されたものが用いられる。具体的には例えば、拡散符号生成部62は、図示しないメモリなどの記憶手段に予め複数の符号長の大きさに対応する拡散符号を複数記憶しておき、前記符号長設定部60により設定される符号長の大きさに対応する複数の拡散符号から選択された1つの拡散符号が用いられる。このとき、予め記憶される複数の拡散符号と同一の拡散符号が基地局12においても予め記憶されており、レプリカ符号として用いられる。
【0050】
時計68は、時刻を計測するものであって、例えば送信部64が電波を送信する際に参照され、送信時刻に関する情報は拡散符号とともに基地局12に送信される。また、時計同期部66は前記基地局12の時計同期部40と協調して動作するものであって、前記基地局12の時計42の時刻と移動局10の時計68の時刻とを同期させる。具体的には例えば、移動局10が既知の位置に存在する場合において、移動局10から送信された電波に含まれる送信時刻情報と、移動局10から基地局12までの距離に基づいて算出される電波の伝搬時間と、基地局12において移動局10から送信された電波の受信時間とに基づいて、基地局12の時計42の時刻と移動局10の時計68の時刻との時刻ずれを算出し、かかる時刻ずれが零となるようにいずれかの時計の時刻を補正することにより、基地局12の時計42の時刻と後述する移動局10の時計68の時刻とを同期させる。
【0051】
図5は、サーバ14の有する機能の概要を説明するブロック図である。サーバ14は有線通信インタフェース72、測距部74、測位部76などを有している。また、サーバ14は、前述のようにCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、図5に示す測距部74、測位部76などにおける処理を実行するようになっている。
【0052】
有線通信インタフェース72は、サーバ14と基地局12との通信ケーブル18を通した情報通信を行なうためのインタフェースである。この有線通信インタフェース72は、例えばサーバ14から基地局12に対し、基地局12の制御作動に関する指令を行なったり、あるいは移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせたりする。また、有線通信インタフェース72は、基地局12から送信される情報、例えば基地局12における電波の受信時刻に関する情報や、移動局10からの電波に含まれる移動局10における電波の送信時刻に関する情報などが受信される。なお、サーバ14の有線通信インタフェース72が移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせるのは、サーバ14は無線通信に関する機能、すなわち受信部や送信部を有していない一方、移動局10は有線通信に関する機能、すなわち有線通信インタフェースを有しておらず、サーバ14と移動局10とが直接通信を行なうことができないためであり、このため、サーバ14と移動局10とはいずれかの基地局12を介して通信を行なうことができる。
【0053】
測距部74は、移動局10における電波の送信時刻と各基地局12におけるその電波の受信時刻とに基づいて、移動局10および基地局12の距離を算出する。具体的には、前記電波の受信時刻と電波の送信時刻との差によって算出される電波の伝搬時間に、電波の速度c(=2.997×10(m/s))を乗ずることによって移動局10および基地局12の距離が算出される。具体的には例えば、移動局10における電波の送信時刻がtt、第1基地局12Aにおける電波の受信時刻、すなわち第1基地局12Aの同期時刻検出部30において検出された同期時刻がTr1である場合、測距部74は第1基地局12Aと移動局との距離rをr=c×(Tr1−tt)のように算出する。このとき、移動局10における電波の送信時刻に関する情報は、例えば、移動局10の送信部64が電波を送信する際に、送信する電波に時計68を参照することにより得られる時刻情報を付加して送信し、これを受信した基地局12の受信部26が受信し、通信ケーブル18を介してサーバ14に伝達することにより得られる。また、基地局12における電波の受信時刻は、同期時刻検出部30によって検出される、移動局10から送信される拡散符号の同期時刻が受信時刻として用いられる。なお、前述のように、基地局12の時計同期部40および移動局10の時計同期部66により、基地局12の時計42の時刻と移動局10の時計68の時刻とは同期されているので、基地局12の時計42の時刻に基づいて算出される受信時刻と、移動局10の時計68の時刻に基づいて算出される送信時刻により、移動局10から基地局12までの電波の伝搬時間を正確に算出することができる。
【0054】
測位部76は、予め既知である各基地局12の位置に関する情報と、測距部74において算出された各基地局12と移動局10との距離に関する情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。具体的には例えば、すなわち、第1基地局12Aの位置を表す座標が(x,y)、第2基地局12Bの座標が(x,y)、第3基地局12Cの座標が(x,y)であり、前記測距部74によって第1基地局12Aと移動局10との距離がr(m)、第2基地局12Bと移動局10との距離がr(m)、第3基地局12Cと移動局10との距離がr(m)である場合において、移動局10の位置を表す座標を(x,y)とすると、これらの関係は次式(1)で表される。
(x−x)+(y−y)=r
(x−x)+(y−y)=r
(x−x)+(y−y)=r …(1)
測位部76はこの式(1)を満たす(x,y)を算出し、移動局10の位置とする。図13は、前述の式(1)で現れる第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および移動局10の位置関係の一例を図示したものである。図13に示すように、測距部74により第1基地局12Aと移動局10との距離がr、第2基地局12Bと移動局10との距離がr、第3基地局12Cと移動局10との距離がrであると算出されると、測位部76は第1基地局12Aを中心とする半径rの円と、第2基地局12Bを中心とする半径rの円と、第3基地局12Cを中心とする半径rの円の交点が移動局10の位置であるとして算出する。なお、測位部76においては、少なくとも3つの基地局12のそれぞれと移動局10との距離が得られていれば移動局10の位置の算出が可能であるため、式(1)および図13においては、第4基地局12Dに関する記載が省略されているが、第4基地局12Dの位置、および第4基地局12Dと移動局10との距離を考慮して移動局10の位置を算出することも可能である。
【0055】
図14は、本発明の測位システム8の制御作動の概要の一例を説明するフローチャートである。まずSA1においては、例えば図示しない入力装置を用いて、操作者により要求される測位精度が設定される。この測位精度は、例えば、同期時刻検出部30における同期時刻の検出における誤差の標準偏差の大きさ(ns)で設定される。
【0056】
本発明の測距システム6に対応するSA2においては、測位システム8を構成する基地局12のそれぞれと移動局10との距離が算出される測距ルーチンが実行される。
【0057】
図15は、この測距ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートであって、測距システム6に対応するものである。まず、基地局12の時計同期部40および移動局10の時計同期部66などに対応するSB1においては、時計合わせルーチンが実行され、両者の時計とが同期させられる。図16はこの時計合わせルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、SC1においては、移動局10が所定の既知の位置へ移動させられる。たとえば、図1において第1基地局12A乃至第4基地局12Dの何れからも等距離である点Pなどに移動させられる。この点Pの位置は予め既知であり、点Pと各基地局12との移動局10との距離も既知とされている。なお、各基地局12の時計42の時刻は、例えば通信ケーブル18を介してサーバから送信される時刻情報などに基づいて設定されるなどにより、予め同期されている。
【0058】
移動局10の送信部64に対応するSC2においては、後述するSC3において受信時刻としての同期時刻を検出するための拡散符号、および電波の送信時刻に関する情報を含む電波が移動局10から送信される。そして、基地局12の受信部26、相関値算出部28、同期時刻検出部30などに対応するSC3においては、SC2において移動局10から送信された電波が、少なくとも1つの基地局において受信され、その受信時刻が算出される。
【0059】
基地局12の時計同期部40に対応するSC4においては、SC3において移動局10からの電波を受信した基地局12において、移動局10の時計68の時刻と基地局12の時計42の時刻とのずれ量が算出される。このずれ量が、移動局10の時計68の時刻を補正する補正量である。このずれ量tdiffの算出は、SC1において移動局10が位置する既知の点PとSC3において移動局10からの電波を受信した基地局12との距離を電波の速度cで除することにより得られる電波の伝搬時間の理論値tthと、SC3において算出される移動局10からの電波の受信時刻とSC2における移動局10からの電波の送信時刻との差によって算出される実際の電波の伝搬時間treに基づいて、tdiff=tre−tthのように算出される。すなわち、電波の伝搬時間の理論値tthが実際の電波の伝搬時間treよりも大きい場合には、その差分tdiff(=tre−tth)だけ移動局10の時計68を進めるように算出される。
【0060】
基地局12の送信部38などに対応するSC5においては、SC4において算出された移動局10の時計68のずれ量tdiffについての情報が、例えばSC4の実行された基地局12から移動局10へ無線により送信される。
【0061】
移動局10の受信部56、時計同期部66などに対応するSC6においては、SC5において基地局12から無線により送信された移動局10の時計68のずれ量tdiffについての情報に基づいて、移動局10の時計68の時刻が補正される。この補正により、移動局10の時計68の時刻と基地局12の時計42の時刻とは同期される。
【0062】
図15のフローチャートに戻って、移動局10の送信部64などに対応するSB2においては、移動局10から各基地局12に対し測位のための電波の送信が行なわれる送信ルーチンが実行される。
【0063】
図17は、この送信ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートであって、移動局10の拡散符号生成部62に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、設定された拡散符号の符号長の大きさに対応する拡散符号が生成される。この拡散符号の生成は、例えば、予め記憶された複数の符号長の大きさに対応する拡散符号の中から、前記設定された拡散符号の符号長の大きさに対応する拡散符号が選択されることによって行なわれる。また、前記設定された拡散符号の符号長の大きさとは、図15のフローチャートが繰り返し実行される場合においては前回の実行時における後述するSB7において決定されるものが採用される。一方、図15のフローチャートが初めて実行される場合には、例えば符号長の大きさの大きさが63などのように予め定められた初期値が用いられる。
【0064】
移動局10の送信部64などに対応するSD2においては、SD1において決定された拡散符号を含む電波が基地局12に対して送信される。
【0065】
図15に戻って、基地局12の受信部26などに対応するSB3においては、SB2において移動局10から送信された拡散符号を含む電波が受信される。そして、基地局12の相関値算出部28および同期時刻検出部30に対応するSB4においては、SB3で受信された電波に含まれる拡散符号と、そのレプリカ符号との相関値が、前記受信された電波に含まれる拡散符号を所定単位時間ずつずらしながら算出され、算出された相関値がピークを生じた際のずらした時間に基づいて、同期時刻が算出される。さらに、ピークとなった相関値の値が図示しない記憶手段などに記憶される。また、SB5においては、SB4において検出された移動局10からの電波の受信時刻としての同期時刻と、前記SB2において移動局10からの電波に含まれるその電波の送信時刻に関する情報とに基づいて、移動局10から基地局12への電波の伝搬時間が算出され、サーバ14に送信される。
【0066】
サーバ14の測距部74などに対応するSB6においては、前記SB5において算出されサーバ14に送信された移動局10から基地局12への電波の伝搬時間に基づいて、移動局10と基地局12との距離が算出される。具体的には、前記伝搬時間に電波の速度cを乗ずることにより移動局10と基地局12との距離が算出される。なお、測位のために、少なくとも3つ以上の基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出される。
【0067】
基地局12の符号長決定部32などに対応するSB7においては、SB4において検出された相関値のピーク値などに基づいて、次回に測位を行なう際に移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号の符号長の大きさが決定される符号長大きさ決定ルーチンが実行される。
【0068】
図18はこの符号長の大きさ決定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、相関値範囲算出部34に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SE1においては、移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号の符号長の大きさの現在の値と、要求される同期時刻検出の精度とに基づいて、相関値のピーク値が満たす範囲である相関値範囲の上限thupおよび下限thlowが決定される。
【0069】
続く相関値評価36に対応するSE2においては、SB4で検出された相関値のピーク値と、SE1で算出された相関値範囲の上限thupとが比較され、SB4で検出された相関値のピーク値が相関値範囲の上限thupを上回っているかが判断される。そして、SB4で検出された相関値のピーク値が相関値範囲の上限thupを上回っている場合には本ステップの判断が肯定され、SE3が実行される。
【0070】
符号長決定部32に対応するSE3においては、移動局10の測位のために次回に移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが小さくなるように決定される。これは、本ステップが実行される場合、すなわち、SE2の判断が肯定される場合は、移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが要求される同期時刻検出の誤差を満たす程度に十分大きい一方、必要以上に長いため、計算時間が長くなっているためである。具体的には例えば、符号長の大きさの変更は、例えば拡散符号を構成する原始多項式の次数を1つ減少させることによって行なわれる。
【0071】
相関値評価部36に対応するSE4においては、SB4で検出された相関値のピーク値と、SE1で算出された相関値範囲の下限thlowとが比較され、SB4で検出された相関値のピーク値が相関値範囲の下限thlowを下回っているかが判断される。そして、SB4で検出された相関値のピーク値が相関値範囲の下限thlowを下回っている場合には本ステップの判断が肯定され、SE5が実行される。
【0072】
符号長決定部32に対応するSE5においては、移動局10の測位のために次回に移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが大きくなるように決定される。これは、本ステップが実行される場合、すなわち、SE4の判断が肯定される場合は、移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさが要求される同期時刻検出の誤差を満たさない程度に小さいためである。具体的には例えば、符号長の大きさの変更は、例えば拡散符号を構成する原始多項式の次数を1つ増加させることによって行なわれる。
【0073】
一方、SE2およびSE4の判断が何れも否定される場合、すなわち、SB4において検出された相関値のピーク値がSE1において算出された相関値範囲ないである場合には、符号長の大きさは変更されることなく本フローチャートは終了する。
【0074】
図15に戻って、基地局12の送信部38、移動局10の受信部56、伝文解析部58および符号長設定部60などに対応するSB8においては、SB7において決定された次に送信する拡散符号の符号長の大きさの値が基地局12から移動局10に送信され、移動局10において設定される。すなわち、図15のフローチャートが反復して実行される場合に、次にSB2が実行され移動局10から拡散符号を含む電波が送信される場合に、その拡散符号の符号長の大きさが設定される。
【0075】
前述の実施例の基地局12によれば、前記移動局10から送信され、受信部26(SB3)により受信された電波に含まれる拡散符号と予め記憶された該拡散符号のレプリカ符号との相関値が前記相関値演算部28(SB4)により算出され、前記同期時刻検出部30(SB4)により、前記相関値算出部によって算出された相関値に基づいて前記受信した電波に含まれる拡散符号と前記レプリカ符号の同期時刻が検出され、前記符号長決定部32(SB7)により、前記同期時刻検出部30における同期時刻検出の際に算出される前記相関値のピーク値の大きさと、前記同期時刻検出部30に要求される予め設定された要求精度の値とに基づいて前記移動局10が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。
【0076】
また、前述の実施例の基地局12によれば、前記相関値範囲算出部34(SE1)により、前記要求精度の値と前記移動局10から送信される拡散符号の符号長の大きさとに基づいて、前記要求精度を満たす前記相関値の範囲が算出され、前記相関値評価部36(SE2、SE4)により、前記相関値と前記相関値範囲算出部34によって算出された範囲との関係を評価され、さらに符号長決定部32(SE3、SE5)により、前記相関値が前記範囲を下回ると前記相関値評価部により評価された場合には、前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを増加させ、前記相関値が前記範囲を上回ると評価された場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを減少させるように決定するので、前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。
【0077】
また、前述の実施例の移動局10によれば、前記符号長設定部60(SB8)により、前記基地局12の符号長決定部32(SB7)において決定された符号長の大きさに基づいて送信する拡散符号の符号長の大きさが設定され、前記拡散符号生成部62(SD1)により、前記符号長設定部60によって設定された符号長の大きさの拡散符号が生成され、前記送信部64により、前記拡散符号生成部62によって生成された拡散符号を含む電波が送信されるので、基地局12の同期時刻検出部30に要求される要求精度に必要な符号長の大きさの拡散符号が移動局10から送信される。
【0078】
また、前述の実施例の測距システム6によれば、前記測距部74により、前記基地局12の同期時刻検出部30(SB4)によって検出される同期時刻と、前記移動局10によって送信される電波の送信時刻とに基づいて前記移動局10および基地局12間の距離が算出されるので、前記同期時刻は、前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部30に要求される要求精度の値とに基づいてその符号長の大きさが決定される拡散符号の同期検出によって得られ、その同期時刻を用いて前記測距部74によって算出される移動局10と基地局12との距離は、正確に算出される。
【0079】
また、前述の実施例の測位システム8によれば、前記3つ以上の基地局12のそれぞれにおいて前記同期時刻検出部30(SB4)により検出される同期時刻と、前記3つ以上の基地局12のそれぞれの位置についての情報に基づいて、前記測位部76(SA3)により前記移動局10の位置が算出されるので、前記移動局10による電波の送信時刻と基地局12の受信時刻としての同期時刻とに基づいて正確に算出される移動局10と基地局12との距離に基づいて、移動局10の位置が正確に算出される。
【0080】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0081】
図19は、本実施例における基地局12の有する機能の概要を説明するブロック図であって、前述の実施例1における図3に相当する図である。図19において、アンテナ22、送受信切換回路24、受信部26、相関値算出部28、同期時刻検出部30、時計同期部40、時計42、有線通信インタフェース44、送信部38は、前述の実施例1のものと同様の機能を有するものであるので、説明を省略する。すなわち、図19と図3を比べると、符号長決定部32の機能が異なっている。
【0082】
符号長決定部32は、関係算出部46を有する。関係算出部46は、前述の実施例における相関値範囲算出部34と同様に、移動局10が送信しうる拡散符号の符号長の大きさのそれぞれについて、所定の相関値の間隔ごとに同期時刻検出の誤差の標準偏差の値をシミュレーションにより算出し、前記図11に示すような表を作成して、図示しない記憶手段などに記憶させる。あるいは、図11に示すような表に代えて、図20に示すマップを作成してもよい。図20は、同期時刻検出部30において検出される相関値のピーク値に対して、要求される検出精度の値を満たす符号長の大きさの値を表す関係図(マップ)である。図20における4つの直線L1乃至L4は、移動局10と基地局12との間の通信におけるジッタの大きさの標準偏差の値が所定値、例えば12.5(ns)などの場合において、符号長の大きさがそれぞれ31、63、127、255である場合に、相関値のピーク値に対応する同期時刻検出誤差の値を表すものであって、シミュレーションによって得られるものである。そして、図20に示される相関値のピーク値と同期時刻検出誤差との関係を表す座標は前記直線L1乃至L4によってAi乃至Avの5つの領域に分割されている。前述の直線L1乃至L4は、符号長の大きさごとに相関値のピーク値に対して最も小さい同期時刻検出誤差を表す直線であるので、これらの領域Ai乃至Aivは、符号長の大きさがそれぞれ31、63、127、255る場合にそれぞれ相関値のピーク値に対して満たすことのできる同期時刻検出誤差を表す領域と、符号長の大きさが255以下では相関値のピーク値に対して満たすことができない同期時刻検出誤差を表す領域を示している。なお、関係算出部46が算出する関係は、同期時刻検出部30において検出される相関値のピーク値と、同期時刻検出部30に要求される検出精度との関係に対応する符号長の大きさの値を示すものであればよく、例えば数式などであってもよい。
【0083】
符号長決定部32は、前記関係算出部46によって算出された関係に、前記同期時刻検出部30において検出される相関値のピーク値と同期時刻検出部30に要求される検出精度とを適用することによって得られる符号長の大きさの値を、移動局10が次回の送信において送信する拡散符号の符号長の大きさとして決定する。
【0084】
具体的には、符号長決定部32は、関係算出部46が前記相関値のピーク値と、前記検出精度と前記符号長の大きさとの関係を図11の表のように算出する場合には、前記同期時刻検出部30において検出された相関値のピーク値に対応する検出精度の値のうち、要求される検出精度を超えることなく最も大きい値のセルを選択し、その選択されたセルに対応する符号長の大きさの値を、移動局10が次回の送信において送信する拡散符号の符号長の大きさとして決定する。より具体的には、前記同期時刻検出部30において検出された相関値のピーク値が0.984であり、要求される検出精度が8.0(ns)である場合においては、まず、表の相関値が0.980以上かつ0.985未満に対応する横方向に並んだセルに記載された検出精度の値が参照される。そして、これらの検出精度の値のうち、予め設定される検出精度の値である8.0を上回ることがなく、かつ最も大きい値である7.1が記載されたセルCsに対応する符号長の大きさの値63を、移動局10が次回の送信において送信する拡散符号の符号長の大きさとして決定する。
【0085】
あるいは、関係算出部46が図20に示すようなマップを算出する場合には、符号長決定部32は、同期時刻検出部30において検出された相関値のピーク値と要求される検出精度との関係を表す点が、マップ中の何れの領域に存在するかを判断し、その点が存在する領域に対応する符号長の大きさの大きさを移動局10が次回の送信において送信する拡散符号の符号長の大きさとして決定する。より具体的には、前記同期時刻検出部30において検出された相関値のピーク値が0.984であり、要求される検出精度が8.0(ns)である場合は、これに対応する点Qの属する領域がAiiであると判断される。そしてこの領域Aiiに対応する符号長の大きさである63を移動局10が次回の送信において送信する拡散符号の符号長の大きさとして決定する。
【0086】
なお、測位システム8におけるその他の構成、すなわち、移動局10やサーバ14については、図4および図5に示した前述の実施例における構成と同様のものが用いられる。
【0087】
図21は、本実施例における基地局12の符号長決定部32の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、前述の実施例1における図18に対応するものである。すなわち、図21のフローチャートは、例えば図15の測距システム6に対応するフローチャートにおけるSB7において実行されるルーチンである。なお、測位システム8全体に関する制御作動は、前述の実施例1において説明した図14乃至図17に示したフローチャートと同様のものが用いられるので、説明を省略する。
【0088】
図21において、関係算出部46に対応するSF1においては、予め行なわれたシミュレーションの結果などに基づいて、移動局10が送信しうる拡散符号の符号長の大きさのそれぞれについて、所定の相関値の間隔ごとに同期時刻検出の誤差の標準偏差の値がシミュレーションにより算出され、前記図11に示すような表、あるいは、図20に示すマップなどにより、これらの関係が算出される。
【0089】
そして、符号長決定部32に対応するSF2においては、同期時刻検出部30において検出された相関値のピーク値と、要求される同期時刻検出の検出誤差の値とが前記SF1において算出された関係に適用され、検出された相関値のピーク値において、前記要求される同期時刻検出の検出誤差を満たすために必要な最小の符号長の大きさの値が決定される。
【0090】
前述の実施例2の基地局12によれば、前記符号長決定部32の有する関係算出部46(SF1)により、前記同期時刻検出部30による同期時刻検出の精度、前記相関値、および前記移動局が送信する拡散符号の符号長との関係が算出され、また、前記符号長決定部32(SF2)によって、前記関係算出部46により算出された関係、前記要求精度、および前記相関値に基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定されるので、前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさが決定される。また、前述の実施例2の基地局12を有する測距システム6あるいは測位システム8によれば、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【0091】
なお、関係算出部46による表あるいはマップなどの作成は、測位の実行注に限られない。すなわち、前述の実施例においては、図21においては、図15のSB7によって本フローチャートが実行される場合においてSF1およびSF2が実行されるものとしたが、これに限られず、例えば、SF1については予め測位開始前に実行しておき、図15のSB7によって本フローチャートが実行される場合にはSF2が実行されるようにしてもよい。
【0092】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0093】
例えば、前述の実施例においては、移動局10および基地局12はそれぞれ時計同期部66および時計同期部40を有し、移動局10の時計68の時刻および基地局12の時計42の時刻を同期させた。しかしながら、この時計同期部66および時計同期部40は必ずしも必要ではなく、これらがない場合であっても一定の効果を得ることができる。
【0094】
また、前述の実施例においては、3つの基地局12において検出された移動局10からの電波の受信時刻に基づいて前記(1)式に基づいて移動局10の位置の算出を行なった(TOA(Time of Arrival)方式)が、この様な態様に限られない。例えば、4つの基地局12において検出された移動局10からの電波の受信時刻の時間差に基づいて移動局10の位置の算出を行なう(TDOA(Time Difference of Arrival)方式)こともできる。この様にすれば、少なくとも各基地局12の時計が同期されていれば基地局12の時計42の時刻と移動局10の時計68の時刻との間に時刻のずれが存在する場合であっても、その時刻のずれが測位に影響を及ぼすことがない。具体的には例えば、前記式(1)の各式において、移動局10の時計68の時刻と各基地局12の時計42の時刻とのずれをs(sec)、すなわち、移動局10の時計68の時刻が各基地局12の時計42の時刻よりもsだけ進んでいるとすると、前記式(1)は、次式(1’)のようになる。
(x−x)+(y−y)={c×(Tr1−tt+s)}
(x−x)+(y−y)={c×(Tr2−tt+s)}
(x−x)+(y−y)={c×(Tr3−tt+s)}
(x−x)+(y−y)={c×(Tr4−tt+s)} …(1’)
ここで、tt(sec)は移動局10における電波の送信時刻、Tr1乃至Tr4(sec)はそれぞれ、第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける電波の受信時刻である。このとき、式(1’)の各式の両辺の平方根をとって、第1式と第2式、第1式と第3式、第1式と第4式の両辺の差をそれぞれとることにより、移動局10における電波の送信時刻tt、および移動局10の時計68の時刻と各基地局12の時計42の時刻とのずれをsを含まない式を得ることができ、これらを解くことにより移動局10の位置を算出することができる。
【0095】
また、前述の実施例においては、移動局10および基地局12はそれぞれ時計同期部66および時計同期部40を有し、移動局10の時計68の時刻および基地局12の時計42の時刻を同期させることにより、移動局10の時計68の時刻および基地局12の時計42の時刻の時刻ずれをないものとしたが、この様な態様にかぎられない。例えば、前述の実施例における時計同期部66および時計同期部40の作動を説明する図16のフローチャートにおいて、SC1からSC4までを実行することによって、移動局10の時計68の時刻および基地局12の時計42の時刻の時刻ずれを算出した後、移動局10の時計68の時刻の補正を行なわず、測距部74において移動局10の時計68に基づいて計測された時刻、すなわち移動局10からの電波の送信時刻を前記算出された時刻ずれに基づいて補正を行なうようにしてもよい。
【0096】
なお、前述の実施例においては、移動局10が2次元平面を移動する場合の測位の例について示したが、これに限られず、移動局10が3次元空間を移動する場合も同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の測位システムの構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図2】本発明の測距システムの構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図3】本発明の基地局の構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図4】移動局の構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図5】サーバの構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図6】ジッタ、相関値のピーク値、同期時刻検出の誤差、測位誤差、および符号長の大きさの関係を説明する図である。
【図7】所定の符号長の大きさの拡散符号を移動局から送信した場合のジッタの標準偏差の大きさ、相関値のピーク値、および同期時刻検出の誤差の関係を説明する表である。
【図8】所定の符号長の大きさの拡散符号を移動局から送信した場合のジッタの標準偏差の大きさ、相関値のピーク値、および同期時刻検出の誤差の関係を説明する図である。
【図9】所定の大きさのジッタの標準偏差とした場合に、移動局から送信される符号長の大きさと同期時刻検出の誤差の大きさの標準偏差との関係を説明する表である。
【図10】所定の大きさのジッタの標準偏差とした場合に、移動局から送信される符号長の大きさと同期時刻検出の誤差の大きさの標準偏差との関係を説明する図である。
【図11】所定の大きさのジッタの標準偏差とした場合に、拡散符号の符号長の大きさと相関値の大きさとの組み合わせに対応して得られる同期時刻検出の誤差の標準偏差の値を表した表である。
【図12】相関値算出部に好適に用いられるマッチドフィルタを説明する図である。
【図13】測位部による移動局の位置の算出を説明する図である。
【図14】本発明の測位システムにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【図15】図14のフローチャートのサブルーチンである測距ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【図16】図15のフローチャートのサブルーチンである時計合わせルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【図17】図15のフローチャートのサブルーチンである送信ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【図18】図15のフローチャートのサブルーチンである符号長の大きさ決定ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【図19】本発明の別の実施例における基地局の構成および機能の一例を説明するブロック図であって、図3に対応する図である。
【図20】所定の大きさのジッタの標準偏差とした場合に、相関値の大きさと同期時刻検出の誤差の標準偏差との組み合わせに対応して得られる拡散符号の符号長の大きさの値を表した図である。
【図21】本発明の別の実施例における図15のフローチャートのサブルーチンである符号長の大きさ決定ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートであって、図18に対応する図である。
【符号の説明】
【0098】
6:測距システム
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
26:(基地局の)受信部
28:相関値算出部
30:同期時刻検出部
32:符号長決定部
34:相関値範囲算出部
36:相関値評価部
40、66:時計同期部
46:関係算出部
60:符号長設定部
62:拡散符号生成部
64:送信部
74:測距部
76:測位部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散符号を含む電波を送信する移動局と無線通信する基地局であって、
該移動局から送信された拡散符号を含む電波を受信する受信部と、
受信した電波を2値化するサンプリング部と、
該サンプリング部によりサンプリングされた符号に含まれる拡散符号と予め記憶された該拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する相関値算出部と、
該相関値算出部によって算出される相関値に基づいて前記受信した電波に含まれる拡散符号と前記レプリカ符号との同期時刻を検出する同期時刻検出部と、
該同期時刻検出部における同期時刻検出の際に算出される前記相関値の大きさと、前記同期時刻検出部に要求される予め設定された要求精度の値とに基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを決定する符号長決定部と、を有すること
を特徴とする基地局。
【請求項2】
前記符号長決定部は、
前記要求精度の値と前記移動局から送信される拡散符号の符号長の大きさとに基づいて、前記要求精度を満たす前記相関値の範囲を算出する相関値範囲算出部と、
前記相関値と前記相関値範囲算出部によって算出された範囲との関係を評価する相関値評価部と、を有し、
該相関値評価部により、前記相関値が前記範囲を下回ると評価される場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを増加させ、前記相関値が前記範囲を上回ると評価される場合には前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを減少させるように決定することを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記符号長決定部は、
前記同期時刻検出部による同期時刻検出の精度、前記相関値、および前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさとの関係を算出する関係算出部を有し、
該関係算出部により算出された関係、前記要求精度、および前記相関値に基づいて前記移動局が送信する拡散符号の符号長の大きさを決定すること
を特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
基地局によって受信される拡散符号を含む電波を送信する移動局であって、
前記基地局の符号長決定部において決定された符号長の大きさに基づいて送信する拡散符号の符号長の大きさを設定する符号長設定部と、
該符号長設定部によって設定された符号長の大きさの拡散符号を生成する拡散符号生成部と、
該拡散符号生成部によって生成された拡散符号を含む電波を送信する送信部と、を有すること
を特徴とする移動局。
【請求項5】
移動局から送信された拡散符号を含む電波を基地局が受信することにより、その受信結果に基づいて該移動局と該基地局との距離を算出する測距システムであって、
前記基地局は請求項1乃至3のいずれか1に記載の基地局であり、
前記移動局は請求項4に記載の移動局であり、
前記同期時刻検出部によって検出される同期時刻と、該移動局によって送信される電波の送信時刻とに基づいて前記移動局および基地局間の距離を算出する測距部を有すること
を特徴とする測距システム。
【請求項6】
移動局から送信される拡散符号を含む電波を3つ以上の基地局が受信することにより、その受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する測位システムであって、
前記基地局は請求項1乃至3にいずれか1に記載の基地局であり、
前記移動局は請求項4に記載の移動局であり、
前記同期時刻検出部によって検出される前記3つ以上の各基地局における同期時刻と、
該3つ以上の基地局のそれぞれの位置についての情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部とを有すること
を特徴とする測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−188772(P2009−188772A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27095(P2008−27095)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】