説明

基地局及びその制御方法

【課題】3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおいて干渉を低減する。
【解決手段】3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムのピコ基地局PeNB#1は、X2インターフェイスを介してマクロ基地局MeNBと通信する。ピコ基地局PeNB#1は、マクロ基地局MeNBに対して、コンポーネントキャリアの使用制限又はコンポーネントキャリアの使用制限解除を要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムの基地局及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速・大容量の通信を実現する次世代移動通信システムとして、標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、LTE(Long Term Evolution)を高度化したLTE Advancedの標準化が進められている。
【0003】
LTE Advancedは、LTEとの後方互換性を確保しながら広帯域化を実現するために、LTEのキャリア(周波数帯域)をコンポーネントキャリアと位置付け、複数のコンポーネントキャリアをまとめて使用して無線通信を行うキャリアアグリゲーション技術が導入される(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP技術仕様 TS 36.300 V10.3.0、「5.5 Carrier Aggregation」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LTE Advancedにおいては、上述したキャリアアグリゲーション技術における干渉を低減する検討が種々行われている。
【0006】
そこで、本発明は、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおいて、上述の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0008】
本発明に係る基地局の特徴は、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムの基地局(例えば、ピコ基地局PeNB#1)であって、他の基地局(例えば、マクロ基地局MeNB)に対して、コンポーネントキャリアの使用制限又はコンポーネントキャリアの使用制限解除をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で要求することを要旨とする。
【0009】
本発明に係る基地局の特徴は、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムの基地局(例えば、マクロ基地局MeNB)であって、他の基地局(例えば、ピコ基地局PeNB#1)から、コンポーネントキャリアの使用制限の要求又はコンポーネントキャリアの使用制限解除の要求をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で受信することを要旨とする。
【0010】
本発明に係る制御方法の特徴は、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおける基地局の制御方法であって、他の基地局に対して、コンポーネントキャリアの使用制限又はコンポーネントキャリアの使用制限解除をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で要求するステップを有することを要旨とする。
【0011】
本発明に係る制御方法の特徴は、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおける基地局の制御方法であって、他の基地局から、コンポーネントキャリアの使用制限の要求又はコンポーネントキャリアの使用制限解除の要求をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で受信するステップを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおいて、干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る移動通信システムで使用されるコンポーネントキャリアの構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマクロ基地局のブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るピコ基地局のブロック構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る移動通信システムの動作概要を説明するための図である。
【図6】図6(a)は、マクロ基地局が一部のコンポーネントキャリアの使用を停止したケースを説明するための図であり、図6(b)は、マクロ基地局が一部のコンポーネントキャリアの送信電力を所定電力未満に低下させたケースを説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用停止に係る移動通信システムの動作シーケンス図である。
【図8】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用再開に係る移動通信システムの動作シーケンス図である。
【図9】本発明の実施形態に係る判断用情報の送信要求に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【図10】本発明の実施形態に係る判断用情報の送信要求に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【図11】本発明の実施形態に係る判断用情報の送信時のシーケンス図である。
【図12】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用停止要求に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【図13】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用停止要求に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【図14】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用停止/再開通知に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【図15】本発明の実施形態に係るコンポーネントキャリアの使用停止/再開通知に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態について、(1)移動通信システムの構成、(2)移動通信システムの動作、(3)実施形態の効果、(4)その他の実施形態の順に説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0015】
(1)移動通信システムの構成
(1.1)全体構成
図1は、本実施形態に係る移動通信システム1の全体構成図である。本実施形態に係る移動通信システム1は、LTE Advanced(3GPPリリース10以降)に基づいて構成される。
【0016】
図1に示すように、移動通信システム1は、無線アクセスネットワークであるE−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)10を有する。E−UTRAN10は、ヘテロジーニアスネットワークとして構成されており、送信電力(すなわち、サービスエリア範囲)の異なる複数種類の基地局によって構成される。
【0017】
ヘテロジーニアスネットワークは、高電力基地局(いわゆる、マクロ基地局)だけではなく、サービスエリア範囲の小さい低電力基地局(例えば、ピコ基地局やフェムト基地局)を効果的に配置するものである。なお、ヘテロジーニアスネットワークは、高電力基地局の負荷を低電力基地局に分散させることができるものの、低電力基地局が高電力基地局からの干渉の影響を受け、そのような基地局間干渉による通信品質の劣化が問題視されている。
【0018】
本実施形態では、E−UTRAN10は、大型のセル(マクロセル)を形成するマクロ基地局MeNBと、小型のセル(ピコセル)を形成する2つのピコ基地局PeNB(PeNB#1及びPeNB#2)とを含む。
【0019】
ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、例えば、マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲内であって、高トラフィック地帯(いわゆる、ホットゾーン)に配置される。なお、マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲内に配置されるピコ基地局PeNBの数は、2つに限らず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0020】
マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲は、マクロ基地局MeNBが形成する複数のセルによってカバーされる。同様に、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲は、ピコ基地局PeNB#1が形成する複数のセルによってカバーされ、ピコ基地局PeNB#2のサービスエリア範囲は、ピコ基地局PeNB#2が形成する複数のセルによってカバーされる。ここで、セルとは、無線通信エリアの最小単位である。
【0021】
マクロ基地局MeNB、ピコ基地局PeNB#1、及びピコ基地局PeNB#2のそれぞれは、上述したキャリアアグリゲーション技術をサポートする。本実施形態では、1つのセルは、1つのコンポーネントキャリアに対応している。
【0022】
マクロ基地局MeNB、ピコ基地局PeNB#1、及びピコ基地局PeNB#2のそれぞれには、1又は複数の無線端末UEが接続する。キャリアアグリゲーション技術をサポートする無線端末UEは、複数のコンポーネントキャリアをまとめて無線通信に使用できる。言い換えると、キャリアアグリゲーション技術をサポートする無線端末UEは、複数のサービングセルとの無線通信を同時に行うことができる。
【0023】
移動通信システム1においては、(相互に隣接する)基地局を相互接続するためのX2インターフェイスが設定される。本実施形態では、マクロ基地局MeNBとピコ基地局PeNB#1との間、マクロ基地局MeNBとピコ基地局PeNB#2との間、ピコ基地局PeNB#1とピコ基地局PeNB#2との間に、X2インターフェイスがそれぞれ設定される。
【0024】
さらに、移動通信システム1は、移動管理装置MME/ゲートウェイ装置S−GWと保守監視装置OAMとを有する。移動管理装置MMEは、無線端末UEに対する各種モビリティ制御を行うように構成される。ゲートウェイ装置S−GWは、無線端末UEが送受信するユーザデータの転送制御を行うように構成される。保守監視装置OAMは、E−UTRAN10の保守及び監視を行うように構成される。各基地局eNBとEPC(移動管理装置MME/ゲートウェイ装置S−GW)との間には、各基地局eNBをEPCに接続するためのS1インターフェイスが設定される。
【0025】
(1.2)コンポーネントキャリアの構成
次に、移動通信システム1で使用されるコンポーネントキャリアの構成を説明する。
【0026】
図2は、移動通信システム1で使用されるコンポーネントキャリアの構成を説明するための図である。ここでは、コンポーネントキャリア数が4であるケースを説明するが、コンポーネントキャリア数は2又は3であってもよく、5以上であってもよい。また、複数のコンポーネントキャリアが周波数方向に連続するケースを説明するが、各コンポーネントキャリアが周波数方向に分散していてもよい。例えば、コンポーネントキャリアが800MHz帯と1.5GHz帯とに分散していることがある。
【0027】
図2に示すように、マクロ基地局MeNB、ピコ基地局PeNB#1、及びピコ基地局PeNB#2のそれぞれは、4つのコンポーネントキャリアCC#1〜CC#4を使用可能である。コンポーネントキャリアCC#1〜CC#4のそれぞれは、LTEの1キャリア(周波数帯域)に相当する。すなわち、コンポーネントキャリアCC#1〜CC#4のそれぞれは、周波数方向において複数のリソースブロック(RB)によって構成される。ここでリソースブロックとは、無線端末UEへ割り当てられる無線リソースの単位である。
【0028】
図2に示す各コンポーネントキャリアの電力は、説明の便宜上、下りリンクにおいてキャリアアグリゲーションを構成した場合の、各コンポーネントキャリアの基地局送信電力を示している。図2に示すように、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれの各コンポーネントキャリアの送信電力は、マクロ基地局MeNBの各コンポーネントキャリアの送信電力よりも低い。
【0029】
このため、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれに接続する各無線端末UEは、各コンポーネントキャリアにおいて、マクロ基地局MeNBからの干渉の影響を受ける。また、無線端末UEは、無線端末UEにおける受信電力が最も高い基地局に接続する(又は待ち受けを行う)ことが一般的であるため、ピコ基地局PeNB#1又はピコ基地局PeNB#2の周辺に位置する無線端末UEであっても、マクロ基地局MeNBに接続してしまうことがある。
【0030】
本実施形態では、このような問題を解決するために、マクロ基地局MeNB、ピコ基地局PeNB#1、及びピコ基地局PeNB#2が連携してコンポーネントキャリア単位での基地局間干渉制御を行う。このような基地局間干渉制御の詳細については後述する。
【0031】
(1.3)マクロ基地局の構成
次に、マクロ基地局MeNBの構成を説明する。図3は、マクロ基地局MeNBのブロック構成図である。
【0032】
図3に示すように、マクロ基地局MeNBは、アンテナ101と、無線通信部110と、ネットワーク通信部120と、記憶部130と、制御部140とを有する。
【0033】
アンテナ101は、1又は複数のアンテナ素子を用いて構成され、無線信号の送受信に用いられる。
【0034】
無線通信部110は、複数のコンポーネントキャリアを同時に使用して無線通信を行うように構成される。詳細には、無線通信部110は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、コンポーネントキャリア毎に、アンテナ101を介して無線信号を送受信する。
【0035】
送信については、無線通信部110は、コンポーネントキャリア毎に、制御部140から入力される送信信号の符号化及び変調を行った後、アップコンバート及び増幅を行ってアンテナ101に出力する。受信については、無線通信部110は、コンポーネントキャリア毎に、アンテナ101から入力される受信信号の増幅及びダウンコンバートを行った後、復調及び復号を行って制御部140に出力する。
【0036】
ネットワーク通信部120は、X2インターフェイスを介して、隣接基地局(本実施形態では、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2)との基地局間通信を行う。また、ネットワーク通信部120は、S1インターフェイスを介して、コアネットワーク(すなわち、移動管理装置MME、ゲートウェイ装置S−GW、保守監視装置OAM)との通信を行う。
【0037】
記憶部130は、例えばメモリを用いて構成され、マクロ基地局MeNBの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部130は、ピコ基地局PeNB#1が形成する各セルの識別情報(セルID)をピコ基地局PeNB#1の識別情報(基地局ID)と対応付けて記憶している。また、記憶部130は、ピコ基地局PeNB#2が形成する各セルの識別情報(セルID)をピコ基地局PeNB#2の識別情報(基地局ID)と対応付けて記憶している。上述したように、セル毎にコンポーネントキャリアが異なるため、セルIDによりコンポーネントキャリアを識別できる。
【0038】
制御部140は、例えばCPUを用いて構成され、マクロ基地局MeNBが備える各種の機能を制御する。本実施形態では、制御部140は、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2と連携してコンポーネントキャリア単位での基地局間干渉制御を行うように構成される。
【0039】
(1.4)ピコ基地局の構成
次に、ピコ基地局PeNB#1の構成を説明する。図3は、ピコ基地局PeNB#1のブロック構成図である。ピコ基地局PeNB#2はピコ基地局PeNB#1と同様に構成されるため、ピコ基地局PeNB#2の構成の説明は省略する。
【0040】
図3に示すように、ピコ基地局PeNB#1は、アンテナ201と、無線通信部210と、ネットワーク通信部220と、記憶部230と、制御部240とを有する。
【0041】
アンテナ201は、1又は複数のアンテナ素子を用いて構成され、無線信号の送受信に用いられる。
【0042】
無線通信部210は、複数のコンポーネントキャリアを同時に使用して無線通信を行うように構成される。詳細には、無線通信部210は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、コンポーネントキャリア毎に、アンテナ201を介して無線信号を送受信する。
【0043】
送信については、無線通信部210は、コンポーネントキャリア毎に、制御部240から入力される送信信号の符号化及び変調を行った後、アップコンバート及び増幅を行ってアンテナ201に出力する。受信については、無線通信部210は、コンポーネントキャリア毎に、アンテナ201から入力される受信信号の増幅及びダウンコンバートを行った後、復調及び復号を行って制御部240に出力する。
【0044】
ネットワーク通信部220は、X2インターフェイスを介して、隣接基地局(本実施形態では、マクロ基地局MeNB及びピコ基地局PeNB#2)との基地局間通信を行う。また、ネットワーク通信部220は、S1インターフェイスを介して、コアネットワーク(すなわち、移動管理装置MME、ゲートウェイ装置S−GW、保守監視装置OAM)との通信を行う。
【0045】
記憶部230は、例えばメモリを用いて構成され、ピコ基地局PeNB#1の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部230は、マクロ基地局MeNBが形成する各セルの識別情報(セルID)をマクロ基地局MeNBの識別情報(基地局ID)と対応付けて記憶している。上述したように、セル毎にコンポーネントキャリアが異なるため、セルIDによりコンポーネントキャリアを識別できる。
【0046】
制御部240は、例えばCPUを用いて構成され、ピコ基地局PeNB#1が備える各種の機能を制御する。本実施形態では、制御部240は、マクロ基地局MeNBと連携してコンポーネントキャリア単位での基地局間干渉制御を行うように構成される。
【0047】
(2)移動通信システムの動作
(2.1)動作概要
次に、図5及び図6を参照して、移動通信システム1の動作概要を説明する。図5は、移動通信システム1の動作概要を説明するための図である。
【0048】
図5に示すように、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲内に配置されている。また、マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲内に位置する複数の無線端末UEのうち、ピコ基地局PeNB#1には無線端末UE#1が接続し、ピコ基地局PeNB#2には無線端末UE#2が接続し、それ以外の無線端末UEはマクロ基地局MeNBに接続している。
【0049】
上述したように、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれに接続する各無線端末UEは、各コンポーネントキャリアにおいて、マクロ基地局MeNBからの干渉の影響を受け、通信品質が劣化する。また、ピコ基地局PeNB#1の周辺に位置する無線端末UE#3やピコ基地局PeNB#2の周辺に位置する無線端末UE#4がマクロ基地局MeNBに接続してしまうため、マクロ基地局MeNBの負荷分散が図れない。
【0050】
このため、マクロ基地局MeNBは、マクロ基地局MeNBのサービスエリア範囲内の状況に応じて、コンポーネントキャリアCC#1〜CC#4のうち一部のコンポーネントキャリアの使用を停止する、又は、当該一部のコンポーネントキャリアの送信電力を低下させる。
【0051】
図6(a)は、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアCC#1〜CC#4のうち一部のコンポーネントキャリアの使用を停止したケースを説明するための図である。図6(a)に示すように、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアCC#3及びCC#4の使用を停止することによって、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれは、コンポーネントキャリアCC#3及びCC#4においてマクロ基地局MeNBからの干渉の影響が回避される。
【0052】
図6(b)は、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアCC#1〜CC#4のうち一部のコンポーネントキャリアの送信電力を所定電力未満に低下させたケースを説明するための図である。図6(b)に示すように、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアCC#3及びCC#4の送信電力を所定電力未満に低下させることによって、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれは、コンポーネントキャリアCC#3及びCC#4においてマクロ基地局MeNBからの干渉の影響が緩和される。
【0053】
その結果、ピコ基地局PeNB#1に接続する無線端末UE#1の通信品質及びピコ基地局PeNB#2に接続する無線端末UE#2の通信品質を改善可能になると共に、ピコ基地局PeNB#1の周辺に位置する無線端末UE#3がピコ基地局PeNB#1に接続する可能性及びピコ基地局PeNB#2の周辺に位置する無線端末UE#4がピコ基地局PeNB#2に接続する可能性を高めることができる。
【0054】
マクロ基地局MeNB及びピコ基地局PeNB(PeNB#1及びPeNB#2)は、このようなコンポーネントキャリア制御に係る情報をやり取りすることによって、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアの使用停止(又は送信電力低下)することによる不具合を回避でき、かつ、コンポーネントキャリアの使用停止(又は送信電力低下)により得られる改善効果を大きくすることができる。
【0055】
(2.2)動作シーケンス
以下において、マクロ基地局MeNBとピコ基地局PeNB(PeNB#1及びPeNB#2)との間の基地局間シグナリングを中心に、移動通信システム1の動作シーケンスを説明する。
【0056】
まず、コンポーネントキャリアの使用停止に係る移動通信システム1の動作シーケンスを説明する。図7は、コンポーネントキャリアの使用停止に係る移動通信システム1の動作シーケンス図である。
【0057】
図7に示すように、ステップS11において、ピコ基地局PeNB#1は、マクロ基地局MeNBが使用停止するコンポーネントキャリアを判断するための情報を、X2インターフェイスを介してマクロ基地局MeNBに送信する。マクロ基地局MeNBは、当該情報を受信する。
【0058】
ここで、マクロ基地局MeNBが使用停止するコンポーネントキャリアを判断するための情報としては、例えば以下の第1の情報〜第5の情報のうち少なくとも1つが使用できる。
【0059】
第1の情報は、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲内にある(又はピコ基地局PeNB#1に接続する)各無線端末UEのうち、キャリアアグリゲーション技術をサポートしていない無線端末UEが使用可能なコンポーネントキャリア、又はキャリアアグリゲーション技術をサポートしていない無線端末UEが使用不能なコンポーネントキャリアを示す情報である。例えば、無線端末UEが使用可能なコンポーネントキャリアをマクロ基地局MeNBが使用停止すると、当該無線端末UEはピコ基地局PeNB#1からマクロ基地局MeNBへのハンドオーバ(又はセル再選択)ができなるといった不具合があるため、かかる事態を防止するために上記情報をマクロ基地局MeNBに通知することが効果的である。
【0060】
第2の情報は、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲内にある(又はピコ基地局PeNB#1に接続する)各無線端末UEのうち、使用可能バンド(周波数帯)が限定されている無線端末UEが使用可能なバンド、又は使用可能バンドが限定されている無線端末UEが使用不能なバンドを示す情報である。例えば、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲内に800MHz帯しか使用できない無線端末UEがある場合に、マクロ基地局MeNBが800MHz帯に相当する全コンポーネントキャリアを使用停止すると、当該無線端末UEはピコ基地局PeNB#1からマクロ基地局MeNBへのハンドオーバ(又はセル再選択)ができなるといった不具合があるため、かかる事態を防止するために上記情報をマクロ基地局MeNBに通知することが効果的である。
【0061】
なお、ピコ基地局PeNB#1は、ピコ基地局PeNB#1に接続する無線端末UEからピコ基地局PeNB#1に通知される通信能力情報(UE Capability)に基づいて、上述した第1の情報及び第2の情報を取得できる。あるいは、ピコ基地局PeNB#1は、移動管理装置MME又は保守監視装置OAMに対して問い合わせを行うことによって上述した第1の情報及び第2の情報を取得してもよい。
【0062】
第3の情報は、ピコ基地局PeNB#1の通信能力を示す情報である。例えば、ピコ基地局PeNB#1の能力に起因して、ピコ基地局PeNB#1の使用可能なコンポーネントキャリアがコンポーネントキャリアCC#1及びCC#2に限定されている場合で、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアCC#1〜CC#4を使用できる場合には、マクロ基地局MeNBは、コンポーネントキャリアCC#1及び/又はCC#2を使用停止することが好ましいため、上記情報をマクロ基地局MeNBに通知することが効果的である。
【0063】
第4の情報は、ピコ基地局PeNB#1がマクロ基地局MeNBから受けるコンポーネントキャリア毎の下りリンクの干渉レベルを示す情報である。例えば、マクロ基地局MeNBは、下りリンクにおいてピコ基地局PeNB#1に大きな干渉を与えているコンポーネントキャリアを使用停止することが好ましいため、上記情報をマクロ基地局MeNBに通知することが効果的である。なお、ピコ基地局PeNB#1は、ピコ基地局PeNB#1に接続する無線端末UEからピコ基地局PeNB#1に通知される無線状態情報(CQI等)に基づいて上述した第1の情報及び第2の情報を取得できる。
【0064】
ステップS12において、ピコ基地局PeNB#2は、マクロ基地局MeNBが使用停止可能なコンポーネントキャリアを判断するための情報を、X2インターフェイスを介してマクロ基地局MeNBに送信する。マクロ基地局MeNBは、当該情報を受信する。ここで、マクロ基地局MeNBが使用停止するコンポーネントキャリアを判断するための情報としては、上述した第1の情報〜第5の情報のうち少なくとも1つが使用できる。
【0065】
ステップS13において、マクロ基地局MeNBは、使用停止可能なコンポーネントキャリアの判断を行う。詳細には、マクロ基地局MeNBは、マクロ基地局MeNBが何れかのコンポーネントキャリアを停止可能か否か、及び、どのコンポーネントキャリアを停止することが効果的かを判断する。マクロ基地局MeNBは、上述した第1の情報〜第5の情報に基づいて、コンポーネントキャリアの使用停止することによる不具合を回避するように、かつ、ピコ基地局PeNB#1及びPENB#2のそれぞれで得られる改善効果が大きくなるように、使用停止可能なコンポーネントキャリアの判断を行う。
【0066】
ステップS14において、マクロ基地局MeNBは、X2インターフェイスを介して、使用停止可能なコンポーネントキャリアをピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2に通知(報知)する。ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、当該通知を受信する。本実施形態では、使用停止可能なコンポーネントキャリアの通知は、使用停止可能なコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。
【0067】
なお、ステップS14においては、使用停止可能なコンポーネントキャリアを通知(報知)することに代えて、使用停止不能なコンポーネントキャリアを通知(報知)してもよい。このような通知(報知)であっても、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、使用停止可能なコンポーネントキャリアを把握できる。
【0068】
ステップS15#1において、ピコ基地局PeNB#1は、マクロ基地局MeNBからの使用停止可能なコンポーネントキャリアの通知と、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲内の状況(例えば、上述した第1の情報〜第5の情報)とに基づいて、使用停止を要求すべきコンポーネントキャリアの判断を行う。本実施形態では、ピコ基地局PeNB#1は、使用停止可能なコンポーネントキャリアの使用停止を要求するかを判断する。ピコ基地局PeNB#1は、コンポーネントキャリアの使用停止することによる不具合を回避するように、かつ、ピコ基地局PeNB#1で得られる改善効果が大きくなるように判断を行う。ここでは、ピコ基地局PeNB#1が、使用停止可能なコンポーネントキャリアの使用停止を要求すると判断したとする。
【0069】
ステップS15#2において、ピコ基地局PeNB#2は、マクロ基地局MeNBからの使用停止可能なコンポーネントキャリアの通知と、ピコ基地局PeNB#2のサービスエリア範囲内の状況(例えば、上述した第1の情報〜第5の情報)とに基づいて、使用停止を要求すべきコンポーネントキャリアの判断を行う。本実施形態では、ピコ基地局PeNB#2は、使用停止可能なコンポーネントキャリアの使用停止を要求するかを判断する。ピコ基地局PeNB#2は、コンポーネントキャリアの使用停止することによる不具合を回避するように、かつ、ピコ基地局PeNB#2で得られる改善効果が大きくなるように判断を行う。ここでは、ピコ基地局PeNB#2が、使用停止可能なコンポーネントキャリアの使用停止を要求しないと判断したとする。
【0070】
ステップS16において、ピコ基地局PeNB#1は、X2インターフェイスを介して、使用停止可能なコンポーネントキャリアの使用停止をマクロ基地局MeNBに要求する。本実施形態では、コンポーネントキャリアの使用停止要求は、使用停止要求の対象となるコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。マクロ基地局MeNBは、ピコ基地局PeNB#1から受信した使用停止要求に基づいて、使用停止要求の対象となるコンポーネントキャリアを使用停止すると判断したとする。
【0071】
ステップS17において、マクロ基地局MeNBは、X2インターフェイスを介して、使用停止するコンポーネントキャリアをピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2に通知(報知)する。ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、当該通知を受信する。本実施形態では、使用停止するコンポーネントキャリアの通知は、使用停止するコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。当該通知は、使用停止を実行するタイミングを示す情報(例えば、何サブフレーム後に停止するかの情報)を含んでもよい。
【0072】
ステップS18において、マクロ基地局MeNBは、使用停止の通知(ステップS17)から一定時間経過した際に、コンポーネントキャリアの使用停止を実行する。例えば、マクロ基地局MeNBは、停止対象のコンポーネントキャリアの送信電力をゼロにする。あるいは、一定時間の経過を停止条件とすることに代えて、使用停止通知に対する肯定応答がピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれから得られたことを停止条件としてもよい。
【0073】
コンポーネントキャリアの使用停止の通知(ステップS17)を受けたピコ基地局PeNB(PeNB#1又はPeNB#2)は、例えば以下の第1の動作又は第2の動作の少なくとも一方の動作を行ってもよい。
【0074】
第1の動作として、ピコ基地局PeNBは、ピコ基地局eNBに接続する無線端末UEのうちキャリアアグリゲーション技術をサポートする無線端末UEに対して、使用停止を通知されたコンポーネントキャリアに含まれるリソースブロックを優先的に割り当てる。
【0075】
第2の動作として、ピコ基地局PeNBは、ピコ基地局PeNBに接続する無線端末UEのうちキャリアアグリゲーション技術をサポートしない無線端末UEに対して、使用停止を通知されたコンポーネントキャリアに対応するセルへのハンドオーバを優先的に行う。
【0076】
なお、本動作シーケンスでは、コンポーネントキャリアの使用停止を通知(ステップS17)した後にコンポーネントキャリアの使用停止を実行(ステップS18)しているが、コンポーネントキャリアの使用停止を通知する前又は通知と同時に、コンポーネントキャリアの使用停止を実行してもよい。
【0077】
次に、コンポーネントキャリアの使用再開に係る移動通信システム1の動作シーケンスを説明する。図8は、コンポーネントキャリアの使用再開に係る移動通信システム1の動作シーケンス図である。
【0078】
図8に示すように、ステップS21において、ピコ基地局PeNB#1は、マクロ基地局MeNBが使用再開するコンポーネントキャリアを判断するための情報を、X2インターフェイスを介してマクロ基地局MeNBに送信する。マクロ基地局MeNBは、当該情報を受信する。ここで、マクロ基地局MeNBが使用再開するコンポーネントキャリアを判断するための情報としては、上述した第1の情報〜第5の情報のうち少なくとも1つが使用できる。
【0079】
ステップS22において、ピコ基地局PeNB#2は、マクロ基地局MeNBが使用再開可能なコンポーネントキャリアを判断するための情報を、X2インターフェイスを介してマクロ基地局MeNBに送信する。マクロ基地局MeNBは、当該情報を受信する。ここで、マクロ基地局MeNBが使用再開するコンポーネントキャリアを判断するための情報としては、上述した第1の情報〜第5の情報のうち少なくとも1つが使用できる。
【0080】
ステップS23において、マクロ基地局MeNBは、使用再開可能なコンポーネントキャリアの判断を行う。詳細には、マクロ基地局MeNBは、マクロ基地局MeNBが何れかのコンポーネントキャリアを再開可能か否か、及び、どのコンポーネントキャリアを使用再開することが効果的かを判断する。マクロ基地局MeNBは、上述した第1の情報〜第5の情報に基づいて、コンポーネントキャリアの使用再開することによる不具合を回避するように判断を行う。
【0081】
ステップS24において、マクロ基地局MeNBは、X2インターフェイスを介して、使用再開可能なコンポーネントキャリアをピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2に通知(報知)する。ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、当該通知を受信する。本実施形態では、使用再開可能なコンポーネントキャリアの通知は、使用再開可能なコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。
【0082】
なお、ステップS24においては、使用再開可能なコンポーネントキャリアを通知(報知)することに代えて、使用再開不能なコンポーネントキャリアを通知(報知)してもよい。このような通知(報知)であっても、ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、使用再開可能なコンポーネントキャリアを把握できる。
【0083】
ステップS25#1において、ピコ基地局PeNB#1は、マクロ基地局MeNBからの使用再開可能なコンポーネントキャリアの通知と、ピコ基地局PeNB#1のサービスエリア範囲内の状況(例えば、上述した第1の情報〜第5の情報)とに基づいて、使用再開を要求すべきコンポーネントキャリアの判断を行う。本実施形態では、ピコ基地局PeNB#1は、使用再開可能なコンポーネントキャリアの使用再開を要求するかを判断する。ピコ基地局PeNB#1は、コンポーネントキャリアの使用再開することによる不具合を回避するように判断を行う。ここでは、ピコ基地局PeNB#1が、使用再開可能なコンポーネントキャリアの使用再開を要求すると判断したとする。
【0084】
ステップS25#2において、ピコ基地局PeNB#2は、マクロ基地局MeNBからの使用再開可能なコンポーネントキャリアの通知と、ピコ基地局PeNB#2のサービスエリア範囲内の状況(例えば、上述した第1の情報〜第5の情報)とに基づいて、使用再開を要求すべきコンポーネントキャリアの判断を行う。本実施形態では、ピコ基地局PeNB#2は、使用再開可能なコンポーネントキャリアの使用再開を要求するかを判断する。ピコ基地局PeNB#2は、コンポーネントキャリアの使用再開することによる不具合を回避するように判断を行う。ここでは、ピコ基地局PeNB#2が、使用再開可能なコンポーネントキャリアの使用再開を要求しないと判断したとする。
【0085】
ステップS26において、ピコ基地局PeNB#1は、X2インターフェイスを介して、使用再開可能なコンポーネントキャリアの使用再開をマクロ基地局MeNBに要求する。本実施形態では、コンポーネントキャリアの使用再開要求は、使用再開要求の対象となるコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。マクロ基地局MeNBは、ピコ基地局PeNB#1から受信した使用再開要求に基づいて、使用再開要求の対象となるコンポーネントキャリアを使用再開すると判断したとする。
【0086】
ステップS27において、マクロ基地局MeNBは、X2インターフェイスを介して、使用再開するコンポーネントキャリアをピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2に通知(報知)する。ピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2は、当該通知を受信する。本実施形態では、使用再開するコンポーネントキャリアの通知は、使用再開するコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを通知することで行われる。当該通知は、使用再開を実行するタイミングを示す情報(例えば、何サブフレーム後に再開するかの情報)を含んでもよい。
【0087】
ステップS28において、マクロ基地局MeNBは、使用再開の通知(ステップS27)から一定時間経過した際に、コンポーネントキャリアの使用再開を実行する。例えば、マクロ基地局MeNBは、再開対象のコンポーネントキャリアの送信電力を元に(標準レベルに)戻す。あるいは、一定時間の経過を再開条件とすることに代えて、使用再開通知に対する肯定応答がピコ基地局PeNB#1及びPeNB#2のそれぞれから得られたことを再開条件としてもよい。
【0088】
コンポーネントキャリアの使用再開の通知(ステップS27)を受けたピコ基地局PeNB(PeNB#1又はPeNB#2)は、通常の状態に戻すとしてもよいし、例えば以下の第1の動作又は第2の動作の少なくとも一方の動作を行ってもよい。
【0089】
第1の動作として、ピコ基地局PeNBは、ピコ基地局eNBに接続する無線端末UEのうちキャリアアグリゲーション技術をサポートする無線端末UEに対して、使用再開を通知されたコンポーネントキャリアに含まれるリソースブロックを極力割り当てないようにする。
【0090】
第2の動作として、ピコ基地局PeNBは、ピコ基地局eNBに接続する無線端末UEのうちキャリアアグリゲーション技術をサポートしない無線端末UEに対して、使用再開を通知されたコンポーネントキャリアに対応するセルから他のセルへのハンドオーバを優先的に行う。
【0091】
なお、本動作シーケンスでは、コンポーネントキャリアの使用再開を通知(ステップS27)した後にコンポーネントキャリアの使用再開を実行(ステップS28)しているが、コンポーネントキャリアの使用再開を通知する前又は通知と同時に、コンポーネントキャリアの使用再開を実行してもよい。
【0092】
上述した動作シーケンスは、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアの使用を停止/再開するものであるが、図7の「使用停止」を「送信電力低下」と読み替え、かつ図8の「使用再開」を「送信電力上昇(又は送信電力復帰)」と読み替えることで、上述した動作シーケンスをコンポーネントキャリアの送信電力低下/上昇に適用できる。
【0093】
また、上述した動作シーケンスについて、コンポーネントキャリアの使用停止/再開の判断のためのパラメータを保守監視装置OAMが提供してもよい。例えば、マクロ基地局MeNBが、使用停止要求/使用再開要求を受信した数が閾値を超えるまでは使用停止/使用再開を実行しないという判断を行う場合には、保守監視装置OAMは、当該閾値をマクロ基地局MeNBに設定してもよい。
【0094】
さらに、本実施形態では、ピコ基地局PeNB#1からマクロ基地局MeNBへコンポーネントキャリアの使用再開要求を行う動作シーケンスを説明したが、このような動作シーケンスに代えて、コンポーネントキャリアの使用停止要求をマクロ基地局MeNBが所定時間受信しない場合にコンポーネントキャリアの使用を再開すると判断してもよい。
【0095】
(2.3)基地局間シグナリングの具体例
以下において、上述した動作シーケンスで使用される基地局間シグナリングの具体例を説明する。
【0096】
まず、図9〜図11を参照して、使用停止するコンポーネントキャリア又は使用再開するコンポーネントキャリアを判断するための情報(以下、「判断用情報」と称する)の送受信に係る基地局間シグナリングの具体例を説明する。図9〜図11において、eNBは例えばマクロ基地局MeNBに相当し、eNBは例えばピコ基地局PeNB#1又はPeNB#2に相当する。
【0097】
図9は、判断用情報の送信要求に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0098】
図9に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、判断用情報の定期報告を要求するためのメッセージであるCC Status RequestをeNBに送信する。CC Status Requestは、セルを指定するセルIDや、上述した第1の情報〜第5の情報のうち報告を要求する情報のID、報告を行うべき時間間隔の情報を含んでもよい。eNBは、CC Status Requestを受信した後、X2インターフェイスを介して、CC Status Requestに対する肯定応答メッセージであるCC Status ResponseをeNBに送信する。なお、CC Status Responseにおいても上述した第1の情報〜第4の情報の少なくとも1つを含めてもよい。
【0099】
図10は、判断用情報の送信要求に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0100】
図10に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、判断用情報の定期報告を要求するためのメッセージであるCC Status RequestをeNBに送信する。CC Status Requestは、セルを指定するセルIDや、上述した第1の情報〜第5の情報のうち報告を要求する情報のIDを含んでもよい。eNBは、CC Status Requestを受信した後、X2インターフェイスを介して、CC Status Requestに対する否定応答メッセージであるCC Status FailureをeNBに送信する。なお、CC Status Failureにおいても上述した第1の情報〜第4の情報の少なくとも1つを含めてもよい。
【0101】
図11は、判断用情報の送信時のシーケンス図である。図11の動作シーケンスは、eNBがCC Status Responseを送信した後において行われるが、eNBがCC Status Failureを送信した後においては行われない。
【0102】
図11に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、判断用情報(上述した第1の情報〜第5の情報のうち報告を要求された情報)を含んだメッセージであるCC Status UpdateをeNBに送信する。なお、CC Status Updateの定期報告は、eNBが定期報告の停止をeNBに要求するまで継続されてもよい。
【0103】
なお、上述した図9及び図10のシーケンスを省略し、予め定められた種類の情報をeNBからeNBに送信するとしてもよい。
【0104】
次に、図12及び図13を参照して、使用停止要求に係る基地局間シグナリングの具体例を説明する。図12及び図13において、eNBは例えばピコ基地局PeNB#1又はPeNB#2に相当し、eNBは例えばマクロ基地局MeNBに相当する。
【0105】
図12は、コンポーネントキャリアの使用停止要求に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0106】
図12に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、コンポーネントキャリアの使用停止を要求するメッセージであるCell Muting RequestをeNBに送信する。Cell Muting Requestは、使用停止要求の対象となるコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを含む。eNBは、Cell Muting Requestを受信した後、X2インターフェイスを介して、Cell Muting Requestに対する肯定応答メッセージであるCell Muting ResponseをeNBに送信する。
【0107】
なお、コンポーネントキャリアの使用停止を要求するメッセージに代えて、コンポーネントキャリアの送信電力低下を要求するメッセージを使用する場合には、送信電力低下を要求するメッセージに、要求する送信電力低下量(何dB下げるのか)を指定するようなパラメータ(直接指定又は小・大の2値等)を含めて送信してもよい。
【0108】
図13は、コンポーネントキャリアの使用停止要求に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0109】
図13に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、コンポーネントキャリアの使用停止を要求するメッセージであるCell Muting RequestをeNBに送信する。Cell Muting Requestは、使用停止要求の対象となるコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを含む。eNBは、Cell Muting Requestを受信した後、X2インターフェイスを介して、Cell Muting Requestに対する否定応答メッセージであるCell Muting FailureをeNBに送信する。
【0110】
なお、コンポーネントキャリアの使用再開要求としては、Cell Activation Requestを使用できる。Cell Activation Requestは、使用再開要求の対象となるコンポーネントキャリアに対応するセルのセルIDを含む。
【0111】
次に、図14及び図15を参照して、使用停止するコンポーネントキャリアの通知又は使用再開するコンポーネントキャリアの通知に係る基地局間シグナリングの具体例を説明する。図14及び図15において、eNBは例えばマクロ基地局MeNBに相当し、eNBは例えばピコ基地局PeNB#1又はPeNB#2に相当する。
【0112】
図14は、コンポーネントキャリアの使用停止/再開通知に対して肯定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0113】
図14に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、コンポーネントキャリアの使用停止/再開を示す情報を含んだメッセージであるeNB Configuration UpdateをeNBに送信する。コンポーネントキャリアの使用停止を示す情報は、例えばCell Deactivation Indication IEである。Cell Deactivation Indication IEは、使用停止するコンポーネントキャリアに対応するセルIDを含む。また、コンポーネントキャリアの使用再開を示す情報は、例えばCell Activation Indication IEである。Cell Activation Indication IEは、使用再開するコンポーネントキャリアに対応するセルIDを含む。eNBは、eNB Configuration Updateを受信した後、X2インターフェイスを介して、eNB Configuration Updateに対する肯定応答メッセージであるeNB Configuration Update AcknowledgeをeNBに送信する。
【0114】
図15は、コンポーネントキャリアの使用停止/再開通知に対して否定応答が行われる場合のシーケンス図である。
【0115】
図15に示すように、eNBは、X2インターフェイスを介して、コンポーネントキャリアの使用停止/再開を示す情報を含んだメッセージであるeNB Configuration UpdateをeNBに送信する。コンポーネントキャリアの使用停止を示す情報は、例えばCell Deactivation Indication IEであり、コンポーネントキャリアの使用停止を示す情報は、例えばCell Activation Indication IEである。eNBは、eNB Configuration Updateを受信した後、X2インターフェイスを介して、eNB Configuration Updateに対する否定応答メッセージであるeNB Configuration Update FailureをeNBに送信する。eNBは、eNB Configuration Update Failureを受信すると、コンポーネントキャリアの使用停止/再開を中止することになる。
【0116】
なお、図14及び図15では、eNB Configuration Updateを利用する一例を説明したが、他のメッセージによりコンポーネントキャリアの使用停止/再開通知を行ってもよい。例えば、UE History InformationのLast Visited Cell Informationに含まれるCell Type IEを新たに定義されたメッセージに含めて利用してもよい。
【0117】
(3)実施形態の効果
以上説明したように、マクロ基地局MeNB及びピコ基地局PeNB(PeNB#1及びPeNB#2)が連携してコンポーネントキャリア単位での基地局間干渉制御を行うための基地局間シグナリングを規定することによって、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアの使用停止(又は送信電力低下)することによる不具合を回避でき、かつ、コンポーネントキャリアの使用停止(又は送信電力低下)により得られる改善効果を大きくすることができる。
【0118】
また、上述した動作シーケンスを定期的に実行することによって、マクロ基地局MeNBが適応的に(動的に)コンポーネントキャリアの使用停止/再開(又は送信電力低下/上昇)を行うことが可能になる。これにより、干渉低減効果を大きくすることができると共に、マクロ基地局MeNBの消費電力も小さくすることができる。
【0119】
(4)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0120】
上述した実施形態では、マクロ基地局MeNB及びピコ基地局PeNBが、X2インターフェイスを介して(X2インターフェイス上で)各種の情報をやり取りしていたが、X2インターフェイスに限らず、S1インターフェイスを介して(X1インターフェイス上で)各種の情報をやり取りしてもよい。例えば、上述した各種の情報(或いはメッセージ)を、移動管理装置MME又は保守監視装置OAMなどを経由して伝送する構成としてもよい。
【0121】
上述した実施形態では、マクロ基地局MeNBがコンポーネントキャリアの使用停止/再開(又は送信電力低下/上昇)を行うケースを説明したが、ピコ基地局PeNBがコンポーネントキャリアの使用停止/再開(又は送信電力低下/上昇)を行ってもよい。この場合、上述した動作シーケンスにおいてマクロ基地局MeNBとピコ基地局PeNBとの関係を逆にすればよい。
【0122】
また、上述した実施形態では、ヘテロジーニアスネットワークにおける異種基地局間のシグナリングを主として説明したが、マクロ基地局間やピコ基地局間でも基地局間干渉は生じ得るため、同種基地局間のシグナリングに適用してもよい。
【0123】
なお、LTE Advancedにおいては、バックホールを無線により構成する基地局であるリレーノードの採用が予定され、且つリレーノードにもX2インタフェースが採用される予定であるため、当該リレーノードを本発明に係る基地局としてもよい。
【0124】
また、将来的には、1つのコンポーネントキャリアを分割して各分割キャリアを新たなコンポーネントキャリアとして取り扱うことも想定されているが、本明細書において用語「コンポーネントキャリア」は、そのような新たなコンポーネントキャリアも含むものとする。
【0125】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0126】
MeNB…マクロ基地局、UE…無線端末、PeNB…ピコ基地局、MME…移動管理装置、OAM…保守監視装置、S−GW…ゲートウェイ装置、1…移動通信システム、10…E−UTRAN、101…アンテナ、110…無線通信部、120…ネットワーク通信部、130…記憶部、140…制御部、201…アンテナ、210…無線通信部、220…ネットワーク通信部、230…記憶部、240…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムの基地局であって、
他の基地局に対して、コンポーネントキャリアの使用制限又はコンポーネントキャリアの使用制限解除をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で要求することを特徴とする基地局。
【請求項2】
3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムの基地局であって、
他の基地局から、コンポーネントキャリアの使用制限の要求又はコンポーネントキャリアの使用制限解除の要求をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で受信することを特徴とする基地局。
【請求項3】
3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおける基地局の制御方法であって、
他の基地局に対して、コンポーネントキャリアの使用制限又はコンポーネントキャリアの使用制限解除をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で要求するステップを有することを特徴とする制御方法。
【請求項4】
3GPP規格で規定されるキャリアアグリゲーション技術をサポートする移動通信システムにおける基地局の制御方法であって、
他の基地局から、コンポーネントキャリアの使用制限の要求又はコンポーネントキャリアの使用制限解除の要求をX2インターフェイス又はS1インターフェイス上で受信するステップを有することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−231343(P2012−231343A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98823(P2011−98823)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】